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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220222BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALN20220222BHJP
   F16K 27/00 20060101ALN20220222BHJP
   F16K 11/22 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04089
F16K27/00 D
F16K11/22 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017216092
(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019087476
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 良輔
(72)【発明者】
【氏名】矢橋 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】木田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭夫
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
F15D 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス入口およびガス出口を有する本体と、該本体に設けられて前記ガス入口と前記ガス出口を接続するガス流路と、該ガス流路を開閉する弁とを備える弁装置であって、
前記ガス流路は、前記ガス入口から延びる第1流路と、該第1流路の分岐点から分岐する第2流路とを備え、
前記第1流路は、前記ガス入口と前記分岐点との間に屈曲された屈曲部を有し、前記分岐点の下流側部分の断面積が前記分岐点の上流側部分の断面積よりも大きいことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記第1流路の横方向から縦方向へ屈曲する部分であることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスタンクから燃料電池への水素ガスの供給および停止を制御するための弁装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された弁装置は、ガス流路およびこのガス流路に連通する収容穴を有するボディと、その収容穴に収容される電磁弁と、ボディに固定された継ぎ手部材とを備える。
【0003】
電磁弁は、ボディのガス流路に通じる流路を内部に有している。また、電磁弁は、ボディの収容穴に嵌合された筒状のスリーブと、流路を開閉する開閉部と、この開閉部を開閉駆動する駆動部と、を有している。このスリーブの外壁とボディの収容穴の内壁との間にシール部材が配置されている。
【0004】
また、ボディは、スリーブの流路の下流であって、ボディの外面に開口する継手接続開口を備えている。この継手接続開口に対して継ぎ手部材が取り付け固定される。また、ボディは、電磁弁のスリーブの流路に接続される導通路を備えている。継ぎ手部材は、この導通路におけるガスの電磁弁のスリーブ側への移動を緩和する逆流緩和弁を備えている。
【0005】
この特許文献1に記載された発明によれば、電磁弁のスリーブとボディとの間に配置されるシール部材の負担を軽減するとともに、電磁弁の構成部品の損傷を防止することができるという優れた効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-080001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した弁装置のようにガスタンクなどの貯蔵部から燃料電池などの需用部へのガスの供給を制御する弁装置は、貯蔵部に連通するガス入口から延びる第1流路の途中から第2流路が分岐される場合がある。本願発明者らは、このような場合に、第1流路を流れるガスの旋回流が発生すると、ガスに含まれる水が第2流路に浸入するおそれがあるという新たな課題を見出した。
【0008】
