(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】粘着テープ及び面材
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220222BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
(21)【出願番号】P 2019119145
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2019-12-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】服部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 裕明
(72)【発明者】
【氏名】安田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】長尾 功弘
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-65189(JP,A)
【文献】特開2004-51708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と、前記粘着剤層の少なくとも一方の面に設けられた凸部とを有する粘着テープであって、前記凸部がマスキング部材であり、前記マスキング部材がモノフィラメントによって構成され、
前記粘着テープの厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力が
0.45~4.23N/cm
2であり、
前記変曲点までの見かけ圧縮弾性率が2N/cm
2/mm以上である粘着テープ。
【請求項2】
前記変曲点までの見かけ圧縮弾性率が14N/cm
2/mm以下である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層における粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項1又は2のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項4】
基材を含まない両面粘着テープである請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記少なくとも一方の面の少なくとも一部が、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着テープにより被覆された面材。
【請求項6】
前記面材の前記粘着テープにより少なくとも一部が被覆された面における前記粘着テープの被覆率が1~30%である請求項5に記載の面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ及びその粘着テープに被覆された面材に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、施工が簡便であり、施工速度にも優れることから、建築分野、電子材料、自動車分野などにおいて広く使用されている。例えば、建築分野では、合板、化粧材、石膏ボード、セメント板などの建築資材を鉄骨、桟などの支持体などに固定させる用途で使用される。
【0003】
粘着テープを用いた施工では、位置調整をした後に、粘着テープを被着体に貼り付けさせることがある。位置調整できる粘着テープとしては、粘着剤層の上にマスキング部材が設けられたものが知られている。例えば、特許文献1には、支持体の両面に、支持体の厚みの9~20%の厚みを有する粘着剤層が積層される両面粘着テープの少なくとも片面に、被覆率が6~40%で、厚みが支持体の10~100%である非粘着性又は微粘着性のマスキング部材が積層されることが開示されている。マスキング部材としては、例えば、綿糸や合成樹脂繊維の編物、不織布、メッシュ、ネットや、金属メッシュなどが使用される。
【0004】
また、位置調整できる粘着テープとしては、接着剤層の表面に非接着性固体分子を一様に分散させた感圧接着シートが知られている。例えば、特許文献2には、平均粒径が10~40μmの非接着性固体粒子が一様に分散した分散層を接着剤層の少なくとも一方の表面に有し、その固体粒子の少なくとも約半数は接着剤層の表面より突出していることが開示されている。非接着性固体粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、アルミナ、シリカなどが使用される。
【0005】
粘着テープは、マスキング部材や非接着性固体粒子が設けられると、加圧せずに被着体に接触させた場合、マスキング部材や非接着性固体粒子が被着体に接触し、粘着剤層や接着剤層が殆ど被着体に接触しないので、粘着テープをずらして位置調整することが可能になる。また、位置調整後に押圧することで、マスキング部材や非接触性固体粒子が粘着剤層や接着剤層の中に埋没するので、粘着テープは、粘着剤層や接着剤層によって高い接着力で被着体に接着することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-115114号公報
【文献】特許第2657965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外装材、内装材等の建築用部材に、位置調整できる粘着テープを貼り付けた後、建築部材の運搬中や位置合わせ中は、粘着テープは貼り付かないことが作業効率上、好ましい。このため、位置調整できる粘着テープは、多少の押圧では貼り付かないようにする必要がある。
そこで、本発明は、建築部材の運搬中や位置調整中に建築部材が貼り付くことを抑制することにより建築部材の接着の作業効率を向上させることができる粘着テープ、及びその粘着テープに被覆された面材を提供することを課題とする。
また、建築部材の位置調整後、仮接着のために建築用部材を貼り付ける際、大きな押圧が必要となると、建築用部材の貼り付けに手間取り、作業効率が低下する場合がある。
そこで、上記課題とは別に、本発明は、建築部材の位置調整後、建築部材を容易に貼り付けられるようにすることにより建築部材の接着の作業効率を向上させることができる粘着テープ、及びその粘着テープに被覆された面材を提供することを課題とする。
以上、本発明は、建築部材の接着の作業効率を向上させることができる粘着テープ、及びその粘着テープに被覆された面材を提供することを総合的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、圧縮試験で得られる圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力が所定範囲以内である粘着テープが上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]粘着剤層と、前記粘着剤層の少なくとも一方の面に設けられた凸部とを有する粘着テープであって、前記粘着テープの厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力が0.4N/cm2以上である粘着テープ。
[2]粘着剤層と、前記粘着剤層の少なくとも一方の面に設けられた凸部とを有する粘着テープであって、前記粘着テープの厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力が10N/cm2以下である粘着テープ。
[3]前記変曲点までの見かけ圧縮弾性率が2N/cm2/mm以上である上記[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記変曲点までの見かけ圧縮弾性率が14N/cm2/mm以下である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[5]前記凸部がマスキング部材である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[6]前記マスキング部材が、糸状、帯状もしくは球状の部材から構成される上記[5]に記載の粘着テープ。
[7]前記粘着剤層における粘着剤がアクリル系粘着剤である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[8]基材を含まない両面粘着テープである上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の粘着テープ。
[9]前記少なくとも一方の面の少なくとも一部が、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の粘着テープにより被覆された面材。
