(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置、及び、その取付方法
(51)【国際特許分類】
E05B 79/16 20140101AFI20220222BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20220222BHJP
B60J 5/00 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
E05B79/16
E05B85/16 A
B60J5/00 M
(21)【出願番号】P 2017242403
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真介
(72)【発明者】
【氏名】森脇 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩司
(72)【発明者】
【氏名】越智 勲
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸哉
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特許第6028860(JP,B2)
【文献】特開2016-160722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233154(US,A1)
【文献】特開2014-136945(JP,A)
【文献】特開2015-227585(JP,A)
【文献】特開2014-095209(JP,A)
【文献】特開2014-167213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに設けられ、ドアハンドル及びシリンダ
錠が設けられたドアハンドルベースと、
前記車両ドアに設けられ、前記シリンダ
錠に対するドアキー操作に応じてロック状態又はアンロック状態に切り替わるドアラッチ機構とを備え、
前記シリンダ
錠は、
ドアキーによって回動されるキーシリンダと、
前記ドアラッチ機構に挿脱可能に作動連結し、前記キーシリンダの回動を前記ドアラッチ機構に伝達するパドル部と、
前記パドル部を回動可能に支持する支持部とを備え、
前記ドアラッチ機構は、
前記パドル部が挿脱可能に挿入されて前記パドル部の回動に伴って回動することで、前記ドアラッチ機構をロック状態又はロック解除状態に切り替えるキーロータ
と、
前記パドル部の前記キーロータへの挿入時に、前記パドル部を前記キーロータの先端挿入口に案内可能なガイド部とを備え、
前記パドル部は、前記支持部によって、前記キーロータに対する遠近方向に変位可能に支持され
るとともに、前記支持部の中心軸線の方向と前記中心軸線に対して傾斜した方向との間で回動可能に支持され、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に、前記支持部の中心軸線に対して傾斜した方向に回動する構成であり、
前記ガイド部は、前記キーロータの前記先端挿入口の周囲のうち、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に前記パドル部が前記支持部の中心軸線に対して傾斜される側から、前記車両ドアの車外側に突出する部分を有する
車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記キーシリンダのキー挿入部は、前記車両ドアの車外側主面における前記ドアハンドルの裏側に配置され、
前記ドアハンドルは、前記車両ドアに対して変位可能に配置され、その変位によって、前記キーシリンダの前記キー挿入部を露出又は被覆する
請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記キーシリンダは、前記車両ドアの車外側の斜め上方に傾斜している
請求項1又は請求項2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記ドアハンドルベースには、前記ドアハンドルに対するハンドル操作に連動して作動し、前記ドアラッチ機構に作動連結されたロッドが設けられ、
前記ドアラッチ機構は、
前記ロッドに作動連結され、前記ロッドの作動に応じて前記車両ドアのドアラッチを解除するドアラッチ解除レバーを備え、
前記ドアラッチ解除レバーは、
前記ロッドが挿入されるロッド挿入孔と、
前記ロッド挿入孔の周縁部に設けられ、前記ロッドの前記ロッド挿入孔への挿入時に、前記ロッドの端部を前記ロッド挿入孔に案内するロッド用ガイド部とを備えた
請求項1から
請求項3のうちの一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記パドル部が、前記支持部の中心軸線に対して所定角度だけ下側に傾斜した状態で支持され、
前記ガイド部における前記車両ドアの車外側に突出する部分は、
前記キーロータの前記先端挿入口の周囲のうち、下側の縁部から突出するとともに、前記ドアラッチ機構の前記車両ドアへの取付け時に、前記支持部の中心軸線に対して所定角度だけ下側に傾斜した前記パドル部を掬い上げて、前記キーロータの前記先端挿入口に案内可能に形成された
請求項1から請求項4のうちの一項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
車両ドアに設けられ、ドアハンドル及びシリンダ錠が設けられたドアハンドルベースと、前記車両ドアに設けられ、前記シリンダ錠に対するドアキー操作に応じてロック状態又はアンロック状態に切り替わるドアラッチ機構とを備え、前記シリンダ錠が、ドアキーによって回動されるキーシリンダと、前記ドアラッチ機構に挿脱可能に作動連結し、前記キーシリンダの回動を前記ドアラッチ機構に伝達するパドル部と、前記パドル部を回動可能に支持する支持部とを備え、前記ドアラッチ機構が、前記パドル部が挿脱可能に挿入されて前記パドル部の回動に伴って回動することで、前記ドアラッチ機構をロック状態又はロック解除状態に切り替えるキーロータを備え、前記パドル部が、前記支持部によって、前記キーロータに対する遠近方向に変位可能に支持された車両用ドアロック装置の車両ドアへの取付方法であって、
前記ドアハンドルベースが前記車両ドアに取り付けられると共に前記シリンダ
錠が前記ドアハンドルベースに取り付けられる第1工程と、
前記第1工程の後、前記ドアラッチ機構が前記車両ドアに取り付けられる第2工程と、
前記第1工程の際又は前記第2工程の後、前記シリンダ
錠の前記パドル部が、前記ドアラッチ機構の前記キーロータに対する遠近方向に変位される第3工程とを含む
車両用ドアロック装置の取付方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記第1工程の際に行われ、
前記第3工程では、前記パドル部が前記支持部
の中心軸線に対して傾斜した方向に回動され、
前記第2工程は、前記第1工程及び前記第3工程の後に行われ、
前記第2工程では、前記ドアラッチ機構が、前記パドル部が前記支持部の前記中心軸線に対して傾斜した側から車両ドアの取付箇所に移動されつつ、前記パドル部が前記キーロータ内に挿入される
請求項6に記載の車両用ドアロック装置の取付方法。
【請求項8】
前記第3工程は、前記第2工程の後に行われ、
前記第3工程では、前記パドル部が前記支持部に対して前記キーロータへの挿入方向にスライドされて前記キーロータに挿入される
請求項6に記載の車両用ドアロック装置の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ドアロック装置、及び、その取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドアロック装置では、ドア用シリンダ錠のキー挿入部は、車両ドアの車外側主面のドアハンドル周辺に配置されている。このため、ドアラッチ機構を車両ドアに取り付けた後に、ドア用シリンダ錠を車外側から車両ドアに取り付けることができる。この結果、ドア用シリンダ錠のパドル部をドアラッチ機構のキーロータに容易に挿入(即ち作動連結)することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、ドア用シリンダ錠のキー挿入部が車両ドアの車外側主面のドアハンドル周辺に配置される構造(即ち、ドア用シリンダ錠のキー挿入部が車両ドアの車外側主面に露出する構造)では、そのキー挿入部の露出によって、走行風に対する車両の静粛性が低下する場合がある。
【0005】
この欠点を解決するための案として、ドア用シリンダ錠のキー挿入部を、車両ドアの車外側主面におけるドアハンドルの裏側に配置する案が考えられる。この案では、車両ドアの構造上、ドア用シリンダ錠を車両ドア内部から車両ドアに取り付けた後に、ドアラッチ機構を車両ドアに取り付ける必要がある。より詳細には、ドア用シリンダ錠のパドル部をドアラッチ機構との作動連結位置に予め配置させた状態で、ドアラッチ機構を移動させつつ、ドアラッチ機構のキーロータにドア用シリンダ錠のパドル部を挿入させる必要がある。
【0006】
