(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】熱インターフェイス材料
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220222BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H01L23/36 Z
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2018551439
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(86)【国際出願番号】 US2017024456
(87)【国際公開番号】W WO2017172703
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-02-20
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598057523
【氏名又は名称】パーカー・ハニフィン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】バンヤン,マイケル
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-000884(JP,A)
【文献】特表2004-518294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0321895(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101930952(CN,A)
【文献】国際公開第2002/059965(WO,A1)
【文献】特開2007-111943(JP,A)
【文献】特開2003-158393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0096116(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1420558(CN,A)
【文献】特表2007-525341(JP,A)
【文献】特開2003-188323(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021046(WO,A1)
【文献】特開2013-53294(JP,A)
【文献】特開2005-327702(JP,A)
【文献】特開2009-117656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常室温より高い動作温度範囲を有しかつ第1の熱伝達表面を有する発熱電子部品と、散熱部材の第2の熱伝達表面との間に介在するための熱伝導性のインターフェイスであって、
該第1の熱伝達表面は該散熱部材の第2の熱伝達表面に熱的に隣接して配設可能であり、
該インターフェイスはグラファイトシートの形態の熱拡散材料と
熱伝導性の相変化材料のコーティングとを含み、
該熱拡散材料は可撓性の層状グラファイト材料から形成されており、
該層状グラファイト材料はインターカレーション処理したグラファイトフレークから本質的に成り、
該グラファイトシートは第1の主表面および第2の主表面を有し、かつ複数の粗い穿孔を内部に有し、
該複数の粗い穿孔は該グラファイトシートに貫通穴を形成せず、そして
該コーティングは該グラファイトシートの該第1および第2の主表面のうちの少なくとも一方の上にあり、かつ12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有する、
上記のインターフェイス。
【請求項2】
該相変化材料が、ポリマー成分と1種以上の熱伝導性フィラーとの混和物を含む、請求項1に記載のインターフェイス。
【請求項3】
該1種以上の熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、金属、金属酸化物、およびそれらの混合物の中から選択される、請求項2に記載のインターフェイス。
【請求項4】
該ポリマー成分が、1種以上の樹脂、1種以上のワックス、または1種以上の樹脂と1種以上のワックスとのブレンドを含む、請求項2または3に記載のインターフェイス。
【請求項5】
該樹脂またはワックスが、熱可塑性物質、パラフィンワックス、およびそれらのブレンドの中から選択される、請求項4に記載のインターフェイス。
【請求項6】
該散熱部材が、ヒートシンクまたは回路板である、請求項1から5のいずれか一項に記載のインターフェイス。
【請求項7】