[10]前記面材の前記粘着テープにより少なくとも一部が被覆された面における前記粘着テープの被覆率が1~30%である上記[9]に記載の面材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建築部材の接着の作業効率を向上させることができる粘着テープ、及びその粘着テープに被覆された面材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態における粘着テープの斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す本発明の一実施形態における粘着テープのA-A断面図であり、
図1(c)は本発明の一実施形態における粘着テープの平面図である。
【
図2】
図2は、圧縮試験を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、粘着テープの厚さ方向についての圧縮試験で得られる圧縮応力-変位曲線の一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、圧縮試験中の粘着テープの状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<粘着テープ>
以下、図を参照して本発明の一実施形態の粘着テープを説明する。なお、本発明の粘着テープはこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態の粘着テープ1は、
図1に示すように、粘着剤層10と、粘着剤層10の少なくとも一方の面11に設けられたマスキング部材20とを有する。これにより、粘着剤層10の一方の面11に凸部を設けることができる。
【0012】
マスキング部材20は、複数本の並列される糸状部材21と、複数本の糸状部材21に交差するように並列された、複数本の糸状部材22から構成されメッシュ材であり、粘着剤層10の一方の面11上に設けられる。ここで、糸状部材21,22とは、その断面の長径と短径の比が1に近いもの(例えば、2未満)をいう。糸状部材21と糸状部材22の交差角度θ(
図1(c)参照)は、90°でもよいし、90°でなくてもよく、例えば、45°以上90°未満でもよい。また、糸状部材21と糸状部材22とは、その交差部分において、融着などにより接合される。さらに、マスキング部材20は、隣接する2つの線状部材21,22間に開口部23を有する。
【0013】
なお、糸状部材の代わりに、又は糸状部材と一緒に帯状部材がメッシュ材を構成するようにしてもよい。帯状部材は、その断面の長径と短径の比が1より十分に大きいもの(例えば、2以上)をいう。しかし、マスキング部材20は糸状部材21,22により構成されるのがより好ましい。本明細書では、糸状部材及び帯状部材を、まとめて線状部材ということもある。
【0014】
マスキング部材20は、メッシュ材が2枚以上重ねられて形成されてもよい。メッシュ材が2枚以上重ねられる場合、各メッシュ材における糸状部材の交差部が互いに異なる位置に配置されるように重ねられるとよい。
【0015】
上記のマスキング部材20は、2方向それぞれに沿って並列する糸状部材21,22によって構成される例を示したが、3方向以上の各方向それぞれに沿って並列する糸状部材によって構成されてもよい。また、以上の説明では、マスキング部材20がメッシュ材である例を説明したが、マスキング部材20は、編布、織布、組布などであってもよい。
また、糸状部材としては、特に限定されないが、モノフィラメント、複数のフィラメントを束ね、また必要に応じて撚りなどを加えたヤーン、三つ編などの組紐状のものなどいかなる形態でもよい。また、糸状部材は、断面が円形、矩形、扁平状、方形などいかなるものでもよい。なお、帯状部材がマスキング部材を構成する場合も同様である。
【0016】
粘着テープ1は、粘着剤層10の一方の面11を各種の被着体に接着して使用されるが、マスキング部材20が設けられることで、被着体に接着される際に位置調整を行うことが可能である。具体的には、粘着テープ1は、マスキング部材20が設けられた面を、圧力を付与せずに、または小さい圧力を加えて被着体に接触させると、被着体にはマスキング部材20が接触する一方で、粘着剤層10は被着体にはほとんど接触しない。そのため、粘着テープ1は、被着体上に接触した状態でスライドすることにより、容易に位置調整できる。
そして、位置調整などにより貼り合わせ位置が決まると、押圧などにより粘着テープに高い圧力を加え、マスキング部材20を粘着剤層10に埋没させて、粘着剤層10を被着体に接着させるとよい。これにより、粘着剤層10が被着体に圧着され、粘着テープ1が被着体に強固に接着されることになる。
【0017】
(変曲点における圧縮応力)
本発明の一実施形態の粘着テープ1の変曲点における圧縮応力は、0.4N/cm2以上である。変曲点における圧縮応力が0.4N/cm2未満であると、位置調整中に粘着テープ1が貼り付いてしまい、作業効率が悪くなる。このような観点から、変曲点における圧縮応力は、好ましくは0.45N/cm2以上であり、より好ましくは0.6N/cm2以上である。
また、本発明の一実施形態の粘着テープ1の変曲点における圧縮応力は、10N/cm2以下である。変曲点における圧縮応力が10N/cm2より大きいと、粘着テープ1を貼り付けたときの粘着力を強くすることができず、仮接着を容易に行うことができないので、作業効率が悪くなる。このような観点から、変曲点における圧縮応力は、好ましくは5.0N/cm2以下であり、より好ましくは2.0N/cm2以下であり、さらに好ましくは1.5N/cm2以下であり、特に好ましくは1.0N/cm2以下である。
さらに、位置調整を容易に行えるという観点、及び位置調節後の仮接着を容易に行えるという観点から、本発明の一実施形態の粘着テープ1の変曲点における圧縮応力は0.4~10N/cm2であることがさらに好ましい。このような観点から、発明の一実施形態の粘着テープ1の変曲点における圧縮応力は、よりさらに好ましくは0.45~5.0N/cm2であり、特に好ましくは0.6~2.0N/cm2である。
なお、圧縮応力-変位曲線の変曲点とは、後述するように、圧縮応力-変位曲線を2本の直線で近似したときの2本の直線の交点である。また、変曲点における圧縮応力は、粘着剤層10の厚み、マスキング部材20を粘着剤層10に積層するときの圧力、マスキング部材20の種類、マスキング部材20による粘着剤層10の被覆率、粘着剤材層10の粘着剤の種類、粘着剤層の貯蔵弾性率等を調節することにより調整できる。
【0018】
なお、圧縮試験では、通常、圧縮応力-歪み曲線を用いて試験体を評価するのに対し、本発明の一実施形態の粘着テープ1においては、圧縮応力-変位曲線を用いて試験体を評価する。これは、位置調整可能な粘着テープの作業性は、粘着テープの歪みよりもむしろ変位により影響を受けることを本発明者らが見出したためである。なお、歪みが小さければ変位も小さくなるとは限らない。試験体の歪みが小さくても試験体が厚ければ変位は大きくなるからである。なお、後述の
図2に示す圧縮試験の一例で説明すると、変位とは、ステンレス鋼の円柱210における矢印(
図2の符号240参照)の方向の移動量である。
【0019】
本発明の一実施形態の粘着テープ1の厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線を
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、圧縮試験の一例を説明するための図である。
図3は、粘着テープ1の厚さ方向についての圧縮試験で得られる圧縮応力-変位曲線の一例を示す図である。
図4は、圧縮試験中の粘着テープの状態を説明するための図である。圧縮試験は、例えば、材料試験機100を用いて実施することができる。具体的には、材料試験機100のクロスヘッド110にロードセル120を取り付ける。そして、粘着テープ1を押圧するために使用するステンレス鋼(SUS)製の円柱210をロードセル120に取り付ける。円柱210の粘着テープ1の接触する面の直径は、例えば15mmである。材料試験機100のテーブル130には、後述のステンレス鋼(SUS)製の板220を載せる土台230を取り付ける。
【0020】
粘着テープ1のマスキング部材20が設けられている面が上になるように板220上に粘着テープ1を載置し、粘着テープ1を載置した板220を土台230の上に設置する。その後、クロスヘッド110を降下させて、円柱210により
図2の矢印240の方向に圧縮応力を粘着テープに加え、圧縮試験を実施する。なお、粘着テープ1に加えられる圧縮応力はロードセル120により検出することができる。また、粘着テープ1の変位は、材料試験機100の支柱140,150におけるクロスヘッド110の位置を検出することにより、測定することができる。
【0021】
位置調整可能な粘着テープ1に対して圧縮試験を行うと、例えば、
図3に示すように、不連続点Pdを有する圧縮応力(S)-変位(X)曲線が得られる。不連続点Pdは、変位に対して圧縮応力が急に増加した点であり
、変位に対する圧縮応力の増加率(ΔS/ΔX)が2倍以上に増加した最初の点である。なお、ΔS=S
