IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山田 みゆきの特許一覧

<>
  • 特許-車両用タイヤのトレッド部 図1
  • 特許-車両用タイヤのトレッド部 図2
  • 特許-車両用タイヤのトレッド部 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車両用タイヤのトレッド部
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B60C11/13 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021103031
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521272621
【氏名又は名称】山田 みゆき
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】山田 みゆき
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/059640(WO,A1)
【文献】特開2004-034903(JP,A)
【文献】特開2013-136346(JP,A)
【文献】特公昭52-042961(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0094356(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0250988(US,A1)
【文献】特表2008-528370(JP,A)
【文献】特開平07-232514(JP,A)
【文献】特開2017-197149(JP,A)
【文献】特開平08-169212(JP,A)
【文献】特開2018-203184(JP,A)
【文献】特開2013-199161(JP,A)
【文献】特開平03-189213(JP,A)
【文献】米国特許第05529101(US,A)
【文献】特開2007-055479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び当該中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備え、
前記周方向吸水帯が、タイヤの周方向に刻設された環状溝内に密集して突設配置された複数の線状突起であり、
前記周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの前記周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝を前記タイヤの周方向に連続して設け、
前記周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けて前記トレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、前記タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設けた、
ことを特徴とするタイヤのトレッド部。
【請求項2】
タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び当該中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備え、
前記周方向吸水帯が、タイヤ正面から見てひし形又は格子型を形成するよう所定間隔で複数刻設された細溝によって形成され、
前記周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの前記周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝を前記タイヤの周方向に連続して設け、
前記周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けて前記トレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、前記タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設けた、
ことを特徴とするタイヤのトレッド部。
【請求項3】
前記傾斜溝の配置間隔よりも前記幅方向溝の配置間隔を狭いものとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤのトレッド部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常走行時及び雪道の走行時においても対応可能な車両用タイヤのトレッド部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤと路面との接触により生じる課題を解決するために、従来より様々な形状や模様が付された車両用タイヤのトレッド部が公知となっている。特に雪道を走行する場合には、タイヤと路面との間に水の膜が生じたり、トレッド部に形成された溝に雪が詰まるなどして車両走行中にスリップ事故が生じるなどの問題があった。そのため、特許文献1に示す如く、雪道を走行する際の問題を解消することを目的とした特殊な形状のトレッド部を備えたスタッドレスタイヤが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-67345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スタッドレスタイヤは雪道を走行するために開発されたものであるから、雪道ではない乾燥した道路を走行する際には、その材料の特殊性やトレッド部の特殊な形状が、走行性能の低下や燃費の低下を引き起こすなど、車両が持つ能力の発揮の支障となる場合があるため、冬以外は通常のタイヤに交換する必要があった。そのため、冬用と冬用以外のタイヤを購入しなければならずコストが高くつくとともに、タイヤ交換等に手間がかかるものとなっていた。
