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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】流体機械の機械要素の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20220222BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20220222BHJP
   F04D 29/06 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F04D29/58 E
F04D29/08 C
F04D29/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018096443
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199869
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-083357(JP,A)
【文献】特開平05-202892(JP,A)
【文献】特開2017-227203(JP,A)
【文献】特開2012-026308(JP,A)
【文献】特開平07-012236(JP,A)
【文献】特開平11-062874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/08
F04D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる回転軸が貫通され、吸水槽内の水の排出を行う排水運転、及び前記吸水槽内の水の排出が行われない気中運転に切り換わる流体機械の機械要素の冷却装置であって、
前記回転軸を取り囲むように前記機械要素の下側に配置された固定部材と
固定部材の下方で前記回転軸に固定された底壁と、前記底壁から上向きに突出した筒状の外周壁とを有し、内部に潤滑液が貯留され、前記回転軸と一体に回転する容器と、
前記外周壁に取り囲まれるように前記固定部材の下側に固定され、前記容器の回転による潤滑液の回転流動を抑制し、前記外周壁側から前記回転軸側へ潤滑液を流動させる固定ベーンと、
前記固定ベーンの上方に位置するように、前記容器の前記外周壁に固定された環状の蓋体と
を備え、
前記蓋体の内周部とこの内周部と対向する対向部との間には、前記容器内への空気の流入を許容する第1の隙間が形成され、
前記固定部材及び前記固定ベーンと前記回転軸との間には、前記機械要素への潤滑液の流動を許容する第2の隙間が形成され、
前記気中運転時、前記容器の回転と前記固定ベーンによって、前記第2の隙間を通して前記機械要素へ潤滑液を供給可能である、流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項2】
前記固定ベーンは、前記回転軸が回転する向きへ突出する断面円弧状である、請求項1に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項3】
前記蓋体の内径は、前記固定ベーンの外径よりも小さい、請求項1又は2に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記容器の前記外周壁を取り囲む外周壁を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項5】
前記容器の前記外周壁の外面、又は前記固定部材の前記外周壁の内面に、螺旋状の溝が設けられている、請求項に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項6】
前記流体機械は、前記容器内に潤滑液を注入する流路を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項7】
前記容器内の潤滑液の液位を検出するセンサを備える、請求項1からのいずれか1項に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【請求項8】
前記流体機械は、ポンプケーシング内を通して液体を吐出するポンプであり、