第1の熱伝達表面、
該第1の熱伝達表面に対向している第2の熱伝達表面、並びに
該第1の熱伝達表面と該第2の熱伝達表面との間に介在する、熱伝導性の経路をそれらの間に提供するための熱伝導性のインターフェイス、
を含む熱管理アセンブリであって、
該インターフェイスは該第1の熱伝達表面と熱伝達するように接触して配設された第1のインターフェイス表面と、該第2の熱伝達表面と熱伝達するように接触して配設された反対側の第2のインターフェイス表面とを有し、そして
該インターフェイスは、グラファイトシートの形態の熱拡散材料と、
熱伝導性の相変化材料のコーティングとを含み、
該グラファイトシートは、第1の内側表面と、該インターフェイスの該第1のインターフェイス表面を画成している第1の外側表面とを有し、
該熱拡散材料はインターカレーション処理したグラファイトフレークから本質的に成る可撓性の層状グラファイト材料から形成されており、該グラファイトシートは複数の粗い穿孔を内部に有し、
該複数の粗い穿孔は該グラファイトシートに貫通穴を形成せず、および
該コーティングは該グラファイトシートの該第1の内側表面に接合された第2の内側表面を有する熱伝導性の相変化材料のコーティングであって、12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有する、
上記の熱管理アセンブリ。
【請求項8】
該相変化材料が、ポリマー成分と1種以上の熱伝導性フィラーとの混和物を含む、請求項7に記載の熱管理アセンブリ。
【請求項9】
該1種以上の熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、金属、金属酸化物、およびそれらの混合物の中から選択される、請求項8に記載の熱管理アセンブリ。
【請求項10】
該ポリマー成分が、1種以上の樹脂、1種以上のワックス、または1種以上のワックスと、1種以上の樹脂とのブレンドを含む、請求項8または9に記載の熱管理アセンブリ。
【請求項11】
該樹脂またはワックスが、熱可塑性物質、パラフィンワックス、およびそれらのブレンドの中から選択される、請求項10に記載の熱管理アセンブリ。
【請求項12】
常室温より高い動作温度範囲と、散熱部材の第2の熱伝達表面に熱的に隣接してそれらの間にインターフェイスを画成するように配設可能な第1の熱伝達表面とを有する発熱電子部品を伝導冷却する方法であって、
(a)該インターフェイスを実質的に満たすように熱伝導性の可撓性材料を提供するステップ、
ここで該可撓性材料は、第1の主表面と第2の主表面とを有するグラファイトシートの形態の可撓性の層状グラファイト材料と、
熱伝導性の相変化材料のコーティングとを備えており、該層状グラファイト材料はインターカレーション処理したグラファイトフレークから本質的に成り、かつ複数の粗い穿孔を内部に有しており、
該複数の粗い穿孔は該グラファイトシートに貫通穴を形成せず、そして該コーティングは該グラファイトシートの該第1および第2の主表面のうちの少なくとも一方の上の、熱伝導性の相変化材料のコーティングであって、12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有し、そして該相変化材料は、該電子部品の該動作温度範囲内の、第1の相から第2の相への転移温度を有しており、かつ少なくとも1種の熱伝導性フィラーとブレンドされた少なくとも1種の樹脂またはワックス成分を含む、
(b)該可撓性材料を、該熱伝達表面のうちの1つに付けるステップ、
(c)該インターフェイスを画成するように、該
第1および第2の熱伝達表面を熱的に隣接させて配設するステップ、ならびに
(d)該相転移温度より高い温度に該コーティングを加熱するために有効に該電子部品に通電するステップ、
を含む方法。
【請求項13】
該少なくとも1種の熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、金属、金属酸化物、およびそれらの混合物の中から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該樹脂またはワックスが、熱可塑性物質、パラフィンワックス、およびそれらのブレンドの中から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
