(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車載用通信装置、車両内通信システム、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/12 20220101AFI20220222BHJP
【FI】
H04L45/12
(21)【出願番号】P 2020515518
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017400
(87)【国際公開番号】W WO2019208624
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2018083799
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232254
【氏名又は名称】日本電気通信システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】野村 拓望
(72)【発明者】
【氏名】川津 哲司
(72)【発明者】
【氏名】秋月 克之
(72)【発明者】
【氏名】原田 侑児
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
(72)【発明者】
【氏名】馬場 友貴
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113952(JP,A)
【文献】特開2017-199229(JP,A)
【文献】特開2015-154287(JP,A)
【文献】特開2011-239348(JP,A)
【文献】特開2019-036855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、
前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、
前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、を関連付けて保持する記憶部と、
を備
え、
前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、
前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、
前記選択部は、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、
車載用通信装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記総和が最小の通信経路を前記送信パケットを収容する通信経路に選択する、請求項
1の車載用通信装置。
【請求項3】
携帯網を介してクラウドのサーバにアクセスする、無線通信部をさらに備え、
前記車両情報に付与された数値は前記クラウドのサーバから可変に構成されている、請求項
1又は2記載の車載用通信装置。
【請求項4】
複数の中継ノードと、
前記中継ノードを介して受信ノードにパケットを送信する、送信ノードと、
を含み、
前記送信ノードは、
内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、
前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、
前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、を関連付けて保持する記憶部と、
を備
え、
前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、
前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、
前記選択部は、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、
車両内通信システム。
【請求項5】
車載用通信装置において
行われる通信方法であって、
内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得するステップと、
前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択するステップと、
を含
み、
前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、が関連付けられており、
前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、
前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、
前記選択するステップでは、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、
通信方法。
【請求項6】
車載用通信装置に搭載されたコンピュータに
実行させるプログラムであって、
内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する処理と、
前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する処理と、
を実行させ
、
前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、が関連付けられており、
前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、
前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、
前記選択する処理では、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願についての記載]
本発明は、日本国特許出願:特願2018-083799号(2018年4月25日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、車載用通信装置、車両内通信システム、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4に、通信ネットワークに関する種々の技術が開示されている。例えば、特許文献1には、ネットワーク全体の消費電力を最小化するようにパケット転送経路を設定する技術が開示されている。また、特許文献2には、通信を中継するソースノードとして電源が充電式と電池式の場合、ソースノードの残存電力のみによって経路を選択すると、電池式ソースノードが選択されて電力消費され、ネットワーク全体の運用時間が短縮される、と記載されている。
