(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】特定の薬力学的有効期間および免疫寛容の誘発のための抗原を有する免疫抑制剤の送達
(51)【国際特許分類】
A61K 31/436 20060101AFI20220222BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220222BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20220222BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20220222BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220222BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61K31/436 ZMD
A61K9/51
A61K31/4709
A61K45/08
A61P37/06
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2016512091
(86)(22)【出願日】2014-05-02
(86)【国際出願番号】 US2014036697
(87)【国際公開番号】W WO2014179770
(87)【国際公開日】2014-11-06
【審査請求日】2017-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2019-12-02
(32)【優先日】2013-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ,ケイ
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】齋藤 恵
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/149411(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/158362(WO,A1)
【文献】J.Thromb.Haemost.,2011年,Vol.9,No.8,pp.1524-1533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 48/00
A61K 31/00-4709
A61K 9/00-9/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用高分子で処置することが意図される対象のクラスである、対象の第1のクラスにおいて、対象へ免疫抑制剤を、治療用高分子に関して、
免疫抑制剤の投与完了からの期間でいう最小20時間から最大1か月間までの範囲の投与薬力学的有効期間を提供する投与用量
と頻度で投与すること;および
免疫抑制剤の投与薬力学的有効期間の期間内において、対象へ治療用高分子を投与すること;
を含む方法の使用のための免疫抑制剤を含む組成物であって、
免疫抑制剤
は、合成ナノ担体
によってカプセル化された、ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体またはGSK1059615を含み、ここで、治療用高分子および免疫抑制剤
は、相互に付着されておらず、治療用高分子
は、合成ナノ担体に付着されて
いない、前記組成物。
【請求項2】
方法が、以下:
免疫抑制剤の試験用量に基づいて免疫抑制剤の投与用量を決定すること
をさらに含み、
試験用量
は、
対象の第1のクラスにおける達成可能な結果を予測するのに使用される対象のクラスである、対象の第2のクラスにおいて
、最小20時間から最大1か月間までの範囲の薬力学的有効期間の間、治療用高分子に関して試験薬力学的有効期間を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
治療用高分子に対する寛容を誘発する方法における使用のための免疫抑制剤を含む組成物であって、前記方法が、(a)免疫抑制剤の投与完了からの期間でいう20時間~1か月間である薬力学的有効期間を引き出すために十分な用量
と頻度で対象へ免疫抑制剤を投与すること;および(b)前記対象へ、前記薬力学的有効期間内において、治療用高分子を投与すること、を含み、ここで、免疫抑制剤
は、合成ナノ担体
によってカプセル化された、ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体またはGSK1059615を含み、ここで、治療用高分子および免疫抑制剤
は、相互に付着されておらず、および、治療用高分子
は、合成ナノ担体に付着されて
いない、前記組成物。
【請求項4】
(
a)合成ナノ担体が、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子、タンパク質粒子、または、ナノ材料の組み合わせを含むナノ粒子、任意にかかるナノ粒子が脂質ポリマーナノ粒子である、を含み;(
b)合成ナノ担体における免疫抑制剤の積載が、合成ナノ担体における材料の総乾燥レシピ重量に基づいて(重量/重量)、0.0001wt%と50wt%との間の範囲であり、任意に、ここで合成ナノ担体における免疫抑制剤の積載が、合成ナノ担体における材料の総乾燥レシピ重量に基づいて(重量/重量)、0.1wt%と10wt%との間の範囲であり;(
c)治療用高分子が、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドを含み、任意に、ここで治療用タンパク質が、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含み;または(
d)投与薬力学的有効期間が
、免疫抑制剤の投与完了からの期間でいうと、(i)最小20時間から最大2週間まで;(ii)最小20時間から最大1週間まで;(iii)最小24時間から最大2日間まで;(iv)最小20時間から最大2週間まで;(v)最小20時間から最大1週間まで;または(vi)最小24時間から最大2日間までの範囲である期間を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
免疫抑制剤が、
合成ナノ担体によってカプセル化されたラパマイシン
を含む、請求項
1~4
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
免疫抑制剤の投与用量が、アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリング技術の使用とともに、免疫抑制剤の試験用量に基づいて決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
対象の第1のクラスおよび対象の第2のクラスが、対象の同じクラスである、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
対象の第1のクラスおよび対象の第2のクラスが、対象の異なるクラスである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
合成ナノ担体が、脂質ナノ粒子、リポソーム、ポリマーナノ粒子または金属ナノ粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
金属ナノ粒子が、金ナノ粒子を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
合成ナノ担体が、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含むポリマーナノ粒子を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに付着されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、および、ポリエーテルに付着されたポリエステルを含む、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
(a)合成ナノ担体の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均が、(i)100nm;(ii)150nm;(iii)200nm;(iv)250nm;または(v)300nmよりも大きい径であり、および/または、(b)合成ナノ担体のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条の下で、2013年5月3日出願の米国仮出願第61/819517号、2013年9月24日出願の同第61/881851号、2013年9月24日出願の同第61/881913号、2013年9月24日出願の同第61/881921号、2013年11月21日出願の同第61/907177号、2014年3月5日出願の同第61/948313号、および2014年3月5日出願の同第61/948384号の利益を主張するものであり、これらの各々の内容全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の分野
本発明は、治療用高分子に対して免疫寛容を誘発する免疫抑制剤の薬力学的に有効なウィンドウ内で投与される、免疫抑制剤および治療用高分子を提供する方法に関する。該方法は、治療用高分子に特異的な寛容原性免疫応答の発達のための免疫応答をシフトすることを可能にする。本明細書で提供される方法は、治療用高分子の投与が、望ましくない免疫応答をもたらすか、またはそれをもたらすことが予期される、対象における寛容原性免疫応答を生じさせるために使用できる。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
タンパク質または酵素補充治療などの治療処置は、しばしば特定の治療に対する望ましくない免疫応答をもたらす。かかる望ましくない免疫応答は、免疫抑制薬の使用を通じて低減され得る。しかしながら、従来の免疫抑制薬は広域作用性である。さらに、免疫抑制を維持するために、免疫抑制薬治療は、一般に生涯の命題である。不幸なことに、広域作用性免疫抑制剤の使用は、腫瘍、感染、腎毒性および代謝障害などの重篤な副作用のリスクと関連する。したがって、新しい寛容原性治療が有益となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
一側面において、治療用高分子に関して、対象の第1のクラスにおいて免疫抑制剤を対象に投与薬力学的有効期間を提供する投与用量で投与すること、および、免疫抑制剤の投与薬力学的有効期間の期間内で対象に治療用高分子を投与すること、を含む方法が提供される。一態様において、薬力学的有効期間は、最小20時間から最大1か月までの範囲の期間を有する。一態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は、相互に付着されていない。一態様において、治療用高分子は、合成ナノ担体に付着されていない。
本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、免疫抑制剤の投与用量を免疫抑制剤の試験用量に基づいて決定することをさらに含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象の第2のクラスにおいて、試験用量は、試験薬力学的有効期間に関して、最小20時間から最大1か月までの範囲の期間を有する治療用高分子を有する。
【0005】
別の側面において、本明細書で提供される免疫抑制剤組成物のいずれか1つは、治療用高分子に対する寛容を誘発する方法における使用を提供する。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、(a)20時間~1か月間の範囲の薬力学的有効期間を引き出すために十分な用量で対象に免疫抑制剤を投与すること、および(b)前記薬力学的有効期間内で治療用高分子を前記対象に投与することを含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は、相互に付着されない。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、治療用高分子は、合成ナノ担体に付着されない。
【0006】
別の側面において、本明細書で提供される免疫抑制剤組成物のいずれか1つの使用は、本明細書で提供される方法のいずれか1つ、対象における治療用高分子に対する寛容を誘発する方法など、における使用のための医薬の製造のために提供される。一態様において、方法は、(a)20時間~1か月間の範囲の薬力学的有効期間を引き出すために十分な用量で対象に免疫抑制剤を投与すること;および(b)前記薬力学的有効期間内で前記対象に治療用高分子を投与することを含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は、相互に付着されない。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、合成ナノ担体に付着されない。
【0007】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤、移植可能浸透圧ポンプ、二重特異性抗体または移植可能高分子デポ材料を含む合成ナノ担体を含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤を含む。
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体は、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子、タンパク質粒子、または、ナノ材料の組み合わせを含むナノ粒子、任意にかかるナノ粒子は脂質ポリマーナノ粒子である、を含む。
【0008】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、スタチン;mTORインヒビター;TGF-βc剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター、デキサメタゾン;TCPA-1;IKK VII;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;G-タンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;PI3KBインヒビター;オートファジーインヒビター;アリール炭化水素受容体インヒビター;プロテアソームインヒビターI(PSI);酸化ATP;IDO、ビタミンD3;シクロスポリン;アリール炭化水素受容体インヒビター;レスベラトロール;アザチオプリン;6-メルカプトプリン;6-チオグアニン;FK506;サングリフェリンA;サルメテロール;ミコフェノラートモフェチル;アスピリンおよび他のCOXインヒビター;ニフルム酸;エストリオール;またはトリプトリドを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、mTORインヒビターを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、mTORインヒビターは、ラパマイシンを含む。
【0009】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体(重量/重量)における材料の総乾燥レシピ重量に基づいて、合成ナノ担体における合成ナノ担体の積載(loading)は、0.0001wt%と50wt%との間の範囲である。本明細書で提供される方法は、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体(重量/重量)における材料の総乾燥レシピ重量に基づいて、合成ナノ担体における免疫抑制剤の積載が、0.1wt%と10wt%との範囲である。
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、治療用高分子は、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、治療用タンパク質は、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。
【0010】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、投与薬力学的有効期間は、最小20時間から最大2週間までの範囲の期間を有する。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、投与薬力学的有効期間は、最小20時間から最大1週間までの範囲の期間を有する。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、投与薬力学的有効期間は、最小24時間から最大2日間までの範囲の期間を有する。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、試験薬力学的有効期間は、最小20時間から最大2週間までの期間を有する。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、試験薬力学的有効期間は、最小20時間から最大1週間までの範囲の期間を有する。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、試験薬力学的有効期間は、最小24時間から最大2日間までの範囲の期間を有する。
【0011】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤の投与用量は、アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリング技術の使用とともに、免疫抑制剤の試験用量に基づいて決定される。
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、対象の第1のクラスおよび対象の第2のクラスは、対象の同じクラスである。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、対象の第1のクラスおよび対象の第2のクラスは対象の異なるクラスである。
【0012】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの一態様において、合成ナノ担体は、脂質ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は、リポソームを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は、金属ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、金属ナノ粒子は、金ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体は、ポリマーナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに付着されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステルおよびポリエーテルに付着されたポリエステルを含む。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0013】
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均は、100nmよりも大きい径である。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、径は、150nmよりも大きい。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、径は、200nmよりも大きい。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、径は、250nmよりも大きい。本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、径は、300nmよりも大きい。
本明細書で提供される方法、免疫抑制剤または使用のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体のアスペクト比は、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい。
【0014】
別の側面において、本明細書で提供される免疫抑制剤および/または治療用高分子組成物のいずれか1つの製造方法が提供される。一態様において、製造方法は、治療用高分子の用量または剤形を生成すること、および、免疫抑制剤の用量または剤形を生成することを含む。提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の用量または剤形を生成するステップは、合成ナノ担体に免疫抑制剤を付着することを含む。提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、方法は、キットにおいて、免疫抑制剤の用量または剤形と、治療用高分子の用量または剤形とを組み合わせることをさらに含む。
【0015】
別の側面において、製造方法のいずれか1つは、本明細書で提供される方法のいずれか1つを行うための医薬を製造するためのものであり得、かかる製造方法も提供される。一態様において、製造方法は、治療用高分子に対して寛容を誘発するための医薬を製造するためのものである。別の態様において、製造方法は、免疫抑制剤、および治療用高分子が免疫抑制剤の薬力学的有効期間の間投与されるための治療用高分子医薬を製造するためのものである。本明細書で提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図の簡単な説明
【
図1】
図1は、IgGが、OVAおよびKLHとともに投与されたカプセル化されたラパマイシンに応答することを示す。
【
図2】
図2は、プロトコルおよび種々のラパマイシン用量からの結果を示す。
【
図3】
図3は、ラパマイシンに付着された合成ナノ担体の薬力学的有効期間内の投与の効果を実証する。
【
図4】
図4は、カプセル化されたタンパク質と同時に投与された、ラパマイシンに付着された合成ナノ担体またはGSK1059615に付着されたナノ担体の効果を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特に例示された材料またはプロセスパラメータに限定されないということは理解されるべきであり、これは、かかるものが当然変化し得るためである。本明細書で使用される用語法は、本発明の特定の態様を説明するためのものに過ぎず、本発明を説明するための代替的用語法の使用を限定することは意図しないこともまた理解されるべきである。
上記または下記のいずれにおいても本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的において、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書および添付のクレームで使用する場合、その内容が別途明確に指定していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の言及物を包む。例えば、「ポリマー(a polymer)」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる分子の混合物または単一のポリマー種の異なる分子量の混合物を包み、「合成ナノ担体」への言及は2つまたは3つ以上のかかる合成ナノ担体の混合物または複数のかかる合成ナノ担体を包含し、「RNA分子」への言及は、2つまたは3つ以上のかかるRNA分子の混合物または複数のかかるRNA分子を包み、「免疫抑制剤」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる材料または複数のかかる免疫抑制剤分子を包む、等。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise)」、または「comprises」もしくは「comprising」などの変形形態は、いずれか列挙された完全体(integer)(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)の包含を表示すると読むべきであって、いずれか他の完全体または完全体の群の排除を表示すると読むべきではない。ゆえに、本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は包括的であり、追加の、列挙されない完全体または方法/プロセスステップを排除しない。
