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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】感光性ウレタン樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/68 20060101AFI20220222BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20220222BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220222BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20220222BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C08G18/68
C08G18/08 019
C08G18/67
C08G18/34 080
C08G18/67 050
C08F299/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018110285
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019131782
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2018012084
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田井 誠
(72)【発明者】
【氏名】権平 貴志
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521357(JP,A)
【文献】特開2010-164661(JP,A)
【文献】特開2014-214186(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136286(WO,A1)
【文献】特開2017-066358(JP,A)
【文献】米国特許第04753860(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/68
C08G 18/08
C08G 18/67
C08G 18/34
C08F 299/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(A)~(D)を含む原料混合物を反応させて得られる感光性ウレタン樹脂であって、
(A)少なくともエステル結合と少なくとも主鎖中に不飽和結合を有するポリオール
(B)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個のアニオン性基とを両有する化合物
(C)ポリイソシアネート
(D)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と不飽和結合基とを両有する化合物
感光性ウレタン樹脂は、同一分子内の主鎖中にエステル結合と不飽和結合を有し、側鎖及び末端のうちの少なくともいずれかにアニオン性基を有し、且つ側鎖に不飽和結合基を有し、
前記感光性ウレタン樹脂中の前記アニオン性基量が0.60mmol/g以上であり、且つ前記感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量が0.40mmol/g以上である感光性ウレタン樹脂。
【請求項2】
前記化合物(A)は、その主鎖中の不飽和結合量が、0.80mmol/g以上である、請求項1に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項3】
前記化合物(A)は、その主鎖中の不飽和結合量が、0.80~5.00mmol/gである、請求項1又は2に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項4】
感光性ウレタン樹脂中、前記アニオン性基量が、0.60~1.50mmol/gである、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項5】
感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量が、0.40~2.50mmol/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項6】
前記化合物(B)に含まれるアニオン性基が、カルボキシル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項7】
感光性ウレタン樹脂に含まれるカルボキシル基量が、0.60~1.50mmol/gである、請求項6に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項8】
酸価が33~85mgKOH/gである、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項9】
前記化合物(A)が、少なくとも(a)不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、(b)飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、並びに(c)多価アルコールを反応させて得られるポリオールである、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項10】
前記化合物(B)が、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロパン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項11】
前記化合物(D)が、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノアクリレート及びグリセリンモノメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項12】
前記化合物(C)のイソシアネート基(Y)と、前記化合物(C)以外の化合物の合計の全活性水素(X)とを、X/Y=0.7~1.1の当量比で反応させて得られる感光性ウレタン樹脂である、請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【請求項13】
光硬化用成分として用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ウレタン樹脂に関し、更に詳しくは、半導体パッケージ用途、電子機器に組み込まれる回路基板用途等の樹脂材料としての使用に適した感光性ウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は耐摩耗性、接着性、可撓性、耐薬品性等に優れ、且つ各種加工法への適性にも優れることから、各種コーティング剤、塗料、インキ等のバインダー、及びフィルム、シート、その他の成型体として広く使用されており、各々の用途に適したポリウレタン樹脂が提案されている。ポリウレタン樹脂は、基本的には高分子量ポリオール成分と、有機ポリイソシアネート成分と、更に必要に応じて鎖延長剤成分とを反応させて得られるものであり、これら各成分の種類、組み合わせ等によって種々の物性を有するポリウレタン系樹脂の製造が可能である。
【0003】
例えば、特許文献1には、少なくとも、ポリウレタン樹脂(A)と、ラジカル重合性化合物(B)とを含有するポリウレタン樹脂組成物であって、ポリウレタン樹脂(A)は、少なくとも特定の繰り返し単位を含むポリエステルポリオール(a)と、ポリイソシアネート(b)とを構成成分とする、ポリウレタン樹脂組成物が提案され、該ポリウレタン樹脂組成物により硬度の高い塗膜が得られることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-66358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯電話やビデオカメラ、ノートパソコン等の電子機器は、小型化、薄型化が進んでいる。それに伴い、半導体パッケージ(PKG)基板やフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、リジットフレックス(RF)基板等を代表とする回路基板においては、省スペース化の要求が高く、従来求められていた密着性、耐熱性等だけでなく、薄型化や折り曲げ性が要求されている。折り曲げにおいては省スペースへのアセンブリに伴うため、回路基板には、有効屈曲半径R=0の折り曲げ性(ハゼ折り)や複数回折り曲げ可能な耐折性(可撓性)が求められている。
【0006】
低弾性化させたポリウレタン樹脂を用いた硬化性組成物では、リフロー耐熱性が十分ではなく、チップ実装に適応できない場合があり、また、柔軟性の低い(硬度の高い)ポリウレタン樹脂を用いた硬化性組成物は耐熱性を満足することができても、折り曲げ時の反発が大きくなる場合があり、従来のポリウレタン樹脂では特に電子機器用途に適応することができなかった。
そこで、本発明は、エネルギー線照射により硬化する光硬化性樹脂組成物に用いる感光性ウレタン樹脂であって、折り曲げ性に優れ、耐熱性にも優れる硬化膜を形成できる感光性ウレタン樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための、本発明の要旨は以下の通りである。
<1>下記化合物(A)~(D)を含む原料混合物を反応させて得られる感光性ウレタン樹脂であって、
(A)少なくともエステル結合と少なくとも主鎖中に不飽和結合を有するポリオール
(B)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個のアニオン性基とを両有する化合物
(C)ポリイソシアネート
(D)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と不飽和結合基とを両有する化合物