n+1-S
nであり、ΔX=X
n+1-X
nであり、S
nはn回目に測定した圧縮応力の値であり、X
nはn回目に測定した変位の値である。そして、
図3に示すように、圧縮応力-変位曲線は、不連続点Pdを挟む2つの直線L1,L2で近似することができる。直線L1は、変位が0の点P0と不連続点Pdの中間の変位における圧縮応力-変位曲線の接線である。一方、直線L2は、不連続点Pdと次の不連続点Peとの間の曲線の回帰直線である
。不連続点Pdと次の不連続点Peとの間の圧縮応力-変位の測定データを最小自乗法で直線に近似することにより、直線L2を得ることができる。なお、次の不連続点Peは
、変位に対する圧縮応力の増加率(ΔS/ΔX)が1/2以下となる最初の点である。そして、直線L1及び直線L2の交点が本発明の変曲点Piとなる。なお、この2つの曲線で以下の説明は本発明を限定しないが、圧縮応力-変位曲線に不連続点Pdが現れるのは以下の理由によるものと考えられる。
【0022】
粘着テープ1を圧縮試験機に設置した段階(
図3に示す圧縮応力-変位曲線の点P0の段階)では、
図4(a)に示すように、マスキング部材20は粘着剤層10にほとんど沈んでいない。粘着テープ1の厚さ方向に加える粘着テープ1への圧力を大きくしていくと、例えば、
図3に示す圧縮応力-変位曲線の点P1の段階では、
図4(b)に示すように、マスキング部材20は粘着剤層10の中に沈んでいく。この段階では、圧縮試験機が検出する変位は、マスキング部材20が粘着剤層10に沈むことに起因するので、圧縮応力が少し大きくなっただけでも変位は大きくなる。そして、粘着テープ1の厚さ方向に加える粘着テープ1への圧縮応力がさらに大きくなり、
図3に示す圧縮応力-変位曲線の不連続点Pdの段階に達すると、
図4(c)に示すように、マスキング部材20は粘着剤10に完全に埋没する。粘着テープ1の厚さ方向に加える粘着テープ1への圧縮応力がさらに大きくなると、圧縮試験機が検出する変位は、粘着剤層10自体の圧縮変形に起因するものとなり、圧縮応力が大きくなっても変位は少ししか大きくならなくなる。このように、圧縮試験機が検出する変位が、圧縮試験の途中で、マスキング部材20の粘着剤層10への沈み込みによるものから、粘着剤層10の圧縮変形によるものに変わるため、圧縮応力-変位曲線に不連続点Pdが現れると考えられる。なお、不連続点Peが現れるのでは、粘着剤層10の変形が、弾性変形から塑性変形に変わったためであると考えられる。
【0023】
(見かけ圧縮弾性率)
本発明の一実施形態の粘着テープ1における変曲点までの見かけ圧縮弾性率は、好ましくは2N/cm2/mm以上である。変曲点までの見かけ圧縮弾性率が2N/cm2/mm以上であると、位置調整中に粘着テープ1が貼り付いてしまい、位置調整できなることを抑制することができる。このような観点から、変曲点までの見かけ圧縮弾性率は、より好ましくは2.5N/cm2/mm以上であり、さらに好ましくは3.0N/cm2/mm以上であり、特に好ましくは4.0N/cm2/mm以上である。
また、本発明の一実施形態の粘着テープ1における変曲点までの見かけ圧縮弾性率は、好ましくは14N/cm2/mm以下である。変曲点までの見かけ圧縮弾性率が14N/cm2/mm以下であると、位置調整を終えた後、粘着テープ1を貼り付けたときの粘着力を強くすることができ、仮接着を容易に行うことができるので、作業効率が高くなる。このような観点から、変曲点までの見かけ圧縮弾性率は、より好ましくは12N/cm2/mm以下であり、さらに好ましくは10N/cm2/mm以下である。
なお、見かけ圧縮弾性率は、圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力を変曲点における変位で割り算した値である。見かけ圧縮弾性率は、粘着剤層10の厚み、マスキング部材20を粘着剤層10に積層するときの圧力、マスキング部材20の種類、マスキング部材20による粘着剤層10の被覆率、粘着剤材層10の粘着剤の種類、粘着剤層10の貯蔵弾性率等を調節することにより調整できる。
【0024】
(変曲点における変位)
本発明の一実施形態における粘着テープ1の厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線の変曲点における変位は、好ましくは0.1~1mmである。変曲点における変位が0.1mm以上であると、小さい圧力でマスキング部材20が粘着剤層10に埋没してしまうことを抑制できる。これにより、位置調整前や位置調整中に粘着テープ1が被着体に貼り付いてしまい、位置調整できない等の不具合を防止することができる。一方、変曲点における変位が1mm以下であると、粘着テープ1の粘着力を強くすることができる。これにより、例えば、被着体の重量が大きい場合等でも、被着体を接着でき、作業効率を高くすることができる。上述の観点から、上記変曲点における変位は、より好ましくは0.1~0.6mmであり、さらに好ましくは0.1~0.4mmであり、特に好ましくは0.20~0.25mmである。なお、変曲点における変位は、粘着剤層10の厚み、マスキング部材20を粘着剤層10に積層するときの圧力、マスキング部材20の種類、粘着剤層10の粘着剤の種類、粘着剤層10の貯蔵弾性率等を調節することにより調整できる。
【0025】
(マスキング部材の高さ)
マスキング部材20が設けられている粘着剤層10の面11に対するマスキング部材20の高さha(
図1(b)参照)は、好ましくは0.1~1mmである。マスキング部材20の高さhaが0.1~1mmであると、上記変曲点における変位を容易に0.1~1mmとすることができる。このような観点から、マスキング部材20の高さhaは、より好ましくは0.1~0.6mmであり、さらに好ましくは0.1~0.4mmであり、特に好ましくは0.20~0.25mmである。
【0026】
(粘着剤層におけるマスキング部材の被覆率)
マスキング部材20が粘着剤層10を被覆するときの被覆率は、好ましくは20%未満である。被覆率が20%未満であると、粘着剤層10の露出面を大きくすることができ、粘着テープ1の接着を強くすることができる。このような観点から、粘着剤層10におけるマスキング部材20の被覆率は低ければ低いほうがよく、好ましくは18%以下、より好ましくは14%以下、さらに好ましくは10%以下である。また、上記被覆率は、マスキング部材20によって、粘着剤層10を一定面積以上被覆して、位置調整性能を高める観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上である。なお、粘着剤層10におけるマスキング部材20の被覆率は、マスキング部材20における開口部23の面積割合を変えることにより、調整することができる。
【0027】
(線状部材の直径及びメッシュ材のメッシュピッチ)
マスキング部材20を構成する線状部材の直径は、特に限定されないが、好ましくは、0.1~1.0mm、より好ましくは0.1~0.6mm、さらに好ましくは0.1~0.4mmである。また、マスキング部材20において、メッシュ材のメッシュピッチは、例えば、1~20mm、好ましくは3~10mmである。マスキング部材20がこれらメッシュピッチと直径とを有することで、被覆率を上記した所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0028】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤層10の厚みhb(
図1(b)参照)は、150~10000μmであることが好ましい。厚さを150μm以上とすることで、マスキング部材20が粘着剤層11に埋没しやすくなる。そのため、粘着剤層10により粘着テープ1を被着体に接着させる際には、粘着剤層10が被着体に十分に接触し、高い粘着力で粘着テープ1を被着体に接着させることが可能になる。また、厚さを10000μm以下とすることで、マスキング部材20が粘着剤層10内部に必要以上に入り込んで、マスキング部材20の被着体に対する接触面積が少なくなることを防止し、位置調整性能を高めやすくなる。
位置調整性能及び粘着力の観点から、粘着剤層10の厚さは300μm以上がより好ましく、600μm以上がさらに好ましく、また、6000μm以下がより好ましく、2000μm以下がさらに好ましく、1400μm以下がよりさらに好ましい。。
【0029】
次に、各層を構成する材料及び構成について、より詳細に説明する。
(マスキング部材)
