(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】酸素富化ガス送達のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20220222BHJP
A61M 16/00 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
A61M16/10 B
A61M16/00 305B
A61M16/00 343
(21)【出願番号】P 2019224548
(22)【出願日】2019-12-12
(62)【分割の表示】P 2018072820の分割
【原出願日】2013-10-14
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2012-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515100499
【氏名又は名称】イノヴァ ラボ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,ウィリアム,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ネブリジック,ドラガン
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-537779(JP,A)
【文献】特開2007-289660(JP,A)
【文献】国際公開第2011/006199(WO,A1)
【文献】特開2012-183159(JP,A)
【文献】特開2008-136664(JP,A)
【文献】特表平11-514556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00-16/10
A61B 5/08-5/097
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃縮器であって、
前記酸素濃縮器のユーザの呼吸圧力を測定するように構成される圧力センサであって、前記圧力センサが、前記ユーザに酸素富化
空気を提供するための導管の流出口に連結される、圧力センサと、
前記導管に連結される供給バルブと、
前記圧力センサ
および前記供給バルブに通信的に連結される1つ以上のプロセッサであって、前記1つ以上のプロセッサが、
測定された呼吸圧力の変化を圧力閾値と比較することによって複数回の呼吸を検出し、
検出された複数回の呼吸のそれぞれの最中に、あるボーラス投与量の酸素富化空気を放出するように前記供給バルブを制御し、
前記検出された複数回の呼吸のうちの3回以上の複数の連続するグループにわたって呼吸数の変化を判定し、
判定された呼吸数の変化に基づいて前記圧力閾値を調整する
ように構成される、プロセッサと、
を含む、酸素濃縮器。
【請求項2】
加圧された周囲空気流を生成するように構成される圧縮システムと、
ガス分離吸着剤を受けるためのキャニスタを含むキャニスタシステムであって、前記ガス分離吸着剤が、少なくともいくらかの窒素を前記加圧された周囲空気流から分離して、前記ユーザに提供される酸素富化空気を生成するように構成される、キャニスタシステムと、
をさらに含む、請求項1に記載の酸素濃縮器。
【請求項3】
前記検出された複数回の呼吸のうちの最後の呼吸
または前記検出された複数回の呼吸のうちの最後のグループの呼吸が、前記呼吸数の変化の判定から除かれる、請求項1
または請求項2に記載の酸素濃縮器。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセッサが、グループ内の各呼吸の平均時間に基づいて、前記複数の連続するグループのそれぞれについて呼吸数を算出するようにさらに構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサが、
前記判定された呼吸数の変化が呼吸数の増加である時に、前記圧力閾値を増加させることと、
前記判定された呼吸数の変化が呼吸数の減少である時に、前記圧力閾値を減少させることと、
によって、前記判定された呼吸数の変化に基づいて前記圧力閾値を調整するように構成される、請求項1~4の何れか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサが、
前記圧力閾値の減少に応答して前記酸素濃縮器を安静モードに切り替え、
前記圧力閾値の増加に応答して前記酸素濃縮器を活動モードに切り替える
ようにさらに構成される、請求項5に記載の酸素濃縮器。
【請求項7】
前記1つ以上のプロセッサが、前記酸素濃縮器が前記安静モードまたは前記活動モードにあるかどうかに基づいて、前記ユーザに送達される酸素富化
空気のボーラス投与量の体積を設定するようにさらに構成される、請求項6に記載の酸素濃縮器。
【請求項8】
酸素濃縮器であって、
前記酸素濃縮器のユーザの呼吸圧力を測定するように構成される圧力センサであって、前記圧力センサが、前記ユーザに酸素富化
空気を提供するための導管の流出口に連結される、圧力センサと、
前記導管に連結される供給バルブと、
前記圧力センサ
および前記供給バルブに通信的に連結される1つ以上のプロセッサであって、前記1つ以上のプロセッサが、
測定された呼吸圧力の変化を圧力閾値と比較することによって複数回の呼吸を検出し、
検出された複数回の呼吸のそれぞれの最中に、あるボーラス投与量の酸素富化空気を放出するように前記供給バルブを制御し、
前記検出された複数回の呼吸の3つ以上の連続するグループにわたって複数の呼吸数の変化を判定し、
判定された複数の呼吸数の変化のそれぞれが、第1の閾値よりも大きい呼吸数の増加である時に、前記圧力閾値を増加させ、
前記判定された複数の呼吸数の変化のそれぞれが、第2の閾値未満である呼吸数の減少である時に、前記圧力閾値を減少させる
ように構成される、プロセッサと、
を含む、酸素濃縮器。
【請求項9】
加圧された周囲空気流を生成するように構成される圧縮システムと、
ガス分離吸着剤を受けるためのキャニスタを含むキャニスタシステムであって、前記ガス分離吸着剤が、少なくともいくらかの窒素を前記加圧された周囲空気流から分離して、前記ユーザに提供される酸素富化空気を生成するように構成される、キャニスタシステムと、
をさらに含む、請求項8に記載の酸素濃縮器。
【請求項10】
前記検出された複数回の呼吸のうちの最後の呼吸
または前記検出された複数回の呼吸のうちの最後のグループの呼吸が、前記複数の呼吸数の変化の判定から除かれる、請求項8
または請求項9に記載の酸素濃縮器。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサが、グループ内の各呼吸の平均時間に基づいて、前記3つ以上の連続するグループのそれぞれについて呼吸数を算出するようにさらに構成される、請求項8~10の何れか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項12】
前記3つ以上の連続するグループのそれぞれが、前記検出された複数回の呼吸のうちの3回以上を含む、請求項8~11の何れか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項13】
前記1つ以上のプロセッサが、
前記圧力閾値の減少に応答して前記酸素濃縮器を安静モードに切り替え、
前記圧力閾値の増加に応答して前記酸素濃縮器を活動モードに切り替える
ようにさらに構成される、請求項8~12の何れか一項に記載の酸素濃縮器。
【請求項14】
前記1つ以上のプロセッサが、前記酸素濃縮器が前記安静モードまたは前記活動モードにあるかどうかに基づいて、前記ユーザに送達される酸素富化
空気のボーラス投与量の体積を設定するようにさらに構成される、請求項13に記載の酸素濃縮器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、酸素富化ガスを対象者に提供する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
長期酸素療法(LTOT)の一環として、酸素補給を必要とする患者が数多く存在する。現在、LTOTを受けている患者の大半は、慢性閉塞性肺疾患、すなわち、COPDという概括的カテゴリに診断される。この概括的な診断には、慢性喘息、肺気腫、鬱血性心不全およびその他いくつかの心肺状態などの一般的な疾病が含まれる。また、それ以外の人々(例えば、肥満者)が、例えば、高い活動レベルを維持するために、酸素補給を必要とすることもある。
【0003】
医師は、これらの患者に対して、酸素濃縮器または医療用酸素の携帯用タンクを処方することがある。通常、ある特定の酸素流量が処方される(例えば、毎分1リットル(LPM)、2LPM、3LPMなど)。この分野の専門家はまた、これらの患者にとって運動が疾病の進行を遅らせ、生活の質を向上させ、患者の寿命を延ばすといった長期的な利益をもたらすことを認識している。しかしながら、トレッドミルやステーショナリーバイクなどの大抵の定置式の運動形態は、これらの患者にとって激しすぎる。その結果、移動が容易であることの必要性が長年にわたって認識されている。最近まで、こうした移動性は、小型の圧縮酸素タンクを使用することによって進められてきた。これらのタンクの欠点は、これらの酸素の量が限られていること、そしてこれらを台車用車輪付きのカートに搭載すると、約50ポンドの重さとなり、重いことである。
【0004】
酸素濃縮器は、呼吸不全に苦しむ患者に酸素補給を供給するために、約50年にわたって使用されている。これらの流量を供給するために使用される従来の酸素濃縮器は、嵩高くて重く、これらを携行しての通常の歩行活動を困難かつ非現実的とするものであった。最近になって、大型の据え置き型家庭用酸素濃縮器を製造する企業が、携帯用酸素濃縮器、すなわち、POCの開発を開始した。POC濃縮器の利点は、これらが理論的には無限に酸素を供給できることであった。これらの装置を、移動性を目的として小型化するために、酸素富化ガスの生成のために必要な様々なシステムが凝縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸素富化ガスを酸素濃縮器のユーザに供給するシステムおよび方法が、本明細書に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、酸素濃縮器のユーザに酸素富化ガスを提供する方法は、少なくとも3回の連続する呼吸について呼吸間隔を測定することであって、ユーザと酸素富化ガス源とを繋ぐ導管の流出口に接続された圧力センサを使用して、圧力の降下が測定された時に、呼吸が開始すると判定される、測定することと、連続する呼吸における各呼吸間隔に基づいて平均呼吸数を判定することであって、最後から2番目の呼吸と最後の呼吸との間隔を平均呼吸数の判定に使用しない、判定することと、判定した平均呼吸数に基づいて、圧力センサのために吸気呼吸圧力閾値を設定することと、を含む。ある実施形態では、時間は、6回の連続する呼吸の間で測定される。平均呼吸数に基づく吸気呼吸圧力閾値の調整は、一部の実施形態では、自動的に行われる。酸素富化ガス源は、酸素濃縮器システムまたは酸素タンクであってもよい。
【0007】
一部の実施形態では、判定した平均呼吸数が毎分10呼吸超から毎分10呼吸未満に変化した場合、閾値吸気圧力を下げる。一部の実施形態では、判定した平均呼吸数が毎分15呼吸未満から毎分15呼吸超に変化した場合、閾値吸気圧力を上げる。平均呼吸数が毎分約10呼吸から毎分約15呼吸の間である場合、吸気呼吸圧力閾値を現在の設定値に維持する。
【0008】
一部の実施形態では、本方法は、平均呼吸数に基づいて、活動モードに切り替えること、安静モードに切り替えること、または現在のモードを維持することをさらに含む。例えば、平均呼吸数が少なくとも毎分15呼吸を含む場合に、活動モードが実施され得る。平均呼吸数が毎分10呼吸未満を含む場合に、安静モードが選択された状態にされ得る。
【0009】
ある実施形態では、酸素濃縮器装置は、圧力センサであって、圧力センサが、ユーザの呼吸圧力を検出するように構成される、圧力センサと、圧力センサに連結されるプロセッサとを含む。プロセッサは、非一時的プログラム命令を実行でき、プログラム命令は、少なくとも3回の連続する呼吸について呼吸間隔を自動的に測定するように動作可能であり、ここで、圧力センサを使用して圧力の降下が測定された時に、呼吸が開始すると判定され、また連続する呼吸における各呼吸間隔に基づいて、平均呼吸数または平均呼吸間隔を判定するように動作可能であり、ここで、最後から2番目の呼吸と最後の呼吸との間隔を平均呼吸数または平均呼吸間隔の判定に使用せず、また判定した平均呼吸数または平均呼吸間隔に基づいて、圧力センサのために吸気呼吸圧力閾値を設定するように動作可能である。
【0010】
