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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
A61F9/007 110
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017180706
(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公開番号】P2019054985
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】小崎 湧太
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0211186(US,A1)
【文献】実開昭60-140923(JP,U)
【文献】実開昭56-088223(JP,U)
【文献】国際公開第2006/013797(WO,A1)
【文献】小崎湧太、鈴木健嗣 著,「柔軟素材の変形により開眼・閉眼動作を支援する顔面装着型ロボット」,ロボティクスメカトロニクス講演会2017講演会論文集 2017 JSME Conference on Robotics and Mechatronics,日本,一般社団法人 日本機械学会 The Japan Society of Mechanical Engineers,2017年05月09日,第2P2-O11(1)-(2)ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する基部と、を有する支持部と、
前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向に回転させる駆動部と、
を備え、
前記基部は、可撓性を有し、
前記第1端部の第1回転軸と前記第2端部の第2回転軸とは、同一直線上に位置しておらず、
装着者の頸部に装着されるフレームをさらに備え、
前記基部は、前記装着者の頸部の皮膚と接し前記装着者の甲状軟骨を挟持する凸部を有している、支援装置。
【請求項2】
頸部に貼付される電極を有するセンサと、
制御部と、
をさらに備え、
前記センサは、前記装着者の生体電位に基づいて検出信号を出力し、
前記制御部は、前記検出信号が所定値を超える場合に、前記駆動部を駆動する、請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に位置する基部と、を有する支持部と、
前記第1端部と前記第2端部とを互いに逆方向に回転させる駆動部と、
を備え、
前記基部は、可撓性を有し、
前記第1端部の第1回転軸と前記第2端部の第2回転軸とは、同一直線上に位置しておらず、
前記基部は、シリコーン樹脂によって形成されている、支援装置。
【請求項4】
前記第1回転軸と前記第2回転軸とがなす角度は、0度より大きく、90度以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項5】
前記駆動部に設けられた駆動プーリと、
前記第1端部が固定された第1プーリと、
前記第2端部が固定された第2プーリと、
前記駆動プーリと前記第1プーリとを平行掛けで連結する第1ワイヤと、
前記駆動プーリと前記第2プーリとを十字掛けで連結する第2ワイヤと、
をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項6】
前記第1プーリの第1直径と前記第2プーリの第2直径とは、等しい、請求項に記載の支援装置。
【請求項7】
前記駆動プーリの第3直径は、前記第1直径及び前記第2直径より大きい、請求項に記載の支援装置。
【請求項8】
前記第1端部と前記第2端部は、前記基部より剛性が高い、請求項1乃至のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項9】
前記第1端部と前記第2端部とは、前記基部と異なる材料で形成されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項10】
前記支持部は、第1屈曲部と第2屈曲部とを有している、請求項1乃至のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項11】
前記支持部は、前記第1屈曲部と前記第2屈曲部との間において弓状に湾曲している、請求項10に記載の支援装置。
【請求項12】
主部と、前記主部の一端から延出した第1側部と、前記主部の他端から前記第1側部に沿って延出した第2側部と、を有し、装着者の頭部に装着されるフレームをさらに備え、
前記基部は、前記装着者の眼瞼の皮膚と接する凸部を有している、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の支援装置。
