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特許7028768一体化した呼吸アルコールセンサシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】一体化した呼吸アルコールセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20220222BHJP
   G01N 33/98 20060101ALI20220222BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20220222BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N33/98
G01N21/3504
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2018515758
(86)(22)【出願日】2016-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2016026024
(87)【国際公開番号】W WO2016195803
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-04-04
(31)【優先権主張番号】62/171,566
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517423497
【氏名又は名称】オートモーティブ・コーリション・フォー・トラフィック・セーフティ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ハンス・イェラン・エヴァルド
(72)【発明者】
【氏名】レェートイェゴード,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング,ヤン-オーケ
(72)【発明者】
【氏名】ジリャノフ,パベル
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-517276(JP,A)
【文献】特表2003-505180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0302992(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102854303(CN,A)
【文献】特表2001-503524(JP,A)
【文献】特表2007-507723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸サンプルのための空気流を受け入れるように構成された空気入口と、
前記空気流が送られる前記空気入口に接続された検出キャビティであって、
前記空気流中の基準気体の存在に基づいて第1信号を生成するように構成された第1の電磁検出経路と、
前記空気流中の揮発性物質の存在に基づいて第2信号を生成するように構成され、前記第1の電磁検出経路に対して実質的に垂直である第2の電磁検出経路と、
を有する検出キャビティと、
前記第1の電磁検出経路および前記第2の電磁検出経路と信号通信し、前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記空気流における前記揮発性物質の濃度を測定するように構成されたロジック部と、
を備える呼吸検査システム。
【請求項2】
前記第1の電磁検出経路は、前記第2の電磁検出経路から熱的に離隔されている、請求項1に記載の呼吸検査システム。
【請求項3】
前記第1の電磁検出経路は、第1の電磁エミッタと第1の電磁検出器とを備え、
前記第2の電磁検出経路は、第2の電磁エミッタと第2の電磁検出器とを備え、
前記第1の電磁エミッタと前記第2の電磁エミッタとは、赤外光を生成し、
前記第1の電磁検出器と前記第2の電磁検出器とは、赤外線検出器である、
請求項2に記載の呼吸検査システム。
【請求項4】
前記第1の電磁エミッタ、前記第1の電磁検出器、前記第2の電磁エミッタ、及び前記第2の電磁検出器のそれぞれは、熱的に離隔されている、請求項3に記載の呼吸検査システム。
【請求項5】
前記第1の電磁検出器は、前記基準気体の赤外線吸収周波数を選別し、
前記第2の電磁検出器は、前記揮発性物質の赤外線吸収周波数を選別する、
請求項3に記載の呼吸検査システム。
【請求項6】
前記ロジック部は、更に、前記検出キャビティの外側の温度とは異なる所定の動作温度に前記呼吸検査システムを維持するように構成されている、請求項4に記載の呼吸検査システム。
【請求項7】
前記呼吸検査システムは、約-40℃以上85℃以下の範囲である周囲温度を有する環境で動作し、
前記所定の動作温度は、周囲温度よりも高い、
請求項6に記載の呼吸検査システム。
【請求項8】
前記所定の動作温度は、45℃よりも高い、請求項7に記載の呼吸検査システム。
【請求項9】
前記第2の電磁検出経路は、赤外光の有効経路長さが前記検出キャビティの任意の長さ寸法よりも長くなるように構成された第1のミラー及び第2のミラーをさらに有している、請求項4に記載の呼吸検査システム。
【請求項10】
前記第1信号および前記第2信号のそれぞれは、前記第1の電磁検出器および前記第2電磁検出器によって実質的に同時に生成される、請求項9に記載の呼吸検査システム。
【請求項11】
前記第1のミラー及び前記第2のミラーのそれぞれは、前記第1のミラー及び前記第2のミラーの反射面の裏に成形された複数の加熱素子を有しており、
前記複数の加熱素子は、前記第1のミラー及び前記第2のミラーの温度勾配が最小になるように、前記第1のミラー及び第2のミラーにわたって分布される、
請求項10に記載の呼吸検査システム。
【請求項12】
前記第1のミラー及び前記第2のミラーの前記複数の加熱素子は、前記ロジック部と信号通信し、前記第1のミラー及び前記第2のミラーのそれぞれの反射面に結露が生じないように調整される、請求項11に記載の呼吸検査システム。
【請求項13】
前記第1の電磁検出器は、一体型の増幅器と、一体型のヒータと、干渉フィルタと、収集フードとを備え、前記収集フードは、前記第1の電磁エミッタからの入射電磁放射が前記第1の電磁検出器に向けて集束されるように、実質的に反射すると共に湾曲して焦点を合わせる、請求項12に記載の呼吸検査システム。
【請求項14】
前記検出キャビティを取り囲む遮蔽ハウジングをさらに備え、前記遮蔽ハウジングは、前記検出キャビティの外部と前記遮蔽ハウジングとの間にギャップが存在するように配置され、前記空気流が前記検出キャビティから前記ギャップへと循環する、請求項13に記載の呼吸検査システム。
【請求項15】
呼吸サンプルのための空気流を受け入れるように構成された空気入口と、
前記空気流が送られる前記空気入口に接続された検出キャビティであって、