別の実施形態では、酸素濃縮器のユーザに酸素富化ガスを提供する方法は、少なくとも3回の呼吸にわたって監視した時間に対する吸気中の絶対圧力の変化率を判定することであって、ユーザと酸素富化ガス源とを繋ぐ導管の流出口に接続された圧力センサを使用して、圧力の降下が測定された時に、吸気が開始すると判定される、判定することと、時間に対する絶対圧力の変化率に基づいて、呼吸圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整することとを含む。変化率を判定する場合、一部の実施形態では、最後の呼吸の絶対圧力の変化を変化率の判定に使用しない。酸素富化ガス源は、酸素濃縮器システムまたは酸素タンクであってもよい。
【0011】
変化率に基づいて圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整することには、変化率が負の場合、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対してより低い吸気閾値呼吸圧力に調整することが含まれる。ある実施形態では、変化率に基づいて圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整することには、変化率が負、かつ-0.5未満またはこれに等しい場合、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対してより低い吸気閾値呼吸圧力に調整することが含まれる。
【0012】
変化率に基づいて圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整することには、変化率が正の場合、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対してより高い吸気閾値呼吸圧力に調整することが含まれる。ある実施形態では、変化率に基づいて圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整することには、変化率が正、かつ-0.5よりも大きいまたはこれに等しい場合、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対してより高い吸気閾値呼吸圧力に調整することが含まれる。
【0013】
一部の実施形態では、本方法は、平均呼吸数に基づいて、活動モードに切り替えること、安静モードに切り替えること、または現在のモードを維持することをさらに含む。例えば、変化率が正の場合に、活動モードが実施され得る。変化率が負の場合に、安静モードが選択された状態にされ得る。
【0014】
ある実施形態では、酸素濃縮器装置は、圧力センサが、ユーザの呼吸圧力を検出するように構成される圧力センサと、圧力センサに連結されるプロセッサとを含む。プロセッサは、非一時的プログラム命令を実行でき、プログラム命令は、少なくとも3回の呼吸にわたって監視した時間に対する吸気中の絶対圧力の変化率を判定するように動作可能であり、ここで、ユーザと酸素富化ガス源とを繋ぐ導管の流出口に接続された圧力センサを使用して、圧力の降下が測定された時に、吸気が開始すると判定され、また時間に対する絶対圧力の変化率に基づいて、呼吸圧力センサの吸気呼吸圧力閾値を調整するように動作可能である。
【0015】
ある実施形態では、酸素濃縮器のユーザに酸素富化ガスを提供する方法は、複数の連続する呼吸について呼吸間隔を測定することであって、ユーザと酸素富化ガス源とを繋ぐ導管の流出口に接続された圧力センサを使用して、圧力の降下が測定された時に、呼吸が開始すると判定される、測定することと、呼吸のグループを作成することであって、各グループが少なくとも3回の連続する呼吸を含む、作成することと、グループ内の連続する呼吸における各呼吸間隔に基づいて、各グループについて平均呼吸数を判定することと、グループのうちの2つまたは3つ以上の判定した平均呼吸数に基づいて、圧力センサのために吸気呼吸圧力閾値を設定することと、を含む。
【0016】
本発明の利点は、下記実施形態の詳細な説明から、また添付の図面を参照することによって、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】酸素濃縮器の部品の実施形態を示す概略図である。
【
図2】酸素濃縮器の流出口部品の実施形態を示す概略図である。
【
図3】酸素濃縮器用の流出口導管の実施形態を示す概略図である。
【
図4】分解したキャニスタシステムの実施形態を示す斜視図である。
【
図5】キャニスタシステムの端部の実施形態を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示されるキャニスタシステム端部の実施形態の組み立てられた端部を示す図である。
【
図7】
図4および
図5に示されるキャニスタシステムの反対側の端部の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示されるキャニスタシステム端部の組み立てられた反対側の端部の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】酸素富化ガスを酸素濃縮器から供給するための実施形態の様々なプロファイルを示すグラフである。
【
図10】吸気呼吸圧力閾値を調整するためのプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な修正および代替形態を許容するものであるが、そのうちの特定の実施形態を例として図示し、かつ本明細書で詳細に説明する。しかしながら、これらの図面およびそれに関する詳細な説明は、開示される特定の形態に本発明を限定することを意図したものではなく、反対に、意図しているのは、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲に属するすべての修正、均等物、および代替を包含することであることを理解されたい。
【0019】
本発明は、特定の装置または方法に限定されるものではなく、これらは当然変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、限定することを意図したものではないことも理解されたい。表題は、構成目的のためだけのものであり、説明および特許請求の範囲を限定または解釈するために使用しているものではない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」「an」および「the」は、そうでないことが内容から明確に規定されない限り、単数および複数の指示物を含む。さらに、「し得る(may)」の語は、本出願全体を通して許容の意味(すなわち、「する能力を有する(having the potential to)」、「することができる(being able to)」)で使用されており、必須の意味(すなわち、「しなければならない(must)」)で使用されているものではない。「含む(include)」の語およびその変形は、「含むが、それに限定されない(including, but not limited to)」を意味する。
【0020】
本明細書で使用される「連結された(coupled)」の語は、1つまたは2つ以上の物体または部品の間における直接接続または間接接続(例えば、1つまたは2つ以上の仲介接続部)を意味する。「接続された(connected)」の句は、物体または部品が互いに直接接続されるような、物体または部品の間の直接接続を意味する。本明細書で使用する場合、装置を「得る(obtaining)」の句は、装置が購入または構築されることを意味する。
【0021】
酸素濃縮器は、圧力スイング吸着(PSA)を利用する。圧力スイング吸着は、圧縮器を使用して、ガス分離吸着剤の粒子を含むキャニスタ内のガスの圧力を上昇させることを含む。圧力が上昇すると、ガス中の特定の分子が、ガス分離吸着剤上に吸着され得る。加圧条件下でキャニスタ内のガスの一部を除去することは、吸着されない分子を吸着される分子と分離するのを可能にする。ガス分離吸着剤は、圧力を下げることによって再生され得、このことは、吸着剤からの分子の吸着を逆行させる。酸素濃縮器に関するさらなる詳細は、例えば、2009年3月12日に公開され、「酸素濃縮器装置および方法(Oxygen Concentrator Apparatus and Method)」と題する米国公開特許出願第2009-0065007号に見ることができ、これは、参照することによって本明細書に援用される。
【0022】
周囲空気は、普通、約78%の窒素と21%の酸素とを含み、残部が、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気およびその他の微量元素からなる。例えば、空気などの気体混合物を、加圧下で、酸素を引きつける場合よりも窒素を強く引きつけるガス分離吸着剤床を含む容器に通過させた場合、窒素の一部またはすべてが床に留まり、容器から出てくるガスは、酸素が富化されている。床が、その窒素吸着能力の限界に到達した場合、減圧して、吸着した窒素を放出することによって再生され得る。その時には、酸素富化空気を生成する次のサイクルの用意ができている。2つのキャニスタのシステムにおいてキャニスタを交互に入れ替えることによって、一方のキャニスタが酸素を捕集する一方で、他方のキャニスタがパージされ得る(その結果、酸素が窒素から連続的に分離される)。このようにして、酸素は、酸素補給を患者に供給することを含む様々な用途のために、空気から取り出して蓄積され得る。
【0023】
図1は、ある実施形態による酸素濃縮器100の概略図を示している。酸素濃縮器100は、空気流から取り出した酸素を濃縮して、酸素富化ガスをユーザに供給し得る。本明細書で使用する場合、「酸素富化ガス」には、少なくとも約50%の酸素、少なくとも約60%の酸素、少なくとも約70%の酸素、少なくとも約80%の酸素、少なくとも約90%の酸素、少なくとも約95%の酸素、少なくとも約98%の酸素、または少なくとも約99%の酸素が含まれる。
【0024】
酸素濃縮器100は、携帯用酸素濃縮器であり得る。例えば、酸素濃縮器100は、酸素濃縮器を手で持って、および/またはキャリングケースに入れて運搬することができるような重量およびサイズを有し得る。一実施形態では、酸素濃縮器100は、約20ポンド未満、約15ポンド未満、約10ポンド未満、または約5ポンド未満の重量を有する。ある実施形態では、酸素濃縮器100は、約1000立方インチ未満、約750立方インチ未満、約500立方インチ未満、約250立方インチ未満、または約200立方インチ未満の容積を有する。
【0025】
酸素は、ガス分離吸着剤を含むキャニスタ302および304中の周囲空気を加圧することによって、周囲空気から捕集され得る。酸素濃縮器に有用なガス分離吸着剤は、少なくとも窒素を空気流から分離して、酸素富化ガスを生成することができる。ガス分離吸着剤の例には、空気流から窒素を分離することができる分子篩が含まれる。酸素濃縮器内で使用され得る吸着剤の例には、上昇させた圧力下で空気流中の窒素を酸素と分離することができるゼオライト(天然)または合成結晶アルミノシリケートが含まれるが、これらに限定されるものではない。使用され得る合成結晶アルミノシリケートの例には、イリノイ州デスプレーンズのUOP LLCから入手可能なOXYSIV吸着剤、メリーランド州コロンビアのW.R.Grace&Coから入手可能なSYLOBEAD吸着剤、フランス共和国パリのCECA S.A.から入手可能なSILIPORITE吸着剤、スイス連邦ウエーティコンのZeochem AGから入手可能なZEOCHEM吸着剤、およびペンシルバニア州アレンタウンのAir Products and Chemicals,Inc.から入手可能なAgLiLSX吸着剤が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0026】
図1に示されるように、空気は、空気流入口106を通って酸素濃縮器に流入し得る。空気は、圧縮システム200によって空気流入口106に引き込まれ得る。圧縮システム200は、酸素濃縮器の周辺から空気を引き込み、空気を圧縮して、圧縮した空気をキャニスタ302および304の一方または両方に送り込み得る。ある実施形態では、流入口マフラー108が空気流入口106に連結されて、圧縮システム200によって酸素生成器に引き込まれた空気によって生成される音を低減し得る。ある実施形態では、流入口マフラー108は、湿気および音を吸収するマフラーであり得る。例えば、(ポリマーの吸水材またはゼオライト材料などの)吸水材は、流入する空気からの水の除去と、空気流入口106内へと通過する空気による音の低減との両方を行うために用いられ得る。
【0027】
圧縮システム200は、空気を圧縮できる1つまたは2つ以上の圧縮器を含み得る。一部の実施形態では、圧縮システムは、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以上の圧縮器を含み得る。圧縮器210とモータ220とを含む圧縮システム200が示されている。モータ220は、圧縮器210に連結され、圧縮器に動力を提供して、圧縮機構を作動する。圧縮システム200によって生成される加圧した空気は、キャニスタ302および304の一方または両方に送り込まれ得る。一部の実施形態では、周囲空気は、1平方インチ当たり約13~20ポンド(psi)の範囲の圧力までキャニスタ内で加圧され得る。キャニスタ内に配置されるガス分離吸着剤のタイプに応じて、その他の圧力もまた使用され得る。
