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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/63 20180101AFI20220222BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20220222BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20220222BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20220222BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20220222BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20220222BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220222BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220222BHJP
【FI】
F21S41/63
F21S41/147
F21S41/148
F21S41/663
F21S41/275
F21V5/04 250
F21Y115:10 500
F21Y115:30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017225174
(22)【出願日】2017-11-22
(65)【公開番号】P2019096485
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 敬広
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-164735(JP,A)
【文献】実開平04-106802(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21V 5/04
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を出射する第1の光源と、前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1のリフレクタと、前記第1のリフレクタにより反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第1の反射部とを含む第1の光源ユニットと、
前記第1の光源ユニットよりも下方に配置されて、第2の光を出射する第2の光源と、前記第2の光を車両進行方向とは反対方向の上方側に向けて反射する第2のリフレクタと、前記第2のリフレクタにより反射された前記第2の光の一部を車両進行方向の下方側に向けて反射する第2の反射部とを含む第2の光源ユニットと、
前記第1の光源ユニット及び前記第2の光源ユニットの前方に配置されて、前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、車両進行方向に向かって、前記第1の光及び前記第2の光が入射する入射面と、前記第1の光及び前記第2の光が出射される出射面とが、この順で配置された構成を有し、
前記入射面は、前記第1の光及び前記第2の光を水平方向において集光させるレンズ面により構成され、
前記出射面は、前記第1の光及び前記第2の光を鉛直方向において集光させるレンズ面により構成され
前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点よりも後方に前記第1の光源が位置し、
前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点と前記第1の光源との間に前記出射面を構成するレンズ面の後側焦点が位置し、
前記第1のリフレクタは、前方に向かって開口し、前記鉛直方向に沿った断面において、前記第1の光源を焦点とする放物線を描くように湾曲し、且つ、前記水平方向に沿った断面において、前記第1の光源の周囲を囲むように湾曲した形状の反射面を有し、
前記第2のリフレクタは、上方に向かって開口し、前記鉛直方向に沿った断面において、前記第2の光源を焦点とする放物線を描くように湾曲し、且つ、前記水平方向に沿った断面において、前記第2の光源の周囲を囲むように湾曲した形状の反射面を有して、当該反射面により反射された前記第2の光を前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点に向けて集光させるように設定されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1の反射部は、前記出射面を構成するレンズ面の後側焦点付近に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記投影レンズにより投影される前記第1の光が、前記第1の反射部の前端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される前記第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記入射面は、シリンドリカル形状又はトーリック形状を有することを特徴する請求項1~3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記出射面は、シリンドリカル形状又はトーリック形状を有することを特徴する請求項1~4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第1の反射部と前記第2の反射部とが一体に形成されていることを特徴する請求項1~5の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、光源と、光源から出射された光を車両進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えている。
