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特許7028669オレフィン系樹脂、その製造方法およびプロピレン系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂、その製造方法およびプロピレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20220222BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20220222BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20220222BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20220222BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08F255/02
C08L51/06
C08L23/10
C08F4/6592
B29C45/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018025988
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019142998
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】柳本 泰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真弓
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513583(JP,A)
【文献】国際公開第2015/147187(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213216(WO,A1)
【文献】特開2017-218517(JP,A)
【文献】特開2017-74775(JP,A)
【文献】特開2016-88101(JP,A)
【文献】特開2017-165928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)~(III)を満たす、オレフィン系樹脂(β)であって、
前記グラフト型重合体[R1]が、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有し、下記要件(iii)および(iv)を満たすグラフト型重合体である、オレフィン系樹脂(β)
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
【請求項2】
前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(i)を満たす、請求項1に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。
【請求項3】
前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)を満たす、請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が合計で0~5mol%の範囲である。
【請求項4】
下記(A)および(B)の工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、重合温度90℃以上の溶液重合プロセスにより共重合する工程
【化1】
[式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、2以上存在するQは相互に同一でも異なってもよい。]
【請求項5】
下記(A)および(B)の工程を含む方法により得られ、下記要件(I)~(III)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合して、下記要件(iii)および(iv)を満たすグラフト型重合体[R1]を生成する工程
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが50~100J/gの範囲にある。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
【請求項6】
前記工程(B)を下記一般式[]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で実施する請求項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
【化2】
[式[I]中、R 1 、R 3 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 およびR 16 はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R 2 は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R 4 は水素原子であり、R 4 を除くR 1 からR 16 までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、2以上存在するQは相互に同一でも異なってもよい。]
【請求項7】
前記工程(A)で製造する不飽和末端ポリプロピレンが、プロピレンから導かれる繰り返し単位を95~100mol%の範囲で有し、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位を合計で0~5mol%の範囲で有する、請求項またはに記載のオレフィン系樹脂(β)。
【請求項8】
前記工程(B)において、不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)とを共重合し、前記4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの合計に対する4-メチル-1-ペンテンの比率が90mol%以上である、請求項のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
【請求項9】
プロピレン系樹脂(α)と、請求項1~のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)と、を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
【請求項10】
前記プロピレン系樹脂(α)50~98質量部および前記オレフィン系樹脂(β)2~50質量部(プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有する請求項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)から得られる成形体。
【請求項12】
請求項9または10に記載のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂、その製造方法およびこれを含むプロピレン系樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体とプロピレン系重合体とを構成要素とするオレフィン系樹脂、その製造方法、それを含むプロピレン系樹脂樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂は、成型加工性、剛性、リサイクル性などに優れていることから、汎用樹脂として幅広い用途に用いられている。一方、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体はポリエチレンやポリプロピレンに比べて、耐熱性、透明性、軽量性、耐スチーム性、離型性、ガス透過性、電気特性など優れた特徴を有しており、食品容器、電子・情報部材用副資材、実験器具、文房具、架橋用工程部材、離型フィルム、電子・情報部材用フィルム、食品包材、合成紙など様々な分野で利用されている。
【0003】
ポリマーアロイ化技術は、異なる樹脂を混合し複合化することによりそれぞれ単独では成しえない性能を発現させるものであり、オレフィン系樹脂においても様々な検討がなされてきた。前述のプロピレン系樹脂と4-メチル-1-ペンテン(共)重合体とを複合化させることができれば有用な材料を提供することが可能になる。しかし、この複合化において、それぞれの樹脂の相溶性がしばしば課題となり、前述のプロピレン系樹脂と4-メチル-1-ペンテン(共)重合体は非相溶の関係にある。一般に相溶性を高める方法の一つとして、それぞれの高分子鎖が化学的に結合しているブロック共重合体を用いることが知られている。
【0004】
異なるポリオレフィン鎖が結合したブロックポリマーの例として、特許文献1には、可逆的連鎖移動剤を用いて、4-メチル-1-ペンテンとエチレンをモノマーとした、組成の異なるブロックを含む直鎖型ブロック共重合体の合成例が開示されている。特許文献2にはプロピレン重合体であるマクロモノマーと、エチレンとブテンとを共重合することによりグラフト型ブロックポリマーを合成する方法が開示されている。しかし、特許文献1および特許文献2においても、プロピレン系重合体と4-メチル-1-ペンテン重合体のブロックポリマーの具体的な合成例は示されておらず、プロピレン系樹脂と4-メチル-1-ペンテン(共)重合体との相溶性を高める十分な技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2007-529615
