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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
B60N2/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017251712
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019116219
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 考司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】古久根 悠人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052308(JP,A)
【文献】特開2017-214058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールと、
前記ロアレールに対して移動可能に取付けられるとともに、シートを支持するアッパレールと、
前記アッパレールに取付けられ、前記ロアレールに係合することによって前記アッパレールの移動を規制するロック部を有したロックバネとを備え、
前記アッパレールは、天壁部と、天壁部の両端部から下方に延びる一対の側壁部とを有し、
前記一対の側壁部には、前記ロック部が係合する被係合部が設けられ、
前記ロックバネは、可撓性を有する線材を折り曲げることにより、細長い環状に構成されており、前記アッパレールの前記被係合部よりも一端側で前記一対の側壁部に接触する第一接触部と、前記アッパレールの前記被係合部よりも他端側で前記一対の側壁部に接触する第二接触部とを有し、前記第一接触部よりも一端側が前記一対の側壁部と離間していることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
前記ロックバネは、前記第一接触部よりも一端側が前記一対の側壁部と離間し、前記第二接触部よりも他端側が前記一対の側壁部と離間している請求項1に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項3】
前記ロックバネの第一接触部と第二接触部は、前記アッパレールの一対の側壁部に点接触している請求項1又は2に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項4】
前記ロックバネの第一接触部及び第二接触部は、前記アッパレールの一対の側壁部を押圧した状態で接触している請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置。
【請求項5】
前記第一接触部は、前記ロックバネの一端よりも、前記ロックバネのロック部側に設けられており、第二接触部は、前記ロックバネの他端よりも、前記ロックバネのロック部側に設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図12に示すように、ロアレール102と、ロアレール102に対して移動可能に取付けられるとともに、シートを支持するアッパレール103とを備える車両用シートスライド装置100について記載されている。また、アッパレール103に取付けられ、ロアレール102に係合することによってアッパレール103の移動を規制するロックバネ104を備えている。アッパレール103内には、アッパレール103の長手方向に沿ってロック解除部材としてのロックレバー105が配置されている。ロックレバー105の一端側には、アッパレール103の長手方向の端部から突出した状態でループハンドル106が取り付けられている。乗員がループハンドル106を引き上げると、ロックレバー105の一端側が上昇するとともに、ロックレバー105の中央側上部を支点としてロックレバー105の他端側が下降する。