【0020】
本明細書で提供される組成物および方法のいずれか1つのある態様において、「含む(comprising)」は「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置換されてもよい。語句「本質的にからなる」は、明記された完全体(単数または複数)またはステップを、クレームされる発明の性質または機能に重大な影響を及ぼさないものと共に要するために、本明細書で使用される。本明細書で使用するとき、用語「からなる(consisting)」は、列挙された完全体(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)のみの存在を表示するために使用される。
【0021】
A.序文
本明細書で提供される方法は、免疫抑制剤の薬力学的に有効なウィンドウ(または薬力学的有効期間)の間の治療用高分子の投与の結果として改善された治療効果を可能にする。免疫抑制剤、いくつかの態様において、合成ナノ担体への付着によって投与される。本明細書で提供される方法および組成物は、対象へ治療用高分子を投与するとき免疫抑制剤治療の利益を最大化することを助ける。
【0022】
本発明者らは、予想外かつ驚くべきことに、本明細書で開示される本発明を実行することによって前記の課題および限定を克服できることを発見した。特に、本発明者らは、治療用高分子に関して投与薬力学的有効期間を提供し、最小20時間から最大1か月間までの範囲の期間を有し、免疫抑制剤の投与薬力学的有効期間内で対象へ治療用高分子を投与し、ここで免疫抑制剤および治療用高分子は、相互に連結せず、治療用高分子は合成ナノ担体へ連結しない、投与用量で対象へ免疫抑制剤を投与することを含む方法を提供することが可能であることを予想外に発見した。関連する組成物もまた本明細書で提供される。
本発明は、本発明の実行に有用な種々の組成物を示し、本発明の特定の態様において薬力学的有効期間の基礎となるコンセプトを示すデータもまた提供する、以下の例に示される。
ここで、以下に本発明をより詳細に説明する。
【0023】
B.定義
「投与用量」または「免疫抑制剤の投与用量」は、投与に好適な免疫抑制剤の用量を意味する。ある態様において、投与用量は、免疫抑制剤の試験用量に基づく。ある態様において、投与用量は、アロメトリックスケーリング技術の適用とともに、免疫抑制剤の試験用量からの情報に基づいて決定してもよい。例えば、I. Mahmood, “Interspecies Pharmacokinetic Scaling: Principles and Application of Allometric Scaling”, Pine House Publishers 2005を参照。ある態様において、特に対象の第1のクラスおよび対象の第2のクラスが同じ種からである場合、投与用量は、アイソメトリックスケーリング技術の適用とともに、免疫抑制剤の試験用量からの情報に基づいて決定してもよい。ある態様において、投与用量は、試験用量に基づいて、上記の説明のとおりアロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングを使用して単純に予測されるよりも、対象の第2のクラスにおける直接的な実験によって決定されてもよい。
【0024】
「投与すること」または「投与」または「投与する」は、薬理学的に有用なやり方で対象へ材料を提供することを意味する。態様において、「投与すること」または「投与」または「投与する」は、「投与させること」を含む。「投与させること」とは、他の当事者に材料を投与するよう直接的または間接的に、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘発すること、または、指示することを意味する。
【0025】
「投与薬力学的有効期間」は、免疫抑制剤の投与用量でのおよび対象の第1のクラスにおける治療用高分子に関して決定される免疫抑制剤の薬力学的有効期間を意味する。ある態様において、列挙される免疫抑制剤は、最小20時間から最大1か月間まで、好ましくは最小20時間から最大2週間まで、好ましくは最小20時間から最大1週間まで、好ましくは最小20時間から最大5日間まで、好ましくは最小20時間から最大3日間まで、好ましくは最小24時間から最大2日間までの範囲の期間を有する、治療用高分子に関して、投与薬力学的有効期間を有してもよい。好ましくは、治療用高分子は、薬力学的有効期間の間投与され、したがって、いくつかの態様において、免疫抑制剤の投与と同時または直後に投与することができるが、ただし治療用高分子の投与は、薬力学的有効期間の終了前に行う。
【0026】
「有効量」は、対象への投与のための組成物または用量の文脈において、対象における1つまたは2つ以上の望ましい応答、例えば寛容原性免疫応答の発生(例えば、治療用高分子に特異的なB細胞の増殖、活性化、誘発、生存、動員の減少、または、治療用高分子に特異的な抗体の産生の減少)を生じさせる組成物の量または用量をいう。いくつかの態様において、有効量は治療的有効量である。それゆえ、いくつかの態様において、有効量は、本明細書で提供される望ましい免疫効果、および/または治療効果の1つまたは2つ以上を生じさせる、本明細書で提供されるいずれかの組成物の量または用量である。この量はin vitroまたはin vivoを目的とし得る。in vitroの目的において、量は、治療用高分子の投与および/またはそれに対する抗原特異的免疫寛容原性を必要とする患者にとって臨床効果を有し得ると臨床医が考えるであろう量であり得る。
【0027】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低減させることに関与し得るが、いくつかの態様において、それは望ましくない免疫応答を完全に防止することに関与する。有効量はまた、望ましくない免疫応答が起こることを遅延させることにも関与し得る。有効である量はまた、望ましい治療エンドポイントまたは望ましい治療結果を生じさせる量でもあり得る。他の態様において、有効量は、治療エンドポイントまたは治療結果などの望ましい応答のレベルを向上させることに関与し得る。有効量は好ましくは、対象において、治療用高分子などの抗原に対する寛容原性免疫応答をもたらす。上述のもののいずれかの達成は、ルーチンな方法によってモニタリングされ得る。
【0028】
提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、望ましい応答が対象において存続する量である。提供される組成物および方法のいずれかの他の態様において、有効量は、測定可能な望ましい応答をある期間生じさせる量である。
有効量は当然、医療従事者の知識と経験の範囲内で、処置されている具体的な対象;状態、疾患または障害の重篤性;年齢、体調、サイズおよび体重を包含する個々の患者パラメータ;処置の持続期間;(存在する場合)併用治療の特質;投与の具体的な経路および同種の因子に依存するであろう。これらの因子は当業者には周知であり、ルーチンな実験法程度のことで対処し得る。一般に好ましくは、最大用量、すなわち、健全な医療的判断に従う最も高い安全な用量を使用することである。しかしながら、患者はより少ない用量、または耐容用量を、医療的理由、心理学的理由、または事実上あらゆる他の理由で主張し得るということは、当業者には理解されよう。
【0029】
一般に、本発明の組成物における免疫抑制剤および/または治療用高分子の用量は、免疫抑制剤および/または治療用高分子の量をいう。代替的に、用量は、免疫抑制剤の望ましい量を提供する合成ナノ担体の数に基づいて投与され得る。
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原のタイプ(単数または複数)」は、同じかまたは実質的に同じ抗原的特徴を共有する分子を意味する。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖であり得えるか、または、細胞中に含有されるかまたは発現される。抗原が十分に定義または特徴付けされていないときなどのいくつかの態様において、抗原は、細胞または組織調製物、細胞片、細胞エキソソーム、ならし培地等に含有され得る。
【0030】
「抗原特異的」は、抗原またはその一部分の存在によりもたらされるか、または、抗原を特異的に認識または結合する分子を発生させる、いずれかの免疫応答をいう。いくつかの態様において、抗原が治療用高分子を含むとき、抗原特異的は、治療用高分子特異的を意味し得る。例えば、免疫応答が抗原特異的抗体産生である場合、抗原(例えば治療用高分子)に特異的に結合する抗体が産生される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的B細胞またはCD4+T細胞の増殖および/または活性である場合、増殖および/または活性は、抗原またはその一部分の、単独での、または、MHC分子、B細胞等と複合しての認識によりもたらされる。
「免疫応答を査定すること」は、in vitroまたはin vivoでの免疫応答のレベル、存非、低減、増加等いずれかの測定または決定をいう。かかる測定または決定は、対象から得た1つまたは2つ以上のサンプルで行われ得る。かかる査定は、本明細書で提供されるか、またはそうでなければ、当該分野において知られている方法のいずれかで行われ得る。本明細書で提供される方法のいずれか1つは、免疫応答を査定するステップを含み得る。
【0031】
「付着する」または「付着されている」または「連結する」または「連結されている」(等)は、1つの実体(例えば部位)をもう1つと化学的に関連させることを意味する。いくつかの態様において、付着は共有結合性であり、それは付着が2つの実体間の共有結合の存在の文脈下で起こることを意味する。非共有結合性の態様において、非共有結合性付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない非共有結合性相互作用により媒介される。ある態様において、カプセル化が付着の形態である。ある態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は互いに付着されず、それは治療用高分子と免疫抑制剤とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。ある態様において、治療用高分子および/または免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されず、それは治療用高分子(および/または免疫抑制剤)と合成ナノ担体とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。
【0032】
「平均」は、本明細書で使用するとき、特に注記しない限り算術平均値をいう。
「対象のクラス」は、1または2以上の共通の特徴(生物学的分類、食習慣、睡眠の習慣、免疫システムバイオロジー場所における物理的な存在など)を共有する、対象のグループ分けを意味する。クラスは、標準的な生物学的分類にのみに従う必要はない。対象のクラスにおける結果の決定は、対象の別のクラスにおいて達成可能な結果を予測するために有用であり得る(例えば、ヒト疾患の予測または探索における動物モデルの使用)。
【0033】
「決定すること」または「決定する」は事実関係を確かめることを意味する。決定することは、実験を行うことまたは予測を立てることを包含するがそれらに限定されない、数々の方式で遂行され得る。例として、免疫抑制剤または治療用高分子の用量は、試験用量で開始し、投与のための用量を決定するための公知のスケーリング技術(アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングなど)を使用することにより決定され得る。かかるものを使用して本明細書に提供されるプロトコルを決定もまたし得る。別の態様において、用量は対象において種々の用量を試験することによって、すなわち経験およびガイドデータに基づく直接実験を通して、決定されてもよい。ある態様において、「決定すること」または「決定する」は、「決定させること」を含む。「決定させること」は、実体に事実関係を確かめるように、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘発することまたは指示すること、または、その実体と協力して行動することを意味し、直接もしくは間接的に、または明示的にもしくは黙示的に、を包含する。
【0034】
「剤形」は、対象への投与に好適な媒体、担体、ビヒクルまたはデバイス中の薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料を意味する。本明細書で提供される組成物または用量のいずれか1つは、剤形中にあってよい。
「用量」は、所与の時間にわたり対象に投与するための薬理学的および/または免疫学的に活性な材料の具体的な分量(quantity)をいう。
「カプセル化する」は、合成ナノ担体内の物質の少なくとも一部分を封入することを意味する。いくつかの態様において、物質は合成ナノ担体内に完全に封入される。他の態様において、カプセル化される物質の大部分または全てが、合成ナノ担体の外部の局所環境に曝露されない。他の形態において、局所環境に曝露されるのが50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)を超えない。カプセル化は、吸収(吸収は、物質の大部分または全てを合成ナノ担体の表面上に置き、その物質を合成ナノ担体の外部の局所環境に曝した状態にする)とは区別される。
【0035】
「発生させること」は、生理学的または免疫学的応答などの作用(例えば寛容原性免疫応答)を、それ自体で直接的または間接的に起こさせることを意味する。
「対象を識別すること」は、対象を本明細書で提供される方法、組成物またはキットから効果が得られ得る対象として臨床医に認識せしめるいずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、識別された対象は、本明細書で提供されるとおり、治療用高分子からの治療効果を必要としており、および/または、抗治療用高分子特異的抗体応答が起こっているか、または起こることが予期される(または起こるリスクのある)対象である。行動または行動のセットは、それ自体の直接的なものであっても、または間接的なものであってもよい。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットを必要としている対象を識別することを含む。
【0036】
「免疫抑制剤」は、APCに免疫抑制効果(例えば免疫寛容誘発効果)を持たせるか、または、T細胞またはB細胞が抑制されるようにする化合物を意味する。免疫抑制効果は一般に、望ましくない免疫応答を低減、阻害または防止するか、または、制御性免疫応答などの望ましい免疫応答を促進する、サイトカインまたは他の因子のAPCによる産生または発現をいう。APCが、このAPCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対して(免疫抑制効果の下)免疫抑制機能を獲得するとき、免疫抑制効果は、提示された抗原に特異的であると言われる。いかなる具体的な理論にも拘泥しないが、免疫抑制効果は、好ましくは抗原の存在下、免疫抑制剤がAPCに送達されることの結果であると思われる。一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上の免疫エフェクター細胞においてAPCに制御性表現型を促進させるものである。例えば制御性表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘発、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えばCD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘発、刺激または動員、等により特徴付けられ得る。これはCD4+T細胞またはB細胞の制御性表現型への転換の結果であり得る。これはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘発の結果でもあり得る。一態様において、免疫抑制剤は、抗原を処理した後のAPCの応答に影響を与えるものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原の処理に干渉するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤はアポトーシスシグナル分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤はリン脂質ではない。
【0037】
免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4インヒビター(PDE4)などのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;TGX-221などのPI3KBインヒビター;3-メチルアデニンなどのオートファジーインヒビター;アリールハイドロカーボン受容体インヒビター;プロテアソームインヒビターI(PSI);およびP2X受容体ブロッカーなどの酸化ATPが挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、マイコフェノレートモフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOXインヒビター、ニフルミン酸、エストリオール、メトトレキサート、および、トリプトリドも挙げられる。ある態様において、免疫抑制剤は本明細書で提供される薬剤のいずれかを含んでいてもよい。
【0038】
免疫抑制剤は、APCに免疫抑制効果を直接提供する化合物であっても、免疫抑制効果を間接的に(すなわち投与後に何らかの方式で処理された後に)提供する化合物であってもよい。したがって、免疫抑制剤は、本明細書で提供される化合物のいずれかのプロドラッグ形態を包含する。
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、本明細書で提供される免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着されている。好ましい態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体の構造を構成する材料に追加された要素である。例えば、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上のポリマーで構成されている一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上のポリマーに追加されて付着された化合物である。別の例として、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上の脂質で構成されている一態様において、免疫抑制剤はやはり、1つまたは2つ以上の脂質に追加されて付着された化合物である。合成ナノ担体の材料がまた、免疫抑制効果をももたらす場合などのある態様において、免疫抑制剤は、免疫抑制効果をもたらす合成ナノ担体の材料に追加されて存在する要素である。
【0039】
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、免疫抑制剤はナノ結晶性形態などの形態にあり、それにより免疫抑制剤自体の形態は粒子または粒子様である。ある態様において、こうした形態はウイルスまたは他の外来病原体を模擬している。多くの薬物はナノ化されており、こうした薬物の形態を生じさせるための適切な方法は当業者に知られているであろう。ナノ結晶性ラパマイシンなどの薬物ナノ結晶は当業者に知られている(Katteboinaa, et al. 2009, International Journal of PharmTech Resesarch; Vol. 1, No. 3; pp682-694)。本明細書で使用されるとおり、「薬物ナノ結晶」は、担体またはマトリックス材料を包まない、薬物(例えば免疫抑制剤)の形態をいう。いくつかの態様において、薬物薬物ナノ結晶は、90%、95%、98%または99%、または、それ以上の薬物を含む。薬物ナノ結晶の生成方法としては、限定されないが、摩砕(milling)、高圧均質化、沈殿、噴霧乾燥、超臨界溶体急速膨張(RESS)、Nanoedge(登録商標)技術(Baxter Healthcare)およびNanocrystal Technology(商標)(Elan Corporation)が挙げられる。いくつかの態様において、薬物ナノ結晶の立体または静電安定性のために、界面活性物質または安定剤を使用してもよい。いくつかの態様において、免疫抑制剤のナノ結晶またはナノ結晶性形態は、免疫抑制剤、特に不溶性のまたは不安定な(labile)免疫抑制剤、の溶解性、安定性および/または生物学的利用能を増大させるために使用され得る。いくつかの態様において、ナノ結晶性形態の免疫抑制剤の投与は、治療用高分子に対する寛容を誘発する。
【0040】
他の例示的な免疫抑制剤は、小分子薬物、天然生成物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤系薬物、炭水化物系薬物、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506);TGF-βおよびIL-10などのサイトカインおよび成長因子;などを含むが、これらに限定されない。本明細書で提供されるいずれか1つの側面または態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体へ付着することができ、または移植可能浸透圧ポンプ、ALZET(登録商標)移植可能浸透圧ポンプ、移植可能デポ材料または二重特異性抗体(抗CD22+Ag、抗GITR+Ag、または抗LAG3+Ag)など、の形態で送達することができる。さらに免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明はこの点において限定されない。
【0041】
免疫抑制剤の合成ナノ担体に付着されるときの「積載量(load)」は、合成ナノ担体(重量/重量)における材料の総乾燥レシピ重量に基づく、合成ナノ担体へ付着された免疫抑制剤の量である。一般に、積載量は、合成ナノ担体の集団にわたる平均として算出される。一態様において、合成ナノ担体にわたって平均して、免疫抑制剤の積載量は、0.0001重量%~99重量%の範囲である。別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、0.01重量%~50重量%の範囲である。別の態様において、積載量は、0.1重量%~20重量%である。さらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は、0.1重量%~10重量%の範囲である。なおさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は、1重量%~10重量%の範囲である。なおさらなる態様において、積載量は、7重量%~20重量%である。なお別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、少なくとも12重量%、少なくとも13重量%、少なくとも14重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%または少なくとも99重量%の範囲である。なおさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%または20重量%である。上記の態様のいくつかの態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、25重量%を超えない。ある態様において、積載量は例に記載され得るとおりであるか、またはそうでなければ、当該分野において知られているように、算出される。
