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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】HbA1cの測定法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20220222BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C12Q1/37
C12Q1/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018533572
(86)(22)【出願日】2017-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2017029185
(87)【国際公開番号】W WO2018030531
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2016157958
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 聡
(72)【発明者】
【氏名】西尾 朋久
(72)【発明者】
【氏名】中西 一夫
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-187604(JP,A)
【文献】国際公開第2006/013921(WO,A1)
【文献】特開平06-241981(JP,A)
【文献】特開昭54-116283(JP,A)
【文献】特開昭60-035241(JP,A)
【文献】特開昭63-050743(JP,A)
【文献】糖尿病,2010年,Vol.53,p.385-389
【文献】米久保功他,医学検査,1997年12月25日,Vol.46,p.1734-1738
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/37
C12Q 1/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率を測定する方法であって、
前記試料が全血、全血より分離された赤血球、及び全血より分離され、さらに洗浄された赤血球から選択され、
前記ヘモグロビン濃度は第一工程で光学的に測定され、
前記ヘモグロビンA1c濃度は第二工程で550nm~750nmから選択された波長により光学的に測定され、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、450nm~610nmから選択された第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、690nm~900nmから選択された第2の波長で測定した脂質粒子の濃度情報及びヘモグロビンの濃度情報を用いて補正する、
方法。
【請求項2】
補正されたヘモグロビン濃度が下記[式B]で表され、
[式B]:(補正されたヘモグロビン濃度)=(みかけのヘモグロビン濃度)-(偽高値化分ヘモグロビン濃度)
該みかけのヘモグロビン濃度は、前記第1の波長により測定したヘモグロビン濃度であり、
該偽高値化分ヘモグロビン濃度は、下記[式A]で決定されるXlipidで表され、
[式A]:Xlipid=a1*Ylipid-b1(a1は傾き、b1は切片である)
lipidは、前記第1の波長における吸光度より算出された、脂質粒子を含む試料のヘモグロビン濃度と脂質粒子を含まない試料のヘモグロビン濃度との差を表し、
lipidは、前記第2の波長における脂質粒子の吸光度を表す、
請求項記載の方法。
【請求項3】
補正されたヘモグロビン濃度が下記[式F]で表され、
[式F]:(補正されたヘモグロビン濃度)=(みかけのヘモグロビン濃度)-(偽高値化分ヘモグロビン濃度)
該みかけのヘモグロビン濃度は、前記第1の波長により測定したヘモグロビン濃度であり、
該偽高値化分ヘモグロビン濃度は、下記[式E]で決定されるXlipid-2で表され、
[式E]:Xlipid-2=(補正された脂肪粒子の吸光度Ylipid offset)*a1(a1は傾きである)
ここで、Ylipid offset=(第2の波長による試料の吸光度)-(第2の波長におけるヘモグロビン濃度に依存した吸光度の変化分YHb)
Hbは下記回帰式[式C]で決定される、
[式C]:YHb=a2*XHb-b2(a2は傾き、b2は切片、XHbは試料中のヘモグロビン濃度である)
請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HbA1cの測定法に関する。詳細には、自動分析装置を用いたHbA1c測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、HbA1cのβ鎖N末端が糖化されたものであって、ヘモグロビンの大部分を占めるHbAの糖化産物である。HbA1cのヘモグロビン全体量に対する存在比率は、被験個体における採血時点から過去1~2ケ月の平均的な血糖値を反映するため、糖尿病の血糖コントロール状態の指標として、臨床における診断、治療法選択に広く利用されている。
