(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】スプール弁
(51)【国際特許分類】
F16K 3/24 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
F16K3/24 D
(21)【出願番号】P 2018247218
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 泰久
(72)【発明者】
【氏名】南谷 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】西川 桂一
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚史
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-189677(JP,U)
【文献】実開昭55-132556(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231135(US,A1)
【文献】特開昭58-074980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0043287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00 - 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる円筒状であり、前記軸線方向において互いに離れた第1ポート及び第2ポートが形成されたスリーブと、
前記軸線方向に延びて縮径部を有する円柱状であり、前記スリーブの内部を前記軸線方向に移動して前記第1ポートを開閉することで、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通及び遮断するスプールと、を備え、
前記第1ポートは、前記スリーブの周方向において第1幅を有する貫通孔である第1貫通部と、前記スリーブの周方向において前記第1幅と異なる第2幅を有する貫通孔である第2貫通部とを含
み、
前記第1貫通部及び前記第2貫通部の少なくとも一方は、前記スリーブの周方向に一辺が沿った三角孔であり、前記三角孔の角は丸くなっている、スプール弁。
【請求項2】
前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部よりも前記第2ポートから離れた位置に形成されており、
前記第2幅は前記第1幅よりも大きい、請求項
1に記載のスプール弁。
【請求項3】
前記軸線方向において、前記第1貫通部が存在する範囲と、前記第2貫通部が存在する範囲とが一部重複している、請求項
2に記載のスプール弁。
【請求項4】
前記第1貫通部と前記第2貫通部とは、前記スリーブの周方向において互いに重複しない位置に形成されている、請求項
3に記載のスプール弁。
【請求項5】
前記軸線方向において前記スプールを前記第2ポートから前記第1ポートの方向へ最大限移動させた状態で、前記第2貫通部のうち開放された部分は半分以下である、請求項
2~4のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項6】
前記第1ポートは、複数の前記第1貫通部を含み、
複数の前記第1貫通部は、前記軸線方向における位置が互いに異なっている、請求項
2~5のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項7】
前記第1ポートは、前記軸線方向において前記第1貫通部と前記第2貫通部との間の位置に形成され、前記スリーブの周方向において前記第1幅よりも大きく前記第2幅よりも小さい第3幅を有する貫通孔である第3貫通部を含む、請求項
2~6のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項8】
軸線方向に延びる円筒状であり、前記軸線方向において互いに離れた第1ポート及び第2ポートが形成されたスリーブと、
前記軸線方向に延びて縮径部を有する円柱状であり、前記スリーブの内部を前記軸線方向に移動して前記第1ポートを開閉することで、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通及び遮断するスプールと、を備え、
前記第1ポートは、前記スリーブの周方向において第1幅を有する貫通孔である第1貫通部と、前記スリーブの周方向において前記第1幅と異なる第2幅を有する貫通孔である第2貫通部とを含み、
前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部と同じ位置に形成されており、
前記軸線方向における前記第2貫通部の幅は、前記軸線方向における前記第1貫通部の幅よりも大きい
、スプール弁。
【請求項9】
前記第1貫通部は、前記スリーブの周方向において前記第1幅としての第1径を有する円孔又は長円孔であり、
前記第2貫通部は、前記スリーブの周方向において前記第1径と異なる前記第2幅としての第2径を有する円孔又は長円孔である、請求項
8に記載のスプール弁。
【請求項10】
前記第1貫通部及び前記第2貫通部の少なくとも一方は、前記スリーブの周方向に一辺が沿った三角孔であり、前記三角孔の角は丸くなっている、請求項8に記載のスプール弁。
【請求項11】
前記スリーブの周方向において、複数の前記第1ポートが互いに異なる位置に形成されており、
前記スリーブを内部に収納し、複数の前記第1ポートを互いに連通させる円環状の第1溝と、前記第1溝を外部に連通させる第1ボディ貫通孔とが形成された弁ボディを備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のスプール弁。
【請求項12】
前記スリーブの周方向において、複数の前記第2ポートが互いに異なる位置に形成されており、
前記弁ボディには、複数の前記第2ポートを互いに連通させる円環状の第2溝と、前記第2溝を外部に連通させる第2ボディ貫通孔とが形成されている、請求項11に記載のスプール弁。
【請求項13】
前記第1ポートと前記第2ポートとの組み合わせにより1つの弁部が構成されており、
前記軸線方向に並んだ前記弁部である第1弁部と第2弁部とを備え、
前記第1弁部において、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部よりも前記第2ポートから離れた位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きく、
前記第2弁部において、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部と同じ位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きく、
前記スプールには、前記第1弁部及び前記第2弁部に対してそれぞれ前記縮径部が形成されている、請求項
1に記載のスプール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御するスプール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のポートが形成された円筒状のスリーブと、スリーブの内部を軸線方向に移動することでポートを開閉する円柱状のスプールと、を備えるスプール弁がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載のスプール弁では、スプールにおいてポートを閉鎖する閉鎖部の端部に、スプールの径を軸線方向で徐々に変化させる傾斜部を形成している。そして、傾斜部の形状を調節することにより、軸線方向におけるスプールの移動量と流体の流量増加量との関係(流量の傾き)を所望の関係に設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のスプール弁では、スプールの傾斜部を高い精度で加工する必要があり、製造難度が高くなることが避けられない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、軸線方向におけるスプールの移動量と流体の流量増加量との関係を柔軟に設定することができ、且つ製造難度が高くなることを抑制することのできるスプール弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、スプール弁であって、
軸線方向に延びる円筒状であり、前記軸線方向において互いに離れた第1ポート及び第2ポートが形成されたスリーブと、
前記軸線方向に延びて縮径部を有する円柱状であり、前記スリーブの内部を前記軸線方向に移動して前記第1ポートを開閉することで、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通及び遮断するスプールと、を備え、
