(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】全血から核酸を単離するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220222BHJP
C12M 1/28 20060101ALI20220222BHJP
A61B 5/15 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12M1/28
A61B5/15 100
(21)【出願番号】P 2018561307
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2017053025
(87)【国際公開番号】W WO2017137573
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2019-09-17
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518289162
【氏名又は名称】ザルシュテット・アーゲー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・シュスター
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103820431(CN,A)
【文献】特開平02-289596(JP,A)
【文献】特表2002-522092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血中に含有される細胞の分解剤として、全血中の全RNAの安定化剤として、及び全血と組成物との混合物から核酸用吸着剤にRNAを吸着により単離するための組成物の使用であって、前記組成物が採血管に含有されており、かつ水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤
からなり、
e. 還元剤を含まない
使用において、前記使用が、全血中に含有される全RNAの安定化剤としてであって、生物学的試料と組成物との混合物から直接核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するためであり、前記組成物が、1:13までの生物学的試料と組成物との可変な容量比で混合物中に存在し、しかも、混合物から成分が分離されておらず、かつ混合物が吸着剤と接触させられる前に、核酸が混合物から沈殿及び分離されていないことにより、前記吸着が混合物から直接実施されることを特徴とする、使用。
【請求項2】
グアニジン塩がグアニジンチオシアネートであり、緩衝物質が2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、トリス(トリスヒドロキシメチル-アミノメタン)、クエン酸塩、リン酸塩(リン酸水素二ナトリウム)二水和物、ビス-トリス緩衝剤(ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ-トリス-(ヒドロキシメチル)-メタン)、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、炭化水素ナトリウム、若しくはリン酸塩(リン酸水素ナトリウム)二水和物であり、非イオン性界面活性剤がTriton X-100、Tween 20、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Brij 58(ポリエチレングリコール-ヘキサデシルエーテル)、Triton X-114(オクチルフェニルポリエチレングリコールエーテル)若しくはNonidet P40であり、錯化剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であって、前記組成物が還元剤としてのチオール化合物若しくはその前駆体化合物を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
全血及び組成物からなる混合物の遠心分離を介してあらかじめ核酸を沈殿及び分離することなく、前記混合物と核酸用吸着剤との接触によって、前記混合物から核酸を単離することを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
混合物にプロテイナーゼ及び/又はDNaseが添加されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記採血管が、生物学的試料の可変な容量を吸引するために設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
全血中の全RNAの安定化剤としての全血中に含有される細胞の分解剤として
の組成物を含有する、
全血と組成物との混合物から核酸用吸着剤にRNAを吸着により単離するための採血管の使用であって、前記採血管が、生物学的試料の可変な容量を吸引するために設けられており、前記分解剤が水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤
からなり、
e. 還元剤を含まない