しかしながら、上記のように、ドアラッチ機構を移動させつつ、ドアラッチ機構のキーロータにドア用シリンダ錠のパドル部を挿入(即ち作動連結)させるのは、車両ドアの内部空間の制約上の理由で、非常に困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みて、ドア用シリンダ錠が車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構が車両ドアに取り付けられる場合に、ドア用シリンダ錠のパドル部とドアラッチ部のキーロータとの作動連結を容易に行うことができる車両用ドアロック装置及びその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車両ドアに設けられ、ドアハンドル及びシリンダ錠が設けられたドアハンドルベースと、前記車両ドアに設けられ、前記シリンダ錠に対するドアキー操作に応じてロック状態又はアンロック状態に切り替わるドアラッチ機構とを備え、前記シリンダ錠は、ドアキーによって回動されるキーシリンダと、前記ドアラッチ機構に挿脱可能に作動連結し、前記キーシリンダの回動を前記ドアラッチ機構に伝達するパドル部と、前記パドル部を回動可能に支持する支持部とを備え、前記ドアラッチ機構は、前記パドル部が挿脱可能に挿入されて前記パドル部の回動に伴って回動することで、前記ドアラッチ機構をロック状態又はロック解除状態に切り替えるキーロータと、前記パドル部の前記キーロータへの挿入時に、前記パドル部を前記キーロータの先端挿入口に案内可能なガイド部とを備え、前記パドル部は、前記支持部によって、前記キーロータに対する遠近方向に変位可能に支持されるとともに、前記支持部の中心軸線の方向と前記中心軸線に対して傾斜した方向との間で回動可能に支持され、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に、前記支持部の中心軸線に対して傾斜した方向に回動する構成であり、前記ガイド部は、前記キーロータの前記先端挿入口の周囲のうち、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に前記パドル部が前記支持部の中心軸線に対して傾斜される側から、前記車両ドアの車外側に突出する部分を有する車両用ドアロック装置である。
【0009】
この構成によれば、シリンダ錠のパドル部が、支持部によってキーロータに対する遠近方向に変位可能に支持されるため、シリンダ錠がドアハンドルベースを介して車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構が車両ドアに取り付けられる場合に、パドル部とキーロータとの作動連結を容易に行うことができる。
【0010】
さらに、この発明の前記パドル部は、前記支持部の中心軸線の方向と前記中心軸線に対して傾斜した方向との間で回動可能に支持されたものである。
この構成によれば、シリンダ錠の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構を車両ドアに取り付ける場合、ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時にパドル部を支持部の中心軸線に対して傾斜した方向に回動させておき、ドアラッチ機構を、パドル部が傾斜した側から車両ドア内の取付箇所に移動させることで、容易に、パドル部をキーロータに挿入させることができる。
【0011】
加えて、この発明の前記ドアラッチ機構は、前記パドル部の前記キーロータへの挿入時に、前記パドル部を前記キーロータの先端挿入口に案内可能なガイド部を備え、前記パドル部は、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に、前記支持部の中心軸線に対して傾斜した方向に回動され、前記ガイド部は、前記キーロータの前記先端挿入口の周囲のうち、前記ドアラッチ機構の車両ドアへの取付時に前記パドル部が前記支持部の中心軸線に対して傾斜される側から、前記車両ドアの車外側に突出する部分を有するものである。
【0012】
この構成によれば、シリンダ錠の車両ドアへの取付後に、ドアラッチ機構を、パドル部が傾斜された側から車両ドア内の取付箇所に移動させてその取付箇所に取り付ける場合、ガイド部によって、容易に、パドル部をキーロータの先端挿入口に案内して挿入させることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記キーシリンダのキー挿入部は、前記車両ドアの車外側主面における前記ドアハンドルの裏側に配置され、前記ドアハンドルは、前記車両ドアに対して変位可能に配置され、その変位によって、前記キーシリンダの前記キー挿入部を露出又は被覆してもよい。
【0014】
この構成によれば、キーシリンダのキー挿入部にドアキーを挿入しないとき(例えば車両走行中)は、キー挿入部をドアハンドルで被覆し、キー挿入部にドアキーを挿入するときだけ、ドアハンドルを変位させてキー挿入部を露出させることができる。これにより、キー挿入部が露出することで、走行風に対する車両の静粛性が低下することを防止することができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記キーシリンダは、前記車両ドアの車外側の斜め上方に傾斜していてもよい。
この構成によれば、ドアキーを車外側の斜め上方からキーシリンダに挿入することができる。従って、ドアハンドルが車両ドアの車外側に略水平に変位することでキーシリンダのキー挿入部が露出された場合でも、ドアキーがドアハンドルに干渉することなく、ドアキーをキーシリンダに挿入することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記ドアハンドルベースには、前記ドアハンドルの操作に連動して作動し、前記ドアラッチ機構に作動連結されたロッドが設けられ、前記ドアラッチ機構は、前記ロッドに作動連結されて、前記ロッドの作動に応じて前記車両ドアのドアラッチを解除するドアラッチ解除レバーを備え、前記ドアラッチ解除レバーは、前記ロッドが挿入されるロッド挿入孔と、前記ロッド挿入孔の周縁部には、前記ロッドの前記ロッド挿入孔への挿入時に、前記ロッドの端部を前記ロッド挿入孔に案内するロッド用ガイド部とを備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、ドアラッチ解除レバーのロッド挿入孔の周縁部にロッド用ガイド部が設けられているため、シリンダ錠が車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構が車両ドアに取り付けられる場合でも、ロッドの他端部とドアラッチ解除レバーとの作動連結を容易に行うことができる。
【0018】
この発明の態様として、前記パドル部が、前記支持部の中心軸線に対して所定角度だけ下側に傾斜した状態で支持され、前記ガイド部における前記車両ドアの車外側に突出する部分は、前記キーロータの前記先端挿入口の周囲のうち、下側の縁部から突出するとともに、前記ドアラッチ機構の前記車両ドアへの取付け時に、前記支持部の中心軸線に対して所定角度だけ下側に傾斜した前記パドル部を掬い上げて、前記キーロータの前記先端挿入口に案内可能に形成されてもよい。
【0019】
またこの発明は、車両ドアに設けられ、ドアハンドル及びシリンダ錠が設けられたドアハンドルベースと、前記車両ドアに設けられ、前記シリンダ錠に対するドアキー操作に応じてロック状態又はアンロック状態に切り替わるドアラッチ機構とを備え、前記シリンダ錠が、ドアキーによって回動されるキーシリンダと、前記ドアラッチ機構に挿脱可能に作動連結し、前記キーシリンダの回動を前記ドアラッチ機構に伝達するパドル部と、前記パドル部を回動可能に支持する支持部とを備え、前記ドアラッチ機構が、前記パドル部が挿脱可能に挿入されて前記パドル部の回動に伴って回動することで、前記ドアラッチ機構をロック状態又はロック解除状態に切り替えるキーロータを備え、前記パドル部が、前記支持部によって、前記キーロータに対する遠近方向に変位可能に支持された車両用ドアロック装置の車両ドアへの取付方法であって、前記ドアハンドルベースが前記車両ドアに取り付けられると共に前記シリンダ錠が前記ドアハンドルベースに取り付けられる第1工程と、前記第1工程の後、前記ドアラッチ機構が前記車両ドアに取り付けられる第2工程と、前記第1工程の際又は前記第2工程の後、前記シリンダ錠の前記パドル部が、前記ドアラッチ機構の前記キーロータに対する遠近方向に変位される第3工程とを含む車両用ドアロック装置の取付方法である。
【0020】
この構成によれば、第1工程の間又は第2工程の後に、シリンダ錠のパドル部が、キーロータに対して遠近方向に変位されるため、シリンダ錠が車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構が車両ドアに取り付けられる場合でも、パドル部とキーロータとの作動連結を容易に行うことができる。
【0021】
この発明の態様として、前記第3工程は、前記第1工程の際に行われ、前記第3工程では、前記パドル部が前記支持部の中心軸線に対して傾斜した方向に回動され、前記第2工程は、前記第1工程及び前記第3工程の後に行われ、前記第2工程では、前記ドアラッチ機構が前記パドル部が回動された側から車両ドア内の取付箇所に移動されつつ、前記パドル部が前記キーロータ内に挿入されてもよい。
この構成によれば、シリンダ錠を車両ドアに取り付け後に、ドアラッチ機構を車両ドアに取り付ける場合に、容易に、パドル部をキーロータに挿入することができる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記第3工程は、前記第2工程の後に行われ、前記第3工程では、前記パドル部が前記支持部に対して前記キーロータへの挿入方向にスライドされて前記キーロータに挿入されてもよい。