前記第1ポートは、前記スリーブの周方向において第1幅を有する貫通孔である第1貫通部と、前記スリーブの周方向において前記第1幅と異なる第2幅を有する貫通孔である第2貫通部とを含む。
【0007】
上記構成によれば、スリーブは、軸線方向に延びる円筒状であり、軸線方向において互いに離れた第1ポート及び第2ポートが形成されている。スプールは、軸線方向に延びて縮径部を有する円柱状であり、スリーブの内部を軸線方向に移動して第1ポートを開閉する。これにより、スプールは第1ポートと第2ポートとを連通及び遮断する。このため、スプールにより第1ポートの開放面積を調節することで、第1ポートと第2ポートとの間で流れる流体の流量を制御することができる。
【0008】
ここで、第1ポートは、スリーブの周方向において第1幅を有する貫通孔である第1貫通部と、スリーブの周方向において第1幅と異なる第2幅を有する貫通孔である第2貫通部とを含んでいる。このため、軸線方向におけるスプールの移動量に応じて、例えば第2貫通部が閉鎖されており且つ第1貫通部の一部又は全部が開放された状態、第1貫通部の全部が開放されており且つ第2貫通部の一部が開放された状態、第1貫通部の全部及び第2貫通部の全部が開放された状態等(他の状態もあり得る)を実現することができる。そして、これらの状態では、軸線方向におけるスプールの移動量と流体の流量増加量との関係(流量の傾き)が互いに異なる。したがって、軸線方向における第1貫通部及び第2貫通部の位置や、第1幅、第2幅を調節することにより、軸線方向におけるスプールの移動量と流体の流量増加量との関係を柔軟に設定することができる。なお、軸線方向における第1貫通部及び第2貫通部の位置は、第2ポートから第1貫通部及び第2貫通部のそれぞれの第2ポート側の端までの距離で定義する。
【0009】
さらに、第1貫通部及び第2貫通部は貫通孔であるため、ドリル等の孔加工により容易に形成することができる。また、軸線方向における第1貫通部及び第2貫通部の位置や、第1幅、第2幅を調節することにより、スプールの移動量と流体の流量増加量との関係を設定することができるため、スプールに背景技術のような傾斜部を形成する必要がない。したがって、スプール弁の製造難度が高くなることを抑制することができる。
【0010】
第2の手段では、前記第1貫通部は、前記スリーブの周方向において前記第1幅としての第1径を有する円孔又は長円孔であり、前記第2貫通部は、前記スリーブの周方向において前記第1径と異なる前記第2幅としての第2径を有する円孔又は長円孔である。
【0011】
上記構成によれば、孔の形状が簡素であるため、加工後のばり除去等(仕上げ)が容易であるとともに、応力集中を抑制して剛性を向上させることができる。このため、スリーブの曲がり(変形)を抑制することができ、スプールの摺動性を向上させることができる。
【0012】
第3の手段では、前記第1貫通部及び前記第2貫通部の少なくとも一方は、前記スリーブの周方向に一辺が沿った三角孔であり、前記三角孔の角は丸くなっている。このため、応力集中を抑制して剛性を向上させることができる。したがって、スリーブの曲がり(変形)を抑制することができ、スプールの摺動性を向上させることができる。
【0013】
第4の手段では、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部よりも前記第2ポートから離れた位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きい。
【0014】
上記構成によれば、第2貫通部は、軸線方向において第1貫通部よりも第2ポートから離れた位置に形成されている。このため、第1ポートをスプールが閉鎖した状態において、第2ポートから第1ポートの方向へスプールが移動すると、まず第1貫通部が開放され、続いて第2貫通部が開放される。そして、第2貫通部の第2幅は、第1貫通部の第1幅よりも大きい。このため、第2貫通部が閉鎖されており且つ第1貫通部の開放面積が増加する間、すなわち第1ポートの開き始めに、流体の流量の傾きを小さくすることができる。したがって、第1ポートの開き始めに、流体の流量を微調整し易くなる。さらに、第1ポートを閉鎖した状態において、スリーブの内周面とスプールの外周面との間から漏れる流体は、第1幅よりも大きい第2幅の第2貫通部を介しては流れにくいため、流体の漏れ量を減少させることができる。
【0015】
その後、第2貫通部の開放面積が増加することにより、第1貫通部の開放面積が増加する時よりも、スプールの移動量に対する流量増加量(流量の傾き)を大きくすることができる。このため、流量の傾きを、第1傾きから第1傾きよりも大きい第2傾きに変化させるスプール弁において、所定の目標流量を確保するために必要なスリーブの長さを短くすることができる。
【0016】
第1貫通部がスリーブの周方向において第1径を有する円孔又は長円孔である場合は、第1貫通部の開放面積の増加速度は前半で上昇し後半で低下する。
【0017】
この点、第5の手段では、前記軸線方向において、前記第1貫通部が存在する範囲と、前記第2貫通部が存在する範囲とが一部重複している。したがって、第1貫通部が全開するまでに第2貫通部を開き始めることができ、第1ポートの開放面積の増加速度が上昇後に低下することを抑制することができる。すなわち、第2貫通部が開き始める際に、流体の流量の傾きが減少することを抑制することができる。
【0018】
軸線方向において、第1貫通部が存在する範囲と、第2貫通部が存在する範囲とが一部重複している場合、第1貫通部と第2貫通部とが繋がるおそれがある。第1貫通部と第2貫通部とが繋がると、第1ポートの形状が複雑になり、スリーブの強度が低下するおそれがある。
【0019】
この点、第6の手段では、前記第1貫通部と前記第2貫通部とは、前記スリーブの周方向において互いに重複しない位置に形成されている。したがって、軸線方向において、第1貫通部が存在する範囲と、第2貫通部が存在する範囲とが一部重複している場合も、第1貫通部と第2貫通部とが繋がることを抑制することができる。
【0020】
第7の手段では、前記軸線方向において前記スプールを前記第2ポートから前記第1ポートの方向へ最大限移動させた状態で、前記第2貫通部のうち開放された部分は半分以下である。このため、第2貫通部がスリーブの周方向において第1径を有する円孔又は長円孔である場合も、第2貫通部の開放面積の増加速度が上昇する範囲内で、流体の流量を制御することができる。したがって、第2貫通部が開き始めた後に、流体の流量の傾きが減少することを抑制することができる。
【0021】
第8の手段では、前記第1ポートは、複数の前記第1貫通部を含み、複数の前記第1貫通部は、前記軸線方向における位置が互いに異なっている。
【0022】
上記構成によれば、第1ポートは、複数の前記第1貫通部を含む。このため、第1貫通部の数を調節することによって、第1ポートの開き始めにおけるスプールの移動量と流量増加量との関係を容易に設定することができる。さらに、複数の第1貫通部は、軸線方向における位置が互いに異なっている。このため、第1ポートを閉鎖した状態において、スプールの縮径部に近い位置の第1貫通部を減らすことができ、スリーブの内周面とスプールの外周面との間からの流体の漏れ量を減少させることができる。
【0023】
第9の手段では、前記第1ポートは、前記軸線方向において前記第1貫通部と前記第2貫通部との間の位置に形成され、前記スリーブの周方向において前記第1幅よりも大きく前記第2幅よりも小さい第3幅を有する貫通孔である第3貫通部を含む。
【0024】
上記構成によれば、第1ポートは、軸線方向において第1貫通部と第2貫通部との間の位置に形成された第3貫通部を含んでいる。このため、第1ポートをスプールが閉鎖した状態において、第2ポートから第1ポートの方向へスプールが移動すると、まず第1貫通部が開放され、続いて第3貫通部が開放され、続いて第2貫通部が開放される。そして、第3貫通部は、スリーブの周方向において第1幅よりも大きく第2幅よりも小さい第3幅を有する貫通孔である。このため、第1貫通部の開放面積が増加する時と、第2貫通部の開放面積が増加する時との間において、流体の流量の傾きをそれらの時の中間の傾きに設定し易くなる。
【0025】
第10の手段では、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部と同じ位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きい。
【0026】
上記構成によれば、第2貫通部は、軸線方向において第1貫通部と同じ位置に形成されている。このため、第1ポートをスプールが閉鎖した状態において、第2ポートから第1ポートの方向へスプールが移動すると、第1貫通部及び第2貫通部が同時に開放され始める。このため、第1貫通部及び第2貫通部の開放面積が共に増加する間、すなわち第1ポートの開き始めに、流体の流量の傾きを大きくすることができる。
