(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】吸気系部品
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20220222BHJP
F02M 35/12 20060101ALI20220222BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20220222BHJP
B29C 65/06 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F02M35/10 101N
F02M35/12 M
B29C65/02
B29C65/06
(21)【出願番号】P 2018144892
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】太田 将博
(72)【発明者】
【氏名】横山 智和
(72)【発明者】
【氏名】野口 卓也
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0142588(US,A1)
【文献】実開昭56-160119(JP,U)
【文献】特開2006-307755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/12
B29C 65/02
B29C 65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分割された第1部材,第2部材及び第3部材を加圧しつつ溶着させて形成されると共に、構造体及び閉塞空間を有する吸気系部品であって、
前記閉塞空間は、少なくとも前記第1部材に形成された天面、前記第2部材に形成された側壁部及び前記第3部材に形成された底面によって画成され、
前記構造体は、前記第2部材及び前記第3部材によって画成されると共に、前記構造体の溶着面の少なくとも一部が前記閉塞空間内に配置され、
前記
天面及び前記第2部材のいずれか一方は、前記
天面及び前記第2部材のいずれか他方の内壁面と当接する衝立部を備えることを特徴とする吸気系部品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気系部品において、
前記第2部材は、前記構造体の一部を構成する第1の構造体分割部を有し、
前記衝立部は、前記第1の構造体分割部の外縁に沿って配置されることを特徴とする吸気系部品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸気系部品において、
前記衝立部は、前記側壁部との間に所定の隙間を有することを特徴とする吸気系部品。
【請求項4】
請求項2または3に記載の吸気系部品において、
前記第3部材は、前記第1の構造体分割部に対応する第2の構造体分割部
を有することを特徴とする吸気系部品。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載の吸気系部品において、
前記第3部材は、前記第1部材と前記第2部材とを溶着した後に、前記第2部材に溶着されることを特徴とする吸気系部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気系部品に係り、特に、内燃機関の吸気通路を構成する吸気系部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に外気を導入する吸気通路には、外気を導入する際に外気に含まれる塵埃をろ過するためのエアクリーナや、吸気バルブが開閉することで生じた吸気騒音を低減するための消音装置など、種々の構造物が取り付けられており、これらの吸気通路にエアクリーナや消音装置などを備えた吸気系部品が知られている。
【0003】
このような吸気系部品は、合成樹脂等からなる複数の分割体を互いに溶着させて一体化することが行われており、合成樹脂化によって部品点数の削減や重量の低減など種々のメリットが知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載された吸気ダクトは、繊維成形体からなる2つの半割体が合されて構成されており、半割体を互いに熱溶着によって一体化する方法が記載されている。また、合成樹脂からなる複数の分割体を互いに溶着させる手段としては、熱溶着に限らず、例えば振動溶着や超音波溶着といった種々の溶着手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の吸気系部品の構成によると、特許文献1に記載されているように単純に2つの半割体で構成できるように吸気通路と構造物の配置を設定する必要があり、複雑な形態を設定することは難しいという問題があった。
【0007】
