(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】送電装置及び送電出力制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20220222BHJP
H02J 50/70 20160101ALN20220222BHJP
H02J 50/10 20160101ALN20220222BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/70
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2016248146
(22)【出願日】2016-12-21
【審査請求日】2019-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】吉原 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】前島 治
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233430(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141239(WO,A1)
【文献】特開2013-143909(JP,A)
【文献】特開2014-217093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0206384(US,A1)
【文献】特開2007-043773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/70
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線を媒体として電力を伝送するワイヤレス給電システムにおける送電装置において、
前記ワイヤレス給電システムの周辺状況に応じて送電出力を増大させるための出力制御部と、
前記送電装置周辺の当該送電装置が放射する電磁界によりその稼働に悪影響を受ける可能性のある予め登録された稼働機器の稼働状況を電気的な情報により検知する稼働機器検知部と、を備え、
前記出力制御部は、前記稼働機器検知部で稼働状況の情報を基に送電出力を制御するに際し、前記予め登録された稼働機器が稼働していない場合に前記送電出力を増加させる
ことを特徴とする送電装置。
【請求項2】
前記ワイヤレス給電システムの固有のデータ、電力伝送用周波数における人体暴露の許容値や前記送電装置が含まれる設備に関わるエミッション規格値(電力伝送用周波数、及びスプリアス)が含まれる準拠すべき規格値に関するデータ、システム設置環境に関するデータを格納するデータベースを備え、
前記出力制御部は、前記各データを参照して送電出力を算出する
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
装置周辺の人を赤外線や超音波で検知する人体検知部を備え、
前記出力制御部は、前記人体検知部で検知する検知情報を基に送電出力を制御する
請求項1又は請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
ワイヤレス給電システム固有のデータと、システム設置環境に関するデータと、準拠すべき規格値に関するデータが格納されたデータベースを備えた送電装置の出力制御であって、
前記ワイヤレス給電システム固有のデータは、電力伝送用周波数、電力伝送用周波数での送電装置から基準距離における放射電界強度、スプリアス発射の電界強度、送電装置の定格出力値、送電装置の最大出力値を含み、
前記システム設置環境に関するデータは、人体検知対象範囲におけるワイヤレス給電システムからの最長離隔、隔壁で区切られた閉空間の場合の構造、人体が近接しうる当該ワイヤレス給電システムからの距離、隣接する他機器の当該ワイヤレス給電システムからの距離、放射電磁界の伝搬損失指数を含み、
前記準拠すべき規格値に関するデータは、電力伝送用周波数における人体暴露の許容値、前記送電装置が含まれる設備に関わるエミッション規格値(電力伝送用周波数、及びスプリアス)を含み、
前記データを基に前記送電装置の設置環境において、前記送電装置が放射する電磁界によりその稼働に悪影響を受ける可能性のある予め登録された機器(他機器)が不稼働時の送電装置の最大出力を算出する最大出力算出手順と、
前記データを基に前記送電装置の定格出力時の他機器設置位置における電界強度を推定する電界強度推定手順と、
前記データを基に前記他機器の妨害波許容値を満たす最大出力を機器種別ごとに算出する最大出力算出手順と、