【0027】
ここで、軸線方向における第2貫通部の幅が、軸線方向における第1貫通部の幅よりも大きい場合、第2ポートから第1ポートの方向へスプールがさらに移動すると、第1貫通部の全部が開放され、第2貫通部の開放面積のみが増加する。これにより、第1貫通部及び第2貫通部の開放面積が増加する時よりも、流体の流量の傾きを小さく設定し易くなる。したがって、流体の流量の傾きを、第3傾きから第3傾きよりも小さい第4傾きに変化させるスプール弁において、所定の目標流量を確保するために必要なスリーブの長さを短くすることができる。
【0028】
第11の手段では、前記スリーブの周方向において、複数の前記第1ポートが互いに異なる位置に形成されており、前記スリーブを内部に収納し、複数の前記第1ポートを互いに連通させる円環状の第1溝と、前記第1溝を外部に連通させる第1ボディ貫通孔とが形成された弁ボディを備える。
【0029】
上記構成によれば、スリーブの周方向において、複数の第1ポートが互いに異なる位置に形成されている。このため、複数の第1ポートを介して、スリーブの内部と外部との間で流体を流通させることができる。そして、スプール弁は、スリーブを内部に収納する弁ボディを備えている。弁ボディには、複数の第1ポートを互いに連通させる円環状の第1溝と、第1溝を外部に連通させる第1ボディ貫通孔とが形成されている。このため、円環状の第1溝及び第1ボディ貫通孔を介して、複数の第1ポートと弁ボディの外部との間で流体を流通させることができる。したがって、スプール弁を流通する流体の最大流量を大きくしつつ、スリーブの内部と弁ボディの外部との間で流体を容易に流通させることができる。
【0030】
第12の手段では、前記スリーブの周方向において、複数の前記第2ポートが互いに異なる位置に形成されており、前記弁ボディには、複数の前記第2ポートを互いに連通させる円環状の第2溝と、前記第2溝を外部に連通させる第2ボディ貫通孔とが形成されている。
【0031】
上記構成によれば、スリーブの周方向において、複数の第2ポートが互いに異なる位置に形成されている。このため、複数の第2ポートを介して、スリーブの内部と外部との間で流体を流通させることができる。弁ボディには、複数の第2ポートを互いに連通させる円環状の第2溝と、第2溝を外部に連通させる第2ボディ貫通孔とが形成されている。このため、円環状の第2溝及び第2ボディ貫通孔を介して、複数の第2ポートと弁ボディの外部との間で流体を流通させることができる。したがって、スプール弁を流通する流体の最大流量を大きくしつつ、スリーブの内部と弁ボディの外部との間で流体を容易に流通させることができる。
【0032】
第13の手段では、前記第1ポートと前記第2ポートとの組み合わせにより1つの弁部が構成されており、前記軸線方向に並んだ前記弁部である第1弁部と第2弁部とを備え、前記第1弁部において、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部よりも前記第2ポートから離れた位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きく、前記第2弁部において、前記第2貫通部は、前記軸線方向において前記第1貫通部と同じ位置に形成されており、前記第2幅は前記第1幅よりも大きく、前記スプールには、前記第1弁部及び前記第2弁部に対してそれぞれ前記縮径部が形成されている。
【0033】
上記構成によれば、第1ポートと第2ポートとの組み合わせにより1つの弁部が構成されている。このため、1つの弁部により、1つの流体の流量を制御することができる。スプール弁は、軸線方向に並んだ弁部である第1弁部と第2弁部とを備えている。そして、スプールには、第1弁部及び第2弁部に対してそれぞれ縮径部が形成されている。このため、スプール弁は、1つのスプールにより複数の流体の流量を制御することができる。
【0034】
さらに、第1弁部は、流量の傾きを、第1傾きから第1傾きよりも大きい第2傾きに変化させることができる。一方、第2弁部は、流量の傾きを、第3傾きから第3傾きよりも小さい第4傾きに変化させることができる。このため、第1弁部の一方のポートと第2弁部の一方のポートとを連通させて、スプール弁を混合弁として用いた場合に、混合された流体の流量を一定に近付けることができる。また、上記混合弁において流体の流通方向を逆にすることにより、スプール弁を分配弁として用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図3】スプールとスリーブの孔との位置関係を示す図。
【
図4】
図3の一点鎖線囲み部分を拡大して示す拡大展開図。
【
図5】制御指令値と流量と孔の開放部分との関係を示す図。
【
図6】制御指令値と各弁部の流量との関係を示すグラフ。
【
図7】スプールの位置と各弁部の開閉状態との関係を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、スプール弁を備えるスプール弁装置として具現化している。
【0037】
図1に示すように、スプール弁装置10は、流体制御弁としてのスプール弁11と、スプール弁11を動作させる駆動部12とを備えている。スプール弁11は、円柱状のスプール21と、スプール21を摺動可能に支持しているスリーブ22と、スプール21及びスリーブ22を収納している弁ボディ23とを含んで構成されている。スリーブ22は円筒状に形成されており、弁ボディ23は略直方体形状のケース体とされている。スプール弁11においては、スリーブ22及び弁ボディ23の各内部空間により弁室24が形成されており、その弁室24にスプール21が収納されている。スプール21は、弁室24よりも軸線方向の長さ寸法が小さくされており、弁室24においてスプール21の軸線方向に摺動可能とされている。
【0038】
スリーブ22には、弁室24に通じるポート26A,26B,26C,27A,27B,27Cが形成されている。スリーブ22の周方向において、複数の第1ポート26Aが互いに異なる位置に形成されている。ポート26B,26C,27A,27B,27Cも同様である。ポート26A,26B,26C,27A,27B,27Cは液体や気体などの流体が流れる流体通路とされている。第1ポート26A,26B,26Cは、流体を弁室24に供給する供給ポートとされている。第2ポート27A,27B,27Cは、弁室24から流体が排出される排出ポートとされている。それらポート26A,26B,26C,27A,27B,27Cは、スプール21の軸線方向において並んで設けられている。
【0039】
第1ポート26A,26B,26Cを含む各供給経路の概略について説明する。第1ポート26Aは、第1スリーブ周溝36Aと第1ボディ周溝41Aとを介して、第1ボディ貫通孔39Aに連通している。第1ポート26B,26C、第1スリーブ周溝36B,36C、第1ボディ周溝41B,41C、第1ボディ貫通孔39B,39Cも同様である。
【0040】
スリーブ22の外周面には、その周方向に延びる(円環状の)第1スリーブ周溝36A,36B,36Cが形成されている。第1スリーブ周溝36Aは、複数の第1ポート26Aを互いに連通させている。弁ボディ23の内周面には、その周方向に延びる(円環状の)第1ボディ周溝41A,41B,41C(第1溝)が形成されている。第1ボディ周溝41Aは、第1スリーブ周溝36Aの外周に形成されており、第1スリーブ周溝36Aと連通している。すなわち、第1ボディ周溝41Aは、複数の第1ポート26Aを互いに連通させている。第1ボディ周溝41Aは、第1スリーブ周溝36Aと第1ボディ貫通孔39Aとを径方向において連通させている。第1スリーブ周溝36B,36C、第1ボディ周溝41B,41C、第1ボディ貫通孔39B,39Cも同様である。
【0041】
また、第2ポート27A,27B,27Cを含む各排出経路の概略も、第1ポート26A,26B,26Cを含む各供給経路の概略と同様である。すなわち、第2ポート27Aは、第2スリーブ周溝56Aと第2ボディ周溝51A(第2溝)とを介して、第2ボディ貫通孔59Aに連通している。第2ポート27B,27C、第2スリーブ周溝56B,56C、第2ボディ周溝51B,51C、第2ボディ貫通孔59B,59Cも同様である。
【0042】
弁室24には、第1ポート26Aと第2ポート27Aとを連通可能な連通路38Aが形成されている。スプール21は、連通路38Aがポート26A,27Aを連通する位置及び連通しない位置に移動可能となっている。スプール21の外周面はスリーブ22の内周面と当接又は近接した状態で重なっている。連通路38Aがポート26A,27Aを連通していない場合、それらポート26A,27Aの少なくとも一方がスプール21の外周面により閉鎖されていることになる。一方、連通路38Aがポート26A,27Aを連通している場合、第1ポート26Aから連通路38A(弁室24)を通じて第2ポート27Aへ流体が流れる。第1ポート26B,26C、第2ポート27B,27C、連通路38B,38Cも同様である。
