(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】変圧器および誘導子用巻線を形成する組み重ね式平形巻線コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20220222BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220222BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20220222BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220222BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
H01F30/10 C
H01F17/04 A
H01F27/29 N
H01F27/28 K
H01F27/28 152
H01F27/29 W
H01F27/30
(21)【出願番号】P 2018558243
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(86)【国際出願番号】 US2017030507
(87)【国際公開番号】W WO2017192489
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510060327
【氏名又は名称】ヴィシェイ デール エレクトロニクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー,マシュー ジェイ.
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-054197(JP,A)
【文献】実開平04-044118(JP,U)
【文献】特開2010-245169(JP,A)
【文献】特表2016-510508(JP,A)
【文献】特開2015-192082(JP,A)
【文献】特開2015-188033(JP,A)
【文献】特開2004-95999(JP,A)
【文献】特開平8-264338(JP,A)
【文献】特開2011-91136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 27/28
H01F 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平形線材を含み且つ第1直径を画定する開口を有した第1巻き線と、平形線材を含み且つ第2直径を画定する開口を有した第2巻き線と、
前記第2巻き線が前記第1巻き線の開口内に嵌め込んで組み重ねる大きさであり、そして、最下面および最上面を平坦面にして且つ前記第1巻き線および前記第2巻き線で構成した第1巻線セットと、
平形線材を含み且つ第3直径を画定する開口を有した第3巻き線と、平形線材を含み且つ第4直径を画定する開口を有した第4巻き線と、
前記第4巻き線が前記第3巻き線の開口内に嵌め込んで組み重ねる大きさであり、そして、最下面および最上面を平坦面にして且つ前記第3巻き線および前記第4巻き線で構成した第2巻線セットと、
を備え、
前記第1巻線セットは前記第2巻線セットの上側に隣接配置、かつ前記第1巻線セットに設けた前記最下面の平坦面が前記第2巻線セットに設けた前記最上面の平坦面に対面して隣接
しており、
前記第1巻線セットおよび前記第2巻線セットは主軸の周りに巻き回してあり、
前記主軸に概ね並列して配置してある接続ピンが少なくとも一つあり、
前記第1~4巻き線の少なくとも一つの巻き線に第1および第2端子端部が対向して形成されており、この巻き線には前記主軸に概ね直交する方向に成す平面が主要面として形成されており、
さらに、前記主軸に概ね並列する面が前記第1端子端部を構成する平面として成形されており、そして、前記並列する面が主に前記接続ピンの周りに巻き付けているように曲げられている前記第1端子端部であることを特徴とする電磁装置。
【請求項2】
前記第1巻線セットの厚さが、前記第2巻線セットの厚さと異なる請求項1に記載の電磁装置。
【請求項3】
複数の前記巻き線の内の少なくとも一つの巻き線がパンケーキ形線材コイル構成であり、且つ、前記少なくとも一つの巻き線以外の巻き線の内、少なくとも一つの巻き線がパンケーキ形線材コイル構成と異なる請求項1に記載の電磁装置。
【請求項4】
前記の巻き線のうちの少なくとも一つがマルチファイラ線材を有する請求項1に記載の電磁装置。
【請求項5】
前記第1直径と前記第3直径とは実質的に等しい請求項1に記載の電磁装置。
【請求項6】
前記第2直径と前記第4直径とは実質的に等しい請求項5に記載の電磁装置。
【請求項7】
前記第1巻線セットおよび前記第2巻線セットの位置が同軸整合している請求項1に記載の電磁装置。
【請求項8】
前記の巻き線のうちの少なくとも二つが同じ型の線材で形成された請求項1に記載の電磁装置。
【請求項9】
前記の巻き線の中で、少なくとも一つの巻き線は、その他の巻き線の少なくとも一つの線材と異なる型で形成された請求項1に記載の電磁装置。
【請求項10】
さらに、
平形線材を含み且つ第5直径を画定する開口を有した第5巻き線と、
平形線材を含み且つ第6直径を画定する開口を有した第6巻き線と、
前記第6巻き線が前記第5巻き線の開口内に嵌め込んで組み重ねる大きさであり、そして、最下面および最上面を平坦面にして且つ前記第5巻き線および前記第6巻き線で構成した第3巻線セットと、
を備え、
前記第3巻線セットは前記第1巻線セットの上側に隣接配置、および前記第3巻線セットに設けた前記最下面の平坦面が前記第1巻線セットに設けた前記最上面の平坦面に対面して隣接する構成の請求項1に記載の電磁装置。
【請求項11】
さらに外周巻線を有し、この外周巻線は外周巻線直径を画定する開口部を有しており、この外周巻線の前記開口部は、前記第1巻き線または前記第3巻き線の一つを取り囲こみ且つ受け入れるための嵌め込み組み重ねる構成である請求項1に記載の電磁装置。
【請求項12】
嵌め込んで組み重ねる平面コイル巻線を組み込んだ変圧器の製造方法において、
平形線材を含み且つ第1直径を画定する開口を有する第1巻き線を形成し、
平形線材を含み且つ第2直径を画定する開口を有する第2巻き線であって、前記第1巻き線の開口内に嵌め込んで組み重ねる大きさで前記第2巻き線を形成し、
最下面および最上面を平坦面にした厚さを有する第1巻線セットを形成するために、前記第1巻き線の開口内に前記第2巻き線を位置付け、
平形線材を含み且つ第3直径を画定する開口を有する第3巻き線を形成し、
平形線材を含み且つ第4直径を画定する開口を有する第4巻き線であって、前記第3巻き線の開口内に嵌め込み組み重ねる大きさで前記第4巻き線を形成し、
最下面および最上面を平坦面にした厚さを有する第2巻線セットを形成するために、前記第3巻き線の開口内に前記第4巻き線を位置付け、そして
前記第1巻線セットを前記第2巻線セットの上側に隣接配置させて、かつ第1巻線セットに設けた前記最下面の平坦面を、前記第2巻線セットに設けた前記最上面の平坦面に対面して隣接配置
し、
前記第1巻線セットおよび前記第2巻線セットを主軸の周りに巻き回し、
前記主軸に概ね並列して配置する接続ピンを少なくとも一つ提供し、
前記第1~4巻き線の少なくとも一つの巻き線に第1および第2端子端部を対向して形成して、この巻き線には前記主軸に概ね直交する方向に成す平面を主要面として形成し、
さらに、前記主軸に概ね並列する面を前記第1端子端部の構成する平面として成形し、
そこで、前記並列する面を主に前記接続ピンの周りに巻き付けているように曲げられる前記第1端子端部になることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記第1巻き線の開口内に前記第2巻き線を配置するさいに、前記第1巻き線あるいは前記第2巻き線のうちの一方を前記第1巻き線あるいは前記第2巻き線のうちの他方に対して所定の角度で傾ける請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第3巻き線の開口内に前記第4巻き線を配置するさいに、前記第3巻き線あるいは前記第4巻き線のうちの一方を前記第3巻き線あるいは前記第4巻き線のうちの他方に対して所定の角度で傾ける請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記の巻き線を異なる大きさのマンドレルに巻きつける請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