【文献】WO2015/147187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、プロピレン系樹脂に対して高い相溶性を有し、プロピレン系樹脂に高度に分散できる、4-メチル-1-ペンテン系重合体を構成要素として含む樹脂およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、不飽和末端ポリプロピレン存在下で特定の重合触媒を用いて4-メチル-1-ペンテンを重合することにより、プロピレン系樹脂と相溶化効果の高い、4-メチル-1-ペンテン系重合体を構成要素として含むオレフィン系樹脂が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]に関する。
[1] 4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有すグラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)および(II)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
【0009】
[2] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(i)を満たす、前記[1]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。
[3] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)を満たす、前記[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が合計で0~5mol%の範囲である。
[4] 下記要件(III)を満たす、前記[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
【0010】
[5] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(iii)および(iv)を満たす、前記[1]~[4]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
[6] 下記(A)および(B)の工程を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、重合温度90℃以上の溶液重合プロセスにより共重合する工程
【0011】
【化1】
[式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、2以上存在するQは相互に同一でも異なってもよい。]
[7] 下記(A)および(B)の工程を含む方法により得られ、下記要件(I)および(II)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが50~100J/gの範囲にある。
[8] 前記工程(B)を前記[6]に記載の一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で実施する前記[7]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
[9] 前記工程(A)で製造する不飽和末端ポリプロピレンが、プロピレンから導かれる繰り返し単位を95~100mol%の範囲で有し、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位を合計で0~5mol%の範囲で有する、前記[7]または[8]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
【0012】
[10] 前記工程(B)において、不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)とを共重合し、前記4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの合計に対する4-メチル-1-ペンテンの比率が90mol%以上である、前記[7]~[9]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
[11] プロピレン系樹脂(α)と、前記[1]~[4]、[7]~[10]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)と、を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
[12] 前記プロピレン系樹脂(α)50~98質量部およびオレフィン系樹脂(β)2~50質量部(プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有する前記[11]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[13] 前記[1]~[4]、[7]~[10]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)から得られる成形体。
[14] 前記[11]~[13]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるオレフィン系樹脂は、4-メチル-1-ペンテン系重合体とプロピレン系重合体とが結合したグラフト型重合体を含むことから、プロピレン系樹脂への相溶性が高く、本発明にかかるオレフィン系樹脂とプロピレン系樹脂とを混合することにより、プロピレン系樹脂と、4-メチル-1-ペンテン系重合体を構成要素として含むオレフィン系樹脂とが高度に複合化したプロピレン樹脂組成物を提供することができる。
【0014】
また、本発明にかかるオレフィン系樹脂の製造方法は、好ましくは特定の触媒を用いることでオレフィン重合工程より直接目的のオレフィン系樹脂を製造することが可能であるので、所望の構造の樹脂を安価に製造することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明にかかるプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂に4-メチル-1-ペンテン系重合体の機能が付与されることから、食品容器、電子・情報部材用副資材、フィルム部材などの各種製品に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で得られたオレフィン系樹脂の相構造を示す電子顕微鏡像である。
図2図2は、実施例3で得られたオレフィン系樹脂の相構造を示す電子顕微鏡像である。
図3図3は、実施例3で得られたプロピレン系樹脂組成物の相構造を示す電子顕微鏡像である。
図4図4は、比較例2で得られたプロピレン系樹脂組成物の相構造を示す電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるオレフィン系樹脂[β]、当該樹脂の製造方法、プロピレン系樹脂組成物および成形体について詳説する。
<オレフィン系樹脂(β)>
本発明のオレフィン系樹脂[β]は、オレフィン系重合体一種のみで構成されていてもよいし、二種以上のオレフィン系重合体から構成されていてもよいが、必ず、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有すグラフト型重合体[R1]を含み、さらに下記要件(I)および(II)を満たす。
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
【0018】
まず、グラフト型重合体[R1]について具体的に説明する。
オレフィン系樹脂(β)は、前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]を必須の構成成分として含む。該グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、4-メチル-1-ペンテン系重合体からなる主鎖およびプロピレン重合系体からなる側鎖を有するグラフト共重合体である。
【0019】
なお、本発明において「グラフト共重合体」という用語は、主鎖に対し側鎖が1本以上結合した構造を有するポリマーを意味する。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖にプロピレン系重合体からなる側鎖が化学的に結合した構造であるので、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は、後述するプロピレン系樹脂(α)との相溶性に優れる。すなわち通常プロピレン系樹脂(α)と相溶しない4-メチル-1-ペンテン系重合体が、本発明によれば、プロピレン系樹脂に高い相溶性を示す。