感光性ウレタン樹脂は、同一分子内の主鎖中にエステル結合と不飽和結合を有し、側鎖及び末端のうちの少なくともいずれかにアニオン性基を有し、且つ側鎖に不飽和結合基を有し、
前記感光性ウレタン樹脂中の前記アニオン性基量が0.60mmol/g以上であり、且つ前記感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量が0.40mmol/g以上である感光性ウレタン樹脂。
<2>前記化合物(A)は、その主鎖中の不飽和結合量が、0.80mmol/g以上である、前記<1>に記載の感光性ウレタン樹脂。
<3>前記化合物(A)は、その主鎖中の不飽和結合量が、0.80~5.00mmol/gである、前記<1>又は<2>に記載の感光性ウレタン樹脂。
<4>感光性ウレタン樹脂中、前記アニオン性基量が、0.60~1.50mmol/gである、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<5>感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量が、0.40~2.50mmol/gである、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<6>前記化合物(B)に含まれるアニオン性基が、カルボキシル基である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<7>感光性ウレタン樹脂に含まれるカルボキシル基量が、0.60~1.50mmol/gである、前記<6>に記載の感光性ウレタン樹脂。
<8>酸価が33~85mgKOH/gである、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<9>前記化合物(A)が、少なくとも(a)不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、(b)飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、並びに(c)多価アルコールを反応させて得られるポリオールである、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<10>前記化合物(B)が、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロパン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<11>前記化合物(D)が、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノアクリレート及びグリセリンモノメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、前記<1>~<10>のいずれか1項に記載の感光性ウレタン樹脂。
<12>前記化合物(C)のイソシアネート基(Y)と、前記化合物(C)以外の化合物の合計の全活性水素(X)とを、X/Y=0.7~1.1の当量比で反応させて得られる感光性ウレタン樹脂である、前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
<13>光硬化用成分として用いられる、前記<1>~<12>のいずれか1つに記載の感光性ウレタン樹脂。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性ウレタン樹脂は、硬化膜に密着性と共に、優れた折り曲げ性と耐熱性を付与することができる。
よって、特に半導体パッケージ用途や回路基板用途の樹脂材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に記載する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本実施形態の感光性ウレタン樹脂は、(A)少なくともエステル結合と少なくとも主鎖中に不飽和結合を有するポリオール、(B)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個のアニオン性基とを両有する化合物、(C)ポリイソシアネート、及び(D)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と不飽和結合基とを両有する化合物を含む原料混合物を反応させて得られる感光性ウレタン樹脂である。当該感光性ウレタン樹脂は、同一分子内の主鎖中にエステル結合と不飽和結合を有し、側鎖及び末端のうちの少なくともいずれかにアニオン性基を有し、且つ側鎖に不飽和結合基を有し、感光性ウレタン樹脂中のアニオン性基量が0.60mmol/g以上であり、且つ感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量が0.40mmol/g以上である。
【0011】
本実施形態の感光性ウレタン樹脂は、その構造中における主鎖部分にエチレン性の二重結合を有するので、開環反応により分子間の結合を生じることができ、分子鎖同士を結合させる、いわゆる架橋させることができるという性質を示し、硬化膜の屈曲性を向上させ、且つ耐熱性も備えることができる。
よって、本実施形態の感光性ウレタン樹脂は、例えば光硬化性樹脂組成物の光硬化用成分として好適に用いることができる。
【0012】
<(A)少なくともエステル結合と少なくとも主鎖中に不飽和結合を有するポリオール>
化合物(A)としての少なくともエステル結合と少なくとも主鎖中に不飽和結合を有するポリオールは、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオールであって、当該ポリエステルポリオールは酸成分とグリコール成分とを反応して得られる。
【0013】
本実施形態において、酸成分として、(a)少なくとも不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つを用いる。不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つを用いることで、主鎖中に不飽和結合を持つポリウレタン樹脂を得ることができる。
不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ダイマー酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等を挙げることができる。またそれらの誘導体として、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジクロライド、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。中でも、入手のしやすさの観点から、無水マレイン酸が好ましい。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
また、酸成分として(b)飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つを用いることもできる。飽和二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族系二塩基酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族系二塩基酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系二塩基酸等が挙げられる。またこれらの誘導体として、例えば、無水フタル酸などの酸無水物やジアルキルエステル、ハロゲン化物等を挙げることができる。中でも、入手のしやすさの観点から、C6~C12の脂肪族二塩基酸が好ましい。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(a)不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つはポリエステルポリオール組成の酸成分(全二塩基酸)に対して1~100mol%で使用できるが、好ましくは10~90mol%、より好ましくは25~75mol%である。使用量が1mol%未満では硬化時の架橋度が少なく折り曲げ性への効果が不充分となる場合がある。
【0016】
グリコール成分としては、(c)多価アルコールが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコ-ル、トリエチレングリコ-ル、ポリエチレングリコ-ル、ジプロピレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、テトラヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、水素化ビスフェノ-ルA、ビスフェノ-ルA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2価フェノール、またそれらとプロピレンオキシド又はエチレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドとの付加物等が挙げられる。中でも、入手のしやすさの観点から、C2~C6のグリコールが好ましい。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
酸成分(全二塩基酸)とグリコール成分(多価アルコール)の反応性基の割合は、通常グリコール成分の反応性基が多くなるように配合され、グリコール成分/酸成分=1~2mol/molで使用できるが、好ましくは1.05~1.5mol/molであり、より好ましくは1.1~1.4mol/molである。グリコール成分/酸成分が1mol/molより少ないとポリエステルポリオールの分子末端が酸構造となりウレタン化反応には適さなくなる。グリコール成分/酸成分が2mol/molより大きくなるとポリエステルポリオールの分子量が小さくなりフィルム状などに加工する際に充分な強度が得られなくなる。