【請求項13】
前記第1回転軸と前記第2回転軸とは、前記主部と交差している、請求項1に記載の支援装置。
【請求項14】
前記フレームに設けられたセンサと、
制御部と、
をさらに備え、
前記センサは、前記装着者の目尻の皮膚変動に基づいて検出信号を出力し、
前記制御部は、前記検出信号がしきい値を超える場合に、前記駆動部を駆動する、請求項1又は1に記載の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、柔軟な生体組織に沿った動作を支援する支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顔面麻痺の患者は、顔面の左右のいずれか一方(半側顔面)において運動機能を失うことが多い。顔面麻痺は、日常生活に著しい支障をきたすおそれがある。例えば目に関しては、麻痺により瞬目が困難になる場合、乾燥による眼病が誘発される場合がある。また、麻痺により眼輪筋が弛緩し、目を十分に開眼できない場合、視界が狭小化される場合がある。
【0003】
このような例えば顔面の機能障害に対して、その治療や動作の補助などを可能とする装置が開発されている。
【0004】
特許文献1には、顔面の筋肉を刺激する情報出力装置が開示されている。この情報出力装置は、情報を出力する出力手段と、出力される情報に対応した感情と相互作用する顔面の所定の筋肉を刺激する刺激手段とを備えている。刺激手段は、刺激する筋肉の位置に電極を付着させ、当該筋肉が弛緩または緊張するように電極に電気パルスを印加する。
【0005】
特許文献2には、顔面の皮膚を駆動する装着型人支援装置が開示されている。この装着型人支援装置は、一端が被装着者の皮膚に貼着された線状伝達部材と、線状伝達部材の他端に結合された駆動部と、被装着者の意思に応じて指令信号を生成する指令信号生成手段と、指令信号に基づいて駆動部による駆動力を制御する制御部と、を備えている。線状伝達部材は、駆動部が発生する駆動力に応じて、線状伝達部材が貼着された顔面の皮膚に対して引張り力または押圧力を作用させる。
【0006】
また、非特許文献1には、例えば顔面麻痺の患者に対して閉眼動作を支援する支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-237644号公報
【文献】特開2009-285115号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yuta Kozaki, and Kenji Suzuki, "A facial wearable robot with eyelid gating mechanism for supporting eye blink," Proc. of the 2016 IEEE International Symposium on Micro-NanoMechatronics and Human Science (MHS2016), pp. 1-6, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、外部の装置によって生体組織の動作を支援する場合、生体組織に過剰な力が加わることは好ましくない。特に、眼球や頸部などの柔軟な生体組織に対しては、より慎重な対応が求められる。一方で、生体組織の形状は複雑であり、その形状に合わせた動作の支援は困難である。また、複雑な形状に合わせた動作の支援を試みる場合、装置の部品数や動力源の数が増加し、装置構造が複雑化する傾向にある。この場合、装置の着脱に関して利便性が低下し、日常生活やリハビリテーションの場への装置の導入が困難になるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、柔軟で複雑な形状を有する生体組織に沿った動作の支援ができ、且つ、着脱が容易な支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態の支援装置は、支持部と駆動部とを備える。支持部は、第1端部と、第2端部と、第1端部と第2端部との間に位置する基部とを有する。この基部は、可撓性を有している。駆動部は、第1端部と第2端部とを互いに逆方向に回転させる。第1端部の第1回転軸と第2端部の第2回転軸とは、同一直線上に位置していない。
【0012】
このとき、第1回転軸と第2回転軸とがなす角度は、0度より大きく、90以下であることが好ましい。
【0013】
上述の支援装置は、さらに、駆動プーリと、第1プーリと、第2プーリと、第1ワイヤと、第2ワイヤとを備える。駆動プーリは、駆動部に設けられている。第1プーリには、第1端部が固定される。第2プーリには、第2端部が固定される。また、駆動プーリと第1プーリとは、第1ワイヤによって平行掛けで連結される。駆動プーリと第2プーリとは、第2ワイヤによって十字掛けで連結される。