ことを特徴とし、分解剤の前記使用が、全血中に含有される全RNAの安定化剤として、及び生物学的試料と組成物との混合物から直接核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するためであり、前記組成物が、1:13までの生物学的試料と組成物との可変な容量比で混合物中に存在しており、しかも混合物から成分が分離されておらず、かつ混合物が吸着剤と接触させられる前に、核酸が混合物から沈殿及び分離されていないことにより、前記吸着が混合物から直接実施されることを特徴とする、採血管の使用。
【請求項7】
直接血液を採取するための採血管の使用であって、前記分解剤が水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤、
e. 並びにプロテイナーゼ及び/又はDNaseからなり、
還元剤を含まないことを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
直接血液を採取するための採血管の使用であって、生物学的試料と組成物とからなる混合物にプロテイナーゼ及び/又はDNaseが添加されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
全血から全RNAを単離するための方法であって、採血管に含有されており、かつ水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. 少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び少なくとも1つの錯化剤
からなり、全血中のRNAの分解及び再合成を妨げる還元剤を含まない、組成物と全血との混合と、1:13までの血液と組成物との容量比の全血及び組成物からなる混合物の生成と、混合物と核酸用吸着剤との接触であって、吸着剤との接触前に混合物から含有物質が分離されていない接触と、結合されなかった物質の吸着剤からの除去と、吸着剤からのRNAの溶離とを特徴とする、方法。
【請求項10】
混合物と吸着剤との前記接触が、あらかじめ核酸を混合物から沈殿、分離及び溶解することなく実施されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも3日間、最高25℃での混合物の保存を特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
生物学的試料と組成物との前記混合が、1:13までの容量比で行われることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
生物学的試料と組成物との前記混合が、1:2までの容量比で行われることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記吸着剤がシリカコーティングされた粒子であり、生物学的試料と組成物の前記混合物に、混合物の容量の少なくとも50%の容量の希釈液が添加されることを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
1:13までの血液と組成物との容量比の全血及び組成物からなる得られた混合物の0℃超での貯蔵を特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1:13までの血液と組成物との容量比の全血及び組成物からなる混合物へのプロテイナーゼ及び/又はDNaseの添加を特徴とする、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記水性溶液は、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. 少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つの錯化剤、及びプロテイナーゼ及び/又はDNaseからなることを特徴とする、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
全血中に含有される細胞の分解剤として、全血中の全RNAの安定化剤として、及び全血と組成物との混合物から核酸用吸着剤にRNAを吸着により単離するための組成物であって、前記組成物が採血管に含有されており、かつ水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤
からなり、
e. 還元剤を含まない
組成物において、前記組成物が、全血中に含有される全RNAの安定化剤としてであって、生物学的試料と組成物との混合物から直接核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するためのものであり、前記組成物が、1:13までの生物学的試料と組成物との可変な容量比で混合物中に存在し、しかも、混合物から成分が分離されておらず、かつ混合物が吸着剤と接触させられる前に、核酸が混合物から沈殿及び分離されていないことにより、前記吸着が混合物から直接実施されることを特徴とする、組成物。
【請求項19】
