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特許7028837光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置
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  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図1A
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図1B
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図2A
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図2B
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図2C
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図3
  • 特許-光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/24 20060101AFI20220222BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G02B6/24
G02B6/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165347
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021043330
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沖 達也
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】楠 修一
(72)【発明者】
【氏名】金井 一晃
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 隆史
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0321799(US,A1)
【文献】特開2009-053365(JP,A)
【文献】特開2014-085532(JP,A)
【文献】特表2019-525228(JP,A)
【文献】特開平05-163318(JP,A)
【文献】特開2008-256867(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104391352(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/24
G02B 6/255-6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/36- 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のV溝が並行に延びるように形成されたV溝基板と、
各々、前記V溝基板上の対応する前記V溝に収容されて延びるように設けられた基板上部分と、前記基板上部分に連続して前記V溝基板外に延びるように設けられた基板外部分と、を含む複数本の光ファイバと、
を備えた光ファイバアレイであって、
前記複数本の光ファイバのそれぞれは、裸光ファイバと、前記裸光ファイバを被覆する引張弾性率が1800MPa以上2400MPa以下の樹脂で形成された長さ方向に沿って厚さが均一な単一層のジャケットとを有するとともに、前記基板上部分の全長が前記ジャケットで被覆されており、且つ前記基板上部分の前記ジャケットの厚さと、前記基板外部分の前記ジャケットの厚さとが同一であり、
前記ジャケットの厚さが5μm以上15μm以下である光ファイバアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバアレイにおいて、
前記V溝基板との間で前記複数本の光ファイバを挟持するように設けられた押さえ基板を更に備えた光ファイバアレイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された光ファイバアレイにおいて、
前記ジャケットが、引張強さが60MPa以上の樹脂で形成されている光ファイバアレイ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された光ファイバアレイにおいて、
前記ジャケットが、引張破壊ひずみが8%以上の樹脂で形成されている光ファイバアレイ。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載された光ファイバアレイにおいて、