この構成によれば、シリンダ錠の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構を車両ドアに取り付ける場合に、容易に、パドル部をキーロータに挿入することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、ドア用シリンダ錠が車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構が車両ドアに取り付けられる場合に、ドア用シリンダ錠のパドル部とドアラッチ部のキーロータとの作動連結を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】車両用ドアロック装置を裏側(車内側)から見た分解斜視図。
【
図3】車両用ドアロック装置を表側(車外側)から見た分解斜視図。
【
図4】シリンダ
錠のパドル部とドアラッチ機構のキーロータとの分離状態を示す側面視断面図。
【
図5】ドアハンドルベースに各構成要素が取り付けられた状態をドアハンドルベースの裏側から見た斜視図。
【
図6】ドアハンドルベースに各構成要素が取り付けられた状態をドアハンドルベースの上側から見た平面視部分断面図。
【
図7】車両用ドアロック装置の車両ドアへの取付方法を説明する側面図。
【
図8】車両用ドアロック装置の車両ドアへの取付方法を説明する別の側面図。
【
図11】パドル部の別の変形例での車両用ドアロック装置の取付方法を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
図1~
図8を参照して、この発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置1を説明する。車両用ドアロック装置1は、自動車などの車両の車両ドアの内部に設けられ、車両ドアに対するドアハンドル操作に応じて、車両ドア側のドアラッチによる車体側のストライカとの係止を解除すると共に、車両ドアに対するドアキー操作に応じて、車両ドア側のドアラッチを、上記の係止の解除を禁止するロック状態又は上記の係止の解除を許可するアンロック状態に切り替えるものである。
【0026】
図1は、車両用ドアロック装置1を示す側面図であり、
図2は、車両用ドアロック装置1を裏側(車内側)から見た分解斜視図であり、
図3は、車両用ドアロック装置1を表側(車外側)から見た分解斜視図であり、
図4は、シリンダ
錠22のパドル部222とドアラッチ機構3のキーロータ32との分離状態を示す側面視断面図である。
【0027】
図1に示すように、車両用ドアロック装置1は、ドアハンドル操作及びドアキー操作を受け付けるドアハンドルベースユニット2と、ドアハンドルベースユニット2に対するドアハンドル操作及びドアキー操作に応じて、車両ドア側のドアラッチ31を駆動するドアラッチ機構3とを備えている。
【0028】
ドアハンドルベースユニット2は、ドアハンドル25を車両ドアのドアアウタパネル50の表側に配置させた状態でドアアウタパネル50の裏側に取り付けられる。
図2及び
図3に示すように、ドアハンドルベースユニット2は、ドアハンドルベース21と、シリンダ
錠22と、ロッド23と、ベルクランク24と、ドアハンドル25とを備えている。
【0029】
シリンダ
錠22は、シリンダ
錠22に適合したドアキーによるドアキー操作を受け付け、ドアキー操作であるドアキーの回動をドアラッチ機構3に伝達するものである。
図4に示すように、シリンダ
錠22は、ドアキーが挿入可能で、挿入されたドアキーの回動に伴って回動可能なキーシリンダ221と、ドアラッチ機構3と挿脱可能に作動連結してキーシリンダ221の回動をドアラッチ機構3に伝達するパドル部222と、キーシリンダ221の回動をパドル部222に伝達する複数(例えば2つ)のギヤ223,224と、パドル部222を回動可能且つ揺動可能に支持する支持部225と、これら各構成要素221,222,223,224,225が組み付けられるシリンダ
錠用筐体226とを備えている。
【0030】
シリンダ錠用筐体226は、キーシリンダ221が収容されるキーシリンダ収容部226aと、ギヤ223,224が収容されるギヤ収容部226bとを備えている。
【0031】
キーシリンダ収容部226aは、キーシリンダ221の外観形状に合わせた形状(例えば略円筒状)に形成されたキーシリンダ収容部本体226a1と、キーシリンダ収容部本体226a1の外周面に設けられた嵌合部226a2とを備えている。
【0032】
嵌合部226a2は、ドアハンドルベース21に嵌合装着される部分である。嵌合部226a2は、キーシリンダ収容部本体226a1の上半部の上下両側にそれぞれ略三角形状に張り出して形成されており、キーシリンダ収容部本体226a1の上半部を略直方体形(即ち側面視略四角形)に形成する。キーシリンダ収容部本体226a1は、上記の側面視四角形の対角線に沿って配置されている。これにより、キーシリンダ収容部本体226a1は、上下方向に傾斜状態でドアハンドルベース21に嵌合装着される。即ちキーシリンダ221は、ドアハンドルベース21に対して上下方向に傾斜して配置される。
【0033】
ギヤ収容部226bは、例えば平板形の箱状に形成されている。ギヤ収容部226bの両側の主面のうちの一方主面(例えば上側主面)は、キーシリンダ収容部本体226a1の下端部に、互いの内部空間が連通するように連結されている。
【0034】
このように構成されたシリンダ錠用筐体226には、下記のように、キーシリンダ221、各ギヤ223,224及び支持部225が取り付けられている。即ち、キーシリンダ221は、キーシリンダ収容部本体226a1の長手方向に沿ってキーシリンダ収容部本体226a1内に収容されている。キーシリンダ221の先端部は、キーシリンダ収容部本体226a1の先端部から露出され、ドアキーが挿入されるキー挿入部221aを構成している。
【0035】
支持部225は、例えば四角柱状に形成され、ギヤ収容部226bの両側の主面のうちの他方主面(即ちキーシリンダ収容部226aとは反対側の主面)に、突出状態で支持部225の中心軸線T1周りに回動可能に立設されている。支持部225の先端部に、パドル部222が支持部225の中心軸線T1の両側に揺動可能に連結されている。即ち、パドル部222は、支持部225の中心軸線T1の方向と中心軸線T1に対して傾斜した方向との間を回動可能である。
【0036】
各ギヤ223,224は、例えば平歯車であり、ギヤ収容部226b内で、平面状に並べられ、互いに歯合した状態で回動可能に収容されている。一方のギヤ223の回動軸部は、キーシリンダ221と同心状に一体回転可能に連結され、他方のギヤ224の回動軸部は、支持部225と同心状に一体回転可能に連結されている。
【0037】
パドル部222は、例えば棒状のパドル部本体222aと、パドル部本体222aの先端部に設けられた係合部222bと、パドル部本体222aの基端部に設けられた連結部222cとを備えている。パドル部222は、その先端部がドアラッチ機構3の後述のキーロータ32内に挿入されることで、キーロータ32に作動連結される。
【0038】
係合部222bは、パドル部222の先端部をドアラッチ機構3の後述のキーロータ32に一体回転可能且つ係脱可能に係合する部分である。係合部222bは、例えば、複数の係合片で構成され、パドル部本体222aの先端部の外周において、周方向に互いに間隔を空けると共にパドル部本体222aの中心軸線T2の方向に沿って立設されている。連結部222cは、支持部225に対して一体回転可能且つ支持部225の中心軸線T1に対して上下に揺動可能に連結されている。即ち、連結部222c(従ってパドル部222)は、支持部225の中心軸線T1と中心軸線T1に対して傾斜した方向との間を回動可能である。
【0039】
このように構成されたシリンダ錠22では、キーシリンダ221がドアキーによって回動されると、その回動が各ギヤ223,224及び支持部225を順に伝達して、パドル部222が回動される。
【0040】
パドル部222について更に詳説すると、
図4に示すように、パドル部222の連結部222cは、パドル部本体222aよりも拡径の円柱状に形成され、パドル部本体222aの基端部に同心状に設けられている。連結部222cの基端面には、支持部225の先端部が挿入可能な挿入凹部222dが設けられている。挿入凹部222dの周壁部には、連結部222cと支持部225の先端部とを連結するための止めピン222eが挿入される貫通孔222fが設けられている。貫通孔222fは、連結部222cの直径に沿って連結部222cの両側に2つ設けられている。止めピン222eは、円柱状の棒状に形成されている。
【0041】
挿入凹部222dの奧には、弾性部材(例えばゴム部材)222gが配置されている。弾性部材222gは、連結部222cと支持部225との連結状態で、支持部225の先端面に当接することで、パドル部222を支持部225の中心軸線T1に対して所定角度傾斜した角度に位置決めするためのものである。
【0042】
支持部225の先端部は、連結部222cの挿入凹部222d内に挿入可能な円柱状に形成されている。支持部225の外周面には、止めピン222eが挿通される貫通孔225aが設けられている。貫通孔225aは、支持部225の直径に沿って支持部225を貫通するように設けられている。即ち、連結部222cの挿入凹部222dの内部に支持部225の先端部が挿入された状態で、止めピン222eが連結部222cの両側の貫通孔222f及び支持部225の貫通孔225aを挿通配置されることで、連結部222c(従ってパドル部222)が支持部225に連結されている。
【0043】
貫通孔225aにおける支持部225の中心軸線T1方向(即ち支持部225の先端基端方向)の直径は、貫通孔225aの孔軸方向の中央から孔軸方向の両端に行くほど、中心軸線T1方向に大きくなっている。より詳細には、
図4に示すように、貫通孔225aを側面視の断面で見ると、支持部225の先端部側の孔輪郭線R1は、孔軸方向の中央から両端に行くほど、支持部225の先端部側に曲線状(例えば円弧状)に湾曲し、支持部225の基端部側の孔輪郭線R2は、孔軸方向の中央から両端に行くほど、支持部225の基端部側に曲線状(例えば円弧状)に湾曲している。