マスキング部材20は、非粘着体であり、押圧されても被着体に接着することができない部材である。マスキング部材20は、上記のように線状部材により構成されるが、線状部材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アラミド、ポリアリレートなどの合成樹脂から形成されるとよい。また、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維から形成されてもよい。さらに、線状部材以外にも球状部材(粒子)をマスキング部材として使用することができる。球状部材のの例としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、二硫化モリブデン、酸化チタン、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化第一鉄、酸化第二鉄、ガラスビーズ等の無機質固体粒子、硬化ゴム、エボナイト、リグニン/フェノール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂その他の樹脂類等の有機質固体粒子等を挙げることができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、マスキング部材が球状部材である場合は、粘着剤層の表面に球状部材を分散させる。
【0030】
(粘着剤層)
粘着剤層10を構成する粘着剤は、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらは単独で使用してよいし、組み合わせて使用してもよい。これらの中では、接着力、耐熱性及び耐候性が優れているという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0031】
(アクリル系粘着剤)
以下、粘着剤層10に使用されるアクリル系粘着剤の一実施形態についてより詳細に説明する。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)を含む重合性モノマーを重合したアクリル系重合体を含有する粘着剤である。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を含む概念を指すものであり、他の類似の用語も同様である。また、用語「重合性モノマー」は、繰り返し単位を有しない化合物のみならず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)と共重合する化合物であれば、後述するオレフィン重合体(C)などのモノマー自身が繰り返し単位を有するものも含みうる概念を指す。
【0032】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)]
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数がこの範囲内であると、粘着剤層10のガラス転移温度(Tg)を適切な温度範囲にして、粘着層10に粘着性を付与することができる。
【0033】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はこれらの組み合わせがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位は、粘着剤において主成分を構成するものであって、その含有量は、粘着剤全量基準で一般的に30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45重量%以上である。このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量を多くすると、粘着剤に所望の粘着力を付与することが可能になる。
なお、粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位の含有量は、後述する粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量と実質的に同じであるので、置き換えて表すことができる。以下で説明する(B),(C)成分など、(A)成分以外の成分も同様である。
【0035】
[極性基含有ビニルモノマー(B)]
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)に加えて、極性基含有ビニルモノマー(B)を含有することが好ましい。極性基含有ビニルモノマー(B)は、極性基とビニル基を有するものである。粘着剤層10に極性基含有モノマー(B)を用いることで、粘着剤層10に接着性や凝集力を付与することができる。
極性基含有ビニルモノマー(B)としては、例えば、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。これらの極性基含有ビニルモノマー(B)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
極性基含有ビニルモノマー(B)を使用する場合、粘着剤において極性基含有ビニルモノマー(B)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~12質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。極性基含有ビニルモノマー(B)の含有量をこのような範囲内とすることで粘着剤層10の粘着性と凝集力との間のバランスがよくなる。
【0037】
[オレフィン重合体(C)]
重合性モノマーは、さらに末端に重合性結合を有するオレフィン重合体(C)を含むことが好ましい。このようなオレフィン重合体(C)を使用することで、粘着力と凝集力との相反する物性を向上させることができる。なお、重合性結合は、重合性モノマーと重合することが可能な不飽和の炭素-炭素結合を意味し、例えば不飽和二重結合が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
オレフィン重合体(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられ、例えば、片末端のみに(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィン、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられる。なお、ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、イソプレンなどの二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物の重合体、又はその水素添加物である。
【0038】
片末端のみに(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンとしては、例えば、片末端にエポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエチレン等が挙げられる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品として株式会社クラレ製の「L-1253」等が挙げられる。
【0039】
また、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するオレフィン重合体としては、例えば、両末端にエポキシ基を有するポリプロピレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリプロピレン等が挙げられる。また、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品としては、日本曹達株式会社製の「TEAI-1000」、「EA-3000」、「TE-2000」、大阪有機化学工業株式会社製の「BAC-45」等が挙げられる。
オレフィン重合体(C)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
オレフィン重合体(C)としては、上記した中では、両末端又は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが好ましく、中でも両末端又は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が好ましい。
なお、オレフィン重合体(C)として、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンなどを使用すると、アクリル系重合体を網目状に重合することが可能となる。そのため、粘着剤の高い粘着力を維持しながら粘着剤の凝集力を高めやすくなる。
さらに、粘着力及び凝集力などを良好にする観点から、オレフィン重合体(C)としては、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するオレフィン重合体と、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するオレフィン重合体とを併用することが好ましい。
【0041】
オレフィン重合体(C)は、その数平均分子量が好ましくは500~20000、より好ましくは1000~10000である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出すればよい。