【0005】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、雪道及び通常の道路状況に対応可能なトレッド部であって、冬以外でも通年使用可能な車両用のタイヤを実現可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0007】
第1の特徴に係るタイヤのトレッド部は、タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備え、周方向吸水帯が、タイヤの周方向に刻設された環状溝内に密集して突設配置された複数の線状突起であり、周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝を前記タイヤの周方向に連続して設け、周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けてトレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設ける。
【0008】
第1の特徴に係る発明によれば、タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備えることで、周方向に連続して環状に形成した帯状の三本の周方向吸水帯を用いて雪解け水や雨水を吸収することができる。そのため、グリップ力を不必要に強めることなく、耐スリップ性を向上させることができる。
【0009】
また、周方向吸水帯が、タイヤの周方向に刻設された環状溝内に密集して突設配置された複数の線状突起によって形成されるため、路面とトレッド部との間における水を各環状溝内に効果的に捕集することが可能となる。
【0010】
また、周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝をタイヤの周方向に連続して設けたため、模様溝によってグリップ力の向上を図ることができるとともに、二本の周方向吸水帯同士の間隔に存在する水を、模様溝を介して周方向吸水帯に吸収させることができる。このように、グリップ力と吸水性能の両立を図ることができ、水の層が生じた路面でもスリップを起こしにくく安全な運転を行うことができる。
【0011】
さらに、周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けてトレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設けたため、内側吸水帯及び外側吸水帯によって吸収した水を効果的に幅方向端部からタイヤ外へ排出することができる。
【0012】
第2の特徴に係るタイヤのトレッド部は、タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備え、周方向吸水帯が、タイヤ正面から見てひし形又は格子型を形成するよう所定間隔で複数刻設された細溝によって形成され、周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝をタイヤの周方向に連続して設け、周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けてトレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設ける。
【0013】
第2の特徴に係る発明によれば、タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ連続して環状に形成した帯状の周方向吸水帯を備えることで、周方向に連続して環状に形成した帯状の三本の周方向吸水帯を用いて雪解け水や雨水を吸収することができる。そのため、グリップ力を不必要に強めることなく、耐スリップ性を向上させることができる。
【0014】
また、周方向吸水帯が、タイヤの周方向に連続的に刻設された格子型又はひし形の細溝によって構成されるため、路面とトレッド部との間における水を細溝を用いて効果的に捕集することが可能となる。
【0015】
また、周方向吸水帯同士の間隔において、幅方向端部が二つの周方向吸水帯の両方に連通する1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型である模様溝をタイヤの周方向に連続して設けたため、模様溝によってグリップ力の向上を図ることができるとともに、二本の周方向吸水帯同士の間隔に存在する水を、模様溝を介して周方向吸水帯に吸収させることができる。このように、グリップ力と吸水性能の両立を図ることができ、水の層が生じた路面でもスリップを起こしにくく安全な運転を行うことができる。
【0016】
