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特許7028853イオン注入を使用した太陽電池エミッタ領域製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】イオン注入を使用した太陽電池エミッタ領域製造
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20220222BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20220222BHJP
【FI】
H01L31/04 440
H01L31/06 455
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229344
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2016520002の分割
【原出願日】2014-12-08
(65)【公開番号】P2020092269
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】61/913,614
(32)【優先日】2013-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/562,159
(32)【優先日】2014-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドマン、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】スミス、デイビッド ディー.
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0322199(US,A1)
【文献】特表2013-538009(JP,A)
【文献】特開2007-281156(JP,A)
【文献】特開2006-114576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0266951(US,A1)
【文献】特開2003-077908(JP,A)
【文献】特開2013-239476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/06-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面および裏面を有する基板と、
前記基板の前記裏面上に配設される薄い誘電体層と、
前記薄い誘電体層上に配設される第1の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は第1の導電型のドーパント不純物原子がドープされており、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子とは異なる補助不純物種を含み、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子の領域である下部と、前記第1の導電型のドーパント不純物原子および前記補助不純物種の領域である上部とを有し、前記補助不純物種は、窒素原子、炭素原子および酸素原子から成る群から選択される不純物種である、第1の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記薄い誘電体層上に配設される第2の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型のドーパント不純物原子がドープされている、第2の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域および前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される導電性コンタクト構造と、を備える、太陽電池であって、
前記第1の導電型の前記ドーパント不純物原子は、N+ドーパントを含む、太陽電池
【請求項2】
受光面および裏面を有する基板と、
前記基板の前記裏面上に配設される薄い誘電体層と、
前記薄い誘電体層上に配設される第1の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、第1の導電型のドーパント不純物原子がドープされており、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子とは異なる補助不純物種を含み、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子の領域である下部と、前記第1の導電型のドーパント不純物原子および前記補助不純物種の領域である上部とを有し、前記上部は、前記下部と整合されている、第1の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記薄い誘電体層上に配設される第2の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型のドーパント不純物原子がドープされている、第2の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域および前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される導電性コンタクト構造と、を備える、太陽電池であって、
前記第1の導電型の前記ドーパント不純物原子は、N+ドーパントを含む、太陽電池
【請求項3】
受光面および裏面を有する基板と、
前記基板の前記裏面上に配設される薄い誘電体層と、
前記薄い誘電体層上に配設される第1の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、第1の導電型のドーパント不純物原子がドープされており、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子とは異なる補助不純物種を含み、前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型のドーパント不純物原子の領域である下部と、前記第1の導電型のドーパント不純物原子および前記補助不純物種の領域である上部とを有し、前記上部の幅は、前記下部の幅より狭い、第1の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記薄い誘電体層上に配設される第2の多結晶シリコンエミッタ領域であって、前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域は、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型のドーパント不純物原子がドープされている、第2の多結晶シリコンエミッタ領域と、
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域および前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される導電性コンタクト構造と、を備える、太陽電池であって、
前記第1の導電型の前記ドーパント不純物原子は、N+ドーパントを含む、太陽電池
【請求項4】
前記補助不純物種は、窒素原子、炭素原子および酸素原子から成る群から選択される不純物種を含む、請求項2または3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記基板は、単結晶シリコン基板を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記薄い誘電体層は、シリコン酸化物層を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域と、前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域との間に配設されるトレンチ構造を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域および前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域上に配設されるカルボシラン層を更に備える、請求項1からのいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1の多結晶シリコンエミッタ領域および前記第2の多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される絶縁層をさらに備え、前記導電性コンタクト構造は前記絶縁層を貫通して配設される、請求項1からのいずれか一項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照) 本願は、2013年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/913,614号の利益を主張するものであり、その仮特許出願の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は再生可能エネルギーの分野におけるものであり、特に、イオン注入を用いた太陽電池エミッタ領域の製造方法、及びその結果得られる太陽電池である。
