IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能瀬精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-固形潤滑剤及び転がり軸受 図1
  • 特許-固形潤滑剤及び転がり軸受 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】固形潤滑剤及び転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   C10M 143/02 20060101AFI20220222BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20220222BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20220222BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220222BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220222BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
C10M143/02
F16C33/66 A
C10N50:10
C10N20:00 C
C10N30:00 Z
C10N40:02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020101236
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195412
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303018012
【氏名又は名称】能瀬精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】能瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】余頃 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】朴 亮潤
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/029510(WO,A1)
【文献】特開平08-283494(JP,A)
【文献】特開2002-138196(JP,A)
【文献】特開2013-234270(JP,A)
【文献】特開2016-069508(JP,A)
【文献】特開2018-168221(JP,A)
【文献】特開2019-044045(JP,A)
【文献】特開2019-157082(JP,A)
【文献】国際公開第2004/046285(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/101718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00-80/00
F16C 33/66
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油に増ちょう剤が添加されたグリースと、
超高分子量ポリエチレンと、
低密度ポリエチレンとを含み、
当該低密度ポリエチレンのMFR値は1.5g/10min以上75g/10min以下であり、
当該低密度ポリエチレンの含有量は、重量%以上10重量%以下である固形潤滑剤。
【請求項2】
基油に増ちょう剤が添加されたグリースと、
超高分子量ポリエチレンと、
低密度ポリエチレンとを含み、
当該低密度ポリエチレンのMFR値は20g/10min以上75g/10min以下であり、
当該低密度ポリエチレンの含有量は、4重量%以上11重量%以下である固形潤滑剤。
【請求項3】
上記低密度ポリエチレンのMFR値は1.5g/10min以上7g/10min以下である請求項1に記載の固形潤滑剤。
【請求項4】
上記低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m以上920kg/m以下である請求項1または2に記載の固形潤滑剤。
【請求項5】
上記低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m 以上920kg/m 以下であり、上記低密度ポリエチレンの含有量は、7重量%以上10重量%以下である請求項に記載の固形潤滑剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の固形潤滑剤が封入された転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受の潤滑に供される固形潤滑剤並びにこれが組み込まれた転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の摩擦・摩耗の低減、疲れ寿命の延長並びに冷却を目的として一般にグリース等の潤滑剤が使用される。潤滑剤としてのグリースは、定期的な再給脂が必要であるうえ、運転中に飛散しやすく、周辺を汚損するおそれがある。そのため、従来、グリースに超高分子量ポリオレフィンが混合され、熱処理により成形される固形潤滑剤が提供されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。この固形潤滑剤は、潤滑機能を奏する基油が徐々にしみ出すように構成されており、これにより、運転中の基油の飛散がある程度抑制されると共に、一定の寿命が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-157082号公報