【0020】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、後述する通り、不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンを共重合することにより生成される。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、上述のとおり、主鎖および側鎖を有するグラフト共重合体である。グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖および側鎖は、下記(i)および(ii)の要件を満たすことが好ましく、さらに(iii)の要件を満たすことが好ましく、さらに(iv)の要件を満たすことが好ましい。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位の合計の含有率が0~5mol%の範囲である。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
以下、これらの要件(i)~(iv)について具体的に説明する。
【0021】
〔要件(i)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲であることが好ましい。ただし、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる全繰り返し単位の含有率を100mol%とし、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位と前記α-オレフィンから導かれる繰り返し単位との含有率の合計が100mol%である。
【0022】
ここで、炭素原子数2~20のα-オレフィンは4-メチル-1-ペンテンを除くα-オレフィンであって、具体的な例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等を挙げることができる。より好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの直鎖状オレフィンである。
【0023】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖において、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位は、90~100mol%の範囲が好ましく、92~100mol%の範囲がより好ましく、実質4-メチル-1-ペンテンの単独重合体であってもよい。炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲が好ましく、0~8mol%の範囲がより好ましい。
【0024】
主鎖の構造が上記範囲にあることにより、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する耐熱性、耐スチーム性、離型性、ガス透過性、電気特性などの特性を発現することができる。
【0025】
主鎖中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位と4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の比率は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させる4-メチル-1-ペンテンの濃度と4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
【0026】
なお、主鎖に含まれる4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位と4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の比率、すなわち主鎖中のオレフィン組成は、例えば、後述する末端不飽和ポリプロピレンを含まない条件下で得られる4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィン組成を常法により求めることや、オレフィン系樹脂(β)のα-オレフィン組成から末端不飽和ポリプロピレンや側鎖に由来する影響を差し引くことから求められる。
【0027】
〔要件(ii)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の合計の含有率が0~5mol%の範囲であることが好ましい。ただし、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖に含まれる全繰り返し単位の含有率を100mol%とし、プロピレンから導かれる繰り返し単位と、エチレンから導かれる繰り返し単位および前記α-オレフィンから導かれる繰り返し単位との含有率の合計が100mol%である。
【0028】
ここで、エチレンおよび炭素原子数4~20のα-オレフィンの具体例としては、すでに例示した炭素原子数2~20のα-オレフィンからプロピレンを除いたものが挙げられ、4-メチル-1-ペンテンも加えて挙げられる。
【0029】
プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率は95~100mol%の範囲が好ましく、さらに好ましくは98~100mol%の範囲である。さらにより好ましくはグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン重合体は、実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなるプロピレン重合体である。実質的にプロピレンから導かれる繰り返し単位からなるプロピレン重合体とは、好ましくはプロピレンから導かれる繰り返し単位のモル比が、該プロピレン重合体に含まれる全繰り返し単位に対し99.5~100mol%からなる重合体を示す。
【0030】
側鎖のプロピレンから導かれる繰り返しの含有率、すなわちプロピレン組成が上記範囲にあることにより、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は後述するプロピレン系樹脂(α)との相溶性が優れ、4-メチル-1-ペンテン系重合体をプロピレン系樹脂に良好に分散させることができる。
【0031】
エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の合計の含有率が0~5mol%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0~2mol%の範囲である。
【0032】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造工程(B)において、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンを共重合することにより得ることができる。すなわち、末端不飽和ポリプロピレンのプロピレン組成が、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖のプロピレン組成に相当する。従って工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンのプロピレン組成を公知の方法を用いて算出し、その組成をグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖のプロピレン組成と定義できる。
【0033】
〔要件(iii)〕
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は0.1~10dl/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、0.2~5.0dl/gの範囲である。
【0034】
この主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、主鎖の分子量の指標となり、極限粘度[η]が上記範囲にあることにより通常の混練設備により、オレフィン系樹脂(β)を良好にプロピレン系樹脂と複合化でき、成型性と機械的特性も両立させることができる。
【0035】
この主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、後述する製造工程(B)において、末端不飽和ポリプロピレンを含まないこと以外は同一の条件下実施して得られる4-メチル-1-ペンテン系重合体の極限粘度[η]を常法により算出し、その極限粘度[η]をグラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]と定義できる。
【0036】
〔要件(iv)〕
側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5000~60000、さらに好ましくは10000~25000である。重量平均分子量Mwが上記範囲にあることにより、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)およびプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物は、メチル-1-ペンテン系重合体とプロピレン系重合体との相溶性を良好に発現する。
【0037】