前記他機器に対する電気的な情報の検知による
稼働検知を行う稼働検知手順と、
前記稼働検知の有無に応じて送電装置の
送電出力を設定するに際し、前記予め登録された稼働機器が稼働していない場合に前記送電出力を増加させる出力設定手順と、
を含むことを特徴とする送電出力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ駆動する電子機器のバッテリ等へ非接触に電力伝送するワイヤレス給電システムにおける送電装置、及び、送電装置の送電出力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス給電システムの送電装置(ワイヤレス給電装置)から生成される電磁界による人体や他機器への悪影響を回避させるため、ワイヤレス給電システムの設計にあたっては、送電装置とワイヤレス受電が行われる充電対象機器との間で、電力伝送に用いる周波数(基本周波数)や、基本周波数の高調波を含む基本周波数以外の周波数からの不要輻射が、各種ガイドラインやEMC規格等で規定される放射電磁界強度の限度値以内になることが求められ、規格値に収まるよう送電装置が設計、製造されることになる。
【0003】
非特許文献1では、送電装置による電磁波の人体暴露について、電磁波についての取扱いにある程度の知識を有する人を対象とする職業的暴露と、一般大衆を対象とする公衆暴露との2段階の制限値を規定している。
【0004】
特許文献1では、ワイヤレス受電装置(充電対象機器)への電力供給能力を低下させることなく、LF帯の無線通信信号に対する悪影響を低減することが可能な非接触給電装置が提案されている。
特許文献1の非接触給電装置によれば、給電ユニットと受電ユニットとを備え、LF帯の無線通信が実行される待機状態と、受電ユニットが充電対象機器に対して電力を供給する能動状態とで、スイッチング電源回路のスイッチング周波数を変更してLF帯の無線通信に及ぼす影響を低減するよう動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】国際非電離放射線委員会(ICNIRP)ガイドライン2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ワイヤレス給電システムにおける送電装置の出力は、規格値に収まるよう設計されるため、送電装置の製造者が送電装置の設置個所、設置条件について特段の制約を設けない限り、その出力は人体や他の機器が近接しても悪影響を与えないような出力に制限されている。
【0008】
しかしながら、放射電磁界の影響を受ける他の機器が送電装置の周辺で稼働していない場合や、電磁波の暴露を受ける人物が送電装置の周辺に存在しない場合には、それらの存在を前提に設定された出力値では不必要に送電装置の出力を抑制させてしまうことになる。その結果、送電装置よりワイヤレス受電装置を通して充電される充電対象機器の充電時間の短縮、あるいは単位時間あたりに充電可能な充電対象機器数の増加を期待できないという現象が生じていた。
【0009】
特許文献1に記載の技術によれば、ワイヤレス給電装置による干渉の回避対象が特定の無線通信システムに限定されてしまうという問題点があった。
また、ワイヤレス給電装置の干渉回避のために、スイッチング周波数切り替えの機構を新たに設ける必要があった。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、ワイヤレス給電システムにおいて、自らのシステム周辺の環境に応じて、ワイヤレス給電による出力増減を制御可能とする送電装置及び送電出力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、ワイヤレス給電システムにおいて、自システム周辺の環境(人体検知や他機器の稼働状況)を推定し、推定結果に応じてワイヤレス給電の出力の増減を制御するものである。
【0012】
請求項1の送電装置は、無線を媒体として電力を伝送するワイヤレス給電システムにおける送電装置において、前記ワイヤレス給電システムの周辺状況に応じて送電出力を増大させるための出力制御部と、前記送電装置周辺の当該送電装置が放射する電磁界によりその稼働に悪影響を受ける可能性のある予め登録された稼働機器の稼働状況を電気的な情報により検知する稼働機器検知部と、を備え、前記出力制御部は、前記稼働機器検知部で稼働状況の情報を基に送電出力を制御するに際し、前記予め登録された稼働機器が稼働していない場合に前記送電出力を増加させることを特徴としている。
【0013】