【0003】
HbA1cの存在比率は、NGSP%では、ヘモグロビン濃度(μmol/L)に対するヘモグロビンA1c濃度(μmol/L)の比率(%)として、IFCC値では、ヘモグロビン1molに対するヘモグロビンA1c(mmol)の比率(mmol/mol)として、算出される。以下、本明細書において、算出されたHbA1c存在比率を、総称してHbA1c%ということがある。HbA1c%を算出するためのHbA1cの測定方法として、HPLC法、免疫凝集法、電気泳動法、酵素法が報告されている。これらのうち酵素法は、近年実用化された方法で、臨床検査の分野において繁用される自動分析装置に適用可能であり、かつ同じく自動分析装置への適用が可能な免疫凝集法と比較して、試薬による自動分析装置(特に反応セル)の汚染が少ないという利点を有している。
【0004】
HbA1c%を測定するための試料として、全血より分離した血球を使用する場合と全血を使用する場合があるが、酵素法については、全血を試料とした場合の報告はあるものの、未だ技術蓄積が十分ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Clin.Chem.,50(1)、166-174(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、酵素法において全血を試料とした場合について検討を行っていたところ、試料中の共存物質の影響を強く受け、誤差を生じる場合があることを経験した。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、全血を試料とする酵素法によるHbA1c%の測定における共存物質の影響を回避する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)の測定方法であって、
ヘモグロビン濃度を光学的に測定する第一工程と、
ヘモグロビンA1c濃度を光学的に測定する第二工程を有し、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、以下を満たす第2の波長で測定した結果を用いて補正する、
480nmより長波長であり、
100μmol/Lヘモグロビン生理食塩水液の480nmにおける吸光度に対して1/10以下の吸光度を与える波長であり、
脂肪粒子濃度と吸光度の間に相関関係がある波長である、
方法を提供する。
【0008】
一実施形態において、本発明は、酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)の測定方法であって、
ヘモグロビン濃度を光学的に測定する第一工程と、
ヘモグロビンA1c濃度を光学的に測定する第二工程を有し、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、450nm~610nmから選択された第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、690nm~900nmから選択された第2の波長で測定した結果を用いて補正する、
方法を提供する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)を測定する方法であって、
ヘモグロビン濃度は第一工程で光学的に測定され、
ヘモグロビンA1c濃度は第二工程で光学的に測定され、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、450nm~610nmから選択された第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、690nm~900nmから選択された第2の波長で測定した脂質粒子の濃度情報及びヘモグロビンの濃度情報を用いて補正する、
方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動分析装置を用いた全血試料のHbA1c測定法における、試料由来色素(例えば、乳びによる濁り)に起因する誤差の補正が可能になる。また本発明によれば、全血を試料として酵素法によりHbA1c%を測定する際、試薬の組成を変更することなく、自動分析装置側で試料中の共存物質の影響を回避することができる。本発明によれば、全血を試料として酵素法によりHbA1c%を測定する際、特殊検体(例えば乳び検体)であっても正確なHbA1c%の測定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】イントラリピッドを含む試料を酵素法により測定した場合のヘモグロビン濃度測定における反応タイムコース(左図)とヘモグロビンA1c濃度測定における反応タイムコース(右図)を示す図である。
図2】イントラリピッドを含む試料の400nm~900nmにおける吸収スペクトルを示す図である。左図は400nm~900nmの範囲の測定結果であり、右図は650nm~900nmの範囲について、拡大した図である。
図3】第2の波長(884nm)におけるイントラリピッドの吸光度と偽高値化分ヘモグロビン濃度との関係を示す図である。