該散熱部材が、ヒートシンクまたは回路板である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは電子デバイス用の熱管理材料に関する。一般的にそのような材料は、例えば集積回路(IC)チップなどの発熱(熱発生)電子部品と、電子部品を伝導冷却するためのヒートシンクまたはスプレッダなどの散熱部材との合わさった熱伝達表面間の熱伝達インターフェイスとして使用される。より詳細には、本発明は、可撓性で順応性のあるグラファイト材料のシートから形成された熱伝導性インターフェイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイスの回路設計はますます複雑になっている。設計の複雑さは増しているが、より小型の電子部品を製造し、これらの部品のより多くをより一層小さい面積に詰めるための能力が向上するにつれて、デバイスのサイズは小さくなり続けている。
【0003】
電子部品がより小さくなり、集積板およびチップ上により密集して詰められるので、設計者および製造者らは、これらの部品から抵抗によりまたは他の態様で発生する熱をどのように放散するかという課題に直面している。多くの電子部品、特にトランジスタおよびマイクロプロセッサなどの電力半導体部品は、高温下で故障または障害がより発生しやすいことがよく知られている。したがって、頻繁に熱を放散する能力は、部品の性能に対する制限要因である。
【0004】
散熱(熱放散)は、「冷却板」または他のヒートシンクもしくはスプレッダなどの散熱部材に電子部品を直接取り付けることによって、実現されてもよい。放散部材は、専用の熱伝導性のセラミックまたは金属の板もしくはフィン構造部であってもよく、または単純にデバイスの筐体または回路板であってもよい。しかし電子部品と放散部材との間の正常な温度勾配を越えた、顕著な温度勾配は、物体間のインターフェイスにおける熱インターフェイスインピーダンスまたは接触抵抗として展開する。
【0005】
部品およびヒートシンクの熱インターフェイスの表面は、典型的には、全体的なスケールまたは顕微鏡スケールのいずれかにおいて凹凸がある。インターフェイス表面が合わさるとき、それらの間にポケットまたはボイド空間ができ、その中に空気が閉じ込められ得る。これらのポケットによって、インターフェイス内の接触している全体的な表面積が減少し、それにより、熱伝達面積が減少し、インターフェイスを通した熱伝達の全体的な効率が低減する。インターフェイスを通した熱伝達の効率を改善するために、熱インターフェイス材料を使用してヒートシンクと電子部品との間の隙間を埋めて、任意の表面凹凸を埋め、エアポケットを解消することができる。熱インターフェイス材料は、熱伝導性で電気絶縁性の材料のパッドまたは他の層であってもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発熱電子部品および散熱部材の熱インターフェイス間に介在可能な熱伝達材料を対象とする。
本発明の第1の態様では、 常室温より高い動作温度範囲を有しかつ第1の熱伝達表面を有する発熱電子部品と、散熱部材の第2の熱伝達表面との間に介在するための熱伝導性のインターフェイスであって、
該電子部品の第1の熱伝達表面は該散熱部材の第2の熱伝達表面に熱的に隣接して配設可能であり、
該インターフェイスはグラファイトシートの形態の熱拡散材料と熱伝導性の相変化材料のコーティングとを含み、
該熱拡散材料は可撓性の層状グラファイト材料から形成されており、
該層状グラファイト材料はインターカレーション処理したグラファイトフレークのものであり、
該グラファイトシートは第1の主表面および第2の主表面を有し、かつ複数の穿孔を内部に有し、そして
該コーティングは該グラファイトシートの該第1および第2の主表面のうちの少なくとも一方の上にあり、かつ12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有する、
インターフェイス
が提供される。
【0007】
相変化材料は、ポリマー成分と1種以上の熱伝導性フィラーとの混和物を含んでもよい。
1種以上の熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、金属、金属酸化物、およびそれらの混合物の中から選択されてもよい。
【0008】
ポリマー成分は、1種以上の樹脂、1種以上のワックス、または1種以上のワックスと1種以上の樹脂とのブレンドを含んでもよい。樹脂またはワックスは、熱可塑性物質、パラフィンワックス、およびそれらのブレンドの中から選択されてもよい。
【0009】
一実施形態では、散熱部材はヒートシンクまたは回路板である。