請求項2の送電装置は、請求項1の送電装置において、前記ワイヤレス給電システムの固有のデータ、電力伝送用周波数における人体暴露の許容値や前記送電装置が含まれる設備に関わるエミッション規格値(電力伝送用周波数、及びスプリアス)が含まれる準拠すべき規格値に関するデータ、システム設置環境に関するデータを格納するデータベースを備え、前記出力制御部は、前記各データを参照して送電出力を算出することを特徴としている。
【0014】
請求項3の送電装置は、請求項1又は請求項2の送電装置において、装置周辺の人を赤外線や超音波で検知する人体検知部を備え、前記出力制御部は、前記人体検知部で検知する検知情報を基に送電出力を制御することを特徴としている。
【0017】
請求項4の送電出力制御方法は、ワイヤレス給電システム固有のデータと、システム設置環境に関するデータと、準拠すべき規格値に関するデータが格納されたデータベースを備えた送電装置の出力制御であって、
前記ワイヤレス給電システム固有のデータは、電力伝送用周波数、電力伝送用周波数での送電装置から基準距離における放射電界強度、スプリアス発射の電界強度、送電装置の定格出力値、送電装置の最大出力値を含み、
前記システム設置環境に関するデータは、人体検知対象範囲におけるワイヤレス給電システムからの最長離隔、隔壁で区切られた閉空間の場合の構造、人体が近接しうる当該ワイヤレス給電システムからの距離、隣接する他機器の当該ワイヤレス給電システムからの距離、放射電磁界の伝搬損失指数を含み、
前記準拠すべき規格値に関するデータは、電力伝送用周波数における人体暴露の許容値、前記送電装置が含まれる設備に関わるエミッション規格値(電力伝送用周波数、及びスプリアス)を含み、
前記データを基に前記送電装置の設置環境において、前記送電装置が放射する電磁界によりその稼働に悪影響を受ける可能性のある予め登録された機器(他機器)が不稼働時の送電装置の最大出力を算出する最大出力算出手順と、
前記データを基に前記送電装置の定格出力時の他機器設置位置における電界強度を推定する電界強度推定手順と、
前記データを基に前記他機器の妨害波許容値を満たす最大出力を機器種別ごとに算出する最大出力算出手順と、
前記他機器に対する電気的な情報の検知による稼働検知を行う稼働検知手順と、
前記稼働検知の有無に応じて送電装置の送電出力を設定するに際し、前記予め登録された稼働機器が稼働していない場合に前記送電出力を増加させる出力設定手順と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の送電装置によれば、ワイヤレス給電システムの周辺状況に応じてワイヤレス給電の出力を増大させることが可能となるため、充電対象機器に対する充電時間の短縮、又は、単位時間当たりに充電可能な充電対象機器数を増加させることができる。
また、稼働機器検知部を備えることで、出力制御部により稼働機器の有無に対して効率良く適正な出力値で送電させることができる。
【0019】
請求項2の送電装置によれば、データベースを備えることで、出力制御部によりデータベースに格納したデータを参照して送電出力を算出するので、ワイヤレス給電システムや同システムの設置環境に応じて効率良く適正な出力値で送電させることができる。
【0020】
請求項3の送電装置によれば、人体検知部を備えることで、出力制御部により装置周辺の人の存在を検知して送電出力を算出するので、人の存在の有無に対して効率良く適正な出力値で送電させることができる。
【0023】
請求項4の送電出力制御方法によれば、データベースに格納された各データを基に送電装置の定格出力時の他機器設置位置における電界強度を推定し、前記各データを基に他機器の妨害波許容値を満たす最大出力を機器種別ごとに算出し、稼働検知の有無に応じて送電装置の出力を設定するので、当該送電装置周囲における他機器の稼働に対して、状況に応じて効率良く適正な出力値で送電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ワイヤレス給電システムの構成説明図である。
【
図2】ワイヤレス給電システムにおける送電装置の実施形態の一例を示すブロック図である。
【
図3】(a)~(c)は、
図2の送電装置のデータベースに格納される各種データを示す表である。
【
図4】
図2の送電装置での処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】ワイヤレス給電システムにおける送電装置の実施形態の他の例を示すブロック図である。
【
図6】
図5の送電装置のデータベースに格納されるデータを示す表である。
【
図7】
図5の送電装置での処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】ワイヤレス給電システムにおける送電装置の実施形態の他の例を示すブロック図である。