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造工程(B)において、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンを共重合することにより得ることができる。すなわち、末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量Mwが、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量Mwに相当する。従って工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量Mwを公知の方法を用いて算出し、その重量平均分子量Mwをグラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量Mwと定義できる。
次に下記要件(I)および(II)を具体的に説明する。
【0038】
〔要件(I)〕
本発明のオレフィン系樹脂(β)は180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
【0039】
前記溶融ピークは、好ましくは190℃~220℃、より好ましくは190℃~210℃の範囲にあり、該融解ピークにおける融解熱量ΔHは、好ましくは、4~40J/g、より好ましくは5~30J/gの範囲にある。
【0040】
前記溶融ピークは、4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来するものであり、融解ピーク及び該融解ピークにおける融解熱量ΔHが上記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する、耐熱性、耐スチーム性、離型性、ガス透過性、電気特性などの特性を発現することができる。
【0041】
〔要件(II)〕
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
【0042】
前記溶融ピークは、好ましくは120℃~145℃、より好ましくは125℃~140℃の範囲にあり、該融解ピークにおける融解熱量ΔHは、好ましくは、4~40J/g、より好ましくは5~30J/gの範囲にある。
【0043】
前記溶融ピークは、プロピレン系重合体に由来するものであり、融解ピーク及び該融解ピークにおける融解熱量ΔHが上記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)は後述するプロピレン系樹脂(α)との相溶性が良好となり、良好な機械物性を示すことができる。
オレフィン系樹脂(β)は、上記要件(I)~(II)に加え、下記要件(III)~(VI)のうち1つ以上を満たすことが好ましい。
【0044】
〔要件(III)〕
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、0.1~5dl/gの範囲にあり、さらにより好ましくは、0.2~2dl/gの範囲にある。
極限粘度[η]が上記範囲にあることにより、通常の混練設備によりオレフィン系樹脂(β)は、良好にプロピレン系樹脂(α)と複合化でき、成型性と機械的特性も両立することができ、実用上、本要件を満たしていることが特に好ましい。
【0045】
〔要件(IV)〕
前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体の割合(以下、割合Pともいう)が5~90wt%の範囲にある。ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体とは、たとえば、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造法において、重合工程(B)において主鎖に取り込まれ、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖となったプロピレン系重合体と主鎖に取り込まれなかったプロピレン系重合体の総和を示す。
【0046】
割合Pは好ましくは8~70wt%、より好ましくは10~50wt%である。
割合Pが上記範囲にあると、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が高まり、オレフィン系樹脂(β)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体がプロピレン系樹脂に良好に分散したプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。割合Pが5wt%より小さいと、オレフィン系樹脂(β)のプロピレン系樹脂への相溶性が低く、4-メチル-1-ペンテン系重合体が良好に分散しない場合がある。割合Pが90wt%より大きいと、オレフィン系樹脂(β)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体の割合が低く、オレフィン系樹脂(β)をプロピレン系樹脂に配合しても4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する特性を十分発揮できない場合がある。
【0047】
割合Pは、たとえば後述する重合工程(B)に用いる末端不飽和ポリプロピレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から求められる。
また、末端不飽和ポリプロピレンとは、下記末端構造(I)~(IV)で表される不飽和末端をもつポリプロピレンを意味する。末端構造(I)~(IV)における「Poly」は、末端構造と、該末端構造以外のプロピレン重合体分子鎖との結合位置を示す。
【0048】
【化2】
前記末端不飽和ポリプロピレンにおける不飽和末端の割合は1000炭素原子あたり通常0.1~10であるが、より好ましくは0.4~5.0である。さらに、一般的に末端ビニルと呼ばれる末端構造(I)で表される不飽和末端割合は炭素原子1000個あたり、通常0.1~2.0個であるが、好ましくは、0.4~2.0個の範囲にある。
【0049】
前記不飽和末端の定量は、末端不飽和ポリプロピレンの末端構造を1H-NMRで決定することにより求められる。1H-NMRは常法に従って測定すればよい。末端構造の帰属は、Macromolecular Rapid Communications 2000, 1103等に記載の方法に従って行うことができる。
【0050】
例えば、末端構造(I)の場合、δ4.9~5.1(2H)の積分値A、プロピレン重合体に由来する全積分値をBとすると、1000炭素原子あたりの末端構造(I)の割合は1000×(A/2)/(B/2)の式で求められる。他の末端構造の割合を求める場合も、水素の比に注意しながら各構造に帰属されるピークの積分値に置き換えればよい。
【0051】
〔要件(V)〕
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、海相と島相からなる相分離構造を有し、透過型電子顕微鏡において観測される島相の円相当平均径が20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm~20μmの範囲にあり、さらにより好ましくは、1μm~20μmの範囲である。
【0052】
前述の相構造を有しているかどうかの観察は、例えば以下のように行う。
まず、オレフィン系樹脂(β)を混練成形評価装置に投入し、260℃、50rpmで5分間溶融混練する。このオレフィン系樹脂を260℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間余熱後、10MPa加圧下、1分間かけて成形したのち、20℃で10MPaの加圧下で3分間冷却することにより所定の厚み、例えば2mm厚さのプレスシートを作製する。
【0053】
上記のプレスシートを0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)によって染色する。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで前記小片を約100nmの膜厚の超薄切片とする。この超薄切片にカーボンを蒸着させて、透過型電子顕微鏡(加速電圧100kV)で観察する。島相の円相当平均径は、得られた観察像を、市販の画像解析ソフトを用いて、画像処理および画像解析をすることにより得ることができる。
【0054】
このような観察方法によると、主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体成分が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位が、側鎖を構成するプロピレン系重合体が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位よりも、優先的にオスニウム酸に染色にされるため、より高いコントラストとして観察され、4-メチル-1-ペンテン系重合体成分からなる相が島相または海相として確認される。これにより、オレフィン系樹脂(β)における、4-メチル-1-ペンテン系重合体成分とプロピレン系重合体成分との分散状態が観察できる。
【0055】
従って、オレフィン系樹脂(β)が上記のような微細な相分離構造を形成することは、オレフィン系樹脂(β)に、4-メチル-1-ペンテン系重合体成分とプロピレン系重合体成分との間で高い相溶効果が示されるグラフト型オレフィン系重合体[R1]が高含量に含まれていることを示している。このことにより、オレフィン系樹脂(β)はプロピレン系樹脂に良好に相溶し、4-メチル-1-ペンテン系重合体がプロピレン系樹脂に良好に分散したプロピレン系樹脂組成物を与えることができる。