【0003】
近年、車両内ネットワークの研究開発が盛んに行われている。車両内にネットワークを構築する際の規格として、CAN(Controller Area Network) 等の規格が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-036423号公報
【文献】特開2012-129780号公報
【文献】特開2008-219599号公報
【文献】特開2007-150927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0006】
車内のネットワークには、上記CAN等の車両独自技術が使われてきた。しかし、近年、車両内で扱うデータ量が増えてきたことや、インターネット等の外部ネットワークへ接続することの必要性から、特許文献1~4に開示されているような民生で実績のある技術の導入が検討されている。つまり、インターネット関連の技術に親和性があり、且つ、民生にて実績のあるICT(Information and Communication Technology)を車両に導入する検討が進められている。
【0007】
一方で、自動車に関する技術は人命に関わることもあるため、単純な民生技術の応用だけでは車内ネットワークに適用することは難しい。
【0008】
ここで、通常の通信インフラ(民生用の通信インフラ)を想定した通信技術について説明する。通常の通信インフラでは、宛先のノードに到達するためのルートが複数存在する場合も少なくない。このような場合、通常の通信技術では、あるフローの通信経路(パケットの転送経路)を決める際、中継されるノードの数(hop数)やノード間をつなぐ回線速度を数値化する。その上で、当該数値化された情報(hop数、回線速度)を指標(メトリック)として最適な経路選択を実現している。
【0009】
上記内容を
図8を用いて説明する。
図8に示すように、特定のフローを実現する候補として4通りの経路A、B、C、Dが存在するものと仮定する。当該特定のフローの通信経路を決定する際には、各経路に対し、パケットの送信元から宛先(受信先)までのhop数、中継ノード間を結ぶ回線速度がそれぞれ数値化される。例えば、上記指標は、条件が良いほど数値が小さくなるよう設定される。上記指標が算出された後に、各パラメータの和が計算され、最も数値の小さい経路から優先して選択されるようにパケットの転送経路が決定される。
【0010】
しかし、上記のような最適経路決定の手法を車両ネットワークに適用することはできない。通信ネットワークを内部に備えるネットワーク(車両内ネットワーク)では、車両の状態が様々に変化するためである。例えば、エンジン停止、停車中、走行中など内部に通信ネットワークを含む車両の状態は様々に変化する。あるいは、車両の内部状態だけでなく、車外の状態も様々に変化する。例えば、雨天時、渋滞中、高速道路上など、車両の置かれた環境も変化する。
【0011】
車両内ネットワーク内におけるフローの通信経路も、上記hop数や回線速度によって決めることもできるが、車両内のフローの最適な通信経路は、上記車両の内部状態や車外の環境に影響を受け変化することも多い。つまり、車両内ネットワークに流通するフローの中には車両の状態や置かれた環境と相関を持つものもある。
【0012】
したがって、単純に、車両内ネットワークにおいて、フローの最適な通信経路を決定する際、中継ノード数や回線速度を基に経路を決めるだけでは、車両内ネットワーク内を流通するフローにとって必ずしも最適な経路がとられるとは限らない。
【0013】
本発明は、フローの最適な通信経路を決定することに寄与する車載用通信装置、車両内通信システム、通信方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明乃至開示の第1の視点によれば、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、を備える、車載用通信装置が提供される。
前記第1の視点の変形として、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、を関連付けて保持する記憶部と、を備え、前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、前記選択部は、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、車載用通信装置が提供される。
【0015】
本発明乃至開示の第2の視点によれば、複数の中継ノードと、前記中継ノードを介して受信ノードにパケットを送信する、送信ノードと、を含み、前記送信ノードは、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、を備える、車両内通信システムが提供される。
前記第2の視点の変形として、複数の中継ノードと、前記中継ノードを介して受信ノードにパケットを送信する、送信ノードと、を含み、前記送信ノードは、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する、取得部と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する、選択部と、前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、を関連付けて保持する記憶部と、を備え、前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、前記選択部は、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、車両内通信システムが提供される。
【0016】
本発明乃至開示の第3の視点によれば、車載用通信装置において行われる通信方法であって、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得するステップと、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択するステップと、を含む、通信方法が提供される。
前記第3の視点の変形として、車載用通信装置において行われる通信方法であって、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得するステップと、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択するステップと、を含み、前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、が関連付けられており、前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、前記選択するステップでは、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、通信方法が提供される。
