(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】コンテンツ配信ネットワークの転送装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/437 20110101AFI20220222BHJP
H04N 21/435 20110101ALI20220222BHJP
H04L 67/10 20220101ALI20220222BHJP
【FI】
H04N21/437
H04N21/435
H04L67/10
(21)【出願番号】P 2019013263
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2020-11-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立開発研究法人情報通信研究機構「欧州との連携による情報指向ネットワーキングに関する実証的研究開発」副題「革新的なアプリケーションとグローバルな実証によるICNの深化」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】植田 一暁
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
【審査官】鈴木 順三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0199075(US,A1)
【文献】特表2014-511519(JP,A)
【文献】特開2015-170323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
G06F 13/00
H04L 51/00 - 51/58
H04L 67/00 - 67/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツをオブジェクトに分割して配信するコンテンツ配信ネットワークの転送装置であって、
コンテンツを構成する複数のオブジェクトと、当該複数のオブジェクトの順序と、を示すマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報が処理対象であるか否かを判定する判定手段と、
前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記マニフェスト情報が示す前記複数のオブジェクトのうち、前記マニフェスト情報が示す前記順序において1番目からM番目(Mは2以上の整数)までのオブジェクトを要求する要求パケットを生成して送信する生成手段と、
を備え
、
前記生成手段は、連続送信可能数N(Nは、1<N<Mを満たす整数)を示す情報を保持しており、前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記1番目から前記M番目までのオブジェクトを要求する第1要求パケットから第M要求パケットを前記マニフェスト情報が示す前記順序に従いK回に分けて送信し、
前記KはMをNで除した値の小数点以下を切り上げた値であり、
前記生成手段は、k(kは1~K-1までの整数)回目に送信した総ての要求パケットで要求したオブジェクトを総て受信すると、(k+1)回目の要求パケットの送信を行うことを特徴とする転送装置。
【請求項2】
コンテンツをオブジェクトに分割して配信するコンテンツ配信ネットワークの転送装置であって、
コンテンツを構成する複数のオブジェクトと、当該複数のオブジェクトの順序と、を示すマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報が処理対象であるか否かを判定する判定手段と、
前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記マニフェスト情報が示す前記複数のオブジェクトのいずれかを要求する第1要求パケットの受信を監視し、前記第1要求パケットを受信すると、前記マニフェスト情報が示す前記順序において、前記第1要求パケットが要求するX番目のオブジェクトの次の(X+1)番目のオブジェクトから所定個数のオブジェクトを要求する要求パケットを生成して送信する生成手段と、
を備えていることを特徴とする転送装置。
【請求項3】
コンテンツをオブジェクトに分割して配信するコンテンツ配信ネットワークの転送装置であって、
コンテンツを構成する複数のオブジェクトと、当該複数のオブジェクトの順序と、を示すマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報が処理対象であるか否かを判定する判定手段と、
前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記マニフェスト情報が示す前記複数のオブジェクトのうち、前記マニフェスト情報が示す前記順序においてM番目より小さい順序のオブジェクトを要求する第1要求パケットの受信を監視し、前記第1要求パケットを受信すると、前記マニフェスト情報が示す前記順序において、前記第1要求パケットが要求するX番目(X<M)のオブジェクトの次の(X+1)番目のオブジェクトから前記M番目までのオブジェクトを要求する要求パケットを生成して送信する生成手段と、