【背景技術】
【0003】
太陽電池として公知の光起電力電池は、太陽放射を電気エネルギーに直接変換するためのデバイスとして周知である。一般に、太陽電池は、半導体処理技術を使用して半導体ウェハ上又は基板上に製造され、基板の表面近くにp-n接合が形成される。基板の表面に衝突し、これに進入する太陽放射は、基板のバルク内に電子-正孔対を生じる。電子-正孔対は、基板内のpドープ領域及びnドープ領域に移動し、これによって、ドープ領域の間に電位差を発生させる。ドープ領域は、太陽電池の導電性領域に接続されて、電流を太陽電池から太陽電池と連結された外部回路へと方向付ける。
【0004】
効率は、太陽電池が電力を生成する能力に直接関連することから、太陽電池の重要な特性である。同様に、太陽電池を生産する上での効率は、このような太陽電池の費用効果に直接関係する。したがって、太陽電池の効率を向上させるための技術、又は太陽電池の製造における効率を向上させるための技術が、一般的に望ましい。本開示のいくつかの実施形態は、太陽電池構造体を製造するための新規なプロセスを提供することによって、太陽電池の製造効率の増加を可能にする。本開示のいくつかの実施形態は、新規な太陽電池構造体を提供することによって、太陽電池の効率向上を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図1B】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図1C】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図1D】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図1E】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
【0006】
図2】本開示の実施形態による、図1A図1Eに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャートである。
【0007】
図3A】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図3B】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図3C】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図3D】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図3E】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
【0008】
図4】本開示の実施形態による、図3A図3Eに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャートである。
【0009】
図5A】本開示の一実施形態による、移動するウェハ及び固定されたシャドーマスクを含む、パターン注入用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。
【0010】
図5B】本開示の一実施形態による、図5Aの装置内における、グラファイト近接マスクを介した注入シーケンスを示す。
【0011】
図6A】本開示の一実施形態による、パターン注入及びキャッピング用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。
【0012】
図6B】本開示の一実施形態による、図6Aの装置内における、シリコンコンタクトマスクを介した注入及びキャッピングシーケンスを示す。
【0013】
図7A】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7B】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7C】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7D】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7E】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7F】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
図7G】本開示の実施形態による、太陽電池の製造における様々な段階の断面図を示す。
【0014】
図8】本開示の実施形態による、図7A図7Gに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャートである。
【0015】
図9A】本開示の一実施形態による、同じ寸法の整合されたスリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域の断面図を示す。
【0016】
図9B】本開示の一実施形態による、同じ寸法の非整合スリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域の断面図を示す。
【0017】
図9C】本開示の一実施形態による、より小さな(例えばより狭い)寸法のスリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域の断面図を示す。
【0018】
図10】本開示の一実施形態による、移動するウェハ及び固定されたシャドーマスクを含む、パターン注入用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の発明を実施するための形態は、本質的には、単なる実例に過ぎず、本主題の実施形態、あるいは、かかる実施形態の応用及び用途を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、「例示の」という語は、「例、事例、実例として機能すること」を意味する。本明細書で例示として記載する任意の実施態様は、必ずしも他の実施態様よりも好ましい又は有利であると解釈すべきではない。更には、前述の技術分野、背景技術、概要、若しくは以下の発明を実施するための形態で提示される、明示又は示唆されるいずれの理論によっても、拘束されることを意図するものではない。
【0020】
本明細書は、「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及を含む。「一実施形態では」又は「実施形態では」という語句の出現は、必ずしも、同じ実施形態を指すものではない。特定の機構、構造、又は特性を、本開示と矛盾しない任意の好適な方式で組み合わせることができる。
【0021】
用語。以下のパラグラフは、本開示(添付の特許請求の範囲を含む)で見出される用語に関する、定義及び/又はコンテキストを提供する。
【0022】
「備える」。この用語は、変更可能である。添付の特許請求の範囲で使用されるとき、この用語は、更なる構造又は工程を排除するものではない。
【0023】
「~ように構成された」。様々なユニット又は構成要素は、1つのタスク又は複数のタスクを実行する「ように構成された」として、説明又は特許請求される場合がある。そのようなコンテキストでは、「~ように構成された」は、それらのユニット/構成要素が、動作中にそれらのタスク又は複数のタスクを実行する構造を含むことを示すことによって、その構造を含意するために使用される。それゆえ、それらのユニット/構成要素は、指定のユニット/構成要素が現時点で動作可能ではない(例えば、オン/アクティブではない)場合であっても、そのタスクを実行するように構成されていると言うことができる。ユニット/回路/構成要素が、1又は複数のタスクを実行する「ように構成された」と記載することは、そのユニット/構成要素に関して、米国特許法第112条第6項が適用されないことを、明示的に意図するものである。
【0024】
「第1の」、「第2の」など。本明細書で使用するとき、これらの用語は、それらが前に置かれる名詞に関する指標として使用されるものであり、いずれのタイプの(例えば、空間的、時間的、論理的などの)順序付けも暗示するものではない。例えば、「第1の」太陽電池への言及は、この太陽電池が一系列内の一番目の太陽電池であることを必ずしも意味するものではなく、その代わりに、用語「第1の」は、この太陽電池を別の太陽電池(例えば、「第2の」太陽電池)から区別するために使用される。
【0025】