図4】試料のヘモグロビン濃度と実施例2で測定されたHbA1c%との関係を示す図である。左図のX軸はヘモグロビン濃度、Y軸はHbA1c%(Y軸)であり、右図のX軸はヘモグロビン濃度、Y軸は、補正前のHbA1cに対する補正後のHbA1c%のバイアス(補正後-補正前)である。
図5】第2の波長(884nm)におけるヘモグロビン濃度と吸光度変化との関係を示す図である。
図6】実検体を用いた本発明の方法によるHbA1c%測定値について、ヘモグロビン濃度補正なしの場合と補正ありの場合との関係を示す図である。左図のX軸は補正前のHbA1c%、Y軸は補正後のHbA1c%であり、右図のX軸は、補正後のHbA1c%、Y軸は、補正なしのHbA1c%に対する補正ありのHbA1c%のバイアス(補正有り-補正なし)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
自動分析装置を用いた酵素法によるHbA1c%の測定方法は、大きく、ヘモグロビンを光学的に測定する第一工程、HbA1cを光学的に測定する第二工程、第二工程の測定値を第一工程の測定値で除する演算工程よりなる。この測定方法を全血試料で実施した場合、血液中の乳び等の共存物質の影響による測定誤差を生じ得る。本発明者は、当該測定誤差を補正することができるHbA1c%の測定方法を提供する。
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を例示して、本発明を説明する。
【0014】
[実施形態1]
酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)の測定方法であって、
ヘモグロビン濃度を光学的に測定する第一工程と、
ヘモグロビンA1c濃度を光学的に測定する第二工程を有し、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、以下を満たす第2の波長で測定した結果を用いて補正する、
480nmより長波長であり、
100μmol/Lヘモグロビン生理食塩水液の480nmにおける吸光度に対して1/10以下の吸光度を与える波長であり、
脂肪粒子濃度と吸光度の間に相関関係がある波長である、
方法。
【0015】
[実施形態2]
酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)の測定方法であって、
ヘモグロビン濃度を光学的に測定する第一工程と、
ヘモグロビンA1c濃度を光学的に測定する第二工程を有し、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、450nm~610nmから選択された第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、690nm~900nmから選択された第2の波長で測定した結果を用いて補正する、
方法。
【0016】
[実施形態3]
酵素法による試料中のヘモグロビン濃度に対するヘモグロビンA1c濃度の比率(HbA1c%)を測定する方法であって、
ヘモグロビン濃度は第一工程で光学的に測定され、
ヘモグロビンA1c濃度は第二工程で光学的に測定され、
該第二工程で測定したヘモグロビンA1c濃度を該第一工程で測定したヘモグロビン濃度で除してHbA1c%を算出する際に、450nm~610nmから選択された第1の波長により測定した分母となるヘモグロビン濃度を、690nm~900nmから選択された第2の波長で測定した脂質粒子の濃度情報及びヘモグロビンの濃度情報を用いて補正する、
方法。
【0017】
本発明によるHbA1c%の測定方法は、基本的には、試料中のヘモグロビン濃度を光学的に測定する第一工程と、該試料中のHbA1c濃度を光学的に測定する第二工程と、該試料中のヘモグロビン濃度に対するHbA1c濃度の比率(HbA1c%)を算出する工程を含む。該第一工程において、該試料の光学的測定は、第1の波長の光と第2の波長の光をそれぞれ用いて、吸光度を測定することにより行われる。該第1の波長で測定されたヘモグロビン濃度は、該第2の波長での測定値を用いて補正される。該補正されたヘモグロビン濃度が、該HbA1c%算出工程で用いられる。すなわち、該HbA1c%算出工程では、該第二工程で測定されたHbA1c濃度を、該補正されたヘモグロビン濃度で除することにより、HbA1c%を算出する。本発明のHbA1c%測定方法では、分母となるヘモグロビン濃度に該補正されたヘモグロビン濃度を用いることにより、試料中の乳び等の共存物質に起因する測定誤差を補正して、高精度にHbA1c%が測定される。
【0018】
自動分析装置の多くは、第一工程のヘモグロビン濃度の測定の際、試料中の共存物質(乳び等)の影響を回避するための機構を有していない。一方、本発明の方法を各種の自動分析装置に適用した場合、共存物質の影響を排除したHbA1c%の測定方法を提供することができる。
【0019】
本発明の方法で使用する「試料」又は「検体」としては、全血、全血より分離された赤血球、全血より分離され、さらに洗浄された赤血球等が挙げられる。本発明の方法は、血液中の共存物質(乳び等)の影響を回避できるので、試料として全血を問題なく使用することができる。
【0020】