【0044】
このように、貫通孔225aの中心軸線T1方向の直径が貫通孔225aの孔軸方向の中央から孔軸方向の両端に行くほど中心軸線T1方向に大きくなることで、連結部222c(従ってパドル部222)は、支持部225の先端部に連結された状態で、止めピン222eの周りに回動できると共に止めピン222eの軸線方向に回動可能である。即ち、パドル部222は、支持部225の中心軸線T1に対して、支持部225の周方向のどの方向の両側へも、揺動可能である。
【0045】
支持部225の先端面は、支持部225の中心軸線T1に対して傾斜している。例えば、支持部225の先端面は、支持部225の貫通孔225aの一端開口側から他端開口側に向かって、支持部225の先端部側から基端部側に傾斜している。支持部225の先端面は、支持部225と連結部222cとの連結状態では、連結部222cの挿入凹部222dの奧の弾性部材222gの例えば平坦な基端面に当接する。このため、上記のように支持部225の先端面が傾斜していることで、連結部222c(従ってパドル部222)は、支持部225の中心軸線T1に対して支持部225の先端面の傾斜方向に傾斜するように、弾性部材222gによって位置決めされる。
【0046】
図2及び
図3に戻って、ロッド23は、ドアハンドル25に対するドアハンドル操作をドアラッチ機構3の後述のドアラッチ解除レバーに伝達するものであり、例えば縦に延びた棒状に形成されている。ロッド23の上端部には、ベルクランク24と連結するためのロッド連結部23a(
図3参照)が設けられ、ロッド23の下部には、ドアラッチ解除レバー33に係合するロッド係合部23b(
図2参照)が設けられている。ロッド連結部23aは、例えば連結軸部として形成され、ロッド23の上端部から直交状に延設されると共に車両ドアの横幅方向に突出している。ロッド係合部23bは、ロッド23の下部においてロッド23がクランク状(即ち横方向に屈曲し間隔を空けて下方に屈曲した形)に屈曲されて形成されている。
【0047】
ベルクランク24は、水平方向の動作であるハンドル操作を上下方向の動作に変換するものであり、ロッド23及びドアハンドル25と連結されるベルクランク本体241と、ドアハンドルベース21に回動可能に支持される回動軸部242とを備えている。
【0048】
回動軸部242は、車両ドアの横幅方向に延びており、例えばその両端部がドアハンドルベース21に回動可能に支持される。ベルクランク本体241は、回動軸部242に連結されており、回動軸部242の軸線方向から見た側面視で略逆さL字形に形成されており、横辺部241aと縦辺部241bとを備えている。
【0049】
横辺部241aは、車両ドアの厚さ方向に延在して形成されており、縦辺部241bは、横辺部241aの基端部(即ち車両ドアの厚さ方向の車内側の端部)から下方に延設されており、回動軸部242は、横辺部241aから下方に延設された支持部を介して横辺部241aに連結されている。より詳細には、横辺部241aは、車両ドアの横幅方向に広がった板状(例えば側面視略円弧形の板状)に形成されており、縦辺部241bは、例えば棒状に形成され、ドアハンドル25の後述の操作アーム部252との干渉を回避するために、横辺部241aの基端部における横幅方向の一端部から下方に延設されている。
【0050】
縦辺部241bには、ロッド23のロッド連結部23aが回動可能に連結する被連結部241dと、ドアハンドル25の後述の操作アーム部252が係合する被係合部241eとが設けられている。
被連結部241dは、例えば、回動軸部としてのロッド連結部23aが嵌挿可能且つ回動可能な貫通孔として形成され、縦辺部241bの上部に設けられ、車両ドアの横幅方向に貫通している。被係合部241eは、例えば、ドアハンドル25の上記の係合凹部252aに係合可能な円柱状の係合突起部として形成され、縦辺部241bの下部(即ち被連結部241dよりも下方側の部位)から車両ドアの横幅方向に突出している。
【0051】
ドアハンドル25は、ドアハンドル操作を行うために把持される部分であり、ドアハンドル本体251と、ベルクランク24の被係合部241eに係合する操作アーム部252と、ドアハンドルベース21に回動可能に係合する係合アーム部253とを備えている。
【0052】
ドアハンドル本体251は、例えば、車両ドアの横幅方向に延びた棒状に形成されている。
操作アーム部252は、例えば略直方体形の真っ直ぐな棒状に形成され、ドアハンドル本体251の裏面における横幅方向の一端部において、車内側に向かって立設されている。操作アーム部252の先端部の側面には、ベルクランク24の被係合部(即ち係合突起部)241eが回動可能に係合する係合凹部252aが設けられている。
【0053】
係合アーム部253は、例えば底面視で略L字形の棒状に形成され、ドアハンドル本体251の裏面における横幅方向の他端部(即ち操作アーム部252側とは反対側の端部)において車内側に向かって立設されており、係合アーム部253の先端部は、操作アーム部252とは反対側に屈曲されている。
【0054】
係合アーム部253の先端部の上下両面にはそれぞれ、ドアハンドルベース21の後述の一対の回動軸部211aが回動可能に係合可能な底面視U字形の係合凹溝部253aが設けられている。係合凹溝部253aの一端部は、係合アーム部253の先端面で開放しており、その開放した一端部からドアハンドルベース21の後述の回動軸部211aが挿入可能になっている。係合アーム部253の先端部における車外側の側面には、後述のバネ部材216の規制部216bが係合する係合凹部253bが設けられている。
【0055】
ドアハンドル本体251の裏面における横幅方向の他端部251bは、ドアハンドルベース21の表面の後述のキー挿入部用開口部213及び操作アーム部用挿入孔212を開閉可能に被覆する蓋部を構成している。以後、蓋部251bとも記載する。
【0056】
ドアハンドルベース21は、シリンダ
錠22、ロッド23、ベルクランク24、及びドアハンドル25が取り付けられると共に車両ドアの内部に固定されるベース部材であり、例えば横長板状に形成されている。ドアハンドルベース21は、その表面(車外側主面)が車両ドアのドアアウタパネル50(
図1参照)の裏面に重ねられるようにして、ドアアウタパネル50の裏面に取り付けられる。
【0057】
ドアハンドルベース21には、ドアハンドル25の係合アーム部253が収容可能な係合アーム部用収容凹部211と、ドアハンドル25の操作アーム部252が挿入可能な操作アーム部用挿入孔212と、シリンダ錠22のキー挿入部221aが配置されるキー挿入部用開口部213と、シリンダ錠22が装着されるシリンダ錠用装着凹部214と、ベルクランク24が収容されるベルクランク用収容凹部215とが設けられている。また、ドアハンドルベース21には、ドアハンドル25を、ハンドル操作に対して元の位置に自律復帰的に戻すためのバネ部材216が設けられている。
【0058】
係合アーム部用収容凹部211は、ドアハンドルベース21の表面における横幅方向の一端部に設けられ、係合アーム部253の形に合わせて略横長直方体状に形成されている(
図3参照)。係合アーム部用収容凹部211の内部の上下幅は、横幅方向外側の端部で段差状に狭く形成されており、ドアハンドル25の係合アーム部253の先端部が嵌合可能になっている。そして、係合アーム部用収容凹部211の上記の段差状に狭くなった部分の上下両面には、係合アーム部253の先端部の係合凹溝部253aに回動可能に係合可能な回動軸部211aが立設されている。
【0059】
操作アーム部用挿入孔212は、ドアハンドルベース21の表面における横幅方向の他端部側(即ち係合アーム部用収容凹部211側とは反対側)に設けられ、ドアハンドルベース21の厚さ方向に貫通している。
【0060】
キー挿入部用開口部213は、ドアハンドルベース21の表面の横幅方向の他端部(例えば操作アーム部用挿入孔212の横隣)に設けられており、シリンダ錠22のキー挿入部221aよりも大きい開口部として形成されている。
【0061】
シリンダ錠用装着凹部214は、ドアハンドルベース21の裏面におけるキー挿入部用開口部213と重なる部位に設けられ、シリンダ錠22のキーシリンダ収容部226aの略直方体形の上半部が嵌合可能な略直方体形に形成されている。キー挿入部用開口部213は、シリンダ錠用装着凹部214の奧面でシリンダ錠用装着凹部214に連通している。
【0062】
ベルクランク用収容凹部215は、ドアハンドルベース21の裏面における操作アーム部用挿入孔212の上側に設けられている。ベルクランク用収容凹部215における横幅方向の両側の側面には、ベルクランク24の回動軸部242の両端部が回動可能に係合する凹溝部215aが設けられている。
【0063】
凹溝部215aは、ドアハンドルベース21の厚さ方向に沿って設けられており、凹溝部215aの一端部は、ドアハンドルベース21の裏面で開放している。即ち、その開放した一端部(以後、開放端とも記載する。)からベルクランク24の回動軸部242の端部が凹溝部215a内に係合される。ベルクランク用収容凹部215は、ドアハンドルベース21の裏面に設けられた連通溝218を介して、操作アーム部用挿入孔212に連通している。
【0064】