【0056】
〔要件(VI)〕
オレフィン系樹脂(β)は、さらに、着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質を含まないことが好ましい。
【0057】
前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、具体的には、ヘテロ原子含有化合物が挙げられ、前記ヘテロ原子含有化合物としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を含有する化合物;酸原子、硫黄原子などのカルコゲン原子を含有する化合物;窒素原子やリン原子などのプニクトゲン化合物を含有する化合物などが挙げられる。前記酸素原子を含有する化合物としては、具体的には、無水マレイン酸や無水マレイン酸反応物が挙げられる。
【0058】
また、前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、金属原子含有化合物も挙げられ、具体的にはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属含有化合物;マグネシウムやカルシウムのようなアルカリ土類金属含有化合物が挙げられる。
【0059】
オレフィン系樹脂(β)は、前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下である。また、オレフィン系樹脂(β)は、前記金属原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0060】
<オレフィン系樹脂(β)の製造方法>
オレフィン系樹脂(β)は、たとえば下記(A)、(B)の各工程を含む製造方法により製造される。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程
前記製造方法は、後述の工程(C)などを含んでもよい。
以下、(A)、(B)の工程について順に説明する。
【0061】
〔工程(A)〕
工程(A)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を成すプロピレン系重合体の原料となる末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0062】
本工程は、好ましくは、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]の存在下で、プロピレンを重合し末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0063】
前記末端不飽和ポリプロピレンの不飽和末端とは前述の末端構造(I)~(IV)を意味する。前記不飽和末端のうち末端構造(I)の占める割合は通常、30%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましく60%以上である。なお、前述の不飽和末端のうち末端構造(I)の占める割合は、末端不飽和ポリプロピレンに含まれる1000炭素原子あたりに存在する前述の末端構造 (I)~(IV)のそれぞれの個数の和に対する、1000炭素原子あたりに存在する末端構造(I)の個数の比を百分率で表したものである。
【0064】
遷移金属化合物[A]は後述する化合物[C]と組み合わせて末端不飽和ポリプロピレンを製造する重合触媒として機能する。
末端不飽和ポリプロピレンを製造するオレフィン重合用触媒としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025-1032などで古くから知られているが、オレフィン系共重合体[R1]の側鎖としては、アイソタクチック又はシンジオタクチックな末端不飽和ポリプロピレン、より好ましくはアイソタクチックな末端不飽和ポリプロピレンが好適である。
【0065】
このような高立体規則性かつ、末端構造(I)を持つ末端不飽和ポリプロピレン含量の高いポリプロピレンを製造するのに用いられるオレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物[A]としては、特開平6-100579、特表2001-525461、特開2005-336091、特開2009-299046、特開平11-130807、特開2008-285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
【0066】
上記遷移金属化合物[A]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンである。
【0067】
より具体的には、ジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド又はジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジメチルを好適な化合物として用いることができる。
【0068】
工程(A)はプロピレンの他、エチレンおよび炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンを共重合させてもよい。工程(A)で製造する不飽和末端ポリプロピレンは、プロピレンから導かれる繰り返し単位を好ましくは95~100mol%の範囲、より好ましくは98~100mol%の範囲で有し、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位を合計で好ましくは0~5mol%の範囲、より好ましくは0~2mol%の範囲で有する。
【0069】
工程(A)は、気相重合、スラリー重合、バルク重合、溶液(溶解)重合のいずれの方法においても実施可能であり、特に重合形態は限定されない。
工程(A)が、溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0070】
また、工程(A)の重合温度は、通常50℃~200℃、好ましくは80℃~150℃の範囲、より好ましくは、80℃~130℃の範囲であり、重合温度を適切にコントロールすることで、所望の分子量及び立体規則性の末端不飽和ポリプロピレンを得ることが可能となる。
【0071】
工程(A)の重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0072】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間である。
【0073】
工程(A)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5~50wt%であり、好ましくは、10~40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)の負荷及び生産性の観点から、15~50wt%であることが好ましい。
【0074】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量は、5000~100000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5000~60000、さらにより好ましくは10000~25000の範囲である。前記範囲の重量平均分子量を有する末端不飽和ポリプロピレンを用いることにより、後述する工程(B)において、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度を4-メチル-1-ペンテンに対して相対的に高めることができ、不飽和ポリプロピレンの主鎖への導入効率が高くなる。一方、前記重量平均分子量が上記範囲を上回る場合、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度が相対的に低くなり、不飽和ポリプロピレンの主鎖への導入効率が低くなる場合がある。また、前記重量平均分子量が上記範囲を下回る場合、オレフィン系樹脂(β)の機械物性やプロピレン樹脂への相溶性の低下など、実用上の問題が生じる場合がある。
【0075】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~3.0、典型的には1.7~2.5程度である。場合によっては、異なる分子量を有する末端不飽和ポリプロピレンの混合物を用いてもよい。
【0076】
工程(A)において製造される末端不飽和ポリプロピレンの1H-NMRにて測定する不飽和末端の割合は、1000炭素原子あたり通常0.1~10個であるが、より好ましくは0.4~5.0個である。さらに末端構造(I)を持つ不飽和末端の割合、いわゆる末端ビニル量は、炭素原子1000個あたり、通常0.1~2.0個であるが、好ましくは、0.4~2.0個の範囲にある。末端ビニル量が少ない場合、後工程(B)における当該末端不飽和ポリプロピレンの主鎖への導入量が低くなり、グラフト型オレフィンポリマーの生成量が少なくなるため所望の効果が得られない場合がある。
【0077】
1H-NMR測定による不飽和末端の量および各末端構造の割合の算出は、前述したとおり、例えばMacromolecular Rapid Communications 2000, 1103に記載の方法に従って行うことができる。
【0078】
〔工程(B)〕
