(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H02M3/28 W
(21)【出願番号】P 2018027550
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】佐生 浩士
(72)【発明者】
【氏名】森本 猛
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-033967(JP,A)
【文献】特開2006-116556(JP,A)
【文献】特開平05-111766(JP,A)
【文献】特開2001-268787(JP,A)
【文献】実開平07-036553(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのメインインバータと、これら2つの
メインインバータを制御する
メイン制御手段とを、有し、前記2つの
メインインバータの出力を直流化したものを合成して
、メイン負荷に出力するメインユニット
と、
2つのサブインバータと、これら2つのサブインバータを制御するサブ制御手段とを、有し、前記2つのサブインバータの出力を直流化したものを合成して、前記メイン負荷と異なるサブ負荷に出力するサブユニットと、
前記2つのメインインバータ及び前記2つのサブインインバータの入力側を、直列及び並列のうち選択されたものに接続する切換手段と、
前記2つの
メインインバータの入力側で前記2つのメインインバータの入力電圧の不平衡の状態を検出し、その検出結果に応じて不平衡の状態を解除するように、前記メイン制御手段が
前記2つのメインインバータを、前記サブ制御手段が
前記2つのサブインバータを、制御するように、前記検出結果を
前記メイン制御手段及び前記サブ制御手段にそれぞれ供給する不平衡検出手段とを、
有し、前記メインユニットへの入力電流が、前記サブユニットへの入力電流よりも大きい
電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置において、前記切換手段は、前記メインユニット及びサブユニットに共通して設けられている電源装置。
【請求項3】
請求項1記載の電源装置において、前記メインユニットへの入力電流が、前記サブユニットへの入力電流の5倍以上である電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に、異なる値の2種類の供給電圧のうち選択された供給電圧に応じて動作するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような電源装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術によれば、例えば200Vと400Vの商用交流電圧のうち選択されたものが電源装置に供給される。この電源装置は、2台のインバータを備えており、電圧の値が大きい400Vが供給された場合には、400Vを直流化した電圧が、直列に接続された上記2台のインバータに供給され、電圧の値が小さい200Vが供給された場合には、200Vを直流化した電圧が、並列に接続された上記2台のインバータに供給される。即ち、供給電圧の大きさに応じて、2台のインバータが直列及び並列の一方に切換接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電源装置は、例えばプラズマ溶接機やプラズマ切断機用電源装置に使用されることがある。プラズマ溶接機やプラズマ切断機用電源装置には、負荷に電力を供給するためのメインユニットの他に、パイロットアークを発生させるためのサブユニットを備えたものがある。このような2つのユニットを備えた電源装置に特許文献1の技術を適用した場合、各ユニットは、それぞれ2台のインバータを備えることになる。
【0005】
メインユニット及びサブユニットにおいて、2台のインバータを直列に接続した場合、例えばインバータの駆動回路の特性差、負荷の変動等により2台のインバータの電力消費に差が生じ、インバータが分担する電圧の不平衡が発生する。メインユニット及びサブユニットそれぞれにおいて、負担電圧の不平衡を不平衡検出手段によって検出し、メインユニット及びサブユニットにおいて、不平衡を補償するように2台のインバータを制御することが考えられる。
【0006】
しかし、メインユニット及びサブユニットそれぞれに不平衡検出手段を設けると、回路構成が複雑になる上に、部品点数が増加し、コストも増加する。
【0007】
本発明は、メイン及びサブユニットそれぞれが2台のインバータを直列または並列に切換接続される電源装置において、簡単な回路構成とすることにより部品点数を減少させて、安価に、両ユニットのインバータの直列接続時の負担電圧の不平衡を解消できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電源装置は、例えばプラズマ切断機や溶接機用の電源装置として使用することができるもので、メインユニットと、サブユニットを有している。メインユニットは、2つのメインインバータと、これら2つのメインインバータを制御するメイン制御手段とを、有し、2つのメインインバータの出力を直流化したものを合成して、メイン負荷に出力する。サブユニットは、2つのサブインバータと、これら2つのサブインバータを制御するサブ制御手段とを、有し、2つのサブインバータの出力を直流化したものを合成して、メイン負荷と異なるサブ負荷に出力する。前記2つのメインインバータ及び前記2つのサブインバータの入力側を直列及び並列のうち選択されたものに切換手段が接続する。メインユニット及びサブユニットに供給される電圧が、例えば第1及び第2の電圧の2種類のうち選択されたもので、第1の電圧が第2の電圧よりも大きいとすると、大きい第1の電圧が供給されているとき、両ユニットいずれでも2つのインバータは直列に接続され、小さい第2の電圧が供給されているとき、両ユニットいずれでも2つのインバータは並列に接続される。例えば、両ユニットにおいて2つのインバータが直列に接続されている状態で、前記2つのメインインバータの入力側で2つのメインインバータの入力電圧の不平衡の状態を検出し、その検出結果に応じて不平衡の状態を解除するように、前記メイン制御手段が、前記2つのメインインバータを、前記サブ制御手段が、前記2つのサブインバータを、制御するように、不平衡検出手段が、前記検出結果を前記メイン制御手段及びサブ制御手段に供給する。更に、前記メインユニットへの入力電流が、前記サブユニットへの入力電流よりも大きい。