【0014】
このとき、第1プーリの第1直径と第2プーリの第2直径とは、等しい。また、駆動プーリの第3直径は、第1直径及び第2直径より大きくてもよい。
【0015】
支持部において、第1端部と第2端部とは、基部より剛性が高い。また、第1端部と第2端部とは、基部と異なる材料で形成されていてもよい。
【0016】
さらに、支持部は、第1屈曲部と第2屈曲部を有している。このとき、支持部は、第1屈曲部と第2屈曲部との間において、弓状に湾曲していることが好ましい。
【0017】
上述の支援装置は、さらに、装着者の頭部に装着されるフレームを備える。フレームは、主部と、主部の一端から延出した第1側部と、主部の他端から第1側部に沿って延出した第2側部とを有する。このとき、基部は、装着者の眼瞼の皮膚と接する凸部を有する。また、第1回転軸と第2回転軸とは、主部と交差する。
【0018】
支援装置は、さらに、フレームに設けられたセンサと、制御部とを備えていてもよい。センサは、装着者の目尻の皮膚変動に基づいて検出信号を出力する。制御部は、検出信号がしきい値を超える場合に、駆動部を駆動する。
【0019】
あるいは、上述の支援装置は、装着者の頸部に装着されるフレームを備えていてもよい。このとき、基部は、装着者の頸部の皮膚と接し装着者の甲状軟骨を挟持する凸部を有する。
【0020】
支援装置は、さらに、電極を有するセンサと、制御部とを備えていてもよい。センサは、装着者の生体電位に基づいて検出信号を出力する。制御部は、検出信号がしきい値を超える場合に、駆動部を駆動する。
【0021】
上述の基部は、例えばシリコーン樹脂によって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態の支援装置によれば、生体を支持する支持部は、柔軟性及び可撓性を有する材料で形成され、支持部の両端部が互いに反対方向に回転される。両端部の回転軸は、同一直線上に位置していない。柔軟性を有する支持部は、両端部の回転方向とは異なる方向に変形され、装着者へ向かって付勢される。したがって、対象となる生体組織が例えば眼球のように柔軟で且つ複雑な形状である場合であっても、生体組織にストレスを加えることなく、支持部を変形することができる。この結果、柔軟で且つ複雑な形状を有する生体組織に沿った動作を支援することができる。
【0023】
また、支持部が装着者Pへ向かって付勢されているため、支持部と装着者との間に粘着剤を介在することなく、装着者Pの生体組織を支持することができる。このため、支援装置の着脱を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る支援装置を概略的に示す図。
図2図1の支援装置の構成を示すブロック図。
図3図1の支援装置による閉眼開眼支援処理の一例を示すフローチャート。
図4図1の支援装置のプーリ機構を模式的に示す図。
図5】プーリ機構が備える支持部34を拡大して示す図。
図6】支援装置が装着された状態における支持部と回転軸の配置とを示す図。
図7】支援装置が装着された状態における支持部と装着者の患側の眼瞼とを模式的に示す図。
図8】本発明の第2実施形態に係る支援装置を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、実質的に同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付してその記載を参酌することとし、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0026】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の支援装置について図1乃至図7を参照して説明する。本実施形態では、支援装置が例えば顔面麻痺の患者に装着され、装着者の顔面の動作を支援する場合を想定する。
【0027】
図1は、第1実施形態に係る支援装置100を概略的に示す図である。支援装置100は、一例として、メガネ型である。支援装置100は、一例として、装着者Pの閉眼開眼動作を支援する。ここでは、装着者Pの顔面のうち、例えば右側は、運動機能が低下した患側に相当し、左側は、運動機能が低下していない健側に相当するものとして説明する。本実施形態の支援装置100は、装着者Pの健側の閉眼開眼動作を検知し、健側と同期して患側の眼瞼を開閉させる。
【0028】
支援装置100は、フレーム1、センサ2、プーリ機構3、制御部4、バッテリ5、メモリ6などを備えている。
【0029】
