(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電子回路の開閉装置、開閉構造、および開閉方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/71 20060101AFI20220222BHJP
H01H 27/00 20060101ALI20220222BHJP
H01H 1/38 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H01R13/71
H01H27/00 B
H01H1/38
(21)【出願番号】P 2020076814
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 歩夢
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-084865(JP,A)
【文献】特開平08-328696(JP,A)
【文献】特開平11-040004(JP,A)
【文献】特開昭62-296381(JP,A)
【文献】実開昭62-109321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
H01H 27/00
H01H 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を一の側と他の側とに仕切る第1の部材と、
該第1の部材により仕切られた前記一の側に設けられた第2の部材と、
該第2の部材に設けられた導体回路と、
該導体回路に接続された接点導体と、
を有し、
前記接点導体は、前記第1の部材を貫通して前記他の側から一の側へ挿入される操作部材と接触可能な位置に配置されるとともに、前記操作部材が弾性変形することによって前記接点導体に接触して前記導体回路を開または閉に切り替え、
前記操作部材は導体により形成され、
前記接点導体は前記操作部材を介して前記第1の部材に接続され、
前記第2の部材は回路基板であり、前記第1の部材は前記回路基板を収容する筐体を構成する部材であり、
前記筐体は、
表面に電気絶縁性の塗装または電気絶縁性の皮膜が形成された金属製であって、前記操作部材を挿入可能な内径を有し、
前記塗装または皮膜を貫通して金属を露出させた操作用開口を有し、
前記接点導体は前記操作部材に比して剛性の高い材料、形状とされていて、
前記操作部材を前記操作用開口の内面に露出する金属に接触するように変形させることが可能とされた、
電子回路の開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路の開閉装置と、該開閉装置の前記接点導体を操作する操作部材と、
を有する電子回路の開閉構造。
【請求項3】
第1の部材により仕切られた空間の一の側に設けられた第2の部材に設けられた導体回路に接続された接点導体に、前記空間の他の側から挿入された操作部材を接触させる工程と、
前記接点導体と操作部材との接触により、これらの少なくともいずれかを変形させて前記導体回路を開または閉に切り替える工程と、
を有し、
前記操作部材は導体により形成され、
前記接点導体は前記操作部材を介して前記第1の部材に接続され、
前記第2の部材は回路基板であり、前記第1の部材は前記回路基板を収容する筐体を構成する部材であり、
前記筐体は、
表面に電気絶縁性の塗装または電気絶縁性の皮膜が形成された金属製であって、前記操作部材を挿入可能な内径を有し、
機械加工により、前記塗装または皮膜を貫通して金属を露出させた操作用開口を有し、
前記接点導体は前記操作部材に比して剛性の高い材料、形状とされていて、
前記操作部材を前記操作用開口の内面に露出する金属に接触するように変形させる、
電子回路の開閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路の開閉装置、開閉構造、および開閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載される回路には、製造プロセスの途中で、あるいは完成試験の段階で、メーカー側において、開から閉へ、あるいは閉から開へ切り替え操作されるものの、完成後、あるいは、一旦作動を開始した後には、ユーザーが切り替え操作する機会がない、あるいは、ユーザーによって任意に切り替え操作されることが望ましくないスイッチや接点が設けられることがある。
特許文献1には、機器のカバーに形成された差し込み孔を経由してテストピンを機器内に挿入することにより、テストピンを機器内の回路基板に接続する構成が開示されている。