【0042】
いくつかの態様において、免疫抑制剤の形態が、ナノ結晶性免疫抑制剤などの、それ自体粒子または粒子様であるとき、免疫抑制剤の積載量は粒子等における免疫抑制剤の量(重量/重量)である。かかる態様において、積載量は97%、98%、99%またはそれ以上に届き得る。
【0043】
「合成ナノ担体の最大寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定されたナノ担体の最も長い寸法を意味する。「合成ナノ担体の最小寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定された合成ナノ担体の最も小さい寸法を意味する。例えば、回転楕円状合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最大および最小寸法は、実質的に同一であって、その径のサイズとなるであろう。同様に立方体様の合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最小のものとなり、一方合成ナノ担体の最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最大のものとなろう。一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上である。
【0044】
一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μm以下である。好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmよりも大きく、より好ましくは120nmよりも大きく、より好ましくは130nmよりも大きく、より好ましくは150nmよりもなお大きい。合成ナノ担体の最大寸法と最小寸法とのアスペクト比は、態様によって変化し得る。例えば、合成ナノ担体の最大寸法の最小寸法に対するアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、さらにより好ましくは1:1~10:1で変化し得る。好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なおより好ましくは500nm以下である。
【0045】
好ましい態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なおより好ましくは150nm以上である。合成ナノ担体寸法(例えば有効寸法)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノ担体を液体(通常は水性)媒体中に懸濁し、動的光散乱(DLS)を使用する(例えばBrookhaven ZetaPALS機器を使用する)ことによって、得てもよい。例えば、合成ナノ担体の懸濁液は、水性緩衝剤から純水中に希釈されておよそ0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノ担体懸濁濃度を達成し得る。希釈懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベットの内部で直接調製されても、またはそれに移してもよい。次いでキュベットをDLS中に置き、制御された温度に平衡化し、次いで充分な時間スキャンして、媒体の粘度およびサンプルの屈折率に関する適切な入力に基づき、安定で再現可能な分布を獲得し得る。次いで有効径または分布の平均値を報告する。高アスペクト比または非回転楕円状の合成ナノ担体の有効サイズの決定は、より正確な測定を得るために電子顕微鏡などの拡大技術(augmentative techniques)を要する場合がある。合成ナノ担体の「寸法」または「サイズ」または「径」は、例えば動的光散乱を使用して得られる、粒子サイズ分布の平均値を意味する。
【0046】
「非メトキシ末端のポリマー」は、メトキシ以外の部位で終端する少なくとも1つの末端部を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーはメトキシ以外の部位で終端する少なくとも2つの末端部を有する。他の態様において、ポリマーはメトキシで終端する末端部を有さない。「非メトキシ末端のプルロニックポリマー」は、両末端部にメトキシを有する直鎖プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書で提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のポリマーまたは非メトキシ末端のプルロニックポリマーを含み得る。
「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得る担体」は、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、糖(例えばグルコース、ラクトース等)、抗菌剤などの保存剤、再構成助剤、着色剤、食塩水(リン酸緩衝化食塩水等)および緩衝剤を包含するが、これらに限定されない、当該分野において知られている種々の材料を含む。
【0047】
「薬力学的有効期間」は、対象への免疫抑制剤の投与後である第1の用量依存的期間を意味し、その間、抗原の投与後5日間から3か月間までの範囲で開始する第2の期間の間、抗原の投与は、測定可能な対象において抗原特異的寛容をもたらす。態様において、薬力学的有効期間は、1または2以上の対象、対象の第1のクラスなど、において測定された個々の薬力学的有効期間の平均として測定することができ、各測定対象において単独回または複数回測定できる。
「提供すること」は、本発明を実行するために必要とされる物品もしくは物品のセットまたは方法を供給する、個人が行う行動または行動のセットを意味する。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。
【0048】
「対象を提供する」とは、臨床医に対象と接触させて本明細書で提供される組成物をその対象に投与させるか、または、本明細書で提供される方法をその対象において行わせる、いずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、対象は治療用高分子の投与およびそれへの抗原特異的寛容を必要としている対象である。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに対象を提供することを含む。
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの温血動物;トリ;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどのペットまたは家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚;爬虫類;動物園のおよび野生の動物;等を包含する動物を意味する。
「合成ナノ担体(単数または複数)」は、自然界には見られずサイズにおいて5ミクロン以下の少なくとも1つの寸法を所有する離散性の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は一般に、合成ナノ担体として包含されるが、特定の態様において、合成ナノ担体はアルブミンナノ粒子を含まない。ある態様において、合成ナノ担体はキトサンを含まない。他の態様において、合成ナノ担体は脂質系ナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノ担体はリン脂質を含まない。
【0049】
合成ナノ担体は、1つまたは複数の脂質系ナノ粒子(本明細書において脂質ナノ粒子ともいわれ、すなわちその構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルス構造タンパク質で構成されるが、感染性ではなくまたは感染性が低い粒子)、ペプチドまたはタンパク質系粒子(本明細書においてタンパク質粒子ともいわれ、すなわち、その構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子であってよいが、これらに限定されない。合成ナノ担体は、回転楕円状、立方体様、ピラミッド状、楕円状、円筒状、ドーナツ状等を包含するが、これらに限定されない種々の異なる形状であり得る。
【0050】
本発明に従う合成ナノ担体は1つまたは2つ以上の表面を含む。本発明の実行に使用するように適合され得る例示的な合成ナノ担体は、(1)米国特許第5,543,158号(Gref et al.)に開示された生分解性ナノ粒子、(2)公開された米国特許出願第20060002852号(Saltzman et al.)のポリマーナノ粒子、(3)公開された米国特許出願第20090028910号(DeSimone et al.)のリソグラフィーにより構築したナノ粒子、(4)国際出願公開第2009/051837号(von Andrian et al.)の開示、(5)公開された米国特許出願第2008/0145441号(Penades et al.)に開示されたナノ粒子、(6)公開された米国特許出願第20090226525号(de los Rios et al.)に開示されたタンパク質ナノ粒子、(7)公開された米国特許出願第20060222652号(Sebbel et al.)に開示されたウイルス様粒子、(8)公開された米国特許出願第20060251677号(Bachmann et al.)に開示された核酸付着ウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839A1号または同第2009106999A2号に開示されたウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., "Surface-改変 PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles", Nanomedicine. 5(6): 843-853(2010)に開示されたナノ沈殿ナノ粒子、(11)米国特許公開第2002/0086049号に開示されたアポトーシス細胞、アポトーシス体、または、合成または半合成模倣物、または(12)Look et al., "Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates 全身 lupus erythematosus in mice", J. Clinical Investigation 123(4): 1741-1749 (2013)に開示されたものを含む。ある態様において、合成ナノ担体は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を所有し得る。
【0051】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化するヒドロキシル基ではない部位から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を実質的に活性化しない部位から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化しない部位から本質的になる表面を含む。ある態様において、合成ナノ担体は、ウイルス様粒子を排除する。ある態様において、合成ナノ担体は1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を有し得る。
【0052】
「試験用量」または「免疫抑制剤の試験用量」は、試験のための免疫抑制剤の用量を意味する。
「試験薬力学的有効期間」は、免疫抑制剤の試験用量の治療用高分子および対象の第2のクラスに関して決定される、免疫抑制剤の薬力学的有効期間を意味する。ある態様において、列挙される免疫抑制剤は、治療用高分子に関して、最小20時間から最大1か月間まで、好ましくは最小20時間から最大2週間まで、好ましくは最小20時間から最大1週間まで、好ましくは最小20時間から最大5日間まで、好ましくは最小20時間から最大3日間まで、好ましくは最小24時間から最大2日間までの範囲の期間を有する、試験薬力学的有効期間を有してもよい。
【0053】
「治療用高分子」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質、炭水化物、脂質、または核酸をいう。いくつかの態様において、対象への治療用高分子の投与は、抗治療用高分子特異的抗体の産生を包含する望ましくない免疫応答をもたらし得る。本明細書で記載する場合、いくつかの態様において、本明細書で記載する場合、治療用高分子の投与は、それへの望ましくない免疫応答を低減させることなどにより、治療用高分子の治療有効性を向上させ得る。いくつかの態様において、治療用高分子は治療用ポリヌクレオチドまたは治療用タンパク質であり得る。
【0054】
「治療用ポリヌクレオチド」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに基づく治療を意味する。かかる治療は遺伝子サイレンシングを包含する。かかる治療の例は当該分野において知られており、ネイキッドRNA(メッセンジャーRNA、修飾メッセンジャーRNAおよびRNAiの形態を包含する)が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用ポリヌクレオチドの例は本明細書中に別記する。治療用ポリヌクレオチドは、細胞中、細胞上または細胞によって、産生されてもよいし、また細胞フリーの方法、または完全に合成によるin vitro法を使用して得てもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要としているいずれかの対象を包含する。かかる対象には、前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0055】
「治療用タンパク質」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質またはタンパク質に基づく治療を意味する。かかる治療としては、タンパク質補充治療およびタンパク質補強治療が挙げられる。かかる療法にはまた、外因性または外来性のタンパク質の投与、抗体治療および細胞または細胞に基づく治療も包含される。治療用タンパク質としては、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体、抗体-薬物複合体およびポリクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用タンパク質の例は本明細書中で別記する。治療用タンパク質は、細胞中で、細胞上で、または細胞によって、産生されてもよく、かかる細胞から得られるか、または、かかる細胞の形態で投与されてもよい。ある態様において、治療用タンパク質は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、トランスジェニック動物細胞、トランスジェニック植物細胞、等中で、これらの細胞上で、またはこれらの細胞によって産生される。治療用タンパク質は、かかる細胞中で遺伝子組換えにより産生されてもよい。治療用タンパク質は、ウイルスで形質転換した細胞中、該細胞上、または該細胞により産生されてもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要とするいずれかの対象を包含する。かかる対象には前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0056】
C.本方法の実行において有用な組成物
本明細書で提供されるものは、望ましくない免疫応答の発生の低減および治療用高分子に特異的な寛容原性免疫応答の発生を促進するために有用な方法および関連した組成物である。該方法および組成物は、薬力学的有効期間の間、治療用高分子を投与することによって、免疫抑制剤の治療用高分子に関して、免疫抑制剤を投与する利益を最大化することを助ける。本発明の方法は、治療用高分子に対する寛容原性免疫応答が望ましい対象で実行することができる。かかる対象は、治療用高分子を投与されるであろうものを含む。本発明の実行において、特定の有用性は、治療用高分子に関して、最小20時間から最大1か月間までの範囲の期間を有する薬力学的有効期間を有する免疫抑制剤である。様々な免疫抑制剤は、本発明の実行において使用してもよい。
【0057】
特定の態様において、列挙される免疫抑制剤は、移植可能浸透圧ポンプなどのデバイスの形態であってもよい。本発明の実行において使用され得る、1つのかかる移植可能浸透圧ポンプは、ALZET(登録商標)ブランド移植可能浸透圧ポンプである(Durect Corporation, Cupertino CAから入手可能)。ALZET(登録商標)ブランド浸透圧ポンプは、制御された速度で1日から4週間まで、外部接続、頻繁な取り扱いまたは繰り返しの投薬の必要なく、連続的に薬物、ホルモンおよび他の試験剤を送達できる、小型の移植可能浸透圧ポンプである。これらの輸液ポンプは、皮膚下または身体に移植されたとき、全身投与に使用できる。それらは、静脈内、脳内もしくは動脈内の輸液または標的化送達のためのカテーテルに付着させることができ、ここで薬物または試験剤の効果は、特定の組織または臓器に局在する。該ポンプは、該ポンプと動物の体液との間の浸透圧の違いによって動き、したがって、外部電源を必要としない。ALZETポンプは、脊髄、脾臓、肝臓、臓器または組織移植および創傷治癒部位を含む種々多様な部位への送達を標的化するために使用される。例えば、S. M. Stepkowski et al., “Inhibition of host-versus-graft and graft-versus-host responses after small bowel transplantation in rats by rapamycin.” Transplantation (1992) 53(-2-):258-264を参照されたい。ALZET(登録商標)ブランド浸透圧ポンプに関する他の情報はalzet.comで入手可能である。
【0058】
ある態様において、列挙される免疫抑制剤は、免疫細胞上の関心の高分子および寛容の刺激に関与する免疫細胞上の標的(細胞表面受容体など)に結合するように設計されたその他の可変領域に選択的に結合する抗原(BCRなど)の受容体を標的化するために設計された1つの可変領域を有する、二重特異性抗体(BsAb)の形態であってもよい。別の態様において、BsAbは、関心の高分子に結合する、別の抗体の可変領域を標的とするように設計された1つの可変領域(抗イディオタイプの領域または抗体)および寛容の刺激に関与する免疫細胞上の標的(細胞表面受容体など)に結合するように設計されたその他の可変領域からなる。2つの結合特異性の組み合わせより、BsAb免疫抑制剤の選択性および効能を改善することができ、関心の高分子の免疫寛容を誘発することができる。ある態様において、免疫抑制剤BsAb標的は、B細胞上のCD19、CD20、CD21、CD22(参考:Ref: M. R. Clatworthy, American Journal of Transplantation 2011; 11: 1359-1367)、およびGITR(グルココルチコイドで誘発された腫瘍ネクローシス因子(TNF)受容体ファミリー関連遺伝子)を含むが、これらに限定されない。GITRは、TNF受容体ファミリーメンバーと相同性を有するタイプI膜貫通タンパク質である。GITRは、安静時のCD4+およびCD8+T細胞ならびに上方制御された以下のT細胞活性化の際は低レベルで発現される。GITRのライゲーションは、特に最適下限のT細胞受容体(TCR)刺激の設定における、CD4+およびCD8+T細胞の両方の増殖ならびに効果または機能を向上させる、共刺激性シグナルを提供する。さらに、GITRは、制御T細胞(Treg)上、高レベルで連続的に発現され、Treg抑制を克服するための潜在的な標的として探索されている。GITRリガンドを使用してGITRを通じたシグナル伝達は、Tregの抑制効果を無効化し、自己反応性およびアロ反応性T細胞応答を向上させ、自己免疫を悪化させる。別のBsAb標的は、LAG3(CD223として知られる)を含んでもよい。CD223は、CD4よりも高い親和性でMHCクラスIIに結合し、この相互作用は、T細胞活性化および恒常的な増殖の負の制御に関与すると考えられている。さらに、CD223は、CD4+CD25+制御T細胞によって発現され、CD223は、当該技術分野において公知の他のかかる標的に加えて、それらの制御機能に関与し得ることが示唆されている。
【0059】
特定の態様において、列挙される免疫抑制剤は、移植可能高分子デポ材料の形態であってもよい。ある態様において、移植可能高分子デポ材料は、微多孔質、生体適合性、生分解性、熱可塑性ポリマーの固体マトリックス、速度改変剤(rate modifying agent)および生体活性材料を含む。該マトリックスは、溶液または懸濁液において形成され、注射可能な液体を形成する。該マトリックスは、マトリックスからの生体活性剤の放出の速度および程度を制御する。該プロセスは、それによってデポが部分的に形成され、速度および放出制御の発達の原因である。ポリマー系を凝固させるための、身体におけるin situまたは身体外のいずれかにおける水性媒体を有する液体組成物の相互作用は、構成成分の多様性の機能および種々の構成成分の濃度として、望ましい制御された放出プロファイルを少なくとも部分的にもたらす。例示的な移植可能高分子デポ材料は、“Polymeric compositions useful as controlled release implants”と題する米国特許第5,702,716号(Dunn et al.)および“Gel composition and methods”と題する米国特許第6,130,200号(Brodbeck et al.)に見出すことができる。
【0060】
列挙される免疫抑制剤は、免疫抑制剤を含む合成ナノ担体の形態において投与することもできる。種々多様な合成ナノ担体を本発明に従い使用し得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、球状または回転楕円状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は平坦または平板形状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は立方体または立方体状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は卵形または長円である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は円筒、円錐またはピラミッドである。
いくつかの態様において、各合成ナノ担体が同様の性質を有するようにサイズまたは形状の点で比較的均一である合成ナノ担体の集団を使用することが望ましい。例えば、合成ナノ担体の総数に基づいて少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の合成ナノ担体は、合成ナノ担体の平均径または平均寸法の5%、10%または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有し得る。
【0061】
合成ナノ担体は、中実または中空であってよく、1つまたは2つ以上の層を含み得る。いくつかの態様において、各層が、他の層(単数または複数)に対して、独自の組成物および独自の性質を有する。例を挙げると、合成ナノ担体は、コアが1つの層(例えばポリマーコア)でありシェルが第2の層(例えば脂質二分子層または脂質単分子層)であるコア/シェル構造を有していてもよい。合成ナノ担体は複数の異なる層を含んでいてもよい。