前記空気流中の基準気体の存在に基づいて第1信号を生成するように構成された第1の検出経路と、
前記空気流中の揮発性物質の存在に基づいて第2信号を生成するように構成され、前記第1の検出経路に対して実質的に垂直である第2の検出経路と、
を有する検出キャビティと、
前記検出キャビティを取り囲む遮蔽ハウジングであって、前記検出キャビティの外部と前記遮蔽ハウジングとの間にギャップが存在するように配置された遮蔽ハウジングと、
前記空気流が前記ギャップを通って循環するようになっている空気循環器と、
前記第1の検出経路および前記第2の検出経路と信号通信し、前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記空気流の前記揮発性物質の濃度を測定するロジック部と、
を備える呼吸検査システム。
【請求項16】
前記空気循環器は、前記検出キャビティ及び前記ギャップを通って前記空気流を循環させるファンである、請求項15に記載の呼吸検査システム。
【請求項17】
前記空気循環器は、前記ロジック部と信号通信し、前記ロジック部は、前記空気流の速度を調整するように構成されている、請求項16に記載の呼吸検査システム。
【請求項18】
前記空気入口が、前記空気流を所定の動作温度に調整するように構成された予熱器をさらに備え、前記ギャップの温度が前記所定の動作温度である、請求項17に記載の呼吸検査システム。
【請求項19】
前記所定の動作温度は、前記遮蔽ハウジングの外側の温度と異なる、請求項18に記載の呼吸検査システム。
【請求項20】
前記呼吸検査システムは、約-40℃以上85℃以下の範囲である周囲温度を有する環境で動作し、
前記所定の動作温度は、周囲温度よりも高い、
請求項19に記載の呼吸検査システム。
【請求項21】
前記所定の動作温度は、45℃よりも高い、請求項20に記載の呼吸検査システム。
【請求項22】
前記第1の検出経路は、第1の電磁エミッタと第1の電磁検出器とを備え、
前記第2の検出経路は、第2の電磁エミッタと第2の電磁検出器とを備えている、請求項19に記載の呼吸検査システム。
【請求項23】
前記第2の検出経路は、第1のミラー及び第2のミラーを更に備え、赤外光の有効経路長さが前記検出キャビティの任意の長さ寸法よりも長くなるように構成されている、請求項22に記載の呼吸検査システム。
【請求項24】
前記第1信号および前記第2信号は、実質的に同時に生成される、請求項15に記載の呼吸検査システム。
【請求項25】
バックプレーン面と、
前記バックプレーン面に接続された第1のミラーと、
前記バックプレーン面に接続された第2のミラーであって、前記第2のミラーと前記バックプレーン面との接続が、前記第1のミラーを前記第2のミラーと光学的に整列させる、第2のミラーと、
前記第1のミラー及び前記第2のミラーに接続されて前記バックプレーン面上に配置され、揮発性物質の濃度を測定するための検出キャビティを画定するチューブセルと、
前記チューブセルにおける第1方向を横切って配向された第1の光検出経路と、
前記チューブセルにおける前記第1方向に対して実質的に垂直である第2方向を横切って配向された第2の光検出経路と、
を備え、
前記第1の光検出経路、前記第1のミラー、及び前記第2のミラーは前記バックプレーン面と電気的に接続している、
呼吸検査装置。
【請求項26】
前記バックプレーン面は、前記第1の光検出経路および前記検出キャビティが実質的に熱平衡に維持されるように分布された複数の温度制御回路を有する、請求項25に記載の呼吸検査装置。
【請求項27】
前記第1のミラーと前記第2のミラーとのそれぞれは、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの反射面の裏に成形された複数の加熱要素を有し、前記バックプレーン面は、前記複数の加熱要素と電気的に通信する、請求項25に記載の呼吸検査装置。
【請求項28】
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは、相補的な歯とノッチとによって前記バックプレーン面に接続され、前記相補的な歯とノッチとは、前記バックプレーン面と前記第1のミラーとの間の電気的接続を提供する、請求項27に記載の呼吸検査装置。
【請求項29】
前記第1のミラーの前記複数の加熱要素の第1の組の加熱要素は、前記バックプレーン面に対して、前記第1のミラーの前記複数の加熱要素の第2の組の加熱要素とは別に電気的に通信しており、当該別の電気的な通信は、別の歯とノッチとによって達成されている、請求項28に記載の呼吸検査装置。
【請求項30】
前記第1の光検出経路は、第1の電磁検出器と第1の電磁エミッタとを備え、前記第1の電磁検出器と前記第1の電磁エミッタとは前記第1のミラーに光学的に組み込まれている、請求項25に記載の呼吸検査装置
【請求項31】
前記第1の電磁検出器は加熱要素を備え、前記加熱要素は、前記バックプレーン面によって制御される、請求項30に記載の呼吸検査装置
【請求項32】
前記第1の電磁検出器は、一体型の増幅器と、一体型のヒータと、干渉フィルタと、収集フードとを備え、前記収集フードは、前記第1の電磁エミッタからの入射電磁放射が前記第1の電磁検出器に向けて集束されるように、実質的に反射すると共に湾曲している、請求項30に記載の呼吸検査装置
【請求項33】
前記バックプレーン面は、外部処理ユニットと信号通信しており、前記検出キャビティ内の前記揮発性物質の前記濃度の測定結果を前記外部処理ユニットに送るように構成されている、請求項25に記載の呼吸検査装置。
【請求項34】
呼吸サンプルのための空気流を空気入口で受け入れるステップと、
呼吸サンプルのための空気流を前記空気入口に接続された検出キャビティに送るステップと、
前記空気流中の基準ガスの存在に基づいて第1の電磁検出経路において第1信号を生成するステップと、
前記空気流中の揮発性物質の存在に基づいて、前記第1の電磁検出経路に対して実質的に垂直である第2の電磁検出経路において第2信号を生成するステップと、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記空気流中の前記揮発性物質の濃度を示す第3信号を生成するステップと、
前記第1の電磁検出経路と前記第2の電磁検出経路との熱平衡を維持するステップと、
を含む呼吸を検査するための方法。
【請求項35】
前記第1の電磁検出経路を前記第2の電磁検出経路から熱的に離隔するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記熱平衡を維持するステップは、前記第1の電磁検出経路および前記第2の電磁検出経路を、前記検出キャビティの外側の温度とは実質的に異なる温度で維持することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
呼吸サンプルのための空気流を空気入口で受け入れるステップと、
呼吸サンプルのための空気流を前記空気入口に接続された検出キャビティに送るステップと、