フレーム1は、メガネ型であり、装着者Pの頭部に装着される。フレーム1は、例えば金属又は樹脂等の剛性を有する材料によって形成されている。フレーム1は、主部11と、側部(第1側部)12a及び側部(第2側部)12bと、パッド13とを有している。支援装置100が装着された状態において、主部11は、装着者Pの両眼より上方(頭頂部側)に位置し、装着者Pの両眼に沿って延出している。側部12a及び12bは、主部11の両端から装着者Pの両耳の上方に向かってそれぞれ延出している。図示した例では、主部11は、中央から装着者Pの鼻へ向かって延出した突起を有している。パッド13は、この突起の先端に設けられ、装着者Pの鼻に当接される。なお、フレーム1は、単一の部材で一体的に形成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。
【0030】
センサ2は、装着者Pの閉眼開眼動作に起因した信号を検出し、検出信号として出力する。センサ2は、一例では、反射型の光センサである。センサ2は、主部11の一端に配置され、装着者Pの健側の目尻と対向している。センサ2は、装着者Pの閉眼開眼動作に起因した目尻における皮膚変動を検出する。すなわち、センサ2は、所定の波長の光を出射するとともに、装着者Pの健側の目尻の皮膚において反射された光を受光する。センサ2は、受光した光の強度に基づいて検出信号を出力する。なお、センサ2は、光センサに限定されない。センサ2は、例えば、皮膚に貼付される電極を備えていてもよい。この場合、センサ2は、装着者Pの閉眼開眼にともなう神経伝達信号を検出し、神経伝達信号の強度に応じた信号を検出信号として出力する。
【0031】
プーリ機構3は、装着者Pの閉眼開眼動作を支援する。プーリ機構3は、主部11のうち装着者Pの患側に配置されている。プーリ機構3は、駆動部31、プーリ32a(第1プーリ)、プーリ32b(第2プーリ)、ワイヤ33a(第1ワイヤ)、ワイヤ33b(第2ワイヤ)、及び支持部34を備えている。
【0032】
駆動部31は、制御部4の指示に基づいて、回転運動の動力をプーリ32a及び32bに供給する。駆動部31は、モータ311と、モータ311の回転軸に接続された駆動プーリ312とを備えている。一例では、モータ311の回転軸は、例えば主部11に沿って配置され、駆動プーリ312の回転軸は、モータ311の回転軸と交差している。なお、モータ311及び駆動プーリ312の配置は図示した例に限定されない。
【0033】
プーリ32a及び32bは、主部11に回動可能に支持されている。図示した例では、プーリ32aは、装着者Pの患側の目頭近傍、すなわち装着者Pの右目と鼻との間に位置している。プーリ32bは、装着者Pの患側の目尻近傍、すなわち装着者Pの右目と右側の米神との間に位置している。駆動部31の動力は、ワイヤ33aを介してプーリ32aに伝達され、ワイヤ33bを介してプーリ32bに伝達される。図示した例では、ワイヤ33aは、例えば銅などの金属材料からなるワイヤガイドWGを通って、駆動部31と連結されている。
【0034】
支持部34は、その一端部がプーリ32aに固定され、他端部がプーリ32bに固定されている。支援装置100が装着された状態において、支持部34は、装着者Pの患側の眼瞼と接している。支持部34は、少なくともその一部が例えばシリコーン樹脂等の柔軟性及び可撓性を有する材料によって形成されている。支持部34の延出方向は、プーリ32a及び32bの回転軸と交差している。換言すると、プーリ32a及び32bの回転軸と支持部34とは、同一直線上に位置していない。
【0035】
このような構成において、プーリ32aとプーリ32bとが例えば互いに反対方向に回転されると、支持部34は、装着者Pの眼瞼と接したまま変形される。装着者Pの患側の眼瞼は、支持部34との間で生じる摩擦力によって、支持部34の変形とともに移動される。これにより、装着者Pの開眼及び閉眼が実現される。
【0036】
制御部4は、フレーム1に収容されている。図示した例では、制御部4は、側部12bに収容されている。制御部4は、センサ2から出力された検出信号に基づいて、駆動部31を制御する。例えば、制御部4は、検出信号の時間変化を算出し、算出結果がしきい値を超えた場合に、駆動部31を駆動する。
【0037】
バッテリ5及びメモリ6は、フレーム1に収容されている。バッテリ5は、駆動部31、制御部4、メモリ6などに電力を供給する。メモリ6は、上述のしきい値に関する情報を記憶する。図示した例では、バッテリ5及びメモリ6は、側部12bに収容されているが、側部12aに収容されていてもよい。なお、バッテリ5が省略され、外部電源からアダプタなどを介して電力が供給されてもよい。
【0038】