さらに、周方向吸水帯のうちタイヤの幅方向内側に位置する内側吸水帯からタイヤの内側端部に向けてトレッド部の幅方向に伸びる幅方向溝を、配置間隔を介して複数個設けるとともに、タイヤの幅方向外側に位置する外側吸水帯からタイヤの外側端部に向けて、その外側吸水帯側の一端を路面先着側に配置するとともに他端側を路面後着側に配して成る傾斜溝を、配置間隔を介して複数個設けたため、内側吸水帯及び外側吸水帯によって吸収した水を効果的に幅方向端部からタイヤ外へ排出することができる。
【0017】
第3の特徴に係るタイヤのトレッド部は、第1又は第2の特徴に係る発明であって、傾斜溝の配置間隔よりも幅方向溝の配置間隔を狭いものとした。
【0018】
第3の特徴に係る発明によれば、傾斜溝の配置間隔よりも幅方向溝の配置間隔を狭いものとしたため、内側吸水帯及び外側吸水帯によって吸収した水を効果的に幅方向端部からタイヤ外へ排出することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トレッドパターンを形成するのみでタイヤの材質等を変更する必要がなく、雪道や雨に濡れた路面上を走行する際もトレッド部における撥水性及びグリップ力を良好に発揮することができるため、雪道のみならず雪道以外の路面での走行を安全に行うことが可能となり、季節や路面状況を問わず一年中使用可能なタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施例1を示す部分拡大正面図である。
図2図2は、図1のA-A線部分拡大断面図である。
図3図3は、本発明の実施例2を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【実施例1】
【0022】
本願発明の実施例1を図1、2に於いて説明すると、タイヤのトレッド部1において、当該トレッド部1の幅方向中央部に帯状の中央環状溝4を設けるとともに、当該中央環状溝4から所定幅の幅方向間隔2、3を介した両側には、中央環状溝4と同幅の帯状の内側環状溝5、及び外側環状溝6を備えており、当該中央環状溝4、内側環状溝5、及び外側環状溝6を、タイヤの周方向にそれぞれ環状に配置している。
【0023】
中央環状溝4、内側環状溝5、及び外側環状溝6は、例えば、深さ9mm幅2~3cm等、所定の深さ及び所定の幅を有する。
【0024】
なお、図1においては、紙面左右方向がタイヤの幅方向を、紙面上下方向がタイヤの回転方向すなわち周方向を示すものであり、紙面右側がタイヤの幅方向内側を、紙面左側がタイヤの幅方向外側を示す。
【0025】
そして上記中央環状溝4、内側環状溝5、及び外側環状溝6内には、図2に示す如く、本発明における周方向吸水帯の一実施形態として機能する複数の線状突起11、12、13を密集した状態で突設配置している。即ち当該線状突起11、12、13は、上記中央環状溝4、内側環状溝5、及び外側環状溝6の底面7、8、10側から鉛直上方に伸びており、基端側が太く先端側が細い先細の形状としている。また当該線状突起11、12、13の先端を、タイヤの接地面14と同じ高さとしている。このように中央環状溝4、内側環状溝5、及び外側環状溝6にそれぞれ線状突起11、12、13を密集配置することにより、中央環状溝4に配置した線状突起11が中央吸水帯として、内側環状溝5に配置した線状突起12が内側吸水帯として、外側環状溝6に形成した線状突起13が外側吸水帯として機能する。そして、中央吸水帯、内側吸水帯及び外側吸水帯の働きによって、路面とトレッド部1との間の水を上記各環状溝内に効果的に捕集可能とするとともに、当該各環状溝に捕集された水を、後述する幅方向溝16及び傾斜溝23を介してタイヤから外方に効率よく排出することができる。
【0026】
なお、周方向吸水帯として機能する複数の線状突起11、12、13の形状としては、図2に示すような形状に加え、円錐形状のものや、三角錐形状のもの、円柱形状のもの、あるいは、ブラシ毛のような形状など、様々な形状のものであって構わない。
【0027】
また、複数の線状突起11、12、13は、複数の突起が土台に植設されることで形成されてもよいし、タイヤを構成する基材と一体となって形成されてもよい。
【0028】
特に、冬季だけでなく通年にわたって使用することが要求されるタイヤにおいては、単にグリップ力を高めるだけでは、雪道や濡れた路面では性能を発揮することができるものの、乾燥した路面においてはグリップ力が抵抗となってしまい、ハンドリング性能や燃費が悪くなる。本発明においては、中央環状溝4、内側環状溝5及び外側環状溝6に周方向吸水帯として機能する線状突起11、12、13を配置することにより、雪解け水などの水分を吸収することができるため、グリップ力を強化しすぎることなく、耐スリップ性能を強化することができる。
【0029】
また上記タイヤの内側環状溝5よりも内側においては、当該内側環状溝5からタイヤの内端部15に向けて上記トレッド部1の幅方向に伸びる幅方向溝16を、内側配置間隔17を介して複数個設けている。このように幅方向溝16を設けることにより、内側環状溝5にて捕集した水を、幅方向溝16を通じて内側端部15からタイヤの外方に排出することが可能となる。
【0030】
本実施例においては、幅方向溝16は、例えば、深さ8~9mm幅3~4mm等、所定の深さ及び所定の幅を有する。また、内側配置間隔17は2cmである。
【0031】
また上記タイヤの外側環状溝6よりも外側においては、当該外側環状溝6からタイヤの外側端部18に向けて、その外側環状溝6側の一端20を路面先着側に配置するとともに他端21側を路面後着側に配して成る傾斜溝23を、外側配置間隔22を介して複数個設けている。