【0018】
本実施形態において、化合物(A)のポリエステルポリオールは、少なくとも(a)不飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、(b)飽和二塩基酸及びその誘導体のうちの少なくとも1つ、並びに(c)多価アルコールを反応させて得られるポリオールであることが好ましい。
【0019】
ポリエステルポリオールの合成については特に限定されることは無く、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記化合物(a)~(c)を反応容器に投入し、常法に従って100~240℃で3~20時間、副生成物の縮合水などを反応系外へ除去させながら反応させることで得ることができる。反応を促進するために、テトラブチルチタネ-ト、酢酸鉛、酸化鉛、ジブチルスズオキサイド等の触媒を添加することもできる。また、適切な溶剤を加えて反応することもできる。
【0020】
本実施形態において、化合物(A)の保存安定性を劣化させないために、例えば、ハイドロキノンやメトキノンなどの適切な重合禁止剤を用いることができる。
【0021】
本実施形態において、化合物(A)における主鎖中の不飽和結合量は、0.80mmol/g以上であることが好ましい。化合物(A)中の主鎖中の不飽和結合の含有量が0.80mmol/g以上であると、皮膜の強度が増して充分な折り曲げ性を得ることができる。化合物(A)の主鎖中の不飽和結合量は、下限が0.85mmol/g以上であることがより好ましく、また、上限は5.00mmol/g以下であることが好ましく、4.00mmol/g以下が更に好ましい。
なお、不飽和結合量は、(化合物(A)中で使用した不飽和二塩基酸のモル数/得られる化合物(A)の数量(g))により算出される。
【0022】
化合物(A)の数平均分子量(Mn)は500~50,000であることが好ましい。数平均分子量が500以上になることで感光性ウレタン樹脂の柔軟性や成膜性を得ることができるので好ましく、また、数平均分子量が50,000以下になることで感光性ウレタン樹脂とした場合に適切な粘度を得ることができるので加工時に適切な取扱いができる。数平均分子量の下限は、700以上であることがより好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましく、また、上限は10,000以下であることが好ましく、5,000以下が更に好ましい。
【0023】
<(B)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個のアニオン性基とを両有する化合物>
化合物(B)としての分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個のアニオン性基とを両有する化合物は、感光性ウレタン樹脂の側鎖に熱硬化剤との反応性基またはアニオン性基を導入するための成分である。
【0024】
活性水素含有基は、化合物(C)ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する基であり、アニオン性基は、感光性ウレタン樹脂となったときに側鎖につく官能基である。活性水素含有基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種の基であり、本実施形態においては少なくとも水酸基を有する。また、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等の陰イオンを発生し得る基が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種の基であり、アニオン性基がカルボキシル基であることが好ましい。本実施形態においては、アニオン性基は、熱硬化剤と反応して樹脂を硬化させる役割を示し、また硬化剤と反応しない条件下では、ソルダーレジストなどに使用する際、アルカリで樹脂を溶解させる役割を示す。
【0025】
化合物(B)としては、カルボン酸系、スルホン酸系、燐酸系などの化合物を用いることができる。該化合物(B)は、基板に対する密着性付与効果、成膜性の付与効果および被膜強靭性を向上させる機能を与える。
【0026】
カルボン酸系の化合物(B)としては、例えば、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸およびそれらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やこれらの化合物のγ-カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物など、主に2個の水酸基と1個のカルボキシル基とを両有する化合物が挙げられる。
【0027】
スルホン酸系の化合物(B)としては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
【0028】
これらの化合物(B)は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
特に好ましい化合物(B)は、反応のしやすさからはジメチロールブタン酸であり、入手のしやすさからはジメチロールプロパン酸であり、これらの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0029】
<(C)ポリイソシアネート>
化合物(C)としてのポリイソシアネートは、従来公知のポリウレタン樹脂の合成に使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。ポリイソシアネートとして好ましいのは、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、4-メトキシー1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、2,4’-メチレンビス(フェニレンイソシアネート)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネートや、これらイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネート基となるように反応させて得られる化合物も当然使用することができる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
<(D)分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と不飽和結合基とを両有する化合物>
化合物(D)としての分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と不飽和結合基とを両有する化合物は、本発明の感光性ウレタン樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物にエネルギー線を照射した際に硬化を引き起こす成分である。
【0031】
化合物(D)としては、特に制限されず、公知のものから一種以上のものを使用することができる。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。好ましい化合物は2個の水酸基を有する化合物であり、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が好ましく、特に好ましい化合物はグリセリンモノメタクリレートである。これらは一種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<感光性ウレタン樹脂の合成>
本実施形態の感光性ウレタン樹脂は、化合物(A)~化合物(D)、必要に応じて、鎖伸長剤とを反応させて得られる。
化合物(A)、化合物(B)及び化合物(D)の使用量は、各成分のmol数を合計したときに、
化合物(A)を5~40mol%、好ましくは10~30mol%、
化合物(B)を20~80mol%、好ましくは40~60mol%、
化合物(D)を10~50mol%、好ましくは20~40mol%
である。
また、化合物(C)は、化合物(C)以外の成分、すなわち、化合物(A)、化合物(B)及び化合物(D)(鎖伸長剤を含む場合は、化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)及び鎖伸長剤)の全活性水素(X)と化合物(C)のイソシアネート基(Y)の当量比がX/Y=0.7~1.1、好ましくは0.75~1.0となる量で使用する。
【0033】
化合物(A)が5mol%未満の場合は、化合物(A)に由来する感光性ウレタン樹脂の主鎖中の不飽和結合量が少なくなり、充分な耐現像性、折り曲げ性、耐熱性(具体的に、はんだ耐熱性)などが得られなくなる場合がある。一方、化合物(A)が40mol%を超えると、化合物(B)と化合物(D)の量が少なくなり硬化性や現像性が不充分となる場合がある。
【0034】
化合物(B)が20mol%未満の場合は、感光性ウレタン樹脂の酸価が低くなり、該感光性ウレタン樹脂を含む光硬化性樹脂組成物のアルカリ現像性に時間がかかる場合がある。一方、80mol%を超えるとアニオン性基が多数存在することで分子の凝集が大きくなり成膜性などに悪影響を起こす場合がある。
【0035】
化合物(D)が10mol%未満の場合は、エネルギー線硬化(例えば、UV硬化)による分子間架橋が充分行われず精細なパターンが描けなくなる場合がある。一方、50mol%を超えると分子内架橋も進むため得られる皮膜が堅くなり折り曲げ性などが悪化する場合がある。
【0036】
化合物(C)以外の化合物の合計の全活性水素(X)と化合物(C)のイソシアネート基(Y)との当量比X/Yが0.7より小さいと充分な分子量が得られず強度のある皮膜が得られない場合がある。一方、当量比X/Yが1.1より大きいとイソシアネート基が過剰になるので重合に関与しない活性水素基と副反応を起こす可能性があり、反応中あるいは保存中にゲル化を生じる恐れがある。
【0037】