前記機械要素は、前記ポンプケーシングの前記回転軸が貫通する部分に配置され、前記ポンプケーシングの内部の液体が外部へ漏出することを防ぐ軸封装置である、請求項1からのいずれか1項に記載の流体機械の機械要素の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械の機械要素の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械の1つとして、吸水槽内に一定量の水が溜まる前に予め運転を開始しておき、一定量の水が溜まると直ぐに排水が可能な先行待機形の立軸ポンプが知られている。この立軸ポンプでは、排水が行われない気中運転時、軸封装置の固定環と回転環、及び水中軸受の摺動体と回転軸が、摺接により過熱して焼き付く虞がある。
【0003】
特許文献1,2には、軸封装置及び水中軸受等の機械要素を保護する保護装置を備える立軸ポンプが開示されている。保護装置は、排出する揚水の一部を貯留可能な容器を備え、この容器が機械要素の下部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-202892号公報
【文献】特開2005-83357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の立軸ポンプでは、気中運転時、容器内の水によって機械要素を冷却できるため、機械要素の焼き付きを抑制できる。しかし、これらの保護装置では、冷却対象の機械要素に容器内の水(潤滑液)を積極的に供給することについて、何も考慮されていない。
【0006】
本発明は、冷却対象の機械要素に潤滑液を供給でき、機械要素を効果的に冷却可能な流体機械の機械要素の冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上下方向に延びる回転軸が貫通され、吸水槽内の水の排出を行う排水運転、及び前記吸水槽内の水の排出が行われない気中運転に切り換わる流体機械の機械要素の冷却装置であって、前記回転軸を取り囲むように前記機械要素の下側に配置された固定部材と、前固定部材の下方で前記回転軸に固定された底壁と、前記底壁から上向きに突出した筒状の外周壁とを有し、内部に潤滑液が貯留され、前記回転軸と一体に回転する容器と、前記外周壁に取り囲まれるように前記固定部材の下側に固定され、前記容器の回転による潤滑液の回転流動を抑制し、前記外周壁側から前記回転軸側へ潤滑液を流動させる固定ベーンと、前記固定ベーンの上方に位置するように、前記容器の前記外周壁に固定された環状の蓋体とを備え、前記蓋体の内周部とこの内周部と対向する対向部との間には、前記容器内への空気の流入を許容する第1の隙間が形成され、前記固定部材及び前記固定ベーンと前記回転軸との間には、前記機械要素への潤滑液の流動を許容する第2の隙間が形成され、前記気中運転時、前記容器の回転と前記固定ベーンによって、前記第2の隙間を通して前記機械要素へ潤滑液を供給可能である、流体機械の機械要素の冷却装置を提供する。具体的には、前記固定ベーンは、前記回転軸が回転する向きへ突出する断面円弧状である。
【0008】
この冷却装置によれば、回転軸が回転すると、容器が一体に回転し、容器内で固定ベーンが静止状態に維持される。容器内の潤滑液は、容器が回転する向きに流動しようとするが、その流動は固定ベーンによって抑制される。これにより、潤滑液の回転エネルギーが圧力に変換され、蓋体の内側の第1の隙間から空気が流入し、回転軸の外側の第2の隙間から機械要素へ潤滑液が供給される。よって、回転軸を貫通させた機械要素を効果的に冷却できるため、機械要素の周囲に液体が無い状態であっても、運転を継続できる。
【0009】
前記蓋体の内径は、前記固定ベーンの外径よりも小さい。この態様によれば、容器の回転によって、潤滑液が容器の上端から飛散することを防止できる。しかも、蓋体と対向部との間の第1の隙間を可能な限り小さくすることで、機械要素へ潤滑液を流動させる圧力を大きくでき、潤滑液の揚程を高くすることができる。
【0010】
前記固定部材は、前記容器の前記外周壁を取り囲む外周壁を備える。この態様によれば、容器の外周壁と固定部材の外周壁との間に形成された隙間(空気層)によって、冷却装置の外側が液体で満たされた時、容器内への液体の浸入を防止できる。よって、液体に含まれる異物が容器を介して機械要素に至ることを防止でき、異物による機械要素の破損を防止できる。
【0011】
前記容器の前記外周壁の外面、又は前記固定部材の前記外周壁の内面に、螺旋状の溝が設けられている。溝は、回転軸の回転によって容器の内部から外部へ物質が移動する向きに旋回することが好ましい。この態様によれば、容器の外部から内部への異物の侵入を効果的に防止できる。
【0012】