全血中に含有される細胞の分解剤として、全血中の全RNAの安定化剤として、及び全血と組成物との混合物から核酸用吸着剤にRNAを吸着により単離するための組成物を含有する採血管であって、前記採血管が、生物学的試料の可変な容量を吸引するために設けられており、前記分解剤が水性溶液中で、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤
からなり、
e. 還元剤を含まない
採血管において、前記組成物が、全血中に含有される全RNAの安定化剤としてであって、生物学的試料と組成物との混合物から直接核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するためのものであり、前記組成物が、1:13までの生物学的試料と組成物との可変な容量比で混合物中に存在し、しかも、混合物から成分が分離されておらず、かつ混合物が吸着剤と接触させられる前に、核酸が混合物から沈殿及び分離されていないことにより、前記吸着が混合物から直接実施されることを特徴とする、採血管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料からの特に全血からの核酸を、特に細胞内に含有されるRNAを含む、RNAを安定化するための組成物及び方法に関し、好ましくはそれにその後の核酸の単離を伴い、並びに全核酸、特に全RNAを安定化するための及びその後の単離に適した組成物を含有する、採血管として使用するための装置に関する。
【0002】
生物学的試料からの特に全血からの核酸を安定化するための組成物、その方法及びその方法のために使用可能なこの組成物を含有している採血管は、全血内の核酸、特にRNAの有効な安定化が達成され、また速やかで有効な単離のための方法を可能にすることを特徴とする。この場合この安定化は、無細胞の血漿中に含有されている核酸、特にRNA、及び血液中に存在する細胞中に含有されている核酸、特にRNAも含めて、全核酸、特に全RNAを含む。
【背景技術】
【0003】
WO02/056030 A2は、試料内のRNA成分を安定化するための、規定された試料容量を引き込むために規定された真空状態の容器を説明していて、この場合に容器内には遺伝子誘導を抑制するため及び酵素による核酸の分解を阻止する作用剤、特にメルカプトエタノール、ジチオトレイトール(DTT)及びカオトロピック塩、特にグアニジンイソチオシアネート又はグアニジン塩酸塩が入れられている。
【0004】
WO 00/09746 A1は、細胞の溶解と核酸の安定化のために、グアニジン塩、緩衝剤、界面活性剤及び還元剤、特にDTT、β-メルカプトエタノール及びTCEP((トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を含む溶液を含有する、採血用容器について記載している。その中で還元剤、特にβ-メルカプトエタノール又はDTTは、血清中のRNAの安定化のために必須であると見なされている。
【0005】
WO2009/018034 A1は、非イオン性界面活性剤の添加による、細胞に対する溶解バッファ内へのSDSの溶解性の上昇、及び2MのNaCl、1.2%のSDS、12mMのEDTA、24mMのトリス-HCl、2%のTweenを用いたpH8.0の溶解バッファの添加、及びその後の、50mMのトリス-HCl、pH7、10mMのEDTA、7Mのグアニジン-HCl、5%のTween 20からなる抽出用緩衝剤を十倍の容量添加することによる、動物の組織からDNAを単離するための方法に関する。
【0006】
WO 2007/060248 A1は、カオトロピック塩を用いての細胞の、すなわち肝臓組織の溶解、及びその後の非カオトロピック塩の添加により核酸を担体上へ結合することを対象としている。
【0007】
DE 101 47 439 A1は、血液からDNAを単離するために、溶解試薬を添加し、その後DNA含有細胞成分を遠心分離によって分離することを記載している。沈降したDNAは、グアニジン塩酸塩を用いての再懸濁によって、及び不純物、例えばタンパク質からの分離を介して洗浄され、並びにアルコールの添加によって沈殿及び分離される。
【0008】
DE 10 2014 220 090 B3は、核酸を含む生物学的試料を集めるために、スワブをその中に取り付け得る容器であって、分解液を含有している容器について記載している。
【0009】
CN 104673623 Aは英語の要約によれば、蓋の付いた試料用容器のために、血液細胞核酸及び無細胞のDNAを安定化するための組成物について記載説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO02/056030 A2
【文献】WO 00/09746 A1
【文献】WO2009/018034 A1
【文献】WO 2007/060248 A1
【文献】DE 101 47 439 A1
【文献】DE 10 2014 220 090 B3
【文献】CN 104673623 A
【非特許文献】
【0011】
【文献】Hai N.H.、Phu N.D.、Luong N.H.、Chau N.、Chinh H.D.、Hoang L.H.、Leslie-Pelecky D.L.(2008) Mechanism for Sustainable Magnetic Nanoparticles under Ambient Conditions、Journal of the Korean Physical Society.52(5)、1327~1331頁