前記空気流中の基準ガスの存在に基づいて第1の検出経路において第1信号を生成するステップと、
前記空気流中の揮発性物質の存在に基づいて、前記第1の検出経路に対して実質的に垂直である第2の検出経路において第2信号を生成するステップと、
前記検出キャビティとシールドハウジングとの間にギャップが存在するように、前記検出キャビティをシールドするステップと、
前記ギャップを通して前記空気流を循環させるステップと、
前記第1信号および前記第2信号に基づいて前記空気流中の前記揮発性物質の濃度を測定するステップと、
を含む呼吸を検査するための方法。
【請求項38】
ファンによって前記ギャップを通して前記空気流を循環させるステップを更に含む、請求項37に記載の呼吸を検査するための方法。
【請求項39】
前記空気流を循環させるステップは、前記空気流の速度を調整するステップを含む、請求項38に記載の呼吸を検査するための方法。
【請求項40】
前記空気流を受け入れるステップは、前記シールドハウジングの外側の温度とは異なる所定の動作温度に前記空気流を予熱することをさらに含む、請求項39に記載の呼吸を検査するための方法。
【請求項41】
前記第1信号を生成するステップと、前記第2信号を生成するステップとは、実質的に同時に行われる、請求項37に記載の呼吸を検査するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、同時係属すると共に共通して譲渡された2015年6月5日に提出された米国仮特許出願第62/171,566号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
[0002] 本発明は、米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)によって授与された契約番号DTNH22-08-H-00188のもと、政府の支援によってなされている。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 本発明は、概して、呼気中の揮発性物質の存在を測定するためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、このシステム、装置、及び方法は、呼気中の揮発性物質の濃度に基づいて広範囲の環境温度下で迅速かつ正確に、血液中のアルコールなどの揮発性物質の測定を提供するように設計される。
【0004】
[0004] 呼気中のアルコール濃度を測定するための多くの既存の方法が文献に記載されている。これらには、例えば触媒半導体、燃料電池、及び赤外分光法が含まれる。赤外線(IR)分光法は、アルコール濃度を測定するために、赤外線で照らされたときに気相アルコールが生成する特定の「指紋(finger print)」を利用する。任意の物質の吸収スペクトルは、分子または化合物内の原子結合に対して特有の共鳴分子振動に起因する。この吸収スペクトルから、検査した気体またはサンプル内の特定の物質並びにその絶対濃度または相対濃度を測定することができる。この技術は物質間の高い分離感度を有する。
【0005】
[0005] 呼吸に基づくアルコールセンサの性能は、特定の測定範囲にわたる精度に関してしばしば検討される。証拠資料については±5%の精度が必要とされるが、スクリーニングおよび類似の目的には±20%で十分と考えられている。消費者市場向けのセンサは精度が低い。こうしたセンサ及びスクリーニング器具では、低い管理状態で検査された呼吸からは、共通して系統誤差が生じる。IRに基づく機器では、サンプルガスを用いた較正過程によって系統誤差を最小限に抑えることができる。サンプルガスは、温度および水分湿度について呼気に類似し、既知の濃度のエタノール又は関心のある他の揮発性物質を含む。残りのエラーは、1つ以上の測定信号からの確率的なノイズによって生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] 本明細書に記載のシステム、装置、及び方法は、呼気中の揮発性物質の濃度を測定する。特に、このシステム、装置、及び方法は、車両に組み込まれるように設計され、呼気中の揮発性物質の濃度に基づいて広範囲の環境温度下で迅速かつ正確に、血液中のアルコールなどの揮発性物質の測定を提供するように設計される。
【0007】
[0007] 呼気アルコールセンサの一例では、周囲環境から空気を取り込むための入口が設けられている。空気は、予熱器によって呼吸センサの動作温度に予熱され、その後、チューブセル内に収容された検出キャビティ内に送られる。検出キャビティは、2つの検出経路を含み、そのうちの1つ目は呼気希釈度を示すトレーサガスを感知し、2つ目は、関心のある揮発性物質を感知する。これら2つの検出経路は、呼吸センサの設置面積を小さくすると共に空気流を実質的に同時に測定することができるように構成されている。各検出経路と信号通信しているロジック部は、呼気中の揮発性物質の濃度を測定する。第1および第2の信号経路の要素を構成するエミッタおよび検出器は、熱的に絶縁され、全体として呼吸センサは実質的に単一の動作温度に維持される。ある実施形態では、2つの検出経路が垂直であり、他の実施形態では、2つの検出経路が同一線上にある。
【0008】
[0008] 呼気アルコールセンサの別の例は、周囲環境から空気を取り込むための入口を含む。空気は、予熱器によって呼吸センサの動作温度に予熱され、その後、チューブセルに収容された検出キャビティ内に送られる。チューブセルおよび検出キャビティは、チューブセルの外壁とハウジングケースの内壁との間に隙間があるように、ハウジングケースによって囲まれる。検出キャビティは、2つの検出経路を含み、そのうちの1つ目は呼気希釈度を示すトレーサガスを感知し、2つ目は、関心のある揮発性物質を感知する。これら2つの検出経路は、呼吸センサの設置面積を小さくすると共に空気流を実質的に同時に測定することを可能にする。ある実施形態では、2つの検出経路が垂直であり、他の実施形態では、2つの検出経路が同一線上にある。
各検出経路と信号通信しているロジック部は、呼気中の揮発性物質の濃度を測定する。第1および第2の信号経路の要素を構成するエミッタおよび検出器は、熱的に離隔され、全体として呼吸センサは実質的に単一の動作温度に維持される。呼吸センサの熱平衡は、呼吸センサをまたがってハウジングケースとチューブセルとの間のギャップ内に空気流を循環させるファン、ポンプ、又は他の装置によってさらに保証され得る。
【0009】
[0009] 本開示の主題のさらなる特徴、その性質、及び様々な利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010] 図1は、本発明の例示的な実施形態による呼吸センサの斜視図である。
図2】[0011] 図2は、例示的な実施形態による、2つのミラー、バックプレーン面、並びに、呼吸センサの第1及び第2のエミッタ及び検出器の相対的な空間的関係を示す斜視図である。