【0043】
連通路38Aは、スプール21の外周面に設けられたスプール周溝61Aにより形成されている。スプール周溝61Aはスプール21の周方向に延びており、軸線方向の幅寸法が、第1ポート26Aと第2ポート27Aとの離間距離より大きくされている。スプール21の軸線方向において、スプール周溝61Aが第1ポート26A及び第2ポート27Aを跨いだ状態にある場合、それらポート26A,27Aの両方がスプール周溝61Aに通じており、スプール周溝61Aを介してポート26A,27Aが連通されている。すなわち、連通路38Aがポート26A,27Aを跨いだ状態にある場合、それらポート26A,27Aは連通路38Aにより連通されている。一方、連通路38Aがポート26A,27Aの少なくとも一方に連通していない場合、それらポート26A,27Aはスプール21により遮断されている。第1ポート26B,26C、第2ポート27B,27C、連通路38B,38C、スプール周溝61B,61Cも同様である。
【0044】
スプール21の摺動方向は、弁室24に対するポート26A,27Aの開放方向と交差しているため、スプール21の摺動に伴ってその摺動方向における連通路38Aとポート26A,27Bとの重なり幅が増減する。すなわちポート26A,27Aの開放面積が増減する。流体がポート26A,27Aを流れる場合、その流量はポート26A,27Aの開放面積が大きいほど大きくなる。開放面積が所定値以上である場合に流量は最大となり、この場合にポート26A,27Aが全開されていることになる。第1ポート26B,26C、第2ポート27B,27C、連通路38B,38Cも同様である。
【0045】
スプール21において、スプール周溝61Aが形成された部分は、他の部分の径よりも径が小さい縮径部43Aとなっている。スプール周溝61Aの底部の角は曲面形状(R形状)となっているため、応力集中を抑制することができる。スプール周溝61B,61C、縮径部43B,43Cも同様である。スプール21において、軸線方向において縮径部43A,43B,43Cに隣り合う部分が閉鎖部42である。この場合、閉鎖部42、縮径部43A、閉鎖部42、縮径部43B、閉鎖部42、縮径部43C、閉鎖部42が、スプール21の軸線方向において順に並んで設けられている。
【0046】
こうした構成により、スプール弁11には、流体の流通及び遮断を行う弁部31~33が設けられている。それら弁部31~33はスプール21の軸線方向に並んでいる。第1弁部31は、連通路38Aにより連通される一対のポート26A,27Aを有している。第2弁部32、第3弁部33、連通路38B,38C、第1ポート26B,26C、第2ポート27B,27Cも同様である。そして、弁部31~33は、スプール21の軸線方向に並んで設けられている。スプール21は弁部31~33ごとにそれぞれ縮径部43A,43B,43Cを有している。各弁部31~33におけるポートの開放はスプール21の摺動に伴って各縮径部43A,43B,43Cにより個別に行われる。第2弁部32は一対のポート26B,27Bの両方が閉鎖可能な構成とされ、第1弁部31及び第3弁部33はそれぞれ第1ポート26A,26Cだけが閉鎖可能な構成とされている。
【0047】
本実施形態では、所定の処理動作を行う処理装置にて使用された流体を処理装置に再び供給する流体循環システムが構築されている。このシステムの循環経路には、使用済みの流体を加熱装置により加熱する加熱ライン、冷却装置により冷却する冷却ライン、及び加熱も冷却もしないバイパスラインという3つの経路が含まれている。処理装置の上流側がスプール弁11を介して上記3つの経路の下流側に接続されている。この場合、スプール弁11は流れ込んできた複数の流体を混合する混合弁になっている。
【0048】
第1ボディ貫通孔39Aには、スプール弁11に冷却用(COLD側)の流体を供給する冷却ラインの配管が接続される。第1ボディ貫通孔39Bには、スプール弁11に循環用(BYP側)の流体を供給するバイパスラインの配管が接続される。第1ボディ貫通孔39Cには、スプール弁11に加熱用(HOT側)の流体を供給する加熱ラインの配管が接続される。また、第2ボディ貫通孔59A,59B,59Cは共に、スプール弁11から排出される流体を混合する混合用配管に接続される。混合用配管は、処理装置の上流側に接続される。スプール弁11から処理装置へ流体が流れ込む場合、加熱ライン、冷却ライン、バイパスラインからの流体の各流量はスプール21の摺動によりまとめて調整される。
【0049】
スプール弁装置10において駆動部12はリニアアクチュエータとされている。駆動部12は、鋼材等の強磁性体により形成された可動部65と、可動部65を挟んで配置された一対の永久磁石66と、一対の永久磁石66と同一方向に磁界を発生させるコイル67とを有している。可動部65(可動子)は、永久磁石66の磁界方向と直交する方向に移動可能となっており、その移動方向がスプール21の摺動方向と同一にされた状態でスプール21の一端に固定されている。駆動部12においては、可動部65の位置、すなわちスプール21の軸線方向の位置(ストローク位置)が、コイル67の通電方向及び通電する電圧、電流の大きさに基づいて定められることになる。
【0050】
駆動部12において可動部65が中立位置にある場合、スプール21は第1弁部31及び第3弁部33を閉鎖し且つ第2弁部32を開放する位置にあり、この場合、スプール21も中立位置にあることになる。スプール21が中立位置にある場合、第1弁部31及び第3弁部33の両方においてそれぞれの第1ポート26A,26Cが閉鎖されている。
【0051】
ちなみに、可動部65は、コイル67が通電されていない場合に中立位置にあるものであるが、コイル67が通電されていない状態では、スプール弁11を流れる流体の影響で可動部65が中立位置からずれてしまうと考えられる。これに対して、可動部65は、コイル67の通電に伴って発生した磁力により中立位置に位置保持されている。具体的には、スプール弁装置10には、スプール21のストローク位置を検出する位置センサ73が設けられている。位置センサ73は、検出マグネット73aを有している。位置センサ73の検出結果に基づいて、可動部65の位置を中立位置とするようにフィードバック制御が行われている。
【0052】
なお、位置センサ73は、弁室24内の流体に対して隔てられた位置にあり、流体の影響を受けないようになっている。また、位置センサ73は、スプール21など動作する部材とは非接触の状態で設置されている。ちなみに、位置センサ73としては、静電容量式、磁歪式、渦電流式などがある。さらに、駆動部12には、コイル67が通電されていない場合に可動部65を中立位置に保持するスプリング等の付勢手段が設けられていてもよい。
【0053】
スプール21には、そのスプール21を軸線方向に貫通するスプール貫通孔71が設けられている。弁室24においてスプール21の両端側の各空間は、スプール21の摺動に伴って拡縮される拡縮空間24aとなっており、それら拡縮空間24aはスプール貫通孔71を介して連通されている。拡縮空間24a及びスプール貫通孔71は、各弁部31~33を流れる流体などにより満たされており、その流体はスプール21の摺動に伴ってスプール貫通孔71を通じて一方の拡縮空間24aから他方の拡縮空間24aに流体が移動する。これにより、スプール21の摺動の際、拡縮空間24a内の流体からスプール21に加えられる抗力が小さくなるため、駆動部12がスプール21を摺動させる際の駆動力を低減できる。
【0054】
次に、
図2を参照して、スリーブ22の形状を詳細に説明する。
図2(a)はスリーブ22の外形を示し、
図2(b)は円孔81,84の中心を通る断面図、
図2(c)は長円孔82の中心を通る断面図である。スリーブ22の外周部には、上記位置センサ73側の端部から順に、上記第1スリーブ周溝36A、第2スリーブ周溝56A、第1スリーブ周溝36B、第2スリーブ周溝56B、第1スリーブ周溝36C、第2スリーブ周溝56Cが形成されている。スリーブ22において各スリーブ周溝に隣接する位置には、Oリング等のシール部材を取り付けるための溝74が形成されている。
【0055】
第1弁部31において、同形状及び同寸法の4つ(複数)の第2ポート27Aが、スリーブ22の周方向に90°間隔(等間隔)で形成されている。スリーブ22の軸線方向において4つの第2ポート27Aの位置は一致している。第2ポート27Aは、スリーブ22の周方向及び軸線方向において所定径r0を有する円孔(貫通孔)である。
【0056】
スリーブ22の軸線方向において、第2ポート27Aから所定距離だけ離れた位置に第1ポート26Aが形成されている。第1ポート26Aは、貫通孔である円孔81、長円孔82、円孔83、及び円孔84を含んでいる。スリーブ22の周方向において、円孔81の中心位置と円孔84の中心位置とは一致している。スリーブ22の周方向において、円孔81、長円孔82、円孔83は互いに重複しない位置に形成されている。スリーブ22の周方向において、長円孔82、円孔83、円孔84は互いに重複しない位置に形成されている。