本明細書において「乳び検体」とは、含まれる脂肪粒子により乳白色を呈している検体(血清など)をいう。食事として摂取される脂肪の大部分は中性脂肪で、血中に吸収された後リポ蛋白リパーゼなどの酵素により分解され、脂肪酸などに代謝される。食後に時間をおかないで採血した場合は、脂肪があまり分解されず血液中に残っており、その脂肪分が白くみえるため、検体が白濁して見える。この白濁は、脂質代謝の異常を伴う個体から採取された検体では、食事の時期によらず顕著である。血液中の中性脂肪には、食事から吸収されて血液中に入ったもの(主にカイロミクロン)と肝臓で合成されたもの(主にVLDL)がある。乳び検体の白濁の原因のほとんどは、食後一過性に増加するカイロミクロンである。
【0021】
本明細書において「脂肪粒子」とは、臨床検査等の分野における通常の意味であればよいが、好ましくは上記の乳び検体に含まれる脂肪分により構成された粒子(例えばカイロミクロン又はVLDL)をいう。あるいは、臨床で患者のエネルギー補給のために輸液に添加される脂肪乳剤(例えば、イントラリピッド、イントラリポス等)に含まれる大豆由来の脂質(レシチン等)も、本明細書における脂肪粒子に含まれ得る。
【0022】
本発明の方法の第二工程におけるHbA1c濃度の光学的測定は、基本的にはこれまで自動分析装置で行われてきた通常の方法に従って実施することができる。第二工程は、いわゆる発色剤を使用して行われるので、使用する発色剤により光学的測定における波長が定まる。第二工程は、ヘモグロビンの共存下で実施されるので、ヘモグロビンの吸収波長との重複が少ない480nmより長波長側で行うことが好ましい。好適な波長を例示すると550nm~750nmの波長を挙げることができる。
【0023】
本明細書において「HbA1c%」とは、臨床において通常使用される、試料中のヘモグロビンA1c濃度とヘモグロビン濃度の比(%)を意味する。HbA1c%としては、NGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値として定められる値、IFCC(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)値として定められる値、JDS(Japanese Diabetes Spciety)値として定められる値等があり、特に断らない場合には、本明細書における「HbA1c%」とは、これらの値の総称を意味する(個々の値の相互関係については、非特許文献1を参照されたい)。本発明の方法におけるHbA1c%の算出は、NGSP、IFCC、JDS等の基準に従って行えばよい。
【0024】
本発明が適用可能な酵素法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。特異性の高い測定方法として好ましい酵素法の例としては、第一反応でHbA1cβ鎖N末端の糖化ジペプチドをプロテアーゼにより消化、切断すると同時に所定の波長によりヘモグロビン濃度を求め、第二反応で前記糖化ジペプチドに特異的な酸化酵素を作用させ、生成した過酸化水素をパーオキシダーゼの存在下に発色剤を発色させ、比色定量する方法が挙げられる。酵素法に基づくHbA1c%の測定用試薬は、体外診断用医薬品として販売されており、これらを使用することができる。また本発明で用いられる酵素法には、既に報告されている酵素法における各種の修飾、改変も適宜に採用することができる。
【0025】
ヘモグロビン濃度の測定にあたり、メト化など公知の方法によりヘモグロビンを一定の構造として吸光度を安定化させる処置を行ってもよい。また、HbA1c濃度の測定にあたり、プロテアーゼによる消化、切断の際に、界面活性剤等を共存させることにより、HbA1cβ鎖より糖化ジペプチドが消化、切断されやすくする処置を行ってもよい。
【0026】
本明細書において「第1の波長」とは、ヘモグロビンを測定するための波長を意味し、好ましくは、本発明の方法の第一工程におけるヘモグロビン濃度の光学的測定に使用する第1の光の波長である。当該第1の波長は、450nm~610nmの範囲より適宜に選択することができる。
【0027】
本明細書において「第2の波長」とは、第1の波長で測定したみかけのヘモグロビン濃度を真のヘモグロビン濃度に補正するための波長を意味し、好ましくは、本発明の方法の第一工程での光学的測定に使用する第2の光の波長である。第2の波長は、690nm~900nmの範囲より適宜に選択することができる。別の観点から、第2の波長は、480nmより長波長であり、100μmol/Lヘモグロビン生理食塩水液の480nmにおける吸光度に対して1/10以下の吸光度を与える波長であり、脂肪粒子濃度と吸光度の間に相関関係がある波長から選択することができる。本発明の方法において、第一工程での該第2の波長による測定は、該第1の波長による測定の後、先、又は並行して行うことができる。
【0028】
本明細書において「第1の波長」、「第2の波長」の語における「波長」とは、ともに主波長のことをいい、バックグランド補正の目的等で測定する、いわゆる「副波長」を意味しない。
【0029】