「結合された」-以下の説明は、素子又はノード又は機構が一体に「結合された」ことを指す。本明細書で使用するとき、明示的に別段の定めがある場合を除き、「結合された」とは、1つの素子/ノード/機構が、別の素子/ノード/機構に、直接的又は間接的に接続される(又は、直接的若しくは間接的に連通する)ことを意味するものであり、これは、必ずしも機械的なものではない。
【0026】
更には、特定の用語法もまた、参照のみを目的として、以下の説明で使用される場合があり、それゆえ、それらの用語法は、限定的であることを意図するものではない。例えば、「上側」、「下側」、「上方」、及び「下方」などの用語は、参照される図面内での方向を指す。「前部」、「後方」、「後部」、「側部」、「外側」、及び「内側」などの用語は、論考中の構成要素を説明するテキスト及び関連図面を参照することによって明確にされる、一貫性はあるが任意の基準系の範囲内での、構成要素の諸部分の向き及び/又は位置を説明するものである。そのような用語法は、具体的に上述された語、それらの派生語、及び類似の意味の語を含み得る。
【0027】
「抑制する」-本明細書で使用する場合、抑制する、は効果の低減又は最小化を表すために用いる。構成要素又は機構が、作用、動作、又は状況を抑制すると記載される場合、これらの構成要素又は機構は完全に、結果、又は効果、又は将来の状態が起こらないように完全に阻止してもよい。更に、「抑制する」は、効果、性能、及び/又はそうでなければ発生したであろう効果を低減する又は減少させることも指している。したがって、構成要素、素子、又は機構について結果若しくは状態を抑制すると述べる場合、これらの構成要素、素子、又は機構は必ずしも結果若しくは状態を完全に阻止したり、排除したりするものではない。
【0028】
イオン注入を使用した太陽電池エミッタ領域の製造の方法及び結果として生じる太陽電池が本明細書で説明される。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、特定のプロセスフロー操作などの多数の具体的詳細が記載される。これらの具体的な詳細なしに、本開示の実施形態を実践することができることは、当業者には明らかであろう。他の場合には、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にしないために、リソグラフィ及びパターニング技術などの、周知の製造技術は詳細に説明されない。更に、図に示された様々な実施形態は、例示的な表示であって、必ずしも原寸に比例して描写されたものではないことを理解されたい。
【0029】
本明細書においては、太陽電池の製造方法が開示されている。一実施形態においては、太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域を製作する方法は、基板上にシリコン層を形成するステップを含む。第1の導電型のドーパント不純物原子が、第1のシャドーマスクを介して、シリコン層内に注入され、第1の注入領域を形成し、シリコン層の非注入領域が生じる。第2の反対の導電型のドーパント不純物原子が、第2のシャドーマスクを介して、シリコン層の非注入領域の一部に注入され、第2の注入領域を形成し、シリコン層の残留非注入領域が生じる。シリコン層の残留非注入領域は選択的エッチングプロセスによって除去され、シリコン層の第1の注入領域及び第2の注入領域は保持される。シリコン層の第1の注入領域及び第2の注入領域がアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域が形成される。
【0030】
別の実施形態では、太陽電池のエミッタ領域の製造方法は、基板上にシリコン層を形成するステップを含む。カルボシラン層が、このシリコン層上に形成される。ドーパント不純物原子が、シャドーマスクを介して、カルボシラン層及びシリコン層内に注入され、注入済みシリコン領域及び対応するカルボシラン層の自己整合注入領域を形成し、シリコン層の非注入領域及び対応するカルボシラン層の非注入領域が生じる。シリコン層の非注入領域及びカルボシラン層の非注入領域は除去される。除去中、カルボシラン層の注入領域はシリコン層の注入領域を保護する。シリコン層の注入領域はアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を形成する。
【0031】
太陽電池もまた、本明細書に開示されている。一実施形態においては、バックコンタクト型太陽電池は、受光面及び裏面を有する単結晶シリコン基板を含む。薄い誘電体層が単結晶シリコン基板の裏面上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域が薄い誘電体層上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域には不純物原子がドープされる。カルボシラン層が、多結晶シリコンエミッタ領域上に配設され、多結晶シリコンエミッタ領域と整合される。導電性コンタクト構造がカルボシラン層を貫通して多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される。
【0032】
本明細書中に記載される1又は複数の実施形態は、N+(例えば、通常、リン又はヒ素をドープした)ポリシリコンエミッタ層及びP+(例えば、通常、ホウ素をドープした)ポリシリコンエミッタ層の1つ又は両方を生じさせるためのイオン注入技術の使用を含む、高効率のオールバックコンタクト型太陽電池デバイスを製造するための簡略化されたプロセスフローを提供する。一実施形態においては、製造法には、必要なドーパント型の原子をエミッタ層に導入するだけでなく、エミッタ層上の薄い表面層のウェットエッチング特性の十分な変化も引き起こし、薄い表面層を、エミッタ層のすべての非注入領域の選択的ウェットエッチング除去時にマスクとして使用することを可能にするために、イオン注入を使用することを含む。
【0033】
状況を示すと、パターニング性能を備えた、高効率太陽光発電用途向けの新たな高スループットイオン注入ツールの導入は、櫛型バックコンタクト型(IBC)太陽電池の製造に適用可能であってもよい。特に、物理的及び化学的変化がイオン注入操作の実施に関連する場合では、そのような注入を用いて自己整合トレンチパターンの形成を可能にすることができる。以下、より詳細に記載されるように、自己整合トレンチパターニングを実現するための1又は複数の手法は、注入プロセス中におけるSi-H結合の比較的高い反応性に基づくものであり、特に、未反応の(すなわち残留)Si-H結合を有する材料を除去するのに最も効果的なウェットエッチング化学物質を用いるものである。
【0034】
いくつかの実施形態は、実証済みのN+及びP+ポリシリコンエミッタ/トンネル酸化物構造を用いた、高効率のオールバックコンタクト型太陽電池構造を生じさせるための手法に関する。このN+及びP+ポリシリコンエミッタ/トンネル酸化物構造は、アモルファスSi層並びに/又は固有水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)層若しくは無ドープポリシリコン層上の薄いカルボシランキャッピング層の水素の損失、高密度化及び部分結晶化を促進する条件下でパターンイオン注入を実施することにより製造される。この注入プラントプロセスの後に、アルカリエッチングプロセスを用いてすべての非注入領域(例えば、非高密度化領域及び残ったSi-Hリッチな領域)を除去する選択的ウェットエッチング操作、次いで、フッ化水素酸/オゾン(HF/O)洗浄を実施することができる。1つのそのような実施形態においては、手法には、非注入トレンチのウェットエッチング除去後、ドーパントを活性化して薄い(light blanket)リン拡散及び酸化操作を実現するのに1度の高温アニールプロセスで十分となるように、前面がすでにテクスチャ化されたウェハの使用を含む。別の実施形態では、イオン注入領域と非イオン注入領域との間の効果的なエッチング選択比は、a-Si:H層の表面上に薄いカルボシラン系層を付加することによって高められる。上記及び他の手法は、以下にて更に詳細に記載される。
【0035】
自己整合トレンチ形成のために注入誘起エッチング選択性を使用する第1の例示的なプロセスフローにおいて、図1A図1Eは、本開示の一実施形態による、太陽電池の製造の種々の段階の断面図を示す。図2は、本開示の実施形態による、図1A図1Eに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャート200である。
【0036】
図1A及びフローチャート200の対応する操作202を参照すると、太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域を製作する方法は、基板102上に配設された薄い誘電体層104上にアモルファスシリコン層106を形成するステップを含む。
【0037】