【0028】
一部の実施形態では、モータ220が、加圧装置(例えば、ピストンポンプまたはダイヤフラムポンプ)に連結される。加圧装置は、複数のピストンを有するピストンポンプであり得る。作動中、ピストンは、選択的にオンまたはオフにされ得る。一部の実施形態では、モータ220は、複数のポンプに連結され得る。各ポンプは、選択的にオンまたはオフにされ得る。例えば、コントローラ400は、既定の作動条件に基づいて、どのポンプまたはピストンを作動させるべきかを判定し得る。
【0029】
各キャニスタ302/304には、流入口バルブ122/124および流出口バルブ132/134が連結される。
図1に示されるように、流入口バルブ122は、キャニスタ302に連結され、流入口バルブ124は、キャニスタ304に連結される。流出口バルブ132は、キャニスタ302に連結され、流出口バルブ134は、キャニスタ304に連結される。流入口バルブ122/124は、圧縮システム200からそれぞれのキャニスタへの空気の通過を制御するために使用される。流出口バルブ132/134は、排気プロセス中にそれぞれのキャニスタからガスを放出するために使用される。一部の実施形態では、流入口バルブ122/124および流出口バルブ132/134は、シリコン製プランジャの電磁弁であり得る。しかしながら、その他のタイプのバルブを使用してもよい。プランジャ式バルブは、その他の種類のバルブに比べて、静かで滑りが少ないという利点を提供する。
【0030】
一部の実施形態では、二段バルブ作動電圧が使用されて、流入口バルブ122/124および流出口バルブ132/134を制御し得る。例えば、流入口バルブを開くために、高い電圧(例えば、24V)が流入口バルブに印加され得る。次いで、電圧は、流入口バルブを開いた状態に保つために減らされる(例えば、7V)。バルブを開いた状態に保つためにより小さい電圧を使用すれば、使用する電力はより少なくなり得る(電力=電圧×電流)。この電圧の低減は、発熱および電力消費を最小化して、バッテリに由来する実行時間を伸ばす。バルブへの電気を止めると、ばねの作用によって、バルブが閉じる。一部の実施形態では、電圧は、必ずしもステップ応答ではない時間の関数として印加され得る(例えば、初期の24Vと最終的な7Vとの間で下向きに曲がる電圧)。
【0031】
一部の実施形態では、空気は、圧縮器305、310を通って酸素濃縮器に引き込まれ得る。一部の実施形態では、空気は、圧縮器305、310からキャニスタ302、304に流れ得る。一部の実施形態では、バルブ122または124のうちの一方が閉鎖されて(例えば、コントローラ400によって信号を送られた時)、両方の圧縮器305、310の合成出力が、他方のそれぞれに対応するバルブ122または124を通って、それぞれに対応するキャニスタ302、304内に流れる。例えば、バルブ124が閉じている場合、両方の圧縮器305、310からの空気は、バルブ122を通って流れ得る。バルブ122が閉じている場合、両方の圧縮器305、310からの空気は、バルブ124を通って流れ得る。一部の実施形態では、バルブ122およびバルブ124は、圧縮器305、310からの空気をそれぞれのキャニスタ302または304内に交互に導くように、交代し得る。
【0032】
ある実施形態では、加圧した空気は、キャニスタ302または304のうちの一方に送り込まれ、その間、他方のキャニスタは排気される。例えば、使用中、流入口バルブ122が開いている間、流入口バルブ124は閉じている。圧縮システム200からの加圧した空気は、キャニスタ302内に送り込まれて、その間、キャニスタ304への流入が流入口バルブ124によって阻止される。ある実施形態では、コントローラ400は、バルブ122、124、132および134に電気的に連結される。コントローラ400は、メモリ420に記憶されたプログラム命令を実行するように動作可能である1つまたは2つ以上のプロセッサ410を含む。プログラム命令は、酸素濃縮器を操作するために使用される様々な定義済みの方法を実行するように動作可能である。コントローラ400は、流入口バルブ122および124を、これらが互いに同調しないように、すなわち、流入口バルブ122または124の一方が開いているとき、他方のバルブが閉じているように操作するためのプログラム命令を含み得る。キャニスタ302の加圧中、流出口バルブ132は閉じており、流出口バルブ134は開いている。流入口バルブと同様に、流出口バルブ132および134は、互いに同調しないように操作される。一部の実施形態では、流入口バルブおよび流出口バルブを開くために使用する電圧および電圧の持続時間は、コントローラ400によって制御され得る。
【0033】
逆止弁142および144は、それぞれ、キャニスタ302および304に連結される。逆止弁142および144は、キャニスタが加圧され、排気される際に発生する圧力差によって受動的に操作される一方向弁である。逆止弁142および144は、キャニスタに連結されて、キャニスタの加圧中に生成される酸素をキャニスタから流出させ、かつ酸素またはあらゆるその他のガスがキャニスタ内へと逆流するのを阻止することができる。このようにして、逆止弁142および144は、加圧中に酸素富化ガスがそれぞれのキャニスタを流出できるようにする一方向弁として作用する。
【0034】
「逆止弁」の語は、本明細書で使用される場合、流体(ガスまたは液体)の流れを一方向にし、かつ流体の逆流を阻止するのを可能にするバルブを指す。使用に適する逆止弁の例には、ボール逆止弁、ダイヤフラム逆止弁、バタフライ逆止弁、スイング逆止弁、ダックビル弁、およびリフト逆止弁が含まれるが、これらに限定されるものではない。加圧下で、加圧した周囲空気中の窒素分子は、加圧されたキャニスタ内のガス分離吸着剤によって吸着される。圧力が上昇するにつれて、キャニスタ内のガスが酸素富化されるまで、より多くの窒素が吸着される。圧力がキャニスタに連結された逆止弁の抵抗に打ち勝つのに十分な点に到達すると、非吸着性の気体分子(主に酸素)は、加圧されたキャニスタから流れ出る。一実施形態では、逆止弁の順方向の圧力降下は、1psi未満である。逆方向の破損圧力は、100psiよりも大きい。しかしながら、1つまたは2つ以上の部品の修正は、これらのバルブの動作パラメータを変えることを理解されたい。順方向の流れの圧力が上昇すると、一般的に、酸素富化ガスの生成は低下する。逆方向の流れにおける破損圧力が低減される、またはあまりにも低く設定されると、一般的に、酸素富化ガスの圧力が降下する。
【0035】
例示的な実施形態では、キャニスタ302は、圧縮システム200で生成されキャニスタ302内へと通過して行く圧縮した空気によって加圧される。キャニスタ302の加圧中、流入口バルブ122は開いており、流出口バルブ132は閉じており、流入口バルブ124は閉じており、流出口バルブ134は開いている。流出口バルブ132が閉じている時に流出口バルブ134が開き、キャニスタ302が加圧される間に、キャニスタ304の実質的な同時排気を可能にする。キャニスタ内の圧力が逆止弁142を開くのに十分になるまで、キャニスタ302は加圧される。キャニスタ302内で生成された酸素富化ガスは、逆止弁を通って出て行き、そして一実施形態では、アキュムレータ106で捕集される。
【0036】
しばらく経つと、ガス分離吸着剤が窒素で飽和し、流入する空気からの相当量の窒素を分離することができなくなる。この状態には、通常、酸素富化ガスの生成が既定の時間行われた後で到達する。上述の実施形態では、キャニスタ302内のガス分離吸着剤がこの飽和状態に到達すると、圧縮した空気の流入が停止され、キャニスタ302が排気されて窒素を除去する。排気中、流入口バルブ122は閉じており、流出口バルブ132は開いている。キャニスタ302が排気されている間、キャニスタ304は加圧されて、上述と同様に酸素富化ガスを生成する。キャニスタ304の加圧は、流出口バルブ134を閉じて流入口バルブ124を開くことによって達成される。酸素富化ガスは、逆止弁144を通ってキャニスタ304を出て行く。
【0037】
キャニスタ302の排気中、流出口バルブ132が開き、加圧したガス(主に窒素)が濃縮器流出口130を通ってキャニスタを出て行くことができるようにする。ある実施形態では、排気したガスは、マフラー133を通して導かれて、キャニスタから加圧したガスを放出することで生成される騒音を低減し得る。ガスがキャニスタ302から放出されると、キャニスタ内の圧力が降下する。圧力降下は、ガス分離吸着剤から窒素を脱着可能にし得る。放出された窒素は、流出口130を通ってキャニスタを出て行き、キャニスタをリセットして、空気流から酸素を新たに分離することができる状態にする。マフラー133は、酸素濃縮器を出て行くガスの音を抑えるために、連続気泡発泡体(または別の材料)を含み得る。一部の実施形態では、空気の流入およびガスの流出のための消音用部品/技法の組み合わせが、酸素濃縮器を50デシベル未満の音量で動作させ得る。
【0038】
キャニスタの排気中、少なくとも窒素の大半が除去されることが有利である。ある実施形態では、酸素を空気から分離するためにキャニスタが再度使用される前に、キャニスタ内の窒素の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または実質的にすべてが除去される。一部の実施形態では、キャニスタは、他方のキャニスタからキャニスタ内に導かれる酸素富化流を用いて、さらに窒素をパージし得る。
【0039】
例示的な実施形態では、キャニスタ304から窒素を排気する際に、酸素富化ガスの一部は、キャニスタ302からキャニスタ304に移送され得る。キャニスタ304の排気中のキャニスタ302からキャニスタ304への酸素富化ガスの移送は、キャニスタから窒素(およびその他のガス)をさらにパージするのを助ける。ある実施形態では、酸素富化ガスは、2つのキャニスタ間にある流量制限器151、153および155を通って移動し得る。流量制限器151は、トリクル流量制限器であり得る。流量制限器151は、例えば、0.009D流量制限器であり得る(例えば、流量制限器は、それが入っているチューブの直径より小さい、0.009インチの半径を有する)。流量制限器153および155は、0.013D流量制限器であり得る。その他の流量制限器のタイプおよびサイズもまた企図されており、キャニスタを連結するのに用いられる具体的な構成および配管に応じて使用され得る。一部の実施形態では、流量制限器は、それらのそれぞれのチューブにより細い直径を導入することによって空気流を制限する、圧入式流量制限器であり得る。一部の実施形態では、圧入式流量制限器は、サファイア、金属またはプラスチックから作られ得る(その他の材料もまた企図されている)。
【0040】
酸素富化ガスの流れはまた、バルブ152およびバルブ154を使用して制御される。バルブ152およびバルブ154は、パージするキャニスタからの過剰な酸素の損失を防止するために、排気プロセス中の短い持続時間だけ開放され得る(そして反対に閉鎖され得る)。それ以外の持続時間もまた企図されている。例示的な実施形態では、キャニスタ302が排気され、キャニスタ304で生成された酸素富化ガスの一部をキャニスタ302へと通過させることにより、キャニスタ302をパージすることが望ましい。酸素富化ガスの一部は、キャニスタ304の加圧に際して、キャニスタ302の排気中に流量制限器151を通ってキャニスタ302内に進む。さらなる酸素富化空気が、キャニスタ304からバルブ154および流量制限器155を通ってキャニスタ302内に進む。移送プロセス中、バルブ152は、閉鎖され続けられ得る、あるいは、さらなる酸素富化ガスが必要な場合は開放され得る。バルブ154の制御された開放と併せた、適切な流量制限器151および155の選択は、制御された量の酸素富化ガスをキャニスタ304からキャニスタ302に送ることを可能にする。ある実施形態では、酸素富化ガスの制御された量は、キャニスタ302をパージし、キャニスタ302の排気バルブ132を通る酸素富化ガスの損失を最小化するために十分な量である。この実施形態はキャニスタ302の排気について説明しているが、流量制限器151、バルブ152および流量制限器153を用いてキャニスタ304を排気するために、同一のプロセスを用いることができることを理解されたい。
【0041】