【0032】
本実施例においては、傾斜溝23は、例えば、深さ9~10mm幅6mm等、所定の深さ及び所定の幅を有する。また、外側配置間隔22は3cmである。
【0033】
尚、本実施例における路面先着側及び路面後着側を図1において相対的に説明すると、路面先着側は図1における下方を意味し、路面後着側とは図1における上方を意味するものである。
【0034】
よって図1において傾斜溝23を説明すると、上記外側環状溝6側の一端20が図1の下方つまり進行方向前側に位置するとともに他端21が図1の上方つまり進行方向後ろ側に位置するものとなる。
【0035】
このように傾斜溝23を設けることにより、外側環状溝6にて捕集した水を、傾斜溝23を通じて外側端部18から外方に排出することが可能となるとともに、走行中のタイヤの回転に伴い外側環状溝6の水を効率的に外方に排出することができる。また、上記の如く形成した傾斜溝23の外側配置間隔22よりも、上記幅方向溝16の内側配置間隔17を狭いものとすることにより、当該幅方向溝16からの水の排出を更に効果的なものとすることができる。
【0036】
また上記中央環状溝4と内側環状溝5及び外側環状溝6との間に形成された各幅方向間隔2、3には、上記中央環状溝4と内側環状溝5又は外側環状溝6とに各々連通する模様溝24、25を、上記タイヤの周方向に連続して設けている。本実施例における模様溝24、25は、例えば、深さ6~7mmで幅5mm等、所定の深さ及び所定の幅に刻設された一本のジグザグ形状を呈する溝である。ジグザグ形状の模様溝24、25は所定の間隔で幅方向の方向を転換する折り返し部26、27を備えており、折り返し部26、27が中央環状溝4、内側環状溝5、又は外側環状溝6とそれぞれ連通する連通部として機能する。
【0037】
上記の如く模様溝24、25を形成することにより、タイヤのグリップ力を向上させることができる。また、幅方向間隔2、3に存在する水を、模様溝24、25及び折り返し部26、27(連通部)を介して、中央環状溝4、内側環状溝5、又は外側環状溝6に形成した周方向吸水帯である線状突起11、12、13に吸収させることができるため、グリップ力と吸水性能の両立を図ることができる。そして、吸収した水を中央環状溝4、内側環状溝5、又は外側環状溝6を通じて幅方向溝16あるいは傾斜溝23から外方に排出することが可能となる。そのため、水の層が生じた路面でもスリップを起こしにくく安全な運転を行うことができる。
【実施例2】
【0038】
本願発明の実施例2を図3に於いて説明すると、タイヤのトレッド部31において、当該トレッド部31の幅方向中央部に帯状の中央吸水帯32を設けるとともに、当該中央吸水帯32から所定幅の幅方向間隔33、34を介した両側には、中央吸水帯32と同幅の帯状の内側吸水帯35、及び外側吸水帯36を備えており、当該中央吸水帯32、内側吸水帯35、及び外側吸水帯36がタイヤの周方向にそれぞれ環状に配置され、周方向吸水帯として機能する。
【0039】
実施例2における周方向吸水帯は、タイヤの周方向に連続的に刻設された格子型又はひし形の細溝37、38、40によって形成される。即ち、中央吸水帯32、内側吸水帯35、及び外側吸水帯36として、タイヤ正面からみてひし形を形成するよう斜め方向に所定間隔で複数刻設された細溝37、38、40が連続して密集配置されている。このように中央吸水帯32、内側吸水帯35、及び外側吸水帯36として、ひし形を形成するよう複数刻設された細溝37、38、40を密集配置することにより、路面とトレッド部31との間の水を上記各吸水帯内に効果的に捕集可能とするとともに、当該各吸水帯に捕集された水を、後述する幅方向溝42及び傾斜溝45を介してタイヤから外方に効率よく排出することができる。
【0040】
特に、冬季だけでなく通年にわたって使用することが要求されるタイヤにおいては、単にグリップ力を高めるだけでは、雪道や濡れた路面では性能を発揮することができるものの、乾燥した路面においてはグリップ力が抵抗となってしまい、ハンドリング性能や燃費が悪くなる。本実施例においては、周方向吸水帯として機能する中央吸水帯32、内側吸水帯35及び外側吸水帯36を細溝37、38、40によって形成することにより、雪解け水などの水分を吸収することができるため、グリップ力を強化しすぎることなく、耐スリップ性能を強化することができる。
【0041】
なお、本実施例では細溝37、38、40にてひし形を形作っているが、他の異なる実施例ではひし形ではなく格子型であっても良い。
【0042】
また上記タイヤの内側吸水帯35よりも内側においては、当該内側吸水帯35からタイヤの内端部41に向けて上記トレッド部31の幅方向に伸びる幅方向溝42を、内側配置間隔43を介して複数個設けている。このように幅方向溝42を設けることにより、内側吸水帯35にて捕集した水を、幅方向溝42を通じて内端部41から外方に排出することが可能となる。
【0043】
また上記タイヤの外側吸水帯36よりも外側においては、当該外側吸水帯36からタイヤの外端部44に向けて、その外側吸水帯36側の一端46を路面先着側に配置するとともに他端47側を路面後着側に配して成る傾斜溝45を、外側配置間隔51を介して複数個設けている。尚、本実施例における路面先着側及び路面後着側を図3において相対的に説明すると、路面先着側は図3における下方を意味し、路面後着側とは図3における上方を意味するものである。
【0044】