本明細書において「項目間演算」とは、それぞれ独立して測定されたヘモグロビンA1cの測定値とヘモグロビンの測定値を関連付けることをいい、自動分析装置の演算機能によって演算させることができる。
【0030】
本発明の方法において、上記補正されたヘモグロビン濃度の算出は、該第一工程での第1及び第2の波長により測定値の取得からHbA1c%算出までの間に行えばよい。例えば、該第一工程で第1及び第2の波長による測定値の取得後直ちに行ってもよく、第二工程と並行して行ってもよく、又はHbA1c%算出の直前に行ってもよい。
【0031】
本発明による、上記補正されたヘモグロビン濃度の算出の手順を説明する。該補正の手順は、基本的には乳び検体(脂肪粒子を含む検体)と同様の性状を与える脂肪乳剤又は測定系の性能評価用の妨害物質試薬を含む試料を用いた試験により説明あるいは構築することができる。脂肪乳剤としては、イントラリピッド、イントラリポスが挙げられ、測定系の性能評価用の試薬としては干渉チェックAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
ヘモグロビンを測定するための第1の波長による該試料の測定において、脂質粒子による吸収がヘモグロビンによる吸収に上乗せされ、試料全体の吸光度が上昇する。これにより、第1の波長で測定したヘモグロビン濃度は、真のヘモグロビン濃度に対して高値化(偽高値化)する。
【0033】
第1の波長における吸光度より算出された、脂質粒子を含む試料のヘモグロビン濃度(みかけのヘモグロビン濃度)と脂質粒子を含まない試料のヘモグロビン濃度(真のヘモグロビン濃度)の差より、脂質粒子がヘモグロビンとして測りこまれた偽高値化分ヘモグロビン濃度(偽高値化分ヘモグロビン濃度:Xlipid)が求められる。Xlipidは、脂質粒子に起因する第1の波長によるヘモグロビン濃度測定値の上昇分である。
【0034】
一方、異なる濃度の脂質粒子を含む複数の試料を第2の波長で測定して脂質粒子の濃度に依存した吸光度の変動を調べ、偽高値化分ヘモグロビン濃度(Xlipid)と第2の波長における脂質粒子の吸光度(Ylipid)との関係式(回帰式)[式A]を求める。
[式A]:Xlipid=a1lipid-b1(a1は傾き、b1は切片である)
【0035】
前記[式A]を利用し、以下の[式B]により、みかけのヘモグロビン濃度が真のヘモグロビン濃度に補正される。
[式B]:補正されたヘモグロビン濃度=みかけのヘモグロビン濃度-偽高値化分ヘモグロビン濃度=みかけのヘモグロビン濃度-(a1lipid-b1
【0036】
上記補正されたヘモグロビン濃度を使用し、NGSP%であれば、以下によりHbA1c%を算出できる。
HbA1c%(NGSP%)=HbA1c濃度/補正されたヘモグロビン濃度*91.5+2.15
【0037】
本発明のHbA1c%算出方法の別の態様を説明する。
【0038】
第2の波長は、ヘモグロビンによる吸収がゼロである波長が最適であるが、感度の問題からヘモグロビンの濃度により吸収を実質的にゼロとできない場合がある。そのような場合には、以下により、第2の波長での測定値に与えるヘモグロビン濃度の影響を補正することができる。
【0039】
試料のヘモグロビン濃度(XHb)と第2の波長による該試料の吸光度の変化分(YHb)との関係式(回帰式)[式C]を求める。
[式C]:YHb=a2Hb-b2(a2は傾き、b2は切片である)
この関係式により、試料のヘモグロビン濃度に依存した第2の波長による吸光度の変化分が求められる。
【0040】
前記[式C]を利用し、以下により第2の波長におけるヘモグロビン濃度の影響を排除した脂肪粒子濃度に由来する吸光度(補正された脂肪粒子の吸光度:Ylipid offset)が求められる。
[式D]:補正された脂肪粒子の吸光度Ylipid offset=第2の波長による試料の吸光度-第2の波長におけるヘモグロビン濃度に依存した吸光度の変化分=第2の波長における試料の吸光度-YHb
【0041】
前記補正された脂肪粒子の吸光度Ylipid offsetを用いて、偽高値化分ヘモグロビン濃度Xlipidをさらに補正し、偽高値化分ヘモグロビン濃度2:Xlipid-2を算出する。
[式E]:偽高値化分ヘモグロビン濃度2:Xlipid-2=補正された脂肪粒子の吸光度Ylipid offset *a1=(第2の波長における試料の吸光度-XHb*a2)*a1
ここで[式A]における切片b1は、[式E]中の「-XHb*a2*a1」で表されるヘモグロビン濃度によって変動する数値であることが理解される。
【0042】
上記偽高値化ヘモグロビン濃度2:Xlipid-2を用いて、補正されたヘモグロビン濃度をさらに補正し、補正されたヘモグロビン濃度2を算出する。
[式F]補正されたヘモグロビン濃度2=みかけのヘモグロビン濃度-偽高値化分ヘモグロビン濃度2:Xlipid-2=みかけのヘモグロビン濃度-(第2の波長における試料の吸光度-XHb*a2)*a1
【0043】
上記補正されたヘモグロビン濃度2を使用し、NGSP%であれば、以下によりHbA1c%を算出できる。
HbA1c%(NGSP%)=HbA1c濃度/補正されたヘモグロビン濃度2*91.5+2.15
【0044】
