(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】鋼板の非接触冷却方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20220222BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20220222BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220222BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220222BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20220222BHJP
B21D 22/20 20060101ALI20220222BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C21D1/00 123A
C21D1/00 119
C22C38/00 301Z
C22C38/38
B21D22/20 G
B21D22/20 H
B21D22/20 E
B21D22/20 Z
B21D24/00 M
(21)【出願番号】P 2017561763
(86)(22)【出願日】2016-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2016061101
(87)【国際公開番号】W WO2016192993
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-04-25
(31)【優先権主張番号】102015108514.3
(32)【優先日】2015-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102015113056.4
(32)【優先日】2015-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513069145
【氏名又は名称】フォエスタルピネ スタール ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】517407833
【氏名又は名称】フォエスタルピネ メタル フォーミング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ブルムマイヤー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エッツェルスドルファー クルト
(72)【発明者】
【氏名】ケルシュ ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】テューテヴォール ベネディクト
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507556(JP,A)
【文献】特表2014-505791(JP,A)
【文献】特開2013-123722(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101619383(CN,A)
【文献】特開2007-182608(JP,A)
【文献】特開2001-040421(JP,A)
【文献】国際公開第1998/041661(WO,A1)
【文献】特表2009-503258(JP,A)
【文献】特開昭51-060657(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026442(WO,A1)
【文献】米国特許第05871686(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0027026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00- 9/44
C21D 9/52- 9/66
C21D 1/00- 1/84
C22C 38/00-38/60
B21D 22/00-26/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼入れ鋼部品を生産するための方法であって、板ブランクが打ち抜かれ、前記打ち抜かれた板ブランクがAc3以上の温度に加熱され、オーステナイト形成を行うために所定の時間にわたりこの温度で保たれた後、全体が加熱された前記板ブランクが成形型に移され、前記成形型内で成形され、前記成形型内で臨界焼入れ速度を上回る速度で冷却され、これにより焼入れされ;前記板ブランクを450℃~700℃の範囲内の成形温度で急冷焼入れしてオーステナイトのマルテンサイトへの変態をし;前記加熱後、前記成形前に、前記板ブランクまたは前記板ブランクの部分が15K/sを上回る冷却速度で冷却される能動冷却が行われる、方法であって、
前記能動冷却では、高温の板ブランクの均一な非接触冷却のために、冷却装置(1)と高温表面を有する前記板ブランクとが互いに対して移動し;前記冷却装置(1)は、互いに平行に離間した少なくとも二つの冷却ブレード(2)を有し;前記冷却ブレード(2)は、前記板ブランクの方へ向けられ、ノズル(10)を備えたノズル縁(
6)を有し;前記ノズル(10)は、冷却流体を前記板ブランクの前記高温表面に向け、前記冷却流体は、前記高温表面に接触した後、前記冷却ブレード(2)間のスペース内を流れ去ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記板ブランクは、ホウ素、マンガン、炭素、ならびに任意にクロムおよびモリブデンを変態遅延剤として含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の組成分析の板ブランク(表示は全て質量%)が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法:
炭素(C) 0.08-0.6
マンガン(Mn) 0.8-3.0
アルミニウム(Al) 0.01-0.07
ケイ素(Si) 0.01-0.5
クロム(Cr) 0.02-0.6
チタン(Ti) 0.01-0.08
窒素(N) <0.02
ホウ素(B) 0.002-0.02
リン(P) <0.01
硫黄(S) <0.01
モリブデン(Mo) <1
残りは鉄および溶融関連不純物。
【請求項4】
以下の組成分析の板ブランク(表示は全て質量%)が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法:
炭素(C) 0.08-0.30
マンガン(Mn) 1.00-3.00
アルミニウム(Al) 0.03-0.06
ケイ素(Si) 0.01-0.20
クロム(Cr) 0.02-0.3
チタン(Ti) 0.03-0.04
窒素(N) 0.007
ホウ素(B) 0.002-0.006
リン(P) <0.01
硫黄(S) <0.01
モリブデン(Mo) <1
残りは鉄および溶融関連不純物。
【請求項5】
前記板ブランクは、亜鉛層を備え、前記板ブランクは、炉内でAc3以上の温度に加熱され、所定の時間にわたりこの温度で保たれた後、前記板ブランクは、前記亜鉛層を固化するために500℃~600℃の間の温度に冷却された後、前記板ブランクは、前記成形型に移されて成形されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記能動冷却は、前記冷却速度が30K/sを上回るように行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記能動冷却は、前記冷却速度が50K/sを上回るように行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
亜鉛または亜鉛合金で被覆された板ブランクが、前記板ブランクとして使用されることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却装置は移動デバイス(18)を有し、これにより前記板ブランクがX、YまたはZ軸に沿って移動できることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法を行うための、高温の板ブランクを冷却するための装置であって、前記冷却装置は、
互いに平行に離間して配置された少なくとも二つの冷却ブレード(2)を有し;前記冷却ブレード(2)は中空なものとして具体化され、ノズル縁(
6)を有し;前記ノズル縁(
6)内には、少なくとも一つのノズル(10)があり、前記板ブランクの方へ向けられ;複数の冷却ブレード(2)が配置される、装置であって、
移動デバイス(18)が提供され、前記移動デバイス(18)は、前記板ブランクを前記冷却ブレード(2)に対して移動させることができ;前記冷却装置は、前記板ブランクをX、YまたはZ軸に沿って移動させることができる前記移動デバイス(18)を有することを特徴とする、装置。
【請求項11】
前記冷却ブレード(2)はそれぞれ、前記ノズル縁(
6)で前記ノズル(10)間の距離の半分
ずつ互いにずれていることを特徴とする、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記冷却ブレード(2)は、冷却ブレード基部(3)と、冷却ブレード幅広側部(4)と、冷却ブレード幅狭側部(5)と、ノズル縁(6)と、を有し;前記ノズル縁(6)と、前記冷却ブレード幅広側部(4)と前記冷却ブレード幅狭側部(5)と、が空洞(7)を画成し、前記冷却ブレード(2)は、前記冷却ブレード基部(3)によりフレーム(8)内に置かれ;前記フレーム(8)は、流体供給の目的
で流体供給ボックス(16)上に置かれることを特徴とする、請求項
10または11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板の非接触冷却方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
技術分野においては、例えば平板の冷却が必要な場合だけでなく、例えばガラス生産においてガラス表面の冷却が必要な場合またはプロセッサユニットの冷却が必要な場合など、多くの領域で冷却工程が必要である。
【0003】
従来の冷却システムは、非常に高価であるか、例えば空気または水もしくは油等のその他の流体を吹きつけることによるなど非常に単純に保たれているが、これには表面上に好ましくない無制御の流れ状態が常に生じるという欠点があり、特に定義された冷却が必要な場合に問題となる。
【0004】
従来技術では、冷却されるべき平面上に不利な流れ状態、いわゆる横流が存在し、これにより不均一な表面温度が生じることを主に想定しなければならない。均一な材料特性を達成するために表面の当該領域に均一な温度が必要である場合には、これは特に不利である。特に、不均一な表面温度は反りも生じさせる。
【0005】
特許文献1は、移動する鋼ストリップを冷却するための装置を開示しており、この装置は、鋼ストリップの進行方向に対して横断方向に延びる複数の冷却フィンを有し、冷却フィンは冷却ノズルを有し、冷却ノズルは鋼ストリップに向けられ、移動鋼ストリップに冷却流体に吹きつけることができる。
【0006】
特許文献2は、同様の装置を開示しているが、この装置は、ノズルを有する冷却フィンの代わりに、ストリップに向けられ、自由端が移動する鋼ストリップに供給される流体のための出口開口部を有する、複数の冷却シリンダを有する。
【0007】
特許文献3は装置を開示しており、この装置は、同様に移動する鋼ストリップに向けられ、上述の先行技術と同様の方法で冷却流体のジェットにより鋼ストリップに作用する複数の冷却フィンを有し、ストリップの一方向に進行する移動から逸脱する移動を防ぐために、移動する鋼ストリップはローラにより張力をかけられる。
【0008】
特許文献4も移動する金属ストリップを冷却するための装置を開示しており、この装置では、ノズルを用いてガスボックスからガス導管を通してノズルストリップによりストリップ上に冷却剤が運ばれる。