バネ部材216は、例えばダブルトーションバネであり、2つの巻きバネ216aと、各巻きバネ216aの一端部同士が互いに連結されて形成された略U字形の規制部216bと、2つの巻きバネ216aの自由端である係止端(図示省略)とを備えている。ドアハンドルベース21における横幅方向の一端部(即ち係合アーム部用収容凹部211側の端部)の上下両側の外面には、巻装軸部21a及び被係止部21bが立設されている。各巻きバネ216aは、各巻装軸部21aに巻装されており、上記の各係止端は、各被係止部21bに係止されており、規制部216bは、ドアハンドルベース21の係合アーム部用収容凹部211の表側の開口面上を跨ぐように配置されている。規制部216bは、巻きバネ216aによって、係合アーム部用収容凹部211の表側の開口面に押し付けられる方向に付勢されている。
【0065】
図5及び
図6はそれぞれ、ドアハンドルベース21に各構成要素(シリンダ
錠22、ロッド23、ベルクランク24及びドアハンドル25)が取り付けられた状態をドアハンドルベース21の裏側から見た斜視図、及び、上から見た平面図である。なお、
図5では、ドアハンドル25は図示省略されており、
図6では、ドアハンドルベース21及びドアハンドル25は水平面での断面図で示されている。
【0066】
図5に示すように、シリンダ
錠22は、ドアハンドルベース21の裏面のシリンダ
錠用装着凹部214内に収容された状態で、ドアハンドルベース21に取り付けられている。この取付状態では、キーシリンダ収容部226aの略直方体形の上半部がシリンダ
錠用装着凹部214に嵌合装着されている。
【0067】
この嵌合装着により、キーシリンダ収容部226aは、鉛直方向に対して車両ドアの厚さ方向の車外側に傾斜している。従って、キーシリンダ収容部226a内のキーシリンダ221も鉛直方向に対して車両ドアの厚さ方向の車外側に傾斜している(
図1参照)。また、上記の嵌合装着では、キーシリンダ221の上端部であるキー挿入部221aは、ドアハンドルベース21の表面のキー挿入部用開口部213に配置され、車外側の斜め上方を向いている(
図1及び
図6参照)。
【0068】
また、ベルクランク24は、ドアハンドルベース21の裏面のベルクランク用収容凹部215内に収容された状態で、ドアハンドルベース21に取り付けられている。この取付状態では、ベルクランク24の回動軸部242が、ベルクランク用収容凹部215の左右両側面の凹溝部215aの奧側で回動可能に支持されている。また、上記の取付状態では、ベルクランク24の縦辺部241bの被係合部241eが、連通溝218を介して、ベルクランク用収容凹部215から操作アーム部用挿入孔212に引き出されている。ベルクランク24の被連結部241dには、ロッド23のロッド連結部23aが回動可能に連結されており、ロッド23は、ドアハンドルベース21の裏側において下方に垂下されている。
【0069】
図6に示すように、ドアハンドル25は、ドアハンドルベース21の表面に取り付けられている。この取付状態では、係合アーム部253がドアハンドルベース21の表面の係合アーム部用収容凹部211に収容されており、係合アーム部用収容凹部211の上下両側の回動軸部211aが係合アーム部253の先端部の上下両側の係合凹溝部253aに回動可能に係合されている。そして、ドアハンドルベース21のバネ部材216の規制部216bが、係合アーム部253の先端部の係合凹部253bに係合して、係合アーム部253を係合アーム部用収容凹部211の奧側に押し込む方向に付勢している。また、操作アーム部252がドアハンドルベース21の表面側から操作アーム部用挿入孔212に挿入されており、操作アーム部252の先端部の係合凹部252aがベルクランク24の縦辺部241bの被係合部241eに係合されている。
【0070】
このような取付状態では、ドアハンドル25は、ドアハンドルベース21の回動軸部211aを中心に回動可能である。ドアハンドル操作を行うときは、利用者によって、ドアハンドル本体251がドアハンドルベース21から離間する方向(即ち車外側、
図6の矢印U1の方向)に引っ張られて、ドアハンドル25が回動軸部211aを中心に車外側に回動される。この回動により、ベルクランク24の縦辺部241bがドアハンドル25の操作アーム部252によって車外側に引っ張られる。この引っ張りにより、ベルクランク24がその回動軸部242を中心に回動して、ベルクランク24の縦辺部241bに連結されたロッド23が下方に移動する(
図5参照)。この移動により、後述のように、ドアラッチ機構3のドアラッチ解除レバー33が操作されて、ドアラッチ機構3が、ストライカとの係止を解除する状態に切り替わる。
【0071】
また、ドアハンドル操作が行われた状態では、ドアハンドルベース21の表面のキー挿入部用開口部213が開放される。この結果、キー挿入部用開口部213内のキー挿入部221aが外部に露出され、車外側の斜め上方からドアキーをキー挿入部221aに挿入可能になる。
【0072】
他方、ドアハンドル本体251が放されることで、ドアハンドル操作が解除される。この解除状態では、ドアハンドルベース21のバネ部材216の付勢力によってドアハンドル25の係合アーム部253が係合アーム部用収容凹部211の奧側に付勢される。この付勢により、ドアハンドル25がハンドル操作前の元の位置(即ちドアハンドル本体251の裏面の横幅方向の両端部がドアハンドルベース21の表面に当接する状態)に戻される。これにより、ドアハンドル25の操作アーム部252が操作アーム部用挿入孔212の奧側に挿入される。この挿入により、ベルクランク24がその回動軸部242を中心に逆方向に回動し、ベルクランク24の縦辺部241bに連結されたロッド23が上方側の元の位置に移動される。
【0073】
また、ドアハンドル25がハンドル操作前の元の位置に戻った状態では、ドアハンドル本体251の裏面の横幅方向の他端部(即ち蓋部)251bが、ドアハンドルベース21のキー挿入部用開口部213及び操作アーム部用挿入孔212を被覆して閉塞する。即ち、キー挿入部221aが外部から視認できなくなる。また、ドアハンドル本体251の横幅方向の中央部とドアハンドルベース21との間には、ドアハンドル本体251を把持するための空間Sが確保されている。
【0074】
図1に示すように、ドアラッチ機構3は、ドア車両の内部において、ドアハンドルベースユニット2に対して車内側の斜め下側に配置される。より詳細には、ドアラッチ機構3は、ドアハンドルベースユニット2の裏側において、後述のキーロータ32の中心軸線T3がシリンダ
錠22の支持部225の中心軸線T1に略一致するように配置される。
【0075】
図1~
図4に示すように、ドアラッチ機構3は、車体側のストライカに係止するドアラッチ31と、ドアハンドルベースユニット2のパドル部222の回動に伴って回動するキーロータ32(
図4参照)と、ドアハンドルベースユニット2のロッド23によって作動されるドアラッチ解除レバー33と、キーロータ32の回動に応じてドアラッチ31の駆動を許可(即ちアンロック)又は禁止(即ちロック)するロック/アンロック切替部(図示省略)と、ドアラッチ解除レバー33の作動に応じてドアラッチ31を駆動するドアラッチ駆動部(図示省略)と、これら各構成要素が収容されるケース34とを備えている。
【0076】
ケース34は、略平板状の箱状のケース本体341と、ケース本体341の横幅方向の一端部からケース本体341の両側主面のうちの車外側主面の側に張り出した箱状のドアラッチ取付部342とを備えている。
【0077】
ドアラッチ取付部342の両側主面のうちの外側主面には、車体側のストライカ(図示省略)が挿入されるストライカ用凹溝部342aが設けられている。ストライカ用凹溝部342aは、ドアラッチ取付部342の横幅方向(即ちケース本体341の厚さ方向)に延設されると共にドアラッチ取付部342における横幅方向の車内側の側面で開放している。ストライカ用凹溝部342aの上下両側面は、開放している。ドアラッチ31は、先端部が二股状に形成されている。ドアラッチ31は、ストライカ用凹溝部342aを上下方向に跨るように配置されている。ドアラッチ31の基端部は、ドアラッチ取付部342の内部で、ストライカ用凹溝部242aの長手方向に回動可能に固定されている。
【0078】
ドアラッチ31は、係止解除位置V1と係止位置V2との間を回動可能である。係止解除位置V1は、ドアラッチ31がストライカ用凹溝部342aの入口側に傾斜して、ドアラッチ31の先端部の二股開口部がストライカ用凹溝部342aに連通する回動位置である。係止位置V2は、ドアラッチ31がストライカ用凹溝部342aの長手方向に対して略垂直に配置して、ドアラッチ31の先端部の二股開口部がストライカ用凹溝部342aの側面で閉塞される回動位置である。
【0079】
ドアラッチ31のストライカとの係止の解除状態では、ドアラッチ31は、上記のドアラッチ駆動部によって係止解除位置V1に回動される。この状態で、ストライカがストライカ用凹溝部342a内を通過してドアラッチ31の二股内に入り、ストライカがドアラッチ31の二股内に入ったままドアラッチ31を係止位置V2まで回動すると、上記のドアラッチ駆動部によって、ドアラッチ31の回動位置がこの係止位置V2に保持される。この保持状態が、ドアラッチ31がストライカに係止する係止状態である。
【0080】
図4に示すように、キーロータ32は、パドル部222の先端部が挿脱可能な筒状に形成されている。キーロータ32の内部(即ち筒内部)の内周面には、パドル部222の先端部の係合部222bと係合する係合溝32bが複数設けられている。各係合溝32bは、キーロータ32の先端挿入口側から奧側に向かって延設されると共に、キーロータ32の内周面の周方向に間隔を空けて設けられている。
【0081】
キーロータ32は、ケース本体341の両側主面のうちの車外側主面の上部に配置されている。より詳細には、ケース本体341の車外側主面の上部には、キーロータ用の開口部341aが設けられている。キーロータ32は、キーロータ32の先端挿入口がケース本体341の開口部341a内に配置するように、ケース本体341内に回動可能に収容配置されている。この収容配置状態で、キーロータ32の中心軸線T3は、ケース本体341の上下軸線T4に対して車外側に傾斜しており、キーロータ32の先端挿入口は、車外側斜め上方を向いている。