【0062】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の脂質を含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体はリポソームを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質二分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質単分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体はミセルを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれた非ポリマーコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物、等)を含んでいてもよい。
他の態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、等を含んでいてもよい。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0063】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の両親媒性の実体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、両親媒性の実体は安定性が増大されているか、均一性が改善されているか、または、粘度が増大されている合成ナノ担体の生成を促進し得る。いくつかの態様において、両親媒性の実体は、脂質膜(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)の内部表面に関連され得る。当該分野において知られている多くの両親媒性の実体は、本発明に従う合成ナノ担体を作ることにおける使用に好適である。かかる両親媒性の実体としては、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪族アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの表面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);
【0064】
ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキソマー(poloxomer);ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性物質活性を有する合成および/または天然洗剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオンペア剤;および、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。両親媒性実体構成成分は、異なる両親媒性実体の混合物であってもよい。これが界面活性物質活性を有する物質の包括的ではない例示的なリストであるということを当業者は認識するであろう。いずれかの両親媒性実体を、本発明に従って使用される合成ナノ担体の生成に使用してよい。
【0065】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の炭水化物を含んでいてもよい。炭水化物は天然または合成であってもよい。炭水化物は誘導天然炭水化物であってもよい。特定の態様において、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルコン酸、ガラクトン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラトサミンおよびノイラミン酸が挙げられるが、これらに限定されない単糖または二糖を含む。特定の態様において、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、Ν,Ο-カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、こんにゃく、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンが挙げられるが、これらに限定されない多糖である。ある態様において、合成ナノ担体は多糖などの炭水化物を含まない(または具体的に排除される)。特定の態様において、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールが挙げられるが、これらに限定されない糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでいてもよい。
【0066】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は1つまたは2つ以上のポリマーを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体は非メトキシ末端のポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体はプルロニックポリマーを含まない1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)がプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てがプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単分子層、ミセル、等)で囲まれていてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体の種々の要素はポリマーに付着されていてもよい。
【0067】
免疫抑制剤は、多くの方法のいずれかによって合成ナノ担体に付着され得る。一般に付着は、免疫抑制剤と合成ナノ担体との間の結合の結果であり得る。この結合は、免疫抑制剤が合成ナノ担体の表面に付着されおよび/または合成ナノ担体内に含有され(カプセル化され)ることをもたらし得る。しかしながら、いくつかの態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体への結合ではなくむしろ合成ナノ担体の構造の結果として、合成ナノ担体によってカプセル化される。好ましい態様において、合成ナノ担体は、本明細書で提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤はポリマーに付着される。
付着が免疫抑制剤と合成ナノ担体との間の結合の結果として起こるとき、付着は連結部位を介して起こり得る。連結部位は免疫抑制剤がその部位を通して合成ナノ担体に結合されるいずれかの部位であり得る。かかる部位には、アミド結合またはエステル結合などの共有結合ならびに免疫抑制剤を合成ナノ担体に(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合する別個の分子が包含される。かかる分子は、リンカー、または、ポリマーまたはそれらの単位を包含する。例えば、連結部位は、免疫抑制剤が静電的に結合する荷電ポリマーを含み得る。別の例として、連結部位は、それが共有結合的に結合するポリマーまたはその単位を含み得る。
【0068】
好ましい態様において、合成ナノ担体は本明細書で提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノ担体は完全にポリマー性であってもよく、ポリマーと他の材料との混合であってもよい。
いくつかの態様において、合成ナノ担体のポリマー同士が関連してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のうちのいくつかにおいて、免疫抑制剤などの構成成分はポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと共有結合的に関連され得る。いくつかの態様において、共有結合的関連はリンカーによって媒介される。いくつかの態様において、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと非共有結合的に関連され得る。例えば、いくつかの態様において、構成成分は、高分子マトリックス内にカプセル化され、それによって囲まれ、および/または、それの全体にわたって分散され得る。代替的または追加的に、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと、疎水性の相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力、等によって関連され得る。ポリマーマトリックスを形成するための多種多様なポリマーおよび方法は従来、知られている。
【0069】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーはホモポリマーまたは2つまたは3つ以上のモノマーを含むコポリマーであり得る。並びの点で、コポリマーはランダム、ブロックであっても、ランダムとブロックとの並びの組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明に従うポリマーは、有機ポリマーである。
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、または、これらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトン、または、これらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは生分解性であることが好ましい。それゆえ、これらの態様において、ポリマーがポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーは、生分解性となるように、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などの、ポリエーテルまたはこれらの単位を、それだけでは含まない。
【0070】
本発明で使用するのに好適なポリマーの他の例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマラート、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ尿素、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEG共重合体およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEG共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの態様において、本発明に従うポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを包含するが、これらに限定されない、米国医薬品局(FDA)により21C.F.R.§177.2600の下でヒトにおける使用が認証されたポリマーを包含する。
【0072】
いくつかの態様において、ポリマーは親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例えばホスファート基、スルファート基、カルボキシラート基);カチオン性基(例えば四級アミン基);または極性基(例えばヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に親水性環境を発生させる。いくつかの態様において、ポリマーは疎水性であり得る。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に疎水性環境を発生させる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノ担体内に組み込まれた(例えば、付着された)材料の特質に影響を有し得る。
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上の部位および/または官能基で修飾され得る。種々の部位または官能基を本発明に従い使用し得る。いくつかの態様において、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)で、炭水化物で、および/または、多糖から誘導された非環式ポリアセタールで、修飾され得る(Papisov, 2001、ACS Symposium Series, 786:301)。特定の態様は、米国特許第5543158号(Gref et al.)または国際公開第2009/051837号(Von Andrian et al.)の一般的教示を使用してなされ得る。
【0073】
いくつかの態様において、ポリマーは脂質または脂肪酸基で修飾され得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸の1つまたは2つ以上であり得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルシン酸の1つまたは2つ以上であり得る。
【0074】
いくつかの態様において、ポリマーは、本明細書において集合的に「PLGA」と呼ばれる、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;および本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位を含むホモポリマー;および本明細書において集合的に「PLA」と呼ばれるポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマー、を包含するポリエステルであってもよい。いくつかの態様において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマーおよびこれらの誘導体)が挙げられる。いくつかの態様において、ポリエステルは、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびこれらの誘導体を包含する。
【0075】
いくつかの態様において、ポリマーはPLGAである。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、乳酸:グリコール酸の比によってPLGAの種々の形態が特徴付けられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であり得る。PLGAの分解速度は乳酸:グリコール酸比を変えることによって調節され得る。いくつかの態様において、本発明に従い使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75、または、およそ15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴付けられる。
【0076】
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の態様において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(無水メタクリル酸)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラートおよび上記のポリマーの1つまたは2つ以上を含む組み合わせを包含する。アクリルポリマーは、四級アンモニウム基の含有量の低いアクリルおよびメタクリル酸エステルの十分にポリマー化されたコポリマーを含み得る。
【0077】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般にカチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電されたストランドを濃縮および/または保護する能力がある。ポリ(リジン)(Zauner et al., 1998、Adv. Drug Del. Rev., 30:97; Kabanov et al., 1995, Bio複合体 Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897; Tang et al., 1996, Bio複合体 Chem., 7:703; Haensler et al., 1993, Bio複合体 Chem., 4:372)などのアミン含有ポリマーは、生理学的なpHで正に荷電されて核酸とイオン対を形成する。ある態様において、合成ナノ担体はカチオン性ポリマーを含まなくてもよい(または排除してもよい)。
【0078】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性の側鎖を持つ生分解性ポリエステル(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Barrera et al., 1993, J, Am. Chem. Soc., 115: 11010; Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633; Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)であり得る。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115: 11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)およびポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0079】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらの調製方法は当該分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;5,804,178号;5,770,417号;5,736,372号;5,716,404号;6,095,148号;5,837,752号;5,902,599号;5,696,175号;5,514,378号;5,512,600号;5,399,665号;5,019,379号;5,010,167号;4,806,621号;4,638,045号;および4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480; Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460; Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7; Uhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181参照)。より一般には、特定の好適なポリマーを合成するための種々の方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980; Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004; Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice-Hall, 1981; Deming et al., 1997, Nature, 390:386;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号に記載されている。
【0080】
いくつかの態様において、ポリマーは直鎖状または分枝状ポリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーはデンドリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に、互いに架橋されていてよい。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に架橋を含まなくてよい。いくつかの態様において、ポリマーは架橋ステップを経験せずに本発明に従い使用され得る。合成ナノ担体は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブレンド、混合物および/または付加物を含み得ることをさらに理解すべきである。本明細書中に列挙されるポリマーは、本発明に従い使用され得る包括的でない例示的なポリマーのリストを表すものであることを当業者は認識するであろう。
いくつかの態様において、合成ナノ担体はポリマー構成成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子等を含み得る。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0081】
本発明に従う組成物は、要素を、保存剤、緩衝剤、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて含み得る。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得る。ある態様において、合成ナノ担体を含むものなどの組成物は、保存剤と一緒に注射用の滅菌食塩水溶液に懸濁される。
ある態様において、担体としての使用のための合成ナノ担体を調製するとき、合成ナノ担体に構成成分を付着する方法が有用であり得る。構成成分が小さな分子である場合、合成ナノ担体の組み立ての前にその構成成分をポリマーに付着することが有利である場合がある。ある態様において、構成成分をポリマーに付着し、次いでこのポリマー複合体を合成ナノ担体の構築に使用するというよりはむしろ、それらの表面基の使用を通して構成成分を合成ナノ担体に付着させるために使用される表面基を有する合成ナノ担体を調製することも有利である場合がある。
【0082】
特定の態様において、付着は共有結合性リンカーによりなされ得る。ある態様において、本発明に従う構成成分は、ナノ担体の表面のアジド基とアルキン基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、または、ナノ担体の表面のアルキンとアジド基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、形成される、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して外部表面に共有結合的に付着され得る。かかる環状付加反応は好ましくは、好適なCu(I)リガンドと、Cu(II)化合物を触媒活性なCu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下で行われる。このCu(I)触媒アジド-アルキン環状付加(CuAAC)はまた、クリック反応といわれることもある。
加えて、共有結合的付着は、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカーおよびスルホンアミドリンカーを含む共有結合性リンカーを含み得る。
【0083】
アミドリンカーは、免疫抑制剤などの一方の構成成分上のアミンとナノ担体などの第2の構成成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、好適に保護されたアミノ酸および活性化されたカルボン酸(N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルなど)との従来のアミド結合形成反応のいずれかを使用して作られ得る。
ジスルフィドリンカーは、例としてR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して作られ得る。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含有する構成成分とポリマーまたはナノ担体上の別の活性化チオール基との、または、チオール/メルカプタン基を含有するナノ担体と活性化チオール基を含有する構成成分との、チオール交換によって形成され得る。
トリアゾールリンカー、具体的には、下記の形態
【化1】
