(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】金属空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
H01M12/06 A
H01M12/06 J
(21)【出願番号】P 2018078959
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴治
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138637(JP,A)
【文献】特開2017-010828(JP,A)
【文献】特開2002-321307(JP,A)
【文献】特開2000-128155(JP,A)
【文献】特開2004-026285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と金属極と前記空気極及び前記金属極を支持する筐体とを有する金属空気電池本体と、
開口部を備え内側にAlを貼合した紙パックと、を具備し、
前記金属空気電池本体は、
前記開口部を通して前記紙パック内に収納されていることを特徴とする金属空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電池では、正極である空気極において、大気中の酸素を正極活物質として利用し、当該酸素の酸化還元反応が行われる。一方、負極である金属極において、金属の酸化還元反応が行われる。金属空気電池のエネルギー密度は高く、災害時等における非常用電源等の役割として期待されている。電解液を金属空気電池に給水する事で発電が開始される。
【0003】
従来においては、様々な金属空気電池の構造が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
特許文献1によれば、金属極と空気極とを筐体内に組み込んだセルに電解液を注入し、発電させている。
【0005】
特許文献2によれば、金属極と空気極とを筐体内に組み込んだセルとは別に、電解液を入れた容器を用意し、セルを容器内に入れることで、電解液をセル内に流入させ発電させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-131063号公報
【文献】特開2016-71986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来においては、販売時に、金属空気電池を梱包する等していたが、梱包材を用いると、使用時の開梱に手間が生じる問題があった。また、酸化等による劣化を抑制すべく優れた長期保管性を有することが必要とされる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、長期保管性に優れる金属空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の金属空気電池は、空気極と金属極と前記空気極及び前記金属極を支持する筐体とを有する金属空気電池本体と、開口部を備え内側にAlを貼合した紙パックと、を具備し、前記金属空気電池本体は、前記開口部を通して前記紙パック内に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属空気電池によれば、簡単な構造で、長期保管性に優れる。したがって、使用時には、金属空気電池を簡単に取り出すことができ、また、保管時には、酸化等による劣化を長期間防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
図1に示すように、金属空気電池1は、金属空気電池本体2と、紙パック3と、を具備して構成される。
【0014】
本実施形態における紙パック3は、紙素材の内側全体にAlを貼合したバリア性素材である。
【0015】
図1に示すように、紙パック3内に、金属空気電池本体2が収納されている。
図1に示すように、金属空気電池本体2が紙パック3内に収納された状態で、紙パック3の開口部3aがシールされている。これにより、金属空気電池本体2の周囲全体を、Alが貼合されたバリア性素材で囲むことができる。このため、金属空気電池本体2を、酸化や水蒸気等から適切に保護することができる。以上により、簡単な構造で、長期保管が可能である。また、紙パックでは、紙材の内面にAlを貼合した構造であるため、素材単価を低減できコスト面でも優れる。また、使用する際には、紙パック3の開口部3aを空けて、中から金属空気電池本体2を取り出せばよいので、従来のように、開梱に手間がかかる等の不具合は生じない。
【0016】
紙パック3から金属空気電池本体2を取り出し、紙パック3内に電解液としての食塩水を所定量だけ給水する。そして、金属空気電池本体2を再び紙パック3内に挿入した状態が、
図2に示されている。
【0017】
図2に示すように、金属空気電池本体2は、例えば、複数の金属空気電池セル22を備えて構成される。
図3では、金属空気電池セル22の数は、3つであるが、金属空気電池セル22の数を限定するものでなく、1つであっても、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0018】
図2に示すように、各金属空気電池セル22には、空気室10と液室11とが設けられる。空気室10は、例えば、上部を除いて周囲が囲まれている。一方、液室11は、給水口13を除いて周囲が囲まれている。給水口13は、