本発明は、ガス入口から延びる第1流路の途中から分岐された第2流路に、第1流路を流れるガスに含まれる水が浸入するのを抑制することができる弁装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ガス入口およびガス出口を有する本体と、該本体に設けられて前記ガス入口と前記ガス出口を接続するガス流路と、該ガス流路を開閉する弁とを備える弁装置であって、前記ガス流路は、前記ガス入口から延びる第1流路と、該第1流路の分岐点から分岐する第2流路とを備え、前記第1流路は、前記分岐点の下流側部分の断面積が前記分岐点の上流側部分の断面積よりも大きいことを特徴とする弁装置である。
【0010】
上記態様の弁装置は、たとえば、本体のガス入口が水素ステーションにおいて高圧のガスを貯蔵するガスタンクなどの貯蔵部に接続され、本体のガス出口が燃料電池車に搭載された車載ガスタンクなどの需用部に接続される。本体のガス入口に導入されたガスは、ガス入口から延びる第1流路を流れると、第1流路の分岐点の上流側で旋回流が発生する場合がある。ここで、第1流路は、分岐点の下流側部分の断面積が分岐点の上流側部分の断面積よりも大きくされている。
【0011】
そのため、1流路の分岐点の下流側部分で旋回流が拡大され、ガスの流れが第2流路に向けて拡がることが抑制される。したがって、ガスに含まれる水が第2流路に浸入するのを抑制することができる。また、高圧のガスと水との気液混合流が第1流路の分岐点の下流側部分に到達したときの流速の低下を抑制することができる。これにより、第1流路の分岐点の上流側部分から下流側部分へ向けて、ガスに含まれる水を積極的に流すことができ、ガスに含まれる水が第2流路に浸入するのを抑制することができる。
【0012】
さらに、第1流路の分岐点の上流側部分から下流側部分へ向けて、ガスに含まれる水を積極的に流すことで、逆流現象を防止し、ガス入口におけるガスの脈動を抑制することができる。これにより、第1流路を流れるガスと水の気液混合流の脈動を減少させ、第1流路の分岐点の上流側部分から下流側部分へ向けてガスに含まれる水を流しやすくすることができ、ガスに含まれる水が第2流路に浸入するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記態様の弁装置によれば、ガス入口から延びる第1流路の途中から分岐された第2流路に、第1流路を流れるガスに含まれる水が浸入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る弁装置の概略的な断面図。
図2図1に示す弁装置の拡大断面図。
図3図1および図2に示す弁装置の作用を説明する拡大断面図。
図4図1および図2に示す弁装置の変形例の拡大断面図。
図5】従来の弁装置の課題を説明する拡大断面図。
図6図5に示す従来の弁装置の変形例の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係る弁装置の一実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る弁装置100の概略的な断面図である。本実施形態の弁装置100は、たとえば、燃料電池自動車に搭載され、水素ステーションなどにおいて、水素ガスなどの高圧のガスが貯蔵されたガスタンクなどの貯蔵部に接続される。本実施形態の弁装置100は、このような貯蔵部から、たとえば燃料電池自動に搭載されたガスタンクや燃料電池など、ガスの供給を受ける需用部へのガスの供給を制御する。
【0017】
弁装置100は、たとえば、ガス入口11とガス出口12が設けられた本体10と、この本体10に設けられてガス入口11とガス出口12を接続するガス流路20と、このガス流路20を開閉する複数の弁V1,V2,V3,V4と、を備えている。また、本体10に設けられたガス流路20は、ガス入口11から延びる第1流路21と、この第1流路21の分岐点21bから分岐した第2流路22とを備えている。詳細は後述するが、本実施形態の弁装置100は、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dの断面積が、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの断面積よりも大きいことを最大の特徴としている。以下、本実施形態の弁装置100の各部の構成を詳細に説明する。
【0018】