(式中R
1およびR
2が、いずれかの化学的実体であり得る)の1,2,3-トリアゾールは、ナノ担体などの第1構成成分に付着されたアジドの、免疫抑制剤などの第2構成成分に付着された末端アルキンとの1,3-双極子環状付加反応により作られる。1,3-双極子環状付加反応は、触媒の有無で、好ましくはCu(I)触媒を使用して、行われ、これにより2つの構成成分が1,2,3-トリアゾール官能性を通してつながれる。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002) および Meldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015により詳細に記載され、「クリック」反応またはCuAACと呼ばれることも多い。
【0084】
ある態様において、ポリマー鎖の末端にアジドまたはアルキン基を含有するポリマーが調製される。このポリマーは次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノ担体の表面上に位置するような様式で合成ナノ担体を調製するのに使用される。代替的に、合成ナノ担体は、別の経路により調製され、その後にアルキンまたはアジド基で官能化されてもよい。構成成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含有する場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含有する場合)基のどちらかの存在により調製される。構成成分は次に、触媒の有無で1,3-双極子環状付加反応を介してナノ担体と反応され、これにより1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して構成成分が粒子に共有結合的に付着される。
【0085】
チオエーテルリンカーは、例としてR1-S-R2の形態の硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成によって作られる。チオエーテルは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2構成成分上のハロゲン化物またはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化によって作られる。チオエーテルリンカーはまた、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケル受容体としてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有する第2の構成成分上の電子不足アルケン基へのマイケル付加によっても形成され得る。別の方式において、チオエーテルリンカーは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基と、第2構成成分上のアルケン基とのラジカルチオール-エン反応により調製され得る。
【0086】
ヒドラゾンリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジド基と、第2構成成分上のアルデヒド/ケトン基との反応によって作られる。
ヒドラジドリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジン基と第2構成成分上のカルボン酸基との反応により形成される。かかる反応は一般に、カルボン酸が活性化試薬で活性化される場合のアミド結合の形成と同様の化学を使用して行われる。
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの構成成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基と、第2構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
尿素またはチオ尿素リンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
【0087】
アミンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のハロゲン化物、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応により作られる。代替的に、アミンリンカーはまた、1つの構成成分上のアミン基と第2の構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬を使用した還元アミノ化により作られてもよい。
スルホアミドリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリド等)基との反応によって作られてもよい。
スルホンリンカーは、求核基のビニルスルホンへのマイケル付加により作られる。ビニルスルホンまたは求核基のいずれかは、ナノ担体の表面上にあってもよいし、構成成分に付着されていてもよい。
【0088】
構成成分はまた、非共有結合性複合化法を介してナノ担体に複合化されていてもよい。例えば、負に荷電された免疫抑制剤は、静電吸着を通して正に荷電されたナノ担体に複合化されてもよい。金属リガンドを含有する構成成分はまた、金属-リガンド錯体を介して金属錯体を含有するナノ担体に複合化されてもよい。
ある態様において、構成成分は、合成ナノ担体の組み立ての前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに付着されてもよいし、合成ナノ担体がその表面上に反応性のまたは活性化可能な基を有するように形成されてもよい。後者の場合、構成成分は、合成ナノ担体の表面によって提示される付着化学と適合可能な基を有するように調製されてもよい。他の態様において、ぺプチド構成成分は、好適なリンカーを使用してVLPまたはリポソームに付着されてもよい。リンカーは、2つの分子同士を付着し得る化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008に記載のホモ二官能性またはヘテロ二官能性試薬であってもよい。例えば、表面上にカルボキシル基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノ担体を、EDCの存在下でホモ二官能性リンカー、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置してADHリンカーを有する対応する合成ナノ担体を形成し得る。結果としてもたらされるADHにつながれた合成ナノ担体は次いで、ナノ担体上のADHリンカーの他の端部を介して酸基を含有するペプチド構成成分と複合化されて対応するVLPまたはリポソームペプチド複合体を生成する。
【0089】
利用可能な複合化方法の詳細な記載に関しては、Hermanson G T "Bioconjugate Techniques", 2nd Edition Published by Academic Press, Inc., 2008を参照のこと。共有結合性の付着に加えて、構成成分は、予め形成された合成ナノ担体への吸着によって付着されてもよいし、合成ナノ担体形成中のカプセル化によって付着されてもよい。
本明細書で提供されるいずれかの免疫抑制剤は、本発明によって、例えば、ナノ結晶性形態で使用することによって、ALZET(登録商標)浸透圧ポンプへ積載することによって、または、合成ナノ担体(すなわち、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤)に付着することによって使用できる。
【0090】
本明細書で提供されるいずれかの免疫抑制剤は、提供される方法または組成物において使用され得、いくつかの態様においては、合成ナノ担体に付着されてもよい。免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4インヒビターなどのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビターおよび酸化ATPが挙げられるがこれらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド、インターロイキン(例えばIL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNA、等が挙げられる。
【0091】
スタチンの例としては、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
【0092】
mTORインヒビターの例としては、ラパマイシンおよびその類縁体(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al., Chemistry & Biology 2006, 13:99-107))、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムスおよびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0093】
TGF-βシグナル剤の例としては、TGF-βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、ノーダル、TGF-β)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)およびリガンドインヒビター(例えば、フォリスタチン、ノギン、コルジン、DAN、レフティ、LTBP1、THBS1、デコリン)が挙げられる。
【0094】
ミトコンドリア機能のインヒビターの例としては、アトラクチロシド(ジカリウム塩)、ボングクレキック酸(トリアンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、カロボキシアトラクチロシド(例えばアトラクチリス属から)、CGP-37157、(-)-デグエリン(例えばMundulea sericeaから)、F16、ヘキソキナーゼIIVDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1およびバリノマイシン(例えばStreptomuces fulvissimusから)(EMD4Biosciences, USA)が挙げられる。
P38インヒビターの例としては、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))およびARRY-797が挙げられる。
【0095】
NF(例えば、ΝΚ-κβ)インヒビターの例としては、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY11-7082、BAY11-7085、CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、ジエチルマレエート、IKK-2インヒビターIV、IMD0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化インヒビターIII、NF-κB活性化インヒビターII、JSH-23、パルテノリド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトリド(PG490)およびウェデロラクトンが挙げられる。
【0096】
アデノシン受容体アゴニストの例としては、CGS-21680およびATL-146eが挙げられる。
プロスタグランジンE2アゴニストの例としては、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4が挙げられる。
ホスホジエステラーゼインヒビター(非選択的および選択的インヒビター)の例としては、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンダン(levosimendon)、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1が挙げられる。
【0097】
プロテアソームインヒビターの例としては、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAが挙げられる。
キナーゼインヒビターの例としては、ベバシズマブ、BIBW2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブが挙げられる。
【0098】
グルココルチコイドの例としては、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、コルチゾンアセタート、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾンアセテート、デオキシコルチコステロンアセテート(DOCA)およびアルドステロンが挙げられる。
レチノイドの例としては、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝産物アシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
【0099】
サイトカインインヒビターの例としては、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニストの例としては、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニストの例としては、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブレート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY171883、PPARγアクチベーター、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0100】
ヒストンデアセチラーゼインヒビターの例としては、トリコスタチンA、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチドなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサメート)、ベンズアミド、求電子性ケトン、酪酸フェニルおよびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンおよび2-ヒドロキシナフアルデヒド(hydroxynaphaldehyde)が挙げられる。
【0101】
カルシニューリンインヒビターの例としては、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスが挙げられる。
ホスファターゼインヒビターの例としては、BN82002ヒドロクロリド、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、サイパーメスリン、エチル-3,4-デホスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デホスタチン、NSC95397、ノルカンタリジン、prorocentrum concavumからのオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、種々のホスファートインヒビター混液、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2Aインヒビタータンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2およびオルトバナジン酸ナトリウムが挙げられる。
【0102】
いくつかの態様において、治療用高分子は、治療用高分子そのものまたはそれらの断片または誘導体の形態で送達され得る。治療用高分子は、治療用タンパク質および治療用ポリヌクレオチドを包含し得る。治療用タンパク質としては、点滴可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えば補充治療として対象に投与されるもの)およびポンペ病に関連するタンパク質(例えば酸性グルコシダーゼアルファ、rhGAA(例えばミオザイムおよびルミザイム(Genzyme))が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、血液凝固カスケードに関与するタンパク質も包含する。治療用タンパク質としては、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第V因子、フォン・ヴィレブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチンアルファ、VEGF、トロンボポエチン、リゾチーム、アンチトロンビン等が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、レプチンおよびアディポネクチンなどのアディポカインも包含する。治療用タンパク質の他の例は以下に記載し、および本明細書中に別記するとおりである。
【0103】
リソソーム蓄積障害を有する対象の酵素補充治療に使用される治療用タンパク質の例としては、ゴーシェ病の処置のためのイミグルセラーゼ(例えばCEREZYME(商標))、ファブリー病の処置のためのa-ガラクトシダーゼA(a-galA)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、ポンペ病の処置のための酸性αグルコシダーゼ(GAA)(例えば、酸性グルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))およびムコ多糖症の処置のためのアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))、ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)およびペグシチカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
酵素の例としては、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、リジンおよびリガーゼが挙げられる。
治療用タンパク質はまた、いずれかの細菌性の、真菌性の、またはウイルス性の供給源から単離されるか、または誘導された酵素、毒素、または、他のタンパク質またはペプチドを包含してもよい。
【0105】
ホルモンの例としては、メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプトアミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードチロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードチロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドーパミン(またはプロラクチン阻害ホルモン)、抗ミュラー管ホルモン(またはミュラー管阻害因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンジオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン、抗利尿性ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GIP、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはチロトロピン)、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)、カルシジオール(25-ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵ポリペプチド、レニンおよびエンケファリンが挙げられる。
【0106】
血液または血液凝固因子の例としては、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子またはプロコンベルチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン構成成分)、第X因子(スチュアート・プローワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子量キニノゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
【0107】
サイトカインの例としては、リンホカイン、インターロイキンおよびケモカイン、IFN-γなどのタイプ1サイトカイン、TGF-βおよびIL-4、IL-10およびIL-13などのタイプ2サイトカインが挙げられる。
成長因子の例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、マイグレーション刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル経路、胎盤増殖因子(P1GF)、(ウシ胎児ソマトトロピン)(FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
【0108】
モノクローナル抗体の例としては、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、ALD、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトックス(Anatumomab mafenatox)、アンルキンズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ(Aselizumab)、アトリズマブ(トシリズマブ)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス(Dorlimomab aritox)、ドルリキシズマブ(Dorlixizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(Efungumab)、エロツズマブ、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エンリモマブペゴル、エピツモマブシツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、
【0109】
ファノレソマブ、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ、フィジツムマブ(Figitumumab)、フォントリズマブ、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガンビリモマブ、ゲムツマブオゾガマイシン、GC1008、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ(Lemalesomab)、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ(Libivirumab)、リンツズマブ、ロボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミツモマブ、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オクレリズマブ、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ、オララツマブ(Olaratumab)、オマリズマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パスコリズマブ(Pascolizumab)、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、
【0110】