本発明の別の態様では、第1の熱伝達表面と、第1の熱伝達表面に対向している第2の熱伝達表面と、第1の熱伝達表面と第2の熱伝達表面との間に介在する、熱伝導性の経路をそれらの間に提供するための熱伝導性のインターフェイスとを含む熱管理アセンブリが提供される。インターフェイスは、第1の熱伝達表面と熱伝達するように接触して配設された第1のインターフェイス表面と、上記第2の熱伝達表面と熱伝達するように接触して配設された反対側の第2のインターフェイス表面とを有する。インターフェイスは、第1の内側表面と、上記インターフェイスの第1のインターフェイス表面を画成している第1の外側表面とを有するグラファイトシートの形態のインターカレーション処理したグラファイトフレークの可撓性の層状グラファイト材料から形成された熱拡散材料であって、グラファイトシートが複数の穿孔を中に有する、熱拡散材料と、グラファイトシートの第1の内側表面に接合された第2の内側表面を有する熱伝導性の相変化材料のコーティングであって、12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有するコーティングとを含む。
【0010】
本発明の別の態様では、常室温より高い動作温度範囲と、散熱部材の第2の熱伝達表面に熱的に隣接してそれらの間にインターフェイスを画成するように配設可能な第1の熱伝達表面とを有する発熱電子部品を伝導冷却する方法であって、
(a)該インターフェイスを実質的に満たすように熱伝導性の可撓性材料を提供するステップ、
ここで該可撓性材料は、第1の主表面と第2の主表面とを有するグラファイトシートの形態の可撓性の層状グラファイト材料と、熱伝導性の相変化材料のコーティングとを備えており、該層状グラファイト材料はインターカレーション処理したグラファイトフレークのものであり、かつ複数の穿孔を内部に有しており、該コーティングは該グラファイトシートの該第1および第2の主表面のうちの少なくとも一方の上の、熱伝導性の相変化材料のコーティングであって、12.7μm(0.5ミル)未満の厚さを有し、そして該相変化材料は、該電子部品の該動作温度範囲内の、第1の相から第2の相への転移温度を有しており、かつ少なくとも1種の熱伝導性フィラーとブレンドされた少なくとも1種の樹脂またはワックス成分を含む、
(b)該可撓性材料を、該熱伝達表面のうちの1つに付けるステップ、
(c)該インターフェイスを画成するように、該熱伝達表面を熱的に隣接させて配設するステップ、ならびに
(d)該相転移温度より高い温度に該コーティングを加熱するために有効に該電子部品に通電するステップ、
を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電気アセンブリの断片的な断面図であって、その発熱電子部品は、部品の熱伝達表面と関連する散熱部材との間の熱インターフェイス内に熱伝導性材料の中間層を設けることによって、本発明により伝導冷却される、図である。
【
図2】本発明による代表的な熱インターフェイスパッドの斜視図である。
【
図3】熱伝導性材料を穿孔するための2つのエンボス加工板の例示的な概略図である。
【
図4】熱伝導性材料の薄いコーティングをパッドが含んでいる、穿孔前の代表的な熱インターフェイスパッドの断面図である。
【
図5】粗い穿孔を中に有する穿孔された熱インターフェイスパッドの例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、例えば電子チップまたは他の発熱部品などの熱源と、電子部品と熱的に隣接してそれらの間で熱を伝導するように配設可能であるヒートシンクまたはスプレッダなどの散熱部材とを含む熱管理アセンブリ用の熱インターフェイスを対象とする。さらに詳細には、本発明は、アセンブリにわたって低い熱インピーダンスをもたらすように、電子部品とヒートシンクもしくはスプレッダとのインターフェイス表面に対して順応性がありながらも、再加工、再位置付け、または他の分解ができるように電子部品からきれいに取り外すことが可能である、シートまたはパッドなどの形態のインターフェイスを対象とする。
【0013】
図を参照すると、対応する参照符号は、図面全体を通して対応する要素を指しており、
図1において全体的に10で示されているのは、関連するプリント回路板(PCB)または他の基板14に支持された発熱デジタルまたはアナログ電子部品12を含む例示的な電気アセンブリである。電気部品12は、集積マイクロチップ、マイクロプロセッサ、トランジスタ、もしくは他の半導体、またはダイオード、リレー、レジスタ、変圧器、増幅器、ダイアック、もしくはコンデンサなどの、抵抗性のもしくは他の熱を発生するサブアセンブリとすることができる。典型的には、部品12は、常室温すなわち21~23℃より高い動作温度範囲を有する。例えば部品12の動作温度は、約60~80℃の範囲にあってもよい。部品12から板14への電気接続に関して、1対のリード線またはピン16aおよび16bが、部品12の両端部から板14のはんだ接続部または他の接続部内に延在するものとして設けられる。さらにリード線16は、17で表される約75ミクロン(3ミル)の隙間をそれらの間に画成するように、板14の上で部品12を支持してもよい。あるいは、部品12は、板14上に直に受けられてもよい。