【0017】
本発明乃至開示の第4の視点によれば、車載用通信装置に搭載されたコンピュータに実行させるプログラムであって、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する処理と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する処理と、を実行させるプログラムが提供される。
前記第4の視点の変形として、車載用通信装置に搭載されたコンピュータに実行させるプログラムであって、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する処理と、前記車両情報と前記通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する処理と、を実行させ、前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、が関連付けられており、前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含み、前記回線速度は、予め定めた規則により数値化され、前記選択する処理では、前記複数の通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された前記回線速度及び前記車両情報に付与された前記数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、プログラムが提供される。
なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
プログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インタフェイスを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させ、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インタフェイスを介して、外部と交信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明乃至開示の各視点によれば、フローの最適な通信経路を決定することに寄与する車載用通信装置、車両内通信システム、通信方法及びプログラムが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態に係る車両内通信システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る送信ノードの処理構成の一例を示す図である。
【
図4】記憶部が記憶する情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る送信ノードのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る送信ノードの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】送信ノードの別の処理構成の一例を示す図である。
【
図8】車両内ネットワークとは異なる通信ネットワークにて用いられる技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
初めに、一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インターフェイスも同様である。
また、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェイス、及び必要に応じ表示装置を備え、コンピュータ装置は、通信インタフェイスを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、交信可能に構成される。
【0021】
一実施形態に係る車載用通信装置100は、取得部101と、選択部102と、を備える(
図1参照)。取得部101は、内部に通信ネットワークが構築された車両の状態又は置かれた環境に関する車両情報を取得する。選択部102は、車両情報と通信ネットワークに含まれる通信経路に関する通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する。
【0022】
上記車載用通信装置100は、自動車に特有である車両の状態や置かれた環境を数値化して、通信経路を選択する際のパラメータとする。その結果、車両の状態等を考慮していない民生用の通信技術の欠点が補われ、当該通信技術を車載に適用可能としている。また、車両の状態等により最適な通信経路を選択することで、自動車の安全性や快適性を向上させることもできる。
【0023】
以下に具体的な実施の形態について、図面を参照してさらに詳しく説明する。なお、各実施形態において同一構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
[第1の実施形態]
第1の実施形態について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る車両内通信システムの概略構成の一例を示す図である。
図2を参照すると、車両内通信システムは、送信ノード10と、中継ノード20-1~20-3と、受信ノード30と、を含んで構成される。
図2に示す車両内通信システムは、車両内部に構築される通信ネットワークである。
【0026】
なお、
図2に示す構成は例示であって、車両内通信ネットワークの構成を限定する趣旨ではない。例えば、3台以上の中継ノードが含まれていてもよい。また、以降の説明において、中継ノード20-1~20-3を区別する特段の理由がない場合には、単に「中継ノード20」と表記する。
【0027】
送信ノード10や受信ノード30は、車両内通信装置である。送信ノード10等は、例えば、ECU(Engine Control Unit)であり、ナビゲーションシステムやカメラモジュール等が該当する。
【0028】
中継ノード20は、所謂、ハブやL2(レイヤ2)スイッチと称されるパケット転送機能を有する通信機器である。
【0029】
図2において、送信ノード10は、受信ノード30に向けてパケット(データ)を送信する。受信ノード30は、送信ノード10が発したパケットを受信する。送信ノード10から受信ノード30へのフローをフローAと表記する。