複数の前記巻き線の内の少なくとも一つの巻き線がパンケーキ形線材コイル構成であり、且つ、前記少なくとも一つの巻き線以外の巻き線の内、少なくとも一つの巻き線がパンケーキ形線材コイル構成と異なる請求項12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1巻線セットおよび前記第2巻線セットの位置が同軸整合している請求項12に記載の製造方法。
【請求項18】
さらに、
平形線材を含み且つ第5直径を画定する開口を有する第5巻き線を形成し、
平形線材を含み且つ第6直径を画定する開口を有する第6巻き線を形成し、
前記第6巻き線は前記第5巻き線の開口内に嵌め込んで組み重ねる大きさであり、そして、前記第5巻き線および前記第6巻き線は共に最下面および最上面を平坦面にした第3巻線セットを構成し、
前記第3巻線セットは前記第1巻線セットの上側に隣接配置させて、かつ前記第3巻線セットに設けた前記最下面の平坦面を、前記第1巻線セットに設けた前記最上面の平坦面に対面し且つ隣接させて位置付ける請求項12に記載の製造方法。
【請求項19】
前記第1巻線セットの厚さが、前記第2巻線セットの厚さと異なる請求項12に記載の製造方法。
【請求項20】
さらに外周巻線を有し、この外周巻線は平形線材を含み且つ外周巻線直径を画定する開口部を有しており、この外周巻線の前記開口部は、前記第1巻き線または前記第3巻き線の一つを取り囲こみ且つ受け入れるために、嵌め込み組み重ねる構成を形成する請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2016年5月6日に出願された米国特許出願第15/148,736号の優先権を主張する出願である。この米国特許出願明細書全体をここに援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は電子素子の分野に関し、より具体的には変圧器や誘導子等の磁気素子の巻線(巻き線)を形成対象とする組み重ね(入れ子)式平形巻線(巻き線)コイル(nested flat wound coils)に関する。
【背景技術】
【0003】
変圧器は一般的にいって、電磁誘導を介して2つかそれ以上の回路間において電気エネルギーを伝達する電気素子である。この電磁誘導によって時変磁場に露出される導体間に起電力(electromotive force、EMF)が発生する。変圧器の一次巻き線に流れる電流が変化すると、変圧器コアの磁束が変化し、かつ変圧器の二次巻き線に加わる磁場が変化する。二次巻き線の磁場が変化すると、電磁誘導により二次巻き線のEMF即ち電圧が変化する。また変圧器の場合、ファラデーの法則および高い透磁率のコア特性を利用して、例えば送電網内などにおいて見られるようなAC電圧がある電圧レベルから別な電圧レベルに効率的に変化する。
【0004】
変圧器などの現在利用可能な平面装置は巻き線の代わりに印刷回路板を利用している。印刷回路板をベースとする装置のフィルファクター(fill factor)はおよそ35%である。これら周知の装置は同じパッケージ内の巻き線の厚み変動が最小限に抑えられているため、高いコストなしでは設計の自由度を変更できない。
【0005】
以上説明したように、高い導体フィルファクターを有し、同じパッケージ内に厚さが可変で個数も可変の線材を使用でき、外側に向かい近接効果が増す巻線を有し、高さが低くより出力の高い変圧器を製造できることが求められている。
【0006】
さらに、パッケージのサイズを抑えた状態で、コイルの個数、タイプや位置調整などが可変構成の装置も求められている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書は、組み重ね式または入れ子式の平巻きコイルを有する変圧器装置または誘導子装置、およびこれら装置の製造方法を開示するものである。
【0008】
本発明は、第1巻き線セットの組み重ね巻き線、およびこの第1巻き線セットに隣接配置して第2巻き線セットの組み重ね巻き線を有する電磁装置を提供するものである。また本発明は、第1巻き線セットの組み重ね巻き線、およびこの第1巻き線セットに隣接配置して第2巻き線セットの組み重ね巻き線を有する電磁装置の製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明によれば、平巻きまたはエッジ巻き磁石線材(flat or edge wound magnet wire)を使用し、薄型磁気装置(low profile magnetics)用の巻き線を形成できる。本発明の巻き線構造および構成によれば、内側コイル巻き線および外側コイル巻き線を異なるマンドレルに巻きつけることができ、一つまたは複数のコイルを組み重ね式/積み重ね式(nested and stacked arrangement)構成で位置調整できる。このため高いターン数の巻き線を形成できる。本発明装置の場合、複数列の巻き線を積み重ねることができる。
【0010】
本発明の一態様の第1巻き線は平形線材(flat wire)を有し、この第1巻き線は第1直径を与える(規定する)開口を有する。第2巻き線は平形線材を有し、この第2巻き線は第2直径を与える開口を有する。第2巻き線については、第1巻き線の開口内に組み重なるサイズを有する。第1巻き線と第2巻き線とが、最も低い平坦面および最も高い平坦面を有する第1巻き線セットを形成する。第3巻き線は平形線材を有し、この第3巻き線は第3直径を与える開口を有する。第4巻き線は平形線材を有し、この第4巻き線は第4直径を与える開口を有する。第4巻き線は、第3巻き線の開口内に積み重なるサイズを有する。第3巻き線および第4巻き線が、最も低い平坦面および最も高い平坦面を有する第2巻き線セットを形成する。一つの実施態様では、第1巻き線セットを第2巻き線セットの上方でこれに隣接して配置し、そして第1巻き線セットの最も低い面が第2巻き線セットの最も高い面に隣接し、これに向き合う。
【0011】
組み重ね式平巻きコイルを有する変圧器の本発明による製造方法では、所望の内径および外径をもつマンドレルに変圧器に使用する複数の巻き線を巻き付け、複数の巻き線のうちの外側巻き線内に複数の巻き線のうちの内側巻き線を配置し、内側巻き線の外径によって外側巻き線の内径を補完することによって組み重ね対の複数の巻き線を組み立て、この組み重ね対の巻き線を支持フレームに組み付け、そして組み重ね対の巻き線内の2つの巻き線それぞれの上部コイル端子端部および底部コイル端子端部を個々に複数の接続点のうちの一つに組み付け、所望の電気接続セットを形成する。この製造方法では、さらに組み付けた組み重ね対の複数の巻き線の周囲に底部コアおよび上部コアを組み付ける。
【0012】
本発明の製造方法では、さらに複数の巻き線の第2外側巻き線内に複数の巻き線の第2内側巻き線を配置し、第2内側巻き線の外径によって第2外側巻き線の内径によって補完した第2の組み重ね対の複数の巻き線を組み立て、第2の組み重ね対の巻き線を支持フレームに組み付け、そして第2の組み重ね対の巻き線内の2つの巻き線それぞれの上部コイル端子端部および底部コイル端子端部を個々に複数の接続点のうちの一つに組み付け、組重ね巻き線の第2セットを形成し、所望の電気接続セットを形成する。
【0013】
第2内側巻き線の外径は内側巻き線の外径とは異なっていてもよく、内側巻き線の内径および第2内側巻き線の内径は実質的に同じでもよい。外側巻き線の外径および第2外側巻き線の外径は実質的に同じであってもよい。
【0014】
内側巻き線および第2内側巻き線は同じマンドレルに巻き付けてもよく、また外側巻き線および第2外側巻き線は同じマンドレルに巻き付けてもよい。複数の巻き線は異なるサイズのマンドレルに巻き付けてもよい。
【0015】
本発明の一つの態様では、平形または平面コイル巻き線を使用して磁気装置用の内側巻き線および外側巻き線を形成する。これら磁気装置の場合、エッジに巻き付けられるか、および/または各種螺旋形状で巻き付けられた磁石線材を使用して、複数ターン数の巻き線を形成する。