【0014】
板14に支持されて、電子部品12は第1の熱伝達表面18を提示しており、その第1の熱伝達表面18は、関連した散熱部材20の対応する第2の熱伝達表面22に離間した状態で熱的に隣接して配設可能である。放散部材20は、部品12の熱容量に対して有効な熱容量が、それから伝導されるまたは他の態様で伝達される放散熱エネルギーである熱容量を有する金属材料などから構築される。この説明を目的として、散熱部材20は、全体的に平坦なベース部分24を有するヒートシンクとして示されており、そのベース部分から複数の冷却フィンが延在しており、そのうちの1つに26の参照符号が付されている。示されている通りに構成されたアセンブリ10では、フィン26は、部品12の対流冷却を補助するが、代替的には、部品12から伝達される熱エネルギーをさらに伝導放散するように、図示されていない関連した冷却板などの中に受けられてもよい。
【0015】
電子部品12の第1の熱伝達表面18を、放散部材20の第2の熱伝達表面22に熱的に隣接して配設することによって、それらの間に28によって表される熱インターフェイスが画成される。熱伝達表面18と22の間のインターフェイス28内に熱伝導性中間層30が介在して、部品12から放散部材20へ熱エネルギーを伝達するための伝導経路がその中に提供される。そのような経路は、部品12の冷却を有効にするため、およびその動作温度を特定の制限より低く維持するために、対流空気循環がない状態で使用されてもよく、または対流空気循環と併せて使用されてもよい。
【0016】
散熱部材20は、別個のヒートシンク部材として示されているが、代替的に板14の表面32と電子部品12の対応した表面34との間に中間層30を介在させることによって、板14自体がそのような目的のために使用されてもよい。いずれの配置においても、中間層30と表面18および22との間、または中間層30と32および34との間のインターフェイス面積の接触を向上させるために、クリップ、ばね、またはクランプなど(図示せず)が設けられて、約47.88~95.76Pa(約1~2lbsf)の、36で表されている外部からの力が加えられてもよい。
【0017】
熱伝導性の中間層30は、可撓性の層状グラファイト材料を含んでいる。可撓性の層状グラファイト材料は、インターカレーション処理したグラファイトフレークから形成されたものとして提供されてもよく、インターカレーション処理したグラファイトフレークは、バインダを使用しないでシートを形成するように巻かれてもよく、カレンダ加工されてもよく、成形されてもよく、または他の態様で圧縮されてもよい。そのような材料は、有利なことに、熱安定性、耐化学性、低クリープ緩和、および「z」または「シートを貫通する」方向において相対的に高い熱伝達性を呈する。グラファイトシートの厚さは、約125~500μm(5~20ミル)の範囲にあってもよい。例示的な実施形態では、グラファイトシートの厚さは、約127μm(5ミル)、または約254μm(10ミル)、または約508μm(20ミル)である。
【0018】
本明細書において使用されるとき、層状グラファイト材料を指す「本質的に~から成る」という用語は、層状グラファイト材料がバインダを含んでいないことを意味する。
図2を参照すると、中間層30は、可撓性のグラファイトシートを通って穿孔くず/ボイドを打ち抜かない複数の粗い穿孔38を含んでいる。穿孔は、行および列のアレイに整合されてもよく、エンボス加工のパンチまたはダイの上側板と下側板との間でグラファイトシートを圧縮することによって形成されてもよい。穿孔は、可撓性のグラファイトシートに貫通穴を形成しない。「粗い」とは、穿孔の寸法がミクロンスケールではない、例えば100μm未満ではないことを意味する。むしろ穿孔の直径または幅は、約0.25mm(10ミル)~約1.27mm(50ミル)の範囲にある。
【0019】
図3を参照すると一実施形態では、中間層30は、上側ダイと下側ダイそれぞれ40と42との間にコーティングされた可撓性のグラファイトシートを置くことによって形成され、それぞれのダイは、複数の離間した突出部41および43をそれぞれ有している。突出部は、例えば形状が円錐状、または形状が角柱状であってもよい。一実施形態では、突出部の高さhは、約0.127cm(約0.05インチ)であってもよく、突出部の直径または幅wは、約0.0762cm(約0.03インチ)であってもよい。それぞれのダイ上で、隣接する突出部同士は、最も近くの突出部の基部から測定された約0.2286cm(約0.09インチ)の距離S