本発明は同一反応槽内でヘモグロビンとHbA1cを連続して測定する方法に好適に使用することができるが、第一工程と第二工程を別々の反応槽内で行ってもよい。例えば、1つの槽では第一工程だけを行ってヘモグロビンを測定し、これとは別の槽では第一工程の試薬を添加するがヘモグロビンは測定をせず、引き続いて第二工程を行ってHbA1cを測定する場合にも利用できることは、当業者であれば当然に理解する。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。
【0046】
[参考例1]
脂肪乳剤のHbA1c%に与える影響を確認した。
【0047】
1.材料
(1)試料:EDTA採血した全血をプールして使用した。以下、プール全血ということがある。
(2)測定試薬とキャリブレータ:
<前処理液>
10mM 亜硝酸ナトリウム
<プロテアーゼ含有基質試薬(R1)>
以下の成分を含む50mM
リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0
1.5% アンヒトール20BS(花王社)
2.0 mg/mL プロチンPC10F(大和化成工業社)
0.01% アジ化ナトリウム(キシダ化学社製)
50μM DA-67(10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム、和光純薬工業社)
<発色試薬(R2)>
以下の成分を含む50mM
リン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0
10U/mL フルクトシルペプチドオキシダーゼ(キッコーマン社)
1U/mL パーオキシダーゼ(東洋紡社)
<キャリブレータ>
ノルディアNHbA1cキャリブレータ(積水メディカル社)を使用した。
(3)脂肪乳剤:イントラリピッド(フレゼニウス カービ社)を使用した。
【0048】
2.操作
(1)試験試料の調製:プール全血に対して表1の終濃度になるようイントラリピッドを添加し、試験試料を調製した。
(2)試験試料の測定:自動分析装置JCA-BM9130(日本電子社)を用い、以下の測定パラメータにより試験試料を測定し、HbA1c%を測定した。
また、各試験試料毎に、ヘモグロビン濃度測定、ヘモグロビンA1c濃度測定における反応タイムコースを確認した。
【0049】
パラメータ:
[HbA1c,Hb]
分析方法:EPA
計算方法:MSTD
測定波長(副/主):HbA1c 805/658、Hb 805/478
主DET.Pl-P.m-P.n:HbA1c 0-95-98、Hb 0-44-47
副DET.P.p-P.r:HbA1c 44-47、Hb 0-0
反応時間:10分
血球測定時:
希釈検体量(全血量):4.0μL
希釈液量(希釈液):110μL
キャリブレータ測定時:
希釈検体量(キャリブレータ):25μL
希釈液量(希釈液):15μL
反応検体量(Sample量):6.4μL
第1試薬量(R1):60μL、第2試薬量:0μL、
第3試薬量(R2):20μL、第4試薬量:0μL
【0050】
3.結果
(1)各測定値の変動
試験試料中のイントラリピッドの濃度に依存したヘモグロビン濃度測定値の増加とHbA1c%の低下が確認された。その一方、HbA1c濃度測定値は、ほぼ一定であった(以上、表1)。以上より、HbA1c%の低下は、HbA1c%算出の際の分母となるヘモグロビン濃度測定値の増加に起因すると考えられた。
【0051】
【表1】
【0052】
(2)反応タイムコースの確認
各試験試料毎のヘモグロビン濃度測定、HbA1c濃度測定における反応タイムコースを図1に示した。全ての試験試料について、ヘモグロビン濃度測定(図1左)及びHbA1c濃度測定(図1右)における、イントラリピッドの濃度に依存した吸光度の増加が確認された。本参考例で使用した自動分析装置JCA-BM9130のような一般的な自動分析装置によるヘモグロビン濃度測定では、検出された吸光度それ自体がヘモグロビン濃度の算出に用いられる。そのため、本試験では、イントラリピッドに由来する吸光度の増加がそのままヘモグロビンの吸光度に上乗せされた結果、表1のようにヘモグロビン濃度測定値が偽高値化したものと推定された。一方、本参考例で使用した自動分析装置によるHbA1c濃度測定では、HbA1c濃度の算出に用いる吸光度として発色試薬添加直前の主波長や副波長での測定値による補正が行われた吸光度を用いるため、発色試薬の発色による吸光度の増加分のみがHbA1c濃度の算出に用いられる。そのため本試験でのHbA1c濃度測定では、ヘモグロビン濃度測定のような偽高値化が観察されなかったものと推定された。
【0053】
[参考例2]
試験試料の吸収スペクトル解析(図2)の結果、ヘモグロビン及び発色試薬の発色時における吸収が少なく、かつイントラリピッドの濃度と相関する吸収波長として約690nm~約900nmの範囲の波長が見出された。この中から884nmを選択し、表1で観察されたようなイントラリピッドに由来するヘモグロビン濃度の偽高値化との相関関係を確認した。
【0054】
1.操作
884nmにおけるイントラリピッドの吸光度を(X)とし、表1のイントラリピッド各濃度の478nmにおけるヘモグロビン濃度測定値と884nmにおけるイントラリピッド無添加試験試料のヘモグロビン濃度測定値の差を偽高値化によるヘモグロビン濃度上昇分(偽高値化分ヘモグロビン濃度:Y)とし、両者の相関係数(R)及び回帰式(Y=aX-b)を求めた。