なお、本実施形態の支援装置100は、装着者Pの閉眼開眼動作を支援する支援モードと、しきい値を設定する設定モードとの切り替えが可能である。図示した例では、支援装置100は、制御部4の上部に切り替えボタンSWを備えている。この切り替えボタンSWが所定時間押圧されることで、支援モードと設定する設定モードとの切り替えが行われる。しきい値は、設定モードにおいて装着者Pが例えば1回、随意的な閉眼を行い、その時のセンサ2からの検出信号に基づいて設定される。このとき、メモリ6は、設定モードにおいてセンサ2から出力された検出信号を、しきい値情報として記憶する。
【0039】
図2は、図1に示す支援装置100の構成を示すブロック図である。支援装置100は、フレーム1、センサ2、駆動部31、制御部4、バッテリ5に加え、メモリ6を備えている。
【0040】
センサ2は、発光部21と受光部22とを備えている。発光部21は、例えば赤外線等の所定波長の光を出射する。受光部22は、発光部21から出射された光と同波長の光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を検出信号として出力する。センサ2は、所定時間、例えば10msごとに、所定波長の光の出射とその受光を行う。
【0041】
制御部4は、解析部41、判定部42、モータ制御部43、及びモード切り替え部44を備えている。
【0042】
解析部41は、受光部22から出力された検出信号の時間微分を行う。すなわち、解析部41は、第1時刻における検出信号の大きさと、第1時刻から所定時間(例えば10ms)経過した第2時刻における検出信号の大きさとの差分を、検出信号の変化量として算出する。
【0043】
判定部42は、メモリ6に記憶されたしきい値情報を参照し、解析部によって算出された変化量がしきい値を超えるか否かを判定する。また、判定部42は、当該変化量が正であるか負であるかを判定する。当該変化量がしきい値を超え、且つ正である場合、判定部42は、センサ2から出力された検出信号が装着者Pの健側の例えば閉眼動作に起因すると判断し、モータ311を例えば順方向に回転させる順回転信号を出力する。当該変化量がしきい値を超え、且つ負である場合、判定部42は、センサ2から出力された検出信号が装着者Pの健側の例えば開眼動作に起因すると判断し、モータ311を逆回転させる逆回転信号を出力する。また、判定部42は、当該変化量がしきい値以下である場合、信号を出力しない。
【0044】
モータ制御部43は、判定部42の判定結果に基づいて、モータ311を制御する。モータ制御部43は、順回転信号を受けた場合、モータ311を順方向に所定量回転する。モータ制御部43は、逆回転信号を受けた場合、モータ311を逆方向に所定量回転する。
【0045】
図3は、図1に示す支援装置100による閉眼開眼支援処理の一例を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS301において、センサ2は、検出を開始する。すなわち、センサ2は、所定時間間隔で、発光部21から例えば赤外線を出射し、装着者Pの目尻において反射された赤外線を受光部22によって受光し、受光した光の強度に応じた信号を検出信号として出力する。
【0047】
ステップS302において、解析部41は、検出信号の時間微分を行う。すなわち、解析部41は、センサ2から受けた検出信号の大きさと、当該検出信号を受けた時刻から所定時間経過した時刻における検出信号の大きさとの差分を、検出信号の変化量として算出する。なお、解析部41は、センサ2から所定時間間隔で検出信号を受ける場合、センサ2から受けた検出信号の大きさと、当該検出信号の次に受けた検出信号の大きさとの差分を算出してもよい。
【0048】
ステップS303において、判定部42は、解析部41によって算出された変化量がしきい値を超えるか否かを判定する。
【0049】
変化量がしきい値を超えない場合、処理はステップS307に進む。
【0050】
変化量がしきい値を超えた場合、ステップS304において、判定部42は、変化量が正であるか負であるかを判定する。
【0051】
変化量が正である場合、ステップS305において、モータ制御部43は、モータ311を順方向に所定量回転する。変化量が負である場合、ステップS306において、モータ制御部43は、モータ311を逆方向に所定量回転する。
【0052】
ステップS307において、支援装置100の装着が継続される場合、処理は、ステップS303に戻る。支援装置100の装着が継続されない場合、処理は、終了する。
【0053】
図4は、図1に示すプーリ機構3を拡大して示す図である。なお、ここでは、説明に必要な構成のみを模式的に示し、モータやワイヤガイドなどの図示は省略している。
【0054】
支持部34の端部34a(第1端部)は、プーリ32aに固定され、支持部34の端部34b(第2端部)は、プーリ32bに固定されている。図示した例では、駆動プーリ312とプーリ32aとは、平行掛けのワイヤ33aによって連結されている。一方、駆動プーリ312とプーリ32bとは、十字掛けのワイヤ33bによって連結されている。これにより、プーリ32aは、駆動プーリ312と同方向に回転され、プーリ32bは、駆動プーリ312と逆方向に回転される。