以下では、図示を省略する貯蔵部から弁装置100にガスが流入する方向を横方向とし、この横方向に直交する方向を縦方向とし、これら縦方向および横方向に直交する方向を高さ方向として、弁装置100の各部を説明する。なお、これらの方向は、単に本実施形態の弁装置100の各部を説明するための便宜的な方向であり、必ずしも水平方向や鉛直方向に一致するものではない。各図に、本実施形態の弁装置100の横方向、縦方向および高さ方向を、それぞれ、X方向、Y方向およびZ方向とする直交座標系を示す。
【0019】
弁装置100の本体10は、たとえば、鍛造したアルミ合金等の金属材料により構成されている。本体10は、横方向(X方向)の一側に第1の凹部10aを有し、縦方向(Y方向)の一側に第2の凹部10bと第3の凹部10cを有し、横方向の他側に第4の凹部10dを有し、縦方向の他側に第5の凹部10eを有している。本体10は、第1の凹部10aの底部に、ガス入口11を有している。
【0020】
本体10は、第1の凹部10aと第3の凹部10cにそれぞれ逆止弁V1,V3が設けられ、本体10の第2の凹部10bと第5の凹部10eにそれぞれ開閉弁V2,V4が設けられている。第4の凹部10dは、たとえば、凹部10dにねじにより締結された閉鎖部材13によって閉鎖されている。第5の凹部10eは、たとえば、本体10にボルト14によって締結されたカバー15によって閉鎖されている。
【0021】
本体10の第1の凹部10aに設けられた第1の逆止弁V1は、一端に第1の凹部10aの外側に突出したコネクタ部V1aを有し、他端が第1の凹部10aに挿入されて第1の凹部10aの底部に開口するガス入口11に接続されている。第1の逆止弁V1のコネクタ部V1aは、たとえば、貯蔵部に貯蔵された高圧のガスを弁装置100に供給するためのガス供給管に接続される。第1の逆止弁V1は、コネクタ部V1aの端部の開口から流入したガスを、本体10のガス入口11へ向けて通過させ、逆方向のガスの流れを遮断するように構成されている。
【0022】
本体10の内部に設けられたガス流路20は、ガス入口11から延びる第1流路21と、この第1流路21の途中の分岐点21bから分岐された第2流路22とを有している。また、ガス流路20は、たとえば、第2の凹部10bの高さ方向(Z方向)を向く壁面に開口して高さ方向に延びる第3流路23を有している。さらに、ガス流路20は、たとえば、第3の凹部10cの底部および第5の凹部10eの底部に開口して縦方向(Y方向)に延びる第4流路24と、第4の凹部10dの底部に開口して横方向(X方向)に延び、第5の凹部10eの底部の側壁に開口する第5流路25とを有している。
【0023】
第1流路21は、一端がガス入口11に接続され、ガス入口11からガスの流入方向である横方向に延び、そこからおおむね直角に屈曲して縦方向に延び、他端が本体10の第2の凹部10bの底部に開口している。本体10の第2の凹部10bに設けられた第1の開閉弁V2は、縦方向に移動可能に設けられて第1流路21の他端の開口を開閉する弁体V2aを有している。第1流路21は、縦方向に延びる部分の途中に、第2流路22の分岐点21bを有している。ここで、第1流路21の分岐点21bとは、たとえば、縦方向に延びる第1流路21の中心線L1と、横方向に延びる第2流路22の中心線L2との交点、または、その交点近傍の領域である。交点近傍の領域とは、たとえば、交点を含み、その交点からの距離が第1流路21の半径以下の領域である。
【0024】
図2は、図1に示す弁装置100の拡大断面図である。第1流路21は、前述のように、分岐点21bの下流側部分21dの断面積が、分岐点21bの上流側部分21uの断面積よりも大きい。図1に示す例において、下流側部分21dの断面積は、たとえば上流側部分21uの断面積の1.1倍以上かつ3倍以下であり、より具体的には、たとえば上流側部分21uの断面積の1.5倍以上かつ2倍以下である。また、第1流路21は、上流側部分21uと下流側部分21dとの間に傾斜面を有してもよい。
【0025】
第2流路22は、第1流路21の分岐点21bから分岐され、図1に示すように、横方向に延びて第5の凹部10eの底部の側壁に開口している。第5の凹部10eの底部の側壁において、第2流路22の開口に対向する位置に、第5流路25が開口している。図1および図2に示す例において、第1流路21の上流側部分21uの中心線L1に対して第2流路22の中心線L2がなす角度は、おおむね90°である。また、図1に示す例において、第2流路22の中心線L2と第5流路25の中心線L5は一致している。第2流路22の断面積と第5流路25の断面積は、おおむね等しく、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの断面積以下である。