図3】[0012] 図3は、例示的な実施形態による、チューブセルおよび検出キャビティを示す斜視図である。
図4】[0013] 図4は、例示的な実施形態による、バックプレーン面と電気的に接続された熱絶縁エミッタおよび検出器を示す図である。
図5】[0014] 図5は、例示的な実施形態による、検出キャビティを通る空気流に関する第1および第2の検出経路を示す図である。
図6】[0015] 図6は、例示的な実施形態による、検出キャビティを通る空気の層流のシミュレーションを示す図である。
図7】[0016] 図7は、例示的な実施形態による、循環空気流を有する呼吸センサの斜視図である。
図8】[0017] 図8は、例示的な実施形態による、ミラーに組み込まれた歯を有する、ミラーとチューブセルとの間のインターフェースを示す斜視図である。
図9】[0018] 図9は、例示的な実施形態による、ミラーに組み込まれた歯を有する、第2のミラーとチューブセルとの間のインターフェースを示す斜視図である。
図10】[0019] 図10は、例示的な実施形態による、各ミラーの反射面の裏に内蔵された加熱要素を加えた、第1のミラーの2つの斜視図、第2のミラーの2つの斜視図、及びチューブセルに対するそれらの相対位置を示す図である。
図11】[0020] 図11は、例示的な実施形態による、第1のミラーを示す斜視図である。
図12】[0021] 図12は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の接続を示す斜視図である。
図13】[0022] 図13は、例示的な実施形態による、ミラー、チューブセル、及びバックプレーン面の間の接続を示す斜視図である。
図14】[0023] 図14は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の歯の接続を示す図である。
図15】[0024] 図15は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の歯の接続を示す図である。
図16】[0025] 図16は、例示的な実施形態によるミラーを示す斜視図である。
図17】[0026] 図17は、例示的な実施形態による、ミラー内の加熱素子の分布を示す図である。
図18】[0027] 図18は、例示的な実施形態によるミラーを示す斜視図である。
図19】[0028] 図19は、例示的な実施形態による、ミラー内の加熱要素の分布を示す図である。
図20】[0029] 図20は、例示的な実施形態による、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。
図21】[0030] 図21は、例示的な実施形態による、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。
図22】[0031] 図22は、例示的な実施形態による、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。
図23】[0032] 図23は、例示的な実施形態による、完成した基準ガス検出器を示す図である。
図24】[0033] 図24は、例示的な実施形態による、揮発性物質検出器のミラーへの組み込みを示す断面図である。
図25】[0034] 図25は、例示的な実施形態による、熱検出器および光源に使用されるトランジスタヒータを示す図である。
図26】[0035] 図26は、例示的な実施形態による、任意追加のヒータ制御回路を示す図である。
図27】[0036] 図27は、例示的な実施形態による、任意追加のヒータ制御回路を示す図である。
図28】[0037] 図28は、例示的な実施形態による、呼吸検査による信号応答の実験結果を示す図である。
図29】[0038] 図29は、例示的な実施形態による、気体パルスに対する信号応答の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0039] 肺毛細管血と肺胞との間の気体交換は、非常に効率的な平衡動態を示し、特定の物質の呼吸濃度の測定は、対応する血液濃度の正確な指標となる。特に、呼気アルコール濃度は血中アルコール濃度を厳密に追跡して示し、両者の間の換算係数は標準化することができる。呼気アルコール濃度(BrAC)は、血中アルコール濃度(BAC)に対して、およその換算式、BrAC[mg/l]=0.5×BACで関連する。エタノール又はEtOHを除いた他の分析対象物は、血液に対する呼吸の他の変換係数を有するであろう。BAC測定で直接に血液を採取する必要性とは対照的な、BrAC測定の非侵襲な性質によって、一般の商業的使用にとって魅力的なアルコール検出のための呼吸に基づくシステムが可能となる。
【0012】
[0040] 商業用車両に一体化された呼吸に基づくアルコール測定システムは、消費者車両の状態における制限および多様性に固有である多くの課題を抱えている。こうしたシステムは、広い環境条件および温度の下で一定の管理可能な動作温度に到達できる必要がある。そして、短時間の始動時間のうちにこれを達成し、飲酒していない運転手に迷惑をかけないようにする必要がある。関連する問題として、暖かい湿った呼吸と冷たい表面との接触による結露が検出表面に蓄積するのを防止する必要がある。車両へ容易に組み込むための他の設計上の考慮事項として、運転手が便利にアクセスでき、通常の車両操作を妨げないように、装置のフットプリントを最小にすることが求められる。検出された光の経路長に対して信号強度が一次関数となるIR分光法を装置が使用する場合、高分解能信号を保証しながらこの幾何学的制約を満たすために多数の工学的解法が使用され得る。さらに、センサは、精度を犠牲にすることなく、低電力消費でエネルギ効率が良く、且つ、比較的安価で生産が容易であるべきである。
【0013】
[0041] 本開示の全体的な理解を提供するために、血液アルコールを測定するための呼吸センサを提供するためのシステムおよび方法を含め、いくつかの例示的な実施態様について説明する。
【0014】