化合物(A)~(D)を用いる本実施形態の感光性ウレタン樹脂の合成方法については特に限定されることは無く、従来公知の方法を用いることができる。例えば、前記化合物(A)~(D)を、必要に応じて鎖伸長剤を併用して、化合物(C)以外の成分(化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)及び鎖伸長剤)の全活性水素(X)と化合物(C)のイソシアネート基(Y)との当量比がX/Y=0.7~1.1となる配合で、ワンショット法、または多段階法により反応容器に投入し、通常20~150℃、好ましくは60~110℃で、生成物のイソシアネート基が無くなるまで反応させることで得ることができる。
【0038】
本実施形態において、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオール成分として、上記化合物(A)以外のポリオールを含んでもよい。化合物(A)以外のポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、主鎖中に不飽和結合を有しないポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。化合物(A)以外のポリオールは、含有量が多くなり過ぎると折り曲げ性と耐熱性の両立が難しくなるため、全ポリオール中に10~60mol%、好ましくは20~50mol%の範囲で使用することが好ましい。
【0039】
また、反応を促進するために、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレート、オクチル酸鉛、テトラブチルチタネ-ト、ジルコニウム系化合物などの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミン等の有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系の触媒を使用することもできる。
【0040】
また、必要であれば適切な溶剤を加えて反応することもできる。好ましい溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性であるか、または反応成分よりも活性の低いものが挙げられる。例えば、アセトンやメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、トルエンやキシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサンやシクロヘキサンなどの脂肪族・脂環族系溶剤、ジオキサンやテトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、酢酸エチルや二塩基酸エステルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤、ジメチルフォルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、N-メチル-2-ピロリドンなどのラクタム系溶剤などが挙げられる。
【0041】
本発明の感光性ウレタン樹脂の合成においては、ポリマー末端にイソシアネート基が残留した際に反応停止剤を使用してもよい。例えば、メタノールやエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコールなどのモノアルコールや、モノエチルアミン、ジエチルアミンなどのモノアミン、モノエタノールアミンやジエタノールアミンのようなアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0042】
また、必要に応じて添加剤を加えることもできる。例えば、ヒンダードフェノール系やホスファイト系の酸化防止剤、ヒンダートアミン系の光安定剤、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ヒドラジン系のガス変色安定剤、金属不活性剤などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本実施形態で得られる感光性ウレタン樹脂の数平均分子量(GPC測定、PMMA換算)は、2,000~500,000が好ましく、5,000~200,000がより好ましい。数平均分子量が2,000未満では樹脂にタックが生じたり耐水性や耐熱性が劣る場合がある。一方、500,000を超えると本発明の樹脂の溶液粘度が高くなりすぎたり樹脂固形分が小さくなりすぎたりして塗工性が悪化する場合がある。
【0044】
また、本実施形態で得られる感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合量は、0.40mmol/g以上であり、0.40~2.50mmol/gであることが好ましい。感光性ウレタン樹脂に含まれる主鎖中の不飽和結合の量が0.40mmol/g以上であると、皮膜の強度が増して充分な折り曲げ性を得ることができるので好ましく、2.50mmol/g以下であると、適切な硬化が行えて充分なはんだ耐熱性を得ることができる。ポリウレタン樹脂の主鎖中の不飽和結合の量は、上限が2.20mmol/g以下であることがより好ましい。
なお、不飽和結合量は、(全化合物(A)中で使用した不飽和二塩基酸のモル数/得られる感光性ウレタン樹脂の数量(g))により算出される。
【0045】
本実施形態において、感光性ウレタン樹脂のアニオン性基量は、0.60mmol/g以上であり、0.60~1.50mmol/gであることが好ましい。感光性ウレタン樹脂のアニオン性基の量が0.60mmol/g以上であると、適切な硬化が行えて充分なはんだ耐熱性を得ることができるので好ましく、1.50mmol/g以下であると、分子の凝集が大きくなるのを抑えることができ適正な皮膜が得られるため好ましい。感光性ウレタン樹脂のアニオン性基の量は、下限は0.62mmol/g以上であることがより好ましく、また、上限は1.30mmol/g以下であることがより好ましい。具体的に、アニオン性基がカルボキシル基である場合、感光性ウレタン樹脂中、カルボキシル基量は0.60~1.50mmol/gが好ましい。
なお、アニオン性基(カルボキシル基)の量は、(使用した全化合物(B)のモル数/得られる感光性ウレタン樹脂の数量(g))により算出される。あるいは得られた感光性ウレタン樹脂の酸価を測定し、(得られた酸価/KOHの分子量)により導くこともできる。
【0046】
感光性ウレタン樹脂の酸価は、33~85mgKOH/gであることが好ましい。感光性ウレタン樹脂の酸価が33mgKOH/g以上であると、適切な硬化が行えて充分なはんだ耐熱性を得ることができるので好ましく、85mgKOH/g以下であると、分子の凝集が大きくなるのを抑えることができ適正な皮膜が得られるため好ましい。
なお、樹脂の酸価は、JIS K0070に記載の方法に基づき測定できる。
本実施形態において、感光性ウレタン樹脂の側鎖のエチレン性不飽和基は0.10~1.50mmol/gであることが好ましい。0.10mmol/g以上であると、エネルギー線硬化(例えば、UV硬化)による分子間架橋が充分に行われ精細なパターンを描くことができ好ましく、1.50mmol/g以下であると分子内架橋が適度であり得られる皮膜の折り曲げ性などが得られ好ましい。
なお、感光性ウレタン樹脂の側鎖のエチレン性不飽和基は、(使用した全化合物(D)のモル数/得られる感光性ウレタン樹脂の数量(g))により算出される。
【0047】
本発明の感光性ウレタン樹脂は光重合開始剤と熱硬化剤を含む光硬化性樹脂組成物に用いることができる。
【0048】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、従来知られているものはいずれも使用できる。具体的には、代表的なものとしては例えば、ビス(2,4,6トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、チオキサントン類等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
光重合開始剤の使用量は、感光性ウレタン樹脂100質量部に対して、2~20質量部であることが好ましく、6~16質量部がより好ましい。光重合開始剤の含有量が感光性ウレタン樹脂100質量部に対して、2質量部未満では、感光性ウレタン樹脂の光硬化反応が進行し難くなり、20質量部を超えると、その加える量の割に硬化は向上せず、硬化膜の脆弱化が起こり、密着性の特性が発現しなくなる場合がある。
【0050】
(熱硬化剤)
熱硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100~700g/eqであることが好ましく、より好ましくは150~500g/eqである。
【0051】
熱硬化剤の使用量は、熱硬化剤がエポキシ樹脂の場合、エポキシ当量が、感光性ウレタン樹脂のアニオン性基に対して0.9~1.2当量となるように使用することが好ましい。エポキシ当量が、アニオン性基当量1に対して0.9以上であると、硬化膜の耐熱性を向上することができ、また、1.2以下であると、硬化膜の折り曲げ性を低下することなく、耐熱性を維持することができる。
【0052】
また、光硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損ねない範囲において、所望の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、光重合性化合物、他の感光性樹脂、難燃剤、着色剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0053】
本発明の感光性ウレタン樹脂は、従来公知の方法に従って光硬化性樹脂組成物とすることができる。例えば、感光性ウレタン樹脂に、光重合開始剤、熱硬化剤及びその他の任意成分を順次混合することにより光硬化性樹脂組成物を作製することができる。混合工程では、ビーズミルやロールミル等のミキサーを用いて各成分を混合することができる。
【0054】
<硬化膜>