【0009】
従来の冷却方法では、所定の目標温度の制御された達成ができず、達成可能な最大冷却速度に至るまでの実質的にいかなる冷却速度を系統的に設定することも不可能である。
【0010】
均一な温度条件に冷却されるべき冷却表面に異なる材料厚みまたは開始温度が存在する場合には、特に困難がある。
【0011】
板鋼で作製されたいわゆるプレス焼入れ部品が、特に自動車に使用されることが知られている。これらの板鋼で作製されたプレス焼入れ部品は、特に車体領域の安全部品として使用される高強度の部品である。この点では、これらの高強度の部品の使用により、標準強度の鋼と比較して材料厚みを減少させ、低車体重量を達成することが可能になる。
【0012】
プレス焼入れでは、基本的にこの種の部品を製造するための二つの異なる可能性がある。いわゆる直接法と間接法との間で区別がなされる。
【0013】
直接法では、鋼板ブランクがいわゆるオーステナイト化温度を上回る温度に加熱され、必要な場合には、所望の程度のオーステナイト化が達成されるまでこの温度に保たれる。それからこの加熱されたブランクが成形型に移され、この成形型においてワンステップ成形処理で完成部品に成形され、この過程で、冷却された成形型により臨界焼入れ速度を上回る速度で同時に冷却される。これにより、焼入れ部品が生産される。
【0014】
間接法では、場合によっては多段階成形工程において、まず部品がほぼ完全に成形される。その後この成形された部品が同様にオーステナイト化温度を上回る温度に加熱され、必要な場合には、所望の必要な期間この温度に保たれる。
【0015】
それから、この加熱された部品が、場合によっては予め成形された部品の熱膨張を考慮した、既に部品の寸法または部品の最終寸法を有する成形型に移されて挿入される。型、特に冷却された型が閉じられた後、予め成形された部品は、このようにこの型内で臨界焼入れ速度を上回る速度で冷却され、焼入れされるだけである。
【0016】
この点では、直接法のほうが実行するのがいくらか容易であるが、実際に一つの成形ステップで生産できる形、すなわち比較的単純な輪郭の形しか生産することができない。
【0017】
間接法のほうがいくらか複雑であるが、より複雑な形状を生産することも可能である。
【0018】
プレス焼入れ部品の必要性に加えて、被覆されていない鋼板からこの種の部品を生産するのではなく、腐食保護層を備えたこの種の部品を提供する必要性も生じている。
【0019】
自動車製造では、腐食保護層の選択肢は、使用頻度がはるかに少ないアルミニウムもしくはアルミニウム合金、または需要がはるかに多い亜鉛系被覆のみである。この点では、亜鉛は、アルミニウムのような保護バリヤ層を提供するだけでなく、陰極腐食保護も提供する利点がある。加えて、現在の一般的設計では車体が完全に亜鉛めっきされることから、亜鉛被覆プレス焼入れ部品は車体の全体的腐食保護により良く適合する。この点で、接触腐食の発生を減少または排除することさえ可能である。
【0020】
しかし、いずれの方法も、先行技術でも議論されている欠点を含む。直接法、すなわち亜鉛被覆を有するプレス焼入れ鋼の熱間成形では、材料にマイクロクラック(10μm~100μm)またはマクロクラックさえも生じ、マイクロクラックは被覆に生じ、マクロクラックは板の断面全体にまで延びる。このようなマクロクラックを有する部品は、さらなる使用に適さない。
【0021】
間接法、すなわち後続の焼入れおよび残りの成形を伴う冷間成形においても、マイクロクラックが被覆に生じ、これも望ましくないものであるが、はるかに目立たないものである。
【0022】
現在まで、アジア市場の部品を除き、亜鉛被覆鋼は直接法、すなわち熱間成形において広く使用されるようになっていない。この場合には、アルミニウム/ケイ素被覆を有する鋼が使用される。
【0023】
非特許文献1に概要が記載される。非特許文献1は、熱間成形工程には、Usibor 1500Pの名称で市販されるアルミメッキホウ素/マンガン鋼があると述べる。加えて、陰極腐食保護の目的では、亜鉛でプレコートされた鋼、すなわち低比率のアルミニウムを含む亜鉛被覆を有する溶融亜鉛メッキされたUsibor GI、および10%の鉄を含む亜鉛被覆を有するいわゆる合金化溶融亜鉛メッキされ被覆されたUsibor GAが熱間成形法のために販売されている。
【0024】
亜鉛/鉄相図から、782℃より高温では、鉄含量が低く、特に60%未満である限り液体亜鉛/鉄相が生じる大きな領域が生産されることが分かる点に留意する必要がある。しかし、これは、オーステナイト鋼が熱間成形される温度範囲でもある。しかし、成形が782℃より高温で行われる場合、ベース鋼の粒界に浸透し、ベース鋼にマクロクラックを引き起こすと考えられる流体亜鉛による応力腐食の高いリスクがある点にも注意しなければならない。さらに、被覆の鉄含量が30%未満の場合には、マクロクラックのない安全な製品の成形のための最高温度は782℃より低い。このため、本明細書においては直接成形法は用いられず、間接成形法が代わりに用いられる。その意図は、上述の問題を回避することである。
【0025】
この問題を回避するためのもう一つの選択肢は、合金化溶融亜鉛メッキされた被覆鋼を使用することにあるが、これは、最初に既に存在する10%の鉄含量およびFe2Al5バリヤ層の不存在により、主に鉄リッチな相からの被覆のより均一な形成がもたらされるためである。
この結果、亜鉛リッチな液体相が減少または回避される。
【0026】
非特許文献2は、亜鉛めっきされた板は直接法を用いて処理できないという事実に言及する。
【0027】
特許文献5は、被覆鋼製品を熱間成形する方法を開示しており、鋼材は、鋼材の表面に形成される亜鉛または亜鉛合金被覆を有し、被覆を有する鋼基材が700℃~1000℃の温度に加熱されて熱間成形され、加熱時の亜鉛の蒸発を防ぐために、鋼基材が亜鉛または亜鉛合金層とともに加熱される前に被覆は主に酸化亜鉛から構成される酸化物層を有する。このために特別な工程順序が提供される。
