(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】生体適合性貫通電極付きガラス基板ならびに生体適合性小型電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20220222BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20220222BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220222BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220222BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220222BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20220222BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H05K1/03 610C
H01L23/14 C
H01L21/60 311Q
H05K3/28 C
H05K3/00 X
H05K3/40 K
H05K1/11 N
(21)【出願番号】P 2018221250
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】300078431
【氏名又は名称】ショット日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小根澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晃
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 寿仁
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055000(JP,A)
【文献】特開2008-245775(JP,A)
【文献】特表2012-524569(JP,A)
【文献】特開2008-120681(JP,A)
【文献】特開2004-195206(JP,A)
【文献】特表2017-506096(JP,A)
【文献】特表2011-511665(JP,A)
【文献】特表2008-511681(JP,A)
【文献】特表2008-512208(JP,A)
【文献】特表2003-529419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
H01L 23/15
H01L 21/60
H05K 3/28
H05K 3/00
H05K 3/40
H05K 1/11
A61F 9/00
A61N 1/00
A61L 27/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板と、前記ガラス板
の一方の面にSi半導体素子の一方の板面が隙間なく封着されかつ前記貫通電極
の片側と電気接続された
前記Si半導体素子からなる電気・電子装置と
、前記Si半導体素子の前記封着面と対向するガラス表面上の貫通電極上に円柱状ないし台形状または半球状ないし略球状のバンプと、のみからなる生体適合性電子デバイス。
【請求項2】
前記貫通電極は、少なくとも表面が生体適合性金属からなる請求項
1に記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項3】
前記生体適合性ガラスは、体内に存在する元素であるケイ素、ホウ素、カルシウム、ナトリウム、リン、酸素のみで構成され、主成分としてSiO
2のベースにNa
2O、CaOの少なくとも1つを含み、これに必要に応じてB
2O
3、P
2O
3の少なくとも1つをさらに含んだガラスからなる請求項
1または請求項
2に記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項4】
前記生体適合性金属は、体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金、タンタル、タングステン、チタン、チタン合金、Co-Cr合金、ステンレス鋼の何れかの1つからなる請求項
1ないし請求項
3の何れか1つに記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項5】
前記バンプは、生体適合性の軟金属である請求項
1ないし請求項4の何れか1つに記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項6】
前記軟金属は、金または金合金である請求項
5に記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項7】
前記生体適合性電子デバイスの隅角を丸くした請求項1ないし請求項6の何れか1つに記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項8】
前記デバイス表面にナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド樹脂の有機化学材または水酸化リン酸カルシウム、TiN、バイオガラス、炭素、アルミナ・セラミクス、ジルコニア・セラミクスの無機化学材からなる生体適合性被覆をさらに有する請求項
1ないし請求項