【0003】
このような車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、シェードの前端によって規定される光源像を投影レンズにより反転投影することで、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成している。
【0004】
また、車両用灯具では、車両進行方向に向けて光を出射する別の光源をシェードの下方に配置し、走行用ビーム(ハイビーム)として、この光源が出射する光を投影レンズにより投影することで、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成している。
【0005】
ところで、上述したロービーム用配光パターンを形成する光源ユニットと、ハイビーム用配光パターンを形成する光源ユニットとは、それぞれ光の出射方向が異なるため、互いに別体に構成されている。
【0006】
そこで、部品点数の省略化及び組立工程の簡素化によるコストの削減を図るため、これらの光源ユニットを一体化した車両用灯具の開発が進められている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0007】
具体的に、下記特許文献1には、発光素子を光源とする車両用照明灯具において、灯具前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された第1および第2光源ユニットとを備えてなり、上記第1光源ユニットが、上記投影レンズの後側焦点よりも後方側において上記光軸近傍に配置された第1発光素子と、この第1発光素子を上方側から覆うように配置され、該第1発光素子からの光を灯具前方へ向けて上記光軸寄りに反射させるように構成された第1リフレクタと、この第1リフレクタからの反射光の一部を上方側へ反射させるよう、上記後側焦点近傍から上記光軸に略沿って後方へ延びる上向き反射面を有する第1ミラー部材とを備えてなり、上記第2光源ユニットが、上記上向き反射面の前端縁から灯具後方側へ向けて斜め下方へ延びる下向き反射面を有する第2ミラー部材と、上記光軸の下方に配置された第2発光素子と、この第2発光素子からの光を上方へ向けて反射させて上記下向き反射面における上記後側焦点近傍部位に略収束させるように構成された第2リフレクタとを備えてなる車両用照明灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4413762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した車両用灯具では、近年のトレンドである小型化の要求に応えるために、投影レンズを小さくすることが求められている。しかしながら、投影レンズを小さくした場合、この投影レンズの焦点距離が短くなる。
【0010】
この場合、投影レンズのサイズの制約によって、鉛直方向(高さ方向)における拡大率が大きくなることによって、ハイビーム用配光パターンの手前照度が高くなり過ぎてしまう。一方、水平方向(幅方向)における拡大率が小さくなることによって、ロービーム用配光パターンの拡がりが小さくなり過ぎてしまう。
【0011】
また、投影レンズを小型化する場合は、ハイビーム用配光パターンを形成する光の取り込みを考慮した入射面の形状としないと、入射面から入射した光が出射面に辿り着けずに、光の利用効率が低下してしまう。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な配光パターンを得ると共に、光の利用効率を高めることを可能とした車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 第1の光を出射する第1の光源と、前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1のリフレクタと、前記第1のリフレクタにより反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第1の反射部とを含む第1の光源ユニットと、
前記第1の光源ユニットよりも下方に配置されて、第2の光を出射する第2の光源と、前記第2の光を車両進行方向とは反対方向の上方側に向けて反射する第2のリフレクタと、前記第2のリフレクタにより反射された前記第2の光の一部を車両進行方向の下方側に向けて反射する第2の反射部とを含む第2の光源ユニットと、
前記第1の光源ユニット及び前記第2の光源ユニットの前方に配置されて、前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズは、車両進行方向に向かって、前記第1の光及び前記第2の光が入射する入射面と、前記第1の光及び前記第2の光が出射される出射面とが、この順で配置された構成を有し、
前記入射面は、前記第1の光及び前記第2の光を水平方向において集光させるレンズ面により構成され、