【0028】
特許文献6は、鋼を熱間成形する方法を開示しており、所与のホウ素/マンガン鋼から構成される部品がAc3点以上の温度に加熱され、この温度で保たれた後、加熱された鋼板が完成部品に成形され、MS点での冷却速度が少なくとも臨界冷却速度に対応し、MS点から200℃までの成形部品の平均冷却速度が25℃/s~150℃/sの範囲内であるように成形中または成形後に成形温度から冷却されることにより、成形部品がクエンチされる。
【0029】
本出願人に帰属する特許文献7は、板鋼から作製される焼入れ部品の生産方法を開示しており、この場合には、陰極腐食保護層が提供された鋼板から作製される成形部分が冷間成形された後、オーステナイト化のために熱処理され、成形部分の冷間成形前、冷間成形中または冷間成形後に、成形部分の最終トリミングおよび任意の必要な打ち抜きが行われるかまたは孔パターンが生産され、冷間成形、トリミング、打ち抜き、および部品上の孔パターンの配置は、最終焼入れ後の部品の寸法より0.5%~2%小さくならなければならず、熱処理のために加熱された冷間成形された成形部分はその後、少なくともいくつかの領域で、大気酸素の供給を伴って鋼材料のオーステナイト化を可能にする温度に加熱され、その後加熱された部品が型へ移され、この型内でいわゆる成形焼入れが行われて、成形焼入れ型による部品の接触およびプレス(保持)により部品が冷却されて焼入れされ、陰極腐食保護被覆は、亜鉛で主に構成され、一つ以上の酸素親和性の元素も含む混合物から構成される。その結果、加熱の間に酸素親和性の元素から構成される酸化被膜が腐食保護被覆の表面上に形成され、陰極腐食保護層、特に亜鉛層を保護する。この方法では、成形焼入れには校正も成形も必要ないように、部品の最終形状に関する縮尺の減少は部品の熱膨張も考慮に入れる。
【0030】
本出願人に帰属する特許文献8は、部分的に焼入れされた鋼部品の生産方法を開示しており、焼入れ可能鋼板で構成される板ブランクに対し、急冷焼入れに十分な温度上昇が行われ、所望の温度および場合によっては所望の曝露時間の後、板ブランクが成形型に移されて、板ブランクが部品に成形されると同時に急冷焼入れされ、あるいは板ブランクが冷間成形され、冷間成形から得られた部品に対しその後温度上昇が行われ、この温度上昇は、急冷焼入れに必要な部品の温度を達成するために行われ、その後部品が型に移されて加熱された部品が冷却されて急冷焼入れされ、焼入れに必要な温度に温度を上昇させるために板ブランクまたは部品を加熱する間に、より低い硬度および/またはより高い延性を有すべき領域に対して吸収塊が置かれ、またはこれらの吸収塊は小さな隙間によりこれらの領域から離間され、それらの膨張および厚み、熱伝導率および熱容量および/または放射率に関して、延性をとどめるべき部品の領域に加えられる熱エネルギーが部品を通って吸収塊に向かって流れるように特に寸法が設定され、その結果これらの領域はより低温のままであり、特に焼入れに必要な温度に達しないかまたは部分的にしか達せず、その結果これらの領域は焼入れされることができないかまたは部分的にしか焼入れされることができない。
【0031】
特許文献9は、鋼板を熱間成形および焼入れする方法を開示しており、この方法では、鋼板がAc3点より高温に加熱されてから、400℃~600℃の範囲の温度への冷却が行われ、この温度範囲が達成された後にのみ成形される。しかしこの文献は、クラックの問題または被覆に言及せず、マルテンサイト形成も記載していない。本発明の目的は、中間構造体、いわゆるベイナイトの生産である。
【0032】
特許文献10は、Mn鋼で構成され、鋼部品の成形前にZnNi合金被覆が提供された平鋼製品を成形することにより、金属の防食被覆が提供された鋼部品を生産する方法を開示している。この方法では、板ブランクが、ZnNi合金被覆で予め被覆されて、少なくとも800℃の温度に加熱される。この文献は、「液体金属脆化」の問題に言及しない。
【0033】
特許文献11は類似の方法を開示しているが、この方法では、板ブランクまたは成形された板ブランクは、一部の領域においてAc3より高い温度に加熱されるにすぎず、オーステナイト形成を行うために所定の時間にわたりこの温度で保たれた後、焼入れ型に移され、この焼入れ型内で焼入れされ、板ブランクは臨界焼入れ速度を上回る速度で冷却される。加えて、ここで使用される材料は遅滞変態材料であり、中間冷却段階では、より高温のオーステナイト化領域とより高温でない非オーステナイト化領域または部分的オーステナイト化領域が、それらの温度に関して適合され、板ブランクまたは成形された板ブランクが温度の点で均一化される。
【0034】
特許文献12は、焼入れ部品を生産する方法を開示しており、この場合、亜鉛または亜鉛合金で構成される被覆を有する焼入れ鋼部品を生産する方法が開示される。板ブランクがこの板から打ち抜かれ、打ち抜かれた板ブランクがAc3以上の温度に加熱され、必要に応じてオーステナイト形成を行うために所定の時間にわたりこの温度で保たれた後、成形型に移されて成形され、成形型内で臨界焼入れ速度を上回る速度で冷却され、これにより焼入れされる。この場合、450℃~700℃の範囲内の成形温度でオーステナイトのマルテンサイトへの変態を通じて急冷焼入れが生じるように、使用される鋼材は変態を遅延させる方法で調節され、オーステナイト化のための加熱後、成形の前に、板ブランクがオーステナイト化を確保する開始温度から450℃~700℃の間の温度に冷却されるように能動冷却が行われ、その結果、より低い温度にもかかわらずマルテンサイト焼入れが生じる。これは、行われている中間冷却により鉄/亜鉛系の包晶温度より低い温度で成形が生じるため、可能な限り少量の溶融亜鉛が成形段階の間、すなわち応力の導入時にオーステナイトと接触することを達成するはずである。冷却は空気ノズルにより行われることができるが、空気ノズルに限定されず、代わりに冷却テーブルまたは冷却プレスでも等しく使用可能である点に留意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【文献】米国特許第5,871,686号