【0057】
スリーブ22の軸線方向において、円孔81、長円孔82、円孔83、円孔84は互いに異なる位置に形成されている。ここで、スリーブ22の軸線方向における各孔81~84の位置は、第2ポート27Aから各孔81~84の第2ポート27A側の端までの距離で定義する。第2ポート27Aからの距離が短い孔から順に、円孔81、長円孔82、円孔83、円孔84となっている。スリーブ22の軸線方向において、円孔81が存在する範囲と、長円孔82が存在する範囲とが一部重複している。スリーブ22の軸線方向において、長円孔82が存在する範囲と、円孔83が存在する範囲とが一部重複している。スリーブ22の軸線方向において、円孔83が存在する範囲と、円孔84が存在する範囲とが一部重複している。孔81~84は互いに繋がっていない。
【0058】
円孔81,83,84は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r1,r3,r4をそれぞれ有する円孔である。長円孔82は、スリーブ22の周方向において径r2を有し、スリーブ22の軸線方向において径r2よりも大きい径を有する長円孔である。小さい径から順に、径r1、径r2、径r3、径r4となっている。第1ポート26Aは、スリーブ22の周方向に90°間隔(等間隔)で4つ(複数)形成されている。ただし、円孔81,84は4つ(全て)の第1ポート26Aに含まれているが、長円孔82及び円孔83は2つ(半分)の第1ポート26Aにのみ含まれている。
【0059】
なお、円孔81を第1貫通部とみなすと、孔82~84を第2貫通部とみなすことができる。円孔81を第1貫通部とみなし、円孔84を第2貫通部とみなすと、孔82,83を第3貫通部とみなすことができる。円孔81を第1貫通部とみなし、円孔83を第2貫通部とみなすと、長円孔82を第3貫通部とみなすことができる。長円孔82を第1貫通部とみなすと、円孔83,84を第2貫通部とみなすことができる。長円孔82を第1貫通部とみなし、円孔84を第2貫通部とみなすと、円孔83を第3貫通部とみなすことができる。円孔83を第1貫通部とみなすと、円孔84を第2貫通部とみなすことができる。また、第3弁部33は、第2弁部32に対して第1弁部31と対称の位置に対称の形状で形成されている。
【0060】
第2弁部32において、貫通孔である円孔85,86を含む第1ポート26Bと、貫通孔である円孔87,88を含む第2ポート27Bとが形成されている。スリーブ22の軸線方向において、第1ポート26Bと第2ポート27Bとは互いに所定距離だけ離れている。
【0061】
スリーブ22の周方向において、円孔85と円孔86とは互いに重複しない位置に形成されている。スリーブ22の軸線方向において、円孔85と円孔86とは同じ位置に形成されている。ここで、スリーブ22の軸線方向における円孔85,86の位置は、円孔87(第2ポート27B)から円孔85,86の円孔87側の端までの距離で定義する。スリーブ22の軸線方向において、円孔85が存在する範囲と、円孔86が存在する範囲とが一部重複している。円孔85と円孔86とは互いに繋がっていない。
【0062】
円孔85,86は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r5,r6をそれぞれ有する円孔である。径r6は、上記円孔84の径r4よりも小さく、孔81~83の径r1~r3及び円孔85の径r5よりも大きい。第1ポート26Bは、スリーブ22の周方向に90°間隔(等間隔)で4つ(複数)形成されている。ただし、円孔86は4つ(全て)の第1ポート26Bに含まれているが、円孔85は2つ(半分)の第1ポート26Bにのみ含まれている。なお、円孔85が第1貫通部に相当し、円孔86が第2貫通部に相当する。
【0063】
スリーブ22の周方向において、円孔87と円孔88とは互いに重複しない位置に形成されている。スリーブ22の軸線方向において、円孔87と円孔88とは同じ位置に形成されている。ここで、スリーブ22の軸線方向における円孔87,88の位置は、円孔85(第1ポート26B)から円孔87,88の円孔85側の端までの距離で定義する。スリーブ22の軸線方向において、円孔87が存在する範囲と、円孔88が存在する範囲とが一部重複している。円孔87と円孔88とは互いに繋がっていない。
【0064】
円孔87,88は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r7,r8をそれぞれ有する円孔である。径r8は、上記円孔84の径r4よりも小さく、孔81~83の径r1~r3及び円孔87の径r7よりも大きい。第2ポート27Bは、スリーブ22の周方向に90°間隔(等間隔)で4つ(複数)形成されている。ただし、円孔88は4つ(全て)の第2ポート27Bに含まれているが、円孔87は2つ(半分)の第2ポート27Bにのみ含まれている。なお、円孔87が第1貫通部に相当し、円孔88が第2貫通部に相当する。
【0065】
図3は、スプール21とスリーブ22の孔81~88との位置関係を示す図である。
図3(c)は、第1弁部31及び第3弁部33の孔81~84をスリーブ22の周方向に展開して示している。
【0066】
制御指令値が0%(中立位置)では、スプール21の閉鎖部42は第1弁部31の第1ポート26A及び第3弁部33の第1ポート26Cを全閉にし、縮径部43Bが第2弁部32の第1ポート26B及び第2ポート27Bを全開にする。制御指令値が増加するほど、スプール21の縮径部43Cが第3弁部33の第1ポート26Cを開き、閉鎖部42は第2弁部32の第1ポート26Bを閉じる。そして、制御指令値が100%では、スプール21の縮径部43Cは第3弁部33の第1ポート26Cを全開にし、閉鎖部42は第2弁部32の第1ポート26Bを全閉にする。また、制御指令値0%から減少するほど、スプール21の縮径部43Aが第1弁部31の第1ポート26Aを開き、閉鎖部42が第2弁部32の第2ポート27Bを閉じる。そして、制御指令値が-100%では、スプール21の縮径部43Aは第1弁部31の第1ポート26Aを全開にし、閉鎖部42は第2弁部32の第2ポート27Bを全閉にする。
【0067】
同図では、スプール21が左へ移動することにより、第1弁部31において縮径部43Aが円孔81を開き始める状態を示している。なお、第2弁部32では、全開から閉鎖部42が円孔88を閉じ始める状態である。第3弁部33では、閉鎖部42が円孔81を閉じ終えて全閉へ移行した状態である。
【0068】
破線Xは、閉鎖部42と縮径部43Aとの境界を示している。
図4は、
図3の一点鎖線囲み部分を拡大して示す拡大展開図である。同図に示すように、円孔81のみが破線Xに接しており、孔82~84は破線Xから離れている。このため、第1弁部31の第1ポート26Aを閉鎖した状態において、孔82~84を通じてスリーブ22の内周面とスプール21の外周面との間から縮径部43Aへ流体が漏れることを抑制することができる。さらに、円孔81の径r1は、孔82~84の径r2~r4よりも小さい。したがって、第1弁部31の第1ポート26Aを閉鎖した状態において、スリーブ22の内周面とスプール21の外周面との間からの流体の漏れ量を減少させることができる。同様に、第3弁部33の第1ポート26Cを閉鎖した状態において、スリーブ22の内周面とスプール21の外周面との間からの流体の漏れ量を減少させることができる。
【0069】
図5は、制御指令値と流量Qと孔81~84(第1ポート26C)の開放部分との関係を示す図である。同図は、上記加熱ラインの加熱用の流体が第3弁部33を通じて流れる流量を示している。
【0070】
制御指令値が0%では、孔81~84が全て閉鎖部42により閉じられており、流量は0(L/min)である。制御指令値が0~数%までは、孔81~84が全て閉鎖部42により閉じられており、流量は0(L/min)である。すなわち、第3弁部33は制御指令値0%付近に不感帯を有している。
【0071】
制御指令値がさらに増加すると、円孔81がスプール21の縮径部43Cにより開かれ始める。このとき、スリーブ22の周方向における円孔81の径r1は、孔82~84の径r2~r4よりも小さいため、流体の流量は最も緩やかに増加する。すなわち、制御指令値(スプール21の移動量)に対する流量の傾きは最も小さくなる。
【0072】
円孔81が半分まで開かれると、縮径部43Cにより長円孔82が開かれ始める。ここで、円孔81はスリーブ22の周方向において径r1を有する円孔であるため、円孔81の開放面積の増加速度は前半で上昇し後半で低下する。この点、円孔81が半分まで開かれると、長円孔82が開かれ始めるため、第1ポート26Cの開放面積の増加速度が上昇後に低下することを抑制することができる。長円孔82の径r2は、円孔81の径r1よりも大きく円孔83,84の径r3,r4よりも小さいため、流体の流量は緩やかに増加する。長円孔82の半円部分が開放された後は、長円孔82の矩形部分が開かれるため、制御指令値に対する流量の傾きは一定となる。