【文献】特開2019-44045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転がり軸受の使用環境によっては、運転時の発熱が原因となって、固形潤滑剤が一定温度に達すると基油が多量にしみ出して飛散する場合がある。この不具合を避けるために、転がり軸受の性能、すなわち使用環境温度や許容回転数が制限を受けることがあった。
【0005】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、使用環境温度に起因する基油漏れを防ぎ、安定した潤滑を実現する安価な固形潤滑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る固形潤滑剤は、基油に増ちょう剤が添加されたグリースと、超高分子量ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む。この低密度ポリエチレンのMFR値は1.5g/10min以上75g/10min以下であり、当該低密度ポリエチレンの含有量は、重量%以上10重量%以下である。
【0007】
本明細書において、超高分子量ポリエチレンとは、分子量が100万以上であるポリエチレンをいう。低密度ポリエチレンとは、物性値としての密度が約930kg/m 未満であるポリエチレンをいう。低密度ポリエチレンの含有量が4重量%以上11重量%以下に設定されることにより、この固形潤滑剤が軸受用として使用された場合、運転中の十分な潤滑が維持されつつ基油の漏れが確実に防止される。
【0008】
(2) 本発明に係る固形潤滑剤は、基油に増ちょう剤が添加されたグリースと、超高分子量ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む。この低密度ポリエチレンのMFR(melt flow rate)値は20g/10min以上75g/10min以下であり、当該低密度ポリエチレンの含有量は、4重量%以上11重量%以下である。
【0009】
(3) 上記低密度ポリエチレンのMFR値は1.5g/10min以上7g/10min以下であるのが好ましい。
【0010】
(4) 上記低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m以上920kg/m以下であってもよい。
【0011】
(5) 上記低密度ポリエチレンの密度は、910kg/m 以上920kg/m 以下であり、上記低密度ポリエチレンの含有量は、7重量%以上10重量%以下であるのが好ましい。
【0012】
(6) 上記固形潤滑剤が封入された転がり軸受が提供され得る。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る固形潤滑剤が軸受に使用されたとき、基油漏れが防止されつつ安定した潤滑も実現される。しかも、かかる効果は、低密度ポリエチレンの含有量が調整されることにより達成されるので、軸受がコスト安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るニードルベアリング10の横断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るニードルベアリング10の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る転がり軸受の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0016】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係るニードルベアリング10の横断面図及び縦断面図である。ニードルベアリング10は、特許請求の範囲に記載された「転がり軸受」に相当する。
【0017】
[ニードルベアリング10の概略構成]
【0018】
このニードルベアリング10は、外輪11と、保持器12と、複数のニードル13と、固形潤滑剤14とを備える。本実施形態に係るニードルベアリング10の特徴とするところは、後に詳述される固形潤滑剤の組成である。外輪11、保持器12及びニードル13は、既知の構造である。
【0019】
外輪11は、たとえば高炭素クロム軸受鋼からなり、扁平な円筒状を呈する。もっとも、外輪11を構成する材料は、特に限定されるものではなく、ステンレス鋼その他の金属材料も採用され得る。本明細書では、外輪11の中心軸に沿う方向が「軸方向」と定義され、中心軸周りの方向が「周方向」と定義され、以下、そのように記載される。
【0020】
保持器12は、たとえば鋼板からなる。もっとも、保持器12を構成する材料は、鋼板に代えて、ポリアセタール、ポリアミド、フッ素樹脂等も採用され、その場合、一般にガラス繊維や炭素繊維で強化される。保持器12は、外輪11よりも直径が小さい扁平な円筒状を呈し、外輪11の内側に当該外輪11と同軸上に配置される。保持器12は複数の保持部22を備えている。各保持部22は、周方向に沿って等間隔で配置されており、各保持部22にニードル13が収容保持される。ニードル13の内側に不図示の回転軸が挿通される。
【0021】
保持器12を包むように固形潤滑剤14が配置されている。換言すれば、固形潤滑剤14に保持器12が埋設されており、両者が外輪11の内側に嵌め込まれた状態となっている。この状態で、各ニードル13の周面の一部が露出しており、このニードル13に支持されるように上記回転軸が配置されるようになっている
【0022】
ニードル13は、たとえば高炭素クロム軸受鋼からなり、円柱状を呈する。前述のように、保持器12の各保持部22にそれぞれニードル13が配置されている。すなわち、複数のニードル13は、周方向において等間隔で互いに離間して配置されており、本実施形態では、10本のニードル13が保持器12に保持されている。
【0023】
[固形潤滑剤]
【0024】
固形潤滑剤14は、保持器12と共に外輪11の内側に嵌め込まれている。すなわち、固形潤滑剤14は、周方向において保持器12の全周に亘って存在しており、保持器12に保持された全てのニードル13と接触している。固形潤滑剤14に含まれる基油は、各ニードル13にそれぞれ付着する。ニードル13に付着した基油は、保持器12とニードル13との間に生じる摩擦、及びニードル13と上記回転軸との間に生じる摩擦を低減する。