【0055】
支持部34は、端部34aと端部34bとがプーリ32a及び32bの回転にそれぞれ従って互いに反対方向に回転されることで、変形される。支持部34は、左右対称に変形されることが望ましい。すなわち、プーリ32a側の変形の大きさとプーリ32b側の変形の大きさとは、等しくなることが望ましい。したがって、一例では、プーリ32aの直径(第1直径)D1とプーリ32bの直径(第2直径)D2とは、ほぼ等しい。
【0056】
なお、直径D1と直径D2とは、異なっていてもよい。プーリ32a及び32bは、その回転の大きさが駆動プーリ312とプーリ32aとの距離、及び駆動プーリ312とプーリ32bとの距離にそれぞれ依存するように回転することができる。したがって、直径D1と直径D2とが異なる場合、駆動プーリ312とプーリ32aとの距離、及び駆動プーリ312とプーリ32bとの距離の少なくとも一方を調整することにより、プーリ32a及び32bの回転の大きさを等しくすることができる。
【0057】
駆動プーリ312の直径(第3直径)D3は、直径D1及びD2と異なっていてもよい。一例では、直径D3は、直径D1及びD2より大きい。ここで、直径D1は、ワイヤ33aと接する面によって規定され、直径D2は、ワイヤ33bと接する面によって規定され、直径D3は、ワイヤ33a及び33bの少なくとも一方と接する面によって規定される。
【0058】
本実施形態において、端部34aの回転軸(第1回転軸)、すなわちプーリ32aの回転軸AXaと端部34bの回転軸(第2回転軸)、すなわちプーリ32bの回転軸AXbとは、同一直線上に位置していない。また、回転軸AXaと回転軸AXbとは、支持部34の延出方向とも一致していない。図示した例では、回転軸AXa、AXb、及び駆動プーリ312の回転軸AXcは、フレーム1の主部11とも交差している。なお、ここでは便宜的に回転軸AXa、AXb、及びAXcは、ほぼ平行になるように示しているが、回転軸AXa、AXb、及びAXcの配置はこれに限定されない。回転軸AXa、AXb、及びAXcは、交差していてもよい。
【0059】
次に、図4を参照して、プーリ機構3の動作について説明する。実線で示す支持部34の状態(初期状態)において、装着者Pの眼瞼は、開いている。初期状態において、駆動プーリ312は、図中の矢印のA方向(装着者Pに向かって反時計回り)に回転される。プーリ32aは、駆動プーリ312と同様にA方向に回転される。一方、プーリ32bは、駆動プーリ312と反対方向、すなわち図中の矢印のB方向(装着者Pに向かって時計回り)に回転される。端部34aと端部34bとは、プーリ32a及び32bにそれぞれ従って、互いに反対方向に回転される。これにより、支持部34は、図において二点鎖線で示すように、ねじれながら変形される。このとき、装着者Pの眼瞼は、支持部34の変形に伴って閉じられる。その後、駆動プーリ312がB方向に回転されると、プーリ32aはB方向に回転され、プーリ32bはA方向に回転される。装着者Pの眼瞼は、支持部34が初期状態に復帰することで開かれる。
【0060】
図5は、プーリ機構3が備える支持部34を拡大して示す図である。図5(a)は、支持部34の側面図を示し、図5(b)は、支持部34の平面図を示している。
【0061】
支持部34は、端部34a及び34bと、端部34aと端部34bとの間に位置する基部34cとを有している。基部34cは、例えばシリコーン樹脂によって形成されている。このため、支持部34は、装着者Pの例えば眼球などの柔軟組織に対してストレスを加えない程度の柔軟性及び可撓性を有する。端部34a及び34bは、図において斜線を付した領域に相当する。端部34a及び34bは、例えばシリコンやシリコンハイドロゲルによって形成されており、基部34cより高い剛性を有している。したがって、プーリ32a及び32bが回転された場合、支持部34のうち主に基部34cが変形される。
【0062】
図5(a)に示すように、支持部34は、一例では、略W字状である。すなわち、支持部34は、端部34aの近傍において屈曲部(第1屈曲部)B1を有し、端部34bの近傍において、屈曲部(第2屈曲部)B2を有している。さらに、支持部34は、屈曲部B1と屈曲部B2との間において、弓状に湾曲している。
【0063】
また、図5(b)に示すように、支持部34は、略中央に凸部CVを有している。支援装置100が装着された状態において、凸部CVは、装着者Pへ向かって突出しており、装着者Pの眼瞼の皮膚と接せられる。一例では、凸部CVの厚さTCVは、基部34cの厚さT34cより大きい。
【0064】