一実施形態では、基板102は単結晶シリコン基板、例えばバルク単結晶のN型ドープシリコン基板である。しかし、基板102は、大域的太陽電池基板上に設けられた多結晶シリコン層などの層でもよいことを理解すべきである。一実施形態においては、薄い誘電体層は、約2ナノメートル以下の厚さを有するトンネル誘電体シリコン酸化物層である。一実施形態では、アモルファスシリコン層106は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて形成した、a-Si:Hで表される水素化シリコン層であり、層全体にS-H共有結合を含む。しかしながら、別の実施形態においては、アモルファスシリコンの代わりに多結晶シリコン層が使用される。図1Aを再度参照すると、以下、より詳細に示され、記載されるように、一実施形態においては、基板102の受光面101がテクスチャ化される。
【0038】
図1B及びフローチャート200の対応する操作204を参照すると、第1の導電型のドーパント不純物原子がアモルファスシリコン層106内に注入され、第1の注入領域108を形成し、シリコン層の非注入領域112(すなわちプロセスのこの段階では注入されていないアモルファスシリコン層106の残留部分)が生じる。1つのそのような実施形態においては、注入は第1のシャドーマスクを介して実施され、その例は図5B及び図6Bに関連して記載される。そのような特定の実施形態においては、第1のシャドーマスクは、アモルファスシリコン層106に近接して位置付けされるが、アモルファスシリコン層106から離れているグラファイトシャドーマスクである。
【0039】
一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第1の注入によりシリコンにP+ドーパント原子(例えばホウ素原子)を供給する。別の実施形態においては、しかしながら、第1の注入によりシリコンにN+ドーパント原子(例えば、リン原子又はヒ素原子)を供給する。以下に記載される後の操作に関連するように、一実施形態においては、注入を実施するために使用される条件は、後の、注入領域と非注入領域との間のエッチング選択比を高めるように(例えば、連続的又は同時的な電子衝撃によって)調整される。調整してもよい他の条件には、注入中の基板バイアス、温度調整及びドーズ量調整の1又は複数を含み得る。
【0040】
再度図1B及びここでフローチャート200の対応する操作206を参照すると、第2の導電型のドーパント不純物原子がアモルファスシリコン層106内に注入され、第2の注入領域110を形成し、シリコン層の非注入領域112(すなわち、上記注入プロセスのいずれにおいても注入されなかったアモルファスシリコン層106の残留部分)が生じる。1つのそのような実施形態においては、注入は第2のシャドーマスクを介して実施され、その例は図5B及び図6Bに関連して記載される。第1のシャドーマスクの場合と同じく、そのような特定の実施形態においては、第2のシャドーマスクは、アモルファスシリコン層106に近接して位置付けされるが、アモルファスシリコン層106から離れているグラファイトシャドーマスクである。レイアウト要件によっては、第1のマスクがシフトされ、第2の別のマスクの代わりに使用されてもよいことは理解すべきである。
【0041】
第1の注入プロセスの場合と同じく、一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第2の注入によりシリコンにN+ドーパント原子(例えば、リン原子又はヒ素原子)を供給する。別の実施形態においては、しかしながら、第2の注入はシリコンにP+ドーパント原子(例えばホウ素原子)を供給する。以下に記載される後の操作に関連するように、一実施形態においては、注入を実施するために使用される条件は、後の、注入領域と非注入領域との間のエッチング選択比を高めるように(例えば、連続的又は同時的な電子衝撃によって)調整される。調整してもよい他の条件には、注入中の基板バイアス、温度調整及びドーズ量調整の1又は複数を含み得る。
【0042】
図1C及びフローチャート200の対応する操作208を参照すると、アモルファスシリコン層106の残留非注入領域112を、例えば、選択的エッチングプロセスによって除去し、アモルファスシリコン層106の第1の注入領域108及び第2の注入領域110は保持する。
【0043】
一実施形態においては、アモルファスシリコン層106の残留非注入領域112を水酸化物系ウェットエッチング液によって除去し、更に、トレンチ114を形成する及び/又は基板102の露出部をテクスチャ化する。したがって、一実施形態においては、トレンチ114の位置はアモルファスシリコン層106の第1の注入領域108及び第2の注入領域110によって決定されるため、図3Cに示されるように、トレンチ114は、アモルファスシリコン層106の第1の注入領域108と第2の注入領域110との間に自己整合されて形成される。
【0044】
受光面101のテクスチャ化と自己整合トレンチ114形成のタイミングは異なってもよいことは理解すべきである。例えば、一実施形態においては、図1A図1Cに示されるように、受光面101のテクスチャ化はトレンチ114の形成/テクスチャ化に先行する別個のプロセスにて実施される。しかしながら、別の実施形態においては、受光面101のテクスチャ化はトレンチ114の形成/テクスチャ化と同じプロセスにて実施される。更に、トレンチ114の形成/テクスチャ化のタイミングは、第1の注入領域108及び第2の注入領域110を結晶化するために使用されるアニールプロセスに対し異なってもよい。例えば、一実施形態においては、図1Cに示されるように、トレンチ114の形成/テクスチャ化はアモルファスシリコン層106の残留非注入領域112を除去するために使用されるプロセスにて実施される。しかしながら、別の実施形態においては、トレンチ114の形成/テクスチャ化は、アモルファスシリコン層106の残留非注入領域112の除去及びその後のアニールプロセスに続いて実施される。一実施形態では、テクスチャ化表面は、入射光を散乱させることによって太陽電池の受光及び/又は露出表面から反射される光の量を減少させるための、規則的又は不規則的な形状の表面を有するものであってよい。
【0045】
図1D及びフローチャート200の対応する操作210を参照すると、アモルファスシリコン層106の第1の注入領域108及び第2の注入領域112はアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域116及び118がそれぞれ形成される。一実施形態では、アニーリングはおよそ摂氏850~1100度の範囲の温度でおよそ1~100分の範囲の間実施される。一実施形態においては、加熱又はアニーリング中に光リンドーパントドライブ(light phosphorous dopant drive)が実施される。更なる実施形態は、図1Dに示されるように、受光面101上へのパッシベーション又は反射防止コーティング層120の形成を含み得る。
【0046】
一般に、アモルファスシリコン層106の非注入エリアのエッチング(すなわち除去)は、高温アニール及び活性化プロセスの実施前に完了することが最も有利とされ得るが、上記のように、特定の注入条件では、テクスチャ化エッチングにおける反応性が(例えば非注入領域に対して)本質的により高くなる可能性があることは理解すべきである。このような場合では、高温アニールはトレンチのエッチング前に実施され得る。
【0047】
図1Eを参照すると、導電性コンタクト122及び導電性コンタクト124が、第1のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域116及び第2のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域118にそれぞれ接触するように作製される。一実施形態においては、コンタクトは、まず、絶縁層150を堆積させ、この絶縁層150を、穴を有するようにパターニングし、その後、この穴内に1又は複数の導電層を形成することによって作製される。一実施形態では、導電性コンタクト122及び124は金属を含み、堆積、リソグラフ法、及びエッチング法、又はその代わりに、プリンティング法によって形成される。
【0048】
自己整合トレンチ形成のために注入誘起エッチング選択比を使用する第2の例示的なプロセスフローにおいて、図3A図3Eは、本開示の別の実施形態による太陽電池の製造の種々の段階の断面図を示す。図4は、本開示の実施形態による、図3A図3Eに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャート400である。
【0049】
図3A及びフローチャート400の対応する操作402を参照すると、太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域を製作する方法は、基板302上に配設された薄い誘電体層304上にアモルファスシリコン層306を形成するステップを含む。
【0050】