流量調整/排気バルブ152/154の組は、流量制限器153および155と共に働いて、2つのキャニスタ間の空気流のバランスを最適化する。これにより、他方のキャニスタからの酸素富化ガスで、キャニスタを排気するためのより良好な流量制御が可能となり得る。これはまた、2つのキャニスタ間のより良好な流れの誘導を提供し得る。流れバルブ152/154は両方向弁として作動され得るが、このようなバルブを通る流量は、バルブを通って流れる流体の方向に応じて変動することが見出されている。例えば、キャニスタ304からキャニスタ302に向けて流れる酸素富化ガスは、バルブ152を通る際に、キャニスタ302からキャニスタ304に向けてバルブ152を通って流れる酸素富化ガスの流量よりも大きな流量を有する。単一のバルブが用いられる場合、最終的に過多または過少の酸素富化ガスがキャニスタ間で送られ、時間が経つと、キャニスタは、異なる量の酸素富化ガスを生成し始める。平行な空気流路で対向するバルブおよび流量制限器を使用することは、2つのキャニスタ間の酸素の流れパターンを均一化し得る。流れを均一化することは、複数のサイクルにわたってユーザが安定した量の酸素を利用できるようし得、また、他方のキャニスタをパージするために予測可能な量の酸素を利用できるようにし得る。一部の実施形態では、空気流路は、流量制限器を有さず、その代わりに、抵抗を内蔵するバルブを有し得る、または、空気流路自体が、抵抗を提供するような小さい半径を有し得る。
【0042】
時折、酸素濃縮器は、ある期間だけシャットダウンされ得る。酸素濃縮器がシャットダウンされる場合、キャニスタ内の温度は、圧縮システムからの断熱的熱損失の結果、降下し得る。温度が下がると、キャニスタ内でガスが占める体積も減少する。キャニスタの冷却は、キャニスタ内を陰圧にし得る。キャニスタへ、またキャニスタからつながっているバルブ(例えば、バルブ122、124、132、および134)は、密閉されるのではなく、動的に封止される。よって、外気は、シャットダウン後にキャニスタに入って、圧力の差を調節し得る。外気がキャニスタに入ると、空気が冷却されるにつれて、外気からの湿気がキャニスタ内で凝縮され得る。キャニスタ内での水の凝縮は、ガス分離吸着剤を徐々に劣化させて、ガス分離吸着剤の酸素富化ガス生成能力を着実に低下させ得る。
【0043】
ある実施形態では、シャットダウン前に両方のキャニスタを加圧することによって、酸素濃縮器がシャットダウンされた後に外気がキャニスタに入るのを阻止され得る。キャニスタを陽圧下に保管することによって、バルブは、キャニスタ内の空気の内圧によって密閉閉鎖位置となるように強いられ得る。ある実施形態では、シャットダウン時のキャニスタ内の圧力は、少なくとも周囲圧力よりも大きくするべきである。本明細書で使用される場合、「周囲圧力」の語は、酸素生成器が配置されている環境の圧力(例えば、室内、屋外、飛行機内の圧力など)を指す。ある実施形態では、シャットダウン時のキャニスタ内の圧力は、少なくとも標準大気圧よりも大きい(すなわち、760mmHg(Torr)、1気圧、101,325Paよりも大きい)。ある実施形態では、シャットダウン時のキャニスタ内の圧力は、周囲圧力よりも少なくとも約1.1倍大きい、周囲圧力よりも少なくとも約1.5倍大きい、または周囲圧力よりも少なくとも約2倍大きい。
【0044】
ある実施形態では、キャニスタの加圧は、圧縮システムから各キャニスタ内に加圧した空気を導き、すべてのバルブを閉じて、加圧した空気をキャニスタ内に閉じ込めることによって達成され得る。例示的な実施形態では、シャットダウンシーケンスが開始されると、流入口バルブ122および124が開放され、流出口バルブ132および134が閉鎖される。流入口バルブ122および124が共通の導管によって共に接合されているため、両方のキャニスタ302および304は、一方のキャニスタからの空気または酸素富化ガスが他方のキャニスタに移送され得ることにより、加圧されるようになり得る。この状況は、圧縮システムと2つの流入口バルブとの間の経路がこのような移送を可能にする場合に起こり得る。酸素生成器が加圧/排気交互モードで動作するため、キャニスタのうちの少なくとも1つは、任意の所与の時点で加圧状態となるはずである。代替的な実施形態では、圧縮システム200の動作によって、圧力が各キャニスタ内で上昇され得る。流入口バルブ122および124が開いている時、キャニスタ302とキャニスタ304との間の圧力が均一化されるが、等しくなったいずれかのキャニスタの圧力は、シャットダウン中に空気がキャニスタに入るのを阻止するには十分でないことがある。空気がキャニスタに入るのを確実に阻止するために、圧縮システム200は、両方のキャニスタ内の圧力を、少なくとも周囲圧力よりも大きい圧力まで上昇させるのに十分な時間、作動させ得る。キャニスタの加圧方法に関わらず、キャニスタが加圧されたならば、流入口バルブ122および124は閉鎖されて、キャニスタ内に加圧した空気を閉じ込め、これにより、シャットダウン期間中にキャニスタに空気が入るのを阻止する。
【0045】
キャニスタのうちの1つまたは2つ以上に連結された流出口システムは、酸素富化ガスをユーザに供給するための1つまたは2つ以上の導管を含む。ある実施形態では、
図1に概略的に示されるように、キャニスタ302および304のいずれかで生成された酸素富化ガスは、それぞれ逆止弁142および144を通してアキュムレータ106に捕集される。キャニスタを出て行く酸素富化ガスは、ユーザに供給される前に、酸素アキュムレータ106に捕集され得る。一部の実施形態では、チューブがアキュムレータ106に連結されて、酸素富化ガスをユーザに供給し得る。酸素富化ガスは、酸素富化ガスをユーザの口および/または鼻に移送する気道送達装置を通して、ユーザに供給され得る。ある実施形態では、流出口は、酸素をユーザの鼻および/または口にむけて導くチューブを含み得、これは、ユーザの鼻に直接連結されない場合もある。
【0046】
図2を参照すると、酸素濃縮器用の流出口システムのある実施形態の概略図が示されている。供給バルブ160は、流出口チューブに連結されて、アキュムレータ106からユーザへの酸素富化ガスの放出を制御し得る。ある実施形態では、供給バルブ160は、電磁作動プランジャ式バルブである。供給バルブ160は、コントローラ400によって作動されて、ユーザへの酸素富化ガスの送達を制御する。供給バルブ160の作動は、圧力スイング吸着プロセスとタイミングを合わせたり、同期させたりしない。そうではなく、一部の実施形態では、作動は、患者の呼吸と同期させる。加えて、供給バルブ160は、酸素富化ガスを供給するための臨床的に効果的な流量プロファイルを確立するのを助けるために、複数の作動を有し得る。
【0047】
図2に示されるように、アキュムレータ106中の酸素富化ガスは、供給バルブ160を通って膨張チャンバ170内へ進む。ある実施形態では、膨張チャンバは、チャンバを通過するガスの酸素濃度を判定するために使用され得る1つまたは2つ以上の装置を含み得る。膨張チャンバ170内の酸素富化ガスは、供給バルブ160によるアキュムレータからのガスの放出によって一時的に形成され、次いで、小型のオリフィス型の流量制限器175を通って流量センサ185へ、そして粒子フィルタ187へと流出される。流量制限器175は、0.025D流量制限器であり得る。その他のタイプおよびサイズの流量制限器が用いられてもよい。一部の実施形態では、ハウジング内の空気流路の直径は、制限された空気流を生成するために制限され得る。流量センサ185は、導管を通って流れるガスの流量を評価することができる任意のセンサであり得る。粒子フィルタ187は、酸素富化ガスをユーザに送達する前に、細菌、塵、顆粒などをろ過するのに用いられ得る。酸素富化ガスは、フィルタ187を通って、酸素富化ガスを、導管192を通してユーザおよび圧力センサ194へと送るコネクタ190に流れる。
【0048】
供給バルブ160のプログラムされた作動と併せた、流出経路の流体動力学は、正確な時間に、かつ鼻孔から大気中へ流れ出る無駄になる逆流を生み出すいかなる過剰な流量もなしに患者の肺への迅速な送達を確実にする流量プロファイルで、あるボーラス投与量の酸素が供給される。筆者らの特定のシステムでは、処方で必要とされるボーラス投与量の全体積は、1LPM当たり11mLに等しい、すなわち、1LPMの処方では11mL、2LPMの処方では22mL、3LPMの処方では33mL、4LPMの処方では44mL、5LPMの処方では55mLなどであることが見出されている。これは、一般的に、LPM当量と呼ばれる。LPM当量は、構造設計、管類のサイズ、チャンバのサイズなどに起因して、装置間で変わり得ることを理解されたい。
【0049】
膨張チャンバ170は、チャンバを通過するガスの酸素濃度を判定するために使用され得る1つまたは2つ以上の酸素センサを含み得る。ある実施形態では、膨張チャンバ170を通過するガスの酸素濃度は、酸素センサ165を用いて評価される。酸素センサは、ガス中の酸素を検出することができる装置である。酸素センサの例には、超音波酸素センサ、電子酸素センサ、および光学酸素センサが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、酸素センサ165は、超音波放射器166と超音波受信器168とを含む超音波酸素センサである。一部の実施形態では、超音波放射器166は複数の超音波放射器を含み得、超音波受信器168は複数の超音波受信器を含み得る。複数の放射器/受信器を有する実施形態では、複数の超音波放射器および複数の超音波受信器は、軸方向に(例えば、軸方向の位置合わせに対して垂直であり得るガス混合物流路を横切って)位置合わせされ得る。
【0050】
使用の際には、超音波(放射器166からの)は、チャンバ170内に配置された酸素富化ガスを通って、受信器168に方向付けされ得る。超音波センサアセンブリは、ガス混合物を通る音の速さの検出に基づいて、ガス混合物の組成を判定し得る(例えば、音の速さは、窒素と酸素とで異なる)。2つのガスの混合物では、混合物を通る音の速さは、混合物における各ガスの相対量に比例する中間値であり得る。使用時、受信器168での音は、放射器166から送信された音とわずかに位相がずれている。この位相シフトは、ワイヤを通る電子パルスの比較的早い速さと比べて、気体の媒質を通る音の速さが比較的遅いことに起因する。ひいては、位相シフトは、放射器と受信器との間の距離、および膨張チャンバを通る音の速さに比例する。チャンバ内のガスの密度は、チャンバを通る音の速さに影響を与え、密度は、チャンバ内における酸素の窒素に対する比に比例する。したがって、位相シフトは、膨張チャンバ内の酸素の濃度を測定するために使用され得る。このようにして、蓄積チャンバ内の酸素の相対濃度が、蓄積チャンバを通る検出された音波の1つまたは2つ以上の特性の関数として評価され得る。
【0051】
一部の実施形態では、複数の放射器166および受信器168が使用され得る。放射器166および受信器168からの測定値は、乱流システムに固有のものであり得る誤差を打ち消すために平均され得る。一部の実施形態では、その他のガスの存在もまた、経過時間を測定すること、および測定された経過時間をその他のガスおよび/またはガス混合物の既定の経過時間と比較することによって、検出され得る。
【0052】
超音波センサシステムの感度は、例えば、放射器166と受信器168との間の距離を伸ばして、放射器166と受信器168との間にいくつかの音波サイクルが発生できるようにすることによって高められ得る。一部の実施形態では、少なくとも2つの音サイクルが存在する場合、トランスデューサの構造的な変化の影響は、2つの時点で、固定基準点に対する位相シフトを測定することによって低減され得る。先の位相シフトが後の位相シフトから差し引かれる場合、膨張チャンバ170の熱膨張によって引き起こされるシフトは、低減または打ち消され得る。放射器166と受信器168との間の距離の変更によって引き起こされるシフトは、測定間隔でほぼ同じであり得るが、酸素濃度の変化による変化は、累積し得る。一部の実施形態では、後の時点で測定されたシフトは、間にあるサイクルの数を乗算されて、2つの隣接するサイクル間のシフトと比較され得る。膨張チャンバ内の酸素の感知に関するさらなる詳細は、例えば、2009年3月12日に公開され、「酸素濃縮器装置および方法(Oxygen Concentrator Apparatus and Method)」と題する米国公開特許出願第2009-0065007号に見ることができ、これは、参照することによって本明細書に援用される。
【0053】
流量センサ185は、流出口システムを通って流れるガスの流量を判定するために用いられ得る。使用され得る流量センサには、ダイヤフラム/ベローズ流量計、ロータリ流量計(例えば、ホール効果流量計)、タービン流量計、オリフィス流量計、および超音波流量計が含まれるが、これらに限定されるものではない。流量センサ185は、コントローラ400に連結され得る。流出口システムを通って流れるガスの流量は、ユーザの呼吸量の指標となり得る。流出口システムを通って流れるガスの流量の変化はまた、ユーザの呼吸数を判定するために用いられ得る。コントローラ400は、流量センサ185で評価されるようなユーザの呼吸数および/または呼吸量に基づいて、供給バルブ160の作動を制御し得る。
【0054】
一部の実施形態では、超音波センサシステム165と、例えば、流量センサ185とは、供給される酸素の実際の量の測定値を提供し得る。例えば、流量センサ185は、供給されるガスの体積を(流量に基づいて)測定し得、超音波センサシステム165は、供給されるガスの酸素濃度を提供し得る。これら2つの測定値は、コントローラ400によって共に用いられて、ユーザに供給される酸素の実際の量の近似値を判定し得る。