【
図9】
図8の送電装置での処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の送電装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
ワイヤレス給電システムは、
図1に示すように、外部電源1に接続された送電装置10と、充電対象となる機器2に接続された受電装置20により構成されている。ワイヤレス給電システムは、送電装置10から出力されワイヤレスに伝送される電力を受電装置20が受電し、機器2を充電するように動作する。
【0026】
第1の実施形態として、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10が人体検知に連動して出力制御を行う例について、
図2~
図4を参照して説明する。
送電装置10は、商用電源が供給される電源入力部11と、電力を出力する送電部12と、ワイヤレス出力を行う送電コイル13と、出力電力を制御する出力制御部14と、装置周辺における人の存在を検知する人体検知部15と、装置環境に関連する各種データを格納するデータベース16と、外部からデータを入力するための外部入力I/F部17と、を備えて構成されている。
【0027】
電源入力部11は、外部電源(AC100V等)から送電装置10の駆動に必要な電源(DC12V等)に変換し送電部12へ給電する。
【0028】
送電部12は、送電コイル13が電力伝送するために必要な条件となるよう交流電流を生成し送電コイル13に供給する。送電コイル13は,供給された電流から磁界を生成することにより受電コイルを通して受電装置20側へ電力をワイヤレスで伝送する。
【0029】
出力制御部14は、後述する所望の手順によりワイヤレス給電システムが設置された環境情報(人体検知情報)を基に送電装置10の出力の増減を算出する。
【0030】
人体検知部15は、送電装置10周辺の人の存在を検知し、検知結果を出力制御部14へ通知する。人体検知部15は,例えば赤外線や超音波を用いた人感センサを送電装置10内に内蔵してもよく、あるいは送電装置10の周辺に設置された人感センサやセキュリティシステムが検知した人検出信号を受信してもよい。
【0031】
データベース16は、出力制御部14が適正な出力を算出するに際して参照される各種データが予め格納されている。
各種データには、例えば
図3に示すようなワイヤレス給電システム固有のデータ、システム設置環境に依存するデータ、準拠する規格値等、が含まれる。
【0032】
外部入力I/F部17は、データベース16に格納するデータを入力するためのものである。外部入力I/F部17は、ワイヤレス給電システムの製造者あるいは運用管理者が使用することを想定する。その実装形態は、例えばコマンドラインインタフェースであってよく、又はGUI(Graphical User Interface)、あるいはWeb GUIであってもよい。
【0033】
前記した送電装置10のデータベース16には、予め、ワイヤレス給電システム固有のデータ、システム設置環境に依存するデータ、準拠する規格値のデータがそれぞれ格納されている。
ワイヤレス給電システム固有のデータには、電力伝送用周波数、電力伝送用周波数での送電装置から基準距離における放射電界強度、スプリアス発射(電力伝送用周波数以外の周波数帯で発射される不要な電波)の電界強度、送電装置の定格出力値、送電装置の最大出力値が含まれる(
図3(a)参照)。
これらのデータは、送電装置の製造時に、装置製造業者が外部入力I/F部17経由で送電装置内のデータベース16へ入力する。また、データベース16には、出力増減の算出時の比較基準となる規格値を格納しておく。
【0034】
システム設置環境に依存するデータには、人体検知対象範囲におけるワイヤレス給電システムからの最長離隔(人感センサの検知範囲、又はセキュリティシステムの監視対象となる室内におけるシステムから隔壁までの距離など)、隔壁で区切られた閉空間の場合の構造(システムから隔壁までの最長/最少離隔、壁面素材等)、人体が近接しうる当該ワイヤレス給電システムからの距離、隣接する他機器の当該ワイヤレス給電システムからの距離、
放射電磁界の伝搬損失指数、等が含まれる(
図3(b)参照)。
これらのデータは、システム運用管理者又は装置製造業者が外部入力I/F部17を介して入力する。
【0035】
準拠する規格値には、電力伝送用周波数における人体暴露の許容値、当該設備に関わるエミッション規格値(電力伝送用周波数、及びスプリアス)が含まれる(
図3(c)参照)。