一実施形態では、基板302は単結晶シリコン基板、例えばバルク単結晶のN型ドープシリコン基板である。しかし、基板302は、大域的太陽電池基板上に設けられた多結晶シリコン層などの層でもよいことを理解すべきである。一実施形態においては、薄い誘電体層は、約2ナノメートル以下の厚さを有するトンネル誘電体シリコン酸化物層である。一実施形態では、アモルファスシリコン層306は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を用いて形成した、a-Si:Hで表される水素化シリコン層であり、層全体にS-H共有結合を含む。しかしながら、別の実施形態においては、多結晶シリコン層が代わりに使用される。再度図3Aを参照すると、一実施形態においては、以下、より詳細に示され、記載されるように、基板302の受光面301はテクスチャ化される。
【0051】
再度図3A及びここでフローチャート400の対応する操作404を参照すると、カルボシラン層308がアモルファスシリコン層306上に形成される。一実施形態では、カルボシラン層308は約50~1000オングストロームの範囲の厚さを有する。一実施形態においては、カルボシラン層308は、(例えば、主成分として)交互のSi-C-Si-C-型主鎖を含み、残りの結合の大部分は、当初、水素(H)結合である。一実施形態においては、カルボシラン層308は、下層a-Si:H膜を生じさせるために用いたものと同じ装置を用いて、例えば、適切なカルボシラン前駆体を使用した、比較的低い温度及びRFパワーレベルでのプラズマ化学気相成長法(PECVD)によって堆積される。そのような特定の実施形態においては、カルボシラン層308は、PECVDチャンバ内において、1つの太陽電池を収容する/処理するのに十分な表面積上に温度約摂氏200度未満、バイアス約20W、周波数約13.56MHz RFで堆積される。一実施形態においては、カルボシラン層308を形成するのに有用な、好適な前駆体としては、1,3-ジシラプロパン、1,3ジシラブタン(1,3 disiabutane)、1,3,5-トリシラペンタン又は1,3,5-トリシラシクロヘキサンを含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、また、別の化学的経路を使用して、不揮発性であるが可溶性の固体ポリマーとして存在する、より高い分子量の高分子カルボシラン材料を生じさせることにより、同様の結果を実現してもよい。
【0052】
図3B及びフローチャート400の対応する操作404を参照すると、第1の導電型のドーパント不純物原子がカルボシラン層308及びアモルファスシリコン層306内に注入され、第1の注入領域310を形成し、シリコン層の非注入領域312(すなわち、プロセスのこの段階では注入されていないアモルファスシリコン層306の残留部分)が生じる。加えて、注入により、対応するカルボシラン層308の第1の自己整合注入領域314を形成し、カルボシラン層308の非注入領域316が生じる。カルボシラン層308の第1の自己整合注入領域314はアモルファスシリコン層の第1の注入領域310と自己整合されるが、これは、それらが、同じマスクを使用し、同じ注入プロセスで形成されるからである。1つのそのような実施形態においては、注入は第1のシャドーマスクを介して実施され、その例は図5B及び図6Bに関連して記載される。そのような特定の実施形態においては、第1のシャドーマスクは、カルボシラン層308に近接して位置付けされるが、カルボシラン層308から離れているグラファイトシャドーマスクである。使用可能な距離は、イオンビームが平行化され得る程度によって決定される。一般的な間隔は50~250マイクロメートルであり、これはSiソーラーウェハ基板とほぼ同じオーダーの厚さである。しかしながら、この間隔は、マスクの下端下における(垂直からの)発散角が最小になる条件下では、1000マイクロメートル(1mm)に達してもよい。
【0053】
一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第1の注入によりシリコンにP+ドーパント原子(例えばホウ素原子)を供給する。別の実施形態においては、しかしながら、第1の注入によりシリコンにN+ドーパント原子(例えば、リン原子又はヒ素原子)を供給する。以下に記載される後の操作に関連するように、一実施形態においては、注入を実施するために使用される条件は、後の、注入アモルファスシリコン領域と非注入アモルファスシリコン領域との間のエッチング選択比を高めるように(例えば、連続的又は同時的な電子衝撃によって)調整される。調整してもよい他の条件には、注入中の基板バイアス、温度調整及びドーズ量調整の1又は複数を含み得る。
【0054】
再度、図3B及びここでフローチャート400の対応する操作406の更なるラウンドを参照すると、第2の導電型のドーパント不純物原子がカルボシラン層308及びアモルファスシリコン層306内に注入され、第2の注入領域318を形成し、シリコン層の非注入領域312(すなわち、上記注入プロセスのいずれにおいても注入されなかったアモルファスシリコン層306の残留部分)が生じる。加えて、注入により、カルボシラン層308の対応する第2の自己整合注入領域320が形成され、カルボシラン層308の残留非注入領域316が生じる。カルボシラン層308の第2の自己整合注入領域320はアモルファスシリコン層306の第2の注入領域318と自己整合されるが、これは、それらが、同じマスクを使用し、同じ注入プロセスで形成されるからである。1つのそのような実施形態においては、注入は第2のシャドーマスクを介して実施され、その例は図5B及び図6Bに関連して記載される。第1のシャドーマスクの場合と同じく、そのような特定の実施形態においては、第2のシャドーマスクは、カルボシラン層308に近接して位置付けされるが、カルボシラン層308から離れているグラファイトシャドーマスクである。
【0055】
第1の注入プロセスの場合と同じく、一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第2の注入によりシリコンにN+ドーパント原子(例えば、リン原子又はヒ素原子)を供給する。別の実施形態においては、しかしながら、第2の注入はシリコンにP+ドーパント原子(例えばホウ素原子)を供給する。以下に記載される後の操作に関連するように、一実施形態においては、注入を実施するために使用される条件は、後の、注入アモルファスシリコン領域と非注入アモルファスシリコン領域との間のエッチング選択比を高めるように(例えば、連続的又は同時的な電子衝撃によって)調整される。調整してもよい他の条件には、注入中の基板バイアス、温度調整及びドーズ量調整の1又は複数を含み得る。
【0056】
図3C及びフローチャート400の対応する操作408を参照すると、アモルファスシリコン層306の残留非注入領域312は選択的エッチングプロセスによって除去され、アモルファスシリコン層306の第1の注入領域310及び第2の注入領域318は保持される。加えて、カルボシラン層308の残留非注入領域316は除去される。一実施形態においては、除去中、カルボシラン層308の注入領域314及び320はアモルファスシリコン層306の注入領域310及び318をそれぞれ保護する。
【0057】
一実施形態においては、アモルファスシリコン層306の残留非注入領域312及びカルボシラン層308の残留非注入領域316は水酸化物系ウェットエッチング液によって除去され、更に、トレンチ322を形成する及び/又は基板302の露出部をテクスチャ化する。したがって、一実施形態においては、図3Cに示されるように、トレンチ322は、アモルファスシリコン層306の第1の注入領域310と第2の注入領域318との間に自己整合されて形成される。一実施形態においては、水酸化物系ウェットエッチング液処理に続いて、フッ化水素酸/オゾン(HF/O)ウェット清浄処理が行われる。
【0058】
受光面301のテクスチャ化と自己整合トレンチ322形成のタイミングは異なってもよいと理解すべきである。例えば、一実施形態においては、図3A図3Cに示されるように、受光面301のテクスチャ化は、トレンチ322の形成/テクスチャ化に先行する別個のプロセスで実施される。しかしながら、別の実施形態においては、受光面301のテクスチャ化はトレンチ322の形成/テクスチャ化と同じプロセスにて実施される。更に、トレンチ322の形成/テクスチャ化のタイミングは、第1の注入領域310及び第2の注入領域318を結晶化するために使用されるアニールプロセスに対し異なってもよい。例えば、一実施形態においては、図3Cに示されるように、トレンチ322の形成/テクスチャ化は、アモルファスシリコン層306の残留非注入領域312を除去するために使用されるプロセスにて実施される。しかしながら、別の実施形態においては、トレンチ322の形成/テクスチャ化は、アモルファスシリコン層306の残留非注入領域322の除去及びその後のアニールプロセスに続いて実施される。一実施形態では、テクスチャ化表面は、入射光を散乱させることによって太陽電池の受光及び/又は露出表面から反射される光の量を減少させるための、規則的又は不規則的な形状の表面を有するものであってよい。