ペンツモマブ(Pintumomab)、プリリキシマブ、プリツムマブ(Pritumumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、セビルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブペプトクス(Taplitumomab paptox)、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、トシリズマブ(アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ(Vapaliximab)、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ(Ziralimumab)およびズリモマブアリタオクス(Zolimomab aritox)が挙げられる。モノクローナル抗体はさらに、抗TNF-α抗体を包含する。
【0111】
点滴治療または注射可能治療用タンパク質の例としては、例えば、トシリツマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、ヘマタイド(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、ルシン(登録商標)(Pharming Group、C1インヒビター補充治療)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムバブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、ペグシチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ベラグルセラーゼアルファ(Shire)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が挙げられる。
【0112】
追加の治療用タンパク質としては、例えば、Fc融合タンパク質などの遺伝子操作タンパク質、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ナノボディ、抗原結合タンパク質、抗体フラグメントおよび抗体薬物複合体などのタンパク質複合体が挙げられる。
治療用ポリヌクレオチドとしては、ペガプタニブ(マクゲン、ペグ化された抗VEGFアプタマー)などの核酸アプタマー、アンチセンスポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、抗ウイルス薬物フォミビルセン(Fomivirsen)またはミポメルセン、コレステロール値を低減させるためにアポリポタンパク質BのためのメッセンジャーRNAを標的にするアンチセンス治療剤)などのアンチセンス治療剤;低分子干渉RNA(siRNA)(例えば、RNAiを極めて高い効力で媒介する25~30塩基対の非対称二重鎖RNAである、ダイサー基質siRNA分子(DsiRNA));または米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)および公開された米国特許出願第2012/0251618号(Schrum et al.)に開示されたもののような修飾型メッセンジャーRNA(mmRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明の側面に従って有用な追加の治療用高分子は、当業者には明らかであり、本発明はこの点において限定されない。
いくつかの態様において、治療用高分子または免疫抑制剤などの構成成分は、単離されていてもよい。「単離されている」は、その本来の環境から分離されて、その同定または使用を許すのに充分な分量で存在する要素である。これは例えば、その要素が、(i)発現クローニングによって選択的に産生され得るか、または(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製され得るということを意味する。単離された要素は、実質的に純粋であってもよいが、純粋である必要はない。単離された要素は医薬調製物中で薬学的に許容し得る賦形剤と混和されてもよいので、要素は、調製物にごくわずかな重量パーセンテージで含まれてもよい。要素はそれでもなお、生体系において関連され得る物質から分離された、すなわち、他の脂質またはタンパク質から単離されたという点で単離されている。本明細書で提供される要素のいずれも、単離されて組成物に包含されても、単離された形態で方法において使用されてもよい。
【0114】
D.組成物を作りおよび使用する方法ならびに関係する方法
列挙される免疫抑制剤が移植可能浸透圧ポンプを含む、ある態様において、免疫抑制剤は、免疫抑制剤の溶液を含有するALZET(登録商標)移植可能浸透圧ポンプを使用して調製することができる。かかる移植可能ポンプは、局所キャピラリーによる化合物の吸収のため、その結果として全身投与をもたらす局所皮下空間への免疫抑制剤の制御された放出のために皮下か、または、肝臓の門脈循環への免疫抑制剤の制御された放出のために腹腔内に移植することができる。移植可能ポンプは、静脈または動脈循環への免疫抑制剤の制御された静脈内送達のためのカテーテルを介して使用することもできる。それらは、静脈内、脳内または動脈内輸液のために、または標的化された送達のためにカテーテルに付着することができ、ここで、薬物または試験剤の効果が特定の組織または臓器に局所化する。例えば、S. M. Stepkowski et al., “Inhibition of host-versus-graft and graft-versus-host responses after small bowel transplantation in rats by rapamycin.” Transplantation (1992) 53(-2-):258-264を参照。広範な文献データベースを含む、ALZET(登録商標)ブランド浸透圧ポンプのセットアップおよび使用に関する他の情報はalzet.comで入手可能である。
【0115】
列挙される免疫抑制剤が二重特異性抗体(BsAb)を含む、ある態様において、二重特異性抗体は、2つの異なるハイブリドーマ細胞株の融合などの遺伝的または生物学的な方法または2つの抗体分子を当該技術分野において知られた方法による好適なリンカーを介して架橋するなどの化学的な方法によって調製することができる。BsAbを生成するためのいくつかの方法が開発されている。BsAbは、2つのハイブリドーマ細胞株を融合することによって、生物学的に生成することができ、BsAbを分泌することができるクワドローマを産生する。BsAbは、遺伝的に生じさせることもでき、様々な遺伝的技術が二重特異性分子を作製するために使用されている。BsAbを作製するための第3の方法は、様々なホモ二官能性およびヘテロ二官能性化学的リンカー(Roland E. Kontermannによって編集されたBispecific Antibodies, Springer, 2011を参照)を使用する、化学的手段によるものである。BsAbの形態に関するさらなる情報は、M. Peipp et al., “Bispecific antibodies targeting cancer cells” Biochemical Society Transaction pp. 507-511 vol. 30 part 4 (2002)を含む文献において見出すことができるが、これに限定されない。BsAbは、モノクローナル抗体を使用する方法と同様に皮下または静脈内注射によって患者に投与することができる。
【0116】
特定の態様において、列挙される免疫抑制剤は、移植可能高分子デポ材料の形態であってもよい。移植可能高分子デポ材料は、例えば、“Polymeric compositions useful as controlled release implants”と題する米国特許第5,702,716号(Dunn et al.)および“Gel composition and methods”と題する米国特許第6,130,200号(Brodbeck et al.)において見出される従来の粒子によって配合してもよく、投与してもよい。
ある態様において、免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着される。合成ナノ担体は当該分野において知られている種々多様な方法を使用して調製され得る。例えば、合成ナノ担体は、ナノ沈殿、流体チャンネルを使用するフローフォーカシング、噴霧乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸留、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルション手順、ミクロ加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、および、当業者に周知の他の方法によって形成され得る。代替的または追加的に、単分散半伝導体または伝導性、磁性、有機および他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1 :48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。追加の方法が文献に記載されている(例えば、Doubrow, Ed., "Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy," CRC Press, Boca Raton, 1992; Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5: 13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275; Mathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および6007845号;P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6): 843-853 (2010)を参照)。
【0117】
必要に応じて、C. Astete et al., "Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles" J. Biomater. Sci. Polymer Edn, Vol. 17, No. 3, pp. 247-289 (2006); K. Avgoustakis "Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery" Current Drug Delivery 1: 321-333 (2004); C. Reis et al., "Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles" Nanomedicine 2:8-21 (2006); P. Paolicelli et al., "Surface-改変 PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)が挙げられるが、これらに限定されない種々の方法を使用して、種々の材料を合成ナノ担体中にカプセル化してもよい。材料を合成ナノ担体中にカプセル化するのに好適な、米国特許第6,632,671号(Unger、2003年10月14日発行)に開示された方法を包含するが、これらに限定されない他の方法を使用してもよい。
【0118】
特定の態様において、合成ナノ担体は、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノ担体の調製に使用される条件は、望ましいサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外部形態学、「粘着性」、形状、等)の粒子を産出するために変え得る。合成ナノ担体の調製方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、空気流量、等)は、合成ナノ担体に付着すべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
上記の方法のいずれかによって調製される合成ナノ担体が望ましい範囲を外れるサイズ範囲を有する場合、かかる合成ナノ担体は、例えば、篩いを使用して分粒されてもよい。
合成ナノ担体の要素(すなわち構成成分)は、例えば、1つまたは2つ以上の共有結合によって合成ナノ担体全面的に付着されてもよいし、1つまたは2つ以上のリンカーを使用して付着されてもよい。合成ナノ担体を官能化する追加の方法は、公開された米国特許出願第2006/0002852号(Saltzman et al.)、公開された米国特許出願第2009/0028910号(DeSimone et al)または公開された国際特許出願WO/2008/127532Al(Murthy et al.)から適合されてもよい。
【0119】
代替的または追加的に、合成ナノ担体は、直接的に、または非共有結合的相互作用を介して間接的に、構成成分に付着されてよい。非共有結合的な態様において、非共有結合的連結は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない、非共有結合的相互作用により媒介される。かかる連結は、合成ナノ担体の外部表面または内部表面上に配列されてもよい。ある態様において、カプセル化および/または吸収が連結の形態である。ある態様において、合成ナノ担体は、同じビヒクルまたは送達系中で混和することによって免疫抑制剤または治療用高分子と組み合わされてもよい。
【0120】
提供される組成物は、無機または有機緩衝剤(例えば、リン酸、カルボン酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調節剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性物質(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶解および/または冷凍/凍結乾燥安定剤(cryo/lyo stabilizer)(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone)、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、高分子安定剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)ならびに共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでいてもよい。
【0121】
本発明に従う組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得るか、または特別な技術(ALZET(登録商標)ポンプまたは二重特異性抗体の場合など)を使用して作られ得る。本発明の実行における使用に好適な技術は、Handbook of Industrial 混合する: Science and Practice, Edited by Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-Obeng, and Suzanne M. Kresta, 2004 John Wiley & Sons, Inc.; and Pharmaceutics: The Science of Dosage Form Design, 2nd Ed. Edited by M. E. Auten, 2001, Churchill Livingstoneに見出され得る。ある態様において、組成物は保存剤と一緒に注射用滅菌食塩水溶液中にある。
本発明の組成物はいずれかの好適な様式で作り得、本発明は本明細書に記載される方法を使用して生成され得る組成物になんら限定されないということを理解すべきである。適切な製造方法の選択は、関連している具体的な部位の性質に対する注意を要する場合がある。
【0122】
いくつかの態様において、免疫抑制剤、治療用高分子またはかかる材料を含む組成物は、滅菌条件下で製造されるか、または最終的に滅菌される。このことは、結果としてもたらされる材料または組成物が滅菌され、および非感染性であることを確実にし得、こうして非滅菌の組成物と比較したとき安全性を改善する。このことは、とりわけ列挙された材料または組成物を受ける対象が免疫欠如を有する、感染症を患う、および/または、感染されやすいときには、価値のある安全対策を提供する。いくつかの態様において、材料または組成物は凍結乾燥されて、製剤戦略に依存して懸濁液中で、または凍結乾燥粉末として、活性を失うことなく長期間保管されてもよい。
本発明に従う投与は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、経粘膜、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)または皮内経路を包含するが、これらに限定されない種々の経路によってよい。好ましい態様において、投与は皮下経路の投与を介する。本明細書で参照される組成物は、従来の方法を使用して、投与、いくつかの態様において、併用投与のために製造され、および調製され得る。
【0123】
本発明の組成物は、本明細書で別記した有効量などの有効量で投与することができる。剤形の用量は、変化する量の、本発明に従う免疫抑制剤または治療用高分子を含有し得る。剤形に存在する免疫抑制剤または治療用高分子の量は、治療用高分子、免疫抑制剤の特質、遂行されるべき治療効果および他のかかるパラメータに従い変化し得る。ある態様において、用量範囲研究は、あらゆる剤形に存在すべき免疫抑制剤または治療用高分子の最適な治療量を確立するために行い得る。ある態様において、免疫抑制剤または治療用高分子は、治療用高分子に対する寛容原性免疫応答を生じさせる有効量で剤形に存在し、その後、対象に投与される。対象において従来の用量範囲研究および技術を使用して寛容原性免疫応答を生じさせるのに有効な免疫抑制剤または治療用高分子の量を決定することは可能であり得る。免疫抑制剤または治療用高分子の投与は様々な頻度で生じ得る。
【0124】
本開示の別の側面はキットに関する。いくつかの態様において、キットは、薬力学的有効期間を提供する免疫抑制剤用量を含む。いくつかの態様において、キットは、さらに治療用高分子の用量を含む。免疫抑制剤用量および治療用高分子用量は、キットにおいて、別の容器中または同じ容器中に含有され得る。いくつかの態様において、容器はバイアルまたはアンプルである。免疫抑制剤用量および治療用高分子用量は、キット中で、別個の容器内または同じ容器内に含有され得る。いくつかの態様において、容器はバイアルまたはアンプルである。いくつかの態様において、治療用高分子用量および/または免疫抑制剤用量は、容器(単数または複数)とは別の溶液内に含有されて、治療用高分子用量および/または免疫抑制剤用量がその後の時点で容器に加えられるようになされていてもよい。いくつかの態様において、治療用高分子用量および/または免疫抑制剤用量は、それぞれ別の容器中または同じ容器中に凍結乾燥された形態であって、それらがその後の時点で再構成されるようになされていてもよい。いくつかの態様において、キットはさらに、再構成、混合、投与、等のための使用説明書を含む。いくつかの態様において、使用説明書は本明細書に記載された方法の記載を包含する。使用説明書は、例えば印刷されたインサートまたはラベルのような、いずれか好適な形態であってよい。いくつかの態様において、キットはさらに、1つまたは2つ以上のシリンジを含む。
【0125】
例
例1:ナノ担体を含有するラパマイシン
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702; 製品カタログ # R1017)から購入した。約25,000DaのPLGAは、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive Birmingham, AL 35211)から購入した。製品コード5050 DLG 2.5A。約5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび48,000DaのPLAブロックを有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーは、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した。製品コード100 DL mPEG 5000 5CE。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、3.4~4.6mPa.sの粘性)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027. 品番1.41354)から購入した。
【0126】
方法
溶液は以下のとおり調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。該溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:100mM pH8リン酸緩衝剤中の50mg/mLのポリビニルアルコール。
溶液3:70 mMリン酸緩衝剤、pH8。
【0127】
水中油エマルションは、小ガラス圧力管中で溶液1(1mL)および溶液2(3mL)を混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって作製した。エマルションを、溶液3(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いでナノ担体懸濁液を遠心分離管へ移し、75,600rcfで40分間遠心分離し、上清を除去し、リン酸緩衝生理食塩水中でペレットを再懸濁することによって懸濁されたナノ担体の一部分を洗浄した。この洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中で再懸濁し、ポリマー基準10mg/mLの公称濃度を有する、ナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで-20℃で凍結して保管した。
ナノ担体サイズは、動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量は、HPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は、比重測定法によって決定した。
【表1】
【0128】
例2:ポリマー-ラパマイシン複合体を含有するポリマーナノ担体(予言的)
ステップ1:PLGA-ラパマイシン複合体の調製物:
酸末端基を有するPLGAポリマー(7525 DLG1A、酸価0.46mmol/g、Lakeshore Biomaterials;5g、2.3mmol、1.0eq)を30mLのジクロロメタン(DCM)中に溶解する。N,N-ジシクロヘキシルカルボジミド(1.2eq、2.8mmol、0.57g)を加え、次いでラパマイシン(1.0eq、2.3mmol、2.1g)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(2.0eq、4.6mmol、0.56g)を加える。混合物をrtで2日間撹拌する。次いで混合物をろ過して不溶性ジシクロヘキシル尿素を除去する。ろ液を約10mLの体積まで濃縮し、100mLのイソプロピルアルコール(IPA)に加え、PLGA-ラパマイシン複合体を沈殿させる。IPA層を除去し、次いで50mLのIPAおよび50mLのメチルt-ブチルエーテル(MTBE)でポリマーを洗浄する。次いでポリマーを35℃、2日間で真空下乾燥させ、白色固体(約6.5g)としてPLGA-ラパマイシンを得る。
【0129】
ステップ2:PLGA-ラパマイシンを含有するナノ担体を、以下の例1に説明される手順に従って調製する:
ナノ担体形成のための溶液を以下のとおり調製する:
溶液1:塩化メチレン中の100mg/mLのPLGA-ラパマイシン。溶液を純粋な塩化メチレン中にPLGA-ラパマイシンを溶解することによって調製する。溶液2:塩化メチレン中の100mg/mLのPLA-PEG。純粋な塩化メチレン中にPLA-PEGを溶解することによって溶液を調製する。溶液3:100mM pH8リン酸緩衝剤中の50mg/mLのポリビニルアルコール。