7の何れか1つに記載の生体適合性電子デバイス。
【請求項9】
前記生体適合性被覆は、前記有機化学材と前記無機化学材から構成した有機/無機複合被覆からなる請求項
8に記載の生体適合性電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプラント用の電気・電子装置に適用する生体適合性の貫通電極付きガラス基板ならびに生体適合性の小型電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インプラント(implant)とは、体内に埋め込まれる器具の総称である。 医療目的で広く行われ、失われた歯根に代えて顎骨に埋め込む人工歯根(デンタルインプラント)、骨折・リウマチ等の治療で骨を固定するためのボルトなどもあるが、心臓ペースメーカー、人工内耳の埋め込み部分のように、電力によって能動的に駆動する電気・電子装置からなるインプラントもある。このうち本発明は体内に埋め込まれ使用されるインプラント型電気・電子装置に適用される。
【0003】
インプラント型電子装置には、例えば、特許文献1に記載のシャントシステム用埋め込み型圧力センサがある。この圧力センサは、チタン製の回転部7を有するハウジングの中に、圧力センサ4を有するマイクロチップ、二つの分離した基板1a及び1b、並びに、他の電子部品2、3を収め、全ての部品は、ポッティング化合物8によりハウジング7の中に固定されている。フィルム11は膜を構成しており膜の下には、空気が満たされた空洞部があり、該空洞部は、圧力センサと直接接続されている。ハウジング7の端部はキャップ7aによってシールされ、溶接されている。電子部品は回路基板1に設置され、測定信号は、センサコイル13によって外部に設置された受信ユニットへ送信されることが開示されている。特許文献2に記載の埋め込み型医療装置は、検査対象に埋め込まれるように構成された圧力センサ等のセンサを備える。一旦埋め込まれると、センサは様々な動作環境条件下におかれ、これらの条件下における悪影響から保護するために、センサは液体カプセル化してパッケージングされている。本発明は、このようなインプラント型電子装置に用いる生体適合性の小型電子デバイスならびに生体適合性の貫通電極付きガラス基板に関する。
【0004】
貫通電極付きガラス基板の例として、特許文献3に記載の方法がある。特許文献3には、所定形状の耐熱部材とこの耐熱部材の軟化点より低い温度の軟化点を有するガラスまたはガラスセラミックの絶縁基板素材とを当接し、絶縁基板素材を軟化状態に加熱して重し荷重を付与し、耐熱部材を絶縁基板素材に食込ませた合体部材に融着加工し、徐冷後の合体部材に関し、表面研磨を含む仕上加工してガラスまたはガラスセラミック材に耐熱部材を貫通埋設した絶縁基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-145827号公報
【文献】特表2018-516102号公報
【文献】特開2007-067387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、インプラント型電子装置に用いられる電子デバイスは、生体への負担を軽減しながら該当部位への埋め込みをサポートするため、特に小さな形状要素であることが求められる。ある医療用途では、埋め込まれたインプラント型電子装置は、対象の体内環境に(例えば、体内にある特定の臓器の近傍に)一定期間保持される。動作中、埋め込まれた電子装置は、その期間、体内環境の様々な条件下に曝される。この条件は、埋め込まれた電子装置の短期的および長期的な動作に様々な影響をおよぼす。例えば、体液等の体内環境物質は、埋め込まれた電子装置の部品を腐食し得る。腐食は、生体状態をモニタリングする能力または医療処置を実施する能力を低下させる。
【0007】
本発明は、過酷な体内環境に置かれても頑健性を有し、かつ生体に悪影響が最小限に抑えることができる生体適合性に優れた生体適合性貫通電極付きガラス基板を提供し、生体適合性電子デバイスの小型化に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の観点によれば、生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた生体適合性金属の貫通電極とからなる生体適合性貫通電極付きガラス基板が提供される。
【0009】
本発明の第二の観点によれば、上記生体適合性貫通電極付きガラス基板を電気・電子装置に適用した生体適合性デバイスが提供される。本発明に係る生体適合性デバイスは、生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板と、上記ガラス板に封着されかつ上記貫通電極と電気・電子装置の回路配線を電気接続した電気・電子装置とからなる生体適合性デバイスが提供される。前記生体適合性デバイスの貫通電極には接続用のバンプを有する。
【0010】