特許文献2には、機器のカバーに形成された開口穴を経由してクリップを機器内に挿入することにより、端子に接続する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-309746号公報
【文献】特開2006-127966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたテストピンは、単に機器内の回路に電気的に接続されて信号を取り出す機能を有するに過ぎず、本発明の背景となる使用条件下で、必要に応じて機器内の回路を開閉しようとする場合に利用することができるものではない。また、特許文献2に記載されたクリップは、単に端子を介して機器内の回路に電気的に接続されるに過ぎず、特許文献1に記載された技術と同じく、必要に応じて機器内の回路を開閉しようとする場合に利用することができるものではない。
【0005】
この発明は、筐体等に収容された電子回路を外部から開閉操作することが可能な電子回路の開閉装置、開閉構造、および開閉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様にかかる電子回路の開閉装置は、下記の構成を特徴とする。
空間を一の側と他の側とに仕切る第1の部材と、該第1の部材により仕切られた前記一の側に設けられた第2の部材と、該第2の部材に設けられた導体回路と、該導体回路に接続された接点導体と、を有し、前記接点導体は、前記第1の部材を貫通して前記他の側から一の側へ挿入される操作部材と接触可能な位置に配置されるとともに、前記接点導体と前記操作部材との少なくともいずれかが弾性変形することによって互いに接触して前記導体回路を開または閉に切り替える電子回路の開閉装置。
【0007】
本発明の第2の態様にかかる電子回路の開閉方法は、下記の構成を特徴とする。
第1の部材により仕切られた空間の一の側に設けられた第2の部材に設けられた導体回路に接続された接点導体に、前記空間の他の側から挿入された操作部材を接触させる工程と、前記接点導体と操作部材との接触により、これらの少なくともいずれかを変形させて前記導体回路を開または閉に切り替える工程とを有する電子回路の開閉方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子回路の開閉装置、開閉構造、および開閉方法によって、電子回路を外部から操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の一実施形態にかかる開閉装置に操作部材を挿入する前の状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図2の開閉装置に操作部材を挿入した状態の斜視図である。
【
図5】一実施形態の操作部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の最小構成例に係る電子回路の開閉装置について
図1を参照して説明する。
符号1は第1の部材であって、例えば電子機器の筐体の内部の空間を一の側(
図1の上側)と他の側(
図1の下側)とに仕切っている。この第1の部材1により仕切られた空間の前記一の側には、第2の部材2が設けられ、この第2の部材2の表面には、例えばプリントパターン等の導体回路(図示を省略する)が形成されている。前記導体回路には、接点導体3が電気的に接続されている。
前記接点導体3は、前記第1の部材1を貫通して前記他の側から一の側へ挿入される操作部材4と接触可能な位置に配置されるとともに、前記接点導体3と前記操作部材4との少なくともいずれかが弾性変形することによって互いに接触して、前記導体回路を開または閉に切り替える。
【0011】
上記構成の電子回路の開閉装置にあっては、前記第2の部材2が第1の部材1の一の側に設けられているので、前記第2の部材2を第1の部材1の他の側から直接操作することができない。また、第2の部材2を前記他の側から操作しようとする場合は、前記操作部材4を前記他の側から第1の部材1を貫通するように一の側へ挿入して接点導体3と接触させれば良い。すなわち、前記操作部材4を挿入して接点導体3に接触させることにより、
図1に矢印Aで示す方向へ接点導体3を弾性変形させ、およびまたは
図1に矢印Bで示す方向へ操作部材4を弾性変形させることができ、この弾性変形により、前記第2の部材2の表面の導体回路を開閉することができる。
【0012】
本発明の最小構成例に係る電子回路の開閉方法について
図1を参照して説明する。
この開閉方法は、第1の部材1により仕切られた空間の一の側に設けられた第2の部材2に設けられた導体回路に接続された接点導体3に、前記空間の他の側から挿入された操作部材4を接触させる工程と、前記接点導体3と操作部材4との接触により、これらの少なくともいずれかを変形させて前記導体回路を開または閉に切り替える工程とを有する。