前記流体機械は、前記容器内に潤滑液を注入する流路を備える。この態様によれば、冷却対象の機械要素に応じた潤滑液を必要に応じて注入できるため、機械要素を効果的に冷却できる。
【0013】
前記容器内の潤滑液の液位を検出するセンサを備える。この態様によれば、容器内の潤滑液が不足し、機械要素の冷却が不可能になることを防止できる。また、冷却装置の管理に関する利便性を向上できる。
【0014】
前記流体機械は、ポンプケーシング内を通して液体を吐出するポンプであり、前記機械要素は、前記ポンプケーシングの前記回転軸が貫通する部分に配置され、前記ポンプケーシングの内部の液体が外部へ漏出することを防ぐ軸封装置である。この態様によれば、ポンプケーシング内と軸封装置の間に潤滑液が介在するため、立軸ポンプによって排出する液体の臭いを潤滑液によって遮断できる。よって、ポンプを汚水排出に用いる場合、ポンプからの悪臭の漏出を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却装置では、回転軸の回転によって容器が一体に回転され、容器内で固定ベーンが静止状態に維持されるため、容器内の潤滑液の回転エネルギーが圧力に変換されることで、潤滑液を第2の隙間から機械要素へ確実に供給できる。よって、回転軸を貫通させた機械要素を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る冷却装置を搭載した立軸ポンプを示す断面図。
図2図1の第1冷却装置を拡大した断面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4A】ポンプ停止時の第1冷却装置の状態を示す概略図。
図4B】気中運転時の第1冷却装置の状態を示す概略図。
図4C】排水運転時の第1冷却装置の状態を示す概略図。
図5図1の第2冷却装置を拡大した断面図。
図6A】ポンプ停止時の第2冷却装置の状態を示す概略図。
図6B】気中運転時の第2冷却装置の状態を示す概略図。
図6C】排水運転時の第2冷却装置の状態を示す概略図。
図7】第2実施形態の第1冷却装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る冷却装置35A,35Bを用いた流体機械である立軸ポンプ(以下「ポンプ」と言う。)10を示す。このポンプ10は、吸水槽1の水位によって、排水(全水)運転、気水混合運転、及び気中運転に切り換わる先行待機形であり、一般的な立軸ポンプと同様の基本構造を有する。本実施形態では、後述する軸封装置25の下側に第1冷却装置35Aを配置し、水中軸受30Bの下側に第2冷却装置35Bを配置した点で、一般的な立軸ポンプと相違する。
【0019】
(立軸ポンプの概要)
図1に示すように、ポンプ10は、ポンプケーシング12、回転軸21、及び羽根車23を備える。
【0020】
ポンプケーシング12は、吸水槽1の上部を覆う据付床2に固定されている。ポンプケーシング12は、上下方向に延びるように吸水槽1内に配置された揚水管13と、据付床2上に配置された吐出し管18とを備える。揚水管13は、直管14、ベーンケーシング15、及びベルマウス17を備え、この順で上から下へ接続されている。吐出し管18は、90度湾曲した吐出エルボ19を備え、直管14の上端に接続されている。吐出エルボ19の出口には、下流側へ排水するための送水管(図示せず)が接続されている。
【0021】
回転軸21は、揚水管13の軸線に沿って上下方向に延びるように、揚水管13内に配置されている。回転軸21の上端は吐出エルボ19を貫通して外側へ突出しており、ポンプケーシング12の貫通部分が軸封装置25によって水密にシールされている。揚水管13内で回転軸21は、水中軸受30A~30Cによって回転自在に支持されている。
【0022】
図2を参照すると、軸封装置25は、吐出エルボ19の貫通孔19aの外側に固定され、ポンプケーシング12内の揚水が外部へ漏出することを防ぐメカニカルシールである。この軸封装置25は、吐出エルボ19の外側に固定されたハウジング26と、ハウジング26に固定された固定環27と、回転軸21に固定された回転環28とを備える。固定環27と回転環28の摺接部分によってシール面が形成され、回転軸21の方に位置する内側(連通部29)から外側(大気)への液体流出を防いでいる(アウトサイド形)。
【0023】
水中軸受30A~30Cはいわゆるドライ軸受であり、ポンプ10の通常の排水運転時にはポンプケーシング12内の揚水によって自液潤滑される。また、水中軸受30A~30Cは、ポンプ10が気中運転状態であっても軸受として機能する自己潤滑性のすべり軸受である。図5を参照すると、水中軸受30A~30Cは、セラミック又は熱伝導率が低い樹脂からなる摺動体31と、摺動体31を保持するケーシング32とを備える。