前記出射面は、前記第1の光及び前記第2の光を鉛直方向において集光させるレンズ面により構成され
前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点よりも後方に前記第1の光源が位置し、
前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点と前記第1の光源との間に前記出射面を構成するレンズ面の後側焦点が位置し、
前記第1のリフレクタは、前方に向かって開口し、前記鉛直方向に沿った断面において、前記第1の光源を焦点とする放物線を描くように湾曲し、且つ、前記水平方向に沿った断面において、前記第1の光源の周囲を囲むように湾曲した形状の反射面を有し、
前記第2のリフレクタは、上方に向かって開口し、前記鉛直方向に沿った断面において、前記第2の光源を焦点とする放物線を描くように湾曲し、且つ、前記水平方向に沿った断面において、前記第2の光源の周囲を囲むように湾曲した形状の反射面を有して、当該反射面により反射された前記第2の光を前記入射面を構成するレンズ面の後側焦点に向けて集光させるように設定されていることを特徴とする車両用灯具。
〔2〕 前記第1の反射部は、前記出射面を構成するレンズ面の後側焦点付近に設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〕 前記投影レンズにより投影される前記第1の光が、前記第1の反射部の前端により規定されるカットオフラインを含む第1の配光パターンを形成し、
前記投影レンズにより投影される前記第2の光が、前記第1の配光パターンよりも上方に位置する第2の配光パターンを形成することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用灯具
〔4〕 前記入射面は、シリンドリカル形状又はトーリック形状を有することを特徴する前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔5〕 前記出射面は、シリンドリカル形状又はトーリック形状を有することを特徴する前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔6〕 前記第1の反射部と前記第2の反射部とが一体に形成されていることを特徴する前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、良好な配光パターンを得ると共に、光の利用効率を高めることを可能とした車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一の実施形態に係る車両用灯具の構成を示す断面図である。
図2図1に示す車両用灯具の構成を示す平面図である。
図3図1に示す車両用灯具が備える投影レンズの構成を示し、(a)はその鉛直断面図、(b)はその水平断面図である。
図4】比較例となる投影レンズの構成を示し、(a)はその鉛直断面図、(b)はその水平断面図である。
図5図1に示す車両用灯具において、第1の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
図6図1に示す車両用灯具において、第2の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
図7図4に示す比較例において、第1の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
図8図4に示す比較例において、第2の光によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成された配光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
本発明の一実施形態として、例えば図1図2及び図3(a),(b)に示す車両用灯具1について説明する。なお、図1は、車両用灯具1の構成を示す断面図である。図2は、車両用灯具1の構成を示す平面図である。図3(a)は、車両用灯具1が備える投影レンズ4の構成を示す鉛直断面図である。図3(b)は、車両用灯具1が備える投影レンズ4の構成を示す水平断面図である。また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具1の前後方向、Y軸方向を車両用灯具1の幅方向(水平方向)、Z軸方向を車両用灯具1の高さ方向(鉛直方向)として、それぞれ示すものとする。
【0018】
本実施形態の車両用灯具1は、車両の前方に搭載される車両用前照灯(ヘッドライト)として、すれ違い用ビーム(ロービーム)と走行用ビーム(ハイビーム)とを車両進行方向(+X軸方向)に向けて照射するものである。
【0019】
具体的に、この車両用灯具1は、図1図2及び図3(a),(b)に示すように、ロービーム(LB)用光源ユニット(第1の光源ユニット)2と、ハイビーム(HB)用光源ユニット(第2の光源ユニット)3と、投影レンズ4とを概略備えている。これらは、ヒートシンクとなる筐体5に一体に取り付けられている。
【0020】
また、車両用灯具1では、図示を省略する冷却ファンにより送風しながら、各光源ユニット2,3で発生した熱を筐体(ヒートシンク)5から放熱させることで、各光源ユニット2,3の冷却を行っている。
【0021】
LB用光源ユニット2は、すれ違い用ビーム(ロービーム)となる第1の光L1を出射する第1の光源6と、第1の光L1を車両進行方向(+X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて反射する第1のリフレクタ7と、第1のリフレクタ7により反射された第1の光L1の一部を車両進行方向(+X軸方向)の上方(+Z軸方向)側に向けて反射する第1の反射部8とを有している。