本発明の感光性ウレタン樹脂を含有する光硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することにより硬化させ、所望厚みの硬化膜を得ることができる。
【0055】
光硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、所望の形状に形成した光硬化性樹脂組成物、具体的には、基材等の表面に所定の乾燥厚みとなるように光硬化性樹脂組成物を塗布し、樹脂層を形成し、乾燥させた後、エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができるが、硬化反応を効率良く行えるという観点から、紫外線を使用することが好ましい。
紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED等が挙げられる。
【0056】
硬化膜の膜厚としては、例えば、5~100μmとすることができ、画像表示装置等の電子機器材料として使用するには、10~50μmの厚みであることが好ましい。
【0057】
光硬化性樹脂組成物の好ましい用途としては、例えば、接着シート、カバーレイ、プリプレグ、感光性フィルム等が挙げられる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
1.感光性ウレタン樹脂の合成
(合成例1:感光性ウレタン樹脂(A)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を365g、無水マレイン酸を245g、1,6-ヘキサンジオールを661g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間134gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却し、ハイドロキノン0.11gを添加して、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオール(PE-1)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-1)の主鎖中の不飽和結合量は2.20mmol/g、OH価は59.5mgKOH/g、数平均分子量(GPC測定、PMMA換算)は2,000であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-1)を1000g、グリセリンモノメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー(登録商標)GLM」(製品名))(以下、GMA)を170g、ジメチロールブタン酸(以下、DMBA)を275g、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)を650g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン698gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、メチルエチルケトン(以下、MEK)1397gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(A))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(A)における主鎖中の不飽和結合量は1.05mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.89mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(A)について、JIS K0070により酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
尚、ポリエステルポリオールおよび感光性ウレタン樹脂の数平均分子量は、東ソー株式会社製GPC装置HCL-8320に、カラムTSKgel SuperMultipore HZ-M (2本)を、溶離液にはTHFを用いて測定し、標準溶液のポリメチルメタアクリレートにて換算した。
【0060】
(合成例2:感光性ウレタン樹脂(B)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール「エタナコール(登録商標)UH-200」(製品名)(水酸基価56.2mgKOH/g、数平均分子量2,200)を1000g、GMAを160g、DMBAを260g、IPDIを614g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン678gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1356gで系内を樹脂分50%となるように希釈して目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(B))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(B)における主鎖中の不飽和結合量は0mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.86mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(B)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は15,000であった。
【0061】
(合成例3:感光性ウレタン樹脂(C)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を730g、1,6-ヘキサンジオールを661g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間179gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却してポリエステルポリオール(PE-2)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-2)の主鎖中の不飽和結合量は0mmol/g、OH価は57.1mgKOH/g、数平均分子量は2,100であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-2)を1000g、GMAを163g、DMBAを264g、IPDIを624g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン684gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1367gで系内を樹脂分50%となるように希釈して目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(C))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(C)における主鎖中の不飽和結合量は0mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.87mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(C)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
【0062】
(合成例4:感光性ウレタン樹脂(D)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を1000g、GMAを42.4g、DMBAを392g、IPDIを650g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン695gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1390gで系内を樹脂分50%となるように希釈して目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(D))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(D)における主鎖中の不飽和結合量は1.06mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は1.27mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(D)について、酸価を測定したところ、72mgKOH/g、数平均分子量は13,500であった。
【0063】
(合成例5:感光性ウレタン樹脂(E)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を1000g、GMAを446g、DMBAを20g、IPDIを650g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン705gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1411gで系内を樹脂分50%となるように希釈して目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(E))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(E)における主鎖中の不飽和結合量は1.04mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.06mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(E)について、酸価を測定したところ、4mgKOH/g、数平均分子量は9,000であった。
【0064】