【0026】
図1に示すように、第5の凹部10eに設けられた第2の開閉弁V4は、たとえば電磁弁であり、スリーブV4aと、可動鉄心V4bと、固定鉄心V4cと、ソレノイドV4dと、ソレノイドV4dを覆うケースV4eとを備えている。
【0027】
スリーブV4aは、内部に流路を有する筒状に形成されている。スリーブV4aは、外周面に、スリーブV4aの周方向に延びて第2流路22および第5流路25に連通する円環状の連通溝V4fと、スリーブV4aの軸方向に延びて連通溝V4fとスリーブV4a内の弁室とを連通する直線状の導入路V4gとを有している。また、スリーブV4aは、導入路V4gに連通する弁室V4hと、弁室V4hおよび第4流路24に連通する導出路V4iと、弁室V4hと導出路V4iとの間に設けられた弁座V4jとを有している。
【0028】
可動鉄心V4bは、スリーブV4aの内径とほぼ等しい外径を有し、軸方向に移動可能にスリーブV4a内に収容され、先端部に弁座V4jを開閉する弁体V4kを有している。可動鉄心V4bは、固定鉄心V4cとの間に配置されたコイルバネV4lにより縦方向に延びる軸方向に弁座V4jへ向けて付勢されている。
【0029】
第2の開閉弁V4は、ソレノイドV4dのコイルが消磁している状態では、コイルバネV4lの付勢力および水素ガスの圧力によって可動鉄心V4bが弁座V4jへ向けて付勢されて弁体V4kが弁座V4jに着座し、導出路V4iが閉じた状態となる。この状態では、第2流路22から供給されるガスは、連通溝V4fを介してスリーブV4a内の弁室V4hまでは到達するが、第4流路24には到達しない。
【0030】
第2の開閉弁V4は、ソレノイドV4dのコイルが励磁されると、固定鉄心V4cに吸引されることによって可動鉄心V4bがコイルバネV4lの付勢力に抗して弁座V4jから離れる方向に移動して弁体V4kが弁座V4jから離座し、導出路V4iが開いた状態となる。この状態では、第2流路22から供給されるガスは、連通溝V4fおよび導入路V4gを介してスリーブV4a内の弁室V4hに到達し、弁室V4hから導出路V4iを介して第4流路24に到達する。
【0031】
本体10の第3の凹部10cに設けられた第2の逆止弁V3は、一端に第3の凹部10cの外側に突出したコネクタ部V3aを有し、他端が第3の凹部10cに挿入されて第3の凹部10cの底部に開口する第4流路24に接続されている。第2の逆止弁V3のコネクタ部V3aは、たとえば、燃料電池車に搭載された燃料電池に水素ガスを供給するための水素ガス供給管に接続される。第2の逆止弁V3は、第4流路24から流入したガスを、コネクタ部V3aの端部の開口へ向けて通過させ、逆方向のガスの流れを遮断するように構成されている。
【0032】
第3流路23は、前述のように、第2の凹部10bの高さ方向(Z方向)を向く壁面に開口して高さ方向に延び、図示を省略する本体10の高さ方向の一側に開口している。この図示を省略する第3流路23の開口は、図示を省略する車載ガスタンクなどの需用部に接続されている。ガス入口11に供給されたガスを、第3流路23の図示を省略する開口を介して車載ガスタンクに充填するときには、この第3流路23の図示を省略する開口が、ガス出口12となる。第3流路23は、第2の凹部10bに設けられた開閉弁V2が第1流路21の開口を開いたときに第2の凹部10bを介して第1流路21に連通し、開閉弁V2が第1流路21の開口を閉じたときに開閉弁V2の弁体V2aによって第1流路21から遮断される。
【0033】
以下、本実施形態に係る弁装置100の作用を従来の弁装置との対比に基づいて説明する。
【0034】
たとえば、水素ステーションにおいて、ガスタンクなどの貯蔵部に貯蔵された高圧の水素ガスを、燃料電池車に搭載された車載ガスタンクに充填する場合には、貯蔵部に接続された供給管を弁装置100の第1の逆止弁V1のコネクタ部V1aに接続する。そして、弁装置100の第1の開閉弁V2によって第1流路21の端部の開口を開いて第1流路21と第3流路23を連通させ、第2の開閉弁V4を閉じて第2流路22と第4流路24の間でガス流路20を遮断する。この状態で、弁装置100のガス入口11に、第1の逆止弁V1を介して貯蔵部から高圧の水素ガスを供給する。
【0035】