【文献】Quy D.V.、Hieu N.M.、Tra P.T.、Nam N.H.、Hai N.H.、Son N.T.、Nghia P.T.、Anh N.T.V.、Hong T.T.、Luong N.H.(2013) Synthesis of Silica-Coated Magnetic Nanoparticles and Application in the Detection of Pathogenic Viruses、Journal of Nanomaterials、DOI:10.1155/2013/603940
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、全血からの全核酸の安定化及びその後の単離のための、別の組成物及び別の好ましい方法を提供することである。好ましくはこの組成物は、全血からの全RNAを安定化し、また全核酸、特にRNAの単離のための速やかな方法を可能にするものである。更に好ましくはこの組成物は、可変な血液容量に対する核酸の安定化を可能にするものであり、それゆえにこの組成物を含有する採血管は、規定された血液容量を吸引するために設けられている必要は必ずしもない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこの課題を請求項の特徴をもって、特に全血からの全核酸、特にRNAを安定化させるための組成物によって、及び特に全血からの全核酸をその後の単離のために安定化させるための方法によって解決し、また同時に細胞の分解に寄与し、その結果組成物と接触する状態、特に採血時点において細胞の核酸が放出され、並びにその性質及び濃度が安定に維持され、続いて単離され得る。その際にこの組成物は、その中へ組成物が混合されるところの全血中の特にRNAの分解及び再合成を妨げることを特徴とする。対応して、本発明は好ましくは採血管内に含有されている組成物を、特に吸着剤へのRNAの吸着前にRNAを沈殿及び分離する工程を経ずに、血液からの全RNAを安定化及び単離するための作用剤とする方法のための使用に関する。この血液と水性組成物との混合物は、単離のためにRNAを沈殿させることなく吸着剤と接触させ得る。水性組成物と血液との混合物と吸着剤との接触を介するRNAの単離は、水性組成物と血液の完全な混合物から直接、すなわち例えば混合物から核酸を沈殿及び分離することなく実施可能であって、場合によってはこの混合物がその間に例えば採血場所から分析手順の場所へと運搬されるという、貯蔵の後に実施し得る。
【0014】
この生物学的試料は好ましくは液体であって、また場合によってはヒト又は動物の細胞を含有する。この生物学的試料は、例えば体液、例えば髄液、尿、痰、まばらな若しくは均質化された細胞に成分を持つ生検試料、及び特に血液とも称する全血でもよい。本明細書は生物学的試料を代行するものとして全血に関するものである。
【0015】
この組成物は水性溶液中、
少なくとも1つのグアニジン塩、好ましくはグアニジンチオシアネート、
少なくとも1つの緩衝物質、好ましくは2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、
非イオン性界面活性剤、好ましくはTriton X-100及び
二価カチオンに対する錯化剤、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)
を有するか、又はそれらからなり
及び特に還元剤を含まず、例えばチオール結合、若しくはその前駆体結合を含まず、特にβ-メルカプトエタノール及びジチオトレイトール(DTT)を含まない。
【0016】
この組成物は水性溶液中、
少なくとも1つのグアニジン塩を、例えば1.8から2.6Mまで、好ましくは2.0から2.4Mまで、より好ましくは2.2Mを含有し、
それが血液容量を5.0から8.0までのpH、例えばpH5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9若しくは6.0から7.5、7.6、7.7、7.8、7.9まで、好ましくはpH6.5から7.3までに緩衝する、少なくとも1つの緩衝物質を、例えばMESを少なくとも50mMまで、好ましくは少なくとも70mM、例えば100mMまで、若しくは74mMまでの濃度で、
非イオン性界面活性剤、例えばTriton X-100を10から20%(w/v)まで、好ましくは12から18%(w/v)まで、
二価カチオンに対する錯化剤を、特に例えば50から100mMまで、好ましくは70から80mMまで、より好ましくは約72mMのEDTAを、
例えば血液容量の水性組成物の容量に対する比、1:13若しくは1:3又は1:2まで、好ましくは1:2.6まで、又は1:2.5若しくは1:2.4まで
を有するか、又はそれらからなる。
【0017】
好ましくは、本発明は、生物学的試料、特に全血中に含有される細胞の分解剤としての、生物学的試料の全核酸の安定化剤としての、及び生物学的試料と組成物との混合物から核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するための組成物の使用であって、組成物は水性溶液中、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. pH5.0から8.0までに緩衝するための少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 二価カチオンに対する少なくとも1つの錯化剤を含有し、並びに