(合成例6:感光性ウレタン樹脂(F)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を800g、宇部興産製ポリカーボネートジオール「エタナコール(登録商標)UH-200」(製品名)(水酸基価56.2mgKOH/g)を200g、GMAを168g、DMBAを272g、IPDIを643g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン694gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1389gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(F))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(F)における主鎖中の不飽和結合量は0.85mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.88mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(F)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
【0065】
(合成例7:感光性ウレタン樹脂(G)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を600g、宇部興産製ポリカーボネートジオール「エタナコール(登録商標)UH-200」(製品名)(水酸基価56.2mgKOH/g)を400g、GMAを166g、DMBAを269g、IPDIを636g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン690gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1381gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(G))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(G)における主鎖中の不飽和結合量は0.64mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.88mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(G)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
【0066】
(合成例8:感光性ウレタン樹脂(H)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を400g、宇部興産製ポリカーボネートジオール「エタナコール(登録商標)UH-200」(製品名)(水酸基価56.2mgKOH/g)を600g、GMAを164g、DMBAを266g、IPDIを629g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン686gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1372gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(H))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(H)における主鎖中の不飽和結合量は0.43mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.87mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(H)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
【0067】
(合成例9:感光性ウレタン樹脂(I)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を438g、無水マレイン酸を196g、1,6-ヘキサンジオールを661g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間143gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却し、ハイドロキノン0.11gを添加して、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオール(PE-3)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-3)の主鎖中の不飽和結合量は1.74mmol/g、OH価は59.5mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-3)を1000g、GMAを170g、DMBAを271g、IPDIを630g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン690gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1381gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(I))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(I)における主鎖中の不飽和結合量は0.84mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.88mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(I)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は11,000であった。
【0068】
(合成例10:感光性ウレタン樹脂(J)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を511g、無水マレイン酸を147g、1,6-ヘキサンジオールを661g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間152gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却し、ハイドロキノン0.11gを添加して、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオール(PE-4)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-4)の主鎖中の不飽和結合量は1.29mmol/g、OH価は59mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-4)を1000g、GMAを168g、DMBAを265g、IPDIを598g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン677gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1354gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(J))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(J)における主鎖中の不飽和結合量は0.63mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.88mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(J)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は10,000であった。
【0069】
(合成例11:感光性ウレタン樹脂(K)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を584g、無水マレイン酸を98g、1,6-ヘキサンジオールを662g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間161gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却し、ハイドロキノン0.11gを添加して、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオール(PE-5)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-5)の主鎖中の不飽和結合量は1.06mmol/g、OH価は59mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-5)を1000g、GMAを168g、DMBAを265g、IPDIを598g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン677gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1354gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(K))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(K)における主鎖中の不飽和結合量は0.42mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.88mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(K)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は10,000であった。
【0070】