【0024】
羽根車23は、軸受ケーシング16の下側に配置され、回転軸21に固定されている。羽根車23の上端は、仕様によって定められた排水開始水位に位置している。
【0025】
回転軸21の上端には、駆動手段(図示せず)が機械的に接続されている。駆動手段には、電動モータ又は内燃機関の1つであるディーゼル機関が用いられる。
【0026】
駆動手段を駆動すると、回転軸21と一体に羽根車23が回転する。吸水槽1内の水位が羽根車23の上端よりも高い場合、吸水槽1内の水がポンプケーシング12内を通して下流側へ吐出される(排水運転)。排水により水位が一定レベルまで下がると、ポンプケーシング12の吸込口17aから水と空気が吸い込まれる(気水混合運転)。更に水位が下がって空気の吸引量が増えると、羽根車23によって吸水槽1内の水を排出不可能な状態になる(気中運転)。この気中運転を継続し、吸水槽1内の水位が上がると、再び排水運転に移行する。
【0027】
冷却装置35A,35Bを用いていない従来のポンプでは、排水運転時と気水混合運転時、軸封装置25の固定環27と回転環28、及び水中軸受30Bの摺動体31は、揚水によって冷却されるため、過熱することはない。気中運転時、回転環28と固定環27及び摺動体31は、揚水によって冷却されないため、気中運転時間が長くなると過熱する。
【0028】
本実施形態では、気中運転時の過熱を防止するために、軸封装置25の下側には、固定環27と回転環28を冷却する第1冷却装置35Aが配置されている。また、軸受ケーシング16に配置された水中軸受30Bの下側には、摺動体31を冷却する第2冷却装置35Bが配置されている。
【0029】
(軸封装置と冷却装置の構成)
図2に示すように、軸封装置25は、ハウジング26の内部に、回転軸21が貫通された環状の固定環27と回転環28を備える。図2において下側に位置する固定環27と回転軸21の間には、ポンプケーシング12内に連通し、液体が流動可能な連通部29が形成されている。図2において上側に位置する回転環28は、固定環27に向けてスプリング(図示せず)によって付勢され、回転軸21との間がOリングによってシールされている。回転軸21の回転によって回転環28が固定環27に摺接し、この摺接によって連通部29(ポンプケーシング12内)から径方向外側(大気)への液体の漏出が阻止されている(アウトサイド形)。
【0030】
第1冷却装置35Aは、軸封装置25の下側に位置するようにポンプケーシング12内に配置され、ポンプケーシング12内と軸封装置25とを遮断し、専用の潤滑液によって軸封装置25を冷却する。冷却装置35Aは、吐出エルボ19に固定された固定部材36、固定部材36に固定された固定ベーン37、回転軸21に固定された容器38、及び容器38に固定された蓋体40を備える。
【0031】
固定部材36は、貫通孔19aと回転軸21を取り囲む円筒状の基部36aと、基部36aから径方向外向きに突出するフランジ部36bとを備える。フランジ部36bは、吐出エルボ19の内側の貫通孔19aの周囲にネジ止めによって固定されている。基部36aの上側には、内周面を径方向外向きに拡開させた拡開部36cが形成されている。フランジ部36bの外周には、下向きに突出する円筒状の外周壁36dが設けられている。本実施形態の外周壁36dは、固定部材36とは別体に形成され、フランジ部36bに固定されているが、固定部材36と一体構造であってもよい。
【0032】
固定ベーン37は、基部36aの下端に固定された円環状の基板37aを備え、この基板37aから下向きに突出している。図3を併せて参照すると、固定ベーン37は、回転軸21の軸方向から見て半円筒形状であり、回転軸21の軸線を中心として周方向に間隔をあけて複数設けられている。基板37aの径方向において、固定ベーン37の外端は基板37aの外周縁に位置し、固定ベーン37の内端は基板37aの内周縁に位置している。固定ベーン37が湾曲する向きは、回転軸21が回転する向きRと同じ(図3において反時計回り)である。つまり、固定ベーン37は、回転軸21が回転する向きRに窪む円弧状である。
【0033】