また、粘着剤においてオレフィン重合体(C)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、4~12質量部がさらに好ましい。
【0042】
[その他のモノマー]
重合性モノマーは、上記した(A)~(C)以外のその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、スチレン系モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等が挙げられる。
また、多官能モノマーとしては、ビニル基を2つ以上有するモノマーが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能モノマーを使用すると、アクリル系重合体に網目構造を形成することが可能になる。
具体的な多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート等が挙げられる。
その他のモノマーを使用する場合、粘着剤において、その他のモノマー由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、0.5~15質量部、より好ましくは1~7質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0043】
[粘着付与樹脂]
アクリル系粘着剤は、粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添系のものが好ましく、中でも水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤の凝集力及び粘着力を向上させる観点から、95℃以上程度であればよいが、120℃以上のものを含むことが好ましく、例えば、95℃以上120℃未満のものと、120℃以上150℃以下のものとを併用してもよい。なお、軟化点は、JISK2207に規定される環球法により測定すればよい。
アクリル系粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは7~35質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。
【0044】
[微粒子]
アクリル系粘着剤は、微粒子を含有してもよい。微粒子を含有させることで、被着体が粗面である被着体に対する粘着力、並びに、粘着剤の凝集力を向上させることができる。
微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
アクリル系粘着剤における微粒子の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.7~5質量部である。
【0045】
[その他の成分]
本発明において用いるアクリル系粘着剤は、前述した成分以外にも、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、光重合開始剤、難燃剤等の粘着剤に従来使用されている各種の添加剤を含有してもよい。
【0046】
[ゲル分率]
上記アクリル系粘着剤のゲル分率は、30~80質量%が好ましい。ゲル分率を下限値以上とすることで、粘着剤の凝集力を高めやすくなる。また、上限値以下とすることで、粘着剤の粘着力を高めやすくなる。これら観点からゲル分率は、40~70質量%が好ましく、45~65質量%がより好ましい。
ゲル分率は、例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するオレフィン重合体(C),多官能モノマーの配合の有無、及び配合量を適宜調整することで上記した範囲内に調整することが可能である。なお、ゲル分率は下記式(1)より算出することができる。なお、重合性モノマーは、ゲル分率を上記範囲内とするために、多官能モノマー及び(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するオレフィン重合体(C)の少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。また、多官能モノマー及び(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するオレフィン重合体(C)などの官能基を2以上有する化合物は、総称して架橋剤ということもある。
ゲル分率(質量%)=(B/A)×100 式(1)
A:粘着剤層(試験片)の重量
B:40℃のテトラヒドロフランに粘着剤層(試験片)を48時間浸漬し、その後の粘着剤層の不溶解分の乾燥重量
【0047】
(粘着剤層の製造方法)
粘着剤層10を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤を使用する場合には、上記した重合性モノマーを含む粘着剤組成物に光を照射して、重合性モノマーを重合させることで得ることが可能である。また、粘着剤組成物は、必要に応じて上記した粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分の少なくとも1種を含んでいてもよい。
より具体的に説明すると、まず、重合性モノマー、さらに必要に応じて配合される粘着付与樹脂、微粒子、その他の成分を、ガラス容器等の反応容器に投入して混合して、粘着剤組成物を得る。
次いで、粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物をセパレータ上に塗布するか、又は、樹脂フィルム、織布、不織布等の支持体などに塗布した後、光を照射し重合性モノマーを重合することにより粘着剤層10を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
なお、本製造方法では、各成分を混合して得た粘着剤組成物は、粘度を高くするために、セパレータ又は支持体などに塗布する前に予備重合をしてもよい。
【0048】
粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤の有無等によっても異なるが、0.1~100mW/cm2程度が好ましい。
【0049】
(ゴム系粘着剤)
次に、粘着剤に使用するゴム系粘着剤について説明する。ゴム系粘着剤は、ゴム成分と、粘着付与樹脂を含有するものであり、ゴム成分としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体を使用することが好ましい。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が好ましくは25~70質量%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは45~60重量%である。ここでジブロックとは、スチレンとイソプレンとからなるジブロックのことをいう。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が25%以上となることで十分な粘着力が発現し、また、70質量%以下とすることで剪断強度を高めやすくなる。なお、スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック以外にも、スチレン、イソプレン、スチレンブロックからなるトリブロックなどブロックを3つ以上有するものも含有する。
【0050】
スチレン-イソプレンブロック共重合体におけるスチレン量は、特に限定されないが、14~24質量%であることが好ましく、より好ましくは15~18質量%である。スチレン量が14質量%以上であると、凝集性の高い粘着剤となりやすくなる。また、24質量%以下とすると、凝集力が適度な大きさとなり粘着力を発現しやすくなる。
スチレン-イソプレンブロック共重合体の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量で100,000~400,000が好ましく、150,000~250,000がより好ましい。なお、ここでいう質量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定されるものをいう。
【0051】
ゴム系粘着剤に使用される粘着付与樹脂は、各種の粘着付与樹脂が使用可能であるが、好ましくは石油系樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂を使用する。粘着付与樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用することが好ましい。このような粘着付与樹脂の組み合わせにより粘着力を良好にしやすくなる。
石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、スチレン-イソプレンブロック共重合体との相溶性の観点から脂肪族系石油樹脂が好ましい。また、石油系樹脂は、軟化点が90~120℃程度のものを使用することが好ましい。