[0042] 図1は、本発明の一実施形態による例示的な呼吸センサの斜視図である。図1に示すように、空気は、検出器100の外部から空気入口102を通って入り、予熱器104によって装置の動作温度まで温められる。動作温度は、呼吸センサの外部の温度と一般的に異なる。いくつかの実施形態では、動作温度は、検出キャビティの外側の温度よりも実質的に高い。呼吸センサが車両に一体化されている例では、車両の動作温度、したがって装置外部の周囲空気の温度は、-40℃から85℃までの範囲となり得る。吐き出された空気の露点は約32℃である。動作温度は、周囲温度より高く、露点よりも高い温度に設定されてもよく、さらに約+10℃余分に温度制御マージンが設定されてもよい。したがって、動作温度は、45℃より高くてもよい。動作温度は、加熱機能と冷却機能の両方を含むのではなく、すべての温度コントローラをヒータにすることによって、呼吸センサの温度制御を単純化し得る。予熱された空気は、続いて、入口102に接続されてチューブセル110によって囲まれた検出キャビティに入る。チューブセル110は、第1の電磁エミッタ108及び第1の電磁検出器106に接続され、これらは、検出キャビティを通過する第1の検出経路をそれぞれ構成する。一実施態様では、第1の検出経路は、COの吸収を選別して検査する。検出器によるCOの選別は、一般に、COに対する100%スペクトル選別を得るために、例えばCWL=4.26μm/FWHM=0.15μmで特定される光学バンドパスフィルタを用いて中間波長赤外線(MID IR)を検出することによって行われる。通常、他の関連するガスが干渉することはない。エミッタ108と検出器106とは入れ替えることができ、それらの位置は特定の配置に限定されるものではない。第2の検出経路は、第2の検出器114と第2のエミッタ116とを含み、これらは、入口102と反対側のチューブセルの端部に配置される。一実施形態では、第2の検出経路は、対象の揮発性物質(例えば、アルコール)を選別して検査する。空気流は、空気出口116を通って検出キャビティを出る。図1に示すように、呼吸センサ100は、入口102からチューブセル110および検出キャビティを通って出口118の外へと空気を積極的に輸送するファン112、又は他の機構を任意に含んでもよい。センサの歪みを回避して呼吸センサの温度勾配を改善するために、すべての物理的な構成要素は対称に設計されている。
【0015】
[0043] 図2は、例示的な実施形態による、2つのミラー、バックプレーン面、並びに、呼吸センサの第1及び第2のエミッタ及び検出器の相対的な空間的関係を示す斜視図である。検出キャビティを囲むチューブセル202は、ミラー210、206のそれぞれの接続および位置合わせを容易にするノッチ214、208を含む。ノッチは、エミッタと検出器との間の検出経路を、所定の固定配置で維持することを可能にする。ミラーは、任意の金属による反射表面、およびエポキシのような熱的に安定な材料から構成されてもよい。ノッチ214、208のそれぞれは、歯部212、204に対して相補的である。また、チューブセル202およびミラー210、206は、バックプレーン面216に配置される。装置のフットプリントを低減するためにバックプレーン面は中央制御回路を収容してもよい。また、バックプレーン面は、電気回路を組み込むことができる任意の面であればよい。一例では、このバックプレーン面はPCB基板であってもよい。図示の例では、この面はミラー210、206と電気的に接続している。発熱素子および感応素子は、分離されて熱的に離隔された面218、222、224、220および228に配置される。面218、222、224、220および228は、PCBボード、または電気回路を担持することができる任意の他の面とすることができる。面218は、面218に取り付けられた基準ガス検出器240と共に示されている。一例では、この検出器はCO赤外線検出器であり、基準ガスはCOである。面224も、面224に取り付けられた検出器242と共に示されている。一実施形態では、検出器242は、対象の揮発性物質の吸収スペクトルを選別する。検出器204,242は、検出すべき物質またはトレーサガスの吸収ピークに合わせたバンドパス干渉フィルタを備えた赤外線放射のサーモパイル(熱電対列)検出器であってもよい。エタノール検出器のバンドパス間隔は9.1-9.9μmであり、CO検出器のバンドパス間隔は4.2-4.3μmである。バンドパスフィルタの選別は、一般に、例えばCSL=9.48μm/FWHM=0.85μmで特定される光学バンドパスフィルタでエタノールを検出することによって行われる。これにより、潜在的に妨害する可能性があるガスに対して許容できる選別が得られる。面218、224は、温度感知型の検出器を呼吸センサの発熱領域から熱的に隔離する。面218、224は、検出器240,242を平衡温度に維持するための温度調節制御を含む。能動ヒータによってこうした温度調節制御がなされてもよい。
【0016】
[0044] 面220、222には、電磁放射器238、244がそれぞれ取り付けられている。一例では、238、244は赤外線エミッタであり、238、244は赤外線を生成することができる任意の標準的な電磁波源であり得る。一例として、エミッタ238は、広帯域赤外線放射ビームを生成するタングステンランプのような黒体放射素子であってもよい。エミッタ238、244は、一般的な信号の周波数帯域より大きい周波数で変調されてもよい。面220、222は、発熱エミッタを呼吸センサの感熱領域から熱的に隔離する。面220、222は、エミッタ220、222を平衡温度に維持するための温度調節制御を含み、出力放出波長の安定性を提供する。バックプレーン面によって制御される能動ヒータによってこうした温度調節制御がなされてもよい。
【0017】
[0045] 面228は、製造のためにインターフェースを提供するエッジコネクタであり、バックプレーン面216から取り外すことができる。面228は、製造中の針固定具などの別の構成要素によって任意に置き換えることができる。面218、220、222および224は、それぞれバックプレーン面216と電気的に接続している。面218、220、222および224は、PCB基板などの電気回路を組み込むことができる任意の面であってもよい。面218、220、222および224は、可撓性コネクタ232、230、236および234をそれぞれ介して面216と電気的に接続されている。これらのコネクタ232、230、236および234は、可撓性フィルムまたは他の材料から作製されてもよく、PCB間の熱伝達が小さい。追加的な構成要素226は、チューブセル202およびミラー210、206をバックプレーン面216に固定する。
【0018】
[0046] 図3は、例示的な実施形態による、チューブセルおよび検出キャビティの周りの発熱素子および感熱素子の配置を示す斜視図である。図3に示すように、チューブセル310は、バックプレーン面314に取り付けられる。検出器を含む感熱素子308、302は、チューブセル310本体の周りに巻かれて示されている。エミッタを含む発熱素子306、304もまた、チューブセル310本体の周りに巻き付けられて示されている。これは、312で示されるような可撓性の電気コネクタによって可能になる。チューブセル310本体を跨ってエレメント302、304、306及び308を分配することにより、呼吸センサの熱安定性を改善できるとともに、感熱素子308,302と発熱素子306、304との相互作用を回避できる。
【0019】
[0047] 図4は、例示的な実施形態による、バックプレーン面と電気的に接続された熱絶縁エミッタおよび検出器を示す図である。バックプレーン面は、呼吸センサの全体的な温度勾配を低減すると共に呼吸センサを熱平衡にさせるために、計画的に配置された追加的な温度調節回路を含んでもよい。呼吸センサの平衡温度が外気の温度よりも実質的に高くなるように、温度調節回路がヒータであってもよい。これにより、単一方向の加熱制御が可能になり、温度調節回路の複雑化を回避できると共に始動時間を短縮できる。