【0055】
酸素富化ガスは、流量計185を通ってフィルタ187へ流れる。フィルタ187は、酸素富化ガスをユーザに供給する前に、細菌、塵、顆粒などを除去する。ろ過された酸素富化ガスは、フィルタ187を通ってコネクタ190へ流れる。コネクタ190は、フィルタ187の流出口を圧力センサ194および流出口導管192に連結する「Y」型コネクタであり得る。圧力センサ194は、導管192を通ってユーザへ流れるガスの圧力を監視するために用いられ得る。圧力センサ194によって感知される圧力の変化は、吸気の開始だけでなくユーザの呼吸数を判定し得る。コントローラ400は、圧力センサ194が評価する、ユーザの呼吸数および/または吸気の開始に基づいて、供給バルブ160の作動を制御し得る。ある実施形態では、コントローラ400は、流量センサ185および圧力センサ194によって提供される情報に基づいて、供給バルブ160の作動を制御し得る。
【0056】
酸素富化ガスは、ユーザに導管192を通して供給され得る。ある実施形態では、導管192は、シリコーン製チューブであり得る。
図3に示されるように、導管192は、気道連結部材196を用いてユーザに取り付され得る。気道連結部材196は、酸素富化ガスを鼻腔または口腔に供給することができる任意の装置であり得る。気道連結部材の例には、鼻マスク、鼻ピロー、鼻プロング、鼻カニューレ、およびマウスピースが含まれるが、これらに限定されない。鼻カニューレ型の気道送達装置が
図3に示されている。使用中、酸素濃縮器システム100からの酸素富化ガスは、導管192および気道連結部材196を通してユーザに供給される。気道連結部材196は、ユーザの気道近傍(例えば、ユーザの口および/または鼻の近傍)に配置されて、ユーザが周囲から空気を呼吸することができる状態のまま、ユーザに酸素富化ガスを送達することができる。
【0057】
キャニスタシステム
酸素濃縮器システム100は、少なくとも2つのキャニスタを含み得、各キャニスタは、ガス分離吸着剤を含む。酸素濃縮器システム100のキャニスタは、成形されたハウジングに配置され得る。ある実施形態では、
図4に示されるように、キャニスタシステム300は、2つのハウジング部品310および510を含む。ハウジング部品310および510は、別個に形成された後、共に連結され得る。一部の実施形態では、ハウジング部品310および510は、射出成形または圧縮成形され得る。ハウジング部品310および510は、ポリカーボネート、メチレンカーバイド、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリ塩化ビニルなどの熱可塑性ポリマーから作られ得る。別の実施形態では、ハウジング部品310および510は、熱硬化性プラスチックまたは金属(ステンレススチールまたは軽量アルミニウム合金など)から作られ得る。軽量素材は、酸素濃縮器100の重量を減らすために使用され得る。一部の実施形態では、2つのハウジング310および510は、ねじまたはボルトを使用して、一緒に固定され得る。あるいは、ハウジング部品310および510は、一緒に溶剤接着され得る。
【0058】
図示のように、バルブ座部320、322、324および326ならびに空気流路330および332は、ハウジング部品310内に一体化されて、酸素濃縮器100の空気流全体にわたり必要とされる封止接続の数を削減し得る。様々な実施形態では、酸素濃縮器100のハウジング部品310および410は、2つのキャニスタ302および304ならびに集積チャンバ106を画定する、2つの部分からなる成形プラスチックフレームを形成し得る。
【0059】
ハウジング部品310および510内の異なるセクション間の空気流路/配管は、成形された導管の形態をとり得る。空気流路用の成形されたチャネルの形態の導管は、ハウジング部品310および510内の複数の平面を占め得る。例えば、成形された空気導管は、ハウジング部品310および510内の異なる深さかつ異なるx、y、z位置に形成され得る。一部の実施形態では、導管の大半または実質的にすべては、ハウジング部品310および510内に一体化されて、潜在的なリーク箇所を減らし得る。
【0060】
一部の実施形態では、ハウジング部品310および510を一緒に連結する前に、Oリングがハウジング部品310および510の様々な箇所の間に配置されて、ハウジング部品が確実に適切に密閉されるようにし得る。一部の実施形態では、部品は、ハウジング部品310および510に一体化され得る、および/または別個に連結され得る。例えば、管類、流量制限器(例えば、圧入式流量制限器)、酸素センサ、ガス分離吸着剤139、逆止弁、栓、プロセッサ、電源などは、ハウジング部品が一緒に連結される前および/またはその後に、ハウジング部品510および410に連結され得る。
【0061】
一部の実施形態では、ハウジング部品310および410の外側へと続く開口部337を用いて、流量制限器などの装置を挿入し得る。開口部はまた、成形性を高めるために用いられ得る。開口部のうちの1つまたは2つ以上は、(例えば、プラスチック製の栓で)成形後に塞がれ得る。一部の実施形態では、流量制限器は、通路を密閉するために栓を挿入する前に通路に挿入され得る。圧入式流量制限器は、圧入式流量制限器とそれらのそれぞれの開口部との間において摩擦嵌合を可能にする直径を有し得る。一部の実施形態では、接着剤が、圧入式流量制限器の外側に加えられて、挿入されると圧入式流量制限器を所定の位置に保持し得る。一部の実施形態では、栓は、それらのそれぞれの管と摩擦嵌合を有し得る(またはそれらの外面に塗布された接着剤を有し得る)。圧入式流量制限器および/またはその他の部品は、(例えば、それぞれの開口部の直径よりも小さい直径の)先端が細い道具または棒を使用して、それらのそれぞれの開口部内に挿入され、押し込まれ得る。一部の実施形態では、圧入式流量制限器は、それらの挿入を停止させる管内の機構に突き当たるまで、それらのそれぞれの管内に挿入され得る。例えば、機構には、半径の減少が含まれ得る。その他の機構がまた企図される(例えば、管の側面の凸部、ねじ山など)。一部の実施形態では、圧入式流量制限器は、(例えば、細い管部分として)ハウジング部品内に成形され得る。
【0062】
一部の実施形態では、バネ式バッフル129が、ハウジング部品310および510のそれぞれのキャニスタ受容部分内に、バッフル129のバネ側がキャニスタの出口に面するように配置され得る。バネ式バッフル129は、キャニスタ内のガス分離吸着剤139に力を印加し、他方、ガス分離吸着剤139が出口開口部に入るのを阻止するのをさらに助ける。バネ式バッフル129の使用は、ガス分離吸着剤をコンパクトに保ち、その間、膨張(例えば、熱膨張)も可能とし得る。ガス分離吸着剤139をコンパクトに保つことは、酸素濃縮器システム100の移動中にガス分離吸収剤が破損するのを防止し得る。
【0063】
一部の実施形態では、圧縮システム200からの加圧した空気は、空気流入口306に入り得る。空気流入口306は、流入口導管330に連結される。空気は、流入口306を通ってハウジング部品310に入り、導管330を通って、バルブ座部322および324に達する。
図5および
図6は、ハウジング310の端面図を示している。
図5は、バルブをハウジング310に嵌める前の、ハウジング310の端面図を示している。
図6は、バルブがハウジング310に嵌められた状態のハウジング310の端面図を示している。バルブ座部322および324は、それぞれ、流入口バルブ122および124を受けるように構成される。流入口バルブ122は、キャニスタ302に連結され、流入口バルブ124は、キャニスタ304に連結される。ハウジング310はまた、それぞれ、流出口バルブ132および134を受けるように構成されるバルブ座部332および334を含む。流出口バルブ132は、キャニスタ302に連結され、流出口バルブ134は、キャニスタ304に連結される。流入口バルブ122/124は、導管330からそれぞれのキャニスタへの空気の通過を制御する。
【0064】
ある実施形態では、加圧した空気は、キャニスタ302または304のうちの一方に送り込まれ、その間、他方のキャニスタは排気される。例えば、使用中、流入口バルブ122が開いている間、流入口バルブ124は閉じている。圧縮システム200からの加圧した空気は、キャニスタ302内に送り込まれて、その間、キャニスタ304への流入が流入口バルブ124によって阻止される。キャニスタ302の加圧中、流出口バルブ132は閉じており、流出口バルブ134は開いている。流入口バルブと同様に、流出口バルブ132および134は、互いに同調しないように操作される。各流入口バルブ座部322は、ハウジング310を通ってキャニスタ302へつながる開口375を含む。同様に、バルブ座部324は、ハウジング310を通ってキャニスタ302へつながる開口325を含む。導管330からの空気は、それぞれのバルブ(322または324)が開いている場合、開口323、または325を通過し、キャニスタに入る。
【0065】
逆止弁142および144(
図4参照)は、それぞれ、キャニスタ302および304に連結される。逆止弁142および144は、キャニスタが加圧され、排気される際に発生する圧力差によって受動的に操作される一方向弁である。キャニスタ302および304で生成された酸素富化ガスは、キャニスタからハウジング410の開口542および544へ進む。経路(図示せず)は、開口542および544を導管342および344にそれぞれ繋ぐ。キャニスタ内の圧力が逆止弁142を開くのに十分である場合、キャニスタ302で生成された酸素富化ガスは、開口542を通って導管342へ進む。逆止弁142が開いている場合、酸素富化ガスは、導管342を通ってハウジング310の端部に向けて流れる。同様に、キャニスタ内の圧力が逆止弁144を開くのに十分である場合、キャニスタ304で生成された酸素富化ガスは、キャニスタから開口544を通って導管344へ進む。逆止弁144が開いている場合、酸素富化ガスは導管344を通ってハウジング310の端部に向けて流れる。
【0066】
いずれかのキャニスタからの酸素富化ガスも、導管342または344を通って移動し、ハウジング310内に形成された導管346に入る。導管346は、この導管を導管342、導管344およびアキュムレータ106に連結する開口を含む。よって、キャニスタ302または304で生成された酸素富化ガスは、導管346へ移動し、アキュムレータ106内へと進む。
【0067】
しばらく経つと、ガス分離吸着剤が窒素で飽和し、流入する空気からの相当量の窒素を分離することができなくなる。キャニスタ内のガス分離吸着剤がこの飽和点に到達すると、圧縮した空気の流入が停止され、キャニスタが排気されて窒素を除去する。キャニスタ302は、流入口バルブ122を閉じて流出口バルブ132を開くことにより排気される。流出口バルブ132は、キャニスタ302から排気されたガスを、ハウジング310の端部によって画定された容積内へと放出する。発泡材料は、ハウジング310の端部を覆って、キャニスタからのガスの放出によって発生する音を低減し得る。同様に、キャニスタ304は、流入口バルブ124を閉じて流出口バルブ134を開くことにより排気される。流出口バルブ134は、キャニスタ304から排気されたガスを、ハウジング310の端部によって画定された容積内へと放出する。
【0068】
キャニスタ302が排気されている間、キャニスタ304は加圧されて、上述と同様に酸素富化ガスを生成する。キャニスタ304の加圧は、流出口バルブ134を閉じて流入口バルブ124を開くことによって達成される。酸素富化ガスは、逆止弁144を通ってキャニスタ304を出て行く。
【0069】
例示的な実施形態では、キャニスタ304から窒素を排気する際に、酸素富化ガスの一部は、キャニスタ302からキャニスタ304に移送され得る。キャニスタ304の排気中のキャニスタ302からキャニスタ304への酸素富化ガスの移送は、キャニスタから窒素(およびその他のガス)をさらにパージするのを助ける。
図1に示されるように、キャニスタ間の酸素富化ガスの流れは、流量制限器およびバルブを用いて制御される。3つの導管が、キャニスタ間で酸素富化ガスを移送するために用いるために、ハウジング510内に形成される。
図7に示されるように、導管530は、キャニスタ302をキャニスタ304に連結する。流量制限器151(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間で導管530に配置され、使用中の酸素富化ガスの流れを制限する。導管532もまた、キャニスタ302をキャニスタ304に連結する。導管532は、
図8に示されるように、バルブ152を受けるバルブ座部552に連結される。流量制限器153(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間で導管532に配置される。導管534もまた、キャニスタ302をキャニスタ304に連結する。導管534は、