【0016】
本発明は、内側巻き線および外側巻き線を形成する組み重ね平巻きコイルを有する磁気装置を提供するものである。また、中心支柱および複数のピンを有する支持フレームを提供するものであり、複数の組み重ね巻き線がこの中心支柱を取り囲む。これらピンに複数の組み重ね巻き線の端子端部を接続することができる。
【0017】
本発明の巻き線の場合、同じか異なる線材厚さ、線材幅、ターン数をもつ線材から形成してもよく、あるいはそうでなくてもよい。類似するか異なる特性をもつ同じか異なる線材タイプから各種の巻き線を形成することができる。
【0018】
本発明の組み重ね平巻きコイルは変圧器や誘導子などの装置に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下添付図面を参照して本発明を詳細に例示する。
【
図1】本発明に従って構成した変圧器の一実施態様を示す図であり、内部を図示するために上部コアを取り外した状態にあり、またピンを有するフレームに設けた状態にある。
【
図2】上部コアを有する
図1の変圧器を示す展開図である。
【
図4】本発明の変圧器製造方法の一実施態様を示すフローチャートである。
【
図5】端子端部を90度捩じり、支持フレームのピン周囲に巻き付けた巻き線を示す本発明の変圧器の上面図である。
【
図6】3セットの組み重ね式巻き線を有する変圧器を示す側面図である。
【
図8】ピンの電気的接続時に中心支柱に同時整合した2セットの組み重ね式コイルを示す図である。
【
図9】組み重ね構成時の異なる点における2つのコイルを示す図である。
【
図10】組み重ね構成時の異なる点における2つのコイルを示す図である。
【
図11】組み重ね構成時の異なる点における2つのコイルを示す図である。
【
図12】組み重ね構成時の異なる点における2つのコイルを示す図である。
【
図13】組み重ね構成時の異なる点における2つのコイルを示す図である。
【
図14】複数の線材を使用して形成した本発明の組み重ね式巻き線構成に使用するコイルを示す図である。
【
図15】巻き線端子のピンへの接続を示す図である。
【
図16】絶縁材を使用して一つの巻き線セットの組み重ね式コイルをもう一つの巻き線セットの組み重ね式コイルに重ね、各巻き線セットを分離した状態を示す横断面図である。
【
図17A】パンケーキ形線材コイル構成(pancake type wire coil arrangement)を巻き線に組み込んだ変圧器を示す図である。
【
図17B】パンケーキ形線材コイル構成を巻き線に組み込んだ変圧器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
当業者ならば、以下の説明によって本発明実施態様を実施しかつ利用できるはずであり、また当業者にとってはこれら実施態様の一部修正、変更、等価体、併用および代替は自明なはずである。従って、これらすべての一部修正、変更、等価体、併用および代替はいずれも、特許請求の範囲に記載した範囲内に包摂されるものである。
【0021】
以下の説明で使用する用語は便宜的なもので、限定を意図するものではない。用語“右”、“左”、“上”や“下”は参照すべき添付図面における方向を示すものである。特許請求の範囲および明細書の対応する部分における単数表現は、特に断らない限り、一つかそれ以上の参照部分を含むものである。本明細書では、これらの用語は同義語などを包摂するものである。2つかそれ以上の“A、BまたはC”などの個々の単位の前の“少なくとも一つの”はA、BまたはCそれぞれが単独の場合を示すこともあり、あるいはこれらの任意の組み合わせを意味することもある。
【0022】
図1~
図3は、本発明に従って構成した実施態様の組み重ね式平巻きコイルを使用した変圧器100を示す図である。本明細書では、用語“コイル”および“巻き線”は相互交換可能である。変圧器100は底部コア10および上部コア80(
図2)を有し、底部コア10については第1底部コア部分10a、第2底部コア部分10bおよび底部コア10の表面から上方に延在する底部コア突出部分15(
図1および
図3には図示せず)から構成することができる。さらに、変圧器100は中心支柱20を有する支持フレーム90、および複数の接続ピン30を有する(
図2および
図3)。なお、支持フレームおよび/またはその各部は適宜使用するもので、いくつかの実施態様および/または一部用途ではフレームを設ける必要はない。
図1~
図3の示す本発明の一実施態様では、組み重ね式平巻きコイルは第1内側巻き線40、第1外側巻き線50、第2内側巻き線60、および第2外側巻き線70を有する。
【0023】
即ち、第1上部(top or upper)セットの巻き線は第1内側巻き線40および第1外側巻き線50を有し、第2底部(bottom or lower)セットの巻き線は第2内側巻き線60および第2外側巻き線70を有する。このように、本発明は複数列または複数重ねの巻き線セットを提供できる。
【0024】
第1底部コア部分10aおよび上部コア部分80にそって存在する第2底部コア部分10bにフェライト製や粉体製の変圧器100の内部部分を容れ、変圧器100内の起電力を封じ込めることができ、制御することができ、および/または遮蔽することができる。底部コア10は単体の一体部品として形成してもよく、あるいは複数の部品を接合して形成してもよい。即ち、第1底部コア部分10aおよび第2底部コア部分10bは同じ材料片から構成してもよく、あるいは別な材料片から構成してもよい。一体形底部コア10の場合、底部コア10はフェライト材料の単体鋳造片として形成することができる。
【0025】
底部コア10は直径を有する底部コア突出部分15を有し、この突出部分については底部コア10の中心部から上方に延在する円筒形突出部分として形成するのが好ましい。湾曲チャネル即ち湾曲半径部分11は底部コア突出部分15、第1底部コア部分10aおよび第2底部コア部分10bの間において底部コア突出部分15の両側に形成する。湾曲チャネル11は全体として半円形状に、あるいは平形形状に構成すればよい。底部コア突出部分15は底部コア10と同じ材料で構成すればよく、また底部コア10に取り付けられる変圧器100の一要素として形成してもよく、あるいは底部コア10の一体部分として形成してもよい。
【0026】
本発明の一実施態様では、支持フレーム90は複数の接続ピン30および支持フレーム90の開口を介して延在する中心支柱20を有する。中心支柱20は支持フレーム90の中間点に位置し、支持フレーム90の上下に開放端部が位置する。中心支柱20については、全体として柱状や管状として形成し、またスプールまたはスピンドルとして形成するのが好ましい。中心支柱20は完全にあるいは部分的に中空であればよい。中心支柱20は例えば射出成形プラスチックなどの絶縁材料から形成することができる。中心支柱20については、内周面21側の内径および外周面22側の外径をもつ管状壁として形成すればよい。中心支柱20は支持フレーム90の一部として、あるいは支持フレーム90に接続するかその他の手段で接合してもよい。
【0027】
図1~
図3に示すように、支持フレーム90および中心支柱20については底部コア10に着座および/または嵌合するように構成する。中心支柱20に開口を形成し、その直径を底部コア突出部分15の直径よりも大きく設定する。従って、中心支柱20は底部コア突出部分を同軸的に包囲することになる。支持フレーム90は底部コア突出部分15、第1底部コア部分10aおよび第2底部コア部分10bの間に形成される湾曲チャネル11内に嵌合する中心湾曲部分を有する。従って、湾曲チャネル11は支持フレーム90の中心湾曲部分に対して補完的な形状になり、支持フレーム90の中心湾曲部分を受け取ることができる。コアの場合と同様に、湾曲チャネル11は全体として半円形か平坦な形状にすることができる。
【0028】
ピン30が支持フレーム90の対向外壁を介して延在し、上部外壁が全体として矩形になる。支持フレーム90の両側に6つのピン30を図示する。
【0029】