【0055】
2.結果
相関係数:R=0.9836で、回帰式:Y=1427.6X-4.7512[式A1]が得られ、偽高値化分ヘモグロビン濃度がイントラリピッドに起因することが確認された(図3)。
【0056】
[実施例1]
884nmでの測定により得られた偽高値化分ヘモグロビン濃度の回帰式を利用して、ヘモグロビン濃度の補正を検討した。
【0057】
1.操作
参考例2で得られた回帰式[式A1]より[式B1]を導き、[式B1]により478nmでのヘモグロビン濃度測定値(みかけのヘモグロビン濃度)の補正を行い、補正後のヘモグロビン濃度を用いてHbA1c%を算出した。
[式B1]
補正後のヘモグロビン濃度
=みかけのヘモグロビン濃度-偽高値化分ヘモグロビン濃度
=みかけのヘモグロビン濃度-(884nmでの吸光度*1400-5)
なお、1400は回帰式の傾きを簡略化した数値であり、-5は切片を簡略化した数値である。
2.結果
[式B1]により求めた補正後のヘモグロビン濃度で算出したHbA1c%はイントラリピッド無添加の値と近似し、イントラリピッドの濃度に依存した値の低下も観察されなかった(表2)。
【0058】
【表2】
【0059】
以上より、884nmの吸光度より導かれる[式B1]を用いてヘモグロビン濃度を補正することにより、イントラリピッドによるヘモグロビン濃度の偽高値化を補正できることが確認された。
【0060】
[実施例2]
実施例1により、イントラリピッド添加によるヘモグロビン濃度の偽高値化を補正できることが確認されたが、イントラリピッド添加試料におけるHbA1c%の若干の低値化が認められた。これは、884nmにおけるヘモグロビンの吸収がゼロではないことが影響していると考えられたため、この影響を確認した。
【0061】
1.材料
(1)試料:パネル検体(洗浄血球)(積水メディカル社)3種類(レベル1、3、5)〔HbA1c値:5.0%(レベル1);8.0%(レベル3);11.8%(レベル5)〕
(2)前処理液:参考例1に記載の前処理液を使用した。
【0062】
2.操作
各パネル検体を前処理液で7倍及び80倍に希釈したヘモグロビン濃度調整液を調製し、両液を適宜に混合して、HbA1c%は一定でヘモグロビン濃度の異なる測定試料を各レベルについてそれぞれ11種類調製した。希釈検体量(血球量)を2.0μLとした以外は、参考例1と同様の手順を使用して測定試料のHbA1c%を測定した。ヘモグロビン濃度の補正は、実施例1と同様に[式B1]により行った。
【0063】
3.結果
[式B1]による補正前と補正後でHbA1c%が一致せず、ヘモグロビン濃度に依存して両者の差が拡大した(図4)。
【0064】
以上より、ヘモグロビン濃度に依存した884nmでの吸光度の変動が存在することが確認された。
【0065】
[実施例3]
ヘモグロビン濃度に依存した884nmでの吸光度の変動の補正を検討した。
【0066】
1.操作
実施例2で使用した884nmで測定した各パネル検体のヘモグロビン濃度を(x)、884nmにおける該各パネル検体の吸光度の変化分を(y)とし、両者の相関係数(R)及び回帰式(y=ax-b)を求めた。
2.結果
相関係数:R=0.9844で、回帰式:y=3.82*10-5x-0[式C1]が得られた。884nmにおいてヘモグロビン濃度に依存した吸光度変化が存在することが再度確認された(図5)。
【0067】
[実施例4]
ヘモグロビン濃度に依存した884nmでの吸光度変化分を利用した、478nmにおけるヘモグロビン濃度測定値の補正を検討した。
【0068】
1.操作
実施例3で得られた回帰式[式C1]により、ヘモグロビン濃度に依存した884nmでの吸光度の変化分を求め、これを利用して884nmにおけるイントラリポス(大塚製薬工場社)による正味のヘモグロビン濃度上昇分を求める[式D1]を導き、次いで、[式D1]を利用した計算式([式E1])により、偽高値化分ヘモグロビン濃度の補正値を算出した。これらを踏まえ、最終的に、補正ヘモグロビン濃度を求める[式F1]を導いた。
【0069】
2.結果
[式C1]
ヘモグロビン濃度に依存した884nmでの吸光度の変化分=ヘモグロビン濃度x3.82*10-5
[式D1]
884nmにおけるイントラリポスによる正味の吸光度上昇分=884nmの吸光度-([式C1]で得られる値)
[式E1]
偽高値化分ヘモグロビン濃度の補正値=([式D1]で得られる値)*1400
[式F1]
補正ヘモグロビン濃度
=478nmより算出されるヘモグロビン濃度-([式E1]で得られる値)
=1.055*ヘモグロビン濃度-884nm吸光度*1400
【0070】
[実施例5]
[式F1]の妥当性を確認した。
【0071】
1.材料
(1)試料:プール全血を使用した。
(2)測定試薬とキャリブレータ:参考例1と同様の測定試薬、キャリブレータを使用した。
(3)脂肪乳剤類:イントラリピッド、イントラリポス(大塚製薬工場社)、干渉チェックAプラス乳び(シスメックス)を使用した。
【0072】
2.操作