ロックレバー105の他端側がロックバネ104を押し下げることにより、ロックバネ104とロアレール102の係合状態を解除して、アッパレール103の移動規制を解除している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-24578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等の車両用シートスライド装置100において、ロックバネ104とロアレール102の係合状態をスムーズに解除できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両用シートスライド装置は、ロアレールと、前記ロアレールに対して移動可能に取付けられるとともに、シートを支持するアッパレールと、前記アッパレールに取付けられ、前記ロアレールに係合することによって前記アッパレールの移動を規制するロック部を有したロックバネとを備え、前記アッパレールは、天壁部と、天壁部の両端部から下方に延びる一対の側壁部とを有し、前記一対の側壁部には、前記ロック部が係合する被係合部が設けられ、前記ロックバネは、前記アッパレールの前記被係合部よりも一端側で前記一対の側壁部に接触する第一接触部と、前記アッパレールの前記被係合部よりも他端側で前記一対の側壁部に接触する第二接触部とを有していることを要旨とする。
【0006】
ロックバネは、アッパレールの被係合部よりも一端側で一対の側壁部に接触する第一接触部と、アッパレールの被係合部よりも他端側で一対の側壁部に接触する第二接触部とを有しているため、ロックバネとロアレールの係合状態を解除する際に、ロックバネのがたつきを抑制することができる。より安定した状態でロックバネを撓ませることができるため、アッパレールの移動規制をスムーズに解除することができる。
【0007】
上記車両用シートスライド装置について、前記ロックバネは、前記第一接触部よりも一端側が前記一対の側壁部と離間し、前記第二接触部よりも他端側が前記一対の側壁部と離間していることが好ましい。ロックバネと一対の側壁部とが離間した箇所を有していることにより、ロックバネと一対の側壁部との接触によって生じる抵抗を好適なものとすることができる。
【0008】
上記車両用シートスライド装置について、前記ロックバネの第一接触部と第二接触部は、前記アッパレールの一対の側壁部に点接触していることが好ましい。この構成によれば、ロックバネとアッパレールの一対の側壁部との接触によって生じる抵抗を好適なものにすることが容易になる。
【0009】
上記車両用シートスライド装置について、前記ロックバネの第一接触部及び第二接触部は、前記アッパレールの一対の側壁部を押圧した状態で接触していることが好ましい。この構成によれば、ロックバネとロアレールの係合状態を解除する際に、ロックバネをより安定した状態で撓ませることができる。
【0010】
上記車両用シートスライド装置について、前記第一接触部は、前記ロックバネの一端よりも、前記ロックバネのロック部側に設けられており、第二接触部は、前記ロックバネの他端よりも、前記ロックバネのロック部側に設けられていることが好ましい。この構成によれば、ロックバネが最も撓むロック部により近い位置において、ロックバネと一対の側壁部とが接触した構成となるため、より効果的にロックバネを安定させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用シートスライド装置によれば、アッパレールの移動規制をスムーズに解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シートを搭載した車両用シートスライド装置の側面図。
図2】車両用シートスライド装置の分解斜視図。
図3】車両用シートスライド装置の側面図。
図4】前後方向から見た車両用シートスライド装置の模式図。
図5】(a)は車両用シートスライド装置の底面図、(b)は(a)の部分拡大図。
図6】(a)はロック解除部材の側面図、(b)は(a)のb-b線断面図。
図7】(a)はロック解除部材の側面図、(b)は(a)のb-b線断面図。
図8】補強部材における(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図。
図9】ロック解除部材を取付けた補強部材における(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図。
図10】変更例のロック解除部材の側面図。
図11】変更例のロック解除部材の側面図。
図12】従来技術の車両用シートスライド装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両用シートスライド装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、車両用シートスライド装置10は、シート2を搭載し、車両フロア1に取付けられる。車両用シートスライド装置10は、シート2を車両の前後方向に移動させることができるとともに、シート2を所定位置に固定することができる。