【文献】米国特許出願公開第2011/0018178A1号
【文献】独国特許出願公開第69833424T2号
【文献】国際特許出願公開第2007/014406A1号
【文献】欧州特許第1439240B1号
【文献】欧州特許第1642991B1号
【文献】欧州特許第1651789B1号
【文献】国際公開第2010/109012A1号
【文献】独国特許出願公開第102005003551A1号
【文献】欧州特許第2290133A1
【文献】独国特許出願公開第102011053941A1号
【文献】独国特許出願公開第102011053939A1号
【非特許文献】
【0036】
【文献】「Corrosion resistance of different metallic coatings on press hardened steels for automotive」、Arcelor Mittal Maiziere Automotive Product Research Center F‐57283 Maiziere‐Les‐Mez
【文献】「STUDY OF CRACKS PROPAGATION INSIDE THE STEEL ON PRESS HARDENED STEEL ZINC BASED COATINGS」、Pascal Drillet、Raisa Grigorieva、Gregory Leuillier and Thomas Vietoris、8th International Conference on Zinc and Zinc Alloy Coated Steel Sheet、GALVATECH 2011‐Conference Proceedings、Genoa(Italy)、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
本発明の目的は、成形および焼入れのための鋼板の冷却の方法、および特に中間冷却の方法をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【0039】
有利な変更態様が、従属請求項に開示される。
【0040】
本発明のもう一つの目的は、本方法を実施するための装置を作製することである。
【0041】
この目的は、請求項15の特徴を有する装置により達成される。
【0042】
有利な変更態様が、同請求項に従属する従属請求項に開示される。
【0043】
本発明によれば、20℃~900℃の温度で、1平方メートル内で最大30℃の温度変動を可能にする冷却が確保される。使用される冷却媒体は、空気ガスおよび混合ガスであるが、水または他の流体であってもよい。以下でこれらの流体のうちの一つだけに言及がなされても、上述の流体の全てを表す。
【0044】
本発明は、低い投資費用と低い操業費用で、高いシステム可用性、高い柔軟性、および既存の生産工程への簡単な組込みの達成を可能にするはずである。
【0045】
本発明によれば、冷却されるべき表面がロボットまたはリニアドライブによりX、YまたはZ平面を移動し、冷却されるべき表面の任意の移動軌道および速度を予め設定することが可能である。この場合、XおよびY平面のレスト位置の周辺で振動が存在するのが好ましい。任意にZ平面に(すなわち垂直方向に)振動が存在することが可能である。
【0046】
片側または両側に冷却が存在することも容易に可能である。
【0047】
本発明による冷却ユニットは、互いに離間したノズルを有し、これらのノズルは互いに離間しているだけでなく、ボックス、サポートまたはその他の表面からも離間している。
【0048】
したがってこの場合の冷却ユニットは、高温プレートから流れ去る媒体がノズル間に十分な空間およびスペースを見つけ、ノズル間で効果的に運び去られうるように具体化され、その結果、横流または横断流が生じない。
【0049】
この場合ノズル間のスペースは、冷却速度を上昇させ、ひいては高温プレートから流れ去る冷却剤を効果的に運び去る、すなわちいわば吸い上げるために、追加の横流により作用を受けうる。しかしこの横流は、冷却剤のノズルからプレートへの流れ、すなわち自由流れを妨げてはならない。
【0050】
冷却デバイスはこの場合、冷却ブレードを有し、冷却ブレードは冷却ボックスから遠ざかるように延び、自由端または自由縁にノズルの列を有する。
【0051】
さらに、冷却デバイスは、サポート表面から突出する個別の冷却カラムの形で具体化されることもでき、これらの冷却カラムは、サポート表面の反対側に面した冷却カラムのフェースまたは先端上に少なくとも一つのノズルを支持する。この場合の冷却カラムは、円筒状断面または他の何らかの断面を有することができ、冷却カラムの断面は、所望の横流に適合されることもでき、平坦な座面に似た楕円形、多角形などとして具体化されうる。
【0052】
当然ながら、冷却ブレードが連続ではなく不連続なものとして具体化される、または冷却カラムが幅広の楕円形の形で具体化される場合に複数のノズルがカラム先端から突出する、混合形も可能である。
【0053】
ノズル開口部またはノズルの出口開口部の幾何形状は、単純な丸い幾何形状から、複雑な幾何学的に定義された実施形態まで広範囲にわたる。
【0054】
ノズルまたはノズル列が互いにずれており、その結果、ノズルがオフセットパターンまたは他のパターンを形成するように冷却カラムまたはブレードが互いにずらされうるのが好ましい。特に両側が冷却される場合には、これは下側のものに対する上部のノズルまたはノズル列の配置にもあてはまる。
【0055】
ノズルは、ノズルを通過する流れを制限することが可能であり、必要に応じて遮断することも可能であるように具体化されるのが好ましい。例えば、ガスの通過を制限できる個別のトリガ可能なピンが各ノズルに提供されることができる。例えば異なる冷却カラムの高さにより、ノズル出口開口部から冷却されるべき表面までの距離を異なって設定することで、例えば異なる冷却作用も達成することができる。この方法の利点は、各ノズルを通る連続した流れと、これにより、高さの変更により流れ抵抗は事実上変わらないことか容易に予測可能な流れ状態にある。