本発明の実施態様では、複数の積み重ねた巻き線セットの組み重ね式巻き線を列状に配列するか積み重ねるが、これらは中心支柱20の周囲に配列してもよい。図示のように、平形、平面形やエッジを巻いた形の磁気線材を使用して本発明の巻き線を形成するのが好ましい。全体として矩形の横断面を有する線材を図示してあるが、正方形、矩形、楕円形や円形の各種の横断面を持つ線材構成も具体的な用途に応じて必要なら使用可能である。
【0030】
コイルそれぞれは全体として螺旋状に巻いた平形線材である。
図1~
図3に示す本発明の一実施態様では、第1の上部セット(群あるいは列)の巻き線は第1内側巻き線40および第1外側巻き線50を有する。第1巻き線40は平坦コイルとして設けてもよく、可能な場合には、中心支柱20を取り囲む位置に設けてもよい。第1外側巻き線50の中心開口が第1内側巻き線40を同軸的に受け取り、これを包囲するため、第1外側巻き線50の中心開口内に第1内側巻き線40を嵌めこむことができる。(即ちネストできる)。
【0031】
第2の下部セット(群あるいは列)の組み重ね式巻き線は第2内側巻き線60および第2外側巻き線70を有する。第2内側巻き線60は平坦コイルとして設けてもよく、可能な場合には、中心支柱20に隣接してこれを取り囲む位置に設けてもよい。第2外側巻き線70の中心開口が第2内側巻き線60を同軸的に受け取り、これを包囲するため、第2外側巻き線70の中心開口内に第1内側巻き線60を嵌めこむことができる。
【0032】
巻き線それぞれについては、以下に詳しく説明するように各巻き線の端子端部において複数の接続ピン30に接続することができる。
【0033】
なお、第1内側巻き線40、第1外側巻き線50、第2内側巻き線60、および/または第2外側巻き線70のうちの任意の一つに流れる電流が変化すると、変圧器100の他の巻き線即ち第1内側巻き線40、第1外側巻き線50、第2内側巻き線60、および第2外側巻き線70のいずれかに衝突する磁場が変化し、電磁誘導によりその他の巻き線即ち第1内側コイルと呼ぶこともできる第1内側巻き線40、第1外側コイルと呼ぶこともできる第1外側巻き線50、第2内側コイルと呼ぶこともできる第2内側巻き線60、および/または第1外側コイルと呼ぶこともできる第2外側巻き線70におけるEMFまたは電圧が変化する。
【0034】
図示のように、第1内側巻き線40が第1外側巻き線50に嵌めこまれ、そして第2内側巻き線60が第2外側巻き線70に嵌めこまれる。このようにして巻き線が、積み重ねられた巻き線内に列または群として巻き線セットを形成する。これら巻き線セットは列として積み重ねられる。即ち縦に配列され、複数の嵌めこまれた巻き線セットを有する巻き線縦列を形成する。嵌め込まれた巻き線セットは中心支柱20の周囲に位置調整することができる。相互に積み重ねると、第1巻き線セットおよび第2巻き線セットの平坦な対向面が隣接位置にある巻き線にそれぞれ接触する。即ち、下部巻き線セットの線材の最上面が直ぐ上の巻き線セットの線材の最下面に対向隣接し、これと直接接触することになる。
【0035】
第1内側巻き線40および第2内側巻き線60については、縦列構成(co-columnar configuration)の垂直軸と同軸的に、あるいはこの垂直軸にそって位置整合するのが好ましく、また第1外側巻き線50および第2外側巻き線70についても位置整合すればよい。巻き線の各種サイズに応じて、かつ具体的な素子の使用用途の目的に応じて他の方向に構成することも可能である。
【0036】
好適な実施態様では、内側巻き線と外側巻き線それぞれとの緊密な嵌合、密接嵌合、あるいは滑り嵌合を組み重ね方式で実施する。即ち、内側巻き線と外側巻き線との間の空間が小さく、この空間については基本的に0.0005インチ~0.100インチであるのが好ましい。外側巻き線内に組み重ねた内側巻き線について説明してきたが、任意の個数の巻き線を組み重ねることができる。
【0037】
例えば、最も内側の巻き線について考えると、所定の外側巻き線をさらに設けて、最近接の内側巻き線を直接取り囲み、各外側巻き線の中心開口直径については、周囲に所定の外側巻き線が存在する巻き線のうちの一つを受け取りかつ取り囲むサイズに設定する。さらに別な実施例において、一つの巻き線セットに3つの巻き線を組み重ねる場合には、最も内側の巻き線を設け、この最も内側の巻き線を中間巻き線で取り囲み、最も外側の巻き線で最も内側の巻き線および中間巻き線を取り囲む。中心支柱20を設ける場合には、すべての巻き線の開口のサイズは、中心支柱20を取り囲むサイズに設定する。即ち、本発明では、複数の同心巻き線または同軸巻き線を配置することができる。さらに、複数の積み重ね巻き線、複数レベルの巻き線や複数列の巻き線を使用することができる。
【0038】
本発明の巻き線は、設計要件および/または動作特性を満足するように形成または変化させることができる。本発明の巻き線構成によれば、内側巻き線および外側巻き線を異なるマンドレルに巻き付けることができ、また一つか複数の巻き線をそれぞれの内外のいずれかに組み重ねることができる。組み重ね式平形巻き線は薄型である。薄型を可能にする特性をもつ巻き線については他のタイプの線材を使用することも可能である。
【0039】
本発明の巻き線は、エッジに巻かれ、および/または各種形状で螺旋巻きにし、複数ターン巻き線を形成した磁石線材で構成することができる。巻き線を組み重ねると、以下に説明するように、コイルの内側寸法が、材料の一体性や被覆の一体性を犠牲にせずに巻き線材料の延伸性および圧縮性よりもきつい場合に、ターン数の大きい巻き線が実現可能になるとともに、マルチファイラ巻き線(multifilar windings)が実現可能になる。巻き線のターン数を高くするためには、組み重ね構成を使用すればよく、ターン数が高くなると、標準的なオフラインスイッチモード変圧器の50kHz範囲と同じ位低いkHzで動作する高電源変圧器を実現できる。付加的な外部接続点を使用する必要なく、より厚い磁石線材を連続導体として巻くことができるため、労力および巻き線抵抗を小さくでき、かつ巻き線を形成するために必要な物理的空間を小さくできる。巻き線のターン近接度が高くなるほど、変圧器100内の結合係数が高くなる。漏れをさらに減らすために、また漏れインダクタンスを最小に抑えた設計を実現するためには、
図14に示すように、巻き線をマルチファイラ線材(マンドレル周囲に巻いた複数の線材などの、コイルを形成するために使用した一つ以上の線材を有するコイル(ファイラ))から形成すればよい。このマルチファイラ線材構成によると、隣接ターンの相殺効果によって高漏洩磁界磁束キャンセルを改善できる。また、平巻きコイルの場合、コイルパッキングをよりタイトにでき、単位面積当たりの銅密度をより高くでき、従って電流能力をより高くでき、かつ抵抗損失をより抑えることができる。
【0040】
本発明の巻き線の場合、各種の形態を取ることができ、またタイプが類似するか異なる線材を使用して形成することができる。従って、同様な特性(例えば材質、形状、幅、高さ、横断面形状、性能特性など)を備えた一定のタイプの線材から巻き線を形成することができる。例えば、巻き線セットの内側巻き線および外側巻き線を同じようなタイプの線材から形成してもよく、あるいは異なる特性を備えた一定のタイプの線材から形成してもよい。例えば、巻き線セットの内側巻き線および外側巻き線を異なるタイプの線材から形成してもよい。異なる巻き線セットの場合には、類似するか異なる線材タイプから形成することも可能である。なお、本発明の範囲内で各種の線材タイプを併用することができる。
【0041】
各種のターン数をもつ巻き線を単体の積み重ね構造体内に差し込むと、変圧器100の巻き線内のEMF場を抑制でき、高周波近接効果損失を小さくすることができる。本発明の内側/外側コイル構造によってより広いアスペクト比をもつ薄い銅を作り出すことができる。横断面が矩形の平形線材の坐屈および変形が巻かれたID(内径)/線材幅比を2.5以上に保つことによって抑制されるか、なくなるからである。
【0042】
さらに、磁石線材を使用すると、巻き線毎に機能的な絶縁効果を得ることができ、<1000Vrmsの絶縁耐圧を満足させるために付加する絶縁材料を使用する必要はない。
【0043】