【0059】
図3D及びフローチャート400の対応する操作410を参照すると、アモルファスシリコン層306の第1の注入領域310及び第2の注入領域318はアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域324及びドープされた多結晶シリコンエミッタ領域326をそれぞれ形成する。一実施形態では、アニーリングはおよそ摂氏850~1100度の範囲の温度でおよそ1~100分の範囲の間実施される。一実施形態においては、加熱又はアニーリング中に光リンドーパントドライブが実施される。更なる実施形態は、図3Dに示されるように、受光面301上へのパッシベーション又は反射防止コーティング層328の形成を含み得る。
【0060】
一実施形態においては、図3Dにはこのように図示されていないが、アモルファスシリコン層306の残留非注入部312の除去後及び/又は除去中、カルボシラン層308の注入領域314及び320もまた除去され得る。いずれの場合においても、(例えば、アモルファスシリコン層306の注入領域を大きく侵食することなく)アモルファスシリコン層306の第1の注入領域310及び第2の注入領域318の少なくともかなりの量の保護を提供するために、カルボシラン層308の注入領域314及び320は、適切には、アモルファスシリコン層306よりもエッチングの影響を受けにくくすべきである。あるいは、図3Dに示されるように、カルボシラン層308の注入領域314及び320はアニーリングプロセス中も保持され得る。アニール後、カルボシラン層308の注入領域314及び320は除去され得る又は保持され得る。この実施形態は以下に記載される。
【0061】
一般に、アモルファスシリコン層306の非注入エリアのエッチング(すなわち除去)は、高温アニール及び活性化プロセスの実施前に完了することが最も有利とされ得るが、上記のように、特定の注入条件では、テクスチャ化エッチングにおける反応性が(例えば非注入領域に対して)本質的により高くなる可能性があることは理解すべきである。このような場合では、高温アニールはトレンチのエッチング前に実施され得る。
【0062】
図3Eを参照すると、導電性コンタクト330及び導電性コンタクト332は、第1のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域324及び第2のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域326にそれぞれ接触するように作製される。一実施形態においては、コンタクトは、まず、絶縁層350を堆積させ、この絶縁層350を、穴を有するようにパターニングし、その後、この穴内に1又は複数の導電層を形成することによって作製される。一実施形態では、導電性コンタクト330及び332は金属を含み、堆積、リソグラフ法、及びエッチング法、又はその代わりに、プリンティング法によって形成される。
【0063】
再度、図3Eを参照すると、一実施形態においては、カルボシラン層308の注入領域314及び320(又は少なくともそれらの残余物)は最終構造内に保持される。1つのそのような実施形態においては、例えば、コンタクトトレンチ形成時における、カルボシラン層308の注入領域314及び320のパターニングによって、コンタクト330及びコンタクト332がカルボシラン層308の注入領域314及び320を貫通して形成される。したがって、一実施形態においては、バックコンタクト型太陽電池399は、受光面301及び裏面303を有する単結晶シリコン基板302を含む。薄い誘電体層304が単結晶シリコン基板302の裏面303上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域324/326は薄い誘電体層304上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域324/326には不純物原子がドープされる。カルボシラン層314/320が多結晶シリコンエミッタ領域上に配設され、多結晶シリコンエミッタ領域324/326と整合される。導電性コンタクト構造330/332は、カルボシラン層314/320を貫通して多結晶シリコンエミッタ領域324/326上に配設される。1つのそのような実施形態においては、カルボシラン層314/320にも不純物原子がドープされる。
【0064】
再度、図1A図1E及び図3A~3Eに関連して記載した手法を参照すると、一実施形態においては、Si-Hリッチなa-Si:H層が、N+注入領域及びP+注入領域の両方のソースとして使用される及び/又はSi-Hリッチなカルボシラン系膜(例えば、かなりの(-SiH-CH-SiH-CH-)の性質を組み込んだ材料)が、架橋による更なるSi-C結合の形成のために、イオン注入条件にさらされる。いずれの場合においても、シリコン含有領域の反応性は、下層アモルファス、多結晶又は単結晶シリコン材料を除去するのに有用な水性アルカリ性条件でのエッチングに対し低下する。一実施形態においては、イオン注入ステップを実施するために用いられる条件は、注入領域と非注入領域との間のエッチング選択比を高めるように(例えば、連続的又は同時的な電子衝撃によって)調整してもよい。カルボシラン膜が使用される場合、そのような膜は、揮発性カルボシラン前駆体を用いた化学気相成長法を使用して堆積してもよい。
【0065】
再度、図1A図1E及び図3A図3Eに関連して記載した手法を参照すると、一実施形態においては、高選択性ウェットエッチング液を用いて、非注入材料を注入材料に対し除去する(例えば、非注入カルボシランを注入カルボシランに対し選択的に除去する、又は非注入アモルファスシリコンを注入アモルファスシリコンに対し選択的に除去する)ことができる。しかしながら、別の実施形態においては、パターニングされたエッチング液材料が非注入エリアに対して使用される。1つのそのような実施形態においては、エッチングプロセスを非注入領域へと導くために、スクリーンプリント可能なシリコンエッチングペーストが非注入領域上に配設される。
【0066】
一実施形態においては、上で短く記載したように、注入及び場合によってはカルボシラン堆積のため、固定されたグラファイトシャドーマスクを使用してもよい。一例として、図5Aは、本開示の一実施形態による、移動するウェハ及び固定されたシャドーマスクを含むパターン注入用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。図5Bは、本開示の一実施形態による、図5Aの装置内のグラファイト近接マスクを介した注入シーケンスを示す。図5Aを参照すると、インラインプラットフォーム500は、ウェハインプット領域502と、注入源504(例えば、イオン注入又はプラズマ浸漬)と、アウトプット領域506と、を含む。固定されたグラファイトマスクなどの固定されたステンシルマスク508は、基板510の近傍に、しかし基板510に接触せずに、保持される注入基板512を提供する。再度、図5A及び図5Bを参照すると、2つの連続する注入源(すなわち、それぞれのドーパント型に対し1つ)が、同じプラットフォーム上に、2つの位置をずらして整列されたグラファイトフィンガマスクとともに含まれてもよいことは理解すべきである。
【0067】
別の実施形態においては、注入及び場合によってはカルボシラン堆積のため、移動可能なシリコンシャドーマスクを使用してもよい。一例として、図6Aは、本開示の一実施形態による、パターン注入及びカルボシラン堆積用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。図6Bは、本開示の一実施形態による、図6Aの装置内における、シリコンコンタクトマスクを介した注入及びカルボシラン堆積シーケンスを示す。
【0068】
図6Aを参照すると、太陽電池のエミッタ領域を製造するためのインラインプロセス装置600は、ステンシルマスク604を基板606と整合するための第1のステーション602を含む。第2のステーション608は、ステンシルマスク604を介して、基板606上にドーパント不純物原子(例えば、ホウ素又はリン)を注入するために含まれる。第3のステーション610は、ステンシルマスク604を介して、基板606上にカルボシラン層を形成するために含まれる。インラインプロセス装置600の他の態様は、ウェハインプットエリア612と、マスク除去及びウェハアウトプットエリア614と、を含み得る。
【0069】