【0056】
本発明によれば、冷却されるべき表面上の好ましい流れのパターンは、ハニカム状構造を有するべきである。
【0057】
冷却が少なくとも一つの冷却ブレードにより行われる場合には、冷却ブレードはプレート状要素であり、基部から出口ストリップに向けて先細になることもでき、少なくとも一つのノズルが出口ストリップ内に取り付けられる。この場合、ブレードは、中空ブレードからノズルに冷却流体が供給されうるように、中空なものとして具体化される。ノズルは、くさび状要素により互いに離間されることができ、くさび状要素は、ノズルに向かう方向に流れる流体のためのスペースを狭めることもできる。
【0058】
特にこれは、出てくる流体噴射のねじれを生み出す。
【0059】
互いに隣り合って置かれた複数のブレードが提供され、ブレードは互いにずれているのが好ましい。
【0060】
ずれた配置により、冷却も互いにずれたポイントで生じ、これらのポイントが互いに一体となって均一な冷却を生み出し、出てくる流体は二つのブレードの間の領域に吸い上げられ、運び去られる。
【0061】
以下の条件が存在するのが好ましい:
ノズルの水力直径=DH、DH=4×A/U
物体からのノズルの距離=H
二つの冷却ブレード/冷却カラム間の距離=S
ノズルの長さ=L
L≧6×DH
H≦6×DH、特に4~6×DH
S≦6×DH、特に4~6×DH(千鳥配列)
振動=X、Y(場合によってはZ)における二つの冷却ブレード間の間隔距離の半分
冷却が冷却カラムにより行われる場合、冷却カラムは対応する様式で設けられる。
【0062】
この場合、冷却されるべき要素、例えば冷却されるべきプレートは、一方ではプレートの移動と他方ではノズルのずれた配置とにより、均一な冷却が達成されるように冷却流体がプレートの全領域を横断して流れることが確保されるように、移動されるのが好ましい。
【0063】
本発明は、図面に基づいて例として説明される。図面の説明は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】互いに平行に設けられた複数のノズルブレードの上面図である。
【
図2】
図1の断面A‐Aによるノズルブレードの配置を示した図である。
【
図3】
図2の断面線C‐Cによるノズルブレードの縦断面図である。
【
図4】ノズルを示した
図3の細部Dの拡大図である。
【
図6】ブレードの配置にずれがある、ノズルブレードの縁領域の拡大詳細図である。
【
図7】冷却ブロックに統合された本発明による冷却ブレードの配置の斜視図である。
【
図9】本発明による冷却ブレードの内部の図である。
【
図10】フレームにおけるノズルカラムの配置の非常に概略的な斜視図である。
【
図13】冷却ボックスを伴った
図10~12による実施形態の図である。
【
図14】冷却されるべきプレート、温度分布および流体温度分布を示した、冷却ブレードとノズルの図である。
【
図16】互いにずらして設けられた本発明による複数の冷却ブレードから構成された二つの対向する冷却ボックスと、冷却されるべき物品を受け取って運ぶ移動台車との配置を示した概略図である。
【
図17】本発明による装置で冷却されたプレート上の温度分布を示した図である。
【
図18】構造化された冷却された部品を示した図である。
【
図19】炉と成形処理との間の冷却の時間/温度曲線を示した図である。
【
図20】異なって加熱された領域を有する金属板の対応する冷却曲線を示した亜鉛/鉄図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に、一つの可能な実施形態を説明する。
【0066】
本発明による冷却装置1は、互いに離間したノズル10を有する冷却デバイス2、15を有し、ノズル10は、互いに離間しているだけでなく、冷却デバイス2、15を支持するボックス16、キャリアまたはその他の表面からも離間している。
【0067】
冷却デバイス2、15はこの場合、高温プレートから遠ざかるように流れる媒体がノズル10の間に十分な空間およびスペースを見つけ、いわばノズルの間に突入することができ、これにより冷却されるべき表面上に横流または横断流が生じないように、相応に具体化される。
【0068】
この場合、ノズル10間のスペースは、流速を上昇させて、ひいては流れ去る冷却媒体をいわば吸い上げるために、追加の横流により作用を受けうる。しかしこの横流は、冷却媒体のノズルからプレートへの到達、すなわち自由流れを妨げてはならない。
【0069】
冷却装置1はこの場合、少なくとも一つの冷却ブレード2の形の冷却デバイス2を有することができ、この冷却ブレード2は、冷却ボックス16から遠ざかるように延び、自由端または自由縁6にノズル10の列を有する。
【0070】
冷却デバイスは、表面から上へ突出する個別の冷却カラム15を有することもでき、これらの冷却カラム15はそれぞれ、表面の反対側に面した冷却カラム15のフェースまたは先端17上に少なくとも一つのノズル10を支持する。冷却カラム15はこの場合、円筒状断面または他の断面を有することができ、冷却カラム15の断面は、所望の横流に適合されることもでき、平坦な座面に似た楕円形などとして具体化されることもできる。
【0071】
当然ながら、冷却ブレード2が連続ではなく不連続なものとして具体化される、または冷却カラム15が幅広の楕円形の形で具体化される場合に複数のノズル10がカラム先端から突出する、混合形も可能である。もう一つの考えられる変形例は、複数の冷却カラムがバッフルにより接続され、横流に影響することを可能にすることである。
【0072】
ノズル開口部またはノズルの出口開口部の幾何形状は、単純な丸い幾何形状から、複雑な幾何学的に定義された実施形態まで広範囲にわたる。
【0073】
ノズル10またはノズル列は互いにずらして配置され、その結果、ノズル10がオフセットパターンまたは何らかの他のパターンを形成するように冷却カラム15またはブレード2も互いにずらして配置されうることが好ましい。
【0074】