本発明の第三の観点によれば、本発明に係る生体適合性電子デバイスの製造方法は、1)生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと電気・電子装置ウエハとを用意する準備工程と、2)生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと、電気・電子装置ウエハの所望の電極同士を突き合わせて互いに貼り合せるウエハ載置工程と、3)載置したウエハ同士を炉中で加熱し生体適合性ガラスと電気・電子装置の接触界面を気密封着して互いの電極同士を電気接続させて生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと電気・電子装置ウエハとを一体成形させる生体適合性ガラス封着工程と、4)生体適合性ガラス封着工程後、一体成形した前記ウエハのガラス貫通電極上に接続用のバンプを形成するバンプ形成工程と、5)さらにバンプ形成後、一体成形した前記ウエハをダイシングし、個々の電気・電子素子に分離して生体適合性電子デバイスとするダイシング工程からなる。バンプ形成工程では、バンプに替えて、前記電気・電子装置とは別の電気・電子部品を貫通電極に実装させてもよい。また、必要に応じて生体に与える機械的な刺激を軽減するために生体適合性電子デバイスの隅角を丸く加工する研磨工程を追加してもよい。さらに、生体適合性電子デバイスの表面に生体適合性被覆を施すための表面被覆工程を追加してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本開示の一実施形態によれば、生体適合性に優れた生体適合性貫通電極付きガラス基板を提供し、生体適合性電子デバイスの小型化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る生体適合性貫通電極付きガラス基板10の斜視図を示す。
【
図2】本発明に係る生体適合性電子デバイス20を示し、(a)は平面図を、(b)は(c)のD-D線で切断した正面断面図を、(c)は下面図を示す。
【
図3】本発明に係る生体適合性電子デバイスの製造方法30を示したフロー図である。
【
図4】本発明に係る生体適合性電子デバイスの製造方法40を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る生体適合性貫通電極付きガラス基板は、体内に存在する元素であるケイ素、ホウ素、カルシウム、ナトリウム、リン、酸素のみで構成され、主成分としてSiO2のベースにNa2O、CaOの少なくとも1つを含み、これに必要に応じてB2O3、P2O3の少なくとも1つをさらに含んだ生体適合性ガラスからなるガラス板と、このガラス板の板面を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金、タンタル、タングステン、チタン、チタン合金(例えば90Ti-6Al-4V)、Co-Cr合金(例えば63Co-30Cr-7Mo、52Co-21Cr-16W-11Ni)、ステンレス鋼(例えばSUS316Lの67.47Fe-18Cr-12Ni-2.5Mo-0.03C、SUS316の67.44Fe-18Cr-12Ni-2.5Mo-0.06C)の何れかの1つからなる生体適合性金属の貫通電極で構成される。この貫通電極は、少なくとも電極表面を前記生体適合性金属で構成する必要があるが、電極全体を前記生体適合性金属のみで構成するのが好ましい。
【0014】
本発明に係る生体適合性電子デバイスは、生体に埋め込み使用する半導体素子などの電気・電子装置に上記生体適合性貫通電極付きガラス基板を適用したものである。本発明に係る生体適合性電子デバイスは、体内に存在する元素であるケイ素、ホウ素、カルシウム、ナトリウム、リン、酸素のみで構成され、主成分としてSiO2のベースにNa2O、CaOの少なくとも1つを含み、これに必要に応じてB2O3、P2O3の少なくとも1つをさらに含んだ生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金、タンタル、タングステン、チタン、チタン合金(例えば90Ti-6Al-4V)、Co-Cr合金(例えば63Co-30Cr-7Mo、52Co-21Cr-16W-11Ni)、ステンレス鋼(例えばSUS316Lの67.47Fe-18Cr-12Ni-2.5Mo-0.03C、SUS316の67.44Fe-18Cr-12Ni-2.5Mo-0.06C)の何れかの1つからなる生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板と、このガラス基板のガラス板に封着されかつ上記貫通電極と電気接続されたSi半導体素子からなり、Si半導体素子の封着面と対向するガラス表面の貫通電極上には円柱状ないし台形状または半球状ないし略球状のバンプを有する。バンプは、生体適合性金属の軟金属であれば何れの材料を用いてもよく、特に限定されないが金または金合金のバンプが好ましい。また、必要に応じて生体に与える機械的な刺激を軽減するために生体適合性電子デバイスの隅角を丸くしてもよい。上記生体適合性電子デバイスにおいて、Si半導体素子の回路面は、上記生体適合性貫通電極付きガラス基板によって気密封止され保護される。
【0015】
本発明に係る生体適合性電子デバイスは、表面にナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド樹脂などから選択された有機化学材、または水酸化リン酸カルシウム、TiN、バイオガラス、炭素、アルミナ・セラミクス、ジルコニア・セラミクスなどから選択された無機化学材からなる生体適合性被覆をさらに施してもよい。
【0016】
前記生体適合性被覆は、前記有機化学材と前記無機化学材から構成した有機/無機複合被覆でもよい。
【0017】