e. 還元剤は含まない
使用に関する。
好ましくは組成物は、
a. 少なくとも1つのグアニジン塩、
b. 少なくとも1つの緩衝物質、
c. 少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、及び
d. 少なくとも1つの錯化剤、
並びに場合によってはプロテイナーゼ及び/又はDNaseの
水性溶液からなる。
【0018】
この組成物は、全血中に含有される細胞の分解剤として、その中に含有される全核酸の安定化剤として、及び生物学的試料と組成物との混合物から核酸用吸着剤に核酸を吸着により単離するために使用される。
【0019】
緩衝物質は例えばトリス(トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン)、クエン酸塩若しくはリン酸塩(リン酸水素二ナトリウム)二水和物又はリン酸塩-(リン酸水素ナトリウム)二水和物、ビス-トリス緩衝液(ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ-トリス-(ヒドロキシメチル)-メタン)、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、炭化水素ナトリウム、好ましくは2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)から選択される。
【0020】
非イオン性界面活性剤は例えばTween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Nonidet P40(4-ノニルフェノール-ポリエチレングリコール)、Tween 80(オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Brij 58(ポリエチレングリコール-ヘキサデシルエーテル)、Triton X-114(オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル)、好ましくはTriton X-100(ポリエチレングリコール-p-(1.1.3.3-テトラメチルブチル)フェニル-エーテル)から選択される。
【0021】
この組成物は、全血中に含有されるヒトの細胞を分解し、また全血からの全核酸、特にRNAを安定化し、その際に全血及び組成物が可変な容量比で存在可能であるという利点を持つ。したがって、組成物を含有する採血管は、可変な血液容量を吸引できるように設定できる、例えば採血管は、血液を1:13若しくは1:3、好ましくは1:2まで、又は1:2.6までの組成物に対する容量比で吸引できるように設定できる。可変な血液容量の吸引のために、その中に組成物を含有する採血管は、例えば手動で管から引き出すことができるピストンを備えている。
【0022】
この組成物は、全血からの核酸、特にRNAを安定化及び単離するために、全血と組成物の混合物から核酸を沈殿させる必要はないということが特徴である。好ましくはそれゆえに本発明による方法は、核酸、特にRNAの吸着剤への結合前に、核酸、特にRNAの沈殿の工程を含まず、すなわち沈殿した核酸の分離のための遠心分離の工程を含むことなく、全血と組成物の混合物から核酸、特にRNAの単離を示す。
【0023】
本発明では、好ましくは、全血と組成物の混合物からの全RNAは、全血と組成物の混合物が、場合によってはプロテイナーゼ、例えばプロテイナーゼKの添加後、及び例えば室温で約15分の培養後、場合によってはプロテイナーゼの添加前若しくは添加後にDNaseを添加し、
核酸用吸着剤と接触させられ、
その場合に、場合によっては添加されたプロテイナーゼ及び/又はDNaseも含めて、この混合物からは吸着剤との接触前に含有物質は分離されず、
続いて吸着剤に結合されなかった物質が、例えば吸着剤の洗浄によって除去され、
及び、例えば吸着剤と、吸着剤に結合されていた核酸を溶解する、一つのpH値、アルコール成分及び/又はイオン濃度を持つ水性緩衝剤との接触によって、この吸着剤に結合した核酸が溶離されることで単離される。
【0024】
全血と組成物の混合物は、混合物の生成後完全にまた時間的に直ちに核酸用吸着剤と接触させられる。その結果、核酸、特にRNAの単離の方法は、混合物の吸着剤との接触前に、沈殿させるための培養及び遠心分離を必要とせず、また更なる物質の添加も必要としないため、容易に迅速に実施し得るという利点が生じる。
【0025】
全血と、場合によっては添加されたプロテイナーゼを含有する組成物の混合物が接触した後、場合によってはDNaseの添加が可能であり、その結果DNAは消化され、基本的にRNAが単離される。
【0026】
この核酸用吸着剤、例えばシリカ表面、特にシリカ(ゲル)膜、シリカ(ゲル)懸濁液又はシリカコーティングされた磁性粒子は、例えばPreAnalytiX社の製品名PAXgene、Macherey-Nagel社の製品名NucleoSpin、Roche社の製品名mRNA Isolation Kit for Blood/Bone Marrow若しくは製品名High Pure Viral Nucleic Acid Large Volume Kitとして、核酸の単離のために入手可能である。