【0014】
図1~3に示すように、車両用シートスライド装置10は、スライドレール20を備える。スライドレール20は、車両フロア1に取付けられるロアレール30と、ロアレール30に対して移動可能に取付けられ、シート2を支持するアッパレール40とを備える。ロアレール30とアッパレール40は、それぞれ一対備えられている。ここで、スライドレール20を車両フロア1に設置した状態において、車両の前後方向に沿う方向を「前後方向DY」といい、車両の幅方向に沿う方向を「幅方向DX」といい、車両の上下方向に沿う方向を「上下方向DZ」という。なお、車両用シートスライド装置10の前後方向DYは、車両用シートスライド装置10のロアレール30及びアッパレール40の「長手方向」と一致する。また、上下方向DZは、前後方向DYと幅方向DXの両方に直交する方向である。
【0015】
スライドレール20の構成について説明する。
図4に示すように、ロアレール30は、車両フロア1に固定される板状の底壁部31を備える。底壁部31の幅方向DXにおける両端部には、上下方向DZに沿って上方に延びる一対の側壁部32が設けられている。一対の側壁部32における底壁部31側とは反対側の端部には、それぞれ幅方向DXにおいて底壁部31の内側に延びる一対の横壁部33が設けられている。一対の横壁部33における側壁部32側とは反対側の端部は、それぞれ上下方向DZに沿って下方に延びる一対の縦壁部34が設けられている。一対の縦壁部34は間隔をおいて設けられ、縦壁部34同士の間に隙間が形成されている。ロアレール30は、底壁部31、一対の側壁部32、一対の横壁部33、及び一対の縦壁部34によって囲まれた内部空間S1を有する。この内部空間S1は、上下方向DZにおいて、縦壁部34間の隙間を介して外部空間と連通している。
【0016】
図2、3に示すように、ロアレール30の縦壁部34には、下端から上下方向DZの上方に延びる第1切欠き35が設けられている。第1切欠き35は、ロアレール30の前後方向DYに沿って等間隔で複数形成されている。この第1切欠き35と、後述するアッパレール40の第2切欠き47との両方にロックバネ50が係合することによって、アッパレール40の移動が規制される。
【0017】
図4に示すように、アッパレール40は、車両フロア1に対して平行に延びる板状の天壁部41を備える。天壁部41の幅方向DXにおける両端部には、上下方向DZに沿って下方に延びる一対の側壁部42が設けられている。一対の側壁部42における天壁部41側とは反対側の端部には、それぞれ幅方向DXにおいて天壁部41の外側に延びる一対の横壁部43が設けられている。一対の横壁部43における側壁部42側とは反対側の端部には、それぞれ上下方向DZに沿って上方に延びる一対の縦壁部44が設けられている。アッパレール40は、天壁部41、及び一対の側壁部42によって囲まれた内部空間S2を有する。
【0018】
図2に示すように、アッパレール40の天壁部41には、後述するロック解除部材80を挿通する挿通孔45と、補強部材90の第3壁部93を挿通する挿通孔48とが形成されている。また、アッパレール40の天壁部41には、ロック解除部材80を操作するワイヤー85を支持するワイヤー支持具49が取付けられている。
【0019】
図2、3に示すように、アッパレール40の長手方向中央における、縦壁部44、横壁部43、及び側壁部42には、下端から上下方向DZの上方に延びる第2切欠き47が設けられている。第2切欠き47は、アッパレール40の前後方向DYに沿って等間隔で4個形成され、一対の側壁部42に対して互いに向かい合う位置に合計で8個形成されている。第2切欠き47の形状、及び、第2切欠き47同士の間隔は、ロアレール30に設けられた第1切欠き35と略等しくなるように設けられている。第2切欠き47は、後述するロックバネ50の湾曲部52が係合する被係合部として機能する。
【0020】