一実施形態においては、ステンシルマスク604と基板606とは、少なくとも第2のステーション608及び第3のステーション610内を一緒に移動する。インラインプロセス装置600内をウェハが流れる方向は、矢印650によって示される。図6Bを参照すると、一実施形態においては、インラインプロセス装置600は、ステンシルマスク604を介して、基板606上のシリコン層607の領域への注入及びカルボシラン堆積を可能にする。カルボシラン層は、注入を行うのに使用したのと同じマスクを使用して同じ位置において形成されるため、注入領域607Aとカルボシラン層609とは自己整合される。一実施形態においては、第1のステーション602は、ステンシルマスク604を、基板606に接触する又は基板606に近接するように整合するためのものである。一実施形態においては、第2のステーション608はイオン注入又はプラズマ浸漬注入チャンバを含む。一実施形態においては、第3のステーション610は、低圧化学気相成長(LPCVD)チャンバ、プラズマ化学気相成長(PECVD)チャンバ、高密度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)チャンバ又は物理気相成長(PVD)チャンバなどであるが、これらに限定されない堆積チャンバを含む。
【0070】
上記ケースのいずれにおいても、一実施形態においては、カルボシランがマスクを介して堆積される場合、カルボシラン材料は、また、ステンシルマスク上に堆積してもよい。ステンシルマスクを堆積環境内において多数回走行させた後、複数のカルボシラン材料層が最終的に蓄積してもよい。スループットと、後の堆積プロセスに何らかの方法で影響し得る、ステンシルマスク上への材料の過剰蓄積とのバランスを取るような最適な数の走行を決定してもよいことは理解すべきである。1つのそのような実施形態においては、特定数の走行後、蓄積されたカルボシラン材料は選択的エッチングによって除去され、ステンシルマスクは、その後、再利用され得る。
【0071】
全体として、特定の材料について具体的に上述したが、いくつかの材料は、本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、他のそのような実施形態と直ちに置換され得る。例えば、一実施形態では、III-V族材料基板等の、異なる材料基板をシリコン基板の代わりに用いることができる。更に、N+及びP+型のドーピングが具体的に説明されている場合、企図される他の実施形態は、反対の導電型、例えば、P+及びN+型のドーピングをそれぞれ含むことを理解されたい。
【0072】
概して、本明細書中に記載される実施形態は、高効率櫛型バックコンタクト(IBC)型太陽電池を製造するためのより低いコスト、高スループットのイオン注入プラットフォームを提供するために実施してもよい。特定の実施形態は、注入によって形成されるエミッタ領域間に自己整合トレンチを生じさせるための有利な手法を提供することができる。実施形態は、アモルファスシリコン(例えばa-Si:H)由来のエミッタを組み込む太陽電池の製造において特に有用とされ得る。
【0073】
このように、イオン注入を用いた太陽電池エミッタ領域の製造方法を開示してきた。
【0074】
別の態様においては、両n+及びp+(リン及びホウ素をドープした)ポリシリコンエミッタパターンを生じさせるための確立された手法は、通常、二酸化ケイ素マスキング層をパターニングし、下層ポリシリコンエミッタフィンガを画定及び分離することに依存する。強刺激のアルカリ系Siエッチング化学物質を使用して、マスクされていないポリシリコン材料をすべて除去し、所定の位置にトレンチ又は欠陥リッチなp-nポリシリコン接合を形成する。実際、現在用いられているトレンチ分離のためのプロセスは、通常、堆積されたポリシリコン層を超えて、下層の薄い誘電体を通過し、下層Si基板に及ぶ。(ウェハの両面が同じエッチング化学物質にさらされた状態で)等方性のバッチ処理が実施される場合、エッチングシーケンスを、通常、前面全体及び裏面のSi内に延びるトレンチ底部を含むすべての露出した単結晶Si表面上に、ランダムなピラミッド形テクスチャを作製する条件で完了すると特に好都合である。
【0075】
本明細書中に記載される1又は複数の更なる実施形態は、N+(例えば、通常、リン又はヒ素をドープした)ポリシリコンエミッタ層及びP+(例えば、通常、ホウ素をドープした)ポリシリコンエミッタ層の1つ又は両方を生じさせるためのイオン注入技術の使用を含む、高効率のオールバックコンタクト型太陽電池デバイスを製造するための簡略化されたプロセスフローを提供する。一実施形態においては、製造法には、必要なドーパント型の原子及び補助原子をエミッタ層に導入して、エミッタ層のウェットエッチング特性の十分な変化を引き起こし、このエミッタ層を、エミッタ層のすべての非注入領域の選択的ウェットエッチング除去時にマスクとして使用することを可能にするために、イオン注入を使用することを含む。1又は複数の実施形態は、高効率太陽電池製造のための、一体化されたパターンイオン注入及び表面改質用のハードウェア及び対応するプロセスに関する。1又は複数の実施形態は、パターンイオン注入技術を用いて、高効率太陽電池の裏面を被覆する別個のN及びPドープエミッタ多結晶シリコン(ポリシリコン)フィンガエミッタを生じさせる(及び分離する)ための効果的なプロセス操作省略法を提供する。
【0076】
より具体的には、プロトタイプのポリシリコン/トンネル酸化物スタックに、ドーズ量少なくとも4E15及びエネルギー8.0e-16~2.4e-15J(5~15KeV)でホウ素イオン注入すると、非注入材料のすべての隣接領域を完全に除去する状況を含め、アルカリ性Siエッチング化学物質に対する高い耐性を自動的に付与できることが明らかになった。残念ながら、n+エミッタ領域のドーピングに有用なリンイオン注入条件を用いると、同等の選択比は不可能と思われる。すでに記載した、注入誘起エッチング耐性のための手法の代わりとして、パターニングされたP注入領域を保護するための実施可能なスキームは、SiN又はSiCにより例示される非常に薄く頑丈なエッチングマスクの組成物を適用するための任意の手段を含む。上で(及び本明細書中で言及した、パターニングされたポリカルボシランマスキング層に関連して)すでに記載したように、そのようなパターンは、シャドーマスクと併せて、任意の(理想的には高度に平行化された)CVD又はPVDベースの堆積方法を用いて生じさせる場合があるが、任意のそのようなプロセスは、パターンの不安定性並びにマスク及びチャンバ表面上への堆積膜の堆積によるパーティクルに悩まされることが予想される。一実施形態においては、最も容易に実施されるのは、すでにPが注入されたポリシリコンの表面に、窒素イオンを浅く、より低いエネルギー(3.2e-16J(2KeV))で注入することを含む、概念的により清浄な手法である。アルカリ性KOH系Siエッチングに対し再現可能な耐性を提供するドーズ量は8E15である。また、同様の低エネルギーであるが、わずかにより高いドーズ量にて実施されるメタンプラズマベースのCイオン注入について、ほぼ同等の性能が認められた。「移動する」グラファイトシャドーマスクを用いて実施する場合、P注入ステップとN注入ステップとの間の「自己整合」は、2度目の通過前に、Nを実施するように再構成された同じ注入源の下でウェハ及びマスクを一緒にチャックしたままにすることによって確実とすることができる。しかしながら、プラズマ源化学物質の切り替えにより悪化した性能及びパーティクルに至る。より製造可能な解決策としては、各イオンビーム源下で平衡させた固定されたシャドーマスクに基づくインラインプロセスフローの一部としての、連続的な注入ステップを含むものと思われる。
【0077】
更に状況を示すと、現在、櫛型バックコンタクト(IBC)加工スキームは、ドープ酸化膜によって被覆されたパターン拡散領域を効果的に生じさせるために実施され得る。そのような構造はテクスチャエッチング耐性マスクを得るためにパターニングされる。テクスチャエッチング耐性マスクを介して、前面のテクスチャ化が実施されるのと同時にN及びPドープエミッタを分離するトレンチが形成される。パターン酸化膜からの拡散の代わりにパターンイオン注入を用いるという概念は簡単明瞭と思われるかもしれないが、自己整合エッチング選択比を提供する手法と組み合わされない限り、そのような手法は、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を有する高効率太陽電池構造の製造には実現不可能であろう。これはリン注入を使用する手法において特に当てはまることとされ得る。
【0078】
上記問題のうちの1又は複数への対処として、本開示の一実施形態によれば、リン(又はヒ素)及びホウ素のパターンイオン注入を、互いにわずかに位置をずらして実施し、間に非注入ギャップを残すことによって、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を最終的に有する太陽電池用の一次元フィンガ構造が形成される。リン(又はヒ素)注入に続き、窒素、酸素又は炭素イオン(又はこれら元素を含有する正に荷電した分子クラスター)の第2の自己整合された(例えば、同じマスクパターンを介して)浅い注入が実施される。リン(又はヒ素)と同じ領域へのそのような補助(又は「チェーサー(chaser)」)種の注入は、注入領域の表面を改質して、アルカリ性テクスチャ化浴へのエッチング耐性を増加するために実施される。ホウ素注入は単独でエッチング耐性を大幅に増加するため、リン+浅いチェーサードーパントプロファイルを有するポリシリコン膜の第1の領域(例えば注入線)と、それと相互嵌合した、ホウ素ドーパントプロファイルを有するポリシリコン膜の第2の領域(例えば注入線)との組み合わせに対し、確立されたテクスチャエッチングプロセスフローを施すことができる。そのようなエッチングプロセスでは、(例えば、注入されたフィンガ間の)非注入ポリシリコンの領域を除去すると同時に、ウェハの前(太陽に面する)面をテクスチャ化することができる。更に、3つすべてのパターニング及び整合された注入操作を1つの通過で実施することができる新たなハードウェアプラットフォームが記載される。上記及び他の手法並びにハードウェアプラットフォームは、以下にて更に詳細に記載される。