容器38は、回転軸21に固定された底壁38aと、底壁38aから上向きに突出した外周壁38cとを備え、全体として有底円筒状である。底壁38aと外周壁38cによって容器38には、潤滑液を貯留する貯液室39が形成されている。底壁38aの内周には、回転軸21と同一軸線の円筒状の固定部38bが設けられている。固定部38bは、固定ベーン37の下方に配置され、セットボルトによって回転軸21に固定されている。固定部38bと回転軸21の間は、Oリングによってシールされている。外周壁38cは、固定ベーン37の外周部と固定部材の外周壁36dとの間に配置されている。外周壁38cは、固定ベーン37を取り囲むように、底壁38aの外周部から固定ベーン37の上端を越えて延設されている。
【0034】
蓋体40は、円環状の板体からなり、容器38の外周壁38cの上端に固定され、固定部材36の基部36aと同じ高さに配置されている。蓋体40は、外周壁38cから径方向内向きに突出し、固定ベーン37の外周部上方を覆っている。より具体的には、蓋体40の外径と外周壁38cの外径は同一であり、蓋体40の内径は固定ベーン37の外径よりも小さい。
【0035】
図3を併せて参照すると、固定部材36の外周壁36dと、容器38の外周壁38cとの間には、定められた間隔L1の隙間42が形成されている。蓋体40の内周部40aと、内周部40aと対向する固定部材36の基部(対向部)36aとの間には、定められた間隔L2の隙間(第1の隙間)43が形成されている。固定ベーン37と容器38の外周壁38cとの間には、定められた間隔L3の隙間44が形成されている。そして、固定ベーン37と回転軸21との間、及び固定部材36と回転軸21との間には、定められた間隔L4の隙間(第2の隙間)45が形成されている。個々の隙間42~45の間隔L1~L4は、回転軸21と容器38の回転によって、これらが固定部材36及び固定ベーン37に干渉することなく、液体と気体が流動可能な範囲で、可能な限り小さい寸法に設定されている。
【0036】
外周壁36d,38c間の隙間42と、内周部40aと基部36aの間の隙間43とは、蓋体40とフランジ部36bの間の隙間46を介して空間的に連通している。内周部40aの内側の隙間43、固定ベーン37の外側の隙間44、及び回転軸21の外側の隙間45は、容器38の貯液室39を介して空間的に連通している。また、外周壁36d,38c間の隙間42はポンプケーシング12内に空間的に連通し、回転軸21の外側の隙間45は軸封装置25の連通部29に空間的に連通している。
【0037】
このようにした冷却装置35Aでは、外周壁36d,38c間の隙間42は、ポンプケーシング12内の空気と揚水の流出入りを許容する。蓋体40の内周部40aの内側の隙間43(第1の隙間)は、空気のみの流動を許容する。これは、蓋体40によって容器38内の潤滑液の流出が阻止され、隙間42,46内の空気によってポンプケーシング12内の揚水の流入が阻止されるためである(図4C参照)。固定ベーン37の外側の隙間44は、潤滑液と空気の流動を許容する。回転軸21の外側の隙間(第2の隙間)45は、潤滑液のみの流動を許容する。
【0038】
次に、第1冷却装置35Aの動作について、図4Aから図4Cの概略図を参照して説明する。なお、図4Aは回転軸21の停止時の状態を示し、図4Bは気中運転時の状態を示し、図4Cは排水運転時の状態を示している。
【0039】
図4Aに示すように、容器38の貯液室39には、所定量の潤滑液が予め貯留されている。潤滑液には、固定環27と回転環28を効果的に冷却可能な液体を用いることが好ましく、例えば清水を用いることができる。潤滑液の貯留量は可能な限り多い方が好ましく、本実施形態では蓋体40と固定部材36の間の隙間43が潤滑液で満たされる量に設定されている。固定ベーン37の外側の隙間44を含む容器38内は潤滑液によって満たされ、回転軸21の外側の隙間45は潤滑液によって隙間43内の液面と同じ高さまで満たされている。また、容器38及び蓋体40と固定部材36の間の隙間42,46は、空気で満たされている(空気層)。
【0040】
図4Bに示すように、回転軸21が回転されると、容器38と蓋体40が一体に回転し、固定部材36に固定された固定ベーン37が容器38内で静止状態に維持される。これにより容器38内の潤滑液は、容器38が回転する向きRに流動しようとするが、その流動は固定ベーン37によって抑制される。この固定ベーン37による流動抑制によって、潤滑液の回転エネルギーが圧力に変換される。これにより、潤滑液が回転軸21の外側の隙間45を通って連通部29に流入し、連通部29内が潤滑液によって満たされる。また、ポンプケーシング12内の空気が隙間42,43を通して容器38内に流入する。このように、気中運転時、回転軸21の外側の隙間45を通して容器38内の潤滑液が軸封装置25に供給されるため、固定環27と回転環28を効果的に冷却できる。よって、気中運転を長時間にわたって継続できる。