【0020】
[0048] 面406、410は、搭載された検出器を収容し、概略的な回路と共に示されている。面408、404は、エミッタを収容し、概略的な回路と共に示されている。可撓性の電気接続414、418、416、及び412は、バックプレーン面402と熱的に絶縁された面408、406、404、及び410との間のそれぞれの信号通信において示されている。面408、406、404、及び410は、可撓性の電気接続414、418、416、及び412を介してバックプレーン面402によって温度調節されてもよい。
【0021】
[0049] 図5は、例示的な実施形態による、検出キャビティを通る空気流に関する第1および第2の検出経路を示す図である。
【0022】
[0050] 本実施の測定原理は、二酸化炭素(CO)をトレーサガスとして使用し、周囲空気中の呼気の希釈度を示すことである。周囲空気中のCOの通常の濃度は、約400ppmまたは0.04%である。呼気終末CO濃度は、既知であって予測可能であり、平均的な人口における能動呼気試験によれば、約4.1kPAである。したがって、検出経路510、508を介してCO及びアルコールの両方を測定することによって、数学的アルゴリズムを用いて希釈度を補償することができる。このアルゴリズムは、検出経路510、508で生成された信号によって示されるCOおよびアルコールの測定濃度と、肺胞空気中の既知のCO値との比とすることができ、これにより、肺胞空気アルコール濃度が得られる。
【0023】
[0051] 第1の検出経路510は、検出キャビティの短い寸法をまたいで示されている。第1の検出経路510は、入口506から出口512に流れる空気流であって502、504で示される空気流における基準ガスの濃度に基づいて第1の信号を生成する。一実施態様では、基準ガスはCOである。任意的に、ファンによって空気流502、504が送られてもよい。第1の検出経路510は、空気の層流502、504を横切る電磁放射線の経路である。一例では、電磁放射線は赤外光であり、第1の検出経路は光路である。第1の信号は、空気流502、504による赤外光の吸収を示す振幅、又は任意の他の電気信号とすることができる。
【0024】
[0052] 第2の検出経路508は、502、504で示される空気流における揮発性物質の濃度に基づいて第2の信号を生成する。一実施態様では、この揮発性物質はエタノールである。第2の信号経路は、空気502、504の層流の方向における電磁放射の経路である。電磁放射線は赤外光であり、第2の検出経路は光路である。第2の信号は、空気流502、504による赤外光の吸収を示す振幅、又は任意の他の電気信号とすることができる。第2の検出経路の経路長は、検出キャビティの寸法の数倍であり、この検出キャビティの寸法は検出キャビティの両端に配置されて検出器に入射する赤外光を反射するミラーによる。
【0025】
[0053] 第1の検出経路の光路長は、精度が犠牲にならない範囲で、第2の検出経路の経路長よりも短くてもよい。呼気中のCO濃度は、ほとんどの揮発性物質の濃度よりもはるかに高いため、強い信号を得るために、第1の検出経路は更なる反射を必要としなくてすむ。これにより、呼吸センサのフットプリントをかなりコンパクトにすることができ、車両に容易に組み込むことが可能になる。
【0026】
[0054] 図3に示される測定原理は、トレーサガスと対象の揮発性物質との任意の組み合わせに使用することができ、COとアルコールに限定されない。HOは、トレーサガスとしてCOに代えて使用してもよく、空気流の温度感知を呼気希釈の指標として使用してもよい。アセトン、アセトアルデヒド、メチルアルコール、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソプレン、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸エチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンは、診断または毒物学の観点から興味深い揮発性物質の例である。
【0027】
[0055] 図6は、例示的な実施形態による、検出キャビティを通る空気の層流のシミュレーションを示す図である。第1の検出経路608、及び第2の検出経路606は、垂直に示されているが、2つの異なる光路がセル空間で重なり、同一の空間的な空気量を満たす限り、平行であってもよいし、別の角度で配置されてもよい。検出経路606,608が垂直または同一直線上に配置されることにより、短いCO検出経路、及びEtOHのような揮発性物質に対する長い検出経路を実現することができ、これにより、測定精度および測定速度を改良できる。検出キャビティ602を通る空気の層流は、第1の検出経路608及び第2の検出経路606から生成された第1の信号および第2の信号が実質的に同時に起こるように設計される。これは、第1の検出経路608と第2の検出経路606との相対的な空間的配置、及びファンを通る任意の能動的な空気の流れによって達成することができる。信号が同時に起こることにより、測定された基準ガスの希釈係数が測定された揮発性物質濃度に対応することが保証され、装置の精度が向上する。
【0028】
[0056] 図7は、例示的な実施形態による、循環空気流を有する本発明の一実施形態の斜視図である。この実施形態では、空気が入口706を介して検出キャビティ708に入る。追加的な収容ケース704は、710で示すように、チューブセルの外壁と収容ケースの内壁との間に隙間ができるように検出呼吸センサを囲む。検出キャビティの終わりにて、702、712で示すように、空気が検出キャビティの本体を越えて戻される。再循環された空気は、その後、入口706と同じ端部でハウジングケースから排出され得る。または、再循環された空気は、ハウジングケースとチューブセルとの間のギャップを通って検出キャビティの外側へ空気が流れることを促すことができる任意の他の向きで、ハウジングケースから排出され得る。この追加的な収納ケースは、検出キャビティとその外部環境との間に熱シールドを設けることにより、呼吸センサの熱安定性を高める。特にチューブセルの壁のいずれかの側での温度勾配の減少は、チューブセルの幾何学的変形および第1および第2の検出経路の光路長をさらに減少させる。ギャップと検出キャビティとの温度差は、外部の周囲温度差に依存し、一般的には摂氏度の数分の1の範囲内である。
【0029】
[0057] 図8は、例示的な実施形態による、ミラーに組み込まれた歯を有する、ミラーとチューブセルとの間のインターフェースを示す斜視図である。ミラー804は、バックプレーン面に固定するための歯806と、チューブセル802に固定するための歯808とを有している。これらの歯は、検出キャビティに対する鏡の配置を保証する。ミラー804は、迅速な始動時間を可能にし、その表面の熱制御をより良好にできるように、最小の質量を有するように設計されてもよい。
【0030】