を備えていることを特徴とする転送装置。
【請求項4】
前記生成手段は、連続送信可能数N(Nは、1<N<Mを満たす整数)を示す情報を保持しており、前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記(X+1)番目から前記M番目までのオブジェクトを要求する要求パケットを前記マニフェスト情報が示す前記順序に従いK回に分けて送信し、
前記Kは(M-X)をNで除した値の小数点以下を切り上げた値であり、
前記生成手段は、k(kは1~K-1までの整数)回目に送信した総ての要求パケットで要求したオブジェクトを総て受信すると、(k+1)回目の要求パケットの送信を行うことを特徴とする請求項
3に記載の転送装置。
【請求項5】
前記転送装置は、複数のインタフェースを有し、
前記判定手段は、前記マニフェスト情報を受信したインタフェースが前記複数のインタフェースのうちの所定のインタフェースであると、前記マニフェスト情報が処理対象であると判定することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記マニフェスト情報の名前に基づき判定される、前記マニフェスト情報を公開しているサーバ装置の設置場所が所定の設置場所であると、前記マニフェスト情報が処理対象であると判定することを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の転送装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツを1つ以上のオブジェクトに分割して配信するコンテンツ配信ネットワークの転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテンツを示す名前に基づきコンテンツの配信を行うネットワークが提案されている。特許文献1及び非特許文献1は、その様なネットワークの1つであるコンテンツ・セントリック・ネットワーク(CCN:Content Centric Networking)を開示している。
【0003】
CCNにおいて、コンテンツを公開するサーバ装置は、当該コンテンツを1つ以上のチャンクと呼ばれるオブジェクトに分割し、クライアント装置は、この分割されたオブジェクト単位でコンテンツを取得する。また、CCNにおいて、オブジェクトの転送を行った通信装置(以下、転送装置と呼ぶ。)は、当該オブジェクトを保持(キャッシュ)できる。この転送装置は、自装置がキャッシュしているオブジェクトを要求するインタレスト・パケット(要求パケット)をクライアント装置から受信すると、当該インタレスト・パケットをサーバ装置に向けて転送することなく、自装置が保持するオブジェクトを含むデータ・パケットを、当該インタレスト・パケットの送信元のクライアント装置に向けて送信できる。
【0004】
以下に、転送装置の動作の一例を説明する。転送装置は、CS(Contents Store)と、FIB(Forwarding Information Base)と、PIT(PIT:Pending Interest Table)を管理する。CSは、自装置がキャッシュしているオブジェクトを示す情報である。FIBは、インタレスト・パケットと、当該インタレスト・パケットを転送すべきインタフェースとの関係を示す情報である。PITは、転送したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトと、当該転送したインタレスト・パケットを受信したインタフェースとの関係を示す情報である。
【0005】
転送装置は、インタレスト・パケットを受信すると、CSを検索し、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトをキャッシュしているか否かを判定する。キャッシュしている場合には、自装置がキャッシュしているオブジェクトを含むデータ・パケットを、当該インタレスト・パケットの送信元のクライアント装置に向けて送信する。一方、受信したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトをキャッシュしていない場合、転送装置は、PITを検索して、当該インタレスト・パケットと同じオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを既に転送し、当該オブジェクトの受信待ちの状態であるかを判定する。受信待ちの状態であると、転送装置は、受信したインタレスト・パケットを転送せず、当該インタレスト・パケットの受信インタフェースを、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトに関連付ける様にしてPITを更新する。一方、受信したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトの受信待ちでない場合、転送装置は、FIBに基づき判定したインタフェースから当該インタレスト・パケットを転送すると共にPITを更新する。また、転送装置は、オブジェクトを含むデータ・パケットを受信すると、当該データ・パケットの転送先インタフェースをPIT及び当該データ・パケットに含まれるオブジェクトに基づき判定し、判定したインタフェースから当該データ・パケットを送信すると共に、当該オブジェクトに関する情報をPITから削除する。また、転送装置は、転送したデータ・パケットに含まれるオブジェクトをキャッシュするとCSを更新する。
【0006】
CCNにおいて、クライアント装置は、オブジェクトを示すインタレスト・パケットを送信し、その応答として、当該オブジェクトを取得する。したがってコンテンツを取得するためには、多数のインタレスト・パケットを送信することになるが、これは、コンテンツ配信ネットワークの輻輳の原因となる。このため、非特許文献2及び3は、CCNにおける輻輳制御方法を開示している。
【0007】
また、非特許文献4及び5は、CCNにおけるコンテンツのマニフェスト情報を開示している。コンテンンツのマニフェスト情報は、当該コンテンツを構成する各オブジェクトの名前と、オブジェクトの時間順序(取得順序)と、を示す情報を含んでいる。クライアント装置は、コンテンツを取得する前に、当該コンテンツのマニフェスト情報を取得することで、当該コンテンツを構成する各オブジェクトのオブジェクト名と、各オブジェクトをどの様な順序で取得すべきかを認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】V.Jacobson,et al.,"Networking Named Content",in Proceedings of ACM CoNEXT 2009,2009年12月
【文献】Schneider,Klaus,et al.,"A practical congestion control scheme for named data networking",ACM ICN,2016年
【文献】Carofiglio,Giovanna,et al.,"Optimal multipath congestion control and request forwarding in information-centric networks:Protocol design and experimentation",Computer Networks 110(2016):104-117,2016年
【文献】J.Kurihara,et al.,"An encryption-based access control framework for content-centric networking",Proc.IFIP Networking 2015,pp.1-9,Toulouse,France,2015年10月
【文献】C.Tschudin and C.A.Wood,"File-Like ICN Collection (FLIC)",Internet-Draft draft-tschudin-icnrg-flic-03,Internet Engineering Task Force,2017年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2及び3に記載の構成は、クライアント装置が送信できるインタレスト・パケットの数(以下、ウィンドウ・サイズ)を、受信したデータ・パケットに基づき制御するものである。具体的には、クライアント装置は、送信したインタレスト・パケットに対するデータ・パケットを所定期間内に受信するとウィンドウ・サイズを増加させ、所定期間内に受信しないとウィンドウ・サイズを減少させる。しかしながら、クライアント装置からオブジェクトを保持しているサーバ装置又は転送装置までの遅延量が大きいと、コンテンツ配信ネットワークのトラフィック量が少なくても、クライアント装置が当該トラフィック量において適切な大きさにまでウィンドウ・サイズを増加させるのに必要な時間が長くなり、コンテンツのダウンロードに要する時間が増加する。
【0011】
本発明は、コンテンツのダウンロードに要する時間を短縮させる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、コンテンツをオブジェクトに分割して配信するコンテンツ配信ネットワークの転送装置は、コンテンツを構成する複数のオブジェクトと、当該複数のオブジェクトの順序と、を示すマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報が処理対象であるか否かを判定する判定手段と、前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記マニフェスト情報が示す前記複数のオブジェクトのうち、前記マニフェスト情報が示す前記順序において1番目からM番目(Mは2以上の整数)までのオブジェクトを要求する要求パケットを生成して送信する生成手段と、を備え、前記生成手段は、連続送信可能数N(Nは、1<N<Mを満たす整数)を示す情報を保持しており、前記マニフェスト情報が処理対象であると、前記1番目から前記M番目までのオブジェクトを要求する第1要求パケットから第M要求パケットを前記マニフェスト情報が示す前記順序に従いK回に分けて送信し、前記KはMをNで除した値の小数点以下を切り上げた値であり、前記生成手段は、k(kは1~K-1までの整数)回目に送信した総ての要求パケットで要求したオブジェクトを総て受信すると、(k+1)回目の要求パケットの送信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、コンテンツのダウンロードに要する時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態によるコンテンツ配信ネットワークの構成図。
【
図3】一実施形態によるインタレスト生成部における処理のフローチャート。
【
図4】一実施形態によるインタレスト生成部における処理のフローチャート。
【
図5】一実施形態によるインタレスト生成部における処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態によるコンテンツ配信ネットワークの構成図である。以下では、コンテンツ配信ネットワークが、CCNであるものとして本実施形態の説明を行う。しかしながら、コンテンツを分割し、分割したコンテンツの断片を単位としてコンテンツの配信が行われ、コンテンツの断片を転送した転送装置が当該断片をキャッシュできる任意のコンテンツ配信ネットワークに本発明を適用することができる。なお、この断片を以下の実施形態ではオブジェクトと呼ぶが、コンテンツの断片には様々な名前が使用され得る。
【0017】
図1に示す様に、コンテンツ配信ネットワークは、コンテンツを公開するサーバ装置3と、CCNに従いコンテンツを取得するクライアント装置11及び12と、境界転送装置2と、を備えている。クライアント装置11及び12、並びに、境界転送装置2は、上述したCCNの通常の転送装置で構成される、ローカルネットワーク4に接続されている。
図1において、クライアント装置11及び12、境界転送装置2並びにローカルネットワーク4は、日本国内に設けられている。一方、サーバ装置3は国外、本実施形態ではイギリスに設けられている。なお、境界転送装置2とサーバ装置3とは、通常の転送装置や本実施形態による境界転送装置2で構成されるグローバルネットワークを介して通信可能な様に構成されている。また、コンテンツ配信ネットワークは、日本国内に設けられたサーバ装置も有するが、本実施形態の説明には関係ないため省略している。また、コンテンツ配信ネットワークは、サーバ装置3以外にも、日本以外の様々な国に設置されたサーバ装置を有するが、説明の簡略化のために省略している。
【0018】
境界転送装置2は、インタフェース#1及び#2を含む、複数のインタフェースを有する。本実施形態において、インタフェース#1は、グローバルネットワークに接続され、インタフェース#2は、ローカルネットワーク4に接続されている。
【0019】
本実施形態において、日本国内に設置されたクライアント装置11及び12等のクライアント装置が、日本以外の国に設置されたサーバ装置3等のサーバ装置が公開するコンテンツを取得する際、日本国内のクライアント装置が送信するインタレスト・パケットは、境界転送装置2に転送される様に、ローカルネットワーク4の転送装置のFIBは設定されている。なお、本実施形態においては、説明の簡略化のため、1つの境界転送装置2のみが日本に設置されているものとするが、複数の境界転送装置2を日本に設置する構成とすることもできる。例えば、東京及び大阪に境界転送装置2を設置し、サーバ装置3が公開するコンテンツを要求するインタレスト・パケットのうち、東日本のクライアント装置が送信したインタレスト・パケットについては東京に設置された境界転送装置2に転送され、西日本のクライアント装置が送信したインタレスト・パケットについては大阪に設置された境界転送装置2に転送される様に、ローカルネットワーク4の各転送装置のFIBを設定する構成とすることもできる。
【0020】
クライアント装置11及び12は、ウィンドウ・サイズWを管理している。ウィンドウ・サイズWは、データ・パケットを受信することなく、連続して送信できるインタレスト・パケットの上限値を規定する。つまり、例えば、ウィンドウ・サイズW=4であると、クライアント装置11及び12は、4つのインタレスト・パケットまで連続して送信することができる。当該4つのインタレスト・パケットの送信後、いずれか1つのインタレスト・パケットの応答として、1つのデータ・パケットを受信すると、クライアント装置11及び12は、1つの新たなインタレスト・パケットを送信することができる。
【0021】
また、クライアント装置11及び12は、送信したインタレスト・パケットの応答として所定期間内にデータ・パケットを受信したか否かに応じてウィンドウ・サイズWを増減させる。例えば、ウィンドウ・サイズWの初期値を4とする。この場合、クライアント装置11及び12は、4つのインタレスト・パケットを送信した後、その総てに対するデータ・パケットを所定期間内に受信すると、ウィンドウ・サイズWを倍の8にする。一方、クライアント装置11及び12は、送信したインタレスト・パケットの少なくとも1つの応答を所定期間内に受信しないと、ウィンドウ・サイズWを半分にする。この様に、ウィンドウ・サイズWを段階的に徐々に増加させることで、コンテンツ配信ネットワークのトラフィック状況に応じて適切に送信するインタレスト・パケットの量を制御することができる。なお、ウィンドウ・サイズWの制御方法は、上述した方法以外にも様々な方法があるが、クライアント装置11及び12におけるウィンドウ・サイズの制御方法の具体的な内容に拘わらず、本発明を適用することができる。
【0022】
以下、クライアント装置11がサーバ装置3からあるコンテンツ(以下、対象コンテンツと呼ぶ。)を取得する場合を例にして、本実施形態の説明を行う。なお、対象コンテンツのコンテンツ名を"/uk/aaa/target"とする。また、以下の例において、対象コンテンツのマニフェスト情報のオブジェクト名を、"/uk/aaa/target/manifest"とする。
【0023】
なお、クライアント装置11からサーバ装置3までの間の総ての転送装置(境界転送装置2を含む)において、対象コンテンツのマニフェスト情報及びオブジェクトはキャッシュされていないものとする。つまり、クライアント装置11が送信する、対象コンテンツのマニフェスト情報及びオブジェクトを要求する総てのインタレスト・パケットは、サーバ装置3まで転送され、対象コンテンツのマニフェスト情報及び総てのオブジェクトが、サーバ装置3から配信されるものとする。また、クライアント装置11からサーバ装置3までの総てのリンクの物理回線は十分に大きく、かつ、クライアント装置11からサーバ装置3までの総てのリンクのトラフィック量は十分に小さいものとする。
【0024】
クライアント装置11は、対象コンテンツのオブジェクト名と、その取得順序を認識するため、まず、対象コンテンツのマニフェスト情報を取得する。したがって、クライアント装置11は、まず、"/uk/aaa/target/manifest"を要求するインタレスト・パケットを送信する。このインタレスト・パケットは、境界転送装置2のインタフェース#2で受信される。
【0025】
図2は、境界転送装置2の構成図である。処理部22は、インタフェース#1及び#2を含む複数のインタフェースを有している。なお、境界転送装置2には、伝送遅延の大きい通信リンクに接続するインタフェースを特定する情報が設定されている。本実施形態において、伝送遅延の大きいリンクに接続するインタフェースは、インタフェース#1である。
【0026】
処理部22は、基本的には、通常の転送装置と同じ動作を行う。つまり、処理部22は、FIB、PIT、CSを管理し、インタレスト・パケット及びデータ・パケットの転送を行う。また、データ・パケットを受信して転送した場合、当該データ・パケットが格納するオブジェクトを、所定の基準に従いキャッシュする。したがって、処理部22は、インタフェース#2で受信した、"/uk/aaa/target/manifest"を要求するインタレスト・パケットをインタフェース#1から転送し、"/uk/aaa/target/manifest"とインタフェース#2との関係をPITに追加する。その後、インタフェース#1で、その名前が"/uk/aaa/target/manifest"である対象コンテンツのマニフェスト情報を含むデータ・パケットを受信すると、処理部22は、PITに従い、当該データ・パケットをインタフェース#1に転送する。これにより、クライアント装置11は、対象コンテンツのマニフェスト情報を取得する。
【0027】
本実施形態において、処理部22は、伝送遅延の大きいリンクに接続するインタフェース#1からマニフェスト情報を含むデータ・パケットを受信すると、当該マニフェスト情報を、インタレスト生成部21による処理対象と判定し、当該マニフェスト情報をインタレスト生成部21に出力する。インタレスト生成部21は、マニフェスト情報を受信すると、オブジェクトの先取り処理を開始する。
【0028】
図3は、インタレスト生成部21が実行するオブジェクトの先取り処理のフローチャートである。インタレスト生成部21は、取得する最大順序を示す値Mと、連続送信可能数を示す値Nとを保持している。なお、M及びNは、2以上の整数であり、かつ、M>Nである。インタレスト生成部21は、S10で、カウンタiを1に初期化し、S11で、iが(M-N+1)より小さいかを判定する。iが(M-N+1)より小さいと、インタレスト生成部21は、S12で、マニフェスト情報が示す取得順序においてi番目から(i+N-1)番目までの計N個のオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを生成して、処理部22に出力する。処理部22は、FIBに従い、これらN個のオブジェクトを要求するインタレスト・パケットをインタフェース#1から送信し、その応答として各オブジェクトを受信する。本実施形態において、処理部22は、インタレスト生成部21から入力されたインタレスト・パケットの応答として受信したオブジェクトについてはキャッシュする。また、処理部22は、インタレスト生成部21から入力されたインタレスト・パケットが要求するオブジェクトを総て取得すると、全オブジェクトを受信したことをインタレスト生成部21に通知する。一方、インタレスト生成部21は、N個のオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを処理部22に出力すると、S13で、N個のオブジェクトの受信が処理部22から通知されるまで待機する。N個のオブジェクトの受信が処理部22から通知されると、インタレスト生成部21は、S14で、iをi+Nとし、S11から処理を繰り返す。一方、S11で、iが(M-N+1)以上であると、インタレスト生成部21は、S15で、マニフェスト情報が示す取得順序においてi番目からM番目までのオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを生成して、処理部22に出力する。
【0029】
この様に、オブジェクトの先取り処理は、受信したマニフェスト情報が示す取得順序において、1番目からM番目までのオブジェクトを、その取得順序に従い、N個ずつ予め取得する処理である。例えば、M=300であり、N=80であると、最初のS12において、1番目から80番目までのオブジェクトが要求され、2回目のS12において、81番目から160番目までのオブジェクトが要求され、3回目のS12において、161番目から240番目までのオブジェクトが要求される。なお、3回目のS14において、i=241になる。したがって、4回目のS11において、i=241は、M-N+1=221より大きいため、S15において、241番目から300番目までのオブジェクトが要求される。
【0030】
上記の通り、インタレスト生成部21は、受信したマニフェスト情報が示す取得順序において、1番目からM番目までのオブジェクトを要求する第1インタレスト・パケットから第Mインタレスト・パケットを、当該マニフェスト情報が示す取得順序に従いK回に分けて送信する。ここで、KはMをNで除した値の小数点以下を切り上げた値である。また、インタレスト生成部21は、k(kは1~K-1までの整数)回目に送信した総てのインタレスト・パケットで要求したオブジェクトを総て受信すると、(k+1)回目のインタレスト・パケットの送信を行う。
【0031】
この様に先取り処理を行うことで、クライアント装置11が対象コンテンツのマニフェスト情報を受信して、取得順序に従ってインタレスト・パケットを、そのウィンドウ・サイズWの制限内で送信した際には、境界転送装置2は、既に同じオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを送信し、場合によっては、既に取得してキャッシュしている。したがって、クライアント装置11がインタレスト・パケットを送信してから、当該インタレスト・パケットで要求したオブジェクトを含むデータ・パケットを受信するまでの時間が短くなり、クライアント装置11とサーバ装置3との伝送遅延が大きくても、クライアント装置11は、素早くウィンドウ・サイズWを増加させることができる。よって、コンテンツのダウンロードに要する時間を短縮させることができる。
【0032】
なお、
図3では、1番目からM番目までのオブジェクトを、その取得順序に従い、N個ずつ取得しているが、1番目からM番目までのオブジェクトを要求するM個のインタレスト・パケットを連続して送信する構成であっても良い。
【0033】
また、本実施形態において、処理部22は、予め設定された所定のインタフェースからマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報がインタレスト生成部21による処理対象であると判定していた。しかしながら、マニフェスト情報のオブジェクト名(コンテンツ名)に基づき、インタレスト生成部21によるオブジェクトの先取り処理の処理対象であるか否かを判定する構成とすることもできる。通常、オブジェクト名は、階層構造であり、その階層構造の最上位(又は最下位)は国名又は地域名を示すものとなる。例えば、日本国内のサーバ装置が公開するコンテンツ(オブジェクト)の名前は、日本を示すjpで始まり、イギリスのサーバ装置3が公開するコンテンツ(オブジェクト)の名前は、イギリスを示すukで始まる。したがって、境界転送装置2は、伝送遅延が大きい所定の地域、例えば、外国を示すオブジェクト名のマニフェスト情報を受信すると、当該マニフェスト情報を、インタレスト生成部21によるオブジェクトの先取り処理の処理対象であると判定することができる。なお、インタレスト生成部21によるオブジェクトの先取り処理の処理対象にする地域名は、予め処理部22に設定される。
【0034】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。
図4は、本実施形態において、インタレスト生成部21が実行するオブジェクトの先取り処理のフローチャートである。なお、第一実施形態の先取り処理と同様の処理ステップについては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。インタレスト生成部21は、S20で、処理部22を監視し、処理対象のマニフェスト情報が示す複数オブジェクトのいずれかのオブジェクトを要求するインタレスト・パケット(対象インタレスト・パケット)を処理部22が受信するまで待機する。処理部22が、対象インタレスト・パケットを受信すると、インタレスト生成部21は、S21で、マニフェスト情報が示す、受信した対象インタレスト・パケットが要求するオブジェクトの取得順序XがM以上であるかを判定する。取得順序XがM以上であると、インタレスト生成部21は、オブジェクトの先取り処理を終了する。
【0035】
一方、取得順序XがM未満であると、インタレスト生成部21は、S22で、カウンタiをX+1に設定する。その後の処理は、第一実施形態と同様である。つまり、本実施形態においては、(X+1)番目からM番目までのオブジェクトを先取りする。これにより、クライアント装置11が要求しない、1番目から(X-1)番目までのオブジェクトを要求するインタレスト・パケットの送信を防ぐことができる。
【0036】
なお、本実施形態では、先取り処理において取得する最も遅い順番のオブジェクトはM番目のオブジェクトであった。したがって、M=300で、X=200であると、先取り処理においては、201番目から300番目のオブジェクトが取得されることになる。しかしながら、X+1番目からX+M-1番目までのオブジェクトを先取りする構成であっても良い。つまり、インタレスト生成部21は、S20でX番目のオブジェクトを要求する対象インタレスト・パケットを受信すると、S21の判定を行わず、X+1番目からX+M-1番目までのオブジェクトを先取りする構成であっても良い。
【0037】
また、本実施形態において、インタレスト生成部21は、S20で対象インタレスト・パケットを受信するまで待機するが、この待機を行う待機期間を設けることもできる。つまり、処理対象のマニフェスト情報を受信してから待機期間だけ待機し、待機期間内に対象インタレスト・パケットを受信しないと、インタレスト生成部21は、
図4の処理を終了する構成とすることができる。
【0038】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第二実施形態との相違点を中心に説明する。
図5は、本実施形態において、インタレスト生成部21が実行するオブジェクトの先取り処理のフローチャートである。なお、第二実施形態の先取り処理と同様の処理ステップについては、同じステップ番号を付与してその説明を省略する。インタレスト生成部21は、S12で、i番目から(i+N-1)番目までのオブジェクトを要求するN個のインタレスト・パケットを送信すると、S30で、再度、対象インタレスト・パケットを受信するまで、待機期間だけ待機する。なお、図の簡略化のため、
図5のフローチャートには示していないが、S30において所定の待機期間だけ待機すると、インタレスト生成部21は、
図5の処理を終了する。待機期間内に対象インタレスト・パケットを受信すると、インタレスト生成部21は、S21から処理を再開する。なお、このときのS21の処理におけるXは、S30で受信した対象インタレスト・パケットが要求するオブジェクトの順序である。
【0039】
例えば、M=300、N=80であり、S20で、3番目のオブジェクトを要求する対象インタレスト・パケットを受信すると、S12において、4番目~83番目までのオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを、インタレスト生成部21は生成して出力する。その後、S30で、150番目のオブジェクトを要求する対象インタレスト・パケットを受信すると、S12において、151番目~230番目までのオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを、インタレスト生成部21は生成して出力する。第二実施形態では、S20でX番目のオブジェクトを要求する対象インタレスト・パケットを受信すると、インタレスト生成部21は、X番目からM番目までのオブジェクトそれぞれを要求するインタレスト・パケットを、N個ずつ生成していた。本実施形態において、インタレスト生成部21は、S20でX番目のオブジェクトを要求する対象インタレスト・パケットを受信したとしても、X番目からM番目までのオブジェクトの総てを要求せず、要求するオブジェクトを、対象インタレスト・パケットを受信する度に判定する。したがって、第二実施形態と比較して、先取り処理で送信するインタレスト・パケットの数を抑えることができる。
【0040】
なお、本発明による境界転送装置2は、コンピュータを上記境界転送装置2として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0041】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
21:インタレスト生成部、22:処理部