図示のように、複数の接続ピン30については、これら複数の接続ピン30のうちの少なくとも2つに電気的に結合することができる端子端部(端子)をもつ巻き線の外縁部に隣接する支持フレーム90の両側に設ければよい。複数の接続ピン30はそれぞれ個別に電源または負荷に電気的に接続し、例えば巻き線に電気的に接触させればよい。また、ピン30は標準的なドリルを使用してカスタマー仕様ボードに半田接続できるように構成すればよい。複数の接続ピン30は任意の個数で使用可能であるが、
図1~
図3および
図5に示すように、二列のピンを使用し、各列のピン数は6個である。合計で12個のピンがあるため、相互接続することなく6本の巻き線に電気的に結合することが可能になる。これら複数の接続ピン30は任意の導電材から形成することができ、例えば銅ピンまたは銅メッキ鋼ピンから形成することができ、形状は円形、矩形または正方形であればよく、使用形態にマッチする長さであればよく、直径はコイルをピンに取り付けることを考慮にいれて決定すればよい。
【0044】
好適な実施態様では、巻き線の端子のうちの一つかそれ以上を90度程曲げ(即ち捩じって)一つかそれ以上のピンに接続する。
【0045】
本発明の組み重ね巻き線またはコイルスタック(coil stack)のリード方向は臨界的なものではなく、変数と考えるべきである。コイルを組み重ねた状態で、巻き線を磁石コアに組み立てることができ、この磁石コアの場合、リードフレームおよび/または他の絶縁材を設けてもよく、あるいは設けなくてもよく、また同様な方法で構成した巻き線、銅シート巻き線、従来の磁石線材巻き線に結合してもよく、あるいは結合しなくてもよく、あるいは上記巻き線構成を併用してもよい。
【0046】
図2および
図3に示すように、上部コア80を設け、底部コア10とともに変圧器100の内部部分を収容する。本質的に底部コア10の鏡像である上部コア80は、中心支柱20の直径よりも小さい直径をもつ上部支柱89を有し、この上部支柱89が中心支柱20の上部開口に嵌合する。さらに、上部支柱89の両側に湾曲チャネル11を設け、支持フレーム90の湾曲部分を調整し受け取る。従って、組み立てると、上部コア80および底部コア10が巻き線部分および支持フレーム90部分を収容する、即ち“挟持”するコア本体を形成することになり、支持フレームの両側外壁およびピン30がコア本体の内部の外側に位置することになる。
【0047】
第1内側巻き線40の内径Dは巻き線の内周面41間で測定した内径であり、外径D´は外周面42間で測定した外径である。これら直径は、部分的には、巻き線を形成する線材の幅Wに依存するものである。中心支柱20を設けた場合、内径は中心支柱20の外径サイズよりも大きくなる。内径サイズが外径サイズに近くなるほど、中心支柱20周囲への第1内側巻き線40の嵌合度が強くなる。
【0048】
第1内側巻き線40の垂直厚さまたは高さ45は、添付図面において上から下に、即ち上下方向に測定した高さである。厚さ45は第1内側巻き線40を形成する線材の厚さ、および第1内側巻き線40のターン数即ち巻き線数の関数である。これらは、巻き線を利用する装置の目的および機能に基づいて変更かつ選択できる。第1内側巻き線40を形成する線材の底部コイルまたは端子端部46(端子)が、ピン30のうちの一つへの接続などの第1内側巻き線40への第1電気接続点になる。第1内側巻き線40を形成する線材の両端において、上部コイルまたは端子端部47(端子)が、ピン30のうちの一つへの接続などの第1内側巻き線40への第2電気接続点になる。
【0049】
第1外側巻き線50は内側巻き線40を受け取る開口を有する。第1外側巻き線50の内径Dは、内周面51間で測定した内径であり、外径D´は外周面52間で測定した外径である。内径サイズは第1内側巻き線40の外径よりも大きい。第1外側巻き線50は垂直厚さまたは高さ55を有する。厚さ55は第1内側巻き線40を形成する線材の厚さ、および第1外側巻き線50のターン数即ち巻き線数の関数である。内径Dのサイズが外径D´のサイズに近くなるほど、第1内側巻き線40周囲への第1外側巻き線50の嵌合度が強くなる
【0050】
第1外側巻き線50を形成する線材の底部コイルまたは端子端部56(端子)が、ピン30のうちの一つへの接続などの第1外側巻き線50への第1電気接続点になる。第1外側巻き線50を形成する線材の両端において、上部コイルまたは端子端部57(端子)が、ピン30のうちの一つへの接続などの第1外側巻き線50への第2電気接続点になる。
【0051】
一つの実施態様では、第1内側巻き線40の厚さ45は全体として第1外側巻き線50の厚さ55と等しいが、この厚さについては変更可能である。
【0052】
第2内側巻き線60および第2外側巻き線70については、第1内側巻き線40および第1外側巻き線50と同様にして設ける。従って、第2内側巻き線60の内径Dは内周面61間で測定した内径であり、外径D´は外周面62間で測定した外径であり、内径サイズは中心支柱20の外径22のサイズより大きい。第2内側巻き線60は垂直厚さまたは高さ65を有する。第2内側巻き線60の底部コイル端子端部66および上部コイル端子端部67がピン30のうちの一つなどに対する電気接続点になる。
【0053】
第2外側巻き線70は第2内側巻き線60を受け取る開口を有する。第2外側巻き線70の内径Dは内周面71間で測定した内径であり、外径D´は外周面72間で測定した外径であり、内径Dは外径D´より小さい。第2外側巻き線70は厚さ75を有する。底部コイル端子端部76および上部コイル端子端部77がピン30のうちの一つなどに対する電気接続点になる。
【0054】
巻き線の内径は実質的に等しくてもよく、あるいは異なっていてもよい。また巻き線の外径は実質的に等しくてもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0055】
上部コア部分80は対向する正面/背面84を有していてもよく、対向する左右側面88を有していてもよい。上部コア部分80の正面/背面84に開口として形成された切り欠き部分83を設けることができ、この切り欠き部分によって変圧器100の組み立て後にコア本体の内部と複数の接続ピン30との間にアクセスすることが可能になる。切り欠き部分83の高さおよび幅をそれぞれXおよびYで示す。図示のように、切り欠き部分83については正面84の中心に設けるが、正面84にそって設ける限り複数の接続ピン30へのアクセスは十分に可能である。
【0056】
底部コア部分10には切り欠き部分13(正面における13a、および背面における14および13b)を設けることができ、この切り欠き部分によって変圧器100の組み立て後にコア本体の内部と複数の接続ピン30との間にアクセスすることが可能になる。切り欠き部分13の高さおよび幅をそれぞれXおよびYで示す。
【0057】
支持フレーム90は所定の材質からなり、複数の層で構成することができる。上部層91については巻き線に最も近接して設ける。中間層92については第1の上部層91と第2の底部層93との間に実質的に挟持する。中間層92の一部については、第1層91および第2層93よりも長く設定することができる。図示のように、中間層92には一連の位置調整ピン94を設けることができる。これら位置調整ピン94については、中間層92の第1層91および第2層93よりも長く延在する部分の周囲に設けることができる。
【0058】
本発明の新規な態様の一つは、複数列の巻き線セットによって本発明装置の電磁属性を多様化することに関する。積み重ねた巻き線セットは従来技術よりもすぐれている。この態様によってターン数の大きな巻き線(即ち直列接続)を実現できるため、巻き線がより高い電圧をサポートできるようになる。さらにこの態様によれば、このような巻き線パッケージをより薄型にできる。さらに、巻き線の装置コアへの位置設定が簡単かつ容易なため、漏れインダクタンスを低く抑えた状態でかなり異なるターン数をもつ巻き線から複数の一次インターフェースおよび二次インターフェースを作り出せる。本発明の巻き線態様によれば、より多数の巻き線を一つのユニットまたはパッケージに配列できる。従来の技術では、巻き線の構成、数およびサイズは、一つのパッケージまたは装置内に嵌合できるように同じ相対的高さに限定されていた。また、コイルを組み重ねると、巻き線間を絶縁できるため、
図16を参照して以下に説明するように、同心巻き線よりも絶縁電圧を高くできる。
【0059】