【0013】
上記構成の電子回路の開閉方法にあっては、前記第2の部材2が第1の部材1の一の側に設けられているので、前記第2の部材2を第1の部材1の他の側から直接操作することができない。また、第2の部材2を前記他の側から操作しようとする場合は、前記操作部材4を前記他の側から第1の部材1を貫通するように一の側へ挿入して接点導体3と接触させれば良い。すなわち、前記操作部材4により、
図1に矢印Aで示す方向へ接点導体3を弾性変形させ、およびまたは
図1に矢印Bで示す方向へ操作部材4を弾性変形させることができ、この弾性変形により、前記第2の部材2の表面に設けられた電子回路を開閉することができる。
【0014】
図2~
図4を参照して、本発明の一実施形態にかかる電子回路の開閉装置、および開閉構造について説明する。なお、
図2~
図4において、
図1と共通の構成要素には同一符号を付し、説明を簡略化する。
第1の部材1は、例えば電子機器を収容する筐体(図示例では、筐体を構成する板金の一部を示し、金属であることから、導電性を有する)である。第1の部材1の内部には第2の部材2が収容されている。この第2の部材2は、例えば、導体パターンおよびこれに接続された実装部品(ともに図示略)を備えた回路基板である。
【0015】
前記第2の部材2の上面には、接点導体3が配置されている。
この接点導体3は、例えば板状の金属により構成され、一対の接点導体31を有する。これら一対の接点導体31の基端部は、上下に平板部32、33を有する連結部34に一体に連結され、先端部は、互いに接近する方向へ湾曲した状態で接触している。
前記接点導体3は、例えば、板状の金属素材(例えば、黄銅、燐青銅)を打ち抜き加工する処理により、連結部34を中心として前記接点導体31、31、平板部32、33、が上下左右に突出した形状の展開状態の板材を形成し、この板材を折り曲げることによって形成することができる。
【0016】
より具体的には、平板部32、33の基端部を連結部34に対して直交する方向へ折り曲げ、また、接点導体31、31の基端部を先端の湾曲部が互いに弾性変形状態で接触する位置まで折り曲げることによって、
図2、3に示すような形状に形成する。
前記接点導体3は、前記平板部32を第2の部材2の上面に接触させて第2の部材2上の導体回路に電気的に接続した状態で設けられている。また前記接点導体31、31は弾性変形状態で互いに接触している。
【0017】
前記第1の部材1には、これを貫通する操作用開口1aが形成されている。この操作用開口1aは、棒状の操作部材4の外径より大きな内径を有している。この操作部材4は、例えば金属等の導体により構成され、前記接点導体31を弾性変形させるに足る剛性を有している。
すなわち、操作部材4を構成する金属等のヤング率、外径、長さの組み合わせを適宜選択して構成することにより、前記接点導体31を変形させて接触、あるいは非接触状体とする等の操作することが可能に構成されている。なお、操作部材4をプラスチックや木材等の材料により構成し、その表面に金属めっき等を施すことによって、表面のみに導電性を付与した構成であっても良い。また図示例では、接点導体31への接触に際して先端を接触部へ案内するため、および、自身の、変形を容易にするため、操作部材4の先端が先細り状に形成されている。
【0018】
上記構成の切り替え装置の作用を電子回路の切り替え方法とともに説明する。
操作部材4を操作用開口1aに挿入していない状態では、接点導体31、31が互いに接触した状態で弾性変形し、互いに電気的に導通している。
操作部材4を操作用開口1aに挿入し、一対の接点導体31、31の間に挿入すると、操作部材4が先端の先細り部により案内されて接点導体31、31の間を押し広げながら挿入されて行き、
図3、
図4に示すように、先端から所定距離だけ離れた一定外径の箇所に至る。この状態では、操作部材4が接点導体31、31の間に挟まれた状態に保持され、また、接点導体31、31と接触して電気的に接続される。
【0019】
上記構成によれば、操作部材4を挿入して接点導体3を変形させながら接触させる操作によって、第2の部材2としての回路基板上の電子回路と接地点としての第1の部材1との間の常開接点を閉じることができる。すなわち接点導体3を操作部材4によって操作することにより、電子回路を閉じるスイッチの機能を果たすことができる。
【0020】
なお図示例の場合、前記操作用開口1aは、第1の部材1をドリル等の工具により機械加工することにより形成される。したがって、例えば、第1の部材1としての筐体等の表面に電気絶縁性の塗装が施され、あるいは電気絶縁性皮膜が形成されている場合であっても、操作用開口1aの内周では、第1の部材1を構成している導電性の金属が露出することとなって、操作部材4と直接接触することができ、したがって、操作部材4を接地点に電気的に接続することができる。