前記ジャケットが、アクリル系UV硬化型樹脂又はポリイミド樹脂で形成されている光ファイバアレイ。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載された光ファイバアレイが設けられたファイバ出射ヘッドを備えた直接製版記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CTP(直接製版記録装置)等のファイバ出射ヘッドやWDM(光波長分割多重通信)システムの接続デバイスでは、複数本の光ファイバがV溝基板上のそれぞれ対応するV溝に収容された光ファイバアレイが用いられる。特許文献1には、その光ファイバアレイにおいて、光ファイバの先端側のジャケットが剥がされて裸光ファイバが露出した部分をV溝基板上のV溝に収容することにより、光ファイバの位置精度を高める一方、V溝基板の角部にジャケットで被覆された部分を接触させることにより、裸光ファイバがV溝基板の角部に接触して応力集中により断線するのを防止するようにした構造が開示されている。また、特許文献1には、光ファイバの先端側部分のジャケットを薄肉化処理することにより、裸光ファイバがV溝基板の角部に直接接触するのを阻止した構造も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-85532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ファイバのジャケットの剥離や薄肉化の加工を施すには、その加工だけでなく、ジャケットの材の特性と要求位置精度に適合した条件出しが必須となり、場合によってはロット毎の条件調整も必要になるため、多くの工数が必要となる。
【0005】
本発明の課題は、光ファイバの裸光ファイバがV溝基板の角部に直接接触するのを阻止することができ、しかも、その接触阻止のためのジャケットの加工に工数をかける必要がない光ファイバアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のV溝が並行に延びるように形成されたV溝基板と、各々、前記V溝基板上の対応する前記V溝に収容されて延びるように設けられた基板上部分と、前記基板上部分に連続して前記V溝基板外に延びるように設けられた基板外部分と、を含む複数本の光ファイバとを備えた光ファイバアレイであって、前記複数本の光ファイバのそれぞれは、裸光ファイバと、前記裸光ファイバを被覆する引張弾性率が1800MPa以上2400MPa以下の樹脂で形成された長さ方向に沿って厚さが均一な単一層のジャケットとを有するとともに、前記基板上部分の全長が前記ジャケットで被覆されており、且つ前記基板上部分の前記ジャケットの厚さと、前記基板外部分の前記ジャケットの厚さとが同一であり、前記ジャケットの厚さが5μm以上15μm以下である
【0007】
本発明は、本発明の光ファイバアレイが設けられたファイバ出射ヘッドを備えた直接製版記録装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバのジャケットがV溝基板の角部に接触するので、裸光ファイバがV溝基板の角部に直接接触するのを阻止することができ、しかも、基板上部分の全長がジャケットで被覆されており、また、基板上部分のジャケットの厚さと、基板外部分のジャケットの厚さとが同一であるので、裸光ファイバのV溝基板の角部への接触阻止のためのジャケットの加工に工数をかける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施形態に係る光ファイバアレイを設けたファイバ出射ヘッドの斜視図である。
図1B】実施形態に係る光ファイバアレイを設けたファイバ出射ヘッドの縦断面図である。
図2A】実施形態に係る光ファイバアレイの平面図である。
図2B図2AにおけるIIB-IIB断面図である。
図2C図2AにおけるIIC-IIC断面図である。
図3】光ファイバの斜視図である。
図4】実施形態に係る光ファイバアレイの変形例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1A及びBは、実施形態に係る光ファイバアレイ10が設けられたファイバ出射ヘッドHを示す。このファイバ出射ヘッドHは、例えばCTP(直接製版記録装置)等でレーザ光の照射に用いられるものである。
【0012】
ファイバ出射ヘッドHは、SUS製等の可撓管Tの先端に外嵌め状に取り付けられた円筒状部材のヘッド本体20を備える。ヘッド本体20の形成材料としては、例えば、SUS、アルミ等の金属が挙げられる。ヘッド本体20は、例えば、長さが30mm以上200mm以下、外径が8mm以上50mm以下である。そして、このヘッド本体20の先端には矩形開口が形成されており、その矩形開口に実施形態に係る光ファイバアレイ10のユニットが内嵌めされている。
【0013】
図2A~Cは、実施形態に係る光ファイバアレイ10を示す。
【0014】
実施形態に係る光ファイバアレイ10は、V溝基板11と、複数本の光ファイバ12と、一対の押さえ基板13とを備える。
【0015】
V溝基板11は、例えば長方形のジルコニア基板や石英基板等で構成されている。V溝基板11は、例えば、長さが5mm以上20mm以下、幅が5mm以上15mm、及び厚さが0.5mm以上3mm以下である。