図4に示すように、アッパレール40は、一対の横壁部43がロアレール30の一対の縦壁部34間に形成された隙間を通じてロアレール30の内部空間S1に挿入された状態でロアレール30に摺動可能に取り付けられる。ロアレール30にアッパレール40が取り付けられた状態で、上下方向DZにおいて、アッパレール40の横壁部43と、ロアレール30の横壁部33とが重なる位置に配置されることによって、上下方向DZにおいて、アッパレール40がロアレール30から離脱することが抑制されている。そして、ロアレール30の第1切欠き35と、アッパレール40の第2切欠き47の位置が重なった状態で、両切欠きにロックバネ50が係合することによって、アッパレール40の移動が規制される。
【0021】
図5(a)に示すように、アッパレール40の一対の側壁部42には、それぞれ前後方向DYにおけるアッパレール40の一端側と他端側の2箇所(合計4箇所)に、側壁部42の一部が幅方向DX内側に折り返された爪部46が形成されている。この爪部46上に、ロックバネ50が支持されることにより、ロックバネ50はアッパレール40の内部空間S2に取付けられる。
【0022】
ロックバネ50の構成について説明する。
図2図5(a)に示すように、ロックバネ50は、可撓性を有する線材を折り曲げることにより、細長い環状に構成されている。ロックバネ50は、アッパレール40の内部空間S2に取付けられた状態で、アッパレール40の一対の側壁部42に沿って延びる一対の第1延出部51と、第1延出部51の他端側において幅方向DX外側に湾曲する一対の湾曲部52とを有する。また、湾曲部52の他端側において、アッパレール40の一対の側壁部42に沿って延びる一対の第2延出部53と、第2延出部53同士の他端側を接続する接続部54とを有する。全体として、ロックバネ50の長手方向の略中央部に、湾曲部52が位置するように構成されている。ロックバネ50の湾曲部52は、前後方向DYの異なる2箇所において、幅方向DX外側に突出した形状を有しており、一端側の第1湾曲部52aと、他端側の第2湾曲部52bとで構成されている。
【0023】
ロックバネ50の一対の第1延出部51は、一端側に向かうにつれて互いに接近するように構成される。一対の第1延出部51の一端側の端部は、それぞれ幅方向DX外側に向かって屈曲した屈曲部51aを有している。屈曲部51aは、後述するロックレバー60の凹部61に係合するよう構成されている。屈曲部51a同士の間には隙間が形成されており、ロックバネ50は、屈曲部51a同士の間において開いた環状に構成されている。
【0024】
図5(b)に示すように、一対の第1延出部51は、他端側に向かうにつれて互いに離間するように構成され、湾曲部52との接続箇所付近において、一対の第1延出部51が最も離間した第1離間部51bが形成されている。すなわち、一対の第1延出部51は、第1離間部51bにおいて幅方向DXに最も離間するように構成されている。
【0025】
一対の第2延出部53は、一端側に向かうにつれて互いに離間するように構成され、湾曲部52との接続箇所付近において、一対の第2延出部53が最も離間した第2離間部53aが形成されている。すなわち、一対の第2延出部53は、第2離間部53aにおいて幅方向DXに最も離間するように構成されている。
【0026】
図5(a)、(b)に示すように、アッパレール40の一対の側壁部42に設けられた爪部46に、ロックバネ50の第1延出部51と接続部54が支持された状態で、ロックバネ50はアッパレール40の内部空間S2に取付けられる。ロックバネ50は、長手方向の一端側と他端側とにおける爪部46に支持された箇所の略中間に湾曲部52が位置するように支持される。この状態において、ロックバネ50の第1離間部51bと第2離間部53aとが、アッパレール40の側壁部42を押圧した状態で一対の側壁部42に点接触するように構成されている。すなわち、ロックバネ50の第1離間部51bと第2離間部53aは、第1接触部と第2接触部として機能する。そして、ロックバネ50とアッパレール40の一対の側壁部42とが点接触した箇所は、ロックバネ50の一端と他端よりも、ロックバネ50の湾曲部52側に位置するように構成されている。ロックバネ50の湾曲部52における第1湾曲部52aと第2湾曲部52bが、アッパレール40の第2切欠き47と、ロアレール30の第1切欠き35の両方に係合することによって、アッパレール40の移動が規制される。そのため、ロックバネ50の湾曲部52は、ロック部として機能する。また、爪部46に支持された箇所を支点にしてロックバネ50を撓ませることにより、ロックバネ50の長手方向の中央部側に位置する湾曲部52を、上下方向DZの下方に変位させる(押し下げる)ことができるように構成されている。
【0027】