【0021】
前記操作部材4の基端側であって、操作用開口1aの内側に対応する箇所は、操作用開口1aの内周面と接触させることにより、第1の部材1と電気的に接続される。一般に電子機器の筐体である第1の部材1は、電位ゼロに接地されているので、前記接点導体31~操作部材4~第1の部材1を経由して前記第2の部材2の表面の導体回路の所定の個所が接地される。
以上の工程により、第2の部材2上の電子回路を第1の部材1(筐体)の外側から開閉操作することができる。
【0022】
図5を参照して、一実施形態の操作部材の変形例について説明する。
この変形例の操作部材4Aは、基端部に他の部分より大径のフランジ部41を有し、このフランジ部41は、他の部分と一体に金属等の導体により形成されている。
この変形例の操作部材4Aは、
図3と同様に操作用開口1aから接点導体31、31の間に挿入されて、これらの間に挟まれた状態となって、これら接点導体31、31、および、これらの接点導体31に各々接続された第2の部材2上の導体回路、あるいは、導体回路に実装された電子部品に電気的に接続される。
また、操作部材4Aを所定の長さにわたって前記第1の部材1の他の側へ挿入することにより、操作部材4Aのフランジ部41が第1の部材1の表面に接触する。このようにして、フランジ部41が前記第1の部材1に接触することによって、接点導体31が操作部材4Aを経由して第1の部材1に電気的に接続されると、接点導体31に接続された第2の部材2上の電子回路)(図示略)を接地することができる。
【0023】
すなわち、この変形例にあっては、
図2~4の例と同様、操作部材4Aを挿入し、あるいは抜き取ることによって第2の部材2上の電子回路と接地点としての第1の部材1との間を接続する回路を開閉操作することができる。
また、この変形例にあっては、操作部材4Aの一部に大径のフランジ部41を設けることによって、第1の部材1と操作部材4Aとの接触面積を大きくすることができ、接触抵抗を減少させること、あるいは、第1の部材1と操作部材4Aとの接触をより確実にすることができる。
さらに、前記一実施形態では、操作部材4を導体により構成したが、下記のように、電気絶縁体により構成する態様でも実施することができる。
すなわち、
図2~
図4の例では、接続版31を他の構成部材である平板部32、33、連結部34と一体の板状部材としたので、一対の接点導体31、31が電気的に接続されているが、一対の接点導体31、31を
図2とは異なる別個独立の(互いに電気的に絶縁された)構成とし、互いに接触することによってのみ電気的に接続された状態としてもよい。
【0024】
このように、接点導体31、31を操作部材4によって接触あるいは離間させる構成とした場合、これらの接点導体31、31の間に絶縁体製の操作部材4を挿入して接点導体31,31を互いに接触しないように分離することによって、前記接点導体31、31に各々接続された電子回路の間を電気的に切り離す(回路を開く)ことができる。
すなわち、前記操作部材4は、接点導体31、31の間の常閉接点を開く機能を有していて、全体として、電子回路の開くスイッチとしての機能を果たすことができる。
【0025】
前記一実施形態では、接点導体31、31の間に操作部材4を挿入して接点導体31、31を変形させる構成としたが、
図6に示す他の実施形態の構成を採用しても良い。
図6の接点導体3Aは、操作部材4に対して剛性の高い材料、形状とされていて、操作部材4を変形させるよう構成されている。
【0026】
すなわち、
図6に示す他の実施形態にあっては、第1の部材1の操作用開口1aから操作部材4を挿入して接点導体3Aに接触させることにより、操作部材4が弾性変形して接点導体3Aに接触し、電気的に接続される。
したがって、一実施形態の場合と同様、接点導体3Aに接続された電子回路を操作部材4を介して接地点等に接続すること、すなわち電子回路を操作するスイッチとしての機能を果たすことができる。
【0027】
なお本発明を適用することができる電子機器は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、接点部材として異なる形状、個数のものを採用し、あるいは、操作部材として異なる形状のものを採用しても良いのはもちろんである。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、電子回路の開閉装置、開閉構造、および開閉方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 第1の部材
1a 操作用開口
2 第2の部材
3、3A、31 接点導体
4、4A、4B 操作部材
32、33 平板部
34 連結部