2だけ離間していてもよい。それぞれの突出部は、突出部の基部から測定された約0.0762cm(約0.03インチ)の距離S
1だけ、最も近い対向している突出部から離間していてもよい。突出部の寸法は、グラファイトシートの厚さ、および熱伝導性の中間層が使用される特定の用途に応じて異なってもよい。
【0020】
突出部は、グラファイト材料を変位させることによって可撓性のグラファイトシートを変形させ、それによりグラファイトシートの両面に表面の変形を作り出す。これらの変形によって、グラファイトシートの表面積が増大し、それによりx-y平面において熱伝達が容易になる。それに加えて、穿孔によって、グラファイトシートの可撓性が増大する。また、粗い穿孔によって、対向する基板間のシートの厚さおよび順応性が増大し、その結果、接触面積および熱伝達が増大する。使用する際により高い圧力(すなわち、689.48~2068.43kPa(100~300psi))を必要とする典型的なグラファイトのドライフィルムとは対照的に、この粗いテクスチャによって、シートがより低い圧力(すなわち、172.37~344.74kPa(25~50psi))でz軸において順応することができるようになる。
【0021】
図4を参照すると、グラファイトシート44の片面または両面は、グラファイトシートが穿孔される前に、グリース、またはワックス、または相変化材料(PCM)などの熱伝導性材料の薄膜45でコーティングされる。そのような材料は、通常、常室温すなわち約25℃において半液体または固体であるが、電子部品の動作温度範囲内の上昇した温度において液化または軟化して、熱インピーダンスの低い接触をもたらす。薄いPCM膜によって、熱伝達表面18および22において接触抵抗が低減される。一実施形態では、コーティングの厚さは約12.7μm(0.5ミル(0.0005インチ))未満である。
【0022】
「融解温度」は、本明細書においてその最も広い意味で、「融点」、「軟化温度」、および「軟化点」と交換可能なものとして使用され、形状安定な結晶相またはガラス固体相から、流動性の液体、半液体、または他の態様の粘性のあるチキソトロピー相もしくは融解物への転移を示し、これは一般的に分子間の連鎖回転を呈するものとして特徴付けられる。これに関して特定の部品は、典型的には、示差走査熱量測定(DSC)または示差熱分析(DTA)を用いて決定された規定の軟化もしくは融解点を呈することになる。明確に定義された融解ピークを有していない非晶質材料については、融解温度という用語は、その材料が分子間の連鎖回転を呈していると特徴付けられ得るガラス転移点とも交換可能に使用される。
【0023】
熱伝導性のグリースは、油ベースであってもよく、より詳細には、鉱物油もしくは炭化水素油、グリセリド油もしくはシリコーン油などの合成油、またはこれらのうちの1種以上のブレンドをベースとしてもよい。熱伝導性のグリースは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、および窒化アルミニウムなどの熱伝導性の粒子フィラーと混合されてもよい。
【0024】
PCMは、ポリマー成分と1種以上の熱伝導性フィラーとの混和物として組成されてもよい。ポリマー成分は、感圧接着剤(PSA)もしくは熱可塑性ホットメルトなどの樹脂、パラフィンもしくは他のワックス、1種以上の樹脂または1種以上のワックスのブレンド、または1種以上の樹脂と1種以上のワックスとのブレンドであってもよい。ポリマー成分は、アクリル、アクリルアミド、それらのコポリマーブレンド、またはポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、またはそれらのコポリマーもしくはブレンドなどの樹脂であってもよい。ポリマー成分は、「低融解」組成物として特徴付けられ得るα-オレイン熱可塑性物質であってもよい。例えば、α-オレイン熱可塑性物質は、約50℃~約60℃の融解温度を有してもよい。このタイプの代表的な材料は、商標「VYBAR(登録商標)260」として、オクラホマ州タルサ所在のPetrolite Corporationによって市販されているC10以上のアルケンの非晶質ポリマーである。
【0025】
約60~70℃の融解温度を有する長鎖(C16以上の)カルボン酸およびアルコールのパラフィンワックスまたは天然もしくは合成エステルも、薄いコーティングに使用することができる。
【0026】