【0041】
図4Cに示すように、ポンプ10が排水運転に移行すると、冷却装置35Aの周囲が揚水で満たされる。この際、外周壁36d,38cの下端の開口部分が揚水で塞がれ、固定部材36と容器38の間の隙間42,43に空気が閉じ込められる。この空気層によって容器38内への揚水の流入が阻止され、軸封装置25に対する揚水の付着を防止できる。よって、揚水中に含まれる異物による軸封装置25の腐食とアブレシブ摩耗(破損)を防止できる。
【0042】
以上のように、本実施形態の第1冷却装置35Aによれば、容器38内に収容された潤滑液によって、気中運転時に固定環27と回転環28を効果的に冷却できる。また、容器38には固定ベーン37の外径よりも内径が小さい蓋体40が配置されているため、容器38の回転によって潤滑液が外周壁38cの上端から飛散することを防止できる。しかも、固定部材36と蓋体40との間の隙間43を可能な限り小さくすることで、軸封装置25へ潤滑液を流動させる圧力を大きくでき、潤滑液の揚程を高くすることができる。よって、軸封装置25を確実に冷却できる。
【0043】
図4Cに示す排水運転時、ポンプケーシング12内と軸封装置25の間に介在する潤滑液と空気層によって、軸封装置25に向けた揚水の流動だけでなく、揚水の臭いも遮断できる。よって、汚水排出に用いるポンプ10の場合、軸封装置25からの悪臭の漏出も効果的に抑制できる。
【0044】
(水中軸受と冷却装置の構成)
図5に示すように、水中軸受30Bは、ケーシング32の内側に、回転軸21が貫通された環状の摺動体31を備える。ケーシング32は、軸受ケーシング16のスリーブ16aに固定されている。ケーシング32は両端開口の筒状であり、下端に軸受ケーシング16に固定されるフランジ部32aを備え、上端に摺動体31の上側端面を位置決めするフランジ部32bを備える。摺動体31は、ケーシング32の内側に固定され、回転軸21の外周面に対して定められた隙間33をあけて位置している。
【0045】
第2冷却装置35Bは、水中軸受30Bの下側に位置するようにポンプケーシング12内に配置されている。第2冷却装置35Bは、第1冷却装置35Aと同様に、ポンプケーシング12内と水中軸受30Bとを遮断し、専用の潤滑液によって水中軸受30Bを冷却する。第2冷却装置35Bは、固定部材36、固定ベーン37、容器38、及び蓋体40を備え、第1冷却装置35Aと同様の基本構造を有する。
【0046】
固定部材36は、フランジ部36bのみによって構成され、図2に示す基部36a、拡開部36c、及び外周壁36dを備えていない。つまり、固定部材36は、円環状の板体によって構成され、ネジ止めによってケーシング32と一緒に軸受ケーシング16に固定されている。
【0047】
固定ベーン37は、図2に示す基板37aの代わりに、支持筒37bの外側に設けられている点で、第1冷却装置35Aの固定ベーン37と相違する。詳しくは、固定ベーン37は、回転軸21を取り囲む円筒状の支持筒37bを備え、この支持筒37bから径方向外向きに突出している。支持筒37bは固定部材36の内周部に固定され、固定ベーン37は支持筒37bの周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、回転軸21にはスリーブ22が配置されており、スリーブ22の支持筒37bと対応する部分には、径方向内向きに窪む螺旋状の溝22aが設けられている。
【0048】
容器38は、第1冷却装置35Aの容器38と同様に、底壁38a、固定部38b、及び外周壁38cを備える。そして、外周壁38cの上端が固定部材36の上方に位置するように、外周壁38cを延設した点で、第1冷却装置35Aの容器38と相違する。
【0049】
蓋体40は、軸受ケーシング16のスリーブ16aの下部と同じ高さに配置されている。蓋体40の内周部40aは、軸受ケーシング16のスリーブ16aと微小な隙間43をあけて対向している。内周部40aには、径方向外向きに窪む環状溝からなるラビリンスシール部40bが設けられている。
【0050】
第2冷却装置35Bの固定部材36は外周壁36dを備えないため、容器38の外周には図2に示す隙間42は無い。蓋体40の内周部40aと、内周部40aと対向する軸受ケーシング16のスリーブ(対向部)16aとの間には、微小な間隔L2の隙間(第1の隙間)43が形成されている。また、固定ベーン37の外周と回転軸21の外周には、第1冷却装置35Aと同様の隙間44,45が形成されている。