図4に、本発明の一態様に従って組み重ね式変圧器を製造する方法400を示す。本方法400では、変圧器に使用する巻き線のそれぞれを対応するマンドレルに巻き付け、工程410において各巻き線の目的の内径および外径を維持する。複数の巻き線を異なる直径のマンドレル/アーバーによって作り出すことができる。各巻き線のコイル構成については、具体的な用途に応じて正方形、矩形、楕円形や円形であればよい。外側巻き線については、近接内側巻き線の最大外径より最小で0.0005インチ大きい別なマンドレルに巻きつけることができる。外側巻き線のサイズの違いは内側巻き線の構築高さ(build height)に基づく。内側/外側巻き線の線材厚さ、線材幅またはターン数については同じでもよく、同じでなくてもよい。巻き線のこれら態様それぞれは、空間パラメータおよび電気パラメータを実現できるように変更することができる。
【0060】
工程420において、内側巻き線を外側巻き線内に設け、内側巻き線の外径が外側巻き線の内径を補完することによって巻き線を組み重ね構成で組み立てることができる。組み重ねた巻き線を磁石コアに組み立てることができ、この磁石コアの場合、リードフレームおよび/または他の絶縁材を設けてもよく、あるいは設けなくてもよく、また同様な方法で構成した巻き線、銅シート巻き線、従来の磁石線材巻き線に結合してもよく、あるいは上記巻き線構成を併用してもよい。工程420を繰り返して組み重ね巻き線を追加製造することができる。
【0061】
工程430において、このようにして組み立てられたセットの組み重ね式巻き線を支持フレームに組み立てることができる。工程440において、巻き線の端部を支持フレームのピンに接続する。工程450において、底部コア部分および上部コア部分を組み立て、変圧器の内部部分を収容することができる。
【0062】
図5は巻き線セットの複数の積み重ね体を有し、各巻き線の端子をピン30に取り付けた本発明の一つの実施態様を示す図である。各端子を巻き線セットの平面からほぼ90度曲げ、上記ピン30などの外部取り付け具の周囲に巻きつける。このピンも巻き線セットの平坦な表面の平面からの方向がほぼ90度である。従って、巻き線セットを水平に配置した場合には、端子端部を曲げおよび/または捩じり、その方向を実質的に垂直にする。なお、端部端子については、巻き線の方向に対して例えば約0度~約90度の範囲にある任意の角度で取り付けることができるように曲げるか捩じる。具体的な用途に応じて、端子を90度より大きな角度に曲げることができる。端子端部の曲げた、あるいは捩じった遷移部分は巻き線の平坦な部分と端子端部との間に位置設定する。従って、端部端子をどのように位置設定するか、どの方向に設定するか、外部接続部にどのように取り付けるかに関する自由度が大きくなる。
【0063】
端子については、
図5に示すように、時計方向にも、あるいは反時計方向にも巻きつけることができる。
【0064】
第1外側巻き線50の底端部端子56についてはピン30aの周囲に巻き付け、第1外側巻き線50の上端部端子57については、ピン30cの周囲に巻きつける。
【0065】
第1内側巻き線40の底端部端子46についてはピン30bの周囲に巻き付け、第1内側巻き線40の上端部端子47については、ピン30dの周囲に巻きつける。
【0066】
第2内側巻き線60の底端部端子66についてはピン30gの周囲に巻き付け、第2内側巻き線60の上端部端子67については、ピン30fの周囲に巻きつける。
【0067】
第2外側巻き線70の底端部端子76についてはピン30hの周囲に巻き付け、第2外側巻き線70の上端部端子77については、ピン30eの周囲に巻きつける。
【0068】
巻き線数およびピン数に応じて他の巻き線構成を使用することが可能である。
【0069】
図6および
図7は、3つの巻き線セットを有し、各巻き線セットが組み重ね式の内側巻き線および外側巻き線を有する変圧器200を示す図である。この変圧器200は第1内側巻き線40および第1外側巻き線50を有する第1セットの組み重ね式巻き線、第2内側巻き線および第2外側巻き線70を有する第2セットの組み重ね式巻き線、および第3内側巻き線および第3外側巻き線670を有する第3セットの組み重ね式巻き線を有し、以下に説明するように、各組み重ね式セットの巻き線を着座部分20に着座させるとともに複数の接続ピン30に電気的に接続した変圧器200を示す図である。図示の構成では、隣接巻き線セット間に絶縁層は設層しないが、本明細書に説明するように、絶縁層を設層することは可能である。端子端部を半田付けし、端子をピンに固定する。
【0070】
第1内側巻き線40は、底部コイル端子端部46および上部コイル端子端部47を有する。底部コイル端子端部46については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30iのうちの一つに電気的に接続する。また、上部コイル端子端部47については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30hのうちの一つに電気的に接続する。
【0071】
第1外側巻き線50は、底部コイル端子端部56および上部コイル端子端部57を有する。底部コイル端子端部56については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30jのうちの一つに電気的に接続する。また、上部コイル端子端部57については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30gのうちの一つに電気的に接続する。
【0072】
第2内側巻き線は、底部コイル端子端部66(
図7)および上部コイル端子端部67を有する。底部コイル端子端部66については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30bのうちの一つに電気的に接続する(
図7)。また、上部コイル端子端部67については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30iのうちの一つに電気的に接続する。この接続によって第2内側巻き線が第1内側巻き線40に電気的に結合する。
【0073】
第2外側巻き線70は、底部コイル端子端部77および上部コイル端子端部76(
図7)を有する。底部コイル端子端部77については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30jのうちの一つに電気的に接続する。この接続によって第1外側巻き線50が第2外側巻き線70に電気的に結合する。また、上部コイル端子端部76については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30aのうちの一つに電気的に接続する(
図7)。
【0074】
第3内側巻き線は、底部コイル端子端部677および上部コイル端子端部676(
図7)を有する。底部コイル端子端部677については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30fのうちの一つに電気的に接続する。また、上部コイル端子端部676については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30dのうちの一つに電気的に接続する(
図7)。
【0075】
第3外側巻き線670は、底部コイル端子端部667および上部コイル端子端部666(
図7)を有する。底部コイル端子端部667については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30eのうちの一つに電気的に接続する。また、上部コイル端子端部666については水平からほぼ90度曲げ、複数の接続ピン30cのうちの一つに電気的に接続する(
図7)。
【0076】
支持部分90については、射出成形プラスチックなどの絶縁材から構成することができ、コイルに対して電気的に絶縁することができる。例えば、巻き線40、50、70、670と複数の接続ピン30との間を電気的に絶縁することができる。着座部分90に任意の数の材料層を設層することができる。添付図面、特に