【0082】
キーロータ32は、ロック位置とアンロック位置(ロック解除位置)との間で回動可能である。ロック位置は、ドアラッチ31の回動を禁止(ロック)する回動位置であり、アンロック位置は、ドアラッチ31の回動を許可(アンロック)する回動位置である。
【0083】
ケース本体341の開口部341aの周縁部(即ちキーロータ32の先端挿入口の周囲)には、パドル部222をキーロータ32の先端挿入口に案内するガイド部341bが設けられている。ガイド部341bは、その先端側ほど外周側に広がった周壁状に形成されている。
【0084】
より詳細には、ガイド部341bのうちの開口部341aの下側(即ちキーロータ32の先端挿入口の周囲のうち、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時にパドル部222が支持部225の中心軸線T1に対して傾斜される側)の縁部では、車外側に向かって略水平又は若干上方に傾斜して突出している。また、ガイド部341bのうちの開口部341aの上側(即ちキーロータ32の先端挿入口の周囲のうち、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時にパドル部222が支持部225の中心軸線T1に対して傾斜される側とは反対側)の縁部では、上方に向かって略鉛直に突出している。即ち、ガイド部341bは、開口部341aの上側縁部では、上方に開放している。このように構成されたガイド部341bにより、後述のように、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時に、下側に傾斜(即ち回動)したパドル部222を下側から掬い上げて、キーロータ32の先端挿入口に案内することが可能になる。
【0085】
ドアラッチ解除レバー33は、ドアラッチ31のストライカへの係止を解除するためのレバーである。ドアラッチ解除レバー33は、その先端部がケース34の車外側の面からケース外部に突出すると共に上下方向に回動可能に、ケース34に取り付けられている。ドアラッチ解除レバー33は、付勢バネ(図示省略)によって、自律復帰的に上方に回動するように付勢されている。
【0086】
ドアラッチ解除レバー33は、非解除位置と解除位置との間を回動可能である。非解除位置は、ドアラッチ31のストライカとの係止を解除しないときの回動位置であり、上記の付勢バネによって上方に回動された回動位置である。解除位置は、ドアラッチ31のストライカとの係止を解除するときの回動位置であり、非解除位置よりも下方に位置する回動位置である。ドアラッチ解除レバー33は、ロッド23によって下方に押されて解除位置に回動し、ロッド23によって下方に押されないときは、上記の付勢バネで上方に付勢されて非解除位置に回動されている。
【0087】
ドアラッチ解除レバー33は、ロッド23の下端部が挿入可能なロッド挿入孔33aと、ロッド挿入孔33aの周縁部に設けられたロッド用ガイド部33bとを備えている。
【0088】
ロッド挿入孔33aは、ドアラッチ解除レバー33の先端部において、上下方向に貫通している。ロッド用ガイド部33bは、ロッド23の下端部のロッド挿入孔33aへの挿入時に、ロッド23の下端部をロッド挿入孔33aに案内するものである。ロッド用ガイド部33bは、ロッド挿入孔33aの周縁部に周壁状に設けられている。ロッド用ガイド部33bは、その先端側ほど外側に広がっている。ロッド用ガイド部33bにおける周方向の一部は、ロッド23の下端部のロッド係合部(クランク部分)23bが安定感を持って係合可能なように平坦状に外側に広がっている。ロッド23の下端部側がロッド挿入孔33aに挿入されることで、ロッド23は、ドアラッチ解除レバー33に作動連結される。
【0089】
上記のドアラッチ駆動部は、ロッド23によってドアラッチ解除レバー33が下側の解除位置に回動されると、ドアラッチ31を係止位置V2から係止解除位置V1に回動させて、ドアラッチ31の回動位置を係止解除位置V1に保持する。他方、上記のドアラッチ駆動部は、車体側のストライカによってドアラッチ31の回動位置が係止解除位置V1から係止位置V2に回動されると、ドアラッチ31の回動位置を係止位置V2に保持する。
【0090】
上記のロック/アンロック切替部は、キーロータ32がロック位置に回動されると、ドアラッチ31が係止解除位置V1に回動することを禁止し、キーロータ32がアンロック位置に回動されると、ドアラッチ31が係止解除位置V1に回動することを許可する。従って、キーロータ32がロック位置に回動された状態で、ドアラッチ解除レバー33が下方に押されても(即ちドアハンドル操作が行われても)、ドアラッチ31は係止解除位置V1へは回動せず、キーロータ32がアンロック位置に回動されたときだけ、ドアラッチ解除レバー33が下方に押されると(即ちドアハンドル操作が行われると)、ドアラッチ31は係止解除位置へ回動する。
【0091】
上記のドアラッチ駆動部、及び、上記のロック/アンロック切替部の具体的な構成は、周知であるため、それらの詳細説明は省略する。上記のドアラッチ駆動部、及び、上記のロック/アンロック切替部はそれぞれ、電気式駆動部で駆動する電気式であっても、電気式駆動部を含まない機械式であってもよい。
【0092】
次に
図7、
図8及び
図1を参照して、車両用ドアロック装置1の車両ドアへの取付方法を説明する。
図7及び
図8はそれぞれ、車両用ドアロック装置1の車両ドアへの取付方法を説明する図である。
【0093】
図7に示すように、まず、ドアハンドルベースユニット2が車両ドアのドアアウタパネル50の裏側に取り付けられる。より詳細には、ドアハンドルベース21が、その表面がドアアウタパネル50の裏面の取付箇所に重なるように、ドアアウタパネル50の裏面に取り付けられる。そして、ドアハンドルベース21に対して、上記のように、車両ドアの内部から、シリンダ
錠22、ロッド23及びベルクランク24が取り付けられると共に、車外側からドアハンドル25が取り付けられる。
【0094】
なお、ドアハンドルベース21にシリンダ錠22、ロッド23及びベルクランク24が予め取り付けられた後に、ドアハンドルベース21が車両ドアのドアアウタパネル50の裏面の取付箇所に取り付けられてもよい。
【0095】
上記のように、ドアハンドルベースユニット2が車両ドアのドアアウタパネル50の裏面の取付箇所に取り付けられた状態では、シリンダ錠22のキーシリンダ221の中心軸線T5は、鉛直方向に対して車外側に傾斜している。これにより、シリンダ錠22の支持部225の中心軸線T1も鉛直方向に対して同方向に傾斜している。パドル部222は、パドル部222の内部の弾性部材222gの付勢力によって、支持部225の中心軸線T1に対して所定角度だけ下側に傾斜するように位置決めされている。後述のように、ドアラッチ機構3は、ドアハンドルベースユニット2の下側に取り付けられるため、上記のように所定角度下側に傾斜したパドル部222は、ドアラッチ機構3のキーロータ32に対する遠近方向に変位していると言える。
【0096】
そして、ドアラッチ機構3が、略鉛直姿勢の状態(即ちドアラッチ機構3の上下方向軸線が略鉛直な状態)で、ドアハンドルベースユニット2の下側から上方に(即ち
図7の矢印方向W1に)持ち上げられて、車両ドアの内部の所定箇所に取り付けられる。その持ち上げによって、まず、ドアラッチ機構3のドアラッチ解除レバー33の先端部のロッド挿入孔33aに、ドアハンドルベースユニット2のロッド23の下端部が挿入される。その挿入の際、ロッド挿入孔33aの周縁部に設けられたロッド用ガイド部33bによって、ロッド23の下端部がロッド挿入孔33aに案内される。このため、比較的容易にロッド挿入孔33aにロッド23の下端部が挿入される。
【0097】
そして、この状態(即ちロッド挿入孔33aにロッド23の下端部が挿入された状態)で、
図8の矢印方向W2に示すように、ドアラッチ機構3が更に上方に持ち上げられる。この持ち上げによって、
図8に示すように、ドアラッチ機構3のガイド部341bがドアハンドルベースユニット2のパドル部222を下側から掬い上げる。この掬い上げによって、パドル部222の傾斜(即ちパドル部22
2の中心軸線T2)が支持部225の中心軸線T1に徐々に略一致する。これに伴って、パドル部222の先端部が、ガイド部341bの上面をガイド部341bの先端側から基端側に摺動してキーロータ32の内部に挿入される。
【0098】
そして、
図1に示すように、ドアラッチ機構3が車両ドアの内部の取付箇所まで持ち上げられると、パドル部222の傾斜が支持部225の中心軸線T1に略一致する。即ち、パドル部222の中心軸線T2が支持部225の中心軸線T1に略一致する。この状態では、パドル部222の中心軸線T2は、キーロータ32の中心軸線T3とも略一致する。このように、パドル部222、支持部225及びキーロータ32の各々の中心軸線T1,T2,T3が略一致した状態では、パドル部222がキーロータ32の内部の奥まで挿入され、パドル部222の係合部(係合片)222aがキーロータ32の内周面の係合溝32bに係合している。即ち、パドル部222がキーロータ32に一体回転可能に挿入されて作動連結している。
【0099】
そして、ドアラッチ機構3が車両ドアの内部の取付箇所に取り付けられる。このように、車両用ドアロック装置1が車両ドアに取り付けられる。
【0100】