【0022】
第1の光源6は、例えば白色光を発するチップLED(SMD LED)からなる。また、チップLEDには、車両照明用の高出力タイプのものが使用されている。第1の光源6は、筐体5の上面5aに熱伝導グリス(図示せず。)を介して取り付けられている。これにより、第1の光源6は、第1の光L1を上方(+Z軸方向)に向けて放射状に出射する。
【0023】
なお、第1の光源6には、上述したLED以外にも、レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。また、上述した発光素子以外の光源を用いてもよい。さらに、発光素子の数については、1つ限らず、複数であってもよい。
【0024】
第1のリフレクタ7は、例えばアルミダイキャストなどの反射部材からなる。第1のリフレクタ7は、第1の光源6の上方を覆うように筐体5の上面5aに取り付けられている。これにより、第1のリフレクタ7の第1の光源6と対向する面(内面)が反射面7aとされている。
【0025】
第1のリフレクタ7の反射面7aは、その前後方向(X軸方向)に沿った断面(X軸断面)において、その基端(後端)側から先端(前端)側に向かって、第1の光源6の中心(発光点)を焦点とする放物線を描くように湾曲して形成されている。これにより、第1のリフレクタ7は、第1の光源6から出射された第1の光L1を反射面7aにより車両進行方向(+X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて反射する。
【0026】
また、第1のリフレクタ7の反射面7aは、その幅方向(Y軸方向)に沿った断面(Y軸断面)において、車両進行方向(+X軸方向)を除く第1の光源6の周囲を囲むように湾曲して形成されている。これにより、第1のリフレクタ7は、第1の光源6から出射された第1の光L1を反射面7aにより水平方向(Y軸方向)に集光させながら、車両進行方向(+X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて反射する。
【0027】
第1の反射部8は、筐体5の上面5a(筐体5の一部)より構成されている。また、第1の反射部8の先端(前端)は、第1のリフレクタ7により反射された第1の光L1の一部を遮光(カット)するシェード8aとして機能する。シェード8aは、後述する投影レンズ4の出射面4bを構成するレンズ面の後側焦点(以下、出射面側焦点という。)F1の近傍に設定されている。
【0028】
第1の反射部8は、このシェード8aから車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)に延びる上向き反射面8bを有している。これにより、第1の反射部8の上向き反射面8bは、第1のリフレクタ7により反射された第1の光L1の一部を車両進行方向(+X軸方向)の上方(+Z軸方向)側に向けて反射する。
【0029】
HB用光源ユニット3は、LB用光源ユニット2よりも下方に配置されている。HB用光源ユニット3は、走行用ビーム(ハイビーム)となる第2の光L2を出射する第2の光源9と、第2の光L2を車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の上方(+Z軸方向)側に向けて反射する第2のリフレクタ10と、第2のリフレクタ10により反射された第2の光L2の一部を車両進行方向(+X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて反射する第2の反射部11とを有している。
【0030】
第2の光源9は、例えば白色光を発するチップLED(SMD LED)からなる。また、チップLEDには、車両照明用の高出力タイプのものが使用されている。第2の光源9は、筐体5の前面5bに熱伝導グリス(図示せず。)を介して取り付けられている。筐体5の前面5bは、車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて傾斜している。これにより、第2の光源9は、第2の光L2を車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて放射状に出射する。
【0031】
なお、第2の光源9には、上述したLED以外にも、レーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることができる。また、上述した発光素子以外の光源を用いてもよい。さらに、発光素子の数については、1つ限らず、複数であってもよい。
【0032】
第2のリフレクタ10は、例えばアルミダイキャストなどの反射部材からなる。第2のリフレクタ10は、第2の光源9の下方を覆うように筐体5の前面5bに取り付けられている。これにより、第2のリフレクタ10の第2の光源9と対向する面(内面)が反射面10aとされている。
【0033】
第2のリフレクタ10は、後述する投影レンズ4の入射面4aを構成するレンズ面の後側焦点(以下、入射面側焦点という。)F2の近傍に、この反射面10aにより反射された第2の光L2を集光させるように設定されている。また、第2の光源9から入射面側焦点F2までの距離は、第1の光源6から出射面側焦点F1までの距離よりも短くなっている。
【0034】