【0030】
図2に図示された3台の中継ノード20は、いずれも受信したパケットを次段(パケットの受信ポートとは異なる他のポート)に転送する機能を備える。
【0031】
図2に示すように、送信ノード10から受信ノード30へのフローを実現する経路は2つある。具体的には、中継ノード20-1及び中継ノード20-2を経由する経路(以下、経路Bと表記する)と中継ノード20-3を経由する経路(以下、経路Cと表記する)である。つまり、送信ノード10からの送信パケットを収容するフローの候補として、経路Bと経路Cの2つが存在する。
【0032】
なお、経路Bは、1Gbps(ギガバイト毎秒)の回線で接続されており、経路Cは、100Mbps(メガバイト毎秒)の回線で接続されている。なお、上記回線速度(1Gbps、100Mbps)は例示であって、経路の回線速度を限定する趣旨ではないことは勿論である。
【0033】
図3は、送信ノード10の処理構成(処理モジュール)の一例を示す図である。
図3を参照すると、送信ノード10は、通信制御部201と、アプリケーション制御部202と、車両情報取得部203と、記憶部204と、経路選択部205と、を含んで構成される。
【0034】
通信制御部201は、他のノード(例えば、受信ノード30)との間の通信を制御する手段である。通信制御部201は、中継ノード20に向けてパケットを送信する、あるいは、中継ノード20からパケットを受信する。
【0035】
アプリケーション制御部202は、送信ノード10のアプリケーション(機能)を実現する手段である。例えば、送信ノード10がナビゲーションシステムであれば、アプリケーション制御部202がユーザにナビゲーション機能を提供する。その際、アプリケーション制御部202は、他のノードに送信するデータの作成を行う。例えば、送信ノード10がナビゲーションシステム、受信ノード30がカメラモジュールとすれば、アプリケーション制御部202は、映像データの送信指示等に係るデータを受信ノード30に向けて送信する。
【0036】
車両情報取得部203は、内部に通信ネットワークが構築された、車両の状態又は置かれた環境に関する情報(以下、車両情報と表記する)を取得する手段である。例えば、車両情報取得部203は、エンジン制御を行うECU(図示せず)から走行状態に関する情報を取得する。具体的には、車両情報取得部203は、車両が「停止中」、「通常走行中」といった情報を取得する。あるいは、車両情報取得部203は、上記ECUから取得した障害情報により、車両が「緊急事態」にあると判断してもよい。
【0037】
車両情報取得部203が取得する車両情報として、車両の置かれた環境がある。車両情報取得部203は、温度センサーやカメラ等からの情報により車両の置かれた環境に関する情報を取得する。例えば、車両情報取得部203は、カメラから得られる画像の解析により晴天、雨天(車両の置かれた環境)を判断する。
【0038】
車両情報取得部203は、取得した車両情報を経路選択部205に通知する。
【0039】
記憶部204は、通信経路情報と数値化された車両情報を記憶する。
【0040】
通信経路情報は、車両内通信ネットワークに含まれる通信経路に関する情報である。
【0041】
図4は、記憶部204が記憶する情報の一例を示す図である。
図4(a)を参照すると、通信経路ごとに、送信ノード10と受信ノード30間のhop数と、数値化された回線速度が記憶されている。なお、上記2つの指標が比較可能なように(指標の価値が比較可能なように)、回線速度は予め定めた規則により数値化されている。具体的には、性能が高い回線速度には小さい値が与えらる。例えば、1Gbpsの回線速度に「1」の数値が与えられると、速度が1/10の回線速度である100Mbpsには「5」が付与されている。
【0042】
また、
図4(b)を参照すると、経路ごとに、車両情報と、車両情報に予め付与された数値と、が関連付けて記憶されている。つまり、想定される車両情報に対し、予め数値が付与されている。例えば、
図4(b)の2行目を確認すると、車両の状態が「緊急事態」であれば、経路Bに数値「10」が付与され、経路Cに「0」が付与されている。
【0043】
なお、
図4に示す情報(通信経路情報、数値化された車両情報)は車両メーカ等により予め決定され、送信ノード10に入力される。
【0044】
経路選択部205は、車両情報(取得された車両情報、数値化された車両情報)と上記通信経路情報に基づき、送信パケットを収容するフローの通信経路を通信ネットワークに含まれる複数の通信経路のなかから選択する手段である。より具体的には、経路選択部205は、記憶部204に格納された経路に関する通信経路情報と数値化された車両情報と、車両情報取得部203から取得した車両情報と、に基づき、フローの通信経路を選択する。例えば、経路選択部205は、各通信経路を評価する経路評価値を計算する。より具体的には、経路選択部205は、通信経路ごとの中継ノードの数(hop数)、数値化された回線速度及び車両情報に付与された数値の総和に基づき、送信パケットを収容する通信経路を選択する。
【0045】
車両の状態が「通常走行」であれば、経路Bに関する経路評価値は「5」となる(3+1+1=5)。また、経路Cに関する経路評価値は「8」となる(2+5+1=8)。車両状態が変化し「緊急事態」となれば、経路Bの経路評価値は「14」、経路Cの経路評価値は「7」となる。
【0046】
経路選択部205は、経路評価値に基づき、送信ノード10から受信ノード30へのフローAの経路を選択する。具体的には、経路選択部205は、経路評価値の最も小さい経路を選択する。
【0047】
例えば、上記の例では、車両の状態が「通常走行」であれば、経路評価値の小さい経路Bが選択される。一方、車両の状態が「緊急事態」であれば、経路評価値の小さい経路Cが選択される。
【0048】
経路選択部205は、選択した経路を通信制御部201に通知する。通知を受けた通信制御部201は、選択された経路にパケットを送信する。
【0049】
[ハードウェア構成]
次に、送信ノード10のハードウェアについて説明する。
図5は、送信ノード10のハードウェア構成の一例を示す図である。送信ノード10は、
図5に例示する構成を備える。例えば、送信ノード10は、内部バスにより相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12及び通信手段であるNIC(Network Interface Card)13等を備える。なお、
図5に示す構成は、送信ノード10のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。送信ノード10には、図示しないハードウェアも含まれていてもよい。