【0025】
固形潤滑剤14は、グリースと樹脂成分との混合物であり、これが焼成され固形化された潤滑剤である。グリースは、既知の成分からなり、基油に増ちょう剤を添加して生成されている。
【0026】
基油は、たとえば、鉱油、エステル系あるいはエーテル系の合成油のほか、合成炭化水素油、シリコン油、フッ素油その他の合成油、並びにこれらの混合油などである。
【0027】
増ちょう剤としては、たとえば、金属石けん及び複合金属石けんなどの石けん系の増ちょう剤や、ベントン、シリカゲル、及びウレア化合物などの非石けん系の増ちょう剤などである。増ちょう剤は、基油を半固形状にする。
【0028】
グリースを固形化する樹脂成分として、超高分子量ポリエチレンが採用されている。前述のように、超高分子量ポリエチレンとは、分子量が100万以上のポリエチレンを意味する。
【0029】
本実施形態では、固形潤滑剤14に低密度ポリエチレンが添加されている。低密度ポリエチレンは、固形潤滑剤14からの基油の染み出しを抑制する染み出し抑制剤として機能する。詳しく説明すると、転がり軸受10の良好な潤滑のために、基油が固形潤滑剤14から染み出す必要がある。しかし、固形潤滑剤14からの基油の染み出し量が多すぎると、回転するニードル13及び上記回転軸によって、ニードル13に付着した基油が保持器12から漏れ出したり、飛散したりするおそれがある。その結果、固形潤滑剤14からの基油の染み出し期間が短くなり、いわゆる固形潤滑剤14の寿命が短くなる。そのため、固形潤滑剤14からの基油の染み出しを抑制する染み出し抑制剤として、低密度ポリエチレンが採用されている。本明細書において、低密度ポリエチレンとは、密度が約910kg/m 以上約930kg/m 未満であるポリエチレンを意味する。
【0030】
低密度ポリエチレンの添加量が少なすぎる場合や、あるいは添加される低密度ポリエチレンの種類によっては、固形潤滑剤14からの基油の染み出し量が十分に抑制されず、基油の漏れや飛散が生じる。一方、低密度ポリエチレンの添加量が多すぎる場合や、あるいは添加する低密度ポリエチレンの種類によって、固形潤滑剤14からの基油の染み出し量が少なくなり過ぎたり、固形潤滑剤14が硬くなり過ぎたりして、十分な潤滑機能が奏されない場合がある。さらに、低密度ポリエチレンの添加量が多くなれば、ニードルベアリング10の製造コストが増大する。
【0031】
本実施形態では、低密度ポリエチレンの含有量は、固形潤滑剤14の4重量%以上11重量%以下の範囲内である。これにより、固形潤滑剤14から染み出した基油が漏れたり飛散したりせず、しかも、ニードル13や上記回転軸の回転に支障を生じさせないために十分な量の基油が、環境温度に拘わらず固形潤滑剤14から染み出す。つまり、上記固形潤滑剤14が封入されたニードルベアリング10は、基油が漏れ出たり飛散したりせず、かつ環境温度に拘わらず良好な潤滑状態で上記回転軸を支持する。
【0032】
固形潤滑剤14から染み出す基油の量をさらに適切なものにするため、低密度ポリエチレンの密度がより適切な範囲に設定され得る。低密度ポリエチレンのより適切な密度の範囲は、910kg/m以上920kg/m以下である。すなわち、低密度ポリエチレンの密度をもって、固形潤滑剤14に添加される低密度ポリエチレンの種類が特定される。
【0033】
また、低密度ポリエチレンのMFR (melt flow rate:JIS K 7210-1 )をもって、固形潤滑剤14に添加される低密度ポリエチレンの種類が特定されてもよい。固形潤滑剤14に添加される低密度ポリエチレンのMFRが20g/10min以上75g/10min以下の場合、低密度ポリエチレンの添加量は、4重量%以上11重量%以下であるのが好ましい。固形潤滑剤14に添加される低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/10min以上7g/10min以下である場合、低密度ポリエチレンの添加量は、7重量%以上10重量%以下であるのが好ましい。
【0034】
[実施例]
【0035】
以下、低密度ポリエチレンの種類を変えた場合における基油の漏れを目視で確認した試験結果について説明する。
【0036】
試験条件は次のとおりである。ニードルベアリング10の型番は「NK30/20」が採用される。型番「NK30/20」のニードルベアリング10は、直径が30mmの回転軸(供試軸)に用いられるニードルベアリングである。供試軸の回転数は「1200rpm」、試験時間(運転時間)は「21時間」、供試軸への負荷荷重は「5.5kN」である。
【0037】
表1は、低密度ポリエチレンのMFRが「1.5」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0038】
表2は、低密度ポリエチレンのMFRが「7」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0039】
表3は、低密度ポリエチレンのMFRが「20」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0040】
表4は、低密度ポリエチレンのMFRが「75」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表1から表4が示すように、低密度ポリエチレンのMFRが、20g/10min以上75g/10min以下の範囲内であって、且つ低密度ポリエチレンの添加量が4重量%以上11重量%以下である場合には、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。また、低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/10min以上7g/10min以下の範囲内であって、且つ低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下である場合には、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。