図8に示されるように、バルブ154を受けるバルブ座部554連結される。流量制限器155(図示せず)は、キャニスタ302とキャニスタ304との間で導管434に配置される。流量調整/排気バルブ152/154の組は、流量制限器153および155と共に働いて、2つのキャニスタ間の空気流のバランスを最適化する。
【0070】
アキュムレータ106中の酸素富化ガスは、供給バルブ160を通って、ハウジング510内に形成される膨張チャンバ170へ進む。ハウジング510の開口(図示せず)は、アキュムレータ106を供給バルブ160に連結する。ある実施形態では、膨張チャンバは、チャンバを通過するガスの酸素濃度を判定するために使用され得る1つまたは2つ以上の装置を含み得る。
【0071】
コントローラシステム
酸素濃縮器システム100の操作は、本明細書に記載されるように、酸素濃縮器システムの様々な部品に連結された内部コントローラ400を用いて自動的に行われ得る。
図1に示されるように、コントローラ400は、1つまたは2つ以上のプロセッサ410と内部メモリ420とを含む。酸素濃縮器システム100を操作および監視するために使用される方法は、メモリ420またはコントローラ400に連結された記憶媒体に記憶したプログラム命令によって実装されて、1つまたは2つ以上のプロセッサ410によって実行され得る。非一時的メモリ媒体は、様々なタイプのメモリ装置または記憶装置のどれでも含み得る。「メモリ媒体」の語は、インストール用媒体、例えば、読み取り専用コンパクトディスクメモリ(CD-ROM)、フロッピー(登録商標)ディスク、またはテープ装置、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、ダブルデータレートランダムアクセスメモリ(DDR RAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、エクステンデッドデータアウトランダムアクセスメモリ(EDO RAM)、ラムバスランダムアクセスメモリ(RAM)などのコンピュータシステムメモリまたはランダムアクセスメモリ、あるいは磁気媒体、例えばハードドライブ、または光記憶装置などの不揮発性メモリを含むとして意図されている。メモリ媒体は、同様にその他のタイプのメモリ、またはそれらの組み合わせを備え得る。加えて、メモリ媒体は、プログラムが実行される第1のコンピュータ内に搭載され得る、あるいは第1のコンピュータにインターネットなどのネットワークを介して繋がる第2の異なるコンピュータ内に搭載され得る。後者の場合、第2のコンピュータは、プログラム命令を実行用として第1のコンピュータに提供し得る。「メモリ媒体」の語は、異なる場所に、例えば、ネットワークで接続された異なるコンピュータに存在し得る2つまたは3つ以上のメモリ媒体を含む。
【0072】
一部の実施形態では、コントローラ400は、例えば、酸素濃縮器システム100内に配置された回路基板上に含まれる、1つまたは2つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラなどを含むプロセッサ410を含む。プロセッサ410は、メモリ420に記憶されるプログラム命令を実行できる。一部の実施形態では、プログラム命令は、プロセッサ410内に組み込まれて、プロセッサの外部のメモリが別個にアクセスできないようにし得る(すなわち、メモリ420は、プロセッサ410の内部であり得る)。
【0073】
プロセッサ410は、酸素濃縮器システム100の様々な部品に連結され得、このような部品には、圧縮システム200、システムを通る流体の流れを制御するために使用されるバルブのうちの1つまたは2つ以上(例えば、バルブ122、124、132、134、152、154、160、またはこれらの組み合わせ)、酸素センサ165、圧力センサ194、流量モニタ180、温度センサ、ファン、および、電気的に制御し得るあらゆるその他の部品が含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態では、別個のプロセッサ(および/またはメモリ)が、部品のうち1つまたは2つ以上に連結され得る。
【0074】
コントローラ400は、酸素濃縮器システム100を操作するようプログラムされ、さらに、故障状態でないか酸素濃縮器システムを監視するようにプログラムされる。例えば、一実施形態では、コントローラ400は、システムが動作しており、かつユーザの呼吸が既定の時間検出されない場合に、警報を発するようプログラムされる。例えば、コントローラ400が呼吸を75秒間検出しなかった場合、警報用LEDが点灯され得る、および/または音による警報を鳴動させ得る。例えば、睡眠時無呼吸の発症中、ユーザが本当に呼吸を停止した場合、警報は、ユーザを目覚めさせて、呼吸を再開させるのに十分なものであり得る。呼吸動作は、コントローラ400がこの警報機能をリセットするのに十分であり得る。あるいは、出力導管192がユーザから除去された際に、システムの電源が誤ってオンのままとされた場合、アラームは、ユーザが酸素濃縮器システム100をオフにするためのリマインダとして働き得る。
【0075】
コントローラ400は、酸素センサ165にさらに連結されて、膨張チャンバ170を通過する酸素富化ガスの酸素濃度を連続的または周期的に監視するようにプログラムされ得る。最小酸素濃度閾値は、コントローラ400内にプログラムされ得て、これにより、コントローラは、LEDによる視覚的な警報および/または音声警報を発して、患者に酸素濃度が低いことを警告する。
【0076】
コントローラ400はまた、内部電源180に連結されて、内部電源の充電レベルを監視することができる。最低電圧および/または電流閾値は、コントローラ400内にプログラムされ得て、これにより、コントローラは、LEDによる視覚的な警報および/または音声警報を発して、患者に電力状態が低いことを警告する。警報は、バッテリの利用可能充電量がゼロに近づくにつれて断続的かつ頻度を高めて作動され得る。
【0077】
コントローラ400のさらなる機能は、本開示の他の節で詳細に説明される。
【0078】
検出した呼吸数または呼吸の深さを閾値と比較することによって評価すると、比較的活動的でない(例えば、睡眠中、座っているなど)場合、ユーザの呼吸数または呼吸の深さは低くなり得る。比較的活動的である(例えば、歩行中、運動中など)場合、ユーザの呼吸数または呼吸の深さは高くなり得る。活動/睡眠モードは、自動的に評価され得る、および/または、ユーザは、活動モード用のボタンおよび睡眠モード用の別のボタンを押すことによって、それぞれの活動モードまたは睡眠モードを手動で指示し得る。一部の実施形態では、ユーザは、活動モード、通常モード、または安静モードからスイッチを切り替え得る。活動モードまたは睡眠モードの作動に応答して酸素濃縮器システムが行う調整は、本明細書に詳述される。
【0079】
酸素富化ガスの送達方法
酸素濃縮器システムの主な用途は、酸素補給をユーザに供給することである。一般に、供給される酸素補給量は、医師によって評価される。酸素補給の典型的な処方量は、約1LPMから約10LPMまでの範囲であり得る。最も一般的な処方量は、1LPM、2LPM、3LPM、および4LPMである。一般に、酸素富化ガスは、ユーザの処方要件を満たすように、呼吸サイクル中にユーザに供給される。本明細書で使用される場合、「呼吸サイクル」の語は、後に呼気が続く、人間の吸気を指す。
【0080】
処方量を満たすために生成されるべき酸素富化ガスの量を最小化するために、コントローラ400は、酸素富化ガスの送達の時間をユーザの吸気と合わせて調整するようにプログラムされ得る。ユーザが吸気する時にユーザに酸素富化ガスを放出することは、例えば、ユーザが息を吐く時に酸素を放出しないことにより、不必要な酸素生成を防止し得る(電力要件をさらに低減し得る)。必要な酸素の量を低減することにより、酸素濃縮器100が必要とする空気圧縮量を効果的に低減し得る(ひいては圧縮器からの電力要求を低減し得る)。
【0081】
酸素濃縮器システム100によって生成された酸素富化ガスは、酸素アキュムレータ106に貯蔵され、ユーザが吸気する時にユーザに放出される。酸素濃縮器システムが供給する酸素富化ガスの量は、部分的には、供給バルブ160によって制御される。ある実施形態では、供給バルブ160は、コントローラ400によって評価された、適切な量の酸素富化ガスをユーザに供給するのに十分な時間だけ開放される。ユーザの処方要件を満たすために必要な酸素量を最小化するために、ユーザの吸気が最初に検出された時に、酸素富化ガスは、ボーラス投与量で供給され得る。例えば、酸素富化ガスのボーラス投与量は、ユーザの吸気の最初の数ミリ秒で供給され得る。
【0082】
ある実施形態では、圧力センサ194および/または流量センサ185は、ユーザによる吸気の開始を判定するために用いられ得る。例えば、ユーザの吸気は、圧力センサ194を用いて検出され得る。使用の際には、酸素富化ガスを供給するための導管は、ユーザの鼻および/または口に(例えば、鼻カニューレまたはフェイスマスクを用いて)取り付けされる。吸気の開始時、ユーザは鼻および/または口を通して空気を体内に吸い込み始める。空気が吸い込まれると、部分的に送達導管の端部にわたって引き込まれる空気のベンチュリ作用により、導管の端部で陰圧が生成される。圧力センサ194は、圧力の降下を検出した時に、吸気の開始を知らせる信号を生成するように動作可能であり得る。吸気の開始が検出されると、供給バルブ160が制御されて、アキュムレータ106から酸素富化ガスのボーラス投与量を放出する。
【0083】
一部の実施形態では、圧力センサ194は、感知面に印加される陽圧または陰圧の量に比例する信号を提供し得る。圧力センサ194によって検知される圧力の変化量は、ユーザに供給される酸素富化ガスの量の精度を向上させるために用いられ得る。例えば、大きな陰圧変化が圧力センサ194によって検出された場合、ユーザによって吸気されるガスの体積の増加を考慮して、ユーザに供給される酸素富化ガスの体積を増加させ得る。より小さな陰圧変化が検出された場合、ユーザによって吸気されるガスの体積の減少を考慮して、ユーザに供給される酸素富化ガスの体積を減少させ得る。圧力の正方向の変化は、ユーザによる呼気を示し、概して、酸素富化ガスの放出が中断される時間である。概して、正方向の圧力変化が感知されている間、バルブ160は、次の吸気の開始まで閉じたままである。
【0084】
一部の実施形態では、圧力センサ194の感度は、ユーザからの圧力センサ194の物理的な距離によって影響され得、特に、圧力センサが、酸素濃縮器システム100内に配置され、かつ圧力差が、酸素濃縮器システムをユーザに連結する管類を通して検出される場合はそうである。一部の実施形態では、圧力センサは、酸素富化ガスをユーザに供給するために用いられる気道送達装置内に配置され得る。圧力センサからの信号は、ワイヤを介して、またはBLUETOOTH(登録商標)(ワシントン州カークランドのBluetooth,SIG,Inc.)またはその他の無線技術などの遠隔計測を通じて、酸素濃縮器100内のコントローラ400に電子的に提供され得る。
【0085】
ある実施形態では、ユーザの吸気は、流量センサ185を用いることによって検出され得る。使用の際には、酸素富化ガスを供給するための導管は、ユーザの鼻および/または口に(例えば、鼻カニューレまたはフェイスマスクを用いて)取り付けされる。吸気の開始時、ユーザは鼻および/または口を通して空気を体内に吸い込み始める。空気が引き込まれると、導管を通過するガスの流れが増加する。流量センサ185は、流量の増加を検出した時に、吸気の開始を知らせる信号を生成するように動作可能であり得る。吸気の開始が検出されると、供給バルブ160が制御されて、アキュムレータ106から酸素富化ガスのボーラス投与量を放出する。
【0086】
活動状態(例えば、歩行中、運動中など)の間、毎分30呼吸(BPM)の呼吸数で呼吸するユーザは、安静状態(例えば、睡眠中、座っているなど)の間に12BPMで呼吸するユーザの2.5倍の酸素を消費し得る。圧力センサ194および/または流量センサ185は、ユーザの呼吸数を判定するために用いられ得る。コントローラ400は、圧力センサ194および/または流量センサ185から受信した情報を処理して、吸気の開始の頻度に基づいて呼吸数を判定し得る。検出したユーザの呼吸数は、酸素富化ガスのボーラス投与量を調整するために用いられ得る。酸素富化ガスのボーラス投与量の体積は、ユーザの呼吸数が増加するに従って増加され、また、ユーザの呼吸数が減少するに従って減少され得る。コントローラ400は、検出したユーザの活動状態に基づいてボーラス投与量を自動的に調整し得る。あるいは、ユーザは、酸素濃縮器の制御パネル上の適切なオプションを選択することによって、それぞれの活動モードまたは安静モードを手動で指示し得る。あるいは、ユーザは、コントローラ400を遠隔の電子装置から操作し得る。例えば、ユーザは、スマートフォンまたはタブレット装置を用いて、コントローラを操作し得る。
【0087】
一部の実施形態では、検出したユーザの呼吸数を用いて評価したユーザの現在の活動レベルが既定の閾値を超過している場合、コントローラ400は、警報(例えば、視覚的および/または音声警報)を発報して、現在の呼吸数が、酸素濃縮器システムの送達キャパシティを超過していることをユーザに警告し得る。例えば、この閾値は、毎分20呼吸に設定され得る。