貯蔵部から第1の逆止弁V1を介して弁装置100へ供給された水素ガスは、第1の逆止弁V1を通過して本体10のガス入口11から本体10の内部のガス流路20に流入する。ガス流路20に流入した水素ガスは、第1流路21の横方向に延びる部分を流れて縦方向へ向けて屈曲された屈曲部を通過し、さらに縦方向に延びる上流側部分21uを通過し、分岐点21bにおいて第1流路21の下流側部分21dと第2流路22に分配される。ここで、弁装置100の第2の開閉弁V4によって第2流路22の分岐点21bと反対側の端部が閉じられているため、分岐点21bを通過した水素ガスは第2の開閉弁V4よりも先の第4流路24までは到達しない。
【0036】
また、弁装置100の第1の開閉弁V2によって、第1の凹部10aの底部の第1流路21の開口が開かれているので、分岐点21bを通過した水素ガスは、第1流路21の下流側部分21dを通過して、本体10の第2の凹部10bに流入する。本体10の第2の凹部10bに流入した水素ガスは、第2の凹部10bの壁面に開口する第3流路23および第3流路23のガス出口12に接続されたガス配管を介して、図示を省略する車載ガスタンクに充填される。
【0037】
図5は、従来の弁装置100Xの課題を説明する拡大断面図である。従来の弁装置100Xは、本実施形態の弁装置100と同様に、たとえば、ガス入口11から横方向に延びて縦方向に屈曲する第1流路21Xと、この第1流路21Xの縦方向に延びる部分から横方向に分岐する第2流路22Xを有している。しかし、従来の弁装置100Xにおいて、第1流路21Xの分岐点21Xbの上流側部分21Xuと下流側部分21Xdは同一の断面積を有している。
【0038】
この場合、ガス入口11から第1流路21Xに流入して横方向に流れたガスGは、第1流路21Xの横方向から縦方向へ屈曲する屈曲部を通過すると、第1流路21Xの縦方向に延びる部分で螺旋状の強い旋回流を生じさせる。第1流路21Xの縦方向に延びる部分で生じたガスGの旋回流は、第1流路21Xの周方向の流速により、第1流路21Xの分岐点21XbにおいてガスGに含まれる水Wを第2流路22Xへ侵入させる。
【0039】
また、第2流路22Xに水Wが浸入すると、高圧のガスGと水Wとが混合されて気液混合流となり、高圧のガスGのみの場合と比較して、体積が大きくなるだけでなく、圧縮が困難になる。そのため、第1の逆止弁V1が設けられたガス入口11の流路断面積が、第1流路21Xの分岐点21Xbの上流側部分21Xuおよび下流側部分21Xdの流路断面積よりも大きい場合、高圧のガスGと水Wとの気液混合流が第1流路21Xの分岐点21Xbの下流側部分21Xdに到達すると、流速が低下する。すると、高圧のガスGに含まれる水Wは、第1流路21Xの分岐点21Xbの下流側部分21Xdに収まりきらずに逆流して、第2流路22Xに浸入するおそれがある。
【0040】
これに対し、本実施形態の弁装置100は、前述のように、ガス入口11とガス出口12が設けられた本体10と、この本体10に設けられてガス入口11とガス出口12を接続するガス流路20と、このガス流路20を開閉する複数の弁V1,V2,V3,V4とを備えている。また、本体10に設けられたガス流路20は、ガス入口11から延びる第1流路21と、この第1流路21の分岐点21bから分岐した第2流路22とを備えている。そして、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dの断面積が、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの断面積よりも大きい。
【0041】
図3は、図1および図2に示す弁装置100の作用を説明する拡大断面図である。本実施形態の弁装置100において、ガス入口11から第1流路21に流入して横方向に流れたガスGは、第1流路21の横方向から縦方向へ屈曲する屈曲部を通過すると、第1流路21の縦方向に延びる分岐点21bの上流側部分21uで螺旋状の強い旋回流を生じさせる。
【0042】
しかし、本実施形態の弁装置100は、前述のように、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dの断面積が、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの断面積よりも大きい。そのため、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dで旋回流が拡大され、ガスGの流れが第2流路22に向けて拡がることが抑制される。したがって、ガスGに含まれる水が第2流路22に浸入するのを抑制することができる。
【0043】