工程(B)は、 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程であり、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖とプロピレン系重合体から構成される側鎖とを有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を生成する工程であり、本発明の目的を損ねない範囲で、前述の要件(i)に挙げた炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)を共重合してもよい。不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンおよび前記α-オレフィンとを共重合得る場合、4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの合計に対する4-メチル-1-ペンテンの比率は90mol%以上であることが好ましく、92~100mol%であることがより好ましい。
【0079】
工程(B)は、周期表第4族の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程であることが好ましい。
【0080】
前記、周期表第4族の遷移金属化合物は後述する化合物[C]と組み合わせて、工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する重合触媒として機能する。
【0081】
前記周期表第4族の遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物であることが好ましい。なお、シクロペンタジエニル骨格はインデニル骨格やフルオレニル骨格の上位概念として認識される。
【0082】
周期表第4族の遷移金属化合物は下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物[B]であることがより好ましい。
【0083】
【化3】
[式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1~4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、2以上存在するQは相互に同一でも異なってもよい。]
【0084】
一般式[I]において、R1およびR3が水素原子であることが好ましく;R2が炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、シクロペンタジエニル環に結合する炭素が3級炭素である置換基であることが好ましく;R5およびR7が互いに結合して環を形成していることが好ましく;R9、R12、R13およびR16が水素原子であることが好ましく;R10、R11、R14およびR15が炭化水素基であるか、またはR10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0085】
より好ましい架橋メタロセン化合物[B]の例として、国際公開第2014/05817の段落[0080]に例示される遷移金属化合物が挙げられる。
上記、架橋メタロセン化合物[B]を用いることで、後述する溶液重合法において、末端不飽和ポリプロピレンが良好に溶解するような高温の条件下においても、オレフィン重合用触媒として優れた重合活性を示し、生成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は高い立体規則性となる。このため、得られるオレフィン系樹脂(β)は4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する、耐熱性、耐スチーム性、離型性、ガス透過性、電気特性などの特性を良好に発現する。
【0086】
工程(B)は、溶液(溶解)重合において実施可能であり、重合条件については、オレフィン系ポリマーを製造する溶液重合プロセスを用いれば、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0087】
工程(B)では、工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンが溶液状またはスラリー状にて工程(B)における反応器にフィードされる。フィード方法は、特段限定されるものではなく、工程(A)にて得られた重合液を連続的に工程(B)の反応器にフィードしても、工程(A)の重合液を一旦バッファータンクに溜めたのちに、工程(B)にフィードしても良い。
【0088】
工程(B)の重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、工程(B)の重合溶媒は、工程(A)の重合溶媒と同一でも異なっていてもよい。なお、これらのうち、工業的観点からはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素が好ましく、さらにオレフィン系樹脂(β)との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0089】
また、工程(B)の重合温度は、90℃以上が好ましく、90℃~200℃の範囲がより好ましく、さらに好ましくは100℃~200℃の範囲である。このような温度が好ましいのは、上述の重合溶媒として工業的に好ましく用いられるヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素中で、不飽和末端ポリプロピレンが良好に溶解する温度が90℃以上であるためである。より高温であることがポリプロピレン側鎖の導入量を向上させる上で好ましい。さらに生産性向上の観点からもより高温であることが好ましい。
【0090】
工程(B)の重合圧力は、通常常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0091】
工程(B)の反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間~5時間、好ましくは5分間~3時間である。
【0092】
工程(B)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5~50wt%であり、好ましくは、10~40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)負荷及び生産性の観点から、15~35wt%であることが好ましい。
【0093】
得られる共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、後述の化合物[C1]の使用量により調節することもできる。具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001~100NL程度が適当である。
【0094】
[化合物[C]]
本発明で用いられる化合物(C)は、工程(A)におけるジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]および工程(B)における周期表第4族の遷移金属化合物と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、(C-1)有機金属化合物、(C-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C-3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される。このような(C-1)~(C-3)の化合物については、国際公開第2015/147186号に記載された化合物(C-1)~(C-3)をそのまま制限なく使用できる。後述する実施例においては、トリイソブチルアルミニウムとメチルアルミノキサン用いているが、本願発明はこれら化合物に何ら限定されるものではない。
【0095】
〔工程(C)〕
オレフィン系樹脂(β)の製造方法は、工程(A)および(B)に加え、必要に応じて、工程(B)で生成する重合体を回収する工程(C)を含んでも良い。本工程は、工程(A)および(B)において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
【0096】
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(α)と前記オレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする。
【0097】
前述のオレフィン系樹脂(β)は、任意の配合割合にて、プロピレン系樹脂(α)と良好に相容することから、本発明のプロピレン系樹脂組成物におけるプロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との含有割合に特段の制限はないが、プロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、4-メチル-1-ペンテン系重合体の特性を良好に付与する割合として、プロピレン系樹脂(α)は50~98重量部であることが好ましく、より好ましくは60~95重量部、さらに好ましくは65~95重量部であり、オレフィン系樹脂(β)は2~50重量部が好ましく、より好ましくは5~40重量部、さらに好ましくは5~35重量部である。ただし、プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との各重量部の合計は100重量部である。