よって図3において傾斜溝45を説明すると、上記外側吸水帯36側の一端46が図3の下方に位置するとともに他端47が図3の上方に位置するものとなる。このように傾斜溝45を設けることにより、外側吸水帯36にて捕集した水を、傾斜溝45を通じて外端部44から外方に排出することが可能となるとともに、走行中のタイヤの回転に伴い外側吸水帯36の水を効率的に外方に排出することができる。また、上記の如く形成した傾斜溝45の外側配置間隔51よりも、上記幅方向溝42の内側配置間隔43を狭いものとすることにより、当該幅方向溝42からの水の排出を更に効果的なものとすることができる。
【0045】
また上記中央吸水帯32と内側吸水帯35及び外側吸水帯36との間に形成された各幅方向間隔33、34には、上記中央吸水帯32と内側吸水帯35又は外側吸水帯36とに各々連通する模様溝52、53を、上記タイヤの周方向に連続して設けている。本実施例における模様溝52、53は、中央吸水帯32と内側吸水帯35の間の幅方向間隔33の模様溝52は一対のジグザグ形状に形成された連続するひし形であって、中央吸水帯32と外側吸水帯36の間の幅方向間隔34の模様溝53を波型としている。
【0046】
また上記ひし形に形成した模様溝52の幅方向内側端部54が内側吸水帯35と模様溝52との連通部として、模様溝52の中央側端部55が中央吸水帯32と模様溝52との連通部として、波型の模様溝53の幅方向中央端の湾曲部56が中央吸水帯32と模様溝53との連通部として、波形の模様溝53の幅方向外側端の湾曲部57が外側吸水帯36と模様溝53との連通部として機能する。
【0047】
上記の如く模様溝52、53を形成することにより、タイヤのグリップ力を向上させることができる。また、幅方向間隔33、34に存在する水を、模様溝52、53を通じて中央吸水帯32、内側吸水帯35、又は外側吸水帯36として形成した細溝37、38、40に吸収させることができるため、グリップ力と吸水性能の両立を図ることができる。そして、吸収した水を中央吸水帯32、内側吸水帯35、又は外側吸水帯36を通じて幅方向溝42あるいは傾斜溝45から外方に排出することが可能となる。そのため、水の層が生じた路面でもスリップを起こしにくく安全な運転を行うことができる。
【0048】
以上説明された本発明の効果についてまとめると、以下のようになる。
【0049】
タイヤのトレッド部の幅方向中央部及び当該中央部から所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ環状に形成した周方向吸水帯を備えることで、周方向に配した三本の吸水帯を用いて雪解け水や雨水を吸収することができる。そのため、グリップ力を不必要に強めることなく、耐スリップ性を向上させることができる。
【0050】
このとき、タイヤの周方向に刻設された環状溝内に密集して突設配置された複数の線状突起によって周方向吸水帯を形成したため、路面とトレッド部との間における水を各環状溝内に効果的に捕集することが可能となる。
【0051】
また、タイヤの周方向に連続的に刻設された格子型又はひし形の細溝によって周方向吸水帯を構成したため、路面とトレッド部との間における水を細溝を用いて効果的に捕集することが可能となる。
【0052】
また、周方向吸水帯同士の間隔において、周方向吸水帯に連通する模様溝をタイヤの周方向に連続して設けたため、模様溝によってグリップ力の向上を図ることができるとともに、周方向吸水帯同士の間隔に存在する水を、模様溝を介して各周方向吸水帯に吸収させることができ、グリップ力と吸水性能の両立を図ることができる。そのため、水の層が生じた路面でもスリップを起こしにくく安全な運転を行うことができる。
【0053】
このとき、模様溝が1本または対向する一対のジグザグ形状、又は波型を呈するため、単なるグリップ力や排水性能だけでなく、デザイン性も向上させることができる。
【0054】
また、幅方向溝と傾斜溝を、それぞれ、内側吸水帯と外側吸水帯から延設したため、内側吸水帯及び外側吸水帯の周方向吸水帯によって吸収した水を効果的にタイヤ外へ排出することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0056】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明のトレッドパターンは、様々な種類のタイヤに適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、31 トレッド部
2、3、33、34 幅方向間隔
4 中央環状溝
5 内輪側環状溝
6 外輪側環状溝
11、12、13 線状突起(周方向吸水帯)
15、41 内輪端部
16、42 幅方向溝
17、22、43、51 配置間隔
18、44 外輪端部
20、46 一端
21、47 他端
23、45 傾斜溝
24、25、52、53 模様溝
37、38、40 細溝(周方向吸水帯)

【要約】
【課題】トレッドパターンを形成するのみでタイヤの材質等を変更する必要がなく、雪道や雨に濡れた路面上を走行する際もトレッド部における撥水性及びグリップ力を良好に発揮することができるため、雪道のみならず雪道以外の路面での走行を安全に行うことが可能となり、季節や路面状況を問わず一年中使用可能なタイヤを提供する。
【解決手段】本発明のタイヤのトレッド部1はタイヤのトレッド部1の幅方向中央部及び当該中央部から幅方向に所定間隔を介した両側に、タイヤの周方向にそれぞれ環状に形成した周方向吸水帯11、12、13を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3