【0130】
一次油中水エマルションをまず調製する。小圧力管中で溶液1(0.75mL)および溶液2(0.25mL)を組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して、50%振幅で40秒間、超音波処理することによってW1/O1を調製する。次いで、2次エマルション(W1/O1/W2)を、溶液3(3.0mL)を一次W1/O1エマルションと組み合わせ、10sボルテックスし、Branson Digital Sonifier 250を使用して、30%振幅で60秒間、超音波処理することによって調製する。W1/O1/W2エマルションを70mM pH8リン酸緩衝溶液(30mL)を含有するビーカーに加え、室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させる。ナノ担体の一部分を洗浄する。ナノ担体懸濁液を遠心分離管へ移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、リン酸緩衝生理食塩水中でペレットを再懸濁する。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにリン酸緩衝生理食塩水中でペレットを再懸濁する。
【0131】
例3:ラパマイシンを含有する金ナノ担体(AuNC)の調製(予言的)
ステップ1.HS-PEG-ラパマイシンの調製:
乾燥DMF中のPEG酸ジスルフィド(1.0eq)、ラパマイシン(2.0-2.5eq)、DCC(2.5eq)およびDMAP(3.0eq)の溶液をrtで終夜撹拌する。不溶性ジシクロヘキシル尿素をろ過によって除去し、ろ液をイソプロピルアルコール(IPA)に加え、PEG-ジスルフィド-ジ-ラパマイシンエステルを沈殿させ、IPAで洗浄し、乾燥させる。次いでポリマーをDMF中トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリドで処理し、PEGジスルフィドをチオールPEGラパマイシンエステル(HS-PEG-ラパマイシン)へ還元する。結果としてもたらされるポリマーを、先に説明されたように、IPAからの沈殿によって回収し、乾燥させ、H NMRおよびGPCで分析する。
【0132】
ステップ2.金NC(AuNC)の形成:
1mMのHAuCl4の500mLの水溶液をコンデンサー付きの1L丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら10min加熱還流する。次いで40mMのクエン酸三ナトリウムの50mLの溶液を撹拌溶液に急速に加える。結果としてもたらされる濃ワインレッドの溶液を25~30min還流状態に保ち加熱を取り除いて溶液を室温まで冷却する。次いで溶液を、0.8μmメンブランフィルターを通してろ過しAuNC溶液を得る。AuNCは可視分光法および透過電子顕微鏡法を使用して特徴付けされる。AuNCは、約20nm径でシトラートによりキャッピングされ520nmにピーク吸収を有する。
【0133】
ステップ3.HS-PEG-ラパマイシンとのAuNC複合体:
HS-PEG-ラパマイシンの溶液(10mMのpH9.0炭酸緩衝剤中10μΜ)150μlを20nm径のシトラートキャッピングされた金ナノ担体(1.16nM)1mLに加え、2500:1のチオール:金モル比を生成する。混合物をアルゴン下、室温で1時間撹拌し、チオールを金ナノ担体上のシトラートと完全に交換させる。次いで表面にPEG-ラパマイシンを有するAuNCを12,000gで30分の遠心分離により精製する。上清を傾瀉し、次いでAuNC-S-PEG-ラパマイシンを含有するペレットを1×PBS緩衝剤でペレット洗浄する。次いで精製された金-PEG-ラパマイシンナノ担体をさらなる分析およびバイオアッセイのために好適な緩衝剤に再懸濁する。
【0134】
例4:抗体応答の開始におけるカプセル化されたラパマイシンの効果
I.IgGの測定
IgG抗体のレベルを一般に以下のとおり測定した。Blocker Casein in PBS(Thermo Fisher、カタログ#37528)を希釈剤として使用した。10mLのTween-20((Sigma、カタログ#P9416-100mL)を2リットルの10×PBSストック(PBS: OmniPur(登録商標)10X PBS Liquid Concentrate、4L、EMD Chemicals、カタログ#6505)および18リットルの脱イオン水に加えることによって調製した、PBS中0.05%Tween-20を洗浄緩衝剤として使用した。
ストック濃度10mg/mLのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはストック濃度5mg/mLのオボアルブミン(OVA)タンパク質をコーティング材料として使用した。両材料を5μg/mlまで希釈し、使用濃度として使用した。アッセイプレートの各ウェルを1ウェル当たり100μlの希釈KLHまたはOVAでコーティングし、プレートを封止膜(VWR、カタログ#60941-120)で封止し、4℃で終夜インキュベートした。Costar 9017の96ウェル平底プレートをアッセイプレートとして使用した(Costar 9017)。
低結合ポリプロピレン96ウェルプレートまたはチューブをセットアッププレートとして使用し、アッセイプレートに移す前にその中でサンプルを調製した。セットアッププレートはいずれの抗原も含有せず、それゆえサンプルのセットアップ中は、血清抗体はプレートと結合しなかった。セットアッププレートをサンプル調製に使用し、抗原でコーティングされたプレートを使用してサンプルを調製した場合、サンプルの調製またはピペッティング中に起こるであろう結合を最小限に抑えた。セットアッププレート中でサンプルを調製する前に、ウェルを希釈剤で覆って、いずれの非特異的結合もブロックし、プレートを封止して4℃で終夜インキュベートした。
【0135】
アッセイプレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、最終洗浄後に洗浄緩衝剤をウェルから完全に吸引した。洗浄後、300μlの希釈剤をアッセイプレート(単数または複数)の各ウェルに加えて非特異的結合をブロックし、プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした。血清サンプルをセットアッププレートの適切なウェル中1:40で希釈した。標準を陽性対照として使用した。KLHについて、マウス抗KLHIgG抗体を1μg/mLの開始希釈で使用し、次いでプレート全体にわたり3倍希釈した。OVAについて、マウス抗OVAIgG抗体を0.5μg/mLの開始希釈で使用し、次いでプレート全体にわたり3倍希釈した。
【0136】
全てのサンプルをセットアッププレート中でひとたび調製したら、プレートを封止して、アッセイプレートのブロッキングが完了するまで4℃で保管した。アッセイプレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、最終洗浄後に洗浄緩衝剤を完全に吸引した。洗浄後、アッセイプレートの列2~12に100μlの希釈剤を加えた。ピペットを使用してサンプルをセットアッププレートからアッセイプレートへと移した。移す前に、150μlの希釈された血清を上下に3回ピペッティングすることによってサンプルを混合した。混合後、150μ1の各サンプルをセットアッププレートから移し、各アッセイプレートに加えた。
【0137】
各サンプルの開始希釈をセットアッププレートからアッセイプレートに移したら、以下のように系列希釈をアッセイプレート上にピペッティングした。50μlの各血清サンプルを、ピペットを使用して除去し予め加えておいた100μlの希釈剤と混合した。このステップをプレート全体にわたり繰り返した。最終列の希釈をピペッティングした後、50μlの流体を最終列のウェルから除去して廃棄し、アッセイプレートのウェルごとに100μlの最終体積がもたらされた。アッセイプレート中でサンプル希釈を調製したら、プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした。
【0138】
インキュベート後、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄した。検出抗体(ヤギ抗マウス抗IgG、HRP複合化)を希釈剤で1:1500希釈し(0.33μg/ml)、100μlの希釈した抗体を各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで洗浄緩衝剤で5回洗浄し、最後の洗浄後に洗浄緩衝剤をウェルから完全に吸引した。洗浄後、検出基質をウェルに加えた。等しい部数(parts)の基質Aおよび基質B(BD Biosciences TMB Substrate Reagent Set、カタログ#555214)をアッセイプレートに加える直前に組み合わせ、100μlの混合基質溶液を各ウェルに加えて、暗所で10分間インキュベートした。10分間の後、50μl停止溶液(2NのH2SO4)を各ウェルに加えることによって反応を停止させた。停止溶液を加えた直後のウェルの光学濃度(OD)をプレートリーダーにて450nmで査定し570nmで減算した。Molecular DeviceのソフトウェアSoftMax Pro v 6.2.2を使用してデータ分析を行った。希釈をx軸(log目盛)に取りOD値をy軸(均等目盛)に取って4パラメータロジスティック曲線に適合するグラフを調製し、各サンプルの最大半量値(EC50)を決定した。レイアウトの最上部のプレートテンプレートを調節して各サンプルの希釈を反映させた(1行につき1つ)。
【0139】
II.粒子状オボアルブミンタンパク質(pOVA)の調製
材料
鶏卵オボアルブミン(OVA)をWorthington Biochemical Corporation(730 Vassar Avenue, Lakewood, NJ 08701; 製品コード LS003054)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をMediatech(9345 Discovery Boulevard, Manassas, VA 20109;製品コード 21-040-CV)から購入した。水酸化ナトリウム(NaOH、製品コード367176)およびトリフルオロ酢酸(TFA、製品コードT62200)をSigma-Aldrich Corp.(3050 Spruce Street, St. Louis, MO 63103)から購入した。
方法
溶液を以下のとおり調製した:
溶液1:PBS中の15mg/mLのOVA。溶液は、オボアルブミンをPBS中に直接的に溶解することによって調製した。溶液2:水中1MのNaOH。溶液は、エンドトキシンフリー水中に直接的にNaOHを溶解することによって調製した。
【0140】
オボアルブミン溶液のpHを繰り返し上げ下げすることによって、OVAをコアセルベート化した。溶液1(10mL)を、磁気撹拌棒を含有する20mLガラスバイアル中に加えた。撹拌中、溶液2を溶液のpHが12に達するまでバイアルに滴下して加えた。次いでTFAを溶液のpHが2に達するまでバイアルに滴下して加えた。このpHの上げ下げをさらに3回繰り返した。次いで溶液2を溶液のpHが7に達するまでバイアルに滴下して加えた。
コアセルベート化したOVA粒子のサイズは、次いで高圧均質化によって低減された。コアセルベート化したOVA懸濁液は、G10Z相互作用チャンバーでMicrofluidics LV1に積載され、次いで20,000psiで3つのパスを使用して均質化した。結果としてもたらされた190~240nmの範囲のサイズを有する粒子状OVA(pOVA)を-20℃で保管した。
【0141】
III.抗体応答の開始におけるカプセル化されたラパマイシンのin vivo試験
C57BL/6動物(n=5)の群は、
未処置のままかつ未免疫(免疫化なし)、未処置かつ免疫化(処置なし
)、または
例1からラパマイシン含有ナノ担体で処置
かつ免疫化(ラパ-NC)を、第0、3および7日
にされたものである。免疫化は、オボアルブミン(pOVA)の粒子状形態の注射からなる。後肢皮下に注射した。各注射について粒子の用量は、ラパマイシン100μg
の等量であり、3回注射後に合計300μgとなるようにした。第14日から開始して、
未処置のおよび処置された動物(処置なしおよびラパ-NC)は、隔週で上記のとおり調製された10μgのpOVAを前肢(各30μl)に注射
され、50μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH、Sigma Aldrich)を尾の付け根(50μl各側面)に注射
され、免疫化を受けた(第14、28および42日)。全ての動物は、
図1に示す日に採血し、抗OVA応答はELISAによって決定した。
データは、カプセル化されたラパマイシンが、
抗原の投与の7日前に注射されたとき、本明細書で提供される薬力学的有効期間の範囲内で抗OVA応答を有効に阻害したことを実証する。
【0142】
例5:カプセル化されたラパマイシンによるT細胞活性化の用量依存的阻害
T細胞活性化に対する、ラパマイシンが介在する阻害の用量依存性を試験するために、CD45.1+動物(B6.SJL)に対し、カプセル化されたラパマイシン(例1に開示されるNP[ラパ])を静脈内に異なる用量(10~50μgのラパマイシンおよび1つのPBS対照)を注射した。これらの動物は、C57BL/6マウスと同じ遺伝的バックグラウンドを共有するが、CD45分子(CD45.2の代わりにCD45.1)の異なるイソ型を発現する。6日間後、OTIIマウス株の脾臓およびリンパ節から磁気細胞ソーティング(MACS, Miltenyi)によって単離され、CD45.2およびMHC CLII(OVA
323~339またはOPII.323)の文脈において提示されたニワトリオボアルブミンからのペプチドを認識するトランスジェニックTCRを発現するT細胞を、CD45.1+処置動物へ適合移植した。これらの細胞のCFSE(Invitrogen)での標識も行い、それらの増殖状態を追跡した。翌日(第7日)全ての動物に後肢皮下に免疫原性用量のTLR7/8アゴニストR4848と混合したOPII.323を注射した。第11日、動物を犠牲死させ、注射部位(膝窩)を排出するリンパ節を切除し、細胞をフローサイトメトリーによって分析して移植したCD45.2+TCRb+CD4+7AAD-T細胞(Biolegendからの抗体)を同定した。
図2に示すとおり、20μgもの低いラパマイシンの注射が、ナノ担体の注射から6日後であっても、やはり本明細書で提供される薬力学的有効期間の範囲内で、これらのT細胞の活性化および生存において阻害効果を有する。さらなる(mounting)ラパマイシン投薬によって減少した細胞数および増殖がもたらされた。
【0143】
例6:移植可能浸透圧ポンプを使用する免疫抑制剤およびin vivoでのその寛容原性免疫応答の評価(予言的)
ステップ1:
ラパマイシンをジメチルスルホキシド(DMSO)/ポリエチレングリコール400からなるビヒクルに溶解し、ALZET(登録商標)移植可能浸透圧ポンプ(体積0.2mL、モデル2001、Durect Corp.、Cupertino、CA)に積載する。次いでポンプは、ALZET(登録商標)ポンプ操作手順に従ってマウスの右横の下腹部の皮下に(s.c.)移植する。ポンプを用いて、ラパマイシンを2.5mg/kg/日の用量で2日間連続的にs.c.投与する。
【0144】
ステップ2:
C57BL/6動物(n=5)の群は、未処置および未免疫(免疫化なし)のままのもの、未処置および免疫化された(処置なし)もの、またはマウスの横下腹部の皮下に移植されたラパマイシンが積載された上記の浸透圧ポンプで処置され、かつ第0、3および7日に免疫化されたものである。免疫化は、オボアルブミン(pOVA)の粒子状形態の注射からなる。ポンプを用いて、ラパマイシンを2.5mg/kg/日の用量で2日間連続的にs.c.投与する。各注射についてラパマイシンの用量は、ラパマイシン100μgと同程度であり、3回注射後に合計300μgとなるようにした。第14日から開始して、未処置および処置動物(処置なしおよびラパマイシン積載ポンプ)は、前肢に注射される、酸グルコシダーゼアルファまたは組織プラスミノーゲンアクチベーターまたはエリスロポエチンアルファまたはドルリキシズマブ(Dorlixizumab)またはリツキシマブなどの100μgの治療用タンパク質で、隔週で免疫化を受ける(第14、28および42日)。全ての動物は、第40および54日に採血し、抗タンパク質応答をELISAによって決定する。移植浸透圧ポンプを介して投与されたラパマイシンは、本明細書で提供される薬力学的有効期間内で注射されるとき、有効に抗タンパク質応答を阻害することが予期され、これらの効果は、タンパク質での初回抗原刺激および2回の追加免疫後でさえも明らかであることが予期される。
【0145】
例7:移植可能浸透圧ポンプを使用する免疫抑制剤およびin vivoでのその寛容原性免疫応答の評価(予言的)
ステップ1:
N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)(19mg/ml)中のラパマイシン(ラパ)のストック溶液を4℃で保管し、光への曝露から保護する。ラットの重量に基づいた適切なラパ濃度を得るために、ストック溶液を10%Tween-80、20%DMACおよび70%ポリエチレングリコール400(PEG400)の混合物中に希釈する。適切に希釈されたラパを、無菌食塩水中37℃でインキュベートすることによって4~6hの事前準備をしたALZET(登録商標)ブランド移植可能浸透圧ポンプ(モデル 2002; Durect Corp., Cupertino, CA)に積載する。その後、送達カニューレをラパマイシンの静脈内送達のためにマウスの腰静脈に挿入する。
【0146】
ステップ2:
C57BL/6動物(n=5)の群は、未処置および未免疫のままのもの(免疫化なし)、未処置および免疫化されたもの(処置なし)またはラパマイシン積載された上記の浸透圧ポンプで処置され、かつ第0、3および7日で免疫化されたものである。免疫化は、オボアルブミン(pOVA)の粒子状形態の注射からなる。ポンプを用いて、2.5mg/kg/日の用量で2日間、静脈内輸液を介してラパマイシンを投与する。各輸液についてラパマイシンの用量は、ラパマイシン100μgと同程度であり、3回注射後に合計300μgとなるようにした第14日から開始して、未処置および処置動物(処置なしおよびラパマイシン積載ポンプ)は、ペガプタニブ、ミポメルセン、米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)に開示されるものなどの改変メッセンジャーRNA(mmRNA)などの50~100μgの治療用ポリヌクレオチドを用いて、隔週で免疫化を受ける(第14、28および42日)。
全ての動物は、第40および54日に採血し、抗タンパク質応答をELISAによって決定する。移植浸透圧ポンプを介して投与されたラパマイシンは、本明細書で提供される薬力学的有効期間内で注射されるとき、有効に抗ポリヌクレオチド応答を阻害することが予期され、これらの効果は、ポリヌクレオチドでの初回抗原刺激および2回の追加免疫後でさえも明らかであることが予期される。
【0147】
例8:第VIII因子タンパク質への寛容誘発のための阻害性の第VIII因子抗体に対する、化学的に架橋された抗GITR抗体および抗イディオタイプの抗体を使用する二重特異性抗体免疫抑制剤(予言的)
ステップ1:二重特異性抗体の調製
エプラツズマブおよび(米国特許第8071094号に従って調製された)阻害性の第VIII因子抗体に対する抗イディオタイプの抗体などの抗GITR抗体のF(ab’)2フラグメントは、製造業者の使用説明書に従ってImmunoPure F(ab’)2 Preparation Kit(Pierce)を使用して調製される。画分を含有するF(ab’)2はプールされ、10,000MWCO遠心分離用フィルター(Millipore)を使用して濃縮される。各F(ab’)2は、2-メルカプトエタノールを20mMの最終濃度で、30℃で20~40min加えることによって、F(ab)-チオールに還元される。試料は、氷上で冷却し、次いで50mM酢酸ナトリウム/0.5mM EDTA pH5.3中で平衡化し冷却したSephadex G25カラム上に通過させる。画分を含有するタンパク質をプールする。次いで抗GITR Fab-チオールは、予備冷却された12mM架橋、o-フェニレンジマレイミド(o-PDM)(DMF中に溶解)の1/2体積を加えることによって、氷浴中で30minマレイミド化する。次いで抗GITR-マレイミド化-Fabを50mM酢酸ナトリウム/0.5mM EDTA pH5.3中で平衡化し冷却したSephadex G25カラム上を通過させる。タンパク質含有画分をプールし、阻害性の第VIII因子抗体-チオール-Fabに対する抗イディオタイプの抗体に1:1のモル比ですぐに加える。反応を窒素下に置き、4℃で15~20h優しく撹拌する。pHは、1M Tris-HCl pH8.0を使用してpH8.0に調節され、その後2-メルカプトエタノールを最終濃度20mMまで加える。反応は、30℃で20~40minインキュベートし、次いでヨードアセトアミドを25mMの最終濃度まで加えることによってアルキル化する。次いで混合物をPBS pH7.4中で平衡化されたSuperdex 200カラム上で通過させ、画分を集める。個々の画分は、非還元条件下で10%SDS-PAGEゲル上に供し、Coomassie Brilliant Blue(Sigma)またはSilver Snap II Kit(Pierce)で染色する。二重特異性抗体(阻害性の第VIII因子抗体に対する抗GITR/抗イディオタイプの抗体)を同定し、プールし、かつ免疫抑制剤(用量10μg/日)としての使用のために保管する。
【0148】
ステップ2.第VIII因子のための寛容誘発
C57BL/6動物の群(n=5)は、未処置および未免疫(免疫化なし)のままのもの、未処置および免疫化されたもの(処置なし)または10μg/日の上記の二重特異性抗体で処置され、かつ第0、3および7日で免疫化されたものである。免疫化は、粒子状オボアルブミン(pOVA)の注射からなる。第14日から開始し、未処置および処置動物(処置なしおよび二重特異性抗体処置)は、150IU/kgの組み換えヒト抗血友病第VIII因子(第VIII因子)を用いて隔週で免疫化を受ける(第14、28および42日)。
全ての動物は、第40および54日に採血し、抗タンパク質応答は、ELISAによって決定する。二重特異性抗体(阻害性の第VIII因子抗体に対する抗GITR/抗イディオタイプの抗体)は、本明細書で提供される薬力学的有効期間内で注射されるとき、抗第VIII因子応答を有効に阻害することが予期され、これらの効果は、第VIII因子タンパク質での初回抗原刺激および2回の追加免疫後でさえも明らかであることが予期される。
【0149】
例9:移植可能高分子デポ材料を使用する免疫抑制剤およびin vivoでのその寛容原性免疫の評価(予言的)
ステップ1:ゲルビヒクル調製
ガラス容器は、Mettler PJ3000 top loader balance上で風袋を測定する。ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG502(PLGA-502)をガラス容器内で測定する。PLGA-502を含有するガラス容器は、風袋を測定し、対応する溶媒(表2に記載のとおり)を加える。種々のポリマー/溶媒の組み合わせについてパーセンテージとして表される量は、以下の表1に記載される。ポリマー/溶媒混合物をステンレススチールの正方形端のスパチュラにより手動で撹拌すると、白色ポリマー粒子を含有する粘着性の琥珀色のペースト状物質がもたらされる。ポリマー/溶媒混合物を含有する容器は、密封し、温度制御され39℃で平衡化されたインキュベーターに設置する。ポリマー/溶媒混合物は、透明な琥珀色の均一なゲルに見えるときにインキュベーターから除去する。インキュベーションの時間間隔は、溶媒およびポリマーの種類ならびに溶媒およびポリマー比に依存して、1~4日間の範囲であってもよい。
【0150】
