(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】傾斜地の崩壊防止補強体および補強材の挿入方法並びに傾斜地の崩壊防止補強工法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/80 20060101AFI20220222BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
E02D5/80 Z
E02D17/20 106
(21)【出願番号】P 2019043922
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】392012261
【氏名又は名称】東興ジオテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】惣島 公男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-287737(JP,A)
【文献】実開平07-042380(JP,U)
【文献】国際公開第2005/014939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/80
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地の地山における移動土塊を貫通して不動地山まで穿設された削孔に設置され、前記地山の表層部に設けられた支圧材と、前記支圧材と前記不動地山とを連結しかつ可撓性を有する線材である補強材とを有する、傾斜地の崩壊防止補強体において、
前記補強材に取り付けられた2以上のスペーサーと、
前記補強材を前記削孔に挿入する前に前記削孔内に予め配置された2以上のガイド線と、を有し、
前記スペーサーは、前記ガイド線と少なくとも同数の、前記ガイド線を貫通させる貫通部または前記ガイド線と嵌合する嵌合部を形成されていることを特徴とする傾斜地の崩壊防止補強体。
【請求項2】
前記補強材が被覆材で被覆されており、前記削孔内に充填されたグラウトが前記補強材に付着しないようにすることにより、前記補強材が、前記地山と一体化されていない伸縮領域を有することを特徴とする請求項1に記載の傾斜地の崩壊防止補強体。
【請求項3】
傾斜地の地山を、移動土塊を貫通して不動地山まで削孔を穿設し、前記地山の表層部に設けられた支圧材と前記不動地山とを可撓性を有する線材である補強材により連結する、傾斜地の崩壊防止補強工法における前記補強材の挿入方法において、
前記削孔内において予定されている前記補強材の中心線の周囲に2以上のガイド線を配置した後、2以上のスペーサーを取り付けられた前記補強材を前記削孔に挿入し、
前記補強材の挿入の際に、前記ガイド線と少なくとも同数の貫通部または嵌合部をそれぞれ形成された前記スペーサーに前記ガイド線を貫通させつつまたは前記スペーサーを前記ガイド線と嵌合させつつ前記補強材を挿入することを特徴とする補強材の挿入方法。
【請求項4】
請求項3に記載の補強材の挿入方法を行った後、
前記削孔内にグラウトを充填し、前記グラウトが硬化した後に、
前記支圧材を介して前記補強体を定着する、または、前記支圧材を介して前記補強材に所定のプレストレスを導入して定着することを特徴とする傾斜地の崩壊防止補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地の崩壊を防止する崩壊防止補強体に関する。特に、削孔長が2~5m程度の地山補強土工の施工領域から、削孔長が略7~10m以上に及ぶグラウンドアンカー工の施工領域との中間領域にあたる削孔長が略2~10m(後述するが、さらに好適には削孔長が略2~5m)の領域を対象とした、崩壊防止補強体およびこれを用いた傾斜地の崩壊防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
傾斜地の崩壊を防止する崩壊防止補強体を設ける工法(特許文献1、2等)は、グラウンドアンカー工と地山補強土工(鉄筋挿入工、ロックボルト工ともいう)に大別される。
【0003】
グラウンドアンカー工は、傾斜地の地山を、移動土塊を貫通して不動地山(定着領域ともいう)まで削孔して行われる。その崩壊防止補強体は、地山の表層部に設けられた支圧材と不動地山とを連結する補強材を有する。補強材は、不動地山と一体化されていない伸縮領域(自由長部ともいう)を部分的に有している。伸縮領域は、保護材との二重構造となっている。
【0004】
グラウンドアンカー工は、作用する引張力を地盤に伝達させるためのシステムである。グラウトの注入によって造成されたアンカー体、引張部、アンカー頭部によって構成されている。地山補強土工との相違点は、地山と補強材(引張材)間の付着力が働かない伸縮領域があり、これによりプレストレスが導入されるので、地山の変形を積極的に防止することができる点である。
【0005】
地山補強土工もまた、傾斜地の地山を、移動土塊を貫通して不動地山まで削孔して行われ、その崩壊防止補強体は、地山の表層部に設けられた支圧材と不動地山とを連結する補強材を有する。補強材は、不動地山とグラウトを介して一体化された構造となっている。
【0006】
地山補強土工は、地山に補強材を挿入打設し、地山と補強材の相互作用によって不安定土塊の挙動特性や強さなどを改善し、法面・斜面の安定性を高める工法である。つまり地山に鉄筋を挿入打設し、グラウトによって地山と一体化する工法で、補強材の周りをすべてグラウトで充填して固定する全面(全孔)接着型である。
【0007】
地山補強度工は、PC鋼線やPC鋼棒が自由に伸縮する伸縮領域がないことでグラウンドアンカー工と区分できる。地山補強土工にはプレストレスを導入するという概念はないので、頭部をナットで絞めるだけで施工は完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-084407号公報
【文献】特開平8-135397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既往の斜面安定工は、地山補強土工が削孔長略2~5m、グラウンドアンカー工が削孔長略7~数10mを対象としている。これらの工法においては、削孔長が比較的短い場合は、可撓性がなく直線性を有する異形鉄筋やPC鋼棒が用いられるが、削孔長が長い場合は可撓性を有するPC鋼撚線やアンボンドPC鋼撚線が用いられる。
【0010】
グラウンドアンカー工の場合は、その定着領域においてスペーサーなどを介して補強材のセンタリングが保持できれば問題はない。しかしながら、地山補強土工のように削孔の全長にわたりグラウトを充填する工法や、これを改良して補強材にプレストレスを導入できるように伸縮領域を持たせて定着領域のみにグラウトを充填する工法において、可撓性を有する補強材を使用する場合、その直線性を保つことが困難となる。そのため、削孔後に補強材を挿入させる際に、補強材と孔壁との接触や摩擦、あるいは補強材に取り付けられたスペーサーと孔壁との接触や摩擦、あるいはこれらに起因する孔壁の崩壊などにより、補強材の挿入が困難となる問題を有していた。
【0011】
また、挿入が完了したとしても、プレストレスを与えない地山補強土工においては、可撓性を有する補強材を削孔の中心線上に設置することが困難なため、グラウトを充填して固化した際に、定着領域内において可撓性を有する線材が非直線的に配置され、補強材と孔壁の間に所定の被りが確保できない問題を有していた。
【0012】
特に、従前の地山補強土工を改良して、補強材にプレストレスを導入できるように伸縮領域を持たせた工法においては、定着領域において補強材が削孔の中心線上に配置されていない場合、緊張時に不均一な応力分布が生じ、所定のプレストレスの保持が困難となる問題を有していた。
【0013】
本発明の目的は、崩壊防止補強体およびこれを用いた傾斜地の崩壊防止工法において、可撓性を有する補強材を削孔の中心線上に設置可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。
・ 本発明の態様は、傾斜地の地山における移動土塊を貫通して不動地山まで穿設された削孔に設置され、前記地山の表層部に設けられた支圧材と、前記支圧材と前記不動地山とを連結しかつ可撓性を有する線材である補強材とを有する、傾斜地の崩壊防止補強体において、
前記補強材に取り付けられた2以上のスペーサーと、
前記補強材を前記削孔に挿入する前に前記削孔内に予め配置された2以上のガイド線と、を有し、
前記スペーサーは、前記ガイド線と少なくとも同数の、前記ガイド線を貫通させる貫通部または前記ガイド線と嵌合する嵌合部を形成されていることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記補強材が被覆材で被覆されており、前記削孔内に充填されたグラウトが前記補強材に付着しないようにすることにより、前記補強材が、前記地山と一体化されていない伸縮領域を有することが、好適である。
・ 本発明の別の態様は、傾斜地の地山を、移動土塊を貫通して不動地山まで削孔を穿設し、前記地山の表層部に設けられた支圧材と前記不動地山とを可撓性を有する線材である補強材により連結する、傾斜地の崩壊防止補強工法における前記補強材の挿入方法において、
前記削孔内において予定されている前記補強材の中心線の周囲に2以上のガイド線を配置した後、2以上のスペーサーを取り付けられた前記補強材を前記削孔に挿入し、
前記補強材の挿入の際に、前記ガイド線と少なくとも同数の貫通部または嵌合部をそれぞれ形成された前記スペーサーに前記ガイド線を貫通させつつまたは前記スペーサーを前記ガイド線と嵌合させつつ前記補強材を挿入することを特徴とする。
・ 本発明のさらに別の態様は、上記の補強材の挿入方法を行った後、前記削孔内にグラウトを充填し、前記グラウトが硬化した後に、前記支圧材を介して前記補強体を定着する、または、前記支圧材を介して前記補強材に所定のプレストレスを導入して定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は次のとおりである。
1) 可撓性を有する補強材に2以上のスペーサーが取り付けられ、それらのスペーサーには、補強材を削孔に挿入する前に削孔内に予め配置された2以上のガイド線が貫通する貫通部または嵌合する嵌合部を有しているので、補強材を削孔内に挿入する際にガイド線により案内されて、補強材が孔壁に触れることなくスムーズに挿入できる。
2) 削孔内に予め2以上のガイド線を設置し、補強材に取り付ける2以上のスペーサーにはガイド線の数と少なくとも同数のガイド線を通すための貫通部または嵌合部を有しているので、補強体の長さに応じてスペーサーの数を適宜設定することにより、可撓性のある補強材のスムーズな挿入とセンタリングができる。
3) これにより、可撓性のある補強材を削孔の中心線上に直線的に位置させることができるので、グラウトを注入した際に削孔内に均一にグラウトが充填され、補強材と孔壁との間に所定の被りが確保できる。
4) グラウト固化後に移動土塊が移動したり、補強材にプレストレスを導入した際に引張力が作用したりした場合に、定着領域内部に不均一な応力分布が生じることを回避でき、施工の品質が大きく向上する。
【0016】
5) 可撓性を有する代表的な資材であるPC鋼撚線は、鉄筋やロックボルト材に比べて断面積が小さく、グラウトとの付着力が非常に小さい問題があるが、ガイド線に鉄筋を使用することにより、補強材にプレストレスを導入しない場合は剪断強度が大きくなり、また補強材にプレストレスを導入した場合は定着領域における付着力が大きくなり引張強度が向上する。
6) 従来技術の吹付法枠工と比較した場合、大きな抑止効果を有することから抑止可能な崩壊深度が1m程度から3~4m程度まで拡大でき、法枠がなくなることから全面緑化が可能となり、法枠の組み立てや養生が不要となり、大幅に工期を短縮することができる。
7) 従来技術の一般的な鉄筋挿入工と比較した場合、グラウンドアンカー工で使用するPC綱撚線を使用するのでプレストレスを導入可能であり、単位面積当たりの耐力が大幅に向上し、打設ピッチを飛ばすことが可能となり、工期の短縮及び経済性の向上が実現できる。
8) 法面等の傾斜地を緑化する場合、法面全面に金網やジオグリッドなどの網状体を張り、本発明の傾斜地の崩壊防止補強工法を適用し、その上に生育基盤を吹付けることで、プレストレスを導入しない場合は抑制工、プレストレスを導入する場合は抑止工としての機能を有する緑化工が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の概要を示す地山の概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の概略拡大断面図であり、特にプレストレスを導入する場合の実施例を示している。
【
図4】
図4(a)は、本発明のスペーサーの一実施例の正面図であり、(b)は側面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明のスペーサーの別の実施例の正面図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の概要を示す地山の概略断面図である。
図2は、
図1の概略拡大断面図である(なお、
図2は、崩壊防止補強体の軸方向の長さについては一部省略し、軸方向に垂直な方向の寸法を誇張して示している)。
【0019】
図3(a)は
図2のA-A断面を示し、(b)は
図2のB-B断面を示す。
図4(a)は、本発明のスペーサーの一実施例の正面図であり、(b)は側面図である。
図5(a)は、本発明のスペーサーの別の実施例の正面図であり、(b)は側面図である。
【0020】
図1~
図5を参照して本発明の傾斜地の崩壊防止補強体について説明する。
図1及び
図2は、移動土塊3を貫通して不動地山4まで削孔8を穿設し、削孔8内にガイド線9を設置した後、スペーサー7を取り付けた補強材6を挿入し、グラウト41を注入する所定の工程を経て定着された実施例を示している。
【0021】
崩壊防止補強体10は、補強材6と、補強材6に取り付けられた2以上のスペーサー7と、補強材6の挿入前に予め削孔8内に設置される2以上のガイド線9と、削孔8内に充填されるグラウト4
1と、地山1の表層部に設置される支圧板5とを少なくとも有する。なお、
図2は、プレストレスを導入する場合の実施例として、補強材6を覆う被覆材42を設けているが、被覆材42は必須ではない。
【0022】
補強材6は、設計で求められる所定の強度を有し、可撓性を有する線材であれば特に材質は問わない。しかしながら、全長が伸縮可能なPC鋼撚線が好適である。さらに、防錆効果を高めたPC鋼撚線として、PC鋼撚線の間隔に防錆剤を充填したアンボンドPC鋼撚線を用いることもできる。
【0023】
また、補強材6にプレストレスを導入する場合は、
図2及び
図3に例示したように、補強材6をポリエチレン樹脂等の被覆材42で被覆してグラウト41が付着しないようにすることにより、被覆材42の内部で補強材6が伸縮可能な伸縮領域を確保することができる。
【0024】
補強材6の線径は、強度と経済性等を考慮すると、鉄筋補強土工の適用範囲においては12.7mm、鉄筋補強土工とグラウンドアンカー工の中間領域においては15.2mm若しくは17.8mmが好適である。
【0025】
ガイド線9は、可撓性を有しない直線性を有する線材であれば特に材質は限定されない。しかしながら、異形鉄筋(D10程度)が好適である。ガイド線9の数は、2~6本が好適であり、施工性と経済性を考慮すると実施例に示した4本がさらに好適である。
【0026】
図3、
図4及び
図5に示すように、スペーサー7は、ガイド線9の設置本数と少なくとも同数の貫通部32または嵌合部31が設けられている。さらにスペーサー7の中心には補強材6が貫通するための孔33が形成されている。スペーサー7の形状は、図示の例に限定されない。
【0027】
図4は、軸方向に所定の長さをもつ略円筒形のスペーサー7の外周に嵌合部31が切り欠かれている実施例を示している。図示の例では4つの嵌合部31がスペーサー7の周方向に均一に配置され、各嵌合部31はスペーサー7の軸方向全長に延在している。
図5に示すように、円筒形のスペーサー7の中心軸と周面との間に貫通部32を設けてもよい。図示の例では、4つの貫通部32がスペーサー7の周方向に均一に配置され、各貫通部32はスペーサー7の軸方向全長に延在している。
【0028】
ガイド線9にスペーサー7の貫通部32が貫通または嵌合部31が嵌合することにより、可撓性を有する補強材6が可撓性のないガイド線9に沿って直線状に案内される。この結果、可撓性を有する補強材6を削孔8内に支障なく挿入することができる。なお、スペーサー7の材質も特に限定されず、鋼製、樹脂製、ゴム製などが使用できる。
【0029】
補強材6に取り付けるスペーサー7の数は、少なくとも浅部と深部の2箇所に設置する必要がある。補強材6を削孔8に良好に挿入させてセンタリングを確保するためには、このほかに浅部と深部の中間付近を加えた少なくとも3箇所に設置すると好適である。スペーサー7の数は、補強材6の長さに応じて適宜設定する。
【0030】
施工法の一例は、次の通りである。傾斜地の地山1を不動地山4まで削孔8を穿設する。次に、削孔8内において予定されている補強材6の中心線の周囲に2以上のガイド線9を配置する。削孔8の直径は、好適なD10の異形鉄筋を4本使用した場合を想定すると、少なくとも直径50mm程度を確保することが望ましい。ガイド線9の設置方法は特に限定されない。例えば、削孔8の先端部に設置する底部材に、2以上のガイド線9の各先端を溶接等で固定することが好適である。その場合、2以上のガイド線9の各先端の位置は、軸方向から視て、後工程でガイド線9が貫通または嵌合するスペーサー7の貫通部32または嵌合部31の位置に一致するようにする。
【0031】
削孔8内にガイド線9を設置した後、予めスペーサー7を取り付けた補強材6を削孔8内に挿入する。補強材6を挿入する際、ガイド線9にスペーサー7の貫通部32を貫通させつつ、または、スペーサー7の嵌合部31を嵌合させつつ削孔8内に徐々に挿入していく。
【0032】
補強材6にプレストレスを導入しない場合は、補強材6の挿入が完了したら、削孔8内の全体にグラウト41を充填し、グラウト41の硬化後、支圧材5を介して補強材6を定着する。もちろん、削孔8にグラウト41を先行注入した後、あらかじめスペーサー7を取り付けた補強材6を削孔8内に挿入することも可能である。
【0033】
補強材6にプレストレスを導入する場合は、補強材6の挿入が完了したら、削孔8内の全体にグラウト41を充填し、グラウト41の硬化後、支圧材5を介して補強材6に所定のプレストレスを導入してから定着する(
図2参照)。
【0034】
グラウト41の充填性を高めるためには、予め補強材6に注入パイプを取付けておき、削孔8内の底部からグラウト41が充填されるようにするとよい。これらの施工法は、従前の地山補強土工やグラウンドアンカー工の施工方法と同様である。
【0035】
図2の実施例では、崩壊防止補強体10は、地山1の上に設置された支圧材5を介してプレストレスを導入され、補強材6の頭部を楔21で定着している。定着方法は楔定着に限定されるものではなく、補強材6をマンション加工してナット定着させるなど、様々な方法が採用できる。また、補強材6の頭部にはキャップ22を被せ、内部に防錆油を充填できるようになっている。なお、地山1と支圧材5間には、法枠工やプレキャストの受圧板を併用する場合もあるが、これらの構造物等を組合せるかどうかは、現場に応じて適宜決定される。
【0036】
本発明が効果的に作用する実施例として、法面等の傾斜地を緑化する場合、法面全面に金網やジオグリッドなどの網状体を張り、本発明の傾斜地の崩壊防止補強工法を適用し、その上に生育基盤を吹付ける。これにより、プレストレスを導入しない場合は抑制工、プレストレスを導入する場合は抑止工としての機能を有する緑化工が実現できる。
【0037】
また、植生ネットや植生マットなどを法面に張り付けしてから網状体を法面全面に張り、本発明の傾斜地の崩壊防止補強工法を適用して緑化しても同様の効果が得られる。
【0038】
上述した網状体を併用した工法において、本発明の補強材6にプレストレスを導入した場合は、100kN/本の緊張が可能となることから、従来の異形鉄筋D19やD22の挿入による地山補強土工と比較して、抑止可能な崩壊深度を4m程度まで拡大することができる。
【0039】
具体的には、風化岩定着できる場合には抑止可能な深度が4m程度まで、土砂定着となる場合には3m程度が想定される。斜面安定に必要となる抑止力は、補強材6が分担し、従来技術と比較して強度が高くなる分、打設ピッチを大きくとることができる。
【0040】
また、打設ピッチを大きくとることにより懸念される地山の中抜け崩壊に対しては、相応の強度を有する網状体が分担する構造とする。これにより、特に、本出願人による特開2015-175118号公報で示したような、頭部に翼状部を有する補強材を採用することにより、打設ピッチを略1mから略2mに拡張することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 地山
2 すべり面
3 移動土塊
4 不動地山
5 支圧材
6 補強材
7 スペーサー
8 削孔
9 ガイド線
10 崩壊防止補強体
21 楔
31 嵌合部
32 貫通部
33 中心孔
41 グラウト
42 被覆材