IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧 ▶ ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーションの特許一覧

特許7028515電力変換装置の制御装置および電動機駆動システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置および電動機駆動システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/04 20060101AFI20220222BHJP
   H02P 21/24 20160101ALI20220222BHJP
   H02P 21/36 20160101ALI20220222BHJP
【FI】
H02P21/04
H02P21/24
H02P21/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018003023
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019013129
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】15/636,916
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュ
(72)【発明者】
【氏名】飯田 亮
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディー ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ユカイ ワン
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240193(JP,A)
【文献】特開2006-006038(JP,A)
【文献】特開2016-010311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/04
H02P 21/24
H02P 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置に駆動される電動機の速度推定値と速度指令値に基づいて、前記電力変換装置へのトルク指令値を演算するトルク指令値演算部と、
前記トルク指令値演算部により演算されたトルク指令値と前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値とに基づいて、前記電力変換装置の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、
前記電力変換装置の出力電圧に基づいて前記電力変換装置への電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、
前記電動機の電気角の推定値と前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記電動機の固定子電流の実測値と前記速度推定値とに基づいて次の制御周期における前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値を演算する磁束推定部と、
前記磁束推定部により演算された推定値に基づいて次の制御周期における前記電動機の電気角の推定値と前記速度推定値を演算する電動機速度推定部と、
を備え
前記磁束推定部は、
前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記固定子電流の実測値とに基づいて次の制御周期における前記固定子電流の推定値を演算する電流観察部と、
電動機速度推定部により推定された前記電動機の前記電気角の推定値と固定子電流の実測値とに基づいて前記回転子磁束の推定値を演算する第1磁束推定部と、
前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記電流観察部により推定された推定値と前記固定子電流の実測値と前記第1磁束推定部により推定された前記回転子磁束の推定値とに基づいて次の制御周期における前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値を演算する第2磁束推定部と、
を備えた電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記電動機速度推定部は、前記磁束推定部により演算された推定値に基づいて磁束ベクトルの位相の推定値を演算し、当該磁束ベクトルの位相の推定値に基づいて次の制御周期における前記電動機の速度の推定値を演算する請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
電動機を駆動する電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する請求項1または請求項2に記載の制御装置と、
を備えた電動機駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置の制御装置および電動機駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置の制御装置を開示する。当該制御装置によれば、応答性のよいブレーキを電動機にかけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9281772号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置においては、電動機の固定子磁束の推定における誤差が存在する。このため、電動機の速度の遅い領域において、制御の精度を維持することができない。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、電動機の速度を遅くしても、制御の精度を維持することができる電力変換装置の制御装置および電動機駆動システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換装置の制御装置は、電力変換装置に駆動される電動機の速度推定値と速度指令値に基づいて、前記電力変換装置へのトルク指令値を演算するトルク指令値演算部と、前記トルク指令値演算部により演算されたトルク指令値と前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値とに基づいて、前記電力変換装置の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、前記電力変換装置の出力電圧に基づいて前記電力変換装置への電圧指令値を補正する電圧指令値補正部と、前記電動機の電気角の推定値と前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記電動機の固定子電流の実測値と前記速度推定値とに基づいて次の制御周期における前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値を演算する磁束推定部と、前記磁束推定部により演算された推定値に基づいて次の制御周期における前記電動機の電気角の推定値と前記速度推定値を演算する電動機速度推定部と、を備え前記磁束推定部は、前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記固定子電流の実測値とに基づいて次の制御周期における前記固定子電流の推定値を演算する電流観察部と、電動機速度推定部により推定された前記電動機の前記電気角の推定値と固定子電流の実測値とに基づいて前記回転子磁束の推定値を演算する第1磁束推定部と、前記電圧指令値補正部により補正された電圧指令値と前記電流観察部により推定された推定値と前記固定子電流の実測値と前記第1磁束推定部により推定された前記回転子磁束の推定値とに基づいて次の制御周期における前記電動機の固定子磁束と回転子磁束との推定値を演算する第2磁束推定部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る電動機駆動システムは、電動機を駆動する電力変換装置と、前記電力変換装置を制御する前記制御装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明によれば、電動機の固定子磁束の推定値は、補正された電圧指令値に基づいて演算される。