なお、ドアラッチ機構3を持ち上げる際、ドアラッチ機構3を、傾斜姿勢の状態(即ちドアラッチ機構3の両側主面のうちの車外側主面が若干上側を向くようにドアラッチ機構3を傾斜させた状態)で持ち上げて、ドアラッチ機構3が車両ドアの内部の取付箇所まで持ち上げられて、パドル部222がキーロータ32に作動連結した後に、ドアラッチ機構3を略鉛直姿勢に戻してもよい。このようにした場合、パドル部222のキーロータ32への挿入がより一層容易になる。
【0101】
以上、この実施形態に係る車両用ドアロック装置1によれば、車両ドアに設けられ、車両ドアの車外側主面に配置されるドアハンドル25、及びシリンダ錠22が設けられたドアハンドルベース21と、車両ドアに設けられ、シリンダ錠22に対するドアキー操作に応じてロック状態又はアンロック状態に切り替わるドアラッチ機構3とを備え、シリンダ錠22は、ドアキーによって回動されるキーシリンダ221と、ドアラッチ機構3に挿脱可能に作動連結し、キーシリンダ221の回動をドアラッチ機構3に伝達するパドル部222と、パドル部222を回動可能に支持する支持部225とを備え、ドアラッチ機構3は、パドル部222が挿脱可能に挿入されてパドル部222の回動に伴って回動することで、ドアラッチ機構3をロック状態又はロック解除状態に切り替えるキーロータ32を備え、パドル部222は、支持部225によって、キーロータ32に対する遠近方向に変位可能に支持される。
【0102】
この構成によれば、シリンダ錠22のパドル部222が、支持部225によってキーロータ32に対する遠近方向に変位可能に支持されるため、シリンダ錠22がドアハンドルベース21を介して車両ドアに取り付けられた後にドアラッチ機構3が車両ドアに取り付けられる場合に、パドル部222とキーロータ32との作動連結を容易に行うことができる。
【0103】
また、キーシリンダ221のキー挿入部221aは、車両ドアの車外側主面におけるドアハンドル25の裏側に配置され、ドアハンドル25は、車両ドアに対して変位可能(例えば水平方向に移動可能)に配置され、その変位によって、キーシリンダ221のキー挿入部221aを露出又は被覆する。このため、キーシリンダ221のキー挿入部221aにドアキーを挿入しないとき(例えば車両走行中)は、キー挿入部221aをドアハンドル25で被覆し、キー挿入部221aにドアキーを挿入するときだけ、ドアハンドル25を変位させてキー挿入部221aを露出させることができる。これにより、キー挿入部221aが露出することで、走行風に対する車両の静粛性が低下することを防止することができる。
【0104】
キーシリンダ221は、車両ドアの車外側の斜め上方に傾斜しているため、ドアキーを車外側の斜め上方からキーシリンダ221に挿入することができる。従って、ドアハンドル25が車両ドアの車外側に水平に変位することでキーシリンダ221のキー挿入部221aが露出された場合でも、ドアキーがドアハンドル25に干渉することなく、ドアキーをキーシリンダ221に挿入することができる。
【0105】
また、パドル部222は、支持部225の中心軸線T1の方向と中心軸線T1に対して傾斜した方向との間で回動可能(即ち揺動可能)に支持される。このため、シリンダ錠22の車両ドアへの取り付け後にドアラッチ機構3を車両ドアに取り付ける場合、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時にパドル部222を支持部225の中心軸線T1に対して傾斜した方向(例えば下側)に回動させておき、ドアラッチ機構3を、パドル部222が回動された側から車両ドア内の取付箇所に移動させることで、容易に、パドル部222をキーロータ32に挿入させることができる。
【0106】
また、ドアラッチ機構3は、パドル部222のキーロータ32への挿入時に、パドル部222をキーロータ32の内部に案内可能なガイド部341bを備え、パドル部222は、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時に、支持部225の中心軸線T1に対して傾斜した方向(例えば下側)に回動され、ガイド部341bは、キーロータ32の先端挿入口の周囲のうち、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時にパドル部222が支持部225の中心軸線T1に対して傾斜される側(即ち下側)から、車両ドアの車外側に突出する部分を有する。このため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後に、ドアラッチ機構3を、パドル部222が傾斜された側(下側)から車両ドア内の取付箇所に移動させてその取付箇所に取り付ける場合、ガイド部341bによって、容易に、パドル部222をキーロータ32の先端挿入口32aに案内して挿入させることができる。
【0107】
また、ドアハンドルベース21には、ドアハンドル25に対するハンドル操作に連動して作動し、ドアラッチ機構3に作動連結されたロッド23が設けられ、ドアラッチ機構3は、ロッド23に作動連結され、ロッド23の作動に応じて車両ドアのドアラッチ31を解除するドアラッチ解除レバー33を備え、ドアラッチ解除レバー33は、ロッド23が挿入されるロッド挿入孔33aと、ロッド挿入孔33aの周縁部に設けられ、ロッド23のロッド挿入孔33aへの挿入時に、ロッド23の端部をロッド挿入孔33aに案内するロッド用ガイド部33bとを備えている。
【0108】
この構成によれば、ドアラッチ解除レバー33のロッド挿入孔33aの周縁部にロッド用ガイド部33bが設けられているため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構3が車両ドアに取り付けられる場合に、ロッド23とドアラッチ解除レバー33との作動連結を容易に行うことができる。
【0109】
また、この実施形態に係る車両用ドアロック装置1の取付方法によれば、ドアハンドルベース21が車両ドアに取り付けられると共にシリンダ錠22がドアハンドルベース21に取り付けられる第1工程と、第1工程の後、ドアラッチ機構3が車両ドアに取り付けられる第2工程と、第1工程の際又は第2工程の後(この実施形態では第1工程の際)、シリンダ錠22のパドル部222が、ドアラッチ機構3のキーロータ32に対する遠近方向に変位(この実施形態では、支持部225の中心軸線T1に対して下側に傾斜する方向に回動)される第3工程とを含む。
【0110】
この構成によれば、上記の第1工程の際又は第2工程の後に、シリンダ錠22のパドル部222が、キーロータ32に対して遠近方向に変位されるため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構3が車両ドアに取り付けられる場合に、パドル部222とキーロータ32との作動連結を容易に行うことができる。
【0111】
また、上記の第3工程は、上記の第1工程の際に行われ、上記の第3工程では、パドル部222が支持部225の中心軸線T1に対して傾斜した方向に回動され、上記の第2工程は、上記の第1工程及び第3工程の後に行われ、上記の第2工程では、ドアラッチ機構3が、パドル部222が支持部225の中心軸線T1に対して傾斜した側から車両ドアの取付箇所に移動されつつ、パドル部222がキーロータ32内に挿入される。このため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構3を車両ドアに取り付ける場合に、容易に、パドル部222をキーロータ32に挿入することができる。
【0112】
<変形例1>
図9は、上記の実施形態のパドル部222の変形例を示す斜視図である。上記の実施形態のパドル部222は、連結部222c内に設けられた弾性部材222gによって、支持部225の中心軸線T1から傾斜した方向に位置決めされたが、
図9に示すように、この変形例1のパドル部222は、パドル部222の外周面に設けられた付勢部材222hによって、支持部225の中心軸線T1から傾斜した方向に付勢される。
【0113】
より詳細には、この変形例1では、付勢部材222hは、例えばダブルトーションバネであり、2つの巻きバネ222h1と、各巻きバネ222h1の一端部同士が互いに連結されて形成された略U字形の規制部222h2と、2つの巻きバネ222h1の自由端である係止端222h3とを備えている。
【0114】
また、この変形例1では、パドル部222の止めピン222eの両端部は、付勢部材222hの2つの巻きバネ222h1が巻装可能なように、連結部222cの両側の貫通孔222fから外側に突出している。パドル部222の連結部222cの外周面には、各巻きバネ222h1の係止端222h3が係止可能な突出状の被係止部222iが設けられている。被係止部222iは、各貫通孔222fの付近にそれぞれ設けられている。
【0115】
付勢部材222hがパドル部222に装着された状態では、2つの巻きバネ222h1はそれぞれ、止めピン222eの両端部に巻装されている。2つの係止端222h3は、連結部222cの被係止部222iに係止されている。規制部222h2は、支持部225の外周に係合しており、2つの巻きバネ222h1によって、支持部225の外周面を押圧する方向に付勢されている。この状態で、パドル部222は、付勢部材222hの付勢力によって、止めピン222e周りの回動方向のうちの一方側(例えば下側)に付勢されている。
【0116】
また、この変形例1では、シリンダ錠22のギヤ収容部226bは、パドル規制部226b1を有している。パドル規制部226b1は、付勢部材222hの付勢力によるパドル部222の止めピン222e周りの回動時の回動角(即ち支持部225の中心軸線T1からのパドル部222の傾斜角)を規制するものである。他方、パドル部222は、パドル規制部226b1に当接する突出部222jを有している。