例えば、3つ以上の分割体で吸気系部品を構成する場合、第1部材と第2部材を1次溶着した後に、第3部材を2次溶着するという二段階に溶着工程を行うことが広く行われているが、複雑な形態となると、当該2次溶着において、第2部材と第3部材の溶着面が第1部材で覆われてしまい、加振治具などが溶着面を直接抑えることができずに、当該部位の溶着強度が低下するという問題があった。したがって、このような複雑な形態を有する構造を採用することができず、設計の自由度が低いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の部材を溶着した場合に直接押さえることができない溶着面を有していても所望の溶着強度を有する溶着を実現することができる吸気系部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吸気系部品は、互いに分割された第1部材,第2部材及び第3部材を加圧しつつ溶着させて形成されると共に、構造体及び閉塞空間を有する吸気系部品であって、前記閉塞空間は、少なくとも前記第1部材に形成された天面、前記第2部材に形成された側壁部及び前記第3部材に形成された底面によって画成され、前記構造体は、前記第2部材及び前記第3部材によって画成されると共に、前記構造体の溶着面の少なくとも一部が前記閉塞空間内に配置され、前記天面及び前記第2部材のいずれか一方は、前記天面及び前記第2部材のいずれか他方の内壁面と当接する衝立部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る吸気系部品において、前記第2部材は、前記構造体の一部を構成する第1の構造体分割部を有し、前記衝立部は、前記第1の構造体分割部の外縁に沿って配置されると好適である。
【0011】
また、本発明に係る吸気系部品において、前記衝立部は、前記側壁部との間に所定の隙間を有すると好適である。
【0012】
また、本発明に係る吸気系部品において、前記第3部材は、前記第1の構造体分割部に対応する第2の構造体分割部を有すると好適である。
【0014】
また、本発明に係る吸気系部品において、前記第3部材は、前記第1部材と前記第2部材とを溶着した後に、前記第2部材に溶着されると好適である。
【0015】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吸気系部品は、第1部材及び第2部材のいずれか一方は、第1部材及び第2部材のいずれか他方の内壁面と当接する衝立部を備えるので、第1部材及び第2部材を1次溶着した後、第3部材を2次溶着する場合でも、第1部材に当接した加振治具による振動が衝立部を介して溶着面を加振することができるので、直接溶着面を加振できない構造であっても、溶着強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸気系部品の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る吸気系部品の分解図。
【
図5】本発明の実施形態に係る吸気系部品の一次溶着の工程を説明するための斜視図。
【
図6】本発明の実施形態に係る吸気系部品の二次溶着の工程を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る吸気系部品の斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る吸気系部品の分解図であり、
図3は、第2部材と第3部材の構成を示す図であり、
図4は、
図1におけるA-A断面図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る吸気系部品の一次溶着の工程を説明するための斜視図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る吸気系部品の二次溶着の工程を説明するための斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る吸気系部品1は、内燃機関にろ過された外気を導入するための吸気通路となる構造体としての管路2と、管路2に一体的に取り付けられると共に、所定容量を有する箱状のレゾネータ本体となる閉塞空間3を有している。管路2は、内壁が平滑に形成された筒状部材であり、その断面形状は円形、楕円形、多角形など、種々の形態が知られている。
【0021】
管路2と閉塞空間3の内部はそれぞれ図示しない連通管によって連通しており、閉塞空間3の容積及び連通管の径並びに長さは、減衰しようとする周波数に応じてヘルムホルツの共鳴理論に基づいて決定される。そして、内燃機関の駆動によって吸気バルブが開閉することで生じる脈動音としての吸気騒音に応じた周波数に設定することで、これらの吸気騒音を低減することができるように構成されている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る吸気系部品1は、それぞれ合成樹脂によって形成された第1部材10,第2部材20及び第3部材30をそれぞれ重ね合わせて溶着によって一体化されている。ここで、具体的な溶着の方法は種々の溶着方法を適用することができるが、例えば、振動溶着が好適に用いられる。なお、具体的な溶着の方法については後述する。また、第1部材10,第2部材20及び第3部材30は、例えばポリアミド系樹脂やポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性の合成樹脂によって形成されていると好適である。
【0023】
第1部材10は、概略板状の部材であって、第2部材20の開口部を閉塞して閉塞空間3の上面を構成する天面11を備えている。
【0024】