【0088】
ユーザの呼吸数の判定方法は、一般的に、既定時間内におけるユーザの呼吸の回数を数えて、呼吸数を算出する。ユーザの呼吸数を判定する場合、一般的に、既定時間中に測定されるすべての呼吸を用いて、呼吸数を判定する。しかしながら、このような方法は、ユーザの呼吸数の急な変化に起因する重大な誤差を引き起こし得る。例えば、睡眠中、呼吸間隔は、個人によって大きく変化し得ることが知られている。呼吸パターンは、普通、睡眠中に変化する。熟睡中、呼吸は遅くなり、身体が眠るにつれて浅くなる。浅い眠りおよびレム睡眠の間、呼吸は、起きている人の呼吸パターンに似ることもある。深い呼吸の期間はまた、夢を見ている最中に起こり得る。呼吸数の変化は、ユーザが寝ている間、そして起きている間でさえも急に起こり得る。酸素富化ガスの送達がユーザの呼吸パターンに適切に適合されないと、酸素富化ガスの供給があまりにも長いために、酸素富化ガスが無駄になることもあるし、あるいは酸素富化バスの供給期間があまりにも短いために、酸素富化ガスが足りないこともある。
【0089】
ユーザの不規則な呼吸を考慮するための試みがなされてきた。例えば、Deaneらの米国特許第7,841,343号(「Deane特許」)は、不規則な呼吸を補償するための不感時間の使用を説明している。具体的には、Deane特許は、ボーラス投与量の酸素富化ガスをユーザに送達した後、コントローラが不感時間に入ることを教示している。この不感時間の間、コントローラは、酸素富化ガスを送達するためのトリガをなんら受け付けない。この時間は、ボーラス投与量の送達後、0.5から3秒の範囲であり得る。この不感時間の経過後、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値をある低いレベルに設定して、呼吸が検出されるまで感度を徐々に上げる。Deane特許によれば、このことは、ユーザの呼吸の変化に応じてボーラス投与量の送達を変えるのに役立つ。
【0090】
Deane特許の方法は、呼吸が検出されることのない不感時間を拠り所としている。そのため、ボーラス投与量の酸素富化ガスの送達直後、ユーザが速く呼吸し始めた場合、Deane特許の方法は、呼吸の変化への反応が遅くなることがある。最悪の場合、ユーザは、一呼吸おきに不感時間内に入る呼吸数に変わることもあり、ユーザが実際の呼吸数の半分の呼吸数で呼吸するという誤った指標に至ることもある。このような状況は、ユーザに供給される酸素量が不十分なため、人を酸欠にし得る。
【0091】
出願人は、呼吸数を判定し、判定した呼吸に基づいて吸気呼吸圧力閾値を制御する、改良された方法を考案した。ある実施形態では、コントローラは、既定の回数の呼吸(少なくとも3回)を測定し、かつ最後に測定された呼吸に関する情報を破棄することに基づいて、呼吸数を判定する。この方法では、最後から2番目の呼吸と最後の呼吸との間隔を平均呼吸数の判定に使用しない。残りの呼吸から収集された情報を用いて判定される呼吸数は、ユーザの現在の呼吸数をより正確に示すことが見いだされている。このような方法はまた、Deane特許に説明されるように人為的な「不感時間」を設けるという極端な手段に頼る必要なく、不規則な呼吸パターンを考慮するための方法を提供する。
【0092】
ある期間にわたって、コントローラ400は、呼吸の回数を収集および記憶し得る。ある期間にわたる呼吸の回数、または平均呼吸間隔に基づいて、呼吸数が算出され得る。一部の実施形態では、期間は、等しい時間単位に分割される。呼吸の回数、または平均呼吸間隔は、設定された期間における各時間単位において判定される。単位時間当たりの呼吸の回数または平均呼吸間隔が、呼吸数の判定に使用される。一部の実施形態では、送達パラメータが変化する場合、最後の時間単位における呼吸数を判定に使用しない。例えば、期間を5つの等しい時間単位に分割する場合、最後の時間単位に関して判定した呼吸数は、平均呼吸数(例えば、1分間当たりの平均呼吸回数)の判定に使用しない。
【0093】
例えば、コントローラ400は、呼吸の回数を5分間にわたって収集し得る。5分間の間、ユーザの呼吸数は、5分間のうちの第1分目では毎分15呼吸(「BPM」)、5分間のうちの第2分目の間は、10BPM、5分間のうちの第3分目の間は、25BPM、5分間のうちの第4分目の間は、30BPM、5分間のうちの第5分目の間は、40BPMであり得る。40BPMを無視して、残りの呼吸を平均し得る(例えば、その結果、20BPMの平均呼吸数と判定する)。5分間のうちの最後の1分間に判定された呼吸数は、次の5分間の平均に使用され得る。例えば、5分間のうちの最後の1分間は、次の5分間のうちの第1分目として使用され得る。あるいは、解析される5分間という期間は、1分ずつずらされてもよい。この場合、今解析した5分間のうちの第2分目は、次の5分間のうちの第1分目になる。第5分目(最初の呼吸数の解析では無視)は、次の呼吸数の解析の第4分目になる。いずれの場合も、最後の1分間は、呼吸数の解析では無視される。
【0094】
別の実施形態では、呼吸数は、少なくとも3回の呼吸に関して、各呼吸間隔を監視することによって判定され得る。一部の実施形態では、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、16回、17回、または20回の連続する呼吸のそれぞれの間隔を測定して使用して、平均呼吸数を判定する。この方法では、最後から2番目の呼吸と最後の呼吸との間隔を無視し、呼吸数は、最後から2番目の呼吸までの呼吸間隔に基づくようにする。例えば、5回の連続する呼吸を呼吸数の判定に使用する場合、第4番目の呼吸と第5番目の呼吸との時間は、呼吸数を判定する際に破棄される。例えば、次の呼吸間隔、すなわち、第1番目~第2番目:4.5秒、第2番目~第3番目:4.7秒、第3番目~第4番目:4.2秒、第4番目~第5番目:5.2秒が取得された場合、平均呼吸間隔は、最初の3回(4.5秒、4.7秒、および4.2秒)を平均し、かつ最後の呼吸(5.2秒)を無視することによって判定される。こうすると、平均呼吸間隔は、4.47であり、平均呼吸数が毎分13.4呼吸となる。
【0095】
平均呼吸数を用いて、吸気呼吸圧力閾値は、現在の吸気呼吸圧力閾値に対して調整され得る。コントローラ400は、平均呼吸数が毎分15呼吸未満から毎分15呼吸超に変化したことを判定し得る。コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して上げる電子信号を圧力センサ194に送信し得る。判定された平均呼吸数が毎分10呼吸超から毎分10呼吸未満に変化した場合、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して下げる電子信号を圧力センサ194に送信し得る。コントローラ400は、平均呼吸数が、毎分10呼吸から毎分15呼吸までの間であると判定して、現在の吸気呼吸圧力閾値を変化させなくてよいと判定し得る。平均呼吸数が毎分5呼吸未満の場合、コントローラ400は、警報を発してもよい。吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して下げてあって、吸気呼吸圧力がある期間(例えば、75秒)検出されない場合、コントローラ400は、警報を発してもよい。
【0096】
別の実施形態では、吸気呼吸圧力閾値の変化は、ある既定の期間にわたって呼吸数の変化を調べることによって、調整され得る。例えば、呼吸数の変化は、3回または4回以上の呼吸の連続するグループを作成することによって監視され得る。3回または4回以上の呼吸の連続するグループのそれぞれについて、呼吸数が判定される(例えば、グループ内の各呼吸の平均時間に基づいて呼吸数を算出することによって)。各グループの呼吸数を次のグループと比較して、呼吸数がどのように変化しているかを判定する。3回または4回以上の連続するグループにわたって呼吸数が増加(例えば、グループのうちの少なくとも2つで呼吸数が増加)している場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を上げ得る。3回または4回以上の連続するグループにわたって呼吸数が減少(例えば、グループのうちの少なくとも2つで呼吸数が減少)している場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を下げ得る。
【0097】
ある具体的な例では、17回の連続する呼吸のそれぞれの間隔が測定される。次いで、4回の連続する呼吸に対して各グループが吸気時間を有する状態で、呼吸を4つのグループに分割する。そうすると、グループは以下のようになり、括弧内の数字は呼吸間隔を示している。
1(5.8秒)2(5.0秒)3(4.2秒)4 BPM=12
(4.0秒)5(3.5秒)6(3.5秒)7(3.0秒)8 BPM=17
(3.0秒)9(3.4秒)10(3.6秒)11(3.5秒)12 BPM=18
(2.6秒)13(2.6秒)14(2.4秒)15(2.0秒)16 BPM=25
(2.7秒)17
最後の間隔(呼吸16と呼吸17との間の時間)は、呼吸数の判定に使用されない。上の例では、第1のグループ(呼吸1~4)は、12BPMの呼吸数を呈している。第2のグループは、17BPMの呼吸数を示しており、これは、対象者の呼吸数が増加していることを表している。吸気呼吸圧力閾値を変える代わりに、コントローラは、「看視(watch)」モードの状態になる。「看視」モードでは、吸気呼吸圧力閾値を変える必要があり得ると、コントローラに警告を出す。その結果、コントローラは、第3番目のグループを調べる。第3のグループは、18BPMの呼吸数を呈している。呼吸数が先行する呼吸数の±2以内であれば、変化したとはみなされない。第2のグループから第3のグループへは呼吸数が(上に規定されるとおり)変化していないため、コントローラは看視モードに留まる。次いで、コントローラは、第3のグループと第4のグループとの間の変化を調べる。第4のグループは、25BPMの呼吸数を呈している。コントローラは、ここで、測定された4つのグループの中で2回目の増加を確認したことになるため、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を上げる。コントローラは、さらなるグループ(この例では、取得された最後の呼吸を除いて、4回の連続する呼吸のグループ)を取得し続けて、吸気呼吸圧力閾値を調整すべきかどうかを評価し続ける。
【0098】
一部の実施形態では、最後の呼吸を無視するのではなく、最後のグループを無視する。例えば、上の例では、コントローラは、最初の3つのグループに基づいて、かつ最後(第4番目)のグループを無視して、吸気呼吸圧力閾値を変化するための決定の根拠とする。これらの状況下では、吸気呼吸圧力閾値は、さらなるグループを取得して、呼吸数の増加が続くかどうか判定されるまで変更されない。
【0099】
代替的な実施形態では、コントローラは、BPMの変化ではなく、実際のBPMを決定の根拠とする。例えば、BPMがグループ内で毎分10呼吸未満に変わった場合、コントローラは、看視モードの状態になり得る。BPMが次の2つのグループのうちの1つにおいて10BPM未満に留まる場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して下げる電子信号を圧力センサに送信し得る。BPMが、毎分10呼吸から毎分15呼吸までの間である場合、吸気呼吸圧力閾値を変えない。BPMがグループ内で毎分15呼吸超に変わった場合、コントローラは、看視モードの状態になり得る。BPMが次の2つのグループのうちの1つにおいて15BPM超に留まる場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して上げる電子信号を圧力センサに送信し得る。この実施形態では、上述のように、検出された最後の呼吸または測定された最後のグループは、吸気呼吸圧力閾値が変化する場合、判定する際に無視され得る。
【0100】
一部の実施形態では、呼吸数を算出する必要はないが、代わりに、意思決定プロセスにおいて呼吸間隔が使用され得る。吸気呼吸圧力閾値を調整するプロセスの流れ図が
図10に示されている。使用中、少なくとも3回の連続する呼吸の間隔が測定される。例えば、第4番目の呼吸と第5番目の呼吸の間隔が測定された場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を変える必要があるかどうかを判定する。呼吸1および呼吸2、呼吸2および呼吸3、ならびに呼吸3および呼吸4の間隔を用いて、平均呼吸間隔を判定する。呼吸4および呼吸5の間隔は、平均呼吸間隔の判定に使用されない。次いで、呼吸1~4の平均呼吸間隔を既定値と比較する。一実施形態では、対象者は、平均呼吸間隔が4秒未満の場合、活動状態にあるとみなされる。その他の間隔も使用できることを理解されたい。よって、プロセスは、対象者の平均呼吸間隔を既定の活動状態の間隔と比較することを含む。対象者の平均呼吸間隔が活動状態の間隔未満である場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を高い圧力に設定する。