【0098】
次に、プロピレン系樹脂(α)について以下に説明する。
プロピレン系重合体(α)は、プロピレンの単独重合体であるか、または、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体から構成される。共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても構わない。前述の炭素数4~20のα-オレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等を挙げることができる。この中でも1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンのα-オレフィンを好ましく用いることができる。
【0099】
プロピレン系樹脂(α)は前記重合体のうち単独の重合体から構成されてもよいし、複数の重合体から構成されていてもよい。上記プロピレン樹脂(α)はチーグラーナッタ触媒等で重合される。
【0100】
プロピレン系樹脂(α)は、市販のプロピレン系樹脂の中から、特に制限なく用いることができる。市販のプロピレン系樹脂の例として、いわゆるホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、が挙げられる。
【0101】
以下、プロピレン系樹脂(α)の好ましい態様について説明する。プロピレン系樹脂(α)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)が、0.1~500g/10分、下限値は好ましくは0.2g/10分、より好ましくは0.3g/10分、上限値は好ましくは300g/10分、より好ましくは100g/10分、特に好ましくは50g/10分である。
【0102】
MFRはプロピレン系樹脂(α)の分子量の指標となるが、プロピレン系樹脂(α)は好ましくはさらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリプロピレン換算の重量平均分子量が8万~90万、より好ましくは10万~70万、特に好ましくは15万~70万の範囲にある。
【0103】
プロピレン系樹脂(α)は、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン重合体とは異なる。実質的にプロピレン系樹脂(α)の末端構造は飽和炭化水素であり、具体的には不飽和末端の割合は1000炭素原子あたり通常0.1未満である。
【0104】
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、ゴム、無機充填剤、有機充填剤などを配合することができ、また耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。本発明にかかるプロピレン系樹脂組成物においては、前記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0105】
本発明におけるプロピレン系樹脂組成物の調製方法は、溶融法、溶液法等、特に限定されないが、実用的には溶融混練方法が好ましい。溶融混練方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練方法が適用できる。例えば、粉状または粒状の各成分を、必要であれば付加的成分の項に記載の添加物等と共に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等により均一に混合した後、一軸または多軸混練押出機、混練ロール、バッチ混練機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練することにより調製することができる。
【0106】
各成分の溶融混練温度(例えば、押出機ならシリンダー温度)は、通常220~300℃、好ましくは240~280℃である。さらに各成分の混練順序および方法は、特に限定されるものではない。
【0107】
<成形体>
前記プロピレン系樹脂組成物は、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができ、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。
【実施例
【0108】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
以下の実施例において、オレフィン系樹脂(β)、末端不飽和ポリプロピレン、プロピレン系樹脂組成物の物性は、下記の方法によって測定した。
(1)融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定
融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
【0109】
示差走査熱量計〔SII社 RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、その温度で5分間保持した。さらに降温速度10℃/分で-20℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは前記融解解ピークの面積を算出して求めた。
【0110】
(2)1H-NMR測定
末端不飽和ポリプロピレンの末端構造の分析のため、次の条件で1H-NMR測定を実施した。
装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置、測定核:13H(400MHz)、測定モード:シングルパルス、パルス幅:45°(5.25μ秒)、ポイント数:32k、測定範囲:20ppm(-4~16ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:64回、測定溶媒:1,1,2,2,-テトラクロロエタン-d2、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)、ケミカルシフト基準:1,1,2,2,-テトラクロロエタン(5.91ppm)。
【0111】
(3)GPC測定
ポリマーの分子量分析のために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:TSKgel GMH6-HTx2 TSKgel GMH6-HTLx2(いずれも東ソー社製、内径7.5mmx長さ30cm)、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)、検出器:示差屈折計、流量:1.0mL/分、試料濃度:0.15%(w/v)、注入量:0.5mL、サンプリング時間間隔:1秒、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
末端不飽和ポリプロピレンについては、得られたポリスチレン換算分子量をポリプロピレンに換算して分子量を求めた。
【0112】
(4)透過型電子顕微鏡観察
オレフィン系樹脂の相構造の観察は透過型電子顕微鏡を用いて以下の通り実施した。
オレフィン系樹脂40gと耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部を投入し、260℃、50rpmで5分間溶融混練し、プレス加工により2mm厚さのシート状に成形した。得られた成形体を、0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)によって染色した。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とした。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(日立製作所製H-7650)を用いて相構造を観察した。得られた観察像を、画像解析ソフト「macview」を用いて、画像処理および画像解析を行い、島相の平均円相当径を得た。
【0113】
プロピレン系樹脂組成物の相構造の観察は、オレフィン系樹脂に替えてプロピレン系樹脂組成物を用いたこと以外は上記同様、プレス加工によりシート状に成形した成形体から超薄切片を作成して行った。
【0114】
(使用試薬)
トルエンは、GlassContour社製有機溶媒精製装置を用いて市販の試薬を精製して用いた。アルミノキサンのトルエン溶液は、日本アルキルアルミ社製のメチルアルミノキサンの20wt%トルエン溶液を用い、必要に応じて揮発物質を取り除いた後、トルエンに再度溶解させて調製したもの(DMAOとも記す)を用いた。アルミノキサンのヘキサン溶液は、東ソー・ファインケム(株)製のメチルアルミノキサンのヘキサン溶液(TMAOとも記す)を用いた。
【0115】
[実施例1]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M-1)の製造
触媒として使用したジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドは特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
【0116】