【0051】
容器38内とポンプケーシング12内は、蓋体40の内周部40aの内側の隙間43を介して連通している。但し、この隙間43は、ラビリンスシール部40bによって、容器38内へのポンプケーシング12内の揚水の流入を阻止し、気体の流入だけを許容している。その他の隙間44,45は、第1冷却装置35Aと同様に設定されている。また、回転軸21の外側の隙間45は、摺動体31の内側の隙間33と空間的に連通している。
【0052】
ポンプケーシング12には、容器38内に潤滑液を注入する流路48が形成されている。流路48は、ベーンケーシング15からスリーブ16aにかけて設けたパイプ部49の内部空間によって構成されている。流路48の外端は大気に開放され、通常の使用時にはボルト等の封止部材によって封止されている。流路48の内端はスリーブ16a内における水中軸受30Bの上方で開口されている。ベーンケーシング15の外部から注入された潤滑液は、流路48を通ってスリーブ16a内に流入し、回転軸21と摺動体31の隙間33を通って容器38内に貯留される。
【0053】
次に、第2冷却装置35Bの動作について、図6Aから図6Cの概略図を参照して説明する。なお、図6Aは回転軸21の停止時の状態を示し、図6Bは気中運転時の状態を示し、図6Cは排水運転時の状態を示している。
【0054】
図6Aに示すように、容器38の貯液室39には、所定量の潤滑液が予め貯留されている。潤滑液には、摺動体31を効果的に冷却可能な液体を用いることが好ましく、例えば清水を用いることができる。潤滑液の貯留量は可能な限り多い方が好ましく、本実施形態では固定部材36が潤滑液に浸かる量に設定されている。固定ベーン37の外側の隙間44を含む容器38内は概ね潤滑液によって満たされ、回転軸21の外側の隙間45は潤滑液によって容器38内の液面と同じ高さまで満たされている。
【0055】
図6Bに示すように、回転軸21が回転されると、容器38と蓋体40が一体に回転し、固定部材36に固定された固定ベーン37が容器38内で静止状態に維持される。容器38内の潤滑液の流動は固定ベーン37によって抑制され、潤滑液の回転エネルギーが圧力に変換される。これにより、潤滑液が回転軸21の外側の隙間45を通って摺動体31の内側の隙間33に流入し、隙間33が潤滑液によって満たされる。また、ポンプケーシング12内の空気が隙間43を通して容器38内に流入する。このように、気中運転時、回転軸21の外側の隙間45を通して容器38内の潤滑液が水中軸受30Bに供給されるため、摺動体31を効果的に冷却できる。よって、気中運転を長時間にわたって継続できる。
【0056】
図6Cに示すように、ポンプ10が排水運転に移行すると、冷却装置35Bの周囲が揚水で満たされる。しかし、蓋体40とスリーブ16aとの間の隙間43は小さい間隔で形成され、内周部40aにはラビリンスシール部40bが形成されているため、揚水が容器38内に流入することはない。よって、摺動体31に対する揚水の付着を防止できるため、揚水中に含まれる異物による水中軸受30Bのアブレシブ摩耗(破損)を防止できる。
【0057】
以上のように、本実施形態の第2冷却装置35Bによれば、容器38内に収容された潤滑液によって、気中運転時に摺動体31を効果的に冷却できる。また、容器38には固定ベーン37の外径よりも内径が小さい蓋体40が配置されているため、容器38の潤滑液の飛散を防止できるうえ、水中軸受30Bへ潤滑液を流動させる圧力を大きくできる。しかも、ポンプケーシング12には流路48が形成され、冷却対象の摺動体31に応じた潤滑液を必要に応じて注入できるため、摺動体31を効果的に冷却できる。
【0058】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態に係る冷却装置35Aを軸封装置25に用いたポンプ10を示す。図7に示すように、ポンプケーシング12には、冷却装置35Aに潤滑液を注入するための流路50が形成されている。軸封装置25の構造は第1実施形態の軸封装置25と同一である。冷却装置35Aの基本構造は、第1実施形態の冷却装置35Aと同一である。
【0059】
流路50は、吐出エルボ19に形成した貫通孔によって構成されている。流路50の外端は大気に開放され、通常の使用時には封止部材(図示せず)によって封止される。流路50の内端は貫通孔19a内で開口されている。潤滑液は、流路50を通って貫通孔19a内に流入し、回転軸21の外側の隙間45を通って容器38内に貯留される。
【0060】