このため、電動機の固定子磁束の推定精度が改善される。その結果、電動機の速度を遅くしても、制御の精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電動機システム1の構成図である。
図2】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置の要部のブロック図である。
図3】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置により電圧指令値が補正されない場合の電動機の固定子磁束の推定値を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置により電圧指令値が補正される場合の電動機の固定子磁束の推定値を示す図である。
図5】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置により制御された電動機の速度の推定値を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置により制御された電動機の速度の推定値を示す図である。
図7】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置により制御された電動機の速度の推定値を示す図である。
図8】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での速度リップルと逆起電力追跡法による制御での速度リップルとの比較を示す図である。
図9】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での速度リップルと逆起電力追跡法による制御での速度リップルとの比較を示す図である。
図10】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での速度リップルと逆起電力追跡法による制御での速度リップルとの比較を示す図である。
図11】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御のトルク指令リップルと逆起電力追跡法による制御のトルク指令リップルとの比較を示す図である。
図12】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御のトルク指令リップルと逆起電力追跡法による制御のトルク指令リップルとの比較を示す図である。
図13】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御のトルク指令リップルと逆起電力追跡法による制御のトルク指令リップルとの比較を示す図である。
図14】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性を示す図である。
図15】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性を示す図である。
図16】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性を示す図である。
図17】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性のコヒーレンスを示す図である。
図18】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性のコヒーレンスを示す図である。
図19】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における動作制御の動剛性のコヒーレンスを示す図である。
図20】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御ではなくて逆起電力追跡法による制御での電動機の速度を示す図である。
図21】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での電動機の速度を示す図である。
図22】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御ではなくて逆起電力追跡法による制御での電動機へのトルク指令を示す図である。
図23】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での電動機へのトルク指令を示す図である。
図24】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での電動機の速度を示す図である。
図25】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での電動機2へのトルク指令を示す図である。
図26】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機へのトルク指令を示す図である。
図27】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置の制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機へのトルク指令を示す図である。
図28】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置の制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機へのトルク指令を示す図である。
図29】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機の速度を示す図である。
図30】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機の速度を示す図である。
図31】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の電動機の速度を示す図である。
図32】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の磁束指令値を示す図である。
図33】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の磁束指令値を示す図である。