【0073】
制御指令値がさらに増加すると、円孔83が縮径部43Cにより開かれ始める。このとき、スリーブ22の周方向における円孔83の径r3は、孔81,82の径r1,r2よりも大きく円孔84の径r4よりも小さいため、流体の流量はやや急に増加する。
【0074】
制御指令値が50%になると、円孔84が縮径部43Cにより開かれ始める。このとき、スリーブ22の周方向における円孔84の径r4は、孔81~83の径r1~r3よりも大いため、流体の流量は最も急に増加する。すなわち、制御指令値に対する流量の傾きは最も大きくなる。
【0075】
制御指令値が100%になると、スリーブ22の軸線方向においてスプール21を第2ポート27Cから第1ポート26Cの方向へ最大限移動させた状態となる。この状態において、円孔84のうち開放された部分は半分以下となっている。このため、円孔84の開放面積の増加速度が上昇する前半で円孔84の開放を終了し、円孔84の開放面積の増加速度が低下する後半には円孔84の開放を行わないようにすることができる。したがって、第1ポート26Cの開放面積の増加速度が低下することを抑制することができる。
【0076】
また、上記冷却ラインの冷却用の流体が第1弁部31を通じて流れる流量と制御指令値との関係も同様である。その場合、制御指令値が負の値となり、制御指令値の増加が減少に置き換わる。
【0077】
一方、
図3に示したように、制御指令値が0%では、孔85~88が全開であり、循環ラインの循環用の流体の流量は最大である。制御指令値が0~±数%までは、孔85~88は全開であり、流量は最大である。すなわち、第2弁部32は制御指令値0%付近に不感帯を有している。
【0078】
制御指令値が増加すると、円孔86が閉鎖部42により閉じられ始める。このとき、スリーブ22の周方向における円孔86の径r6は、上記円孔84の径r4よりも小さく、孔81~83の径r1~r3及び円孔85の径r5よりも大きい。このため、流体の流量は緩やかに、具体的には孔81,82が開放されることによる流量の増加速度と同程度の減少速度で減少する。
【0079】
制御指令値がさらに増加すると、円孔85が閉鎖部42により閉じられ始める。すなわち、円孔86と円孔85とが閉鎖部42により閉じられる。このため、流体の流量は急に、具体的には円孔83,84が開放されることによる流量の増加速度と同程度の減少速度で減少する。
【0080】
制御指令値が100%になると、スリーブ22の軸線方向においてスプール21を第1ポート26Bから第2ポート27Bの方向へ最大限移動させた状態となる。この状態において、円孔85,86は全閉となっている。
【0081】
図6は、制御指令値と各弁部31~33の流量との関係を示すグラフである。第1弁部31により冷却用の流体(COLD)の流量が調節され、第2弁部32により循環用の流体(BYP)の流量が調節され、第3弁部33により加熱用の流体(HOT)の流量が調節される。
【0082】
同図に示すように、制御指令値が-100%では、流体(COLD)の流量が最大となっており、流体(BYP)の流量及び流体(HOT)の流量は共に0になっている。制御指令値が-100%から-50%までは、制御指令値が増加すると流体(COLD)の流量が急激に減少し、流体(BYP)の流量が急激に増加する。スプール弁11から排出される流体の合計流量(TOTAL)は、制御指令値にかかわらず一定となっている。
【0083】
制御指令値が-50%からさらに増加すると、流体(COLD)の流量はやや緩やかに減少し、流体(BYP)の流量はやや緩やかに増加する。制御指令値がさらに増加すると、流体(COLD)の流量は最も緩やかに減少し、流体(BYP)の流量は最も緩やかに増加する。
【0084】
制御指令値が-数%になると、流体(COLD)の流量は0となり、流体(BYP)の流量は最大となる。制御指令値が数%になるまでは、流体(COLD)の流量は0で、流体(BYP)の流量が最大の状態で維持される。
【0085】
制御指令値が数%を超えて増加すると、流体(BYP)の流量は最も緩やかに減少し、流体(HOT)の流量は最も緩やかに増加する。制御指令値が50%までは、制御指令値が増加すると流体(BYP)の流量はやや緩やかに減少し、流体(HOT)の流量はやや緩やかに増加する。
【0086】
制御指令値が50%から100%までは、制御指令値が増加すると流体(BYP)の流量が急激に減少し、流体(HOT)の流量が急激に増加する。なお、制御指令値と各弁部31~33の流量との関係は、
図6に示す関係に限らず、孔81~88の位置や径r1~r8を調節することにより任意に設定することができる。
【0087】
図7は、スプール21の位置と各弁部31~33の開閉状態との関係を示す断面図である。
【0088】
図7(a)に示す制御指令値が-100%では、スプール21は、中立位置から第1弁部31側(負方向)に最も移動した位置にある。
図6に示すように、第1弁部31(COLD)が最大流量とされ、第2弁部32(BYP)及び第3弁部33(HOT)が流量0とされている。第1弁部31においては、第1ポート26A及び第2ポート27Aが共に全開されている。第2弁部32においては、第1ポート26B,第2ポート27Bのうち第2ポート27Bが閉鎖されている。第3弁部33においては、第1ポート26C,第2ポート27Cのうち第1ポート26Cが閉鎖されている。この場合、第1弁部31を通じて冷却用の流体(COLD)のみが処理装置へ流れる。
【0089】
図7(b)に示す制御指令値が-50%では、スプール21は、負方向に最も移動した位置と中立位置との中央にある。
図6に示すように、第1弁部31(COLD)が最大流量の2割程度の流量とされ、第2弁部32(BYP)が最大流量の8割程度の流量とされ、第3弁部33(HOT)が流量0とされている。第1弁部31においては、第1ポート26Aが2割程度開かれている。第2弁部32においては、第1ポート26B,第2ポート27Bのうち第2ポート27Bが8割程度開かれている。第3弁部33においては、第1ポート26C,第2ポート27Cのうち第1ポート26Cが閉鎖されている。この場合、第1弁部31を通じて流れる冷却用の流体(COLD)と第2弁部32を通じて流れる循環用の流体(BYP)とが混合されて処理装置へ流れる。
【0090】
図7(c)に示す制御指令値が0%では、スプール21は、中立位置にある。
図6に示すように、第2弁部32(BYP)が最大流量とされ、第1弁部31(COLD)及び第3弁部33(HOT)が流量0とされている。第1弁部31においては、第1ポート26A,第2ポート27Aのうち第1ポート26Aが閉鎖されている。第2弁部32においては、第1ポート26B及び第2ポート27Bが共に全開されている。第3弁部33においては、第1ポート26C,第2ポート27Cのうち第1ポート26Cが閉鎖されている。この場合、第2弁部32を通じて循環用の流体(BYP)のみが処理装置へ流れる。
【0091】
図7(d)に示す制御指令値が50%では、スプール21は、中立位置と、中立位置から第3弁部33側(正方向)に最も移動した位置との中央にある。
図6に示すように、第1弁部31(COLD)が流量0とされ、第2弁部32(BYP)が最大流量の8割程度の流量とされ、第3弁部33(HOT)が最大流量の2割程度の流量とされている。第1弁部31においては、第1ポート26A,第2ポート27Aのうち第1ポート26Aが閉鎖されている。第2弁部32においては、第1ポート26B,第2ポート27Bのうち第1ポート26Bが8割程度開かれている。第3弁部33においては、第1ポート26C,第2ポート27Cのうち第1ポート26Cが2割程度開かれている。この場合、第2弁部32を通じて流れる循環用の流体(BYP)と第3弁部33を通じて流れる加熱用の流体(HOT)とが混合されて処理装置へ流れる。
【0092】
図7(e)に示す制御指令値が100%では、スプール21は、中立位置から第3弁部33側(正方向)に最も移動した位置にある。
図6に示すように、第3弁部33(HOT)が最大流量とされ、第2弁部32(BYP)及び第3弁部33(HOT)が流量0とされている。第1弁部31においては、第1ポート26A,第2ポート27Aのうち第1ポート26Aが閉鎖されている。第2弁部32においては、第1ポート26B,第2ポート27Bのうち第1ポート26Bが閉鎖されている。第3弁部33においては、第1ポート26C及び第2ポート27Cが共に全開されている。この場合、第3弁部33を通じて加熱用の流体(HOT)のみが処理装置へ流れる。
【0093】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点有する。
【0094】