ロックレバー60の構成について説明する。
図2に示すように、ロックレバー60は、長尺状に構成され、アッパレール40の内部空間S2において、アッパレール40の天壁部41とロックバネ50との間に取り付けられる。ロックレバー60の一端側には、後述するループハンドル70を接続する取付部材71が取り付けられている。すなわち、ループハンドル70は、取付部材71を介してロックレバー60に取り付けられる。ロックレバー60の他端側には、ロックバネ50の湾曲部52を変位させる押し部62が形成されている。ロックレバー60の長手方向中央部の上部には、アッパレール40の天壁部41の内側に当接することによって、ロックレバー60の回転支点となる凸部63が形成されている。ロックレバー60の一端側の下部には、ロックバネ50の屈曲部51aを係合する凹部61が形成されている。
【0028】
ロックレバー60によるロック解除機構について説明する。
ロックレバー60に取付けられたループハンドル70を引き上げると、取付部材71を介してロックレバー60の一端側が上昇する。これに伴い、ロックレバー60の中央側上部を支点としてロックレバー60の他端側が下降し、ロックレバー60の押し部62がロックバネ50の湾曲部52を変位させる。ロックバネ50が撓んだ状態となってロックバネ50の湾曲部52が変位し、ロックバネ50の湾曲部52とアッパレール40の第2切欠き47及びロアレール30の第1切欠き35との係合が解除される。これにより、アッパレール40の移動の規制が解除される。車両の前方側からアッパレール40の移動の規制を解除することができるため、ロックレバー60は、前方側ロック解除部材として機能する。
【0029】
ロック解除部材80の構成について説明する。
図6(a)に示すように、ロック解除部材80は、長板状の第1部材81と、長板状の第2部材82とで構成される。第2部材82は、2枚の板材82aを重ね合わせて形成されている。第1部材81の長手方向における一方の端部には、軸部材83を挿入する軸孔81aと、第2部材82と係合する第1係合部81bが形成されている。第1部材81の第1係合部81bは、第1部材81の長手方向の異なる2箇所において、短手方向に突出した凸部81cで構成されている。この凸部81cは、先端が半円形状に構成され、この2箇所の凸部81cの間に、第2部材82の第2係合部82cが係合するように構成されている。第1部材81の長手方向における他方の端部には、第1部材81を操作するワイヤー85を取付ける貫通孔81dが設けられている。
【0030】
図6(a)に示すように、第2部材82は、略くの字状に構成され、略くの字状の中央部に、軸部材83を挿入する軸孔82bが形成されている。また、第2部材82の長手方向における一方の端部が、第1部材81の第1係合部81bと係合する第2係合部82cとして構成されている。第2部材82の長手方向における他方の端部には、ロックバネ50の湾曲部52を変位させる押し部82dが形成されている。
【0031】
図6(b)に示すように、第2部材82の押し部82dは、第2部材82を構成する2枚の板材82aの長手方向における他方の端部が、厚さ方向(幅方向DX)において互いに離間する方向に折り曲げられて形成されている。
【0032】
図2に示すように、ロック解除部材80は、アッパレール40の内部空間S2に取付けられる補強部材90に取付けられる。
補強部材90の構成について説明する。
【0033】
図2、4に示すように、補強部材90は、長尺状に構成され、アッパレール40の天壁部41及び側壁部42の内側に取付けて用いられる。アッパレール40における第2切欠き47が形成された箇所の天壁部41及び側壁部42の内側に溶接、又は、かしめ接合で取付けられることにより、アッパレール40の第2切欠き47が形成された箇所周辺の強度を補強している。すなわち、補強部材90は、アッパレール40の幅方向において少なくとも第2切欠き47と重なる位置である、第2切欠き47の周辺に設けられている。
【0034】