図6には3層の着座部分90を示す。第1層91が巻き線40、50、70、670に最隣接する。中間層92については第1層91と第2層93との間に実質的に挟持する。中間層92の一部は第1層91および第2層93よりも長く延在する。
【0077】
図示のように、中間層92については一連の位置調整ピン94を設けることができる。これら位置調整ピン94は、第1層91および第2層93より長く延在する中間層92の部分の周囲に設けることができる。例えば、複数の接続ピン30を有し、これに対して位置調整した中間層92の部分にそって三つの組として位置調整ピン94を設けることができる。一つの位置調整ピン94については、複数の接続ピン30の端部において中間層92の部分に設けることができる。
【0078】
図8はコイル40、50をもつ第1巻き線セット、およびこの第1巻き線セットの下に設けられ、かつピン30との電気的な接続を行っている間に中心支柱20の周囲に同軸的に位置整合した第2巻き線セットを有する組み重ねたコイルの2つの積み重ねた巻き線セットを示す図である。各コイル40、50および第2セットの第1端部は複数のピン30のうちの一つに接続する。コイル40の端子端部46はピン30bに接続し、コイル50の端子端部56はピン30aに接続する。そしてコイル60の端子端部66はピン30cに接続し、コイル70の端子端部76はピン30dに接続する。
【0079】
図8において、各コイル40、50の第2端子端部および第2セットはまだ複数のピン30のうちの一つに接続していない。コイル40の端子端部47については、ほぼ90度曲げ、ピン30hに接続する準備段階にあり、またコイル50の端子端部57についても、ほぼ90度曲げ、ピン30gに接続する準備段階にある。コイル60の端子端部67については、ほぼ90度曲げ、ピン30fに接続する準備段階にあり、またコイル70の端子端部77についても、ほぼ90度曲げ、ピン30eに接続する準備段階にある。
【0080】
図8において、端子端部47、57は組み重ね構成から引き出されているが、まだ90度曲げられておらず、対応するピン30に接続する準備段階にある。端子端部67、77については、組み重ね構成から90度曲げられ、対応するピン30に接続する準備段階にある。
【0081】
線材端子端部を90度曲げると、ピン30などの外部接続点へ端子端部を簡単かつ効率よく、しかも素早く接続でき、精密に曲げる必要がなくなる。例えば従来構成の場合、端部基板のスロットなどに直接接続するために端子端部を正確に位置調整する必要があると考えられる。さらに、本発明のように接続を行うと、
図6および
図7に示すように、複数の巻き線を同じピン30に接続できる。このため、コイル構造体のEMFを低くする複数の巻き線の差し込みが容易になる。本発明の接続方法は、中間タップ形巻き線(center-tapped windings)を素早く形成する方法である。
【0082】
なお、本発明の線材の端子端部は複数の異なる方向に延在することができる。任意の2つの端子端部を同じ方向に延在させる必要はない。従って、
図8では、端子端部47、57、67、77はすべて端子端部46、56、66、76とは異なる方向に向いている。
図8に示す2つの端子端部は同じ方向を向いていない。
【0083】
さらに一つの実施態様では、組み重ねた内側コイルおよび外側コイルの一部は、一つの巻き線セット上面または底面から交差することなく延在する。これについては、巻き線セットの上部および上面を示す
図5および
図7に例示する通りである。あるいは、組み重ねた内側コイルおよび外側コイルの一部は、例えば
図8に示すように、交差していてもよい。
【0084】
図9~
図13に、組み重ね時の異なる点における2つのコイルを示す。一つのコイルをもう一つのコイル内に積み重ねた状態を図示しているが、この積み重ねプロセスは繰り返し実施することができる。
図9には2つの異なるコイル940、950を示す。組み重ね構成においてコイル940が内側コイルになり、コイル950が外側コイルになる。コイル940の内径は円周941間で測定し、外径は円周942間で測定する。コイル940は第1端部946および第2端部947を有する。コイル950の内径は円周951間で測定し、外径は円周952間で測定する。コイル950は第1端部956および第2端部957を有する。内径951および外径942については、密接に相互マッチするように設計することができ、従って組み重ねた後はコイルが正確に嵌合する。この密接な相互マッチについては、マージナルクリアランス(marginal clearance)によって決定でき、組み立てが容易になる上に、マッチが密接になる程、性能が向上する。用途によっては、例えば電圧切り換え用途では、機械的なカップリングを付加するために間隔をより大きく取ってもよい。
【0085】
図10に組み重ねプロセスにおける第1点を示す。コイル940の第2端部947がコイル950の中心で開口の他の側まで突出するまでこれをコイル950の中心開口に通す。図示のように、第2端部947がコイル950の中心を通っている間、端部947と端部957との間に特別な関係を設定する必要はない。また端部946と端部956との間にも特別な関係を設定する必要はない。最初に通した後に具体的な方向を調節すればよい。
【0086】
図11に組み重ねプロセスにおける第2点を示す。コイル950の中心開口に第2端部947を通した後は、コイル950の平面に対して所定角度、例えば45度の角度でコイル940を傾ければよい。この傾きによって外径942が内径951に入り込み、組み重ねが開始する。具体的には、外径942の一部が内径951に対して設定され、組み重ねプロセス中の次工程で傾斜をなくすさいに適正な間隔が形成する。コイルに厚さがある場合には、外径942にそって内側コイル940の底部縁部を外側コイル950の底部縁部に対して一直線に設定することができ、内径951への入り込みが開始する。
【0087】
図12にコイル940が回転し、コイル950に組み重なる間の組み重ねプロセスにおける点を示す。外径942が内径951に入った後は、コイルが整合し、コイル940、950が巻き線セット内で共線化(平坦化)かつ同軸化する。上記の説明でコイル間に与えられた45度の傾斜などのコイル間の角度を取り去ると、コイル940の残部をコイル950内で回転した状態で、内径951に隣接した外径942を所定位置に保持することができる。
【0088】
図13に相互に組み重ねた2つのコイル940、950を示す。具体的には、組み重ねたコイルの全体外径は外径952によって決まり、また全体内径は内径941によって決まる。コイル940、950が相互に組み重なると、内径951と外径942が相互に隣接する。内径951と外径942との近接度については、ここで説明するが、最小に維持することができる。即ち、組み重ねが生じるのに十分な近接度であればよい。本質的に、より大きな外側コイル950を内側コイル940のリード部の一つに送り出し、外側コイル950が内側コイル940に同心的に位置が整合するまで、内側コイル940上に片持ち支持する。
【0089】
コイル940、950についてはこれらを相互回転させると、一方では端部947、957に、そして他方では端部946、956に位置整合させることができる。あるいはこのような位置整合を取らないことも可能である。設計に応じて端子端部946、947、956、957については対応するピン30(他の図面に図示がある)にゆっくり係合するように構成することができる。即ち、コイル940がコイル950に対して回転し、ピン30に対して端部946、947、956、957が位置整合し、これらを接続することができる。
【0090】
図14は、複数本構成で複数の線材を使用して形成したコイル1400を示す。
図14に示すように、複数の線材を使用して一つのコイル1400を形成する。第1線材1440を第2線材1450に螺旋状に巻き付けかつ差し込み、二本巻き線としてマルチファイラ巻き線を構成する。コイル1400については、本発明のいずれの実施態様に使用することができ、内側巻き線、外側巻き線あるいは中間巻き線として使用することができる。さらに、一本巻き線および複数本巻き線を任意に併用してもよい。
【0091】
図15に、巻き線端子端部のピンへの半田接続を示す。
図15に、ピン30に接続する3つの巻き線端部1547、1567、1577を示す。端子端部1577をピン1530eに、端子端部1567をピン1530dに、そして端子端部1547をピン1530cに接続する。