(1)試験試料の調製:プール全血に対して表3a~3cの終濃度になるよう各脂肪乳剤類を添加し、試験試料を調製した。
(2)試験試料の測定:自動分析装置JCA-BM9130(日本電子社)を用い、以下の測定パラメータにより試験試料を測定し、HbA1c%を測定した。
【0073】
パラメータ:
[HbA1c,Hb]
分析方法:EPA
計算方法:MSTD
測定波長(副/主):HbA1c 805/658、Hb 805/478
主DET.Pl-P.m-P.n:HbA1c 0-95-98、Hb 0-44-47
副DET.P.p-P.r:HbA1c 44-47、Hb 0-0
反応時間:10分
血球測定時:
希釈検体量(血球量):4.0μL
希釈液量(希釈液):110μL
キャリブレータ測定時
希釈検体量(キャリブレータ):25μL
希釈液量(希釈液):15μL
反応検体量(Sample量):6.4μL
第1試薬量(R1):60μL、第2試薬量:0μL、
第3試薬量(R2):20μL、第4試薬量:0μL
【0074】
[884nm]
分析方法:EPA
計算方法:ABS
測定波長(副/主):Hb なし/884nm
FV=1
主DET.Pl-P.m-P.n:Hb 0-44-47
副DET.P.p-P.r:Hb 0-0
反応時間:10分
血球測定時:
希釈検体量(血球量):4.0μL
希釈液量(希釈液):110μL
キャリブレータ測定時
希釈検体量(キャリブレータ):25μL
希釈液量(希釈液):15μL
反応検体量(Sample量):6.4μL
第1試薬量(R1):60μL、第2試薬量:0μL、
第3試薬量(R2):20μL、第4試薬量:0μL
*884nmのキャリブレーションには生理食塩水を使用する。
【0075】
項目間演算
[補正Hb]
桁数:1 定性判定:しない
X:884nm Y:Hb
項目間演算式:1.055*Y-1400*X⇒[式F1]
[NGSP%]
桁数:2 定性判定:しない
X:HbA1c Y=補正Hb
項目間演算式:X/Y*91.5+2.15
【0076】
3.結果
各脂肪乳剤類添加の成績を表3a~3cに示した。[式F1]を用いて補正を行った場合、脂肪乳剤類の種類によらず、HbA1c%の偽高値化を補正できることが確認された。
【0077】
【表3】
【0078】
[実施例6]
[式F1]が884nm波長の代わりに751nm波長を用いた場合、及びNGSP%の代わりにIFCCに基づくHbA1c%測定においても有効であることを確認した。
【0079】
1.材料
(1)試料:プール全血を使用した。
(2)測定試薬とキャリブレータ:参考例1と同様の測定試薬、キャリブレータを使用した。
(3)脂肪乳剤類:イントラリピッドを使用した。
【0080】
2.操作
(1)試験試料の調製:プール全血に対して表4a~4bの終濃度になるよう各脂肪乳剤類を添加し、試験試料を調製した。
(2)試験試料の測定:自動分析装置JCA-BM9130(日本電子社)を用い、実施例5の測定パラメータを一部変更して試験試料を測定し、HbA1c%を測定した。
なお、実施例5から変更したパラメータのみを以下に記載した。
【0081】
実施例5のパラメータ→変更後のパラメータ
[884nm]→[751nm]
測定波長(副/主):Hb なし/884nm→測定波長(副/主):Hb なし/751nm
【0082】
項目間演算1
[補正Hb]
桁数:1 定性判定:しない
X:751nm Y:Hb
項目間演算式:1.053*Y-896*X⇒751nm用[式F1]
[NGSP%]
桁数:2 定性判定:しない
X:HbA1c Y=補正Hb
項目間演算式:X/Y*91.5+2.15
【0083】
項目間演算2
[補正Hb]
桁数:1 定性判定:しない
X:751nm Y:Hb
項目間演算式:1.053*Y-896*X⇒751nm用[式F1]
[IFCC値]
桁数:2 定性判定:しない
X:HbA1c Y=補正Hb
項目間演算式:X/Y*1000+0
【0084】
3.結果
751nm用[式F1]を用いて補正を行ったところ、NGSP%の場合もIFCC値の場合も、イントラリピッドの影響を受けずにHbA1c%を算出することができた(表4a~4b)。
【0085】
【表4】
【0086】
[実施例7]
実検体を用い[式F1]の有効性を確認した。
【0087】
1.材料
(1)試料:EDTA採血した全血350例(TG値が基準範囲内であり、かつ目視で濁りを認めない)を使用した。
(2)測定試薬とキャリブレータ:参考例1と同様の測定試薬、キャリブレータを使用した。
【0088】
2.操作
(1)試料の測定:自動分析装置JCA-BM9130(日本電子社)を用い、実施例5に記載の測定パラメータにより試験試料を測定し、[式F1]を用いて478nmヘモグロビン濃度の補正を行い、HbA1c%を測定した。
【0089】
3.結果
[式F1]による補正前のHbA1c%を(x)、補正後のHbA1c%を(y)として相関性を確認した。結果、相関係数:R=0.9999で、回帰式:y=0.993x+0.0199が得られ、実検体を測定した場合においても、本発明の方法が使用できることが確認された(図6)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6