図8(a)~(d)に示すように、補強部材90は、アッパレール40の天壁部41及び側壁部42の形状に沿うように湾曲した第1壁部91と、第1壁部91の一部が上下方向DZの下方に切り起こされた第2壁部92とを有する。第2壁部92は、幅方向DXにおける第1壁部91の中央部からアッパレール40の下方に延びており、壁面が前後方向DYと上下方向DZとに沿うように切り起こされている。また、補強部材90は、第1壁部91の一部が上下方向DZの上方に切り起こされた第3壁部93を有する。第3壁部93は、壁面が幅方向DXと上下方向DZとに沿うように切り起こされている。第1壁部91には、後述するロック解除部材80の第1部材81が挿通される挿通孔91aが形成されている。第2壁部92には、長手方向の異なる2箇所に貫通孔92aが設けられており、この貫通孔92aにロック解除部材80が取付けられる。第3壁部93には、ロック解除部材80を付勢するバネ材84が取付けられる。
【0035】
ロック解除部材80の組み付け構成について説明する。
図9(a)~(d)に示すように、補強部材90の第2壁部92の貫通孔92aと、ロック解除部材80の第1部材81の軸孔81aとが重なった状態で軸部材83を取付けることによって、第2壁部92にロック解除部材80の第1部材81が回転可能に取付けられる。また、補強部材90の第2壁部92の貫通孔92aと、ロック解除部材80の第2部材82の軸孔82bとが重なった状態で軸部材83を取付けることによって、第2壁部92にロック解除部材80の第2部材82が回転可能に取付けられる。この際、ロック解除部材80の第1部材81と第2部材82とが、第1係合部81bと第2係合部82cとにおいて係合した状態で取付ける。
【0036】
図3図4に示すように、ロック解除部材80が取付けられた補強部材90をアッパレール40の内側に溶接、又は、かしめ接合で取付けることによって、ロック解除部材80はアッパレール40に取付けられる。この状態において、ロック解除部材80の第1部材81は、長手方向における他端側がアッパレール40の天壁部41の挿通孔45から上方に突出した状態となる。また、補強部材90の第3壁部93が、アッパレール40の天壁部41の挿通孔48から上方に突出した状態となる。
【0037】
図3に示すように、ロック解除部材80の第1部材81の長手方向における他端側に、補強部材90の第3壁部93に固定されたバネ材84が取付けられる。このバネ材84によって、ロック解除部材80の第1部材81は、前後方向DYの前方に付勢された状態となる。
【0038】
図6(a)に示すように、ロック解除部材80がアッパレール40に取付けられた状態で、ロック解除部材80の第2部材82は、軸孔82bから長手方向における一方の端部側が前後方向DYに沿って延びる状態となる。また、軸孔82bから長手方向における他方の端部側が、アッパレール40の前後方向DYの前方斜め上方に延びる状態となる。そして、第2部材82の長手方向における他方の端部に設けられた押し部82dが、ロックバネ50の第2湾曲部52bの上部に位置するように構成されている。
【0039】
また、ロック解除部材80が補強部材90に取付けられ、さらに、ロック解除部材80が取付けられた補強部材90が、アッパレール40の内側に取付けられた状態で、ロック解除部材80は、ロックバネ50の一対の第2延出部53の間に挟まれた領域に配置される。すなわち、アッパレール40の長手方向と幅方向の両方向において、ロック解除部材80は、ロックバネ50よりも内側に位置した状態となる。また、ロック解除部材80は、アッパレール40の上下方向において、ロックバネ50を跨ぐように位置した状態となる。すなわち、アッパレール40を幅方向DXから見た際、第1部材81のワイヤー85を取付ける貫通孔81dと、第2部材82の押し部82dとが、共にロックバネ50よりも上下方向DZの上方に位置した状態となる。また、第1部材81の軸孔81aと、第2部材82の軸孔82bとが、共にロックバネ50に重なる位置にあるか、ロックバネ50よりも上下方向DZの下方に位置した状態となる。
【0040】
ロック解除部材80によるロック解除機構について説明する。
図6(a)、(b)に示すように、ロック解除部材80の第1部材81の貫通孔81dに取付けられたワイヤー85を、ワイヤー支持具49に支持された状態で矢印の方向である後方に引っ張ることにより、第1部材81は軸孔81aを中心に図上時計回りに回転する。すなわち、ロック解除部材80の第1部材81は、アッパレール40の長手方向に変位して、前後方向DY後方に移動する。これに伴い、第1部材81の第1係合部81bが、第2部材82の第2係合部82cを押し上げるように移動する。ここで、アッパレール40の長手方向に変位するとは、アッパレール40の長手方向のみに変位することを意味するのではなく、アッパレール40の上下方向DZよりも、前後方向DYに近い方向(例えば、前後方向DYを0°として、±45°の方向)へ変位することを含むものとする。