第2のリフレクタ10の反射面10aは、その前後方向(X軸方向)に沿った断面(X軸断面)において、その基端(後端)側から先端(前端)側に向かって、第2の光源9の中心(発光点)を焦点とする放物線を描くように湾曲して形成されている。これにより、第2のリフレクタ10は、第2の光源9から出射された第2の光L2を反射面10aにより車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の上方(+Z軸方向)側に向けて反射する。
【0035】
また、第2のリフレクタ10の反射面10aは、その幅方向(Y軸方向)に沿った断面(Y軸断面)において、車両進行方向(+X軸方向)を除く第2の光源9の周囲を囲むように湾曲して形成されている。これにより、第2のリフレクタ10は、第2の光源9から出射された第2の光L2を反射面10aにより水平方向(Y軸方向)に集光させながら、車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の上方(+Z軸方向)側に向けて反射する。
【0036】
第2の反射部11は、筐体5の前面5b(筐体5の一部)より構成されている。すなわち、第1の反射部8と第2の反射部11とは、筐体5により一体に形成されている。第2の反射部11は、シェード8a(第1の反射部8の先端)から車両進行方向とは反対方向(-X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に延びる下向き反射面11aを有している。入射面側焦点F2は、この下向き反射面11aの上端(シェード8a)の近傍に設定されている。
【0037】
これにより、第2の反射部11の下向き反射面11aは、第2のリフレクタ8により反射された第2の光L2の一部を車両進行方向(+X軸方向)の下方(-Z軸方向)側に向けて反射する。
【0038】
投影レンズ4は、LB用光源ユニット2及びHB用光源ユニット3の前方に配置されて、第1の光L1及び第2の光L2を車両進行方向(+X軸方向)に向けて投影する。なお、投影レンズ4には、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。
【0039】
投影レンズ4は、車両進行方向(+X軸方向)に向かって、第1の光L1及び第2の光L2が入射する入射面4aと、第1の光L1及び第2の光L2が出射される出射面4bとが、この順で配置された構成を有している。
【0040】
入射面4aは、投影レンズ4の後端(後面)側に位置して、この入射面4aから投影レンズ4の内部へと入射する第1の光L1及び第2の光L2を水平方向(Y軸方向)に集光させるように、鉛直方向(Z軸方向)に延長されたシリンドリカル形状のレンズ面として構成されている。
【0041】
なお、入射面4aについては、上述したシリンドリカル形状のレンズ面に限らず、その鉛直方向(Z軸方向)において湾曲したトーリック形状のレンズ面としてもよい。この場合、入射面4aに入射する第1の光L1及び第2の光L2を水平方向(Y軸方向)に集光させるだけでなく、鉛直方向(Z軸方向)に集光させることが可能である。
【0042】
出射面4bは、投影レンズ4の前端(前面)側に位置して、この出射面4bから投影レンズ4の外部へと出射される第1の光L1及び第2の光L2を鉛直方向(Z軸方向)に集光させるように、水平方向(Y軸方向)に延長されたシリンドリカル形状のレンズ面として構成されている。
【0043】
なお、出射面4bについては、上述したシリンドリカル形状のレンズ面に限らず、その水平方向(Y軸方向)において湾曲したトーリック形状のレンズ面としてもよい。この場合、出射面4bから出射される第1の光L1及び第2の光L2を鉛直方向(Z軸方向)に集光させるだけでなく、水平方向(Y軸方向)に集光及び拡散させることが可能である。
【0044】
また、投影レンズ4において、出射面4bの焦点距離(投影レンズ4の中心から出射面側焦点F1までの距離)f1は、入射面4aの焦点距離(投影レンズ4の中心から入射面側焦点F2までの距離)f2よりも長くなっている。
【0045】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1では、LB光源ユニット2の点灯時に、第1の光源6から出射された第1の光L1を第1のリフレクタ7及び第1の反射部8により反射した後、投影レンズ4の出射面側焦点F1近傍に形成される光源像を投影レンズ4により反転投影する。これにより、投影レンズ4から車両進行方向(+X軸方向)に向けて投影された第1の光L1は、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、その上端にシェード8aにより規定されるカットオフラインを含むロービーム(LB)用配光パターン(第1の配光パターン)を形成する。
【0046】
一方、本実施形態の車両用灯具1では、HB用光源ユニット3の点灯時に、第2の光源9から出射された第2の光L2を第2のリフレクタ10及び第2の反射部11により反射した後、投影レンズ4により投影する。これにより、投影レンズ4から車両進行方向(+X軸方向)に向けて投影された第2の光L2は、走行用ビーム(ハイビーム)として、LB用配光パターンよりも上方に位置するハイビーム(HB)用配光パターン(第2の配光パターン)を形成する。
【0047】
ところで、本実施形態の車両用灯具1では、上述した投影レンズ4の出射面4bにより第1の光L1を鉛直方向(Z軸方向)において集光させるため、幅方向(Y軸方向)における拡大率が大きく、且つ、高さ方向(Z軸方向)における拡大率が小さい最適なLB用配光パターンを形成することが可能である。
【0048】