[0058] 図9は、例示的な実施形態による、ミラーに組み込まれた歯を有する、第2のミラーとチューブセルとの間のインターフェースを示す斜視図である。ミラー912は、バックプレーン面に固定するための歯904と、チューブセル902に固定するための歯906とを有している。ミラー912は、検出器(空間908を介して)とエミッタ(空間910を介して)とを光学的に一体化するように構成され、第2の検出経路のこれらの2つの端点の間で赤外光の反射を提供する。検出器とエミッタとを光学的に一体化することにより、呼吸センサのコンパクトな設計が可能になる。
【0031】
[0059] 図10は、例示的な実施形態による、各ミラーの反射面の裏に内蔵された加熱要素を加えた、第1のミラーの2つの斜視図、第2のミラーの2つの斜視図、及びチューブセルに対するそれらの相対位置を示す図である。ミラー1004、1009のそれぞれの反射面の裏に成形された加熱要素1002、1008が示されている。これらの加熱要素は、銅線、または抵抗加熱器として若しくは熱を発生するものとして振る舞う任意の他の材料とすることができ、検出キャビティ内の予熱された空気流と反射面との間の温度勾配を防止するように設計することができる。暖かく、湿った呼気がより冷たい表面に接触すると、空気中の水蒸気が鏡面上に凝縮し、第2の検出経路の光路を不能にさせる。発熱素子1002、1008は、ミラー1004、1009の反射面をそれぞれ加熱することによって結露を防止し、温度低下および結露を防止する。両ミラーは、チューブセル1010の両側に固定され、それらの反射面が互いに実質的に平行になるように位置合わせされる。
【0032】
[0060] 図11は、例示的な実施形態による、第1のミラーを示す斜視図である。ミラー1102の側面1100はミラーの曲率を示し、ミラー1009の背後に位置する検出器に集束される前に、ミラー1004及び1009の間で赤外光が複数回反射することを可能にする。曲率の角度は、第2の検出経路の経路長を増加または減少させるために調整されてもよい。片側のみが凹面鏡として用いられているが、図11は、ミラー1100が両側に同一の曲率を有するように対称断面を有するように設計されて示されている。この構成は、環境に対する安定性を増加させ、ミラー曲率を変形させる「バイメタル」曲げ効果および非対称応力を回避させる。
【0033】
[0061] 図12は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の接続を示す斜視図である。歯1216は、ミラー1210及びミラー1212が完全に整列するようにバックプレーン面1214に接続される。この整列は、光学的な整列であってもよい。ミラー1210とミラー1212との間の領域1202は、通常、チューブセル1308によって占められる。
【0034】
[0062] 図13は、例示的な実施形態による、ミラー、チューブセル、及びバックプレーン面の間の接続を示す斜視図である。この斜視図は、バックプレーン面1302の下を示しており、バックプレーン面1302とチューブセル1308との間の接続が1310で示されている。ミラー1304、1306は一直線上に示されている。チューブセル1308は、精密チューブおよびミラー接続を使用して、チューブおよびミラーの正確な位置合わせを提供することができる。
【0035】
[0063] 図14は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の歯の接続を示す図である。この接続では、ミラー1408をバックプレーン面1406に端部で接続させる歯1402が示され、この歯1402は、ミラー1404の外形の中心に位置している。
【0036】
[0064] 図15は、例示的な実施形態による、ミラーとバックプレーン面との間の歯の接続を示す図である。断面図では、ミラー1506が接続されるように、バックプレーン面1502のノッチ1504が示されている。
【0037】
[0065] 図16は、例示的な実施形態によるミラーを示す斜視図である。ミラーは、1602にて湾曲している。この湾曲角度は、呼吸センサの幾何学的形状に合わせて調整することができる。
【0038】
[0066] 図17は、 例示的な実施形態による、ミラー内の複数の加熱素子の分布を示す図である。これらの加熱要素は、銅線、または抵抗加熱器として若しくは熱を発生するものとして振る舞う他の任意の材料とすることができる。1710で示すように、加熱要素1708、1706は、鏡面上に均一に分布しておらず、ミラーとチューブセルとの間の接触点に集中している(1308参照)。ミラー1602とチューブセル1308とは熱的に結合されており、ミラーの表面に均等に熱を分配するためには、チューブセルの追加質量を考慮して加熱要素をこれらの点に集中させなければならない。これは、1708のようなミラー上の中心点において、加熱要素がより分散している可能性があることを意味する。加熱素子は電気的に分離されて、別個の電気的制御を受け、ミラー1602の表面にわたる熱勾配の微調整を可能にする。複数の加熱要素の電気的な接続は、1704に示すように、歯に配置されたノードにあってもよい。各歯は、複数の加熱要素1709、1706に対して別個の電気的接続を有してもよい。
【0039】
[0067] 図18は、例示的な実施形態によるミラーを示す斜視図である。ミラー1816は、1812、1814に示すように、検出器およびエミッタの光学的統合を含む。図19は、例示的な実施形態による、ミラー内の加熱要素の分布を示す図である。
【0040】
[0068] 図19は、例示的な実施形態による、ミラー内の加熱要素の分布を示す図である。これらの加熱要素は、銅線、または抵抗加熱器として若しくは熱を発生するものとして振る舞う任意の他の材料とすることができる。1924で示すように、加熱要素1922、1920は、鏡面上に均一に分布しておらず、ミラーとチューブセルとの間の接触点に集中している(1308参照)。ミラー1816とチューブセル1308とは熱的に結合されており、ミラーの表面に均等に熱を分配するためには、チューブセルの追加質量を考慮して加熱要素をこれらの点に集中させなければならない。これは、1922のようなミラー上の中心点において、加熱要素がより分散している可能性があることを意味する。加熱素子は電気的に分離されて、別個の電気的制御を受け、ミラー1816の表面にわたる熱勾配の微調整を可能にする。ミラー1224では、1812、1814として示されているミラーの孔の周りに、1920で示されるように加熱要素が集中している。これらは、基準ガス検出器およびエミッタをミラー1816に結合するための追加質量を考慮している。ミラーのチューブセルに対する関係によって得られる一例を示しているが、加熱要素の分布は複数の手段で設計することができる。加熱素子におけるそれぞれの領域は、バックプレーン面と通信するフィードバック回路によって個別に制御されてもよい。これにより、ミラーの表面上の温度をより細かく制御することが可能になる。加熱素子とバックプレーン面との間の接続は、歯1918に配置されたノードとして示されている。これにより、ミラーの歯のバックプレーン面への結合は、2つのミラーを確実かつ容易に位置合わせする手段であるとともに、電気的インターフェースとしてさらに機能する。