また、テルペン樹脂としては、軟化点が80~120℃程度のものが使用可能であるが、粘着力確保の観点から100℃未満のものが好ましい。また、クマロン樹脂としては、凝集力確保のために、軟化点が好ましくは110~130℃、より好ましくは115~125℃のものを使用する。
【0052】
粘着付与樹脂はゴム成分100質量部に対して60~250質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましく、110~180質量部がさらに好ましい。粘着付与樹脂の配合量を上記範囲内とすることで、凝集力を良好にして適度な粘着力を付与できるようになる。
また、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用する場合、石油系樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、60~150質量部が好ましく、60~110質量部がより好ましい。一方で、テルペン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~70質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましく、30~50質量部がさらに好ましい。さらに、クマロン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部がさらに好ましい。
ゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤と同様に上記した微粒子を含有してもよく、また、ゴム系粘着剤は、必要に応じて、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0053】
(ウレタン系粘着剤)
上記したウレタン粘着剤は特に限定されず、例えば、少なくともポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂等が挙げられる。上記ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのウレタン粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ウレタン粘着剤としては、ポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるウレタン樹脂を使用してもよい。ポリウレタンポリオールは、上記したポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応したもの、又はポリオールとポリイソシアネート化合物とジアミンなどの鎖延長剤とを反応させたものが挙げられる。多官能イソシアネート系硬化剤としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、上記したイソシアネート化合物を使用可能である。
ウレタン系粘着剤は、ウレタン樹脂に加えて、上記した微粒子を含有してもよく、また、ウレタン系粘着剤は、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0054】
(シリコーン系粘着剤)
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、付加反応型、過酸化物硬化型又は縮合反応型のシリコーン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、低温短時間で硬化可能という観点から、付加反応型シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。なお、付加反応型シリコーン系粘着剤は粘着剤層10の形成時に硬化するものである。シリコーン系粘着剤として、付加反応型シリコーン系粘着剤を用いる場合、上記シリコーン系粘着剤は白金触媒等の触媒を含んでいてもよい。
また、シリコーン系粘着剤は、微粒子を含有してもよく、また、架橋剤、粘着力を制御するための各種添加剤を加えたりしてもよい。
【0055】
(セパレータ)
なお、マスキング部材20を覆うように粘着剤層10の一方の面11上にセパレータを設けてもよい。セパレータは、一般的に粘着剤層10を保護するために設けられ、粘着テープ1を使用する際に剥離される。
セパレータは、通常、マスキング部材20によって被覆されない粘着剤層10の一部に接触し、それにより、粘着剤層11に貼付される。セパレータは、特に限定されないが、マスキング部材20の開口部23に入り込むように湾曲されるとよい。
セパレータは、粘着剤層10に対して容易に剥離できるものであれば特に限定されず、後述するように剥離剤層が設けられたものや、樹脂フィルム中に表面改質剤などが配合されたものが使用される。
【0056】
セパレータとしては、例えば、セパレータ用基材と、セパレータ用基材の少なくとも一方の面に設けられる剥離剤層とを備えるものを使用する。剥離剤層は、セパレータ用基材に剥離処理を施すことで形成できる。セパレータは、剥離剤層が設けられた面がマスキング部材20及び粘着剤層10に接触するように配置される。
また、セパレータは、セパレータ用基材の両面が剥離処理されて、両面に剥離剤層が設けられてもよい。例えば、粘着テープ1がロール状に巻回されるときには、粘着剤層10の他方の面12がセパレータの背面に接触する。したがって、両面に粘着剤層が設けられることで、ロール状の粘着テープ1を繰り出しやすくなる。
【0057】
剥離剤層を構成する剥離剤は、公知の剥離剤を使用でき、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、アルキド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム系エラストマーなどから構成される剥離剤が使用できる。
セパレータ用基材は、セパレータに使用される公知の基材が使用でき、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、上記紙基材にセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル-スチレン樹脂などで目止め処理した紙基材等が挙げられる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの中では、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
なお、合成樹脂フィルムにおいては、樹脂を1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0058】
また、セパレータは、粘着剤層10に対して容易に剥離できるものであれば、必ずしも剥離剤層を有する必要はない。例えば、合成樹脂フィルムに表面改質剤などが配合されたものであってもよい。表面改質剤が配合された合成樹脂フィルムは、表面改質剤によって一定の剥離性がフィルム表面に付与され、セパレータの両面が一定の剥離性を有することになる。
表面改質剤としては、オレフィン・シリコーン共重体などが挙げられる。合成樹脂フィルムとしては、セパレータ用基材に使用される合成樹脂フィルムと同様のものが使用可能である。合成樹脂フィルムにおいて、表面改質剤の配合量は、フィルム全量基準で、例えば、0.1質量%以上15質量%以下、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0059】
セパレータとしては、ラミネート紙や、合成樹脂フィルムを有するものを使用することが好ましい。セパレータの厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上1000μm以下、好ましくは20μm以上250μm以下である。
【0060】
(両面粘着テープ)
本発明の一実施形態の粘着テープ1は、好ましくは、基材を含まない両面粘着テープ(基材レス両面粘着テープ)である。基材レス両面粘着テープは、粘着剤層10を支持する基材がなく、粘着剤層10の一方の面11のみならず、他方の面12(
図1(b)参照)も被着体に接着される接着面となる。粘着テープ1が、基材レス両面粘着テープであることで、両面11,12それぞれに被着体を接着させ、一方の被着体を他方の被着体に固定させることができる。
具体的には、一方の被着体に他方の面12を介して、粘着テープ1を接着させた後、一方の面11に他方の被着体を接着させて、一方の被着体を他方の被着体に固定させるとよい。この場合、一方の面11に他方の被着体を接着させる際に、上記したように、位置調整できるので、2つの被着体を位置合わせした上で、固定させることができる。
【0061】