【0101】
対象者の平均呼吸間隔が活動状態の間隔を超える場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を非活動状態の間隔と比較する。一実施形態では、対象者は、平均呼吸間隔が6秒を超える場合、非活動状態にあるとみなされる。その他の間隔も使用できることを理解されたい。対象者の平均呼吸間隔が6秒を超える場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を低い圧力に設定する。対象者の平均呼吸間隔が4秒から6秒の間である場合、コントローラは、吸気呼吸圧力閾値を変更しない。
【0102】
図10に示されるように、呼吸6を取得した時に、プロセスが繰り返されるが、ここで、平均は呼吸2と呼吸5との間の間隔に基づく。呼吸2~5の平均呼吸間隔が判定されると、上述したものと同じプロセスを使用して、吸気呼吸圧力閾値を変更すべきかどうか、そして変更すべき場合、高い圧力(活動)に設定すべきか低い圧力(非活動)に設定すべきかを判定する。このプロセスは、酸素をユーザに供給する間はずっと継続され得る。
【0103】
一部の実施形態では、コントローラ400は、信号を圧力センサ194に送信して、少なくとも3回の呼吸にわたって監視される時間に対する絶対圧力の変化率に基づいて、閾値吸気呼吸圧力を調整し得る。一部の実施形態では、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回または20回の連続する呼吸のそれぞれの間隔に対する絶対圧力の変化を測定して使用して、時間に対する絶対圧力の変化率を判定する。コントローラ400は、ある呼吸期間に基づく時間に対する絶対圧力の変化率を判定し、非一時的媒体に情報を記憶し得る。時間に対する絶対圧力の判定された変化率に基づいて、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を調整する呼吸圧力センサ194に電子信号を送信し得る。変化率が負、かつ-0.5未満またはこれに等しいと評価される場合、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して下げる電子信号を呼吸圧力センサ194に送信し得る。例えば、変化率が約-1.5から約-0.5まで(すなわち、-0.5未満またはこれに等しい)と評価される場合、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して下げる電子信号を呼吸圧力センサ194に送信し得る。変化率がわずかに正またはわずかに負(すなわち、-0.5から0.5)と評価される場合、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値と同じに保つ電子信号を呼吸圧力センサ194に送信し得る。変化率が正、かつ、例えば、+0.5超またはこれに等しい場合、例えば、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値を現在の吸気呼吸圧力閾値に対して上げる電子信号を呼吸圧力センサ194に送信し得る。
【0104】
一部の実施形態では、コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値の変化に基づいて、酸素濃縮器を操作し得る。現在の頻度および/または持続時間に対する、ユーザに供給される酸素富化ガスの頻度および/または持続時間は、吸気呼吸圧力閾値の変化に基づいて調整され得る。吸気呼吸圧力閾値が下げられたと判定すると、コントローラ400は、酸素濃縮器を安静モードに切り替え得る。コントローラ400は、吸気呼吸圧力閾値が上げられると、酸素濃縮器を活動モードに切り替え得る。
【0105】
一部の実施形態では、
図9に示されるように、供給される酸素富化ガスのボーラス投与量は、2つまたは3つ以上のパルスを含み得る。例えば、毎分1リットル(LPM)の送達量で、ボーラス投与量は2つのパルス、すなわち、約7立方センチメートルの第1のパルス556と、約3立方センチメートルの第2のパルス558とを含み得る。その他の送達量、パルスのサイズ、およびパルスの数もまた企図されている。例えば、2LPMでは、第1のパルスは、約14立方センチメートルであり得、第2のパルスは、約6立方センチメートルであり得、3LPMでは、第1のパルスは、約21立方センチメートルであり得、第2のパルスは、約9立方センチメートルであり得る。一部の実施形態では、吸気の開始が検出(例えば、圧力センサ194によって検出)された時に、より大きなパルス556が提供され得る。一部の実施形態では、パルスは、吸気の開始が検出された時に供給され得る、および/または呼吸を通して時間に対して均一に分散させ得る。一部の実施形態では、パルスは、呼吸の持続時間を通して階段状のステップ状であり得る。一部の実施形態では、パルスは、様々なパターンで分散させ得る。追加のパルスもまた用いられ得る(例えば、呼吸1回当たり3パルス、4パルス、5パルスなど)。第1のパルス556は、第2のパルス558の約2倍として示されているが、一部の実施形態では、第2のパルス558は、第1のパルス556よりも大きい場合もある。一部の実施形態では、パルスのサイズおよび長さは、例えば、供給バルブ160によって制御され得、供給バルブ160は、時間を調整したシーケンスで開閉されて、パルスを提供し得る。複数のパルスを有するボーラス投与量は、単一のパルスを有するボーラス投与量よりもユーザに与える影響が小さくなり得る。複数のパルスはまた、ユーザの鼻腔の乾燥および血液の酸素脱飽和を少なくさせ得る。複数のパルスはまた、廃棄される酸素を少なくし得る。
【0106】
一部の実施形態では、酸素濃縮器100の感度は、選択的に減衰させて、異なる源からの空気の移動(例えば、周囲空気の移動)による誤った吸気検知を減少させ得る。例えば、酸素濃縮器100は、2つの選択可能なモード、すなわち、活動モードと非活動モードとを有し得る。一部の実施形態では、ユーザは、手動で(例えば、スイッチまたはユーザインターフェースを通して)モードを選択し得る。一部の実施形態では、モードは、検出した呼吸数に基づいて、酸素濃縮器100によって自動的に選択され得る。例えば、酸素濃縮器100は、圧力センサ194を用いてユーザの呼吸数を検出し得る。呼吸数が閾値を超える場合、酸素濃縮器100は、活動モードで作動され得る(そうでない場合、酸素濃縮器は、非活動モードで作動され得る)。その他のモードおよび閾値もまた企図されている。
【0107】
一部の実施形態では、活動モードにおいて、圧力センサ194の感度は、機械的に、電子的に、またはプログラムで減衰され得る。例えば、活動モードの間、コントローラ400は、ユーザの呼吸の開始を示すより大きい圧力差を探し得る(例えば、より高い閾値が、検出された圧力差と比較されて、ボーラス投与量の酸素を放出すべきかどうか判定し得る)。一部の実施形態では、圧力センサ194は、圧力差に対する感度を下げるように機械的に変更され得る。一部の実施形態では、圧力センサからの電子信号は、小さい圧力差を無視するように電子的に変更され得る。このことは、活動モードの時に役立ち得る。一部の実施形態では、非活動モードの間、圧力センサの感度が高められ得る。例えば、コントローラ400は、ユーザの呼吸の開始を示すより小さい圧力差を探し得る(例えば、より小さい閾値が、検出された圧力差と比較されて、ボーラス投与量の酸素を放出すべきかどうか判定し得る)。一部の実施形態では、感度を上げた状態で、ユーザの吸気中、ボーラス投与量の酸素を供給するための応答時間が、減らされ得る。高い感度と少ない応答時間は、所与の流量当量に必要とされるボーラス投与量を減らし得る。少ないボーラス投与量はまた、酸素濃縮器100のサイズおよび電力消費を減らし得る。
【0108】
吸気プロファイルに基づくボーラス投与量供給
ある実施形態では、ボーラス投与量プロファイルが特定のユーザのプロファイルと調和するように設計され得る。そうするために、吸気プロファイルが、圧力センサ194および流量センサ185から集めた情報に基づいて生成され得る。吸気プロファイルは、以下のパラメータ、すなわち、ユーザの呼吸数、ユーザの吸気量、ユーザの呼気量、ユーザの吸気流量、およびユーザの呼気流量のうちの1つまたは2つ以上に基づいて評価され得る。ユーザの呼吸数は、先述のように、圧力センサ194または流量センサ185を用いて吸気の開始を検出することによって評価され得る。吸気量は、吸気中の圧力変化を測定して、圧力変化に基づいて吸気量を算出また経験的に評価することによって評価され得る。あるいは、吸気量は、吸気中の流量を測定して、吸気の流量および長さに基づいて吸気量を算出または経験的に評価することによって評価され得る。呼気量は、呼気中の正方向の圧力変化、または流量および呼気時間のいずれかを用いて同様に評価され得る。ユーザの吸気流量は、吸気の開始直後から測定される。吸気の終了の検出は、圧力センサまたは流量センサに基づき得る。吸気の開始が圧力センサによって検出される場合、開始は、圧力降下によって特徴付けられる。圧力が上昇し始めると、吸気が完了したとみなされる。吸気の開始が流量センサによって検出される場合、開始は、流量の増加によって特徴付けられる。流量が減少し始めると、吸気が完了したとみなされる。
【0109】
人間が意識を保つのに必要な酸素の最小量が存在する。速く呼吸している人は、呼吸のたびに少ない量の空気を取り込み、そのために、吸気ごとに必要とする酸素富化ガスの量が少ない。患者ごとにいくらかの違いがあるが、この関係は、呼吸ごとの平均流量を数学的に確立するために用いることができる。多数の患者の測定を行うことにより、吸気の開始から呼気の開始までの相対流量のプロファイルが確立され得る。この流れプロファイルをテンプレートとして用いて、呼吸数に基づいて算出した実際の流量が、算出した実際の流量プロファイルに数学的に調節され得る。このプロファイルは、送達バルブの開閉を調整するために使用されて、患者の呼吸数に基づいて患者の理想的なプロファイルを作成し得る。ユーザの集団から集めた吸気プロファイルデータは、検出した吸気プロファイルに基づいて適切な調整を行うアルゴリズムを生成するために使用され得る。あるいは、ルックアップテーブルが、検出した吸気プロファイルに基づいてバルブ作動持続時間およびパルス量を制御するために使用され得る。
【0110】
患者の吸気プロファイルの測定は、患者に供給される酸素富化ガスのボーラス投与量の制御のためのより正確な基準を提供する。例えば、吸気の開始に基づいて酸素富化ガスを送達することは、個々のユーザ間の差異を考慮しない場合もある。例えば、呼吸数が似ている人々は、異なる吸気/呼気量、吸気/呼気流量を有し得るため、処方量の酸素を生成するために必要なボーラス投与量要件が異なる場合がある。一実施形態では、吸気プロファイルは、吸気中の空気の流量および吸気の持続時間に基づいて生成される。その結果、吸気プロファイルは、吸気中、特定のユーザが吸いこむ空気の量を予測するものとして使用され得る。このようにして、吸気プロファイル情報は、ユーザに供給される酸素富化空気の量を修正するために使用されて、処方されたレベルの酸素が確実に受けられるようにし得る。ユーザに供給される酸素量は、アキュムレータからの酸素富化ガスの放出頻度および/または持続時間を、供給バルブ160で修正することによって調整され得る。患者の吸気プロファイルを辿ることにより、コントローラは、送達供給バルブの作動を調整して、無駄な逆流を引き起こすことなく、酸素を最大量で供給するために、ボーラス投与量のプロファイルを理想的なものとする。
【0111】
本特許出願では、特定の米国特許、米国特許出願、およびその他の文献(例えば、記事)が参照により援用されている。ただし、このような米国特許、米国特許出願、およびその他の文献の文章は、そのような文章と本明細書に説明されるその他の記載および図面との間に矛盾が生じない範囲内においてのみ、参照により援用される。そのような矛盾が生じた場合、そのような参照により援用される米国特許、米国特許出願、およびその他の文献におけるあらゆるそのような矛盾を生じる文章は、特に、本特許出願に参照により援用されない。
【0112】
本説明を読めば、当業者には、本発明の様々な態様のさらなる修正および代替的な実施形態が明らかであろう。したがって、本説明は、単なる例示として解釈されるべきものであり、当業者に本発明を実行するための一般的手法を教示する目的のものである。本明細書に図示および説明される本発明の形態は、実施形態として解釈されるべきであるものであることを理解されたい。本発明の本説明の恩恵を得た後に当業者には明らかとなるように、本明細書に図示および説明したものに関して、要素や材料の置換を行ってよく、部品やプロセスを入れ替えてよく、本発明の特定の特徴を独立して利用してよい。以下の特許請求の範囲に記載した本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した要素に変更がなされ得る。