図6は、支援装置100が装着された状態における支持部34と回転軸AXa及びAXbの配置とを示す図である。図6は、装着者Pの頭頂部側から見た平面図である。
【0065】
支援装置100が装着された状態において、支持部34は、装着者Pの顔面(又は眼球)に沿って湾曲されている。したがって、回転軸AXaと回転軸AXbとは、交差している。回転軸AXaと回転軸AXbとがなす角度θは、0度より大きく90度以下、より好ましくは、30度以上70度以下である。このような構成にすることで、支持部34と眼瞼との密着性が向上する。
【0066】
図7は、支援装置100が装着された状態における支持部34と装着者Pの患側の眼瞼とを模式的に示す図である。図7は、装着者Pの患側の眼球を通り、装着者Pの頭部の縦方向(頭頂部と顎とを結ぶ方向)に沿った断面図である。
【0067】
図において実線で示すように、装着者Pの眼瞼ELが開いている状態において、支持部34の凸部CVは、装着者Pの眼瞼ELの皮膚と接している。このとき、凸部CVは、装着者Pの眼球へ向かう方向に付勢されている。凸部CVと装着者Pとの間には、粘着テープや接着剤などは介在していない。
【0068】
図4を参照して説明したように、駆動プーリ312がA方向へ回転され、端部34a及び34bが互いに反対方向へ回転すると、支持部34は、ねじれながら変形される。支持部34の変形に伴って、凸部CVは、図7において二点鎖線で示すように、下方へ移動する。このとき、凸部CVは、装着者Pの眼球へ向かう方向に付勢されたままである。したがって、装着者Pの眼瞼は、凸部CVと装着者Pの皮膚との間で生じる摩擦力によって凸部CVとともに下方へ移動される。これにより、装着者Pの眼瞼が閉じられる。
【0069】
同様に、図4を参照して説明したように、駆動プーリ312がB方向へ回転され、端部34a及び34bが互いに反対方向へ回転すると、支持部34は、初期状態へ復帰する。支持部34の復帰に伴って、凸部CVは、図7において実線で示すように、上方へ移動する。このとき、凸部CVは、装着者Pの眼球へ向かう方向に付勢されたままである。したがって、装着者Pの眼瞼は、凸部CVと装着者Pの皮膚との間で生じる摩擦力によって凸部CVとともに上方へ移動される。これにより、装着者Pの眼瞼が開けられる。
【0070】
本実施形態によれば、眼瞼を支持する支持部34は、例えばシリコーン樹脂等の柔軟性及び可撓性を有する材料によって形成されている。したがって、例えば眼球のような柔軟な生体組織に対してストレスを与えることなく、眼瞼を支持することができる。
【0071】
また、プーリ機構3は、支持部34の端部34aと端部34bとの双方において回転の作用点を有している。したがって、例えばプーリ32aの直径D1とプーリ32bの直径D2を等しくすることで、支持部34が柔軟性を有する場合であっても、支持部34のプーリ32a側の変形の大きさとプーリ32b側の変形の大きさとを揃えることが可能である。すなわち、ほぼ左右対称に支持部34を変形することができ、より自然な閉眼開眼動作が実現される。
【0072】
さらに、端部34aの回転軸AXaと端部34bの回転軸AXbとは同一直線上に位置していない。この構成において端部34aと端部34bとを互いに反対側に回転することで、支持部34は、端部34a及び34bの回転方向と異なる方向に変形される。このような変形を利用することで、支持部34の形状によらず、支持部34を装着者Pの眼球へ向かって付勢することができる。この結果、眼球が複雑な曲面を有する形状、すなわち一軸の回転体によって表すことが困難な三次元形状であっても、この眼球に沿って支持部34を動かすことができる。この結果、装着者Pの眼瞼を、眼球に沿って動かすことができる。
【0073】
また、支持部34が装着者Pの眼球へ向かって付勢されているため、支持部34と装着者Pの皮膚との間の摩擦力によって装着者Pの眼瞼を支持部34とともに動かすことができる。すなわち、支持部34と装着者Pの皮膚との間に粘着剤を介在する必要がない。このため、支援装置100の着脱を容易にすることができる。
【0074】
さらに、支持部34は、端部34a及び34bに固定されたプーリ32a及び32bの双方を駆動プーリ312に従動させることで、1つのモータ311の動力で変形されている。換言すると、上記の構成を用いることで、複雑な三次元形状に沿った運動を単純な1軸の回転運動の動力を用いて実現することができる。したがって、複数のモータを必要とすることがなく、支援装置100の軽量化及び小型化が実現される。このような支援装置100は、日常生活への導入が容易であるとともに、リハビリテーションにも好適である。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、柔軟で複雑な形状を有する生体組織に沿った動作の支援ができ、且つ、着脱が容易な支援装置を提供することができる。