【0027】
この吸着剤がシリカコーティングされた粒子、好ましくは磁性粒子からなる場合、有効容量内において、全血と組成物の混合物への希釈液の添加が好ましい。この希釈液は例えばRoche社から入手可能である、DNA/RNA-Stabilization Reagent for Blood/Bone marrow(Roche社製品番号11934317001)、若しくはそれぞれ場合によっては30v/v%までのエタノール、好ましくは10から30v/v%までのエタノール、例えば20v/v%のエタノール成分を持つ本発明の組成物でもよい。有効な容量は、RNAが基本的に少なくとも総量の80%まで、好ましくは基本的に完全に、シリカコーティングされた粒子上に吸着される容量として決定し得る。その量の希釈液が全血と組成物の混合物に加えられる、有効な容量は、好ましくは混合物の容量の50から150%、例えば80から120%、好ましくは混合物の容量の100%であり、好ましくは磁性粒子であるところの、シリカコーティングされた粒子を混合物中へ混合する前に、又はその後に添加される。特にこの実施形態では、混合物へプロテイナーゼを添加することが好ましい。
【0028】
シリカコーティングされた粒子は例えばChemagen社又はApplied Biosystems社(RNA binding beads、製品番号100191)のもの、又はRoche社の「mRNA Isolation Kit for Blood/Bone Marrow、製品番号11934333001」でもよく、又はHai N.H.、Phu N.D.、Luong N.H.、Chau N.、Chinh H.D.、Hoang L.H.、Leslie-Pelecky D.L.(2008) Mechanism for Sustainable Magnetic Nanoparticles under Ambient Conditions、Journal of the Korean Physical Society.52(5)、1327~1331頁又はQuy D.V.、Hieu N.M.、Tra P.T.、Nam N.H.、Hai N.H.、Son N.T.、Nghia P.T.、Anh N.T.V.、Hong T.T.、Luong N.H.(2013) Synthesis of Silica-Coated Magnetic Nanoparticles and Application in the Detection of Pathogenic Viruses、Journal of Nanomaterials、DOI:10.1155/2013/603940によるものでもよい。
【0029】
好ましくはシリカコーティングされた磁性粒子である、シリカコーティングされた粒子からなる吸着剤の場合も、全血と組成物の完全な混合物は、添加された希釈液を伴って吸着剤と接触させられ、すなわち直接に又は完全に又は混合物の成分を予め分離せずに接触させられる。
【0030】
本発明では、全血と組成物の混合物から含有物質、又は画分は分離されず、特に沈殿した含有物質の分離のためのこの混合物の遠心分離、例えば沈殿した核酸の遠心分離による分離と、その後の液相の分離及び核酸の溶解が必要でないことから、完全な混合物は直接吸着剤と接触させ得る。これは目下、この組成物が全血との混合物中で核酸、特にRNAを沈殿させないことに由来する。この組成物は、更に全血と組成物の、場合によっては添加されたプロテイナーゼ及び/又はDNaseを伴う混合物が、更なる処理工程又は添加物を含まずに、吸着剤に核酸を結合するために、核酸用吸着剤、特にシリカ表面と接触させ得るという利点を持つ。それゆえにこの組成物は、吸着剤と接触する前に核酸を含有する画分の分離が実施されない、例えばその後の溶解を伴った遠心分離を用いる沈殿を経ない、核酸の単離のための方法を可能にする。
【0031】
この組成物は、例えば貯蔵の場合に少なくとも3日間、好ましくは少なくとも5日間、例えば、特に冷凍をせずに、例えば22.5℃までの室温においての例えば少なくとも0℃での貯蔵の場合に4日間まで、全血と組成物との混合物中の核酸、特にRNAを安定化する。相応にこの方法は、例えば冷凍をせずに、又は少なくとも0℃で、例えば15から25℃までにおいて、特に22.5℃までの貯蔵後に、混合物からの核酸、特にRNAの単離を提示している。代替として又は付加的に、この混合物は貯蔵のために、-40℃又はそれより低い温度での冷凍が可能である。
【0032】
ここで、本発明を実施例に基づき図を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】さまざまな容量の比での、本発明の組成物との混合物中の全血から単離されたRNAの完全性を示す図である。
【
図2】さまざまな容量の比での、本発明の組成物との混合物中の全血から単離されたRNAの濃度を示す図である。
【
図3】WO 00/09746による安定剤内での貯蔵後に対する、本発明の組成物内での貯蔵後の、全血試料(Sp.1、献血者第1号及びSp.2、献血者第2号)からのRNAの完全性の比較を示す図である。
【