【0050】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等である。
【0051】
NIC13は、例えば、イーサネット(登録商標)に対応したインタフェースカードである。あるいは、車両内ネットワークがCANにより構成されている場合には、NIC13には、CANに対応したインタフェースカードを用いる。
【0052】
上述の送信ノード10の各処理モジュールは、例えば、メモリ12に格納されたプログラムをCPU11が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能を何らかのハードウェア、及び/又は、ソフトウェアで実行する手段があればよい。
【0053】
なお、中継ノード20及び受信ノード30の処理構成、ハードウェア構成は当業者にとって明らかであるので説明を省略する。
【0054】
[送信ノードの動作]
続いて、図面を参照しつつ、送信ノード10の動作を説明する。
図6は、第1の実施形態に係る送信ノード10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0055】
送信ノード10は、車両情報を取得する(ステップS01)。送信ノード10は、通信経路情報と車両情報に基づき、フローの通信経路を選択する(ステップS02)。送信ノード10は、選択された通信経路にパケットを送信する(ステップS03)。
【0056】
以上のように、第1の実施形態に係る送信ノード10は、車両の状態や置かれた環境を考慮し、当該状態や環境に適した通信経路を選択しパケットを送信する。その結果、車両の状態や環境が変化する車両内通信ネットワークにおいて、フローの最適な通信経路が決定される。
【0057】
例えば、上記の「緊急事態」が電気自動車におけるバッテリー容量不足の場合、消費電力を極力抑えるオペレーションが求められる。上記経路Bは、hop数は3であるが、1Gbpsの回線で接続されているため、バッテリーの状態が通常であれば、経路Bの方が大容量データを伝送できるメリットがある。一方、何らかの理由でバッテリー残量が少なくなった場合、機能を縮退させ、安全な走行に不可欠な機能を維持するモードに移行することが求められる。また、経路Cは、回線速度が100Mbpsであるため1Gbpsの回線に比べて扱うデータ量は限定されるが、hop数が2であるため電力消費量の面でメリットがある。
【0058】
あるいは、車両状態が緊急事態の場合であって、受信ノード30が外部ネットワークに接続するためのモデム等であれば、経路選択部205は、hop数の少ない経路Cを選択し、より確実に緊急通報データを外部に送信するといった対応も可能となる。hop数が小さいということは、通信経路上の中継ノード20に障害が発生している可能性が低いことを意味するからである。
【0059】
このように、通常の経路設定であれば考慮しない電力消費、バッテリー残量というパラメータを経路選択に反映できるので、電気自動車等の安全性を向上させることができる。
【0060】
[変形例]
なお、上記実施形態にて説明した車両内通信システムの構成、動作は例示であって、システムの構成、動作を限定する趣旨ではない。例えば、送信ノード10は、車内ネットワークを管理し、無線通信機能を備え携帯網等を介して車両とクラウドとを接続するコネクテッドゲートウェイでもよい。つまり、送信ノード10には、無線通信部206が含まれていてもよい(
図7参照)。
【0061】
送信ノード10がコネクテッドゲートウェイであれば、事前に設定していた車両情報に紐づくパラメータ(各車両状態、置かれた環境に付与されたパラメータ)をクラウド側から遠隔で変更してもよい。
【0062】
また、車両とクラウドのサーバを接続することで、事前に想定していない車両状態が現出した場合には、コネクテッドゲートウェイ(送信ノード10)がクラウドにその旨を通知し、クラウドで新たに計算したパラメータを遠隔で設定してもよい。
【0063】
上記の説明により、本発明の産業上の利用可能性は明らかであるが、本発明は、自動運転システム、運転支援システム、Factory Automationなどに好適に適用可能である。
【0064】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]
上述の第1の視点に係る車載用通信装置のとおりである。
[付記2]
前記通信経路情報は、前記通信ネットワークに含まれる複数の通信経路ごとの中継ノード数及び回線速度に関する情報を含む、好ましくは付記1の車載用通信装置。
[付記3]
前記回線速度は、予め定めた規則により数値化されている、好ましくは付記2の車載用通信装置。
[付記4]
前記車両情報と、前記車両情報に予め付与された数値と、を関連付けて保持する記憶部をさらに備える、好ましくは付記3の車載用通信装置。
[付記5]
前記選択部は、通信経路ごとの前記中継ノード数、前記数値化された回線速度及び前記車両情報に付与された数値の総和に基づき、前記送信パケットを収容する通信経路を選択する、好ましくは付記4の車載用通信装置。
[付記6]
前記選択部は、前記総和が最小の通信経路を前記送信パケットを収容する通信経路に選択する、好ましくは付記5の車載用通信装置。
[付記7]
携帯網を介してクラウドのサーバにアクセスする、無線通信部をさらに備え、
前記車両情報に付与された数値は前記クラウドのサーバから可変に構成されている、好ましくは付記4乃至6のいずれか一に記載の車載用通信装置。
[付記8]
事前に想定していない車両情報が現出した場合には、前記クラウドのサーバで新たに計算された数値が前記車両情報に設定される、好ましくは付記7の車載用通信装置。
[付記9]
前記事前に想定していない車両情報が前記クラウドのサーバに通知される、好ましくは付記8の車載用通信装置。
[付記10]
上述の第2の視点に係る車両内通信システムのとおりである。
[付記11]
上述の第3の視点に係る通信方法のとおりである。
[付記12]
上述の第4の視点に係るプログラムのとおりである。
なお、付記10~付記12の形態は、付記1の形態と同様に、付記2の形態~付記9の形態に展開することが可能である。
【0065】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0066】
10 送信ノード
11 CPU(Central Processing Unit)
12 メモリ
13 NIC(Network Interface Card)
20、20-1~20-3 中継ノード
30 受信ノード
100 車載用通信装置
101 取得部
102 選択部
201 通信制御部
202 アプリケーション制御部
203 車両情報取得部
204 記憶部
205 経路選択部
206 無線通信部