【0041】
[0069] 図20は、例示的な実施形態による、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。一実施形態では、トレーサガス検出器は、CO検出器である。トレーサガス検出器2308は、トレーサガスの吸収ピークをさらに選択するために、プレ増幅器および干渉フィルタ回路2006、並びに2004で示される他の任意の信号フィルタリング回路を含む。この回路は、2002のように集められてもよい。
【0042】
[0070] 図21は、例示的な実施形態による、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。このステップでは、2002に示されている検出器2102が、モールド2104に配置される。モールド2104には、エポキシまたは別の熱的に理想的な材料が注入される。エポキシの表面は、金属化されて入射光を検出器上で反射させる。
【0043】
[0071] 図22は、基準ガス検出器を製造するステップを示す図である。このステップ2206では、2002に示される回路構成要素を保護するために、金属化の前にシャドーマスク2204が2206へ適用される。
【0044】
[0072] 図23は、例示的な実施形態による、完成した基準ガス検出器を示す図である。完成したトレーサガス検出器は2308に示されている。干渉フィルタ2304は、その真下に位置する検出器の上に重ねて示されている。収集フード2302は、検出器を取り囲む湾曲した反射面として示されている。呼吸センサのフットプリントをよりコンパクトにするためにトレーサガス(例えば、CO)の経路長さは比較的短くなっており、且つ、対応するエミッタは広域スペクトル光源であるため、収集フード2302は、入射光を検出器に集束させ、CO濃度信号の信号-雑音比を改善する。収集フード2302は、検出キャビティ内の他の光源から検出器を遮蔽するのにも役立つ。
【0045】
[0073] 図24は、例示的な実施形態による、揮発性物質検出器のミラー2402への組み込みを示す断面図である。検出器2406は、保護窓部2404の下に配置されている。検出器2406は、検出器上の温度勾配が実質的にゼロになるように、エポキシ材料のような熱的に安定化された材料によって全方向で囲まれている。バックプレーン面2408も、熱的に安定し、呼吸センサの発熱要素から隔離される。検出器、検出キャビティ2410、及びチューブセル2412の間の界面は、対象とした揮発性物質の吸収信号の信号-雑音比を改善する。
【0046】
[0074] 図25は、例示的な実施形態による、熱検出器および光源に使用されるトランジスタヒータを示す図である。このトランジスタヒータは、電力入力部2502と、制御信号入力部2510と、トランジスタ2504、2506とを有している。入力部2510は、制御信号に接続され、制御信号は電圧または電流であってもよい。このトランジスタは、市販の任意のトランジスタでよい。この回路は、設置面へ熱注入するために、抵抗ヒータよりもはるかに低い遅延で効率よく作動し、電力入力電圧に対する電力依存性を減少させ、基準ガス検出器のためのヒータのフットプリントを低減する。この回路は、2508においてPCB表面に印刷されて示されている。加熱回路2508は、バックプレーン面のロジック部と信号通信している。キャパシタ2512は、任意的なスルーレートリミッタである。この非伝統的な加熱回路は、基準ガス検出器の表面における寸法制約を満たす。
【0047】
[0075] 図26は、例示的な実施形態による、任意追加のヒータ制御回路を示す図である。この回路2602は、入力部2510にて回路2508に接続されてもよい。この回路は、2604でのスルーレートリミッタと共に、2606におけるハードウェア過熱保護を有している。ヒータ回路への入力は、2608であってもよい。他の電気回路は、標準的な電気部品であってもよい。
【0048】
[0076] 図27は、例示的な実施形態による、任意追加のヒータ制御回路を示す。この回路2702は、入力部2510で回路2508に接続されてもよく、回路2602とは別個に、または回路2602と共に加えられてもよい。この回路は、回路2508を電流によって制御することを可能にする抵抗2704を有する。ヒータ回路への出力は、2706であってもよい。全ての抵抗器、コンデンサ、ダイオードおよび他の電気回路は、標準的な電気部品であってもよい。
【0049】
[0077] 図28は、例示的な実施形態による、呼吸検査による信号応答の実験結果を示す図である。曲線2802は、基準ガスの存在に応じた例示的な信号であり、図2808ではCOを示している。曲線2804は、揮発性物質の存在に応じた例示的な信号であり、図2808ではエタノールを示している。2つの信号の持続時間は、2806で示されており、同様である。2810にて示される基準ガスおよび揮発性物質の存在に対する第1応答は、数分の1秒以内である。このように、2つの信号は、それらの応答時間の差がゼロに非常に近く、実質的に並行している。一例では、エタノール応答曲線は、肺の深い位置から来るので、2810に示すように、CO曲線よりわずかに先行している可能性がある。この差は実際には検出されない可能性があり、一例としてここに示している。
【0050】
[0078] 図29は、例示的な実施形態による、気体パルスに対する信号応答の実験結果を示す図である。これらの結果は、呼吸センサからの2つの異なる距離での信号応答を示している。パルス2904は空気入口部から0cmでの呼気の結果であり、パルス2906は空気入口から5cmでの呼気の結果である。2903にて示す揮発性物質はエタノールであり、検出された基準ガスはCOである。これらの2つのパルス2904、2906によれば、揮発性物質の信号2908が基準ガスの信号2910をぴったりと追従していることが示されている。2つの信号は、2912及び1914で、気体パルスに実質的に同時に応答するよう示されている。
【0051】
[0079] 光学性能及び経路長さを規定する全ての構成要素は、2014年6月2日に出願された米国特許出願第14/362,384号による安定化合物によって製造することができる。米国特許出願第14/362,384号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
[0080] 上記は本発明の原理の単なる例示であって本発明を限定するではなく、本発明は、例示のために提示され記載された実施形態以外のものによっても実施することができるものである。本発明は特許請求の範囲によって規定される。
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