・第1ポート26A,26Cは、スリーブ22の周方向において径r1を有する円孔81と、スリーブ22の周方向において径r1と異なる径r2を有する長円孔82とを含んでいる。このため、スリーブ22の軸線方向におけるスプール21の移動量に応じて、例えば長円孔82が閉鎖されており且つ円孔81の一部が開放された状態、円孔81の全部が開放されており且つ長円孔82の一部が開放された状態、円孔81の全部及び長円孔82の全部が開放された状態等を実現することができる。そして、これらの状態では、軸線方向におけるスプール21の移動量と流体の流量増加量との関係(流量の傾き)が互いに異なる。したがって、軸線方向における円孔81及び長円孔82の位置や、径r1、径r2を調節することにより、軸線方向におけるスプール21の移動量と流体の流量増加量との関係を柔軟に設定することができる。なお、円孔83と円孔84との組み合わせ等においても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0095】
・円孔81及び長円孔82はそれぞれ円孔及び長円孔であるため、ドリル等の孔加工により容易に形成することができる。しかも、孔の形状が簡素であるため、加工後のばり除去等(仕上げ)が容易であるとともに、応力集中を抑制して剛性を向上させることができる。このため、スリーブ22の曲がり(変形)を抑制することができ、スプール21の摺動性を向上させることができる。また、軸線方向における円孔81及び長円孔82の位置や、径r1、径r2を調節することにより、スプール21の移動量と流体の流量増加量との関係を設定することができるため、スプール21に背景技術のような傾斜部を形成する必要がない。したがって、スプール21弁の製造難度が高くなることを抑制することができる。
【0096】
・第1弁部31及び第3弁部33において、長円孔82は、軸線方向において円孔81よりもそれぞれ第2ポート27A,27Cから離れた位置に形成されている。このため、第1ポート26A,26Cをスプール21が閉鎖した状態において、第2ポート27A,27Cからそれぞれ第1ポート26A,26Cの方向へスプール21が移動すると、まず円孔81が開放され、続いて長円孔82が開放される。そして、長円孔82の径r2は、円孔81の径r1よりも大きい。このため、長円孔82が閉鎖されており且つ円孔81の開放面積が増加する間、すなわち第1ポート26A,26Cの開き始めに、流体の流量の傾きを小さくすることができる。したがって、第1ポート26A,26Cの開き始めに、流体の流量を微調整し易くなる。さらに、第1ポート26A,26Cを閉鎖した状態において、スリーブ22の内周面とスプール21の外周面との間から漏れる流体は、径r1よりも大きい径r2の長円孔82を介しては流れにくいため、流体の漏れ量を減少させることができる。
【0097】
・円孔83,84の開放面積が増加することにより、円孔81の開放面積が増加する時よりも、スプール21の移動量に対する流量増加量(流量の傾き)を大きくすることができる。このため、流量の傾きを、第1傾きから第1傾きよりも大きい第2傾きに変化させるスプール21弁において、所定の目標流量を確保するために必要なスリーブ22の長さを短くすることができる。
【0098】
・円孔81はスリーブ22の周方向において径r1を有する円孔であるため、円孔81の開放面積の増加速度は前半で上昇し後半で低下する。この点、軸線方向において、円孔81が存在する範囲と、長円孔82が存在する範囲とが一部重複している。したがって、円孔81が全開するまでに長円孔82を開き始めることができ、第1ポート26A,26Cの開放面積の増加速度が上昇後に低下することを抑制することができる。すなわち、長円孔82が開き始める際に、流体の流量の傾きが減少することを抑制することができる。なお、長円孔82と円孔84との組み合わせ等においても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
・孔81~83が繋がると、第1ポート26A,26Cの形状が複雑になり、スリーブ22の強度が低下するおそれがある。この点、孔81~83は、スリーブ22の周方向において互いに重複しない位置に形成されている。したがって、軸線方向において、円孔81(長円孔82)が存在する範囲と、長円孔82(円孔83)が存在する範囲とが一部重複している場合も、円孔81(長円孔82)と長円孔82(円孔83)とが繋がることを防ぐことができる。
【0100】
・軸線方向においてスプール21を第2ポート27A,27Cからそれぞれ第1ポート26A,26Cの方向へ最大限移動させた状態で、円孔84のうち開放された部分は半分以下である。このため、円孔84の開放面積の増加速度が上昇する範囲内で、流体の流量を制御することができる。したがって、円孔84が開き始めた後に、流体の流量の傾きが減少することを抑制することができる。
【0101】
・第1ポート26A,26Cは、軸線方向において円孔81と円孔84との間の位置に形成された孔82,83を含んでいる。このため、第1ポート26A,26Cをスプール21が閉鎖した状態において、第2ポート27A,27Cからそれぞれ第1ポート26A,26Cの方向へスプール21が移動すると、まず円孔81が開放され、続いて孔82,83が開放され、続いて円孔84が開放される。そして、孔82,83は、スリーブ22の周方向において径r1よりも大きく且つ径r4よりも小さい径r2,r3をそれぞれ有する孔である。このため、円孔81の開放面積が増加する時と、円孔84の開放面積が増加する時との間において、流体の流量の傾きをそれらの時の中間の傾きに設定し易くなる。
【0102】
・第2弁部32において、円孔86は、軸線方向において円孔85と同じ位置に形成されている。このため、第1ポート26Bをスプール21が閉鎖した状態において、第2ポート27Bから第1ポート26Bの方向へスプール21が移動すると、円孔85及び円孔86が同時に開放され始める。このため、円孔85及び円孔86の開放面積が共に増加する間、すなわち第1ポート26Bの開き始めに、流体の流量の傾きを大きくすることができる。
【0103】
・ここで、円孔86の径r6は、円孔85の径r5よりも大きい。このため、第2ポート27Bから第1ポート26Bの方向へスプール21がさらに移動すると、円孔85の全部が開放され、円孔86の開放面積のみが増加する。これにより、円孔85及び円孔86の開放面積が増加する時よりも、流体の流量の傾きを小さく設定し易くなる。したがって、流体の流量の傾きを、第3傾きから第3傾きよりも小さい第4傾きに変化させるスプール弁11において、所定の目標流量を確保するために必要なスリーブ22の長さを短くすることができる。なお、第2ポート27Bをスプール21が閉鎖した状態において、第1ポート26Bから第2ポート27Bの方向へスプール21が移動する場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0104】
・スリーブ22の周方向において、複数の第1ポート26A(26C)が互いに異なる位置に形成されている。このため、複数の第1ポート26A(26C)を介して、スリーブ22の内部と外部との間で流体を流通させることができる。そして、スプール弁11は、スリーブ22を内部に収納する弁ボディ23を備えている。弁ボディ23には、複数の第1ポート26A(26C)を互いに連通させる円環状の第1ボディ周溝41A(41C)と、第1ボディ周溝41A(41C)を外部に連通させる第1ボディ貫通孔39A(39C)とが形成されている。このため、円環状の第1ボディ周溝41A(41C)及び第1ボディ貫通孔39A(39C)を介して、複数の第1ポート26A(26C)と弁ボディ23の外部との間で流体を流通させることができる。したがって、スプール弁11を流通する流体の最大流量を大きくしつつ、スリーブ22の内部と弁ボディ23の外部との間で流体を容易に流通させることができる。
【0105】
・スリーブ22の周方向において、複数の第2ポート27A(27C)が互いに異なる位置に形成されている。このため、複数の第2ポート27A(27C)を介して、スリーブ22の内部と外部との間で流体を流通させることができる。弁ボディ23には、複数の第2ポート27A(27C)を互いに連通させる円環状の第2ボディ周溝51A(51C)と、第2ボディ周溝51A(51C)を外部に連通させる第2ボディ貫通孔59A(59C)とが形成されている。このため、円環状の第2ボディ周溝51A(51C)及び第2ボディ貫通孔59A(59C)を介して、複数の第2ポート27A(27C)と弁ボディ23の外部との間で流体を流通させることができる。したがって、スプール弁11を流通する流体の最大流量を大きくしつつ、スリーブ22の内部と弁ボディ23の外部との間で流体を容易に流通させることができる。
【0106】