第2部材20は、閉塞空間3の外周側面を構成する側壁部23が形成され、第1部材10及び第3部材30と対向する方向にそれぞれ開口部を有している。また、第2部材20は、管路2を構成する第1の構造体分割部24を有している。第1の構造体分割部24は、閉塞空間3の内部を通過するように配置されており、第1の構造体分割部24の延設方向に沿って第1の構造体溶着面21が形成されている。また、第1の構造体溶着面21の溶着面との反対面(第1部材10と対向する面)には、第1部材10の内壁面に当接するように立設する衝立部22が形成されている。
【0025】
さらに、
図3に示すように、第2部材20の第1の構造体溶着面21に形成された衝立部22は、閉塞空間3の外縁を形成する側壁部23との間に第1の構造体溶着面21の延設方向に沿った方向に隙間Gが形成されている。この隙間Gによって、閉塞空間3を完全に分割することなく、閉塞空間3の容量を確保している。なお、隙間Gの大きさについては、求められる要件に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
また、
図2に示すように、第3部材30は、第2部材20の下側の開口部に沿った外壁面と底面33を有する有底箱状の部材であり、第1の構造体分割部24に対応する第2の構造体分割部32が形成されている。第2の構造体分割部32は、第1の構造体分割部24の第1の構造体溶着面21に対応する第2の構造体溶着面31が形成されており、
図3に示すように、これら第1の構造体溶着面21と第2の構造体溶着面31を溶着することで閉塞空間3内を延設するように管路2を構成している。
【0027】
また、
図4に示すように、衝立部22は、第1の構造体溶着面21から立設して第1部材10の内壁面12に当接している。このため、後述するように第1部材10と第2部材20を一次溶着した後、第3部材30を二次溶着する場合、第1の構造体溶着面21と第2の構造体溶着面31を溶着する際に、第1部材10の上と第3部材30の下から押さえることで、第1の構造体溶着面21と第2の構造体溶着面31を衝立部22を介して押さえることができる。したがって、閉塞空間3の内部に管路2の溶着面が延設する場合であっても、当該溶着面を確実に押さえて加振することができるので、このような溶着面を有する設計が可能になるとともに、衝立部22を介して確実に溶着を行うことができるので、溶着強度が向上する。
【0028】
次に、
図5及び6を参照して本実施形態に係る吸気系部品の溶着方法について説明を行う。まず、一次溶着として、第1部材10と第2部材20との溶着を行う。一次溶着では、第2部材20の側壁部23の上方の開口端に第1部材10を組み付けて、これらの部材を上下方向から治具で押さえると共に、一方を加振して互いの溶着面を溶着する。
【0029】
また、一次溶着の後、第3部材30を第2部材20の下方の開口端に組み付けて溶着を行うが、このとき、上述したように、衝立部22が第1部材10の内壁面12に当接しているので、第1部材10を押さえることで、衝立部22を介して第1の構造体溶着面21と第2の構造体溶着面31を押さえることができるので、当該溶着面の溶着を確実かつ強固に行うことが可能となる。なお、第1の構造体溶着面21及び第2の構造体溶着面31以外の溶着面については、第2部材20の外縁部と第3部材30を押さえることで溶着を行うことができる。
【0030】
このように構成された本実施形態に係る吸気系部品1は、第1の構造体溶着面21と第2の構造体溶着面31といった、閉塞空間3に溶着面が伸びているような形状であっても確実に溶着を行うことができ、また、衝立部22によって確実に加振することで溶着強度も確保することができる。
【0031】
なお、上述した本実施形態に係る吸気系部品1は、衝立部22が第1の構造体溶着面21から概略垂直に立設した場合について説明を行ったが、衝立部を第1の構造体溶着面21に対して傾斜して形成しても構わない。このように構成することで、衝立部を有する第2部材を成形する金型にスライドコアを用いる必要がなくなり、金型の製造コストを抑えることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係る吸気系部品1は、第2部材20に衝立部22を形成した場合について説明を行ったが、衝立部22は、第1部材10の内壁面12から立設させて、第1の構造体溶着面21と当接するように構成しても構わない。
【0033】
さらに、本実施形態においては、吸気系部品として吸気通路とレゾネータとから成る消音装置に適用した場合について説明を行ったが、閉塞空間はレゾネータに限らず、例えばエアクリーナなどにも適用することが可能である。また、本実施形態においては、構造体として管路を形成した場合について説明を行ったが、構造体は管路に限らず、例えばレゾネータ内に小さな共鳴室を別途設ける場合の当該共鳴室を画成するための壁としても構わない。
【0034】
また、本実施形態においては、第1部材に天面を形成し、第3部材に底面を形成した場合について説明を行ったが、第1部材に底面を形成し、第3部材に天面を形成しても構わない。さらに、本実施形態においては、第1部材、第2部材及び第3部材を鉛直方向に重ねて組み合わせる場合について説明を行ったが、水平方向に重ねて互いに組み合わせても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 吸気系部品, 2 管路, 3 閉塞空間, 10 第1部材, 11 天面, 12 内壁面, 20 第2部材, 21 第1の構造体溶着面, 22 衝立部, 23 側壁部, 24 第1の構造体分割部, 30 第3部材, 31 第2の構造体溶着面, 32 第2の構造体分割部, 33 底面, G 隙間。