また、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dの断面積が、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの断面積よりも大きいため、高圧のガスGと水との気液混合流が第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dに到達したときの流速の低下を抑制することができる。これにより、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uから下流側部分21dへ向けて、ガスGに含まれる水を積極的に流すことができ、ガスGに含まれる水が第2流路22に浸入するのを抑制することができる。
【0044】
さらに、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uから下流側部分21dへ向けて、ガスGに含まれる水を積極的に流すことで、逆流現象を防止し、ガス入口11に接続された第1の逆止弁V1におけるガスGの脈動を抑制することができる。これにより、第1流路21を流れるガスGと水の気液混合流の脈動を減少させ、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uから下流側部分21dへ向けてガスGに含まれる水を流しやすくすることができる。
【0045】
たとえば、水素ステーションにおいて、燃料電池車に搭載された車載ガスタンクに水素ガスの充填が完了したら、図1に示す第1の開閉弁V2を閉じ、ガス入口11に接続された逆止弁V1のコネクタ部V1aから水素ガス供給用の供給管を取り外す。そして、第2の開閉弁V4を開いて第2流路22と第4流路24を連通させ、さらに、第1の開閉弁V2を開いて第3流路23と第1流路21を連通させることで、車載ガスタンクから第3流路23へ供給した水素ガスを、第1流路21、第2流路22、および第4流路24を介して、燃料電池車に搭載された燃料電池に供給することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、貯蔵部に連通するガス入口11から延びる第1流路21の途中から分岐された第2流路22に、第1流路21を流れるガスGに含まれる水が浸入するのを抑制することができる弁装置100を提供することができる。なお、本発明に係る弁装置は、本実施形態の弁装置100に限定されない。以下、本実施形態の弁装置100の変形例について説明する。
【0047】
図4は、本実施形態に係る弁装置100の変形例を示す図3に相当する拡大断面図である。この変形例において、第1流路21の分岐点21bの上流側部分21uの中心線L1と第2流路22の中心線とL2のなす角θ1は鋭角であり、第1流路21の分岐点21bの下流側部分21dの中心線L1と第2流路22の中心線L2とのなす角θ2は鈍角である。すなわち、第1流路21の上流側部分21uの中心線L1と第2流路22の中心線L2とのなす角θ1は、第1流路21の下流側部分21dの中心線L1と第2流路22の中心線L2とのなす角θ2よりも小さい。これにより、より効果的にガスに含まれる水が第2流路22に浸入するのを抑制することができる。
【0048】
図6は、図5に示す従来の弁装置100Xの変形例の拡大断面図である。図6に示す従来の弁装置100Xの変形例は、第1流路21Xの分岐点21Xbの上流側部分21Xuと下流側部分21Xdが同一の断面積を有し、第1流路21Xの上流側部分21Xuの中心線LX1と第2流路22Xの中心線LX2とのなす角θX1が、第1流路21Xの下流側部分21Xdの中心線LX1と第2流路22Xの中心線LX2とのなす角θX2よりも小さくなっている。この場合、図5に示す従来の弁装置100Xと比較して、第2流路22Xへの水の浸入を抑制することができるが、図1から図3に示す本発明の実施形態に係る弁装置100と比較して、第2流路22Xへの水の浸入を抑制する効果は低い。
【0049】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
10 本体
11 ガス入口
12 ガス出口
20 ガス流路
21 第1流路
21b 分岐点
21d 下流側部分
21u 上流側部分
22 第2流路
100 弁装置
V1 弁
V2 弁
V3 弁
V4 弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6