また、本実施形態の車両用灯具1では、上述した投影レンズ4の入射面4aにより第2の光L2を水平方向(Y軸方向)において集光させるため、この入射面4aに対する第2の光L2の取り込み効率が向上することになる。これにより、HB用配光パターンを形成する第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。
【0049】
ここで、比較例となる車両用灯具として、上記投影レンズ4の入射面4a及び出射面4bを図4(a),(b)に示すような形状とした場合を例示する。なお、図4(a)は、比較例となる投影レンズ4の構成を示す鉛直断面図である。図4(b)は、比較例となる投影レンズ4の構成を示す水平断面図である。
【0050】
比較例となる投影レンズ4では、入射面4aが球面凸状のレンズ面を構成し、出射面4bが球面凸状のレンズ面を構成している。また、比較例となる投影レンズ4において、出射面4bの焦点距離f1は、入射面4aの焦点距離f2よりも短くなっている。
【0051】
本実施形態の車両用灯具1において、投影レンズ4に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、投影レンズ4の前方に照射される第1の光L1及び第2の光L2を投影したときの光源像(LB用配光パターン及びHB用配光パターン)を図5及び図6に示す。
【0052】
なお、図5は、本実施形態の車両用灯具1において、第1の光L1によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたLB用配光パターンを模式図である。図6は、本実施形態の車両用灯具1において、第2の光L2によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたHB用配光パターンを示す模式図である。
【0053】
同様に、比較例となる投影レンズ4を用いて、この投影レンズ4に正対した仮想鉛直スクリーンに対して、投影レンズ4の前方に照射される第1の光L1及び第2の光L2を投影したときの光源像(LB用配光パターン及びHB用配光パターン)を図7及び図8に示す。
【0054】
なお、図7は、比較例となる投影レンズ4を用いた場合の第1の光L1によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたLB用配光パターンを模式図である。図8は、比較例となる投影レンズ4を用いた場合の第2の光L2によって仮想鉛直スクリーンの面上に形成されたHB用配光パターンを示す模式図である。
【0055】
本実施形態の車両用灯具1では、図5に示すように、LB用配光パターンの拡がり、遠方視認性及び手前照度が適正となっている。一方、図7に示す比較例となる投影レンズ4を用いた場合は、LB用配光パターンの拡がりが足りず、遠方視認性及び手前照度が高くなり過ぎている。
【0056】
また、本実施形態の車両用灯具1では、図6に示すように、HB用配光パターンを形成する第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。一方、図8に示す比較例となる投影レンズ4を用いた場合には、HB用配光パターンを形成する第2の光L2の利用効率が低くなる影響で、HB用配光パターンの拡がり及び遠方視認性が不足している。
【0057】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1では、LB用光源ユニット2及びHB用光源ユニット3を一体化し、投影レンズ4を小型化した場合でも、良好なLB用配光パターン及びHB用配光パターンを得ると共に、これらLB用配光パターン及びHB用配光パターンを形成する第1の光L1及び第2の光L2の利用効率を高めることが可能である。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記車両用灯具1では、LB用光源ユニット2及びHB用光源ユニット3において、例えばダイレクトプロジェクションと呼ばれるLEDなどの発光素子を並べて配置した構成とすることも可能である。
【0059】
また、上記車両用灯具1では、HB用光源ユニット3において、LEDなどの発光素子を並べて配置し、各発光素子の点灯を切り替えることによって、第2の光L2の配光を可変に制御する配光可変ヘッドランプ(ADB:Adaptive Driving Beam)とすることも可能である。ADBは、車載カメラで前走車や対向車、歩行者などを認識し、前方のドライバーや歩行者に眩しさを与えることなく、夜間におけるドライバーの前方視界を拡大する技術である。
【0060】
また、上記車両用灯具1では、HB用光源ユニット3がLB用光源ユニット3よりも下方に配置された構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、て、例えば、第2の光源9を第1の光源6よりも上方に配置し、第2のリフレクタ10により第2の光を第2の反射部11に向けて反射する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…車両用灯具 2…ロービーム(LB)用光源ユニット(第1の光源ユニット) 3…ハイビーム(HB)用光源ユニット(第2の光源ユニット) 4…投影レンズ 4a…入射面 4b…出射面 5…筐体 6…第1の光源 7…第1のリフレクタ 8…第1の反射部 9…第2の光源 10…第2のリフレクタ 11…第2の反射部 L1…第1の光 L2…第2の光
図1
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図8