また、本発明の一実施形態の粘着テープ1は、シート状であってもよいし、シート状の粘着テープがさらにロール状に巻回されていてもよい。シート状の粘着テープ1は、上記したような基材レス両面粘着テープである場合には、他方の面12側にもセパレータが貼付され、両接着面がセパレータにより保護されるとよい。
【0062】
ただし、本発明の一実施形態の粘着テープは、基材レス粘着テープに限定されず、基材を有する両面粘着テープであってもよい。具体的には、粘着剤層10の他方の面12上に基材、及び粘着剤層がこの順に設けられて、両面粘着テープとされてもよい。また、本発明の一実施形態の粘着テープは、両面粘着テープである必要はなく、例えば、他方の面12上に基材が設けられて、一方の面11のみが接着面となる片面粘着テープであってもよい。
【0063】
(粘着テープの製造方法)
本発明の一実施形態の粘着テープの製造方法は、特に限定されないが、例えば、両面を離型処理した剥離ライナーの上に形成された粘着剤層10の一方の面11の上に、マスキング部材20を積層して、粘着テープ1を形成するとよい。この際、粘着剤層10上に、マスキング部材20を積層した後、ラミネータなどにより、マスキング部材20を適宜加圧してもよい。加圧する圧力によって、マスキング部材20の粘着剤層10への最初の沈み込み量を調整することができるので、加圧する圧力によって、粘着テープ1の変曲点における変位を調整することができる。なお、以上の粘着テープの製造方法によって得られた粘着テープをロール状にしてもよい。
【0064】
<本発明の一実施形態の粘着テープの変形例>
本発明の一実施形態の粘着テープは、次のように変形することができる。
(変形例)
本発明の一実施形態の粘着テープ1は、粘着剤層10の一方の面11にメッシュ状のマスキング部材20を備えることにより、粘着剤層の少なくとも一方の面に凸部を設けた。しかし、粘着剤層の少なくとも一方の面に凸部を設けることができれば、本発明の粘着テープの粘着剤層の少なくとも一方に設けられる凸部はメッシュ状のマスキング部材に限定されない。例えば、線状部材をメッシュ状にせず、複数本の線状部材を並列に並べて配置するだけでもよい。また、粘着剤層の少なくとも一方の面に粒子を塗布することにより、粘着剤層の少なくとも一方の面に凸部を設けてもよい。さらに、粘着剤層の表面の形状をドット状の凸形状、ストライプ状の凸形状、メッシュ状の凸形状等にすることにより、粘着剤層の少なくとも一方の面に凸部を設けてもよい。しかしながら、位置調整及び位置調整後の接着を効率的に実施できるという観点から、凸部は糸状もしくは帯状の部材から構成されるマスキング部材であることが好ましく、マスキング部材は糸状もしくは帯状のメッシュ状の部材から構成されることがより好ましく、糸状の部材から構成されるメッシュ状部材であることがさらに好ましい。なお、マスキング部材とは、粘着材層の面の一部を覆い隠す部材をいう。マスキング部材の厚みにより、粘着剤テープが被着体に接しても粘着層は被着体に接しないようにすることができる。これにより、粘着テープに位置調整機能が発現する。そして、粘着テープをさらに押圧すると、粘着テープの粘着剤層におけるマスキング部材に隠されていない部分が被着体に接し、粘着テープは被着体に接着する。
【0065】
以上説明した本発明の一実施形態の粘着テープ及びその変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明の粘着テープはこれらの内容に限定されない。
【0066】
(粘着テープの用途)
本発明の粘着テープは、様々な分野で使用可能であるが、例えば建築分野で使用できる。建築分野では、例えば、合板、化粧材、石膏ボード、セメント板などの各種の建築資材に、粘着テープを他方の面を介して接着させ、その後、粘着テープの一方の面を鉄骨、桟などの支持体などに接着させることで、粘着テープにより、建築資材を支持体などに固定させるとよい。この場合、建築資材を、支持体に固定させる際、位置調整できるので、建築資材を支持体の正確な位置に取り付けることができる。
【0067】
<面材>
本発明の面材は、少なくとも一方の面の少なくとも一部が本発明の粘着テープにより被覆されている。粘着テープは、凸部を有する面及びその反対側の面のいずれかが面材と貼り合わされるとよい。しかし、壁面下地に粘着テープを貼り付けた後に、面材を位置調整して、面材を壁面下地に貼り合わせることができるという観点から、面材は、粘着テープの凸部を有する面と貼り合わされることが好ましい。面材には、例えば、合板、繊維板、パーティクルボード、木毛セメント板、石膏ボード、石綿セメント板、石綿セメントケイ酸カルシウム板、グラスウールボード、ロックウールボート、フォームスチレンボード、硬質ウレタンフォームボード等が挙げられる。本発明の粘着テープを好適に使用できるという観点から、好ましい面材は、石膏ボードである。
【0068】
面材において本発明の粘着テープにより少なくとも一部が被覆されている面における本発明の粘着テープの被覆率は好ましくは1%以上である。粘着テープの被覆率が1%以上であると、面材を十分な接着力で固定できる。このような観点から、粘着テープの被覆率は、より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは3%以上である。また、材料コストの観点から上記被覆率は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
なお、各種物性の測定方法は、以下のとおりである。
[粘着剤層の厚み]
粘着剤層の厚みは、任意の10点の厚みを測定して、その平均値を求めた。
【0071】
[マスキング部材の被覆率]
粘着剤層の表面を上方から観察して、粘着剤層の全面積に対する、マスキング部材が設けられている部分の面積の割合を求めた。
【0072】
[マスキング部材の高さ(ha)]
マスキング部材の高さ(ha)(
図1(b)参照)は、マスキング部材の任意の10点の高さを測定して、その平均値を求めた。
【0073】
[圧縮試験]
(試験の準備)
材料試験機(テンシロン万能試験機、株式会社エー・アンド・デイ製、型式:RTF-1310A)のクロスヘッドにロードセル(ロードセル定格:5kN)を取り付けた後、ロードセルに、粘着面との接触面の直径が15mmであるSUS製の円柱を取り付けた。
(測定用試料の準備)
実施例及び比較例の粘着テープから、それぞれ、はさみを用いて20mm×20mmの測定用試料を切り出した。このとき、測定用試料の角の頂点とメッシュの交点との間の距離が2mm以上になるようにした。その後、切り出した測定用試料をSUS製の板に気泡が入り込まないように貼り付けた。
(測定)
クロスヘッドを降下させて、SUS製の円柱の先端が測定用試料に接触する直前まで、SUS製の円柱の先端を測定用試料に近づけた。そして、0.5mm/分の試験速度で圧縮試験を行った。なお、SUS製の円柱の先端が少なくとも4つのメッシュの交点を圧縮するように、測定用試料を貼り付けたSUS製の板の位置を調節した。
【0074】
[位置調整実用評価]
下張りの石膏ボードに上張りの石膏ボードを貼り付けることによる位置調整の官能試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:位置調節のために石膏ボードを移動させる際、抵抗感なく石膏ボードを移動させることができた。
△:位置調節のために石膏ボードを移動させる際、「○」の評価よりも抵抗感があったが、作業効率に影響ない程度であった。
×:石膏ボードを添わせた段階で石膏ボードが接着してしまい、位置調節できなかった。または、位置調節のために石膏ボードを移動させる際、強い抵抗感があった。
【0075】
[圧着性実用評価]
下張りの石膏ボードに上張りの石膏ボードを貼り付けることによる圧着性の官能試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
○:強い力で石膏ボードを押さなくても石膏ボードがはズレ落ちなかった。
△:石膏ボードがズレ落ちないようするために「○」の評価よりも強い力で石膏ボードを押す必要はあったが、石膏ボードを押す力は作業効率には影響ない程度であった。
×:石膏ボードがズレ落ちないようするために強い力で、石膏ボードを押さなくてはならなかった。
【0076】
[位置調整機能付き両面粘着テープの作製]
[実施例1]
(両面粘着テープ)
表1に記載の配合に従って、粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。次いで、粘着剤組成物を剥離シートの剥離処理面上に塗布した。次いで、塗布した粘着剤組成物の上に、剥離処理面が粘着剤組成物に接するように、別の剥離シートを被覆した。なお、剥離シートとしては、シリコーン離型処理されたPETフィルム(厚み50μm)を使用した。
この状態で被覆側の剥離シートにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射し、両面に剥離シートが貼付された粘着剤層を得た。粘着剤層の厚みは300μmであった。