(合成例12:感光性ウレタン樹脂(L)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を1000g、GMAを246g、DMBAを196g、IPDIを640g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン694gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1389gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(L))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(L)における主鎖中の不飽和結合量は1.06mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.64mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(L)について、酸価を測定したところ、36mgKOH/g、数平均分子量は9,500であった。
【0071】
(合成例13:感光性ウレタン樹脂(M)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を300g、宇部興産株式会社製ポリカーボネートジオール「エタナコール(登録商標)UH-200」(製品名)(水酸基価56.2mgKOH/g)を700g、GMAを163g、DMBAを264g、IPDIを625g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン684gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1368gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(M))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(M)における主鎖中の不飽和結合量は0.32mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.87mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(M)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は12,000であった。
【0072】
(合成例14:感光性ウレタン樹脂(N)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた2リットルのフラスコに、アジピン酸を620.5g、無水マレイン酸を73.5g、1,6-ヘキサンジオールを664g仕込み、130℃まで加熱し、210℃まで4時間かけて昇温させた後、210℃でさらに2時間反応を行った。この間166gの縮合水を系外に取り出した。その後100℃まで冷却し、ハイドロキノン0.11gを添加して、主鎖中に不飽和結合を有するポリエステルポリオール(PE-6)を得た。
得られたポリエステルポリオール(PE-6)の主鎖中の不飽和結合量は0.63mmol/g、OH価は59.5mgKOH/g、数平均分子量は2,000であった。
次に、攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、ポリエステルポリオール(PE-6)を1000g、GMAを153g、DMBAを255g、IPDIを570g仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン659gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1319gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(N))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(N)における主鎖中の不飽和結合量は0.32mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.87mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(N)について、酸価を測定したところ、50mgKOH/g、数平均分子量は10,000であった。
【0073】
(合成例15:感光性ウレタン樹脂(O)の合成)
攪拌機、温度計および冷却管を備えた5リットルのフラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(PE-1)を1000g、GMAを272g、DMBAを173g、IPDIを656gを仕込み、反応系内が樹脂分75%となるようにトルエン700gをさらに仕込み100℃とした。NCO基がなくなるまで100℃で反応を行った後、MEK1400gで系内を樹脂分50%となるように希釈を行い目的のポリウレタン樹脂溶液(感光性ウレタン樹脂(O))を得た。
この感光性ウレタン樹脂(O)における主鎖中の不飽和結合量は1.05mmol/g、アニオン性基(カルボキシル基)の量は0.56mmol/gとなる。
また得られた感光性ウレタン樹脂(O)について、酸価を測定したところ、32mgKOH/g、数平均分子量は9,500であった。
【0074】
2.光硬化性樹脂組成物の物性評価
表1~表3に示す配合割合にて各成分を配合し、ミキサーにて混合させて、実施例1~18、比較例1~6の光硬化性樹脂組成物を得た。なお、表中の数値は質量部数を示しており、固形分換算に基づく質量部数である。また、熱硬化剤の当量数(eq)は感光性ウレタン樹脂のカルボキシル基量に対する当量数を示す。
【0075】
2-1.ドライフィルムの作製
上記で得た光硬化性樹脂組成物を、乾燥後の厚さが25μmの厚みとなるように25μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、110℃で5分間乾燥させた後、塗布面側にポリエチレンフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。
【0076】
2-2.耐現像性の評価
(1)試験片の作製
ドライフィルムのポリエチレンフィルムを剥離し、25μm厚のポリイミドフィルム(株式会社有沢製作所製「PKRW 1012RAH」のCu箔をフルエッチング)へ真空ラミネートにより貼り合わせ試験片を作製した。真空ラミネートは、真空度3hPa、熱板温度60℃、プレス圧力0.5MPa、プレス時間10秒にて実施した。
【0077】
(2)測定方法及び判定基準
超高圧水銀ランプにて300mJ/cmの紫外線を照射した後、PETフィルムを剥
離し、30℃、1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.18MPaで90秒間現像を行った。下記の判定基準に従い、光硬化性樹脂組成物の耐現象性を評価した。結果を表1~表3に示す。
〔判定基準〕
○:光硬化性樹脂組成物に異常無し
×:光硬化性樹脂組成物に膨れ、剥がれ発生
【0078】
2-3.はんだ耐熱性の評価(フラックス耐性)
(1)試験片の作製
ドライフィルムのポリエチレンフィルムを剥離し、35μm厚の電解銅箔へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、真空度3hPa、熱板温度60℃、プレス圧力0.5MPa、プレス時間10秒にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて300mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、PETフィルムを剥離し、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.18MPaで60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、150℃、90分硬化させ、試験片を作製した。
【0079】
(2)測定方法及び判定基準
はんだ槽にはんだを投入し、250℃に設定したはんだ液を準備した。試験片の光硬化性樹脂組成物層側の表面に、千住金属工業株式会社製フラックス(品番:WF-6317)を塗布した。塗布後、光硬化性樹脂組成物層側の面が上になるようにしてはんだ槽に10秒間フロートさせた。10秒後、試験片を取り出し、試験片に膨れ・剥がれがあるか否かを目視にて確認した。上記試験を1回とし、最大3回まで繰り返し試験を行い、下記判定基準に従って耐熱性を評価した。結果を表1~表3に示す。
〔判定基準〕
◎:3回繰り返しても試験片に膨れ・剥がれ無し
○:2回繰り返しても試験片に膨れ・剥がれ無し
×:2回未満で試験片に膨れ・剥がれ発生
【0080】
2-4.折り曲げ性の評価
(1)試験片の作製
25μm厚のポリイミド製基材の片側に、厚さ12μm、ライン幅75μm、スペース幅70μmの銅のストレート回路パターンを設けたフレキシブル銅張積層板(株式会社有沢製作所製「PNS H1012RAH」)を準備した。ドライフィルムのポリエチレンフィルムを剥離し、フレキシブル銅張積層板へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、真空度3hPa、熱板温度60℃、プレス圧力0.5MPa、プレス時間10秒にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランフ゜にて300mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、PETフィルムを剥離し、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.18MPaで60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、
150℃、90分硬化させ試験片を作製した。
【0081】
(2)測定方法及び判定基準