冷却装置35Aは、第1実施形態と同様に、固定部材36、固定ベーン37、容器38、及び蓋体40を備える。固定部材36は、拡開部36cを設けていない点で、第1実施形態の固定部材36と相違する。固定ベーン37は、第1実施形態の固定ベーン37と同一である。容器38は、外周壁38cの外面に螺旋状の溝52を設けた点で、第1実施形態の容器38と相違する。蓋体40は、内周部40aに突部40cを設けた点で、第1実施形態の蓋体40と相違する。
【0061】
詳しくは、容器38の外周壁38cの外面には、径方向内向きに窪む凹状の溝52が形成されている。この溝52は、外周壁38cの上端から下端にかけて連続するように、螺旋状に形成されている。容器38が回転軸21と一体に回転することで、溝52内の物質(液体、気体、及び微細な異物)がポンプケーシング12内(つまり下向き)に移動するように、溝52が旋回する向きが設定されている。これにより、ポンプケーシング12内から容器38内への異物の侵入を効果的に防止できる。なお、溝52は、固定部材36の外周壁36dに形成してもよい。
【0062】
蓋体40の内周部40aには、容器38の外側に向けて突出する突部40cが設けられている。内周部40aと突部40cの内周とは同一直径であり、連続した1つの筒状の内周面を構成する。これにより、隙間43を画定する蓋体40の軸方向の内面長さを確保できる。よって、容器38内の潤滑液の漏出と容器38外の液体の浸入とを効果的に防止できる。なお、この突部は、図5に示す第1実施形態の第2冷却装置35Bの蓋体40にも設けることが好ましい。
【0063】
また、本実施形態の第1冷却装置35Aには、容器38内の潤滑液の液位を検出するセンサ54が配置されている。センサ54は、定められた下限液位よりも液面が低くなったか否かを検出するレベルセンサであり、容器38内に固定されている。具体的には、センサ54は、固定部材36を介してポンプケーシング12に固定された固定ベーン37の基板37aの下面に固定されている。これにより、容器38内の潤滑液が不足したことをセンサ54によって簡単に検出でき、不足状態になった場合には流路50から潤滑液を簡単に補充できる。よって、軸封装置25の冷却が不可能になることを防止できる。また、冷却装置35Aの管理に関する利便性を向上できる。なお、センサ54は、図5に示す第1実施形態の第2冷却装置35Bの蓋体40にも設けることが好ましい。
【0064】
なお、本発明の流体機械の機械要素の冷却装置は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、軸封装置25に用いる第1冷却装置35Aには、固定部材36に外周壁36dを設けなくてもよい。また、水中軸受30Bに用いる第2冷却装置35Bの固定部材36に外周壁36dを設けてもよい。また、水中軸受30B以外の水中軸受30A,30Cにも冷却装置35A又は35Bを配置してもよい。
【0066】
前記実施形態では立軸ポンプ10を例に挙げて説明したが、本発明の冷却装置は、立軸ポンプ10以外の流体機械にも用いることができる。また、本発明の冷却装置は、構造や種類が異なる軸封装置(例えばグランドパッキン)及び水中軸受にも用いることができるうえ、軸封装置及び水中軸受以外の機械要素の冷却用としても用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…吸水槽
2…据付床
10…立軸ポンプ(流体機械)
12…ポンプケーシング
13…揚水管
14…直管
15…ベーンケーシング
16…軸受ケーシング
16a…スリーブ
17…ベルマウス
17a…吸込口
18…吐出し管
19…吐出エルボ
19a…貫通孔
21…回転軸
22…スリーブ
22a…溝
23…羽根車
25…軸封装置(機械要素)
26…ハウジング
27…固定環
28…回転環
29…連通部
30A~30C…水中軸受(機械要素)
31…摺動体
32…ケーシング
32a…フランジ部
32b…フランジ部
33…隙間
35A,35B…冷却装置
36…固定部材
36a…基部
36b…フランジ部
36c…拡開部
36d…外周壁
37…固定ベーン
37a…基板
37b…支持筒
38…容器
38a…底壁
38b…固定部
38c…外周壁
39…貯液室
40…蓋体
40a…内周部
40b…ラビリンスシール部
40c…突部
42…隙間
43…隙間(第1の隙間)
44…隙間
45…隙間(第2の隙間)
46…隙間
48…流路
49…パイプ部
50…流路
52…溝
54…センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7