図4】WO 00/09746による安定剤内での貯蔵後に対する、本発明の組成物内での貯蔵後の、全血試料(Sp.1、献血者1番及びSp.2、献血者2番)からのRNAの完全性の比較を示す図である。
【
図5】本発明の組成物との混合物中の全血から単離された、全RNA内の様々なmRNAの濃度のクラスタ分析を示す図である。
【
図6】貯蔵に左右された発現の差を示すための相関マトリックスを示す図である。
【
図7】5日間にわたって本発明の組成物との混合物中で全血を貯蔵した後に単離された、2人の献血者の試料内の、RT-PCRを用いて決定されたmRNAの相対的量を示す図である。
【
図8】5日間にわたって本発明の組成物との混合物中で全血を貯蔵した後に単離された、2人の献血者の試料内の、RT-PCRを用いて決定されたmRNAの相対的量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の組成物は、その中に血液が吸引される採血管内に、水性溶液として入れられている。この採血管は直接血液を採取するために使われる。代替としてこの組成物は、好ましくはその直前に採取された全血試料に由来する全血と混合し得る。血液試料からの細胞の分解、及び核酸、特にRNAの安定化は一般的に血液試料を組成物と混合することで実施される。
【実施例1】
【0035】
全血からのRNAの単離
本発明の組成物として水性溶液が使用され、それは水中の2.2Mのグアニジンチオシアネート、72mMのMES、14.4%(w/v)のTriton X-100及び72mMのEDTAから構成されている。この組成物から6.5mLが従来の採血管内に含有され、その中に直前に採取された血液が吸引されたが、その血液は更なる加工はされておらず、添加物も含有しなかった。この全血は容量0.5mL、1.0mL、1.5mL、2.0mL及び2.5mLがそれぞれ1つの採血管内に吸引された。混合は血液容量の吸引によって、場合によっては、特に気泡を吸引した後では更に振ることによって実施される。
【0036】
この組成物と全血からの混合物をプロテイナーゼK(250μL、18μg/mL)に添加した。混合物は約15分間室温で培養された。続いてこの混合物は核酸用吸着剤(High Pure Viral Nucleic Acid Large Volume Kit、Roche社から入手可能)を持つカラムを完全に通過させられた。この吸着剤は製造元の指示に従って洗浄バッファで洗浄され、結合した核酸は続いて100μLの溶離バッファで溶離された。
【0037】
溶離されたRNAの品質はRNA Nano Chipsystem(Agilent Technologies社、米国)内での電気泳動を使い、探知にAgilent 2100 Bioanalyser用いて評価されたが、その際にBioanalyzer 2100を使っての分析中に算出されるいわゆるRIN(RNA Integrity Number)がRNA完全性の尺度として示された。
図1は全血の組成物(RNA Exact)に対する様々な容量比に対しての分析の結果を示し、RNA完全性が容量比には比例せず、又はこの組成物が全血との様々な容量比に対してRNAを同じ品質で安定化、及びRNAを混合物から単離させることができることを示す。
【0038】
図2は溶離液内で測定された、様々な容量比に対して単離されたRNA濃度を示す。この結果は血液容量に比例して上昇する、100μL溶離液中のRNA濃度を示し、この組成物(RNA Exact)はRNAを様々な容量比に対して同じ規模で安定化し、及びそれから同じ規模で単離させることを示す。これはこの組成物が、様々な容量比において、全血中の細胞の溶解及び全血中の核酸の安定化に適していることを示す。
【実施例2】
【0039】
本発明の組成物と比較溶液との安定化能力の比較
組成物と全血の混合物を生成するために、本発明の組成物(RNA Exact)として実施例1がそれぞれ6.5mL使用され、直前に直接採取された、他の別の添加物質を含有しない血液2.5mLと混合された。比較対象としては、水中の4.0Mのグアニジンチオシアネート、45mMのトリス/HCl、18.0%(w/v)のTriton X-100及び0.8%(w/v)のDTTから構成されていて、pH値6.0に調整された溶液が使用された(対応するWO 00/09746 A1と比較)。比較溶液2.5mlがWO 00/09746 A1に記載されているように(比1+1)、同じく2.5mlの、直前に直接採取された血液試料と混合された。この混合物は22.5℃で保存され、Macherey-Nagel社のNucleoSpin RNA Blood Midi Kitを用いてRNAが混合物から単離された。この比較溶液中にMacherey-Nagel社のプロトコルに設定されているように、70%エタノールが容量の1/3添加された。これは本発明の組成物との混合物に対しては不必要である。
図3及び
図4はRNA Nano-Chip上のこの溶離液をBioanalyzer2100で電気泳動的分離した結果を示す。本発明の組成物と試料との混合物からは3日後及び5日後もRNAを高い完全性で単離可能である一方で、比較溶液の使用下では0日目、すなわち血液との混合の直後でのみそれが可能である。
【実施例3】
【0040】
全血からのRNAの安定化及び単離