【0041】
図7(a)、(b)に示すように、ロック解除部材80の第2部材82の第2係合部82cが押し上げられることにより、第2部材82の他方の端部の押し部82dが上下方向DZの下方に変位し、ロックバネ50の第2湾曲部52bを変位させる。ロックバネ50の第2湾曲部52bが変位すると、ロックバネ50が撓んだ状態となって、ロックバネ50の湾曲部52が、アッパレール40の第2切欠き47及びロアレール30の第1切欠き35よりも上下方向DZの下方に変位する状態となる。これにより、ロックバネ50の湾曲部52と、アッパレール40の第2切欠き47及びロアレール30の第1切欠き35との係合が解除されて、アッパレール40の移動の規制が解除される。車両の後方側からアッパレール40の移動の規制を解除することができるため、ロック解除部材80は、後方側ロック解除部材として機能する。
【0042】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)アッパレール40は、天壁部41と、天壁部41の両端部から下方に延びる一対の側壁部42とを有し、一対の側壁部42には、ロックバネ50が係合する第2切欠き47が設けられる。ロックバネ50は、アッパレール40の第2切欠き47よりも一端側で一対の側壁部42に接触する第一接触部と、アッパレール40の第2切欠き47よりも他端側で一対の側壁部42に接触する第二接触部とを有している。
【0043】
ロックバネ50は、第2切欠き47よりも一端側で一対の側壁部42に接触する第一接触部と、第2切欠き47よりも他端側で一対の側壁部42に接触する第二接触部とを有しているため、ロックバネ50とロアレール30の係合状態を解除する際に、ロックバネ50のがたつきを抑制することができる。より安定した状態でロックバネ50を撓ませることができるため、アッパレール40の移動規制をスムーズに解除することができる。
【0044】
(2)ロックバネ50は、第一接触部よりも一端側が一対の側壁部42と離間し、第二接触部よりも他端側が一対の側壁部42と離間している。
ロックバネ50と一対の側壁部42とが離間した箇所を有していることにより、ロックバネ50と一対の側壁部42との接触によって生じる抵抗を好適なものとすることができる。
【0045】
(3)ロックバネ50の第一接触部と第二接触部は、アッパレール40の一対の側壁部42に点接触している。したがって、ロックバネ50とアッパレール40の一対の側壁部42との接触によって生じる抵抗を好適なものにすることが容易になる。
【0046】
(4)ロックバネ50の第一接触部と第二接触部は、アッパレール40の一対の側壁部42を押圧した状態で接触している。したがって、ロックバネ50とロアレール30の係合状態を解除する際に、ロックバネ50をより安定した状態で撓ませることができる。
【0047】
(5)第一接触部は、ロックバネ50の一端よりも、ロックバネ50の湾曲部52側に設けられており、第二接触部は、ロックバネ50の他端よりも、ロックバネ50の湾曲部52側に設けられている。
【0048】
ロックバネ50が最も撓む湾曲部52により近い位置において、ロックバネ50と一対の側壁部42とが接触した構成となるため、より効果的にロックバネ50を安定させることができる。
【0049】
(6)アッパレール40の前方側からループハンドル70を操作して、ロックレバー60を操作することにより、アッパレール40の移動規制を解除することができる。これに加えて、アッパレール40の後方側からロック解除部材80を操作することによっても、アッパレール40の移動規制を解除することができるため、シート2の前方と後方の両側から、アッパレール40の移動規制を効率良く解除することができる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・ロックバネ50は、アッパレール40の一対の側壁部42に線接触していてもよい。また、ロックバネ50とアッパレール40の一対の側壁部42との接触箇所は、一対の側壁部42において同じ位置であってもよいし、互いに異なる位置であってもよい。
【0051】
・ロックバネ50は、アッパレール40の一対の側壁部42を押圧した状態で接触した態様に限定されない。ロックバネ50を安定した状態で撓ませることができれば、ロックバネ50は、アッパレール40の一対の側壁部42を押圧することなく接触した状態であってもよい。