本発明による冷却装置1の一例は、少なくとも一つの冷却ブレード2を有する。冷却ブレード2は細長フラップの形で具体化され、冷却ブレード基部3と、冷却ブレード基部から遠ざかるように延びる二つの冷却ブレード幅広側部4と、冷却ブレード幅広側部を接続する二つの冷却ブレード幅狭側部5と、自由ノズル縁6とを有する。
【0075】
冷却ブレード2は、冷却ブレード空洞7を有する中空のものとして具体化され、この空洞は、冷却ブレード幅広側部4と、冷却ブレード幅狭側部5と、ノズル縁6とにより囲まれ、冷却ブレードは基部3で開いている。冷却ブレードは冷却ブレード基部3によりフレーム8に挿入され、フレーム8は、中空流体供給ボックス16上に置かれうる。
【0076】
ノズル縁6の領域には、空洞7内に達する複数のノズル10または開口部が提供され、これにより流体がノズル10を通って空洞から外に流出することができる。
【0077】
ノズル10からノズル導管11が空洞7内へと延び、少なくともノズル縁6の領域でノズル10を空間的に互いに分離する。ノズル導管11はこの場合、ノズル導管またはノズルがくさび形ストラット12により互いに分離されるように、くさび形であるものとして具体化されるのが好ましい。ノズル導管は、入って来る流体がノズル導管の狭小化によって加速されるように空洞7に向かう方向に広がるように、具体化されるのが好ましい。
【0078】
冷却ブレード幅広側部4は、空洞7がノズル縁6に向かう方向に狭くなるように、冷却ブレード基部3からノズル縁6に向かって収束するように具体化されうる。
【0079】
加えて、冷却ブレード幅狭側部5は、収束または発散するように具体化されうる。
【0080】
少なくとも二つの冷却ブレード2が提供され、幅広側部に対して互いに平行に設けられるのが好ましく、ノズル10の間隔に関しては、冷却ブレード2は、ノズルの半分の距離互いにずれている。
【0081】
二つより多い冷却ブレード2が存在することも可能である。
【0082】
ノズル10は、ノズル縁6のスパンに関して、同じくノズル縁6と縦方向に一列にあるように具体化されうるが、ノズル10は、円形であるように、楕円形でノズル縁6と揃えられるようにまたは楕円形でノズル縁6に対して横断方向であるように、六角形、八角形または多角形であるようにも具体化されうる。
【0083】
特に、ノズル10もノズル縁の縦方向スパンに関して縦長に、特に縦長の楕円形または縦長の多角形の形で具体化される場合には、これにより、出てくる流体噴射のねじれが生じ(
図10および11)、ノズルの離間距離の半分ずれた配置により、対応してずれた冷却パターンがプレート状物体上に得られる(
図10)。
【0084】
別の有利な実施形態(
図10~13)では、フレーム8に複数の突出する冷却カラム15またはシリンダ15が提供され、これらはそれぞれが、自由外側先端17またはフェース17に少なくとも一つのノズル10を有する。このフレーム8も、冷却ボックス16に流入する流体がそれぞれの冷却カラム15およびノズル10から出るように、冷却ボックス16(
図13)に挿入される。冷却ブレード2と対照的に、本実施形態ではノズル10はいわば孤立しており、ノズル10およびそれらの形状について、ならびにノズル導管11についての上述の説明は、本実施形態にも当てはまる。
【0085】
ノズル導管11内には、軸方向に滑動することにより有効ノズル断面積を減少させてガス流に影響を与えることができるデバイスが提供されうる。例えば、このようなデバイスは、出口領域のノズルの断面に対応する断面をもつピンの形で好適に具体化されることができ、これらのピンは、例えば円錐形状を有するなど、ノズル導管11の形状に適合されることができる。ピンは、ノズル導管に滑入されたときに有効ノズル断面積またはノズル導管断面積を減少させてガス流および流速に影響を与えるように、個別に滑動する様式で具体化されうる。
【0086】
ピンが完全に中まで滑入されたときには、ノズル10が完全に閉じられるのが好ましい。
【0087】
ノズル10のピンは、個別に、一列ずつ、ブレードごとに、または他の何らかの方法でまとめてトリガされることができ、冷却されるべき物品が均一に冷却されるのではなく異なる強度で冷却されるように冷却デバイス内にある流れプロフィールを生み出すことが可能である。
【0088】
ピンのかわりに、冷却されるべき物品に対する所望の流れプロフィールを確保する自由に具体化された口またはダイヤフラムを使用することも可能である。
【0089】
冷却速度に影響を与えるために、冷却ブレードまたは冷却カラムの長さおよび/または高さを部分的に変更することも考えられる。
【0090】
この冷却への影響は、第一に平板ブランクの異なるレベルの冷却を提供して機械的性質の異なる領域を生産するために多くの企図された用途に有利であるだけでなく、厚みの異なる板セクションおよび/または異なって焼戻しされた板領域をそれぞれに適合された冷却速度で冷却して均一に焼戻しされた物品を得るためにテーラード溶接ブランク(TWB:tailor‐welded blank)、テーラードロールドブランク(TRB:tailor‐rolled blank)、またはテーラード加熱ブランク(THB:tailor‐heated blank)にも有利である。
【0091】
対応する速度プロフィールは、対応する分布も生じる(
図15)。
【0092】
本発明によれば、ノズル10から流出する流体は確かに冷却されるべき物体の表面にぶつかるが(
図10および11)、明らかに流れ去って冷却装置1の少なくとも二つのブレード2または冷却カラム15の間に突入し、その結果冷却されるべき物体の表面での冷却流が中断されないことが分かっている。
【0093】
例えば、冷却装置1(
図12)は、フレーム8内に二つの冷却ブレード2の配置または二列の冷却カラム15を有し、フレーム8は対応する流体供給源14を備えて具体化され、特に冷却ブレード2または冷却カラム15と反対に向いた側には、特に加圧流体の供給により加圧流体を含む流体ボックス16が提供される。
【0094】