・第1ポート26A(26C)と第2ポート27A(27C)との組み合わせにより1つの弁部が構成されている。このため、1つの弁部により、1つの流体の流量を制御することができる。スプール弁11は、軸線方向に並んだ弁部である第1弁部31、第2弁部32、及び第3弁部33を備えている。そして、スプール21には、第1弁部31、第2弁部32、及び第3弁部33に対してそれぞれ縮径部43A,43B,43Cが形成されている。このため、スプール弁11は、1つのスプール21により複数の流体の流量を制御することができる。
【0107】
・第1弁部31及び第3弁部33は、流量の傾きを、第1傾きから第1傾きよりも大きい第2傾きに変化させることができる。一方、第2弁部32は、流量の傾きを、第3傾きから第3傾きよりも小さい第4傾きに変化させることができる。このため、第1弁部31(第3弁部33)の第2ポート27A(27C)と第2弁部32の第2ポート27Bとを連通させて、スプール弁11を混合弁として用いた場合に、混合された流体の流量を一定に近付けることができる。また、上記混合弁において流体の流通方向を逆にすることにより、スプール弁11を分配弁として用いることもできる。
【0108】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0109】
・スリーブ22の内周面と閉鎖部42の外周面との間にクリアランスが設けられており、制御指令値が0%において、クリアランス及び孔81~84を通じて流体が流れる構成を採用することもできる。
【0110】
・スプール弁11から排出される流体の合計流量は、制御指令値にかかわらず一定であることが望ましいが、制御指令値によって若干変化してもよい。また、スプール弁11に対する流体の供給側と排出側との差圧が一定であり、且つ流体の合計流量が制御指令値によって若干変化する場合に、差圧を制御することにより制御指令値にかかわらず流体の合計流量を一定にすることもできる。
【0111】
・第3弁部33により冷却用の流体(COLD)の流量が調節され、第2弁部32により循環用の流体(BYP)の流量が調節され、第1弁部31により加熱用の流体(HOT)の流量が調節される構成を採用することもできる。
【0112】
・上記実施形態では、スリーブ22において各スリーブ周溝に隣接する位置には、Oリング等のシール部材を取り付けるための溝74が形成されていた。これに代えて、弁ボディ23において、上記溝74に対応する位置にOリング等のシール部材を取り付けるための溝を形成することもできる。
【0113】
・第1ボディ貫通孔39A,39B,39Cは、第1スリーブ周溝36A,36B,36Cを介さずに第1ポート26A,26B,26Cに接続されていてもよい。すなわち、第1ボディ周溝41A,41B,41Cを形成し、第1スリーブ周溝36A,36B,36Cを省略してもよい。なお、第1ボディ周溝41A,41B,41Cを省略し、第1スリーブ周溝36A,36B,36Cを形成してもよい。
【0114】
・
図8に示すように、第1ポート26A,26Cは、貫通孔である複数の円孔91(第1貫通部)と、貫通孔である円孔92(第2貫通部)とを含む。このため、円孔91の数を調節することによって、第1ポート26A,26Cの開き始めにおけるスプール21の移動量と流量増加量との関係を容易に設定することができる。さらに、複数の円孔91は、軸線方向における位置が互いに異なっている。このため、第1ポート26A,26Cを閉鎖した状態において、スプール21の縮径部43A,43Cにそれぞれ近い位置の円孔91を減らすことができ、スリーブ22の内周面とスプール21の外周面との間からの流体の漏れ量を減少させることができる。
【0115】
・
図9に示すように、第1ポート26C(26A)が貫通孔である長円孔部93と円孔部94とを含んでいてもよい。長円孔部93(第1貫通部)は、スリーブ22の周方向において径r13を有し、スリーブ22の軸線方向において径r13よりも大きい径を有する長円孔である。円孔部94(第2貫通部)は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r13よりも大きい径r14を有する円孔である。スリーブ22の周方向において、長円孔部93の中心位置と円孔部94の中心位置とは一致している。スリーブ22の軸線方向において、長円孔部93が存在する範囲と、円孔部94が存在する範囲とが一部重複している。このため、長円孔部93と円孔部94とが繋がっている。こうした構成であっても、上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。なお、円孔部94を、スリーブ22の周方向において径r14を有し、スリーブ22の軸線方向において径r14よりも大きい径を有する長円孔に変更してもよい。
【0116】
・
図10に示すように、第1ポート26C(26A)が円孔95と円孔96とを含んでいてもよい。円孔95(第1貫通部)は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r15を有する円孔である。円孔96(第2貫通部)は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r15よりも大きい径r16を有する円孔である。スリーブ22の周方向において、円孔95の中心位置と円孔96の中心位置とは異なっている。スリーブ22の軸線方向において、円孔95が存在する範囲と円孔96が存在する範囲とは重複していない。こうした構成であっても、第1ポート26Cの開放面積の増加速度が上昇後に一旦低下することを除いて、上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。
【0117】
・長円孔は、軸線方向に長径が沿った長円孔に限らず、軸線方向に短径が沿った長円孔であってもよい。この場合は、スプール21の移動量に対する流量増加量(流量の傾き)を大きくすることができる。また、長円孔として、半円部と矩形部とを有する形状に限らず、楕円を採用することもできる。
【0118】
・
図11に示すように、第1ポート26C(26A)が円孔95と三角孔97とを含んでいてもよい。円孔95(第1貫通部)は、スリーブ22の周方向及び軸線方向において径r15を有する円孔である。貫通孔である三角孔97(第2貫通部)は、スリーブ22の周方向において径r15よりも大きい幅w1を有する三角孔である。三角孔97の一辺はスリーブ22の周方向に沿っており、三角孔97の角は丸くなっている。三角孔97においてスリーブ22の周方向に沿った一辺は、円孔95から最も離れた位置に配置されている。スリーブ22の周方向において、円孔95の中心位置と三角孔97の重心位置とは異なっている。スリーブ22の軸線方向において、円孔95が存在する範囲と三角孔97が存在する範囲とは重複していない。こうした構成であっても、第1ポート26Cの開放面積の増加速度が上昇後に一旦低下することを除いて、上記実施形態に準じた作用効果を奏することができる。なお、スリーブ22の軸線方向において、円孔95が存在する範囲と三角孔97が存在する範囲とは重複していてもよい。また、円孔95の形状を三角孔に変更してもよいし、三角孔97の形状を円孔又は長円孔に変更してもよい。すなわち、第1貫通部及び第2貫通部の少なくとも一方は、スリーブ22の周方向に一辺が沿った三角孔であり、三角孔の角が丸くなっている構成を採用してもよい。また、第1貫通部及び第2貫通部の形状を、その他の多角形孔(多角形状の貫通孔)にしてもよい。なお、多角形孔の角は丸くなっていることが望ましい。
【0119】
・スリーブ22の周方向において、第1ポート26A(26C)が1つのみ形成されていてもよい。その場合は、第1スリーブ周溝36A(36C)、及び第1ボディ周溝41A(41C)を省略し、第1ポート26A(26C)を第1ボディ貫通孔39A(39C)に接続すればよい。
【0120】
・スリーブ22の周方向において、第2ポート27A(27C)が1つのみ形成されていてもよい。その場合は、第2スリーブ周溝56A(56C)、及び第2ボディ周溝51A(51C)を省略し、第2ポート27A(27C)を第2ボディ貫通孔59A(59C)に接続すればよい。
【0121】
・第1~第3弁部31~33の少なくとも1つを備えるスプール弁として実現することもできる。
【符号の説明】
【0122】
10…スプール弁装置、11…スプール弁、12…駆動部、21…スプール、22…スリーブ、23…弁ボディ、24…弁室、26A…第1ポート、26B…第1ポート、26C…第1ポート、27A…第2ポート、27B…第2ポート、27C…第2ポート、31…第1弁部、32…第2弁部、33…第3弁部、38A…連通路、38B…連通路、38C…連通路、39A…第1ボディ貫通孔、39B…第1ボディ貫通孔、39C…第1ボディ貫通孔、42…閉鎖部、43A…縮径部、43B…縮径部、43C…縮径部、59A…第2ボディ貫通孔、59B…第2ボディ貫通孔、59C…第2ボディ貫通孔、81…円孔、82…長円孔、83…円孔、84…円孔、85…円孔、86…円孔、87…円孔、88…円孔、91…円孔、92…円孔、93…長円孔部、94…円孔部、95…円孔、96…円孔。