追加のデポゲルビヒクルは、以下のポリマーで調製される:ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. L104, PLGA-L104、コードno. 33007、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG206、PLGA-206, コード no. 8815、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG502, PLGA-502, コード 0000366、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG502H, PLGA-502H, コード no. 260187、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド) 50:50 RESOMER.RTM. RG503, PLGA-503, コード no. 0080765、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG506, PLGA-506, コード no. 95051、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)50:50 RESOMER.RTM. RG755, PLGA-755, コード no. 95037(Boehringer Ingelheim Chemicals, Inc., Petersburg, Va.)および以下の溶媒または混合物:グリセリルトリアセタート(Eastman Chemical Co., Kingsport, Tenn.)、安息香酸ベンジル(「BB」)、安息香酸エチル(「EB」)、安息香酸メチル(「MB」)、トリアセチン(「TA」)およびトリエチルシトラート(「TC」)(Aldrich Chemical Co., St Louis, Mo.)。例えば20%トリアセチンおよび80%安息香酸ベンジルなどの溶媒の組み合わせを使用するとき、溶媒混合物は、あらかじめ秤量した乾燥ポリマーへ直接的に加える。典型的なポリマー分子量は、14,400~39,700(M.sub.w)[6,400~12,200(M.sub.n)]の範囲である。代表的なゲルビヒクルを、以下の表1において説明する。
【0151】
【0152】
【0153】
上記の表2に記載の種々の免疫抑制剤(10~20%w/w)を、特定の透明な琥珀色のデポゲルビヒクルに加え、乾燥粉末を完全に濡れるまで手動で混合する。次いで混合物を、正方形端の金属スパチュラが備え付けられたCaframo mechanical stirrerを使用する従来の混合によって完全に混合する。最終的に均一なゲル免疫抑制剤移植可能高分子デポ材料を、保管または分注のための3、10または30cc使い捨て注射器に移す。
【0154】
ステップ2:in vivoでの寛容原性免疫応答の評価
C57BL/6動物(n=5)の群は、未処置および未免疫(免疫化なし)のままのもの、未処置および免疫化されたもの(処置なし)または100μgのラパマイシンを含有する上記の移植可能高分子デポ材料で処置し、第0、3および7日に免疫化する。免疫化は、粒子状オボアルブミン(pOVA)の注射からなる。ポリマーデポ-ラパマイシンを、後肢に移植する。ポリマーデポ-ラパマイシンの用量は、ラパマイシン100μgと同程度であり、3回注射後に合計300μgとなるようにした。第14日から開始し、未処置および処置された動物(処置なしおよびラパ-デポ)は、組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)などの、前肢に注射される、2mg/kgの治療用タンパク質で、隔週で免疫化を受ける(第14、28および42日)。全ての動物は、示された日に採血し、抗rtPA応答をELISAによって決定する。ラパマイシンを含有するゲル移植は、本明細書で提供される薬力学的有効期間内で注射されるとき、有効に抗rtPA応答を阻害することが予期され、これらの効果は、rtPAでの初回抗原刺激および2回の追加免疫後でさえも明らかであることが予期される。
【0155】
例10:合成ナノ担体に付着されたラパマイシンの薬力学的有効期間内の投与
材料
ラパマイシンをTSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA 01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.69dL/gのPLGAをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0156】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
水中油エマルションを使用してナノ担体を調製した。O/Wエマルションは、小圧力管において溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって調製した。O/Wエマルションを70mM pH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えた。3つの同一なエマルションが形成され、第1のエマルションとともに同じビーカーに加えた。これらは、次いで室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。ナノ担体の一部分は、ナノ担体懸濁液を遠心分離管へ移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、リン酸緩衝生理食塩水中にペレットを再懸濁することによって洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水中で再懸濁し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液とした。洗浄したナノ担体溶液は、次いでPall、品番4656からの1.2μmPESメンブランシリンジフィルターを使用してろ過した。
ナノ担体サイズは、動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量は、HPLC分析によって決定する。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は、比重測定法によって決定する。
【表4】
【0157】
ラパマイシン積載ナノ担体の免疫抑制ウィンドウ(薬力学的有効期間)の決定
C57BL/6同齢(5~6週間)雌に、14、10、7、4、2および1日(単数または複数)前(それぞれd-14、-10、-7、-4、-2および-1)からキーホールリンペットヘモシアニンの注射の同じ日(d0、200μg、KLH)までの種々の時点(
図3に示される)で0.9mgのナノ担体を、尾静脈にi.v.注射した。全ての動物が、第0、7および14日でKLHの注射を毎週受けた(200μg、KLH)。これらの動物の血液における抗体力価は、第19日で決定する。
図3の結果は、免疫化の14日前でさえ、ラパマイシン含有ナノ担体の注射がKLHに対する抗体応答を改変すること、および、寛容原性ナノ担体が免疫応答の開始が減衰する有意な免疫抑制ウィンドウを提供することを示す。結果は、免疫抑制剤の薬力学的有効期間内で免疫抑制剤および抗原を投与することによって抗原特異的免疫応答を低減する能力を実証する。
【0158】
例11:カプセル化ラパマイシンによるニワトリオボアルブミンに対する抗原特異的寛容原性応答
NP[ラパ]材料および方法
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コード# R1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.50DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0159】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:1mL当たり75mgのPLGA、1mL当たり25mgのPLA-PEG-Omeおよび1mL当たり12.5mgのラパマイシンをジクロロメタンに溶解することにより、ポリマーおよびラパマイシン混合物を調製した。溶液2:ポリビニルアルコールは、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mLに調製した。
【0160】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、O/Wエマルションを調製した。このO/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液(60mL)を含有する開放ビーカーに加えた。3つの追加の同一のO/Wエマルションを調製し最初のものと同じビーカーに加えた。次いでこれらを室温で2時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。次にナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁し、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。同一の製剤を別個のビーカー中で上記のとおり調製し、洗浄ステップ後に最初のものと組み合わせた。次いで混合されたナノ担体溶液をPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656))を使用してろ過し、-20℃で保管した。
【0161】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表5】
【0162】
NP[OVA]材料および方法
材料
オボアルブミンタンパク質は、Worthington Biochemical Corporation(730 Vassar Avenue、Lakewood、NJ 08701)から購入した(製品コードLS003054)。54%ラクチドおよび46%グリコリド含有量ならびに固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび28,000DaのMw、0.38dL/gの固有粘度を有するPLA-PEGブロックコポリマーをLakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 4CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP、85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa.s、は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350.1001)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0163】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:50mg/mLのオボアルブミンタンパク質は、10重量%のスクロースを有する10mMリン酸緩衝剤pH8中で調製した。溶液2:PLGAはジクロロメタン1mL当たり100mgのPLGAをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液3:PLA-PEG-OMeは、ジクロロメタン1mL当たり100mgのPLA-PEG-OMeをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液4:ポリビニルアルコール、100mMリン酸緩衝剤pH8中65mg/mL。
【0164】
まず溶液1~3を混合することにより一次(W1/O)エマルションを作製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)および溶液3(0.25mL)を氷水浴中で>4分予冷した小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、50%振幅で40秒間超音波処理した。次いで溶液4(3mL)を一次エマルションに加え、ボルテックス混合して乳状分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、30%振幅で60秒間超音波処理することによって二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。この二次エマルションを、PBS1×(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加えた。第2の同一のダブルエマルション製剤を上記のとおり調製し、最初のものと同じ50mLビーカーに加えた。2つの調製剤を室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中のナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで50分間回転し、上清を除去し、ペレットをPBS1×に再懸濁すことによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。この洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【表6】
【0165】
NP[GSK1059615]材料および方法
材料
GSK1059615は、MedChem Express(11 Deer Park Drive, Suite 102D Monmouth Junction, NJ 08852)から購入した(製品コードHY- 12036)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.26DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5K-E)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X pH 7.4(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0166】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:PLGA(125mg)およびPLA-PEG-OMe(125mg)を10mLのアセトンに溶解した。溶液2:GSK1059615を、1mLのN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中10mgで調製した。
【0167】
溶液1(4mL)および溶液2(0.25mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、この混合物を、20mLの超純水を含有する250mLの丸底フラスコに撹拌下、滴下して加えることにより、ナノ担体を調製した。このフラスコをロータリーエバポレーション装置に取り付け、減圧下アセトンを除去した。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。洗浄したナノ担体溶液を、次いでPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656)を使用してろ過した。同一のナノ担体溶液を上記のとおりに調製し、ろ過ステップ後に最初のものと共に貯蔵した。この均質な懸濁液は、-20℃で凍結して保管した。
【0168】
ナノ担体のサイズは動的光散乱により決定した。ナノ担体中のGSK1059615の量は351nmにおけるUV吸収により決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表7】
C57BL/6同齢(5~6週)雌性マウスに、-21日および-14日に、塩水(非処置)、1.2mgのラパマイシン含有ナノ担体(NP[ラパ])または8mgのGSK1059615含有ナノ担体(NP[GSK1059615])のいずれかと組み合わせた1.1mgの全オボアルブミン添加ナノ担体(NP[OVA])を、尾静脈においてi.v.注射した。
【0169】
第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された25μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて第7および14日に、25μgのpOVAだけを注射した。第21日に抗体価を測定した。いずれかの処置の非存在下では、動物は、抗OVAIgG抗体価によって測定され得るOVAに対する強力な免疫応答を現した。
図4に示された第21日の抗体価は、同じ溶液中でカプセル化OVAと併用投与された合成寛容原性ナノ担体の2回の用量(NP[OVA]+NP[ラパ]またはNP[GSK1059615])が、OVA+CpGの1回の注射およびOVA単独の2回の注射後であっても、OVAへの抗体形成を低減するのに有効であったことを実証している。これらの結果は、カプセル化免疫抑制剤(ラパマイシンおよびGSK1059615など)が、タンパク質と併用送達されたときに、そのタンパク質への抗体形成を防止し得るということを示している。
【0170】
例12:合成ナノ担体を使用する薬力学的有効期間の投与(予言的)
パイロット試験は、可溶性の第VIII因子および例1の合成ナノ担体を使用して非ヒト霊長類対象において行う。50の非ヒト霊長類対象を無作為に5アーム:プラセボ、次いで用量範囲について選択される4つの用量レベルの合成ナノ担体に割り当てる。用量範囲は、1日の好ましい薬力学的有効期間標的で、20時間から1か月間までの範囲の薬力学的有効期間を確立することである。第0日において、各活性アームにおける対象は、全て皮下に合成ナノ担体の用量が投与され、合成ナノ担体用量の24時間内で標準輸液用量の第VIII因子の輸液を得る。2週間後、各動物を標準用量の可溶性第VIII因子で負荷し、抗第VIII因子IgG抗体のレベルを標準的なELISA技術を使用して測定する。有意な抗第VIII因子抗体の低減を示す4つの活性アーム間からの合成ナノ担体の最低用量を、試験用量として選択する。
試験用量の合成ナノ担体を次いでヒト対象に対する投与のためにアロメトリックにスケールし、ヒト臨床試験に使用し、可溶性の第VIII因子の標準用量を使用した合成ナノ担体の投与用量レベルの範囲を決定する。次いで合成ナノ担体および第VIII因子の投与用量を定期的な臨床プラクティスに利用可能なものとする。
【0171】
例13:合成浸透圧ポンプを使用する薬力学的有効期間の投与(予言的)
パイロット試験を可溶性の第VIII因子および浸透圧ポンプ(一般に例6に従って調製されるが、GSK1059615を例6のラパマイシンと置き換える)を使用して非ヒト霊長類対象において行う。50の非ヒト霊長類対象を無作為に5つのアームに割当る:プラセボ、次いで浸透圧ポンプによって送達され、用量範囲について選択されるGSK1059615の4つの用量レベル。用量範囲は、1日の好ましい薬力学的有効期間標的で20時間から1か月間までの範囲の薬力学的有効期間を確立することである。第0日において、各活性アームにおける対象全てに皮下に該用量の合成ナノ担体を投与し、合成ナノ担体用量の24時間内に標準輸液用量の第VIII因子の輸液を得る。2週間後、各動物を標準用量の可溶性の第VIII因子で負荷し、該レベルの抗第VIII因子 IgG抗体を標準的なELISA技術を使用して測定する。抗第VIII因子抗体の有意な低減を示す4つの活性アーム間から浸透圧ポンプによって送達される最低用量のGSK1059615を試験用量として選択する。
浸透圧ポンプによって送達される試験用量のGSK1059615を、次いでヒト対象に投与するためにアロメトリックにスケールし、ヒト臨床試験において使用して、浸透圧ポンプによって送達されるGSK1059615の投与用量レベルの範囲を標準用量の可溶性の第VIII因子を使用して決定する。浸透圧ポンプおよび第VIII因子によって送達されるGSK1059615の投与用量を、次いで臨床プラクティスに利用可能なものとする。
【0172】
例14:治療用ポリヌクレオチドを使用する薬力学的有効期間の投与(予言的)
パイロット試験を、アスパラギナーゼをコードするmmRNA(一般に米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)(“mmRNA”)に従って調製する)および例1の合成ナノ担体を使用して非ヒト霊長類対象において行う。50の非ヒト霊長類対象を無作為に5つのアームに割り当てる:プラセボ、次いで用量範囲について選択される4つの用量の合成ナノ担体。用量範囲は、1日の好ましい薬力学的有効期間標的で20時間から1か月間までの範囲の薬力学的有効期間を確立することである。第0日において、各活性アームの対象全てに該用量の合成ナノ担体を皮下に投与し、合成ナノ担体用量の24時間内に標準輸液用量の第VIII因子の輸液を得る。2週間後、各動物を標準用量のmmRNAで負荷し、該レベルの抗mmRNA抗体を標準的なELISA技術を使用して測定する。抗mmRNA抗体の有意な低減を示す4つの活性アーム間からの合成ナノ担体の最低用量を試験用量として選択する。
次いで合成ナノ担体の試験用量を、ヒト対象への投与のためにアロメトリックにスケールし、ヒト臨床試験に使用して合成ナノ担体の投与用量の範囲を標準用量レベルのmmRNAを使用して決定する。次いで合成ナノ担体およびmmRNAの投与用量を標準的な臨床プラクティスに利用可能なものとする。
【0173】
例15:ナノ結晶性免疫抑制剤を使用する薬力学的有効期間の投与(予言的)
パイロット試験を、非ヒト霊長類対象において例1の可溶性の第VIII因子および合成ナノ担体を使用して行う。50の非ヒト霊長類対象を無作為に5つのアームに割り当てる:プラセボ、次いで用量範囲のために選択されるナノ結晶性ラパマイシンの4つの用量レベル。用量範囲は、1日の好ましい薬力学的有効期間標的で20時間から1か月間までの範囲の薬力学的有効期間を確立することである。第0日において、各活性アームの対象全てに該用量のナノ結晶性ラパマイシンを皮下に投与し、ナノ結晶性ラパマイシン用量の24時間内に標準輸液用量の第VIII因子の輸液を得る。2週間後、各動物を標準用量の可溶性の第VIII因子で負荷し、該レベルの抗第VIII因子 IgG抗体を標準的なELISA技術を使用して測定する。抗第VIII因子抗体の有意な低減を示す4つの活性アーム間からのナノ結晶性ラパマイシンの最低用量を試験用量として選択する。
次いでナノ結晶性ラパマイシンの試験用量をヒト対象への投与についてアロメトリックにスケールし、ヒト臨床試験において使用してナノ結晶性ラパマイシンの投与用量レベルの範囲を標準用量の可溶性の第VIII因子を使用して決定する。次いでナノ結晶性ラパマイシンおよび第VIII因子の投与用量を標準的な臨床プラクティスに利用可能なものとする。
【0174】
例16:ナノ結晶性免疫抑制剤を使用する薬力学的有効期間の投与(予言的)
パイロット試験を、アスパラギナーゼをコードするmmRNA(米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)(“mmRNA”)に従って一般に調製する)およびナノ結晶性ラパマイシンを使用して非ヒト霊長類対象において行う。50の非ヒト霊長類対象を無作為に5つのアームに割り当てる:プラセボ、次いで用量範囲について選択される4つの用量の合成ナノ担体。用量範囲は、1日の好ましい薬力学的有効期間標的で20時間から1か月間までの範囲の薬力学的有効期間を確立することである。第0日において、各活性アームの対象すべてに該用量のナノ結晶性ラパマイシンを皮下に投与し、ナノ結晶性ラパマイシン用量の24時間内に標準輸液用量の第VIII因子の輸液を得る。2週間後、各動物を標準用量のmmRNAで負荷し、該レベルの抗mmRNA抗体を標準的なELISA技術を使用して測定する。抗mmRNA抗体の有意な低減を示す4つの活性アーム間からのナノ結晶性ラパマイシンの最低用量を試験用量として選択する。
次いでナノ結晶性ラパマイシンの試験用量をヒト対象への投与についてアロメトリックにスケールし、ヒト臨床試験において使用してナノ結晶性ラパマイシンの投与用量の範囲をmmRNAの標準用量レベルを使用して決定する。次いでナノ結晶性ラパマイシンおよびmmRNAの投与用量を標準的な臨床プラクティスに利用可能なものとする。