【0009】
このように構成された電源装置では、メインユニットにおいて、2つのメインインバータの入力電圧の不平衡の状態が不平衡検出手段によって検出され、その検出結果がメイン制御手段及びサブ制御手段に供給され、メイン制御手段が、メインユニットの2つのメインインバータを制御し、かつサブ制御手段が、サブユニットの2つのサブインバータを、制御する。サブユニットの入力電流がメインユニットの入力電流よりも小さいので、メインユニットの不平衡の検出結果に応じて、サブユニットの2つのサブインバータを制御しても、充分にサブユニットでの不平衡を補償することができる。従って、使用する不平衡検出手段は、メインユニット用の1台だけであり、回路構成を簡略化することができ、部品点数を減少させて、安価に不平衡を解消できる。なお、前記メインユニットへの入力電流を、前記サブユニットへの入力電流の5倍以上とすると、高精度にサブニットの2つのインバータの不平衡も補償することができる。
【0010】
上記の態様において、前記切換手段を、前記メインユニット及びサブユニットに共通して設けることもできる。この切換手段は、供給電圧の変化を検出して自動的に切り換えるものとすることもできるし、作業員が手動によって切り換えるように構成することもできる。このように切換手段を構成すると、両ユニットに対して切換手段を共通に設けているので、回路構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、使用する不平衡検出手段を、メインユニット用の1台だけとすることができ、その結果、回路構成を簡略化することができ、部品点数を減少させて、安価に不平衡を解消できる電源装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一態様の電源装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の電源装置は、例えばプラズマ溶接機または切断機用の電源装置であって、例えばプラズマ負荷に電力を供給するためのメインユニット2と、例えばプラズマアークの発生用のサブユニット4とを有するものである。また、この電源装置では、値の異なる2種類の電圧、例えば電圧が100Vと200Vとのいずれの商用交流電源であっても動作可能にメインユニット2とサブユニット4とが構成されている。
【0014】
メインユニット2は、2台のインバータ6m、8mを有し、これらに供給された直流電圧を交流電圧に変換して出力する。これらインバータ6m、8mは同一の出力容量を有するものである。これらインバータ6m、8mの出力は、整流手段、例えば整流回路10m、12mによってそれぞれ直流化された後、1つに合成されて、出力端子14mから出力される。上述したように100Vと200Vとのいずれの商用交流電源であっても動作可能とするために、インバータ6m、8mの入力側は、後述するように100Vの商用交流電源の電圧を直流化した電圧が供給されるときには、並列に接続され、200Vの商用交流電源の電圧を直流化した電圧が供給されるときには、直列に接続される。
【0015】
サブユニット4も、メインユニット2と同様にインバータ6s、8s、整流回路10s、12s、出力端子14sを有している。但し、インバータ6s、8sは、プラズマアークの発生用であるので、同一性能であるが、インバータ6m、8mと比較して出力容量が小さく、インバータ6s、8sに入力される電流の値も、インバータ6m、8mに入力さえる電流よりも小さく、例えば最大で1/5以下である。
【0016】
この電源装置では、100Vまたは200Vの商用交流電源16の電圧を整流回路18で整流して、メインユニット2、サブユニット4のインバータ6m、8m、6s、8sに供給する。そのために、整流回路18の出力側とインバータ6m、8m、6s、8sの入力側との間に、切換手段、例えば切換スイッチ20が設けられている。切換スイッチ20は、整流回路18の2つの出力側に接続された接点20a、20bを有し、接点20a、20bの間に2つの接点20c、20dが設けられている。接点20a、20cは破線で示す接触子20eによって接続される。このとき、同時に破線で示す接触子20fによっても接点20b、20dが接続されるが、接点20c、20d間は接続されない。或いは、接点20c、20dは実線で示す接触子20gによって接続されるが、このとき接触子20e、20fによる接続は行わず、接点20a、20c間、接点20b、20d間はいずれも接続されない。
【0017】
メインユニット2関連では、インバータ6mの一方の入力側が接点20aに接続され、インバータ6mの他方の入力側は接点20dに接続されている。インバータ8mの一方の入力側が接点20cに接続され、他方の入力側が接点20bに接続されている。従って、接触子20eによって接点20a、20cを接続し、接触子20fによって接点20b、20dを接続した状態では、インバータ6m、8mの入力側が並列に接続されて、整流回路18の2つの出力側に接続される。また、接触子20gで接点20c、20dを接続すると、インバータ6m、8mの入力側が直列に接続されて、整流回路18の2つの出力側に接続される。