その後、一方の剥離シートを剥がして、粘着剤層の上に、マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)を積層し、ラミネータを用いて粘着剤層の上にマスキング部材を形成した。
【0077】
【0078】
※表1における各成分は、以下のとおりである。
オレフィン重合体:商品名「L-1253」、株式会社クラレ製、(メタ)アクリロイル基を片末端に有する水素化ポリブタジエン
粘着付与樹脂1:商品名「アルコンP140」、荒川化学工業株式会社製、水添石油樹脂、軟化点140℃
粘着付与樹脂2:商品名「アルコンP100」、荒川化学工業株式会社製、水添石油樹脂、軟化点100℃
微粒子:商品名「セルスターZ-27」、東海工業株式会社製、ガラスバルーン
架橋剤:商品名「TEAI-1000」、日本曹達株式会社製
重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
【0079】
[実施例2~3]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例1と同様な方法で、実施例2~3の両面粘着テープを作製した。
[実施例4]
メッシュ材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた。また、粘着剤層の上にマスキング部材を積層するときに用いたラミネータのクリアランスの条件を変更して、マスキング部材の粘着剤層に対する埋め込み量を増やした。それ以外は、実施例3と同様な方法で、実施例4の両面粘着テープを作製した。
【0080】
[実施例5~6]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例1と同様な方法で、実施例5~6の両面粘着テープを作製した。
【0081】
[実施例7]
マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた以外は、実施例6と同様な方法で、実施例7の両面粘着テープを作製した。
【0082】
[実施例8]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例1と同様な方法で、実施例8の両面粘着テープを作製した。
【0083】
[実施例9]
粘着剤層の上にマスキング部材を積層するときに用いたラミネータのクリアランスの条件を変更して、マスキング部材の粘着剤層に対する埋め込み量を増やした以外は、実施例8と同様な方法で、実施例9の両面粘着テープを作製した。
【0084】
[実施例10]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更し、マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた。それ以外は、実施例1と同様な方法で、実施例10の両面粘着テープを作製した。
【0085】
[比較例1]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例1と同様な方法で、比較例1の両面粘着テープを作製した。
【0086】
[比較例2]
・製品名「位置調整機能付き強力両面テープ」、品番「530」、積水化学工業株式会社製、粘着材「アクリル系粘着材」、基材「発泡ポリエチレン」、粘着材の表面に特殊ネットを積層
【0087】
[仮接着機能付き両面粘着テープの作製]
[実施例11]
実施例1と同様な方法で、実施例11の両面粘着テープを作製した。
【0088】
[実施例12]
マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、実施例12の両面粘着テープを作製した。
【0089】
[実施例13~14]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例11と同様な方法で、実施例13~14の両面粘着テープを作製した。
[実施例15]
マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた以外は、実施例14と同様な方法で、実施例15の両面粘着テープを作製した。
[実施例16]
粘着剤層の上に、粘着剤層の上にマスキング部材を積層するときに用いたラミネータのクリアランスの条件を変更して、マスキング部材の粘着剤層に対する埋め込み量を増やした以外は、実施例15と同様な方法で、実施例16の両面粘着テープを作製した。
【0090】
[実施例17~18]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例11と同様な方法で、実施例17~18の両面粘着テープを作製した。
【0091】
[実施例19]
マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた以外は、実施例18と同様な方法で、実施例19の両面粘着テープを作製した。
【0092】
[実施例20]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例11と同様な方法で、実施例20の両面粘着テープを作製した。
【0093】
[実施例21]
粘着剤層の上にマスキング部材を積層するときに用いたラミネータのクリアランスの条件を変更して、マスキング部材の粘着剤層に対する埋め込み量を増やした以外は、実施例20と同様な方法で、実施例21の両面粘着テープを作製した。
【0094】
[実施例22]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更し、マスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)の代わりにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」)を用いた。それ以外は、実施例11と同様な方法で、実施例22の両面粘着テープを作製した。
【0095】
[実施例23]
両面粘着テープの厚みを変更するために、粘着剤組成物の剥離シートの剥離処理面上への塗布量を変更した以外は、実施例11と同様な方法で、実施例23の両面粘着テープを作製した。
【0096】
[比較例3]
以下の両面粘着テープにマスキング部材(JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」)を積層することにより、比較例3の両面粘着テープを作製した。
・製品名「3MTMVHBTMアクリルフォーム構造用接合テープ(一般用途)レギュラータイプ」、品番「Y-4930」、スリーエムジャパン株式会社製、粘着剤「アクリル系接着剤」、基材「アクリルフォーム」
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
なお、表2~5の粘着層及びマスキング部材は以下のとおりである。
(粘着層)
A:上述の作製した粘着剤層、粘着剤「アクリル系接着剤」、基材なし
B:製品名「位置調整機能付き強力両面テープ」、品番「530」、積水化学工業株式会社製、粘着剤「アクリル系粘着材」、基材「発泡ポリエチレン」、粘着材の表面に特殊ネットを積層
C:製品名「3MTMVHBTMアクリルフォーム構造用接合テープ(一般用途)レギュラータイプ」、品番「Y-4930」、スリーエムジャパン株式会社製、粘着剤「アクリル系接着剤」、基材「アクリルフォーム」
(マスキング部材)
R03235:JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03235」
R03650:JX ANCI株式会社製、商品名「コンウェッドネット」、品番「R03650」
【0102】
以上のように、実施例1~10では、粘着剤層の少なくとも一方の面に凸部を設けるとともに、粘着テープの厚さ方向について圧縮試験を実施したときに得られた圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力を0.4N/cm2以上とした。これにより、位置調整実用評価の結果が良好となり、石膏ボードなどの面材の貼り付けの作業を効率的に行えることがわかった。一方、比較例1~2では、変曲点における圧縮応力が0.4N/cm2未満であったので、位置調整実用評価の結果が悪く、作業効率が悪くなることがわかった。
また、実施例11~23では、圧縮応力-変位曲線の変曲点における圧縮応力を10N/cm2以下とした。これにより、圧着性実用評価の結果が良好となり、石膏ボードなどの面材の貼り付けの作業を効率的に行えることがわかった。一方、比較例3では、変曲点における圧縮応力が10N/cm2よりも大きかったので、圧着性実用評価の結果が悪く、作業効率が悪くなることがわかった。
【符号の説明】
【0103】
10 粘着剤層
20 マスキング部材
21,22 糸状部材
23 開口部
100 材料試験機
110 クロスヘッド
120 ロードセル
130 テーブル
140,150 支柱
210 ステンレス鋼製の円柱
220 ステンレス鋼製の板
230 土台