【0016】
V溝基板11の両面のそれぞれの基板上には、複数のV溝11aが長さ方向に並行に延びるように形成されている。V溝11aは、幅方向に間隔を有さずに連設されているが、幅方向に間隔をおいて、つまり、隣接するV溝11a間に平坦部を有して設けられていてもよい。V溝11aの数は、本実施形態では6個であるが、例えば4個以上64個以下であってもよい。V溝11aのV角度は、例えば60°以上110°以下である。
【0017】
図3は、光ファイバ12を示す。
【0018】
光ファイバ12は、裸光ファイバ121と、それを被覆するジャケット122とを有する。光ファイバ12の外径は例えば0.8mm以上2mm以下である。
【0019】
裸光ファイバ121は、ファイバ中心に設けられたコア121aと、それを被覆するように設けられたクラッド121bと、それを被覆するように設けられたサポート層121cとを有する。コア121aは、例えば純粋石英で形成されており、相対的に高屈折率である。クラッド121bは、例えば屈折率を低下させるドーパントであるフッ素やホウ素等がドープされた石英で形成されており、相対的に低屈折率である。サポート層121cは、例えば純粋石英で形成されている。裸光ファイバ121は、例えば、外径が50μm以上1000μm以下、コア121aの直径が5μm以上80μm以下、クラッド121bの層厚さが3μm以上90μm以下、及びサポート層121cの層厚さが5μm以上60μm以下である。コア121aの偏心率は、好ましくは2%以下、より好ましくは0.5%以下である。なお、裸光ファイバ121は、コア121a及びクラッド121bの2層で構成されていてもよい。
【0020】
ジャケット122は、硬度の高い樹脂又は金属で形成されていることが好ましい。ジャケット122を形成する樹脂としては、例えば、アクリル系UV硬化型樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。加工性の観点からは、アクリル系UV硬化型樹脂が好ましい。この場合、線引きした裸光ファイバ121を、引き続き未硬化のアクリル系UV硬化型樹脂の液に通して引き上げ、その後、外部から紫外線を照射すればよい。また、ジャケット122の厚さを薄く形成するとともに偏肉を低減する観点からは、ポリイミド樹脂が好ましい。ジャケット122を形成する樹脂の引張強さは、後述のようにV溝基板11に光ファイバ12を設けたときに、裸光ファイバ121を保護するとともに、その高い位置精度を得る観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは70MPa以上である。ジャケット122を形成する樹脂の引張破壊ひずみは、同様の観点から、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上である。ジャケット122を形成する樹脂の引張弾性率(ヤング率)は、同様の観点から、好ましくは1800MPa以上2400MPa以下、より好ましくは1950MPa以上2250MPa以下である。これらの引張強さ、引張破壊ひずみ、及び引張弾性率は、JIS K7113に基づいて測定されるものである。ジャケット122を形成する金属としては、例えばアルミニウムが挙げられる。ジャケット122の層厚さは、同様の観点から、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上15μm以下である。
【0021】
複数本の光ファイバ12のそれぞれは、V溝基板11上に設けられた基板上部分12Aと、その基板上部分12Aに連続してV溝基板11外に延びるように設けられた基板外部分12Bとを含む。光ファイバ12の基板上部分12Aは、その先端がV溝基板11の長さ方向の一端に位置付けられ、V溝基板11上の対応するV溝11aに収容されて延びるように設けられている。各V溝11aに収容された光ファイバ12の基板上部分12Aは、V溝11aの両側の面に、ジャケット122の外周面が接して支持されるとともに、V溝基板11の表面から突出するように設けられている。
【0022】
実施形態に係る光ファイバアレイ10では、光ファイバ12の先端側部分に、ジャケット122の剥離や薄肉化の加工が施されておらず、そのため、基板上部分12Aの全長がジャケット122で被覆されており、また、基板上部分12Aのジャケット122の厚さと、基板外部分12Bのジャケット122の厚さとが同一である。したがって、V溝基板11の他端の角部には、光ファイバ12の基板上部分12Aと基板外部分12Bとの境界部のジャケット122が接触する。ここで、「厚さが同一」とは、基板上部分12A及び基板外部分12Bのいずれのジャケット122の厚さも、ジャケット122の形成加工における最大許容寸法と最小許容寸法との間に含まれることをいう。
【0023】