熱伝導性フィラーのサイズおよび形状は、本発明の目的にとって重要ではない。これに関して、フィラーは、球形、薄片状、小板状、凹凸状、チョップドファイバまたはミルドファイバなどの繊維状、を含む任意の一般的な形状で提供されてもよいが、好ましくは、均一な分散ならびに均質な機械的および熱的特性を保証するために、粉末または他の粒子状である。フィラーの粒子サイズまたは分布は、典型的には、約0.25~250μm(0.01~10ミル)の範囲であるが、コーティング45の厚さに応じてさらに異なってもよい。フィラーは、1~80重量%で荷重を加えられてもよい。適切な熱伝導性フィラーは、窒化ホウ素、二ホウ化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、グラファイト、銀、アルミニウム、および銅などの金属、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、酸化アンチモンなどの金属酸化物、またはそれらの混合物を含む。
【0027】
そのようなPCMの例は、米国特許第6,054,198号、米国特許第6,835,453号、および米国特許第6,946,190号にさらに記述されており、それらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例示的なPCMは、THERMFLOW(商標)T310、T443、T705、T710、T725、およびA725という名称で、Parker-Hannifin社(ハドソン、ニューハンプシャー州)のChomerics TEC Divisionによって市販されている。他の相変化材料は、Bergquist Company(ミネアポリス、ミネソタ州)により「HI-FLOW(商標)」という商品名で、Thermagon社(クリーブランド、オハイオ州)により「T-PCM(商標)」という商品名で、およびOrcus社(スティルウェル、カンザス州)により「THERMAPHASE」という商品名で、市販されている。相変化材料/金属箔ラミネートは、Thermagon社によって「T-MATE(商標)」という商品名で市販されている。
【0028】
PCM材料は、例えば噴射、ナイフコーティング、ローラコーティング、鋳造、ドラムコーティング、ディッピング、ディスペンシング、押出し、スクリーン印刷などの直接的な工程によって、または間接的な転写工程などによって、従来の態様で可撓性グラファイトにコーティングされてもよい。
【0029】
それにより、可撓性、弾性、および圧縮性があるコーティングされ穿孔されたグラファイトシートは、より低い熱接触抵抗の、より高い効率でより速いインターフェイスを通した熱伝達をもたらすように、表面の凹凸に順応することができる。
【0030】
【0031】
試験結果は、油またはワックスの薄膜によってインターフェイスのインターフェイス接触抵抗が大幅に低減することを示している。それに加えて試験結果は、グラファイト膜の表面に粗い穿孔を組み込むことによって、バルク熱特性が増大したことを示した。
【0032】
図5は、可撓性で順応性があり、熱インターフェイス材料として使用するのに適した穿孔されたグラファイトシートの写真である。
有利なことに、本発明の熱インターフェイスは、熱管理アセンブリ内の例えば電子部品と、ヒートシンク、スプレッダ、または他の放散部材との間でより低い接触抵抗およびより効率的な熱伝達をもたらすように順応性があるが、その熱インターフェイスは、再加工、再位置付け、または他の分解ができるように電子部品の表面からきれいに取り外すことも可能である。さらに他の利点は、熱インターフェイス材料が、電子部品からきれいに破断される温度に依存しない性能を有していることを含む。これらおよび他の利点は、本明細書に含まれる開示に基づいて、当業者には容易に明らかになろう。
【0033】
本発明は、特定の実施形態に関して示され記述されたが、本明細書および添付図面を読み理解すると、等価の代替形態および修正形態を他の当業者が思い付くことは明らかである。特に、上述された要素(部品、アセンブリ、デバイス、組成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を記述するために使用される用語(「手段」の言及を含む)は、別段の記載がない限り、本明細書に示されている本発明の例示的な実施形態の機能を実行する開示された構造とは構造上等価でなくても、記述された要素の特定の機能を実行する(すなわち機能上等価である)任意の要素に対応することが意図される。それに加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの示された実施形態のうちの1つまたは複数だけに関して上述されたが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途に望まれ得るとき、またはその用途にとって有利なときに、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされてもよい。