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  • 特許-ロードフィニッシャーの事前制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】ロードフィニッシャーの事前制御方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20220222BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019091120
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020002764
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】18172399.0
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596068349
【氏名又は名称】ヨゼフ フェゲーレ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ノル
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129695(JP,A)
【文献】特開2012-229605(JP,A)
【文献】特開2015-094132(JP,A)
【文献】特表2013-500434(JP,A)
【文献】特開2012-251553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動部(M)と、舗装方向(F)の前方に配置される資材ホッパー(3)と、前記舗装方向(F)の後方に配置され前記主駆動部(M)が生成するエネルギーで動作可能なスクリード加熱系(7)を有する舗装スクリード(5)と、を有し、
前記舗装スクリード(5)を利用可能な所定のスクリード動作温度値または所定のスクリード動作温度範囲に舗装動作における前記舗装スクリード(5)の温度を制御することで、ロードフィニッシャー(1)の舗装動作中に、前記スクリード加熱系(7)を動作して、前記舗装スクリード(5)を加熱するように構成される、ロードフィニッシャー(1)を制御する方法であって、
前記ロードフィニッシャー(1)により、前記ロードフィニッシャー(1)のエネルギー需要が増える将来の動作状態が事前認識され、
エネルギー需要が増える将来の動作状態が検出された場合に、前記スクリード加熱系(7)を動作して、前記舗装スクリード(5)を損傷しない範囲で前記所定のスクリード動作温度値を超えるようにまたは前記所定のスクリード動作温度範囲を超えるように予め加熱し、
エネルギー需要が増える前記将来の動作状態に達した際に、前記スクリード加熱系(7)を少なくとも一時的に停止することを特徴とする方法。
【請求項2】
エネルギー需要が増える前記将来の動作状態の前記事前認識は、エネルギー需要が増える前記将来の動作状態が発生すると予測される予測時間を認識するよう構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のスクリード動作温度値または前記所定のスクリード動作温度範囲を超えるように前記スクリード(5)を加熱する前記スクリード加熱系(7)の動作が、エネルギー需要が増える動作状態が発生すると予測される前記予測時間の前に開始される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定のスクリード動作温度値または前記所定のスクリード動作温度範囲を超えるように前記スクリード(5)を加熱する前記スクリード加熱系(7)の動作の開始時間が、エネルギー需要が増える前記将来の動作状態が発生すると予測される前記予測時間に基づいて決定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
エネルギー需要が増える動作状態が終了すると、停止されていた前記スクリード加熱系(7)が再作動のために解除される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
停止されていた前記スクリード加熱系(7)が、前記所定のスクリード動作温度値または前記所定のスクリード動作温度範囲を下回った場合に、再作動される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
主駆動部(M)と、舗装方向(F)の前方に配置された資材ホッパー(3)と、前記舗装方向(F)の後方に配置された舗装スクリード(5)と、冷媒(17)を有する冷却系(15)と、前記主駆動部(M)により生成されたエネルギーにより前記冷媒(17)を冷却する冷却空気流を生成するように動作可能であるファン(19)と、を有し、
前記ロードフィニッシャー(1)の舗装動作時に、前記冷媒(17)の温度を、所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲に制御するように、前記ファン(19)を動作するように構成される、ロードフィニッシャー(1)を制御する方法であって、
前記ロードフィニッシャー(1)により、前記ロードフィニッシャー(1)のエネルギー需要が増える将来の動作状態が事前認識され、
エネルギー需要が増える将来の動作状態が検出された場合に、前記ファン(19)を動作して、前記冷媒(17)を前記所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲未満に冷却し、
エネルギー需要が増える動作状態が発生したときに、前記ファン(19)を少なくとも一時的に停止する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エネルギー需要が増える前記将来の動作状態の前記事前認識は、エネルギー需要が増える前記将来の動作状態が発生すると予測される予測時間を認識するよう構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の冷媒動作温度値または前記所定の冷媒動作温度範囲未満とするように前記冷媒を冷却する前記ファン(19)の動作が、エネルギー需要が増える動作状態が発生すると予測される前記予測時間の前に開始される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の冷媒動作温度値または前記所定の冷媒動作温度範囲未満とするように前記冷媒を冷却する前記ファン(19)の動作の開始時間が、エネルギー需要が増える動作状態が発生すると予測される前記予想時間に基づいて決定される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
エネルギー需要が増える動作状態が終了すると、停止されていた前記ファン(19)が再作動のために解除される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
停止されていた前記ファン(19)が、前記所定の冷媒動作温度値または前記所定の冷媒動作温度範囲を超えた場合に、再作動される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
エネルギー需要が増える前記将来の動作状態には、舗装動作の開始または前記ロードフィニッシャー(1)の上り坂運転の開始が含まれる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
エネルギー需要が増える前記将来の動作状態の前記事前認識には、前記ロードフィニッシャー(1)に舗装用資材を供給するトラックの予想到着時間の検出または受信が含まれる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギー需要が増える前記将来の動作状態の前記事前認識には、計画またはルートデータの、取得または評価が含まれる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードフィニッシャーを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードフィニッシャーは、面上に舗装道路を敷くための建設車両である。ロードフィニッシャーは通常、ロードフィニッシャー移動方向前方に配置された、舗装用資材を入れるホッパーを備える。舗装用資材は、スクレーパコンベヤ等の移送手段により、ロードフィニッシャーのホッパーから、移動方向の反対側であるロードフィニッシャー後方に送られる。ここで、舗装用資材は拡散式オーガー等の横送り装置により、ロードフィニッシャーの移動方向を横切る方向に送られ、舗装スクリードに供給される。舗装スクリードは、横送り装置の後方で、ロードフィニッシャーに牽引される。舗装スクリードは、塗布された舗装用資材を均して、固めるために使用され、例えば突き固め装置、振動式平滑用プレート、および/またはプレッシャバーを備え得る。
【0003】
通常、ロードフィニッシャーは内燃機関、特にディーゼルエンジンで駆動される。ロードフィニッシャー運転機能用の駆動力に加え、内燃機関はさらに、ロードフィニッシャーの作業部や、その他構成要素に対しても動力を提供する。例えば、ロードフィニッシャーの多数の構成要素を作動するための電力を発電する発電機が、内燃機関により駆動されてもよい。特に、発電機により発電された電力は、電動式スクリード加熱系を作動するのに使用可能である。これは、高温資材が冷却されスクリード上で固まることを、スクリードを熱することによって防ぐものである。内燃機関からのエネルギーは、直接、または発電機を介して、ロードフィニッシャーの油圧系にも供給できる。動作中に内燃機関を冷やすために、冷却系が設けられる。これは、特に液体冷媒が内燃機関からの廃熱を吸収するものである。この冷媒は、ファンにより生成された冷却空気流で冷却される。
【0004】
欧州特許第2,281,947A1号には、ロードフィニッシャーを燃料効率よく動作する方法が記載されている。舗装開始前または中断時にロードフィニッシャーが舗装用資材を積んだトラックを待つ際に、ロードフィニッシャーのディーゼルエンジンを切った状態に保つことで、燃料が消費されないようにするものである。これは、ロードフィニッシャーのスクリード加熱系も停止することを意味する。ロードフィニッシャーは、測位およびナビゲーションシステムを利用して、向かっているトラックの位置と、舗装用資材の予想到着時間を判定する。ロードフィニッシャーの制御系は、スクリードを動作温度まで加熱するのにかかる時間を示す情報を記憶する。これにより制御系は、トラック到着時に正確に必要な動作温度となるように、適時ディーゼルエンジンを作動できる。これにより、舗装用資材が到着してすぐに舗装動作が開始可能でありつつ、加熱期間が不要に長くなることが避けられる。不要な加熱時間をさけることで、ロードフィニッシャーの燃料消費を抑えられるが、ロードフィニッシャーのエネルギー効率に関してはまだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、さらにエネルギー効率良くロードフィニッシャーを制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1および7の内容で実現される。従属項は、好ましい実施形態を示す。
【0007】
本発明は、上述の課題に対して2つの異なる解決方法を提示する。いずれも共通して、ロードフィニッシャーのエネルギーを消費する構成要素の、事前制御に基づく発明原理に基づくものである。
【0008】
本発明の第1態様によると、ロードフィニッシャーを制御する方法が提供される。ロードフィニッシャーは、主駆動部と、ロードフィニッシャーの移動方向の前方に配置された、舗装用資材を入れる資材ホッパーと、移動方向の後方に配置され、舗装用資材を固める舗装スクリードとを備える。例えば、主駆動部は内燃機関、特にディーゼルエンジンであってもよい。舗装スクリードは、主駆動部が生成するエネルギーで動作可能なスクリード加熱系を備える。スクリード加熱系は、電気抵抗加熱要素を有する電動式スクリード加熱系であって、発電機を介して主駆動部からエネルギー供給を受けるのが好ましい。
【0009】
(通常)舗装動作中、スクリードの温度を所定のスクリード動作温度値または所定のスクリード動作温度範囲に制御することによって、スクリードを加熱するスクリード加熱系は動作する。特に、スクリード動作温度値またはスクリード動作温度範囲は、高熱舗装用資材の温度に少なくとも略対応、または高熱舗装用資材の温度を含んでもよい。
【0010】
本発明によると、ロードフィニッシャーにより、ロードフィニッシャーのエネルギー需要の増える将来の動作状態(将来のエネルギー需要増動作状態)が予想される。ロードフィニッシャーは、例えばデータの検出または受信に基づいて、計算により、さらに/あるいはユーザ入力に基づいて、エネルギー需要の増える将来の動作状態を検出できる。
【0011】
エネルギー需要の増える将来の動作状態が検出されると、スクリード加熱系が動作して、スクリードが所定のスクリード動作温度値または所定のスクリード動作温度範囲を超えるように加熱される。この場合、スクリードは実際には高すぎる温度にまで加熱される。特にこれを自動で実施できる。エネルギー需要の増える動作状態(エネルギー需要増動作状態)に達すると、スクリード加熱系は少なくとも一時的に停止される。また、スクリード加熱系は自動で停止することもできる。スクリードが既に通常舗装動作で利用されるスクリード動作温度値または動作温度範囲を超えるまで加熱されているので、スクリード加熱系の停止が、エネルギー需要増動作状態が発生したときに、即座にスクリード温度の致命的な減少につながることはない。スクリードは冷めていくが、それでも過熱の結果、舗装用資材が所定期間はスクリード上で固化して貼り付かない程度の熱を帯びる。
【0012】
スクリードがエネルギー需要増動作状態となって、スクリード加熱系が停止されると、主駆動部への負荷が軽減される。このようにして、ピーク負荷が吸収される。したがって、より小型の主駆動部が使用可能になる。さらに、主駆動部はより長くその理想的な動作範囲で動作できるので、特に高エネルギー効率となる。本明細書記載の方法は、ロードフィニッシャーを事前に制御することを可能とする。即ち、スクリードのエネルギー需要増動作状態に達する前に、ロードフィニッシャースクリードの加熱処理に、より多くのエネルギーを投入することで、エネルギー需要増動作状態に達すると、スクリード加熱系をOFFにできるようになる。
【0013】
好ましくは、エネルギー需要の増える将来の動作状態の事前検出は、エネルギー需要増動作状態の発生予想時間(予測時間)の検出を含む。エネルギー需要増動作状態の発生予想時間がわかっている場合、ロードフィニッシャーの事前制御系の各動作状況に対する適用性が特に高くなる。
【0014】
スクリード加熱系を動作して舗装スクリードを特定のスクリード動作温度、または特定のスクリード動作温度範囲を超えるまで加熱することは、エネルギー需要増の発生予想時間前に開始できる。
【0015】
所定のスクリード動作温度値または所定のスクリード動作温度範囲を超えるためのスクリード加熱の開始時間は、エネルギー需要増動作状態の発生予想時間に基づいて決定できる。これにより、エネルギー需要増発生の際にスクリードが十分に加熱されていることが保証される一方で、この所定のスクリード動作温度値または所定のスクリード動作温度範囲を超えるための加熱が必要以上に早期実行されない。
【0016】
エネルギー需要増動作状態の発生に伴いスクリード加熱系が停止した後、エネルギー需要増動作状態が終了すると、スクリード加熱系を再度作動するよう開放できる。エネルギー需要増動作時にスクリード加熱系が作動しないようにすることで、主駆動部の電力ピークが確実に避けられる。エネルギー需要増動作状態が終了すると、スクリード加熱系を通常舗装動作用に通常制御できる。
【0017】
エネルギー需要増発生後に、スクリード動作温度が予め設定された動作温度値、または予め設定された動作温度範囲まで下がった際に、停止されていたスクリード加熱系を再作動することが望ましい。これにより、あらゆる場合においてもスクリードが過剰に冷えないことが保証される。一実施形態によると、エネルギー需要増動作状態が継続中であっても、スクリード動作温度が予め設定された動作温度値、または予め設定された動作温度範囲まで下がれば、スクリード加熱系を再作動できる。これは、エネルギー需要増動作状態が長い場合に特に有効となり得る。
【0018】
また、エネルギー需要増動作状態発生に伴い、スクリード加熱系が停止して所定の期間経過後に、スクリード加熱系を再作動することも考えられる。
【0019】
第2態様によると、本発明は、ロードフィニッシャーを制御する方法を含む。ロードフィニッシャーは、主駆動部と、ロードフィニッシャーの移動方向の前方に配置された、舗装用資材を入れる資材ホッパーと、移動方向の後方に配置され、舗装用資材を固める舗装スクリードと、冷却系とを備える。例えば、主駆動部は内燃機関、特にディーゼルエンジンであってもよい。冷却系は、冷媒と、主駆動部により生成されたエネルギーにより、冷媒を冷却するための冷却空気流れを生成するように動作可能であるファンとを備える。例えば、冷媒は、冷却液と、冷却要素とを備えることができる。特に、冷媒は主駆動部、および/または油圧系等のロードフィニッシャーのその他構成要素と熱交換してもよい。これにより、主駆動部、および/またはその他構成要素が冷却される。
【0020】
ロードフィニッシャーの(通常)舗装動作中、冷媒の温度が所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲に制御されるように、ファンが動作される。所定の冷媒動作温度値、または所定の冷媒動作温度範囲は、冷却系により冷却されるロードフィニッシャーの構成要素が十分に冷却されるように選択可能である。
【0021】
本明細書記載の本発明の第2態様の方法も、ロードフィニッシャーのエネルギー需要の増える将来の動作状態の事前認識を含む。例えば、ロードフィニッシャーは、例えばデータの検出または受信に基づいて、計算により、さらに/あるいはユーザ入力に基づいて、エネルギー需要の増える将来の動作状態を検出できる。
【0022】
エネルギー需要の増える将来の動作状態が検出されると、ファンが動作されて、冷媒が所定の冷媒動作温度値、または所定の冷媒動作温度範囲未満となるように冷却される。これは、冷媒が通常動作時よりも冷やされることを意味する。特にこれを自動で実施されてもよい。エネルギー需要の増える動作状態(エネルギー需要増動作状態)が生じると、ファンは少なくとも部分的に停止される。また、ファンは自動で停止されてもよい。ファンの停止前に冷媒が通常動作時よりも強く冷やされているので、ファン停止後に冷媒が加熱されても、即座に冷却対象構成要素の過熱に繋がることはない。
【0023】
冷媒の事前過冷却により、エネルギー需要増動作状態発生時にファンが停止可能となり、エネルギー需要増動作状態において主駆動部が解放されるために、電力ピークを吸収可能となる。したがって、本発明の方法により、より小型の主駆動部が利用可能となる。電力ピークの吸収により、主駆動部はより長く理想的な動作範囲で動作できるので、エネルギー効率が上がる。
【0024】
好ましくは、エネルギー需要の増える将来の動作状態の事前検出は、エネルギー需要増動作状態の発生予想時間の検出を含む。
【0025】
冷媒を所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲未満に冷却するファンの動作は、エネルギー需要増動作状態の発生予想時間前に開始してもよい。
【0026】
冷媒を所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲未満に冷却するファンの動作開始時間は、エネルギー需要増動作状態の発生予想時間に基づいて決定できる。
【0027】
エネルギー需要増動作状態が終了した場合に、エネルギー需要増動作状態が発生したことによって停止されたファンが、作動されるように再度有効化されてもよい。
【0028】
停止後に、所定の冷媒動作温度値または所定の冷媒動作温度範囲を超えると、ファンを再作動してもよい。特に、所定の冷媒動作温度値、または所定の冷媒動作温度範囲を超えると、エネルギー需要増動作状態が継続中であってもファンを再作動してもよい。
【0029】
エネルギー需要増動作状態の発生に伴いファンを停止してから、所定の期間が経過した後に、ファンを再作動することも考えられる。
【0030】
記載された本発明のいずれの態様も、ロードフィニッシャーの加熱対象構成要素(舗装スクリード)、または冷却対象構成要素(冷媒)を事前に過熱または過冷却するという原理に基づくものである。スクリードまたは冷媒の熱容量を利用することで、エネルギー需要増動作状態に到達した際、ロードフィニッシャーのエネルギー効率が向上するように、スクリード加熱系またはファンの停止が可能となる。
【0031】
発明の両方の態様によると、エネルギー需要の増える将来の動作状態の例としては、舗装動作の開始、またはロードフィニッシャーの上り坂駆動が挙げられる。舗装動作の開始時には、各種要因により、ロードフィニッシャーのエネルギー需要が増大する。その中でも特に、舗装処理の開始時に、舗装用資材を資材ホッパーから、ロードフィニッシャー後方に送る必要があり、舗装用資材の資材流を発生する必要がある。さらに、舗装動作の開始時に、ロードフィニッシャーを加速する必要がある。ロードフィニッシャーが上り坂を走る際、ロードフィニッシャーの移動用駆動により多くのエネルギーが必要となるので、エネルギー需要が増大する。
【0032】
エネルギー需要の増える将来の動作状態の事前認識は、ロードフィニッシャーに舗装用資材を供給するトラックの予想到着時間の認識、または受信を含んでもよい。当該トラックの到着は、舗装処理の開始時のエネルギー需要増が、予想される時期の指標となる(特に、ロードフィニッシャーが舗装処理の開始、または継続のために舗装用資材を待つ場合)。
【0033】
エネルギー需要の増える将来の動作状態の事前認識は、上述に加えて、または替えて、計画またはルートデータの受信または評価を含む。例えば、ロードフィニッシャーが上り坂を走ることが予測されてもよい。
【0034】
上述の2つの方法は、ロードフィニッシャーを制御する異なる複数の方法であるが(スクリード加熱系の事前制御、冷却系の事前制御)、これらを組み合わせて同時に実施してもよい。このようにして、ロードフィニッシャーのエネルギー効率をさらに向上できる。
【0035】
以下に、添付の図面を参照し、実施形態により本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、上述の発明の2つの態様が同時に実現された実施形態に係るロードフィニッシャーの概略図である。
図2図2は、ロードフィニッシャーの異なる複数の構成要素の相互作用を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、実施形態に係る方法で制御される、ロードフィニッシャー1を示す。ロードフィニッシャー1は、舗装方向Fで前方に配置され舗装用資材を入れるホッパー3を備える。ロードフィニッシャー1は、舗装方向Fの後方に配置され舗装用資材を固めて均す舗装スクリード5をさらに有する。舗装動作中、舗装用資材がホッパー3から、舗装方向Fに対して反対側の後方に運ばれ、舗装スクリード5の前に置かれる。ロードフィニッシャー1は、ここでは特にディーゼルエンジンとして設計される内燃機関である、主駆動部M(図2参照)を備える。主駆動部Mは、移動用の駆動や、ロードフィニッシャー1の作業用構成要素の駆動、さらにはロードフィニッシャー1の他のエネルギー消費部位にもエネルギーを提供する。
【0038】
舗装スクリード5は、スクリード加熱系7を備える。これは、図示の実施形態では、舗装スクリード5を加熱するための2つの電気抵抗加熱要素9を有するものである。スクリード加熱系7は、主駆動部Mからエネルギー供給を受ける。このため、主駆動部Mにより発電機Gが動作し、スクリード加熱系7に供給する電力を生成する。ロードフィニッシャー1の別のエネルギー消費部位にも、発電機Gを介して電力が供給されることが考えられる。
【0039】
ロードフィニッシャー1の通常動作中、スクリード加熱系7は制御方式に応じて動作することで、スクリード5に舗装用資材の張り付きが生じ得る舗装用資材の冷却を防止するのに十分温度に、スクリード5を常に保つことを保証する。ロードフィニッシャー1のコントローラ11は、舗装スクリード5に設けられた温度センサ13からの出力信号を受信し、受信した出力信号に基づいて、ロードフィニッシャー1の通常動作中に、スクリード加熱系7を制御する。スクリード加熱系7を制御することで、スクリード5の温度が所定の動作温度値になるように制御できる。このため、コントローラ11は、温度センサ13から受信した出力信号に応じて、制御ループ内のスクリード加熱系7を作動、停止できる。スクリード加熱系7が頻繁にON/OFFされることを防ぐため、スクリード5の温度を、スクリード動作温度値ではなく、所与の温度範囲を許容する所定のスクリード動作温度範囲に制御することも好ましい。例えばコントローラ11は、温度センサ13からの出力信号が、低温度閾値を下回ったことを示す場合にスクリード加熱系7を作動し、温度センサ13からの出力信号が、高温度閾値を超えたことを示す場合に、スクリード加熱系7を停止してもよい。
【0040】
ロードフィニッシャー1はさらに、冷却系15を備える。これは、ロードフィニッシャー1の各種構成要素を冷却するように設計できる。図2は、主駆動部Mを冷却するための冷却系である冷却系15を示す。但し、冷却系15が上記に加えて、または替えて、油圧系のようなロードフィニッシャー1のその他構成要素を冷却することも考えられる。冷却系15は、ロードフィニッシャー1の冷却対象構成要素と熱交換する冷媒17を備える。主駆動部Mを冷却する場合、冷媒17はエンジン冷却系からのクーラントを含む。但し、別の用途では、冷媒17は例えば冷却要素として設計されてもよい。冷却系15はさらに、冷媒17を冷やす冷却空気流を発生するファン19をさらに備える。ファン19は、発電機Gを介して電気エネルギーで動作されるため、元を辿れば発電機Gを駆動する主駆動部Mからエネルギー供給を受ける要素の1つである。
【0041】
ロードフィニッシャー1の通常舗装動作の際、ロードフィニッシャー1のコントローラ11を使用してファン19を調整することで、冷媒17の温度が制御される。そのためにコントローラ11は、ファン19を作動または停止でき、或いはファン19の適切な速度を適用できる。コントローラ11は、温度センサ21から、冷媒17の温度を決定するための出力信号を受信する。この出力信号に基づいて、コントローラ11はファン19を調整して、冷媒17の温度を所定の冷媒動作温度値に調整できる。制御応答をよりスムーズにするために、冷媒17の温度を所与の幅を持つ所定の冷媒動作温度範囲に制御してもよい。
【0042】
本発明によれば、ロードフィニッシャー1のエネルギー需要の増える将来の動作状態が事前認識され、ロードフィニッシャー1の制御において考慮される。このエネルギー需要の増える動作状態は、主駆動部Mにより供給を受けるロードフィニッシャー1の少なくとも1つの構成要素が、エネルギー需要増となる、さらに/あるいは追加的に作動される必要があるような動作状態である。エネルギー需要増動作状態の一例として、ロードフィニッシャー1が上り坂で運転される場合が挙げられる。すなわち、ロードフィニッシャー1の移動駆動用にエネルギー需要の増加が生じる。エネルギー需要の増加は、舗装動作開始時にも生じる。舗装処理の開始時、例えばロードフィニッシャー1の加速や、資材ホッパー3からロードフィニッシャー1の後方への資材流開始のために、より多くのエネルギーを使用する必要がある。
【0043】
エネルギー需要の増える将来の動作状態は、異なる様々な方法で予測できる。例えば、ロードフィニッシャー1のコントローラ11は、各建設プロジェクトの計画データまたはルートデータを利用して、来るべきロードフィニッシャー1の上り坂運転や、その他該当する動作状況を予測できる。例えば、計画またはルートデータは、ロードフィニッシャー1そのものに記憶されるか、通信モジュール23を介してロードフィニッシャー1に供給されてもよい。
【0044】
舗装動作(新たな建設現場における、または舗装中断後の)を事前検出できるように、例えば、ロードフィニッシャー1に舗装用資材を投入するためにトラックが到着する予想時間を特定できる。トラックの到着時間は、通信モジュール23を介して、上位建設現場組織システムから制御部11へ送信可能である。また、ロードフィニッシャー1がトラック検出装置25を備えることも考えられる。当該装置は、トラックの接近を光学的に検出するものである。さらに、トラックとロードフィニッシャー1との間の通信により、トラックの予想到着時間が判定されてもよい。
【0045】
ロードフィニッシャー1のエネルギー需要の増える将来の動作状態がどのように事前検出されるかについては、他の態様も考えられる。エネルギー需要増動作状態が発生すると予想される時間も検出、特に推定されることが好ましい。
【0046】
エネルギー需要の増える将来の動作状態が検出された場合、予想されるピーク電力を吸収できるように対策がとられる。以下の実施形態では、このような対策として、スクリード加熱系7の動作調整、冷却系15の動作調整の両方が行われる。ただし、スクリード加熱系7、或いは冷却系15のみの動作を調整することも考えられる。
【0047】
エネルギー需要の増える将来の動作状態が検出された場合、スクリード加熱系7は制御系11に制御される。これにより、スクリード5がエネルギー需要増動作状態の発生予想時間前に、通常舗装動作における制御における所定の動作温度値あるいは動作温度範囲を超えるように加熱される。すなわち、エネルギー需要増発生前に、スクリード5がある程度過熱されるのである。ただし過熱が、スクリード5を損傷しない範囲で実施されることは言うまでもない。
【0048】
さらに、エネルギー需要の増える将来の動作状態が検出された場合、冷却系15のファン19の動作が適用される。エネルギー需要増動作状態の発生予想時間前に、ロードフィニッシャー1の通常舗装動作における制御における所定の冷媒動作温度値あるいは冷媒動作温度範囲を下回るように、冷媒17を追加的に冷却するように、ファン19がロードフィニッシャー1のコントローラ11により制御される。このように、エネルギー需要増動作状態が発生する前に、冷媒17が過冷却されるのである。
【0049】
ロードフィニッシャー1のエネルギー需要の増える将来の動作状態が検出された場合、スクリード5の加熱、冷媒17の冷却にエネルギーが投入される。該動作状態が発生した時点で(実際の状態遷移、または発生予想時間の到来)、スクリード加熱系7およびファン19は停止される。したがって、エネルギー需要増動作状態が発生したときに、主駆動部Mの負荷は低減し、ピーク電力が吸収されるのである。この処理では、舗装スクリード5の熱容量、冷媒17の熱容量をバッファとして利用することで、スクリード加熱系7およびファン19が一時的に停止される。
【0050】
エネルギー需要増動作状態の終了に伴い、スクリード加熱系7およびファン19を解放して再度作動することも考えられる。必要であれば、スクリード加熱系7およびファン19をより早期に再作動してもよい。
【0051】
エネルギー需要増動作状態のときにも、温度センサ13がスクリード5の温度を監視することが好ましい。スクリード5が過度に冷やされないように、温度センサ13のシグナリングによりスクリードの動作温度があらかじめ定められた動作温度値、或いは、あらかじめ定められた動作温度範囲を下回ったことが示された場合に、スクリード加熱系7を再作動してもよい。
【0052】
同様に温度センサ21は、エネルギー需要増動作状態中に冷媒17の温度を監視し続けてもよい。冷媒17が過熱されないように、所定の冷媒動作温度値または範囲を超えたらファン19を再作動するようにしてもよい。
図1
図2