【0052】
・ロックバネ50を安定した状態で撓ませることができれば、第1接触部は、ロックバネ50の一端に設けられていてもよい。また、第二接触部は、ロックバネ50の他端に設けられていてもよい。
【0053】
・ロック解除部材80の第1部材81は、長手方向における他端側がアッパレール40の天壁部41から突出していなくてもよい。すなわち、ロック解除部材80は、全体がアッパレール40の内部に収容されるように構成されていてもよい。例えば、図10に示すように、ロック解除部材80の第1部材81の全体がアッパレール40の内部に収容され、アッパレール40の内部において、後方からワイヤー85で引っ張ることができるように構成されていてもよい。このような構成であっても、ロック解除部材80の第1部材81を、アッパレール40の長手方向に変位させることにより、ロック解除部材80の操作感を向上させることができる。
【0054】
・ロック解除部材80は、第1部材81と第2部材82とで構成された態様に限定されない。ロック解除部材80は、1つの部材で構成されていてもよく、3つ以上の部材で構成されていてもよい。ロック解除部材80が1つの部材で構成されている態様としては、例えば、図11に示すように、ワイヤー85に引っ張られることによって回転し、アッパレール40の長手方向を可動域とする部位と、ロックバネ50の湾曲部52を変位させる部位とが一体となったロック解除部材87を用いてもよい。この構成では、ロック解除部材87の長手方向における他方側をアッパレール40の前後方向DYの前方に引っ張ることにより、ロックバネ50の湾曲部52を変位させてもよい。
【0055】
・ロック解除部材80は、アッパレール40の前方に設けられ、アッパレール40の前方からロック解除部材80を操作するように構成されていてもよい。すなわち、車両用シートスライド装置10がロックレバー60を備えてなく、ロックレバー60の代わりに、ロック解除部材80によってロックを解除するように構成されていてもよい。また、この場合、アッパレール40の前方と後方の2箇所にロック解除部材80を備えていてもよい。
【0056】
・ロック解除部材80は、アッパレール40の長手方向と幅方向の少なくとも一方において、ロックバネ50よりの外側に位置していてもよい。
・ロック解除部材80が、アッパレール40の上下方向において、ロックバネ50を跨ぐように位置した態様において、第1部材81の軸孔81aと、第2部材82の軸孔82bとが、共にロックバネ50よりも上下方向DZの上方に位置していてもよい。
【0057】
・ロック解除部材80は、アッパレール40の上下方向DZにおいて、ロックバネ50を跨っていなくてもよい。すなわち、ロック解除部材80は、アッパレール40の上下方向DZにおいて、ロックバネ50よりも上方に取付けられていてもよい。
【0058】
・ロック解除部材80は、補強部材90以外に取付けられていてもよい。ロック解除部材80は、補強部材90とは別に、アッパレール40の内側に取付けられる部材に取付けられていてもよい。また、ロック解除部材80は、アッパレール40の外側に取付けられる部材に取付けられていてもよい。また、ロック解除部材80は、アッパレール40に直接取付けられる構成であってもよい。
【0059】
・アッパレール40に補強部材90を取付ける方法は、溶接や、かしめ接合に限定されない。補強部材90は、アッパレール40にネジで取付けられていてもよい。
・本実施形態では、ロックバネ50は、屈曲部51a同士の間に隙間が形成され、開いた環状に構成されていたが、この態様に限定されない。屈曲部51a同士が接触し、隙間が形成されないように構成されていてもよい。また、屈曲部51a同士が接続され、ロックバネ50が閉じた環状に構成されていてもよい。
【0060】
・本実施形態では、アッパレール40とロアレール30の長手方向は車両の前後方向DYを向いているが、これに限らず、アッパレール40とロアレール30の長手方向が車両の幅方向DXを向いていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両用シートスライド装置、2…シート、30…ロアレール、40…アッパレール、50…ロックバネ、80…ロック解除部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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