これらのデータは、装置製造業者又はシステム運用管理者が外部入力I/F部17を介して入力する。
【0036】
上述した例において、送電装置10が対象とするワイヤレス給電システムの代表的な方式として電磁誘導方式を想定するが、磁界共鳴方式であってもよい。
また、送電コイル/受電コイルを送電アンテナ/受電アンテナに置換することにより電波放射方式のワイヤレス給電システムとしてもよい。
【0037】
以下、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10の動作手順について、
図4を参照して説明する。
【0038】
ワイヤレス給電システムの設置後に送電装置10を起動する(ステップ101)。
【0039】
出力制御部14は、初めにワイヤレス給電システムの固有データとして送電装置10が定格出力で稼働する場合の基準離隔距離における基本波及びスプリアスの放射電界強度をデータベース16より取得する(ステップ102)。
【0040】
出力制御部14は、ワイヤレス給電システム運用管理者より外部入力I/F部17を通してデータベース16に登録された、システム設置環境に関するデータをデータベース16より取得する(ステップ103)。
【0041】
出力制御部14は、ステップ102及びステップ103で取得したデータを用いて、送電装置10が定格出力時の人体検知対象範囲内最長離隔における電界強度を推定する(ステップ104)。
これは、例えば、基準距離における電界強度、送電装置10から人体検知対象範囲内最長離隔までの距離、及び、放射電磁界の伝搬損失指数を参照することで人体検知対象範囲内最長離隔での電界強度として算出してもよい。
【0042】
ステップ104での推定結果とデータベース16に登録された準拠すべき規格値を比較することにより、取り得る定格出力からの出力増分を算出する。この増分を用いて、人体検知対象範囲内で電界強度許容値を満たす送電装置の最大出力(定格出力と増分の和)を算出する(ステップ105)。
【0043】
出力制御部14は、人体検知部15より人体検知の信号を受信しない間においては(ステップ106)、ステップ105にて算出された最大出力を基に送電装置10の出力を設定する。
すなわち、ステップ105にて算出された最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値以内であれば(ステップ108)、ステップ105の算出値を送電装置10の出力値として設定する(ステップ109)。
ステップ105にて算出された最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値を超過する場合には、送電装置10の最大出力値を出力値として設定する(ステップ110)。
【0044】
出力制御部14は、人体検知部15より人体検知の信号を受信した場合(ステップ106)、人が当該ワイヤレス給電システムに近接しうる距離にて電界強度許容値を満たす出力に設定する(ステップ107)。
【0045】
ステップ106による人体検知の有無は繰り返して行われ、ステップ109で算出後出力に設定されている状態で人体を検知すると、ステップ107で電界強度許容値を満たす出力に設定することで出力が減じられる。
逆に、ステップ107で設定された出力(電界強度許容値を満たす出力)で動作中において、ステップ106による人体検知信号が無い場合、ステップ109で算出後出力に設定することで出力が増加される。
なお、上記ステップ104、ステップ105、ステップ107における電界強度の推定、送電装置10の出力値の算出にあたっては、任意のマージンを考慮し加算させてもよい。
【0046】
続いて、第2の実施形態として、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10が他機器の稼働検知に連動して出力制御を行う例について、
図5~
図7を参照して説明する。
第2の実施形態の送電装置10の構成は、
図5に示すように、
図2の送電装置10と同様の電源入力部11と、送電部12と、送電コイル13と、出力制御部14と、データベース16、外部入力I/F部17とを有するとともに、装置周辺における機器の稼働状況を検知する稼働機器検知部18を備えて構成されている。
図5の送電装置10において、
図2と同一構成を採る部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
出力制御部14は、後述する所望の手順によりワイヤレス給電システムが設置された環境情報(周辺機器の稼働状況)を基に送電装置10の出力の増減を算出する。
【0048】
稼働機器検知部18は、送電装置10の周辺における他の機器の稼働状況を検知し、検知結果を出力制御部14へ通知する。