【0092】
端子端部1567は90度回転下部分1510を有するため、本明細書で説明するようにピン1530dに接続することができる。
【0093】
図16は絶縁材1605を使用して他の組み重ねコイル1660、1670の巻き線セットに積み重ねたコイル1640、1650の組み重ね巻き線セットを示す横断面図であり、図示のように組み重ねセット1640、1650と1660、1670とが分離している。
図16に示すように、コイル1660についてはコイル1670に組み重ね、中心支柱1620の周囲に同軸的に設けることができる。絶縁材1605については、シートの形を取り、底部コア部分1610に対して遠位にある組み重ねコイル1660、1670の巻き線セットの上部に設けることができる。組み重ねコイル1640、1650の第2巻き線セットについては、絶縁材1605に対向する中心支柱1620に位置整合させ、絶縁材1605を挟持すればよい。絶縁材1605については、例えば射出成形プラスチックなどの絶縁材料から形成すればよい。絶縁材1605によって、組み重ねセット1640、1650と組み重ねセット1660、1670との間を電気的に分離することができる。絶縁材1605によって、組み重ねセット1640、1650と組み重ねセット1660、1670との間を熱的に分離することもできる。なお、積み重ね巻き線セットには異なる量の線材を使用することができ、また異なる厚さまたは異なる高さを適用することができる。
【0094】
本発明の複数コイル設計の場合、巻き線構造体に複数の差し込みが可能である(例えば一次/二次/一次/二次巻き線など)。これら設計の場合、変圧器のバイアス巻き線を一次巻き線からさらに引き離すことができ、電源構造体内の端部出力電圧制御が向上する。本明細書に記載した巻き線技術によると、必要に応じて中間タップ形巻き線を形成でき、あるいはターン数の多い巻き線およびより薄いパッケージを形成できる。複数の積み重ねコイルの場合、2つ以上の二次巻き線を必要に応じてパッケージ内に形成できる。
【0095】
本発明構造の場合、複数の並列二次巻き線を形成できるため、より薄い線材を利用でき、従って構造内の近接効果損失を抑制するのに役立つ。最後に本発明構造の場合、並列巻き線(同一巻き線上の内側コイルおよび外側コイル)を形成し、より狭くした銅によって曲げの強い半径をエッジ巻き線材に使用できる。一般的にエッジ巻き線材を幅に対して2.5×ID(内径)以上強く巻き付ける必要があるため、巻き線線材のエナメル被覆が損傷することがなく、あるいは大きな変形もない(外側エッジの薄肉化やコイルの内側エッジの圧縮が生じない)ことが利点である。本発明巻き線は、コア構造内の水平エリアをより充填するないしフィルファクターが向上するように巻き付けることができる作用効果をもつ。さらに、より狭い銅を使用するため、上記のようによりきついピンピッチで接続することが可能になる。線材に90度の捩じれを与え、かつピンへ接続するために変圧器のスペースをより小さくする必要があるからである。
【0096】
“パンケーキ”巻き線材コイル構成を使用してターン数の高い巻き線を形成でき(薄い磁石線材を巻き付けるため、垂直層を最小化できるとともに水平層を最大化できる)、従ってエッジ巻き矩形銅磁石線材の任意の他の組み合わせの幅にも対処することも可能である。この線材は例えば横断面が円形であり、あるいはその他の異なる横断面形状をもつことが可能である。この巻き線技術の併用によって、従来の平面スタイルの巻き線では難しい高電圧低電流巻き線を形成することが可能になる。
【0097】
例えば、
図17Aおよび
図17Bに巻き線中にパンケーキ線材コイル構成3010を組み込んだ装置を示す。図示の実施例に示すように、一本の巻き線にパンケーキ線材コイル構成3010を組み込み、他の線材にはこれを組み込まない。これら2つのコイルについては、異なる横断面形状をもつか、あるいは同じか実質的に同様な横断面をもつ線材から形成することができる。
【0098】
本明細書に記載した変圧器は10~1200W範囲で動作する薄型スイッチモード変圧器として使用することができ、また従来の平面スタイル変圧器の代わりに直接使用することができる。この変圧器はすべての市場用途に使用できるものである。
【0099】
本明細書に記載した組み重ね式巻き線は、他のエッジ巻きコイルとしての巻き線を付加することが可能であり、あるいは既に述べたように、薄型平面スタイル変圧器に使用可能であり、この変圧器には磁石線材を完全に巻き付けることができ、高さを低くするために回路板を使用する必要はない。
【0100】
本発明の変圧器の場合、変圧器ウインドウ(transformer window)内の導体フィルファクターを大きく取ることができる。即ち、絶縁材を必要とせず、またトレース対トレーススペース(trace to trace spacing)を必要としないため、導体を充填する磁気コアウインドウをより広く取ることができる。そのため、このスタイルの設計を使用する銅フィルファクターは増加し、ほぼ60%のウインドウ利用率に相当し、一方従来の平面回路板のウインドウ利用率は35%に近い。
【0101】
厚さが可変の銅を同じパッケージ内に充填でき、巻き線材の基本的な金属コストと大差ない。
【0102】
エッジ巻き巻き線の層は近接効果を発揮する作用効果をもつ。即ち、線材を複数ターン数で巻き付けることができ、結果として得られる高周波抵抗に対する効果は単層巻き線に匹敵する。外側巻き線を付加すると、この巻き線は変圧器100内の近接効果および実効AC抵抗の点で第2層のように作用する。
【0103】
本明細書に記載した変圧器の線材巻き特性によって、変圧器のターン数および層構成を最小コストで最適化でき、従来の平面/薄型変圧器に使用される新規な回路板巻き線(平面板)を形成する必要はない。本明細書に記載した変圧器は本発明の巻き線技術によって漏れインダクタンス場を排除できる。本発明のコイル積み重ね体によって対象となる巻き線上および/または巻き線下のターンを完全に被覆できるからである。
【0104】
本発明技術の具体的な実施態様に関する上記説明は例示を目的とするものである。この説明は完全を期するものではなく、また本発明を厳密な開示形態に限定するものでもなく、多数の一部変更などは以上の説明に照らして可能であることは自明と考えられる。実施態様については、本発明の原理およびその応用を明示するために選択したもので、当業者ならば、本発明技術および一部変更を伴う各種実施態様を意図する用途に応じて実施することは可能なはずである。本発明の範囲は特許請求の範囲およびその等価範囲に記載する通りである。
【符号の説明】
【0105】
10:底部コア
10a:第1底部コア部分
10b:第2底部コア部分
11:湾曲半径部分、湾曲チャネル
13、83:切り欠き部分
15:底部コア突出部分
20、1620:中心支柱
22:外径
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30h、30i、30j、1530d:ピン
40:第1内側巻き線
41、51、61、71:内周面
42、52、62、72:外周面
45、55、65、75:厚さ、高さ
46、47、56、57、67、66、76、77、666、667、676、677:コイル端子端部
50:第1外側巻き線
60:第2内側巻き線
70:第2外側巻き線
80:上部コア、上部コア部分
84:正面、背面
88:左右側面
89:上部支柱
90:支持フレーム、支持部分、着座部分
91:上部層、第1層
92:中間層
93:底部層、第2層
94:位置調整ピン
100、200:変圧器
140:コイル
400:方法
410、420、430、440、450:工程
940:内側コイル
941、951:内径
942、952:外径
946:第1端部
947:第2端部
950:外側コイル
956、957:端部
1400:コイル
1440:第1線材
1450:第2線材
1510:90度回転下部分
1547、1567、1577:巻き線端部、端子端部
1605:絶縁材
1610:底部コア部分
1640、1650、1660、1670:組み重ねコイル
3010:パンケーキ線材コイル構成
D:内径
D´:外径
X:高さ
Y:幅