【0046】
ここで、低密度ポリエチレンのMFR及び密度について説明する。本実施例では、MFRが1.5である低密度ポリエチレンの密度は、910kg/mであり、MFRが75である低密度ポリエチレンの密度は、920kg/mである。すなわち、低密度ポリエチレンの密度が910kg/m以上920kg/m以下の範囲内であり、且つ低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下である場合には、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。
【0047】
なお、本実施例では、低密度ポリエチレンとして、住友精化株式会社の「フローセン(登録商標)が使用されている。また、超高分子量ポリエチレンとして、三井化学株式会社の「ミペロン」(登録商標)が使用されている。以下の表5から表8が示す試験結果についても同様である。
【0048】
表5から表8は、表1から表4に示される試験の対比試験の結果である。すなわち、表5から表8は、ニードルベアリング10の種類並びに上記供試軸の回転数及び負荷荷重を変更して、同様の試験を行った場合の結果を示している。
【0049】
試験条件は次のとおりである。ニードルベアリング10の型番は「NK12/12」が採用される。型番「NK12/12」のニードルベアリング10は、直径が12mmの供試軸に用いられるニードルベアリングである。供試軸の回転数は「2500rpm」、試験時間(運転時間)は「21時間」、供試軸への負荷荷重は「0.5kN」である。
【0050】
表5は、低密度ポリエチレンのMFRが「1.5」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0051】
表6は、低密度ポリエチレンのMFRが「7」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0052】
表7は、低密度ポリエチレンのMFRが「20」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0053】
表8は、低密度ポリエチレンのMFRが「75」、低密度ポリエチレンの重量%を変更した試験結果を示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
表5から表8が示すように、低密度ポリエチレンのMFRが、20g/10min以上75g/10minの範囲内であって、且つ低密度ポリエチレンの添加量が4重量%以上11重量%以下である場合には、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。また、低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/10min以上7g/10min以下の範囲内であって、且つ低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下である場合には、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。
【0059】
また、低密度ポリエチレンの密度が910kg/m以上920kg/m以下の範囲内であって、低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下である場合、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。
【0060】
表1から表8が示す試験結果から、直径が8mmの上記回転軸を支持するニードルベアリング10であっても、直径が30mmの上記回転軸を支持するニードルベアリング10であっても、低密度ポリエチレンを適切に添加することにより、基油が漏れたり飛散したりすることなく良好に上記回転軸が回転することが確認された。
【0061】
[実施形態の作用効果]
【0062】
固形潤滑剤14に添加される低密度ポリエチレンが4重量%以上11重量%以下の範囲内とされることにより、上記回転軸の直径に拘わりなく、運転中の十分な潤滑が維持されつつ基油の漏れや飛散が防止される。基油の漏れや飛散が防止されるので、環境温度による使用の制限が緩和される。
【0063】
また、低密度ポリエチレンのMFRが、20g/10min以上75g/10min以下の範囲内とされ、且つ低密度ポリエチレンの添加量が4重量%以上11重量%以下の範囲内とされることにより、あるいは低密度ポリエチレンのMFRが1.5g/10min以上7g/10min以下の範囲内とされ、且つ低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下の範囲内とされることにより、上記回転軸の直径に拘わりなく、運転中の十分な潤滑が維持されつつ基油の漏れや飛散が防止される。
【0064】
一方、低密度ポリエチレンの密度が910kg/m以上920kg/m以下の範囲内とされることにより、さらに好ましくは、低密度ポリエチレンの添加量が7重量%以上10重量%以下の範囲内とされることにより、上記回転軸の直径に拘わりなく、運転中の十分な潤滑が維持されつつ基油の漏れや飛散が防止される。
【0065】
[変形例]
【0066】
低密度ポリエチレンに加え、ポリオレフィンやオレフィンオリゴマーなどが固形潤滑剤14に添加されていてもよい。なお、本実施形態及び変形例では、上記固形潤滑剤14はニードルベアリング10に適用されているが、これに限定されるものではなく、軸受一般並びにその他の機械要素あるいはデバイスの摺動部分にも適用される得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10・・・ニードルベアリング
11・・・外輪
12・・・保持器
13・・・ニードル
14・・・固形潤滑剤
22・・・保持部
図1
図2