【0117】
即ち、付勢部材222hの付勢力によるパドル部222の止めピン222e周りの回動時に、突出部222jがパドル規制部226b1に当接することで、上記の回動時のパドル部222の回動角が所定角度に規制される。この変形例1では、上記の実施形態と同様に、パドル部222は、車両用ドアロック装置1が車両ドアに取り付けられる際、付勢部材222hの付勢力により支持部225の中心軸線T1に対して下側に回動され、突出部222jがパドル規制部226b1に当接することで、その回動角が所定角度に調整されている。
【0118】
パドル規制部226b1は、シリンダ錠22のギヤ収容部226bの両側主面のうち支持部225側の主面に、立設されている。パドル規制部226b1は、例えば略直方体形に形成されており、その先端面には、突出部222jの後述の切欠部222kに嵌合する嵌合凸部226b2が設けられている。
【0119】
突出部222jは、パドル部222の連結部222cの外周面に設けられている。突出部222jは、例えば、連結部222cの周方向に沿った扇形の壁状に形成されている。突出部222jの円弧状の先端辺には、パドル規制部226b1の嵌合凸部226b2が嵌合する切欠部222kが設けられている。
【0120】
この変形例1では、ドアハンドルベースユニット2が車両ドアに取り付けられるときは、付勢部材222hの付勢力によって、パドル部222の突出部222jが、ギヤ収容部226bのパドル規制部226b1に当接している。これにより、支持部225の中心軸線T1に対するパドル部222の傾斜角が、所定角度に調整されている。更に、パドル規制部226b1の嵌合凸部226b2が、突出部222jの切欠部222kに嵌合している。これにより、パドル部222のその中心軸線T2周りの回動、及び、支持部225のその中心軸線T1周りの回動が禁止されている。
【0121】
そして、パドル部222がドアラッチ機構3のガイド部341bによって掬い上げられることで、嵌合凸部226b2が切欠部222kから外れて、パドル部222がその中心軸線T2周りに回動可能になると共に、支持部がその中心軸線T1周りに回動可能になる。
【0122】
このように、付勢部材222hの付勢力によってパドル部222が支持部225の中心軸線T1から傾斜した状態で、パドル部222のその中心軸線T2周りの回動、及び、支持部225のその中心軸線T1周りの回動が禁止されることで、ドアラッチ機構3のガイド部341bによってパドル部222を掬い上げるとき、パドル部222の揺れを抑制でき、パドル部222をキーロータ32に容易に挿入可能になる。
【0123】
<変形例2>
図10は、パドル部222の別の変形例を示す斜視図であり、
図11は、パドル部222の別の変形例での車両用ドアロック装置1の取付方法を説明する側面図である。
【0124】
上記の実施形態では、パドル部222は、キーロータ32に対する遠近方向の変位として、支持部225の中心軸線T1の方向とその中心軸線T1に対して傾斜した方向との間で回動可能であったが、この変形例2では、パドル部222は、キーロータ32に対する遠近方向の変位として、支持部225に対して、キーロータ32に対する挿脱方向にスライド可能である。
【0125】
より詳細には、
図10及び
図11(a)に示すように、この変形例2では、パドル部222のパドル部本体222aは、先端が有底で基端面が開口した有底筒状(例えば有底円筒状)に形成されている。パドル部本体222aの内部は、パドル部222をパドル部222の先端側に付勢するためのバネ部材(例えば巻きバネ)222mが収容されている。
【0126】
パドル部本体222aの基端部には、シリンダ錠22のギヤ収容部226bの後述の係合爪226b3が係合するフランジ部222qが設けられている。フランジ部222qは、パドル部本体222aの径方向に張り出すと共に、パドル部本体222aの周方向に亘って周設されている。フランジ部222qには、上記の係合爪226b3が係脱するための切欠部222kが設けられている。切欠部222kは、上記の係合爪226b3と同数(例えば2つ)設けられている。
【0127】
パドル部本体222aの外周面には、シリンダ錠22の支持部225の後述の突起部225bが係合する長孔222pが設けられている。長孔222pは、パドル部本体222aの中心軸線に沿って延びており、パドル部本体222aの両側2箇所にパドル部本体222aの中心軸線に対称に設けられている。
パドル部222の係合部222bは、例えば、一文字状の突出片として形成され、パドル部本体222aの先端面から先端側に突出している。
【0128】
この変形例2では、シリンダ錠22の支持部225は、パドル部222の筒内部に嵌挿可能な形状(例えば円柱状)に形成されている。支持部225の外周面には、パドル部222の長孔222pの内部に配置する突起部225bが設けられている。シリンダ錠22のギヤ収容部226bの両側主面のうちの支持部225側の主面には、上記の係合爪226b3が1つ又は複数(例えば2つ)立設されている。係合爪226b3の爪部は、フランジ部222qの外周縁に係合するために、支持部225側に向けられている。
【0129】
パドル部222が支持部225に支持された状態では、支持部225は、パドル部本体222aの筒内部にスライド可能に嵌挿されている。支持部225の両側の突起部225bは、パドル部本体222aの両側の長孔222pの内部に配置され、長孔222pに沿って移動可能である。即ち、パドル部222は、支持部225の突起部225bが長孔222pの両端のうちの一端に到達するまで、支持部225の先端部側(即ちキーロータ32に対する挿入方向の側)にスライド可能であり、支持部225の突起部225bが長孔222pの両端のうちの他端に到達するまで、支持部225の基端部側(即ちキーロータ32に対する脱抜方向の側)にスライド可能である。
【0130】
バネ部材222mは、パドル部本体222aの筒内部の先端部側の底部と支持部225の先端部との間において、パドル部222の中心軸線方向に圧縮された状態で配置され、圧縮反発力で、パドル部222をその先端部側に付勢する。
【0131】
そして、パドル部222のフランジ部222qがギヤ収容部226bの係合爪226b3に係合された状態では(
図11(a))、パドル部222は、支持部225の基端側にスライドされてそのスライド状態が保持される。支持部225がその中心軸線周りに回動して、係合爪226b3がフランジ部222qの切欠部222kと重なると、係合爪226b3がフランジ部222qから外れ、パドル部222は、バネ部材222mの圧縮反発力で、支持部225の先端部側にスライドされる(
図11(b))。
【0132】
この変形例では、車両用ドアロック装置1は、下記のように、車両ドアに取り付けられる。即ち、
図11(a)に示すように、先ず、ドアハンドルベースユニット2が車両ドアのアウタパネルの裏面の取付箇所に取り付けられる(第1工程)。この取付状態では、パドル部222は、支持部225の基端部側にスライドされており、係合爪226b3がフランジ部222qに係合していることで、そのスライド状態が保持されている。そして、ドアラッチ機構3が車両ドアの内部の取付箇所に取り付けられる(第2工程)。この後、
図11(b)に示すように、キーシリンダ221がドアキーで回動されると、支持部225がその中心軸線周りに回動されて、係合爪226b3がフランジ部222qから外れて、パドル部222が、バネ部材222mの付勢力で支持部225の先端部側にスライドされて、ドアラッチ機構3のキーロータ32に挿入される(第3工程)。この状態では、パドル部222の係合部222bは、キーロータ32の係合溝32bに係合可能な回転角度になっていないため、キーロータ32の係合溝32bに係合(即ち作動連結)しない。この状態で、ドアキーが回動されて中立位置に戻されると、この回動に伴って、パドル部222の係合部222bも中立位置に回動される。この回動により、係合部222bは、キーロータ32の係合溝32bに係合可能な回転角度になって係合溝32bに係合(即ち作動連結)する。即ち、パドル部222とキーロータ32とが作動連結する。
【0133】
以上、この変形例2によれば、パドル部222は、支持部225に対して、キーロータ32に対する挿脱方向にスライド可能に支持されるため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後にドアラッチ機構3を車両ドアに取り付ける場合、上記のように、ドアラッチ機構3の車両ドアへの取付時にパドル部222をキーロータ32に対する脱抜方向にスライドさせておき、ドアラッチ機構3を車両ドアに取り付けた後に、パドル部222をキーロータ32に対する挿入方向にスライドさせることで、容易に、パドル部222をキーロータ32に挿入させることができる。
【0134】
また、上記の第3工程は、上記の第2工程の後に行われ、上記の第3工程では、パドル部222が支持部225に対してキーロータ32への挿入方向にスライドされてキーロータ32に挿入される。このため、シリンダ錠22の車両ドアへの取付後に、ドアラッチ機構3を車両ドアに取り付ける場合に、容易に、パドル部222をキーロータ32に挿入することができる。
【0135】
この発明は、上述の実施形態及び変形例のみに限定されるものではなく、上述の実施形態及び変形例の組合せも含む。
【符号の説明】
【0136】
1…車両用ドアロック装置
3…ドアラッチ機構
21…ドアハンドルベース
22…シリンダ錠
23…ロッド
25…ドアハンドル
32…キーロータ
33…ドアラッチ解除レバー
33a…ロッド挿入孔
33b…ロッド用ガイド部
221…キーシリンダ
222…パドル部
225…支持部
341b…ガイド部
T1…支持部の中心軸線