図2に示すように、液室11の下部に設けられている。
図2に示すように、空気室10と液室11とは隔離されており、液室11に注入された電解液が、空気室10に漏れ出ることがない。
【0019】
図2に示すように、各金属空気電池セル22は、電極として、空気極6と、金属極7とを、有して構成される。空気極6及び金属極7は、夫々、金属空気電池セル22を構成する筐体に支持されている。
図2に示すように、空気極6と金属極7とは、液室11にて対向配置されている。空気極6の一方の面は、液室11に露出し、空気極6の他方の面は、空気室10に露出している。
【0020】
図2に示すように、金属極7は、空気極6から液室11内に所定距離だけ離れた位置に配置されている。金属極7は、その上部が固定されるが、下部は、自由端(非固定)とされている。
【0021】
本実施形態では、金属空気電池本体2を、紙パック3から取り出した後、紙パック3内に電解液5を供給する。そして、金属空気電池本体2を、紙パック3内に、再び挿入する。
【0022】
図2に示すように、電解液5は、各金属空気電池セル22の給水口13から各液室11内に導かれる。電解液5は、給水口13を介して各液室11内に同時に注入される。このとき、
図2に示すように、電解液5は、空気室10に流れ込むことがない。
【0023】
図2に示すように、電解液5が液室11に供給されると、例えば、金属極7がマグネシウムであるとき、金属極7の近傍においては、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、空気極6においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。マグネシウム空気電池全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
(1)2Mg →2Mg
2++4e
-
(2)O
2+2H
2O+4e
- →4OH
-
(3)2Mg+O
2+2H
2O →2Mg(OH)
2
【0024】
また、図示しないが、金属極7の周辺には、電池反応にて発生した水素等の生成ガスを液室11から外部へ排出する穴が、設けられていることが好ましい。
【0025】
また、
図2に示すように、金属極7は、各金属空気電池セル22の底部に設けられた給水口13と対向して配置されることが好ましい。金属極7と空気極6の酸化還元反応の際に生じる生成物を、給水口13を介してケース3側に放出しやすい。これにより、生成物が、各金属空気電池セル22内に溜まることによる電極の破損や電気特性の劣化を抑制することが可能である。
【0026】
また、各金属空気電池セル22の底部以外に給水口13を設ける場合でも、例えば、給水口13を、金属空気電池セル22の側部の下側に配置し、金属極7を、給水口13と対向配置させてもよい。「側部の下側」とは、側部の高さ寸法の下半分、好ましくは、高さ寸法の1/2以下の下側部分、より好ましくは、高さ寸法の1/3以下の下側部分である。これによっても、生成物の放出効果を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、金属極7の下部を自由端としている。これにより、金属極7を適切に給水口13に対向して配置することができる。また、金属極7の下部を自由端とすることで、金属極7の下部を揺動させることができる。このため、空気極6と金属極7との間に生成物が堆積したときに、金属極7を撓らせることができ、生成物による押圧力を緩和でき、金属極7及び空気極6の破損を抑制することが出来る。
【0028】
図2に示すように、電解液5が入った紙パック3内に金属空気電池本体2を挿入することで、例えば上記した反応が起こり、発電が開始される。発電を停止したい場合は、金属空気電池本体2を紙パック3から取り出せばよい。
【0029】
このように、本実施形態の金属空気電池1の使用方法によれば、金属空気電池本体2を取り外した紙パック3内に電解液5を供給し、その紙パック3内に金属空気電池本体2を挿入することで、簡単に且つ素早く発電させることができる。したがって、非常用電池としての利便性を従来よりも向上させることができる。
【0030】
また、廃棄する際には、
図2の状態から、紙パック3から金属空気電池本体2を取り出すと共に、紙パック3内の電解液5を除去したうえで、金属空気電池本体2を紙パック3に入れて処分する。或いは、紙パック3と金属空気電池本体2とを分別して処分する。上記のように紙パック3内の電解液5を除去しているから、その紙パック3内に、金属空気電池本体2を入れても発電せず、水素発生や電解液の漏れ出し等なく廃棄処分が可能である。
【0031】
本実施の形態における金属空気電池1は、マグネシウム空気電池であっても他の金属空気電池であっても適用可能である。
【0032】
また、各金属空気電池セル22の各電極を直列接続しても並列接続してもよく、配線方法を特に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の金属空気電池によれば、紙パックから金属空気電池本体を簡単に取り出すことができ、誰でも簡単に且つ素早く発電させることができる。したがって、本発明の金属空気電池を、災害時等における非常用電源等として有効に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 :金属空気電池
2 :金属空気電池本体
3 :紙パック
5 :電解液
6 :空気極
7 :金属極
10 :空気室
11 :液室
13 :給水口
22 :金属空気電池セル