【0076】
なお、支持部34の形状は、適宜に変更することができる。換言すると、支持部34の形状を調整することで、所望の形状に沿った支持部34の変形を実現することができる。したがって、プーリ機構3のうち駆動部31、プーリ32a及び32bを変えることなく、支持部34の形状を変更することで、個々人の眼球の形状に最適化した閉眼開眼動作の支援が可能である。さらには、支持部34の形状を変更することで、眼球だけでなく他の生体組織に対しても同様の機構を適用することが可能である。
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る支援装置100を概略的に示す図である。第2実施形態は、支援装置100が装着者Pの頸部に装着されている点で、第1実施形態と相違している。第2実施形態に係る支援装置100は、一例では、チョーカー型であり、装着者Pの頸部における動作を支援する。ここでは、装着者Pの随意嚥下を支援する場合を例として説明する。
【0077】
支援装置100は、フレーム1と、センサ2と、プーリ機構3と、制御部4と、バッテリ5とを備えている。
【0078】
フレーム1は、略環状に形成され、例えば装着者Pの頸部後方から外嵌される。フレーム1は、復元力を有した弾性部材、例えば、硬質ウレタンゴムなどで成形されている。
【0079】
センサ2は、一対の電極23a及び23bと、ケーブル24とを備えている。電極23a及び23bは、装着者Pの例えば舌骨上筋群、舌骨下筋群及び咬筋のいずれかの上の皮膚に貼付される。センサ2は、例えば電極23aに対して電流を供給し、電極23bを介して電圧を測定する。これにより、生体電位が検出される。センサ2は、検出された生体電位に基づいて、検出信号を出力する。
【0080】
プーリ機構3は、フレーム1に固定され、装着者Pの頸部の前方に配置される。プーリ機構3は、駆動部31、プーリ32a及び32b、ワイヤ33a及び33b、及び支持部34を備えている。支持部34は、装着者Pの頸部の皮膚と接している。具体的には、支持部34は、2つの凸部CV1及びCV2を有し、凸部CV1と凸部CV2とによって、装着者Pの甲状軟骨TCを挟持している。なお、図示した例では、支持部34は、2つの凸部CV1及びCV2を有しているが、凸部の数は、図示した例に限定されない。すなわち、支持部34は、甲状軟骨TCを挟持できればよく、3つ以上の凸部を有していてもよいし、1つの凸部を有していてもよい。
【0081】
制御部4は、センサ2から出力された検出信号に基づいて、駆動部31を制御する。例えば、制御部4は、検出信号がしきい値を超えた場合に、例えば装着者Pによる随意嚥下が開始されると判断し、駆動部31を駆動する。
【0082】
なお、センサ2は、省略されてもよい。支援装置100は、センサ2に代わって入力部を備えていてもよい。この場合、制御部4は、装着者P又は医師等による入力部を介した入力操作に基づいて、駆動部31を駆動してもよい。
【0083】
第1実施形態において説明したように、柔軟性及び可撓性を有する支持部34の端部34a及び34bが互いに反対方向に回転されると、支持部34は、ねじれながら変形される。このとき、支持部34は、装着者Pの頸部に向かって付勢されたままである。例えば、支持部34が図示した状態から上方(頭頂部側)へ向かうように変形されると、装着者Pの甲状軟骨TCは、凸部CV1及びCV2によって挟持されたまま、拳上される。この甲状軟骨TCの拳上に伴って装着者Pの舌骨が拳上されることで、装着者Pの嚥下動作の支援が実現される。このように、プーリ機構3を頸部に適用することで、本実施形態においても装着者Pの頸部の形状に沿って甲状軟骨を動かすことが可能である。したがって、頸部に対してストレスを与えることなく、嚥下動作を支援することができる。
【0084】
以上のように、第2実施形態においても、柔軟で複雑な形状を有する生体組織に沿った動作の支援ができ、且つ、着脱が容易な支援装置を提供することができる。
【0085】
以上、本発明の支援装置について、第1及び第2実施形態によって説明したが、これらの実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1…フレーム、11…主部、12a,12b…側部、2…センサ、21…発光部、22…受光部、23a,23b…電極、3…プーリ機構、31…駆動部、311…モータ、312…駆動プーリ、32a,32b…プーリ、33a,33b…ワイヤ、34…支持部、34a,34b…端部、34c…基部、4…制御部、41…解析部、42…判定部、43…モータ制御部、44…モード切り替え部、5…バッテリ、6…メモリ、100…支援装置、B1,B2…屈曲部、CV,CV1,CV2…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8