稼働機器検知部18は、外部の別システムと連携してもよい。
例えば、分電盤のうちワイヤレス給電システムが設置される部屋や区画に通電される分岐回路上の電流、電圧又は電力を計測し、その時系列の波形データ又は周波数領域に変換後の周波数スペクトルデータを、予め登録した各機器が稼働する際の各機器固有の電流、電圧又は電力の波形データ若しくは周波数スペクトルデータと比較することにより、稼働中の機器を推定するシステムと連携してもよい。
あるいは、ワイヤレス給電システムからの生成電磁界の影響が大きい主要な機器の電源スイッチのオン・オフの情報を有線通信あるいは無線通信により稼働機器検知部18へ通知する構成であってもよい。
【0049】
データベース16は、
図2の送電装置で説明した
図3に記載のデータに加えて、他機器に関するデータを格納する(
図6参照)。具体的には、ワイヤレス給電システム周辺に設置される他機器の種別、および機器種別ごとに定義される妨害波の許容値をデータとして追加する。
これらのデータは、システム運用管理者が外部入力I/F部17を介して入力する。または、送電装置10の装置製造時、装置製造業者が想定しうる複数の機器種別について予め許容値を入力しておき、システム運用管理者が当該ワイヤレス給電システム周辺に実際に設置された機器を選択することで設定されるものでもよい。
【0050】
以下、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10の動作手順について、
図7を参照して説明する。
【0051】
ワイヤレス給電システムの設置後に送電装置10を起動し(ステップ201)、出力制御部14がデータベース16より必要なデータを参照する(ステップ202、ステップ203)までの手順は、
図4と同様である。
【0052】
出力制御部14は、ワイヤレス給電システムが設置される環境において、他機器全てが不稼働の場合の送電装置10の最大出力を算出する(ステップ204)。
算出の制約条件として同設置環境に接近しうる人体への人体暴露許容値を基にする。具体的には、ワイヤレス給電システムおよび他機器が設置され、人のいないスペース(閉空間)であって、ワイヤレス給電システムのみが稼働(他機器は不稼働)中に、人が同スペース内に入ってくる場合、あるいは同スペースの外側に人が接近(例えば、同スペースの外壁に沿った通路を人が通過する等)する場合に、当該箇所において推定される電界強度が人体暴露許容値となる送電装置10の出力を最大値と定義する。
出力制御部14は、ステップ202、ステップ203で取得したデータを用いて、送電装置10が定格出力時の各々の他機器設置位置における電界強度を推定する(ステップ205)。これは、例えば、基準距離における電界強度、送電装置10から他機器設置位置までの距離、および放射電磁界の伝搬損失指数を参照することで当該位置での電界強度として算出してもよい。
【0053】
ステップ205での推定結果とデータベース16に登録された準拠すべき妨害波許容値を比較することにより、取り得る定格出力からの出力増分を各機器について算出する。この増分を用いて、妨害許容値を満たす送電装置10の最大出力(定格出力と増分の和)を機器種別、各設置位置の機器について算出する(ステップ206)。
【0054】
出力制御部14は、稼働機器検知部18より他機器の稼働を示す信号を受信しない間においては、ステップ204にて算出された最大出力を基に送電装置10の出力を設定する。
すなわち、ステップ204にて算出された最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値以内であれば(ステップ209)、ステップ204の算出値を送電装置10の出力値として設定する(ステップ210)。
ステップ204にて算出された最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値を超過する場合には(ステップ208)、送電装置10の最大出力値を出力値として設定する(ステップ211)。
【0055】
出力制御部14は、稼働機器検知部18より他機器の稼働を示す信号を受信した場合(ステップ207)、検知された複数の稼働機器種別に対する許容最大出力のうち、最も小さい値を出力に設定する(ステップ208)。
【0056】
ステップ207による稼働機器の検知は繰り返して行われ、ステップ210で算出後出力に設定されている状態で稼働機器を検知すると、ステップ208で許容最大出力のうちの最小値出力に設定することで出力が減じられる。
逆に、ステップ208で設定された出力(許容最大出力のうちの最小値出力)で動作中において、ステップ207による稼働機器が検知された場合、ステップ210で算出後出力に設定することで出力が増加される。