試験片を10mm×100mmにカットし、光硬化性樹脂組成物層が外側になるようにして試験片180°折り曲げた後(ハゼ折り)、折り曲げ部に500gの荷重をかけて10秒間保持した。10秒後、試験片を0°に戻し、折り曲げ部に500gの荷重をかけて10秒間保持した。折り曲げ部をデジタルマイクロスコープで観察し、ドライフィルム表面のクラックの有無を確認した。上記試験を1サイクルとし、最大5回サイクルまで確認し、下記判定基準に従って折り曲げ性を評価した。結果を表1~表3に示す。
〔判定基準〕
◎:5サイクル繰り返しても光硬化性樹脂組成物層の表面にクラック無し
○:3サイクル以上5サイクル未満で光硬化性樹脂組成物層の表面にクラック発生
△:1サイクル以上3サイクル未満で光硬化性樹脂組成物層の表面にクラック発生
×:1サイクル後に光硬化性樹脂組成物層の表面にクラック発生
【0082】
2-5.引きはがし強さ(密着性)の評価
(1)試験片の作製
ドライフィルムのポリエチレンフィルムを剥離し、35μm厚の電解銅箔へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、真空度3hPa、熱板温度60℃、プレス圧力0.5MPa、プレス時間10秒にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて300mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、PETフィルムを剥離し、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.18MPaで60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、150℃、90分硬化させた。硬化後、最大温度260℃のリフロー炉に2回通し、試験片を作製した。
【0083】
(2)測定方法及び判定基準
JPCA-BM02に準拠した試験方法で、電解銅箔を180°方向に引きはがし、光硬化性樹脂組成物層と電解銅箔の接着力を測定し、下記判定基準に従って密着性を評価した。結果を表1~表3に示す。
〔判定基準〕
◎:15N/cm以上
○:10N/cm以上15N/cm未満
×:10N/cm未満
【0084】
2-6.難燃性の評価
(1)試験片の作製
ドライフィルムのポリエチレンフィルムを剥離し、25μm厚のポリイミドフィルム(株式会社有沢製作所製「PKRW 1012RAH」のCu箔をフルエッチング)の両側へ真空ラミネートにより貼り合わせた。真空ラミネートは、真空度3hPa、熱板温度60℃、プレス圧力0.5MPa、プレス時間10秒にて実施した。真空ラミネート後、超高圧水銀ランプにて300mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、PETフィルムを剥離し、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液により、スプレー圧0.18MPaで60秒間現像を行った。現像後、高圧水銀ランプにて1,000mJ/cmの紫外線を照射した。照射後、熱風循環式乾燥機にて、150℃、90分硬化させ試験片を作製した。
【0085】
(2)測定方法及び判定基準
UL-94に準拠した試験方法で、難燃性を評価した。結果を表1~表3に示す。
〔判定基準〕
○:UL94規格に準ずる難燃性の判断基準であるVTM-0相当の難燃性あり
×:燃焼
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
なお、上記各例で使用した成分の詳細は下記の通りである。
・感光性ウレタン樹脂(A):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(1)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.89mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(B):主鎖にカーボネート結合を含み、不飽和結合を含まない感光性ウレタン樹脂、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.86mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(C):主鎖にエステル結合を含み、不飽和結合を含まない感光性ウレタン樹脂、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.87mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(D):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(2)、酸価72mgKOH/g、カルボキシル基量1.27mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(E):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(3)、酸価4mgKOH/g、カルボキシル基量0.06mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(F):主鎖にエステル結合及び不飽和結合及びカーボネート結合を含む感光性ウレタン樹脂(1)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.88mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(G):主鎖にエステル結合及び不飽和結合及びカーボネート結合を含む感光性ウレタン樹脂(2)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.88mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(H):主鎖にエステル結合及び不飽和結合及びカーボネート結合を含む感光性ウレタン樹脂(3)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.87mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(I):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(4)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.88mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(J):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(5)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.88mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(K):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(6)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.88mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(L):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(7)、酸価36mgKOH/g、カルボキシル基量0.64mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(M):主鎖にエステル結合及び不飽和結合及びカーボネート結合を含む感光性ウレタン樹脂(4)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.87mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(N):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(8)、酸価50mgKOH/g、カルボキシル基量0.87mmol/g
・感光性ウレタン樹脂(O):主鎖にエステル結合及び不飽和結合を含む感光性ウレタン樹脂(9)、酸価32mgKOH/g、カルボキシル基量0.56mmol/g
・酸変性エポキシアクリレート(P):光重合性化合物、日本化薬株式会社製「ZFR-1491H」(商品名)、カルボン酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート、Mw=11,000、酸価98mgKOH/g
・変性エポキシアクリレート(Q):光重合性化合物、ダイセル・オルネクス株式会社製「EBECRYL-3780」(商品名)、Mw=1,500、2官能
【0090】
・光重合開始剤(R):2,4,6-トリメチルメンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
・熱硬化剤(S):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量475
・熱硬化剤(T):フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量177
・難燃剤(U):ホスフィン酸金属塩
・着色剤(V):イソインドリン(黄顔料)
【0091】
表1~3の結果より、実施例1~18は優れた密着性を有するとともに、折り曲げ性と耐熱性にも優れることが分かった。これに対し、比較例1~6は、これらを両立させることができず、また耐現像性にも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の感光性ポリウレタン樹脂は、密着性と共に、優れた折り曲げ性と耐熱性を有しており、電子材料部品、特に回路基板のネガ型レジスト(カラーフィルター用顔料分散インキなども含む)、感光フィルム(ドライフィルムレジスト、感光カバーレイフィルム)、ソルダーレジスト、ベースフィルムなどに好適に用いることができる。