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、トルエン1.5Lを入れたのち、85℃に昇温した。そこに600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレンを240リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きプロピレンを連続的に供給した状態で、DMAOを5.0mL(7.5mmol)、ついでジメチルシリルビス(2-メチル-4-フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0020mol/L)を6.0mL(0.012mmol)加え、常圧下、85℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む5Lのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン重合体(末端不飽和ポリプロピレン(M-1))63.4gを得た。得られた重合体を分析した結果、末端不飽和量は0.88個/1000C、末端ビニル量は0.69個/1000C、重量平均分子量は22000g/molであった。
工程(B):オレフィン系樹脂(β-1)の製造
触媒として使用した下記式(1)で示される化合物(1)は公知の方法によって合成した。
【0117】
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、末端不飽和ポリプロピレン(M-1)40.0gを装入し、さらに30分間窒素流通させたのち、トルエン370ml、1-デセン5ml、4-メチル-1-ペンテン125ml、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のヘキサン溶液(0.5mol/L)2.0mL(1.00mmol)を装入し装入口を閉じた。次に600rpmでオートクレーブ内部を撹拌しながら98℃まで昇温し1時間保持した。その後、オートクレーブ内部の温度を85℃とし、そこにTMAOと化合物(1)をヘプタン中で混合した溶液(化合物(1)の濃度1.0mmol/L, 化合物(1)に対しメチルアルミノキサンをAl原子換算で300当量添加)を11.7mL圧入し重合を開始した。85℃で30分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含むオレフィン樹脂(β-1)86.0gを得た。得られた樹脂の分析結果を表1に示す。また、オレフィン樹脂(β-1)を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図1に示す。
【0118】
図1および後述する図2の電子顕微鏡像において、相対的に淡い色に表示される部分が島相であり、濃い色に表示される部分が海相である。
なお、上記重合において末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を装入しない以外は同様実施して得たオレフィン樹脂(β'-1)により、オレフィン樹脂(β-1)の4-メチル-1-ペンテン系重合体の構造解析を行った。
【0119】
【化4】
【0120】
[実施例2]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M-1)の製造
実施例1の工程(A)と同様に末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を製造した。
工程(B):オレフィン系樹脂(β-2)の製造
触媒として使用した上記式(1)で示される化合物(1)は公知の方法によって合成した。
【0121】
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、末端不飽和ポリプロピレン(M-1)20.0gを装入し、さらに30分間窒素流通させたのち、トルエン240ml、1-デセン10ml、4-メチル-1-ペンテン250ml、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のヘキサン溶液(0.5mol/L)2.0mL(1.00mmol)を装入し装入口を閉じた。次に600rpmでオートクレーブ内部を撹拌しながら98℃まで昇温し1時間保持した。その後、オートクレーブ内部の温度を85℃とし、そこにメチルアルミノキサン(TMAOとも記す)を添加した化合物(1)のヘプタン溶液(1.0mmol/L, 化合物1に対しTMAOをAl原子換算で300等量添加)を23.4mL圧入し重合を開始した。85℃で30分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含むオレフィン樹脂(β-2)108.8gを得た。得られた樹脂の分析結果を表1に示す。
【0122】
なお、上記重合において末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を装入しない以外は同様実施して得たオレフィン樹脂(β'-2)により、オレフィン樹脂(β-2)の4-メチル-1-ペンテン系重合体の構造解析を行った。
【0123】
[比較例1]
実施例1において、末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を装入しない以外は同様に実施して得たオレフィン樹脂(β'-1)46.0gと、実施例1と同様にして得た末端不飽和ポリプロピレン(M-1)40.0gとを0.5Lのトルエンに投入し、窒素雰囲気下、攪拌しながら95℃で30分間保持し、オレフィン樹脂(β'-1)と末端不飽和ポリプロピレン(M-1)とを完全に溶解させた。得られた溶液を1.5リットルのメタノールに加え、析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含まないオレフィン樹脂(β"-1 )86.0gを得た。得られた樹脂の分析結果を表1に示す。また、オレフィン樹脂(β"-1 )を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図2に示す。
【0124】
【表1】
表1中、n.d.はデータなし(未測定)を意味する。
【0125】
[実施例3]
プロピレン系樹脂組成物の製造
東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度260℃で、実施例1で得たオレフィン系樹脂(β-1)12gとプロピレン系樹脂(プライムポリマー製 F113G、MFR(230℃、2.16kg荷重)3g/10min)28gと、樹脂総量に対し耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、および耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部とを投入し、50rpmで5分間溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物を得た。このプロピレン系樹脂組成物を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図3に示す。
図3および後述する図4の電子顕微鏡像において、相対的に濃い色に表示される部分が島相であり、淡い色に表示される部分が海相である。
【0126】
[比較例2]
プロピレン系樹脂組成物の製造
東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度260℃で、比較例1で得たオレフィン系樹脂(β"-1)12gとプロピレン系樹脂28g(プライムポリマー製 F113G、MFR(230℃、2.16kg荷重)3g/10min)と、樹脂総量に対し耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、および耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部とを投入し、50rpmで5分間溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物を得た。このプロピレン系樹脂組成物を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図4に示す。
【0127】
[プロピレン系樹脂組成物のモルフォロジーの比較]
図3および図4に示す通り、実施例3のように、末端不飽和ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンを共重合する工程を経ることで得られたグラフト型オレフィン重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)を用いた場合は、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含まないオレフィン系樹脂を用いた比較例2に比べ、得られた相構造において、4-メチル-1-ペンテン系重合体成分である島相がプロピレン系樹脂である海相中に微細化しており、4-メチル-1-ペンテン系重合体がプロピレン系樹脂に良好に分散していることがわかる。
【0128】
以上の結果より、本発明にかかるオレフィン系樹脂は、プロピレン系樹脂への相溶性が高く、前記オレフィン系樹脂とプロピレン系樹脂とを混合することにより、プロピレン系樹脂と4-メチル-1-ペンテン系重合体を構成要素として含むオレフィン系樹脂とが高度に複合化したプロピレン樹脂組成物を得ることができることがわかる。
図1
図2
図3
図4