【0018】
サブユニット4関連でも、インバータ6sの一方の入力側が接点20aに接続され、他方の入力側が接点20dに接続されている。同様に、インバータ8sの一方の入力側も接点20cに接続され、他方の入力側も接点20bに接続されている。従って、接触子20eによって接点20a、20cを接続し、接触子20fによって接点20b、20dを接続した状態では、インバータ6s、8sの入力側も並列に接続されて、整流回路18の2つの出力側に接続される。また、接触子20gで接点20c、20dを接続すると、インバータ6m、8mの入力側も直列に接続されて、整流回路18の2つの出力側に接続される。
【0019】
このように切換スイッチ20は、メインユニット2及びサブユニット4の両方に対して共通に設けられており、100Vの商用電源が使用される場合には、接触子20e、20fを使用して、メインユニット2のインバータ6m、8mの入力側を並列に接続して、整流回路18の2つの出力側に接続すると共に、サブユニット4のインバータ6s、8sの入力側を並列に接続して、整流回路18の2つの出力側に接続する。200Vの商用電源が使用される場合には、接触子20gを使用して、メインユニット2のインバータ6m、8mの入力側を直列に接続して、整流回路18の2つの出力側に接続すると共に、サブユニット4のインバータ6s、8sの入力側を直列に接続して、整流回路18の2つの出力側に接続する。
【0020】
インバータ6m、8m、6s、8sの2つの入力側間には、整流回路18の出力を平滑化してインバータ6m、8m、6s、8sに供給するための平滑コンデンサ22m、24m、22s、24sが接続されている。
【0021】
メインユニット2のインバータ6m、8mは、制御手段、例えばPWM制御回路26mによって、例えばインバータ6m、8mから出力される電流が予め定めた値になるように制御されている。サブユニット4のインバータ6s、8sも、制御手段、例えばPWM制御回路26sによって、同様に制御されている。
【0022】
ところで、メインユニット2のインバータ6m、8mが直列に接続されている時及びサブユニット4のインバータ6s、8sが直列に接続されている時、インバータ6m、8mの特性差,負荷の短絡や変動等によりインバータ6m、8mの電力消費に差が生じたり、コンデンサ22m、24mの経時劣化等に伴う特性差が生じたりしてインバータ6m、8mが分担する電圧の不平衡が発生することがある。そこで、インバータ6m、8mの入力電圧、即ちコンデンサ22m、24の電圧が不平衡であるか、不平衡であればどの程度不平衡であるかを不平衡検出回路28が検出し、その検出結果がPWM制御回路26mに供給され、PWM制御回路26mは、不平衡を解消するようにインバータ6m、8mを制御する。
【0023】
従来であれば、サブユニット4のインバータ6s、8sでも不平衡を解消するために、インバータ6s、8sに対しても、不平衡検出回路28と同様な不平衡検出回路を設け、その検出結果をPWM制御回路26sに供給する。しかし、そうすると、この電源装置は、回路構成が複雑になり、部品点数も増加し、高コストとなる。そこで、この実施形態では、メインユニット2のインバータ6m、8mでの不平衡状態を検出している不平衡検出回路28の検出結果をサブユニット4のPWM制御回路26sに供給して、サブユニット4のインバータ6s、8sを制御している。サブユニット4は、プラズマアーク発生用のものであり、その出力も、メインユニット2と比較して小さいので、メインユニット2での不平衡検出結果に従ってサブユニット4のインバータ6s、8sを制御しても、充分に不平衡を補償することができる。従って、サブユニット4のインバータ6s、8sに対して不平衡検出回路が不要であり、この電源装置の回路構成を簡略化することができる上に、部品点数の削減が行え、低コストとすることできる。
【0024】
なお、図示を省略したが、整流回路18の出力は直流電源30にも供給され、この直流電源30からPWM制御回路26m、26sに動作電力が供給されている。
【0025】
上記の実施形態では、商用交流電源16は、出力電圧が100V及び200Vのいずれかとしたが、一方の出力電圧が他方の出力電圧のほぼ2倍である他の2種類の出力電圧、例えば200Vと400Vを出力する商用交流電源とすることもできる。上記の実施形態では、切換スイッチ20はメインユニット2とサブユニットとに共通のものを示したが、メインユニット用の切換スイッチと、サブユニット用の切換スイッチとを個別に設けることもできるが、本実施形態のように切換スイッチ20を共通にすることで、メインユニット2或いはサブユニット4のいずれか一方の、直列又は並列への切換をわすれることを防止でき、両方のユニットを供給電圧に応じた正しい接続状態に確実に切り換えることができる。さらに、切換スイッチ20には手動のものを示したが、これに限らず、商用交流電源の電圧を検出し、その検出結果に応じて自動的に切り換えるものとすることもできる。例えば商用交流電源16の出力電圧を検出し、100Vが検出されるとメインユニット2及びサブユニット4それぞれにおいて2台のインバータを並列に自動的に接続し、200Vが検出されると、メインユニット2及びサブユニット4それぞれにおいて2台のインバータを直列に自動的に接続するように構成することもできる。上記の実施形態では、本発明をプラズマ溶接機またはプラズマ切断機用の電源装置に実施したが、同じ構成の他の用途の電源装置に実施することもできる。
【符号の説明】
【0026】
2 メインユニット
4 サブユニット
6m 8m メインユニット用インバータ
6s 8s サブユニット用インバータ
20 切換スイッチ(切換手段)
26m メインユニット用PWM制御回路(制御手段)
26s サブユニット用PWM制御回路(制御手段)
28 不平衡検出回路(不平衡検出手段)