なお、上記ステップ204、ステップ205、ステップ206、ステップ208における電界強度の推定、送電装置10の出力値の算出にあたっては、任意のマージンを考慮し加算させてもよい。
【0057】
続いて、第3の実施形態として、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10が人体検知及び他機器の稼働検知の双方に連動して出力制御を行う例について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0058】
第3の実施形態の送電装置10の構成は、
図8に示すように、電源入力部11と、送電部12と、送電コイル13と、出力制御部14と、人体検知部15と、データベース16、外部入力I/F部17、稼働機器検知部18を備えて構成されている。
図8の送電装置10において、
図2又は
図5と同一構成を採る部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
この送電装置10によれば、人体検知及び他機器の稼働検知の双方に連動することで、人体への許容電界強度、及び他機器にとっての妨害波共用値の双方を考慮し、(1)人体検知、(2)他機器検知、(3)人体と他機器ともに検知、(4)人体と他機器ともに未検知、の各状況に応じて送電装置10の出力が設定される。
【0060】
以下、ワイヤレス給電システムにおける送電装置10の動作手順について、
図9を参照して説明する。
【0061】
ワイヤレス給電システムの設置後に送電装置10を起動し(ステップ301)、出力制御部14がデータベース16より必要なデータを参照し(ステップ302、ステップ303)、更に定格出力時の人体検知対象範囲内最長離隔における電界強度を推定し(ステップ304)、人体検知対象範囲内で電界強度許容値を満たす送電装置10の最大出力を算出する(ステップ305)までの手順は、
図4と同様である。
【0062】
続いて、
図7と同様に、ステップ302、ステップ303で取得したデータを用いて、送電装置10が、他機器全てが不稼働の場合の送電装置の最大出力を算出し(ステップ306)、定格出力時の各々の他機器設置位置における電界強度を推定し(ステップ307)、更に、妨害許容値を満たす送電装置の最大出力(定格出力と増分の和)を機器種別、各設置位置の機器について算出する(ステップ308)。
【0063】
次に、人体検知部15より人体検知の信号の受信の有無を判断する(309)。
ステップ309で人体検知の信号を受信した場合は、人が当該ワイヤレス給電システムに近接しうる距離にて電界強度許容値を満たす出力に設定する(ステップ310)。
【0064】
人体検知の信号の受信の無い場合、装置周辺において他機器の稼働の有無を検知する(ステップ311)。
そして、ステップ311で他機器の稼働を示す信号を受信した場合、検知された複数の稼働機器種別に対する許容最大出力のうち、最も小さい値を出力に設定する(ステップ312)。
【0065】
ステップ311で他機器の稼働を示す信号を受信しない場合、ステップ305又はステップ306にて算出された最大出力を基に送電装置10の出力を設定する。
すなわち、ステップ305で算出された最大出力と、ステップ306で算出された最大出力を比較し、小さい方の最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値以内であれば(ステップ313)、当該算出された小さい方の最大出力の値を送電装置10の出力値として設定する(ステップ314)。
ステップ305で算出された最大出力と、ステップ306で算出された最大出力を比較し、小さい方の最大出力が、送電装置10が対応可能な最大出力値を超過する場合には、送電装置10の最大出力値を出力値として設定する(ステップ315)。
【0066】
上述した各送電装置によれば、装置周辺の人の存在を検知したり、装置周辺で稼働している機器を検知することで、ワイヤレス給電システムの周辺状況に応じてワイヤレス給電の出力を増減させることが可能となるため、充電対象機器に対する充電時間の短縮、又は、単位時間当たりに充電可能な充電対象機器数を増加させることができ、効率良い給電を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1…外部電源、 2…機器、 10…送電装置、 11…電源入力部、 12…送電部、 13…送電コイル、 14…出力制御部、 15…人体検知部、 16…データベース、 17…外部入力I/F部、 18…稼働機器検知部、 20…受電装置。