図34】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御において電動機の負荷トルクがステップ状に変化した際の磁束指令値を示す図である。
図35】この発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電動機システムの構成図である。
【0012】
図1において、電動機システム1は、電動機2と電動機駆動システム3とを備える。例えば、電動機2は誘導電動機である。
【0013】
電動機2の出力部は、負荷機械4の入力部に接続される。例えば、負荷機械4は、慣性負荷である。
【0014】
電動機駆動システム3の入力部は、交流電源5の出力部に接続される。例えば、交流電源5は、商用電力系統である。
【0015】
電動機駆動システム3は、ダイオード整流器6とコンデンサ7とインバータ8と第1電流検出器9aと第2電流検出器9bと第1電圧検出器10aと第2電圧検出器10bと制御装置11とを備える。
【0016】
ダイオード整流器6は、交流電源5から供給された三相交流電力を直流電力に変換する。
【0017】
コンデンサ7は、ダイオード整流器6の出力側の直流リンクに設けられる。コンデンサ7は、直流リンクに印加される直流電圧を平滑化する。
【0018】
インバータ8は、ダイオード整流器6から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。インバータ8は、三相交流電力を電動機2に出力する。インバータ8は、電圧形インバータである。インバータ8は、PWM制御によりVVVF制御される。
【0019】
インバータ8の電力変換回路は、3相回路で構成される。1つの相は、上アームと下アームで構成される。上アーム及び下アームは、少なくとも1つのスイッチング素子を備える。
【0020】
第1電流検出器9aは、インバータ8の出力側のv相に設けられる。第1電流検出器9aは、v相固定子電流Ivsを検出する。第2電流検出器9bは、インバータ8の出力側のw相に設けられる。第2電流検出器9bは、w相固定子電流Iwsを検出する。
【0021】
第1電圧検出器10aは、インバータ8の出力側のv相に設けられる。第1電圧検出器10aは、v相固定子電圧Vvuを検出する。第2電流検出器9bは、インバータ8の出力側のw相に設けられる。第2電圧検出器10bは、w相固定子電圧Vwuを検出する。
【0022】
第1電圧検出器10aは、インバータ8の出力側のu相とv相との間に設けられてもよい。この場合、第1電圧検出器10aは、固定子線間電圧Vuvを検出する。第2電圧検出器10bは、インバータ8の出力側のu相とw相との間に設けられてもよい。この場合、第2電圧検出器10bは、固定子線間電圧Vuwを検出する。
【0023】
制御装置11は、速度制御部12とブレーキ用制御切替部13とDB-DTFC演算部14と第1座標変換部15とPWM制御部16と第2座標変換部17と減算部18と電圧指令値補正部19と電流・磁束推定部20と速度・位相推定部21とを備える。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【数1】
【0036】
補正された電圧指令値は、次の(2)式で表される。
【数2】
【0037】
このように、電圧指令値は、1制御周期分だけ遅れて補正される。
【0038】
【0039】
【0040】
次に、図2を用いて、電流・磁束推定部20と速度・位相推定部21とを説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置の要部のブロック図である。
【0041】
図2に示されるように、電流・磁束推定部20は、電流観察部22と第1磁束推定部23と第2磁束推定部24とを備える。
【0042】
【0043】
【0044】
具体的には、電流観察部22は、第1ブロック22aと第2ブロック22bと第3ブロック22cと第4ブロック22dと第5ブロック22eと第6ブロック22fと第7ブロック22gとを備える。
【0045】
【0046】
【0047】
【数3】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【数4】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
具体的には、第1磁束推定部23は、第1ブロック23aと第2ブロック23bと第3ブロック23cとを備える。
【0056】
【0057】
第1ブロック23aの出力は、第2ブロック23bの入力である。
【0058】
第2ブロック23bは、第1ブロック23aにより演算された値と次の(5)式で表される伝達関数G3とを乗じることにより一次ホールドの固定子dq軸磁束推定値を演算する。
【0059】
【数5】
【0060】
第2ブロック23bの出力は、第3ブロック23cの入力である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
具体的には、第2磁束推定部24は、第1ブロック24aと第2ブロック24bと第3ブロック24cと第4ブロック24dと第5ブロック24eと第6ブロック24fと第7ブロック24gと第8ブロック24hと第9ブロック24iと第10ブロック24jを備える。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
第4ブロック24dと第5ブロック24eと第6ブロック24fとは、遷移周波数決定部24kとして機能する。遷移周波数決定部24kは、第1磁束推定部23と第2磁束推定部24との間の遷移周波数を決定する。
【0069】
具体的には、第4ブロック24dは、第2ブロック24bにより演算された値と比例ゲインKとを乗じた値を演算する。
【0070】
第5ブロック24eは、ゲインKの積分回路である。第5ブロック24eは、第2ブロック24bの出力の積分値を演算する。
【0071】
第6ブロック24fは、第3ブロック24cにより演算された値と第4ブロック24dにより演算された値と第5ブロック24eにより演算された値とを足し合わせることにより電動機2の入力電圧の値を演算する。
【0072】
【0073】
【0074】
【数6】
【0075】
【0076】
【0077】
【数7】
【0078】
例えば、電動機2の回転子磁束の周波数が遷移周波数よりも低い場合、第1磁束推定部23が支配的となる。例えば、電動機2の回転子磁束の制御周波数が遷移周波数よりも高い場合、第2磁束推定部24が支配的となる。その結果、固定子dq軸磁束推定値が正確に演算される。
【0079】
速度・位相推定部21は、位相推定部25とすべり角度推定部26と磁束ベクトル回転部27と位相誤差推定部28と速度/位置観察部29とを備える。
【0080】
【0081】
【数8】
【0082】
【0083】
【数9】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
具体的には、速度/位置観察部29は、第1ブロック29aと第2ブロック29bと第3ブロック29cと第4ブロック29dと第5ブロック29eと第6ブロック29fと第7ブロック29gと第8ブロック29hと第9ブロック29iと第10ブロック29jと第11ブロック29kとを備える。
【0088】
【0089】
第2ブロック29bは、位相誤差推定部28により推定された推定値θerrとゲインKsoとを乗じることにより位相誤差推定部28により推定された推定値θerrを補正する。