本発明に係る生体適合性電子デバイスの製造方法は、1)体内に存在する元素であるケイ素、ホウ素、カルシウム、ナトリウム、リン、酸素のみで構成され、主成分としてSiO2のベースにNa2O、CaOの少なくとも1つを含み、これに必要に応じてB2O3、P2O3の少なくとも1つをさらに含んだ生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金、タンタル、タングステン、チタン、ステンレス鋼の何れかの1つからなる生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと生体に埋め込み使用するSi半導体ウエハとを用意する準備工程、2)生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハとSi半導体ウエハとの所望電極同士を突き合わせてガラス面とを貼り合せるウエハ載置工程、3)載置したウエハ同士を炉中で加熱し生体適合性ガラスとSi半導体素子の接触界面を気密封着して互いの電極同士を電気接続させてガラス封止半導体ウエハを形成させる生体適合性ガラス封着工程、4)その後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハの貫通電極上に円柱状ないし台形状または半球状ないし略球状のバンプを形成するバンプ形成工程、5)バンプ形成後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハをダイシングして個々の電気・電子素子に分離して生体適合性電子デバイスとするダイシング工程からなる。
【0018】
上記バンプ形成工程では、バンプの一部に替えて上記Si半導体素子とは別の半導体素子からなる能動部品や、例えばコンデンサ、抵抗器、コイル、アンテナ、各種センサなどの受動部品や機構部品等の他の電気・電子素子を貫通電極に実装させてもよい。バンプは、生体適合性の軟金属であれば何れの材料を用いてもよく、特に限定されないが金または金合金製のバンプが好ましい。また、必要に応じて生体に与える機械的な刺激を軽減するために生体適合性電子デバイスの隅角を丸く加工する研磨工程を追加してもよい。例えば、研磨工程には、ガラス面の隅角を丸く加工するためのファイヤポーリッシュや半導体端面の隅角を丸くするための化学的、機械的研磨などの任意の研磨工程の少なくとも何れか1つを含むことができる。さらに、生体適合性電子デバイス表面の一部または全部にナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド樹脂などの有機化学材または水酸化リン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイトのCa10(PO4)6(OH)2)、TiN、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O3)、炭素、アルミナ・セラミクス、ジルコニア・セラミクス等の無機化学材からなる生体適合性被覆材を施す被覆工程を追加してもよい。生体適合性電子デバイスの表面への被覆材の被覆方法は、どのような方法を用いてもよく特に限定されないが、例えばChemical Vapour Deposition(CVD)による厚さ2~30μm程度の薄膜コーティングでもよい。
【0019】
前記被覆工程は、生体適合性電子デバイスの表面に、先ず前記CVDにより、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド樹脂などから選択された有機化学材の被覆を施した後、さらに水酸化リン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイトのCa10(PO4)6(OH)2)、TiN、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O3)、炭素、アルミナ・セラミクス、ジルコニア・セラミクスなどから選択された被膜を施して有機/無機複合被覆としてもよい。
【実施例】
【0020】
本発明に係る実施例1の生体適合性貫通電極付きガラス基板10は、
図1に示すように、体内に存在する元素であるケイ素、カルシウム、ナトリウム、酸素のみで構成され、SiO
2のベースにNa
2OとCaOを含んだ生体適合性ガラスからなるガラス板11と、ガラス板11の板面を貫通して設けられた生体適合性金属の白金からなる貫通電極12で構成される。
【0021】
本発明に係る実施例2の生体適合性電子デバイス20は、生体に埋め込み使用するSi半導体素子の電極材および絶縁材に上記生体適合性貫通電極付きガラス基板10を適用したものである。生体適合性電子デバイス20は、
図2に示すように、体内に存在する元素であるケイ素、カルシウム、ナトリウム、酸素のみで構成され、主成分としてSiO
2のベースにNa
2O、CaOを含んだ生体適合性ガラスのガラス板21と、ガラス板21を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金からなる生体適合性金属の貫通電極22を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板23と、ガラス基板23のガラス板21に封着されかつ貫通電極22と電気接続されたSi半導体素子24からなり、Si半導体素子24の封着面とは別のもう一方のガラス表面の貫通電極22に略球状の金バンプ25を有する。
【0022】
本発明に係る実施例3の生体適合性電子デバイスの製造方法30は、上記生体適合性電子デバイス20の製造方法である。生体適合性電子デバイスの製造方法30は、
図3に示すように、1)体内に存在する元素であるケイ素、カルシウム、ナトリウム、酸素のみで構成され、主成分としてSiO