実施形態に係る光ファイバアレイ10によれば、光ファイバ12のジャケット122がV溝基板11の他端の角部に接触するので、裸光ファイバ121がV溝基板11の角部に直接接触するのを阻止することができる。これにより、裸光ファイバ121の断線が低減され、それによって歩留まりが低くなるのを抑えることができるとともに、この点で長期信頼性を得ることができる。しかも、基板上部分12Aの全長がジャケット122で被覆されており、また、基板上部分12Aのジャケット122の厚さと、基板外部分12Bのジャケット122の厚さとが同一であるので、ジャケット122の剥離や薄肉化の加工及びその条件検討が不要であるため、裸光ファイバ121のV溝基板11の角部への接触阻止のためのジャケット122の加工に工数をかける必要がない。これにより、ジャケット122の加工に起因する光ファイバ12からの出射光の損失増加及び出射パターンの変化(ファーフィールドパターン(FFP)の拡大)が回避されるとともに、この点でも長期信頼性を得ることができる。
【0024】
光ファイバ12の基板外部分12Bは、V溝基板11の他端から延びて、ファイバ出射ヘッドHの中間部から可撓管Tに通された筒状の樹脂ネット30に挿通されて可撓管Tに導かれている。
【0025】
一対の押さえ基板13のそれぞれは、例えば両面が平坦面の矩形のジルコニア基板や石英基板等で構成されている。押さえ基板13の長さは、V溝基板11の長さよりも短く、例えば4mm以上15mmである。押さえ基板13の幅は、V溝基板11の幅と同一であり、例えば5mm以上15mmである。押さえ基板13の厚さは、V溝基板11の厚さと同一であり、例えば0.5mm以上2mm以下である。なお、押さえ基板13の長さは、V溝基板11の長さよりも長くてもよく、また、V溝基板11の長さと同一であってもよい。押さえ基板13の幅は、V溝基板11の幅よりも広くてもよく、また、V溝基板11の幅よりも狭くてもよい。押さえ基板13の厚さは、V溝基板11の厚さよりも厚くてもよく、また、V溝基板11の厚さよりも薄くてもよい。
【0026】
一対の押さえ基板13の一方は、V溝基板11の一方の表面上に配設された複数本の光ファイバ12の上に、V溝基板11との間でそれらの複数本の光ファイバ12を挟持するとともに、各光ファイバ12を、V溝11aの両側の面と押さえ基板13とにより三点支持するように設けられている。同様に、他方の押さえ基板13は、V溝基板11の他方の表面上に配設された複数本の光ファイバ12の上に、V溝基板11との間でそれらの複数本の光ファイバ12を挟持するとともに、各光ファイバ12を、V溝11aの両側の面と押さえ基板13とにより三点支持するように設けられている。
【0027】
実施形態に係る光ファイバアレイ10では、V溝基板11、光ファイバ12、及び押さえ基板13の間に形成された間隙に樹脂接着剤のアレイ充填剤14が充填されている。かかる樹脂接着剤のアレイ充填剤14としては、例えばエポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。なお、ヘッド本体20の先端の矩形開口と光ファイバアレイ10との間に形成された間隙にも同様の樹脂接着剤が充填されていることが好ましい。
【0028】
ファイバ出射ヘッドHには、光ファイバアレイ10におけるV溝基板11及び押さえ基板13の後方部分並びにそこから後方に延びて可撓管Tに導入される複数本の光ファイバ12が埋設されるように、弾性樹脂系充填剤のヘッド充填剤40が充填されている。かかる弾性樹脂系充填剤のヘッド充填剤40としては、例えばシリコーン樹脂系充填剤等が挙げられる。
【0029】
なお、上記実施形態では、押さえ基板13の両面が平坦面である構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、図4に示すように、V溝基板11側の面にV溝13aが形成され、光ファイバ12を、V溝基板11のV溝11aと押さえ基板13のV溝13aとの間で保持する構成であってもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、単一のV溝基板11の両側に光ファイバ12が設けられ、光ファイバアレイ10の先端面に光ファイバ12が2行配列した構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、複数のV溝基板11が用いられ、光ファイバアレイ10の先端面に光ファイバ12が3行以上配列した構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、光ファイバアレイ及びそれを用いた直接製版記録装置の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0032】
H ファイバ出射ヘッド
T 可撓管
10 光ファイバアレイ
11 V溝基板
11a V溝
12 光ファイバ
12A 基板上部分
12B 基板外部分
121 裸光ファイバ
121a コア
121b クラッド
121c サポート層
122 ジャケット
13 押さえ基板
13a V溝
14 アレイ充填剤
20 ヘッド本体
30 樹脂ネット
40 ヘッド充填剤
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4