組成物と全血の混合物を生成するために、本発明の組成物として実施例1がそれぞれ6.5mL使用され、直前に直接採取された、他の別の添加物質を含有しない血液2.5mLと混合された。比較のために、凝固を抑制するためのEDTAを含有する採血管内に血液が吸引された(S-Monovetten EDTA-K3、Sarstedt社から入手可能)。血液はそれぞれ3人の異なった献血者からであった。
【0041】
本発明の混合物及び比較試料は22.5℃で培養され、その際に一定分量が、直ちに(T0、0日)、培養1日後(T1)及び培養3日後(T3)に採取された。採取された一定分量から、実施例1に記載のように、直接、直ちに核酸が単離された。
【0042】
溶離された核酸は、DNAを除去するためにDNase(Thermo Fisher Scientific社、製品番号EN0521)で処理され、またマイクロアレイ解析方法で約47000の転写産物(mRNA)の濃度が検査された(Agilent社のhumanHT-12 v4.0 Expression Bead Chip)。評価では、同一のRNA総量において、係数2以上の転写産物量の差が示された。それゆえに
図5ではマトリックス内の同じ明るさは匹敵する転写産物量を示す。
図5はそれぞれ献血者1、2及び3に対して、記載された時点での、試料群、「安定」(本発明の組成物)、「非処理」(EDTAのみ添加)及び「T0」(無添加、採血後直ちに単離)の転写産物量を示す。
【0043】
【0044】
【0045】
であり、この場合EDTA比較試料は「K」で標識付けられている。
【0046】
図5に示されている、例示的に選択された199の転写産物のこのクラスタ分析は、本発明の組成物(安定)と混合された血液試料は、1人の献血者に対して培養中のさまざまな時点においてそれぞれ転写産物の匹敵するパターンを示し、一方でEDTAのみが添加された比較試料(非処理)では培養中のさまざまな時点において、それぞれの献血者内で大きな差を示したが、これはT0に対して時間経過よる転写産物の量の変化を示唆するということを明確にする。
【0047】
EDTAのみが添加された血液試料では、3日目には0日目に対して濃縮物中に768の転写産物の差が見出され、それに対して本発明の組成物が添加された試料では、それぞれの献血者内では、T0と比較した後の時点で分析された試料の濃縮物内の個人的なRNAの差は基本的にごく僅かであったか差が認められなかった(
図6の相関マトリックスを参照、比較試料=K、それぞれの時点KT0、KT1、KT3、本発明の組成物T0、T1、T3)。
【0048】
この結果は、組成物と混合された血液試料の一定分量内の転写産物の、それぞれの献血者において3日間という期間に渡る恒常的な量から、本発明のこの組成物は全血からの個々のRNA分子を培養にわたって安定化させ、またこの組成物が例えばEDTA比較試料との比較においてmRNAの退化及び/又は誘導を、有意に低減することを示す。
【実施例4】
【0049】
全血からのRNAを基礎とした、逆転写とPCR
2人の異なった献血者からの全血から、それぞれ2.5mLが採取後直接、水中の2.2Mのグアニジンチオシアネート、72mMのMES、14.4%(w/v)のTriton X-100及び72mMのEDTAからなる本発明の組成物6.5mLに添加され22.5℃で培養された。この混合物から、直ちに(T0)及び3日後(T3)、4日後(T4)及び5日後(T5)にそれぞれ一定分量が採取され、-80℃で冷凍された。続いて全ての試料が並行して解凍され、核酸吸着剤(NucleoSpin RNA Blood、Macherey-Nagel社)に与えられた。吸着剤は製造元の指示に従って洗浄され、核酸が溶離された。溶離液にはDNase(DNase I、DNaseフリー、製品番号EN0521、Thermo Fisher Scientific社)が添加された。cDNAを得るために、このRNAは「first strand cDNA synthesis kit」(製品番号K1612、Thermo Fisher Scientific社)で逆転写された。この生成物は、β-アクチン、GAPDH、IL-8、c-Fos、IL-1B及びTNF-αに対する遺伝子の核酸配列に特有であるプライマーで、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用い、Maxima SYBR Green/ROX qPCR Master Mix(製品番号#K0222、Thermo Fisher Scientific社)の使用下で、ダブルアプローチとして増幅され、定量化された。
【0050】
評価のためにcDNAに対してβ-アクチン及びGAPDHから得られるCt値が内部標準として使用され、またそれからIL-8、c-Fos、IL-1B及びTNF-αに対して測定されたCt値が標準化された。T3、T4及びT5の場合の、この相対的なIL-8、c-Fos、IL-1B及びTNF-αに対するcDNAの濃度は、付加的にそのそれぞれのT0の場合の濃度に関連付けられた。その結果はddCtと呼ばれ、
図7に1人の献血者の血液に対して、
図8に別の献血者の血液について示されている。2つの試料の結果は、本発明の組成物が全血内の特定に検出された細胞性のmRNAの相対的濃度を22.5℃での培養期間を越えて安定して維持するということを明確にする。