2のベースにNa
2O、CaOを含んだ生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金からなる生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと、生体に埋め込み使用するSi半導体ウエハとを用意する準備工程31、2)生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハとSi半導体ウエハとの所望の電極同士を突き合わせてガラス面とを貼り合せるウエハ載置工程32、3)載置したウエハ同士を炉中で加熱し生体適合性ガラスとSi半導体素子の接触界面を気密封着して互いの電極同士を電気接続させてガラス封止半導体ウエハを形成させる生体適合性ガラス封着工程33、4)その後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハのもう一方の貫通電極上に略球状の金バンプを形成するバンプ形成工程34、5)バンプ形成後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハをダイシングして個々の電気・電子素子に分離して生体適合性電子デバイスとするダイシング工程35からなる。
【0023】
本発明に係る実施例4の生体適合性電子デバイスの製造方法40は、上記生体適合性電子デバイス20の製造方法である。生体適合性電子デバイスの製造方法40は、
図4に示すように、1)体内に存在する元素であるケイ素、カルシウム、ナトリウム、酸素のみで構成され、主成分としてSiO
2のベースにNa
2O、CaOを含んだ生体適合性ガラスのガラス板と、このガラス板を貫通して設けられた体内環境で不溶性かつ非腐食性の白金からなる生体適合性金属の貫通電極を有する生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハと、生体に埋め込み使用するSi半導体ウエハとを用意する準備工程41、2)生体適合性貫通電極付きガラス基板ウエハとSi半導体ウエハとの所望電極同士を突き合わせてガラス面とを貼り合せるウエハ載置工程42、3)載置したウエハ同士を炉中で加熱し生体適合性ガラスとSi半導体素子の接触界面を気密封着して互いの電極同士を電気接続させてガラス封止半導体ウエハを形成させる生体適合性ガラス封着工程43、4)その後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハのもう一方の貫通電極上に略球状の金バンプを形成するバンプ形成工程44、5)バンプ形成後この生体適合性ガラス封止半導体ウエハをダイシングして個々の電気・電子素子に分離して生体適合性電子デバイスとするダイシング工程45からなる。上記バンプ形成工程44では、金バンプの他に、バンプに替えて上記Si半導体素子とは別の半導体素子や、コンデンサ、抵抗器、コイル、アンテナ、センサの受動部品や機構部品を貫通電極に実装させることができる。その後、生体に与える機械的な刺激を軽減するために生体適合性電子デバイスの隅角を丸く加工する研磨工程46を行う。研磨工程46には、ガラス面の隅角を丸く加工するため化学的、機械的研磨を含む。さらに、必要に応じて生体適合性電子デバイスの表面に水酸化リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトのCa
10(PO
4)
6(OH)
2)からなる生体適合性被覆材を施す被覆工程47を行う。被覆はChemical Vapour Deposition(C
VD)により厚さ3ないし5μmの薄膜コーティングを施す。
【0024】
前記生体適合性被覆材を施す被覆工程47は、生体適合性電子デバイスの表面に、先ず前記CVDにより、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド樹脂から選択された有機化学材の厚さ3ないし5μmの薄膜コーティングを施した後、さらに上記水酸化リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトのCa10(PO4)6(OH)2)のCVD被膜を施して有機/無機複合被覆としてもよい。
【0025】
本発明に係る生体適合性貫通電極付きガラス基板によって半導体素子そのものを直接気密封止することができるので、生体適合性電子デバイスのパッケージレス化、小型化に寄与する。また、生体適合性電子デバイスのフリップチップ化により、生体適合性電子デバイスの高密度実装ならびに高機能化を容易にする。
【0026】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、インプラント用の貫通電極付きガラス基板およびインプラント型電子装置に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
生体適合性貫通電極付きガラス基板10、ガラス板11、貫通電極12、生体適合性電子デバイス20、ガラス板21、貫通電極22、生体適合性貫通電極付きガラス基板23、半導体素子24、バンプ25、生体適合性電子デバイスの製造方法30、準備工程31、ウエハ載置工程32、生体適合性ガラス封着工程33、バンプ形成工程34、ダイシング工程35、生体適合性電子デバイスの製造方法40、準備工程41、ウエハ載置工程42、生体適合性ガラス封着工程43、バンプ形成工程44、ダイシング工程45研磨工程46、被覆工程47。