【0090】
第3ブロック29cは、位相誤差推定部28により推定された推定値θerrとゲインbとを乗じる。
【0091】
第4ブロック29dは、第1ブロック29aにより演算された値と第2ブロック29bにより演算された値とを足し合わせた値を演算する。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
図3図4とに示されるように、電圧指令値が補正される場合、電動機2の固定子磁束の推定値の歪みが低減される。その結果、電圧指令値が補正される場合、電動機2の固定子磁束はより正確に推定される。
【0100】
【0101】
図5から図7に示されるように、負荷の条件が0から1.0puの全ての条件において、電動機2の速度(回転子の角速度)は、0.01puまで下げられる。その結果、制御装置11による制御の動作範囲は、かなり広がる。
【0102】
次に、図8から図13を用いて、速度リップルとトルク指令リップルとを説明する。
図8から図10はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による制御での各負荷条件(T)における速度リップルと逆起電力追跡法による制御での速度リップルとの比較を示す図である。図11から図13はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置による各負荷条件(T)における制御のトルク指令リップルと逆起電力追跡法による制御のトルク指令リップルとの比較を示す図である。
【0103】
制御装置11による制御においては、逆起電力追跡法による制御に比べてリップルが少ない。このため、トルク指令値に対しても、ノイズが少ない。
【0104】
逆起電力追跡法による制御においては、信号対雑音比が電動機2の速度が下がることにより悪くなる。この際、速度リップルとトルク指令リップルとは急激に増える。これに対し、制御装置11による制御においては、速度リップルとトルク指令リップルとは、電動機2の速度が下がっても大きく増えない。
【0105】
例えば、図8から図10に示されるように、制御装置11による制御の速度リップルは、逆起電力追跡法による制御の速度リップルに比べて減る。
【0106】
例えば、図11から図13に示されるように、制御装置11による制御のトルク指令リップルは、逆起電力追跡法による制御のトルク指令リップルに比べて減る。
【0107】
その結果、制御装置11による制御の動作範囲は、逆起電力追跡法による制御の動作範囲に比べて大幅に広がる。
【0108】
次に、図14から図19を用いて、制御装置11における動剛性を説明する。
図14から図16はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における各負荷条件(T)における制御の動剛性を示す図である。図17から図19はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置における各負荷条件(T)における制御の動剛性のコヒーレンスを示す図である。
【0109】
図14から図19に示されるように、負荷の条件が0から0.8puの条件に対し、電動機2の速度が0.01puでも、動剛性は優れている。その結果、電動機2の固定子磁束の追跡がより容易になる。
【0110】
【0111】
図20から図24において、速度指令値は、0.05puから-0.05puを経て0.05puに戻る。この際、加速率は、0.084pu/sである。図20図21の比較及び図22図23の比較に示されるように、制御装置11による制御でのゼロ速度交差動作は、逆起電力追跡法による制御でのゼロ速度交差動作に比べて滑らかである。
【0112】
図24図25において、速度指令値は、0.01puから-0.01puを経て0.01puに戻る。この際、加速率は、0.034pu/sである。図22から図25に示されるように、制御装置11による制御でのゼロ速度交差動作は、非常に小さな加速率においても比較的滑らかである。
【0113】
【0114】
図26から図28に示されるように、トルク指令は、電動機2の負荷トルクがステップ状に変化した際に0.4puから0.7puまで変化する。
【0115】
図29から図31に示されるように、電動機2の速度は、負荷トルクがステップ状に増えたときに下がるものの、直ぐに速度指令値を追跡する。
【0116】
図32から図34に示されるように、電動機2の固定子磁束指令値は、電動機2の速度推定値と負荷トルクとの条件に基づいて定常状態の損失が最小となるようにオンラインで演算される。例えば、負荷のトルクが小さい場合、当該固定子磁束指令値は、全体的な損失を減らすように小さくなる。例えば、負荷のトルクが大きい場合、当該固定子磁束指令値は、大きくなる。
【0117】
以上で説明した実施の形態1によれば、電動機2の固定子磁束の推定値は、補正された電圧指令値に基づいて演算される。このため、電動機2の固定子磁束の推定精度が大幅に改善される。その結果、電動機2の速度を遅くしても、制御の精度を維持することができる。
【0118】
また、電流・磁束推定部20は、電流観察部22と第1磁束推定部23と第2磁束推定部24とを備える。このため、電動機2の固定子磁束と回転子磁束の推定値をより正確に演算することができる。
【0119】
また、電動機2のトルクは、固定子磁束の推定値と回転子磁束と推定値とに基づいて推定される。このため、電動機2のトルクの推定値をより正確に算出することができる。
【0120】
次に、図35を用いて、制御装置11の例を説明する。
図35はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の制御装置のハードウェア構成図である。
【0121】
図35に示されるように、制御装置11の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、プロセッサ30aとメモリ30bとを備える。
【0122】
例えば、プロセッサ30aは、中央処理装置、処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ又はDSPなどのCPU(Central Processing Unit)である。
【0123】
例えば、メモリ30bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDである。
【0124】
処理回路において、メモリ30bに格納されたプログラムがプロセッサ30aによって実行される。
【符号の説明】
【0125】
1 電動機システム、 2 電動機、 3 電動機駆動システム、 4 負荷機械、 5 交流電源、 6 ダイオード整流器、 7 コンデンサ、 8 インバータ、 9a 第1電流検出器、 9b 第2電流検出器、 10a 第1電圧検出器、 10b 第2電圧検出器、 11 制御装置、 12 速度制御部、 13 ブレーキ用制御切替部、 14 DB-DTFC演算部、 15 第1座標変換部、 16 PWM制御部、 17 第2座標変換部、 18 減算部、 19 電圧指令値補正部、 20 電流・磁束推定部、 21 速度・位相推定部、 22 電流観察部、 23 第1磁束推定部、 24 第2磁束推定部、 25 位相推定部、 26 すべり角度推定部、 27 磁束ベクトル回転部、 28 位相誤差推定部、 29 速度・位置観察部、 30a プロセッサ、 30b メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35