加えて、移動デバイス18が提供され、移動デバイス18は、冷却されるべき物体が、冷却されるべき物体の両側に冷却作用が及ぼされうるようなやり方で対向する冷却ブレードの配置の間を通って運ばれうるように具体化される。連続プレス焼入れシステムの移動デバイスに関して、例えば炉とプレスとの間の移送デバイスは、例えばロボットまたはリニアドライブにより操作されることができる。この場合の好ましい実施形態では、冷却されるべき物体は移動デバイスにより下に置かれる必要はなく、再び把持される必要はない、すなわち冷却は、冷却されるべき物体が把持された状態のときに炉からプレスまでの途中で行われる。
【0095】
この場合の冷却されるべき物体からノズル縁6までの距離は、例えば5mm~250mmである。
【0096】
冷却されるべき物体に対する冷却装置1の相対的移動または冷却装置1に対する冷却されるべき物体の相対的移動により、
図10による冷却パターンが冷却されるべき物体の表面を横断し、高温の物体から流れ去る媒体は、冷却ブレード2または冷却カラム15の間に十分な空間を見つけ、したがって冷却されるべき表面上には横流が生じない。
【0097】
本発明によれば、間のスペースは、高温の物体に対して流れる媒体がブレードの間に吸い上げられるようにするために、追加の横流を利用しつつ、対応する流れ媒体によって作用を受ける。
【0098】
本発明によれば、プレス焼入れ鋼材としての用途の22MnB5または20MnB8等の従来のホウ素/マンガン鋼がオーステナイトの他の相への変態に関して使用され、この材料では、変態がより低い範囲にシフトされ、マルテンサイトが形成されうる。
【0099】
したがって以下の合金組成の鋼が本発明に適する(表示は全て質量%):
【0100】
【0101】
特に合金元素のホウ素、マンガン、炭素および任意にクロミウムおよびモリブデンが、このような鋼において変態遅延剤として使用される。
【0102】
以下の一般的合金組成の鋼も、本発明に適する(表示は全て質量%):
【0103】
【0104】
以下の鋼組成が特に適切であることが分かっている(表示は全て質量%):
【0105】
【0106】
変態遅延剤として機能する合金元素を調整することにより、780℃未満の温度でも急冷焼入れ、すなわち臨界焼入れ速度を上回る冷却速度による急速冷却が確実に達成される。これは、この場合、亜鉛/鉄系の包晶点未満で行程が行われること、すなわち機械的応力が包晶点未満でのみ及ぼされることを意味する。これは、機械的応力が及ぼされる瞬間には、オーステナイトと接触しうる亜鉛相がもはや存在しないことも意味する。より大きな変態遅延を設定するもう一つの利点は、これにより冷却デバイスと成形プレスとの間のより長い移送時間が可能になり、これを利用して、冷却されるべき物体内の熱伝導により、追加的な温度の均一化を達成できることである。
【0107】
図19は、オーステナイト化鋼板の有利な温度進行を示し、オーステナイト化温度より高温への加熱および冷却デバイス内の対応する配置の後、ある程度の冷却がすでに起こっていることが明らかである。この後に、急速中間冷却段階が続く。中間冷却段階は、少なくとも15K/s、好ましくは少なくとも30K/s、より好ましくは少なくとも50K/sの冷却速度で都合よく実行される。その後、板ブランクがプレスへ移され、成形および焼入れが行われる。
【0108】
図20の鉄/炭素図は、例えば異なる高温領域を有する板ブランクがどのように対応して処理されるかを示す。この場合図は、焼入れされる高温領域につき800℃~900℃の間の高い開始温度を示す一方で、軟質領域は700℃未満の温度に加熱されており、特にその後焼入れが行われることはできない。約550℃またはわずかに低い温度で均熱化が見られ、より高温の領域の強い冷却後、軟質領域の温度は約20K/sで急速冷却を受ける。
【0109】
本発明の目的上、この点に関しては、(元)高温領域の温度と(元)より低温の領域の温度との間に、(両方向に)75℃以下、特に50℃以下の差がまだ存在するように均熱化が実施されれば十分である。
【0110】
均一に加熱された板ブランクでは、板ブランクを冷却装置内に置き、冷却ブレードのノズルにより均一な流れのガス冷媒を向け、これにより一定なより低い温度に冷却することによって、中間冷却が実施されるのが好ましい。
【0111】
板ブランクが一部の領域だけオーステナイト化温度に加熱される場合には、板ブランクの温度の均一化を達成するために高温領域だけが少なくとも亜鉛/鉄図の包晶温度に冷却され、残りの領域はより少ない流れを受けるかまたは流れを全く受けないように、ノズルおよび/または冷却ブレードがトリガされ、特にノズルがデバイスまたはピンによりトリガされる。これにより、温度に関して均一な板ブランクが成形およびクエンチデバイスに挿入されることが確保される。
【0112】
異なる板、すなわち鋼の特性が異なる板または厚みが異なる板で構成される板ブランクを処理することも可能である。例えば、より厚い板のほうが同じ温度の対応するより薄い板よりも強く冷却されなければならないことから、異なる厚みの異なる板で構成される複合板ブランクも異なって冷却されなければならない。したがって本装置は、アセンブルまたは溶着された異なる厚みの板要素で構成されるかまたは異なる圧延厚みで構成されるかに関わらず、板の厚みが異なる板ブランクの急速で均一な中間冷却を行うことも可能である。
【0113】
本発明により、安価であり目標温度および可能なスループット時間に関して高度の可変性を有する、高温要素の均一な冷却を有利に達成することが可能である。
【0114】
本発明は、鋼板ブランクを成形型または成形焼入れ型に挿入する前に、非常に信頼性のある方法でその全領域にまたは一部の領域に非常に正確で信頼性が高く非常に急速な中間冷却を行うことができるという利点も提供する。
【符号の説明】
【0115】
1 冷却装置
2 冷却ブレード
3 冷却ブレード基部
4 冷却ブレード幅広側部
5 冷却ブレード幅狭側部
6 ノズル縁
7 空洞
8 フレーム
10 ノズル
11 ノズル導管
12 くさび形ストラット
14 流体供給源
15 カラム
16 ボックス
17 カラム縁/先端
18 移動方向