【0079】
自己整合トレンチ形成のために注入誘起エッチング選択比を使用する例示的なプロセスフローにおいて、図7A図7Gは、本開示の一実施形態による、太陽電池の製造の種々の段階の断面図を示す。図8は、本開示の実施形態による、図7A図7Gに相当する太陽電池の製造方法における操作を表したフローチャート800である。
【0080】
図7A及びフローチャート800の対応する操作802を参照すると、太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域を製作する方法は、基板702上に配設された薄い誘電体層704上にシリコン層706を形成するステップを含む。
【0081】
一実施形態では、基板702は単結晶シリコン基板、例えばバルク単結晶のN型ドープシリコン基板である。しかし、基板702は、大域的太陽電池基板上に設けられた多結晶シリコン層などの層でもよいことを理解すべきである。再度、図7Aを参照すると、以下、より詳細に記載されるように、一実施形態においては、示されるように、基板702の受光面701はテクスチャ化される。一実施形態においては、薄い誘電体層は、約2ナノメートル以下の厚さを有するトンネル誘電体シリコン酸化物層である。
【0082】
一実施形態では、シリコン層706は、アモルファスシリコン層である。1つのそのような実施形態においては、アモルファスシリコン層は、低圧化学気相成長法(LPCVD)又はプラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用して形成される。しかしながら、別の実施形態においては、アモルファスシリコンの代わりに多結晶シリコン層が使用される。
【0083】
図7B及びフローチャート800の対応する操作804を参照すると、第1の導電型のドーパント不純物種がシリコン層706に注入され、第1の注入領域708を形成し、シリコン層の非注入領域709(すなわち、プロセスのこの段階では注入されていないシリコン層706の残留部分)が生じる。
【0084】
一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第1の注入によりシリコンにN+ドーパント原子(例えば、リン又はヒ素原子)を供給する。そのような特定の実施形態においては、リン又はヒ素原子又はイオンの注入には、シリコン層706内に、約1E19~1E20原子/cmの範囲のリン又はヒ素原子の濃度を形成するための注入を含む。
【0085】
再度、操作804を参照すると、一実施形態においては、注入は第1のシャドーマスクを介して実施される。この例は、図10に関連して記載される。1つのそのような実施形態においては、第1の導電型のドーパント不純物種は、第1のスリットパターンを有する第1のシャドーマスクを介して注入される。一実施形態においては、第1のシャドーマスクは、シリコン層706に近接して位置付けされるが、シリコン層706から離れているグラファイトシャドーマスクである。
【0086】
次に、図7C及びフローチャート800の対応する操作806を参照すると、補助不純物種がシリコン層706の第1の注入領域708に注入される。補助不純物種は、第1の導電型のドーパント不純物種とは異なる。加えて、一実施形態においては、補助不純物種の対応領域は、シリコン層706の深さにおいて、それぞれ元の第1の注入領域708の深さ未満となるように注入される。したがって、変更された第1の注入領域708'が形成され、一実施形態においては、図7Cに示されるように、変更された第1の注入領域708'は、リン(又はヒ素)のみの領域752である下部752と、リン(又はヒ素)と補助不純物種の領域である上部750と、を有する。
【0087】
一実施形態においては、第1の注入領域に注入される補助不純物種は、窒素原子若しくはイオン、炭素原子若しくはイオン、又は酸素原子若しくはイオンなどであるが、これらに限定されない種である。用語「イオン」は、更なる水素原子に結合した、ドーパント種の1又は複数の原子を含有する分子イオンを含んでもよいと理解すべきである。一実施形態においては、補助不純物種は窒素であり、N又はNHを用いた注入によって供給される。一実施形態においては、補助不純物種は炭素であり、CH又はアセチレンなどの炭化水素又は場合によってはメチルシランを用いた注入によって提供される。一実施形態においては、補助不純物種は酸素であり、NO又はOを用いた注入によって提供される。
【0088】
一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第2の注入は、最終的には、シリコン層106のN+領域の上部に窒素原子、炭素原子又は酸素原子を供給する。そのような特定の実施形態においては、第2の注入の注入は、シリコン層106内における、約1E19~1E21原子/cmの範囲の窒素、炭素又は酸素原子の濃度を形成する。一実施形態においては、補助不純物種の拡散は、シリコン層106の表面下の最初の1000オングストローム内に優位に局在する。
【0089】
再度、操作806を参照すると、一実施形態においては、注入は第2のシャドーマスクを介して実施される。この例は、図10に関連して記載される。1つのそのような実施形態においては、補助不純物種は、第1のスリットパターンを有する第2のシャドーマスクを介して注入される。以下、より詳細に記載されるように、第1のスリットパターンは、操作804と関連して記載した上記第1のスリットパターンと同じであっても、それにわずかに変更を加えてもよい。一実施形態においては、第2のシャドーマスクは、シリコン層706に近接して位置付けされるが、シリコン層706から離れているグラファイトシャドーマスクである。
【0090】
上に言及したように、第1の注入領域708への補助不純物種の注入には、一実施形態では、第1のスリットパターン(すなわち、元の領域708を形成するために使用したスリットパターン)を有する第2のシャドーマスクを介した注入を含み得る。第1の実施形態においては、第2のシャドーマスクは第1のスリットパターンと同じスリットパターンを有し、スリットの寸法は第1のシャドーマスクのものと同じである。一例として、図9Aは、同じ寸法の整合されたスリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域708'の断面図を示す。補助原子領域750は、シリコン層706内においてN+領域752と整合する。
【0091】
しかしながら、図9Bは、同じ寸法の非整合スリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域708'の断面図を示す。補助不純物種領域750'はシリコン層706内においてN+領域752'と整合しない。つまり、補助不純物種領域750'の一部はN+領域752'内に形成されるが、補助不純物種領域750'の一部はN+領域752'の外に形成される。補助不純物種領域を完全にN+領域内に形成することが好ましい場合もある。
【0092】
このため、一実施形態において、図9Cは、より小さな(例えばより狭い)寸法のスリットパターンを用いて形成した、変更された第1の注入領域708'の断面図を示す。補助不純物種領域750"はN+領域752"よりも狭く、かつ完全にN+領域752"内に形成される。1つのそのような実施形態においては、第2のマスクのスリットにより狭い寸法を用いることで、補助不純物種がN+領域の外に注入されるリスクなしに非整合許容範囲を可能にする。
【0093】
図7D及びフローチャート800の対応する操作808を参照すると、第2の導電型のドーパント不純物種がシリコン層706に注入され、第2の注入領域710を形成し、シリコン層の非注入領域712(すなわち、上記の注入プロセスのいずれの間においても実質的に注入されなかったシリコン層706の残留部分)が生じる。
【0094】
第1及び第2の注入プロセスの場合と同じく、一実施形態においては、注入はイオンビーム注入又はプラズマ浸漬注入を用いることによって実施される。一実施形態においては、この第3の注入は、シリコンにP+ドーパント原子(例えばホウ素原子)を供給する。そのような特定の実施形態においては、ホウ素原子又はイオンの注入には、シリコン層706内における、約1E19~1E20原子/cmの範囲のホウ素原子の濃度を形成するための注入を含む。
【0095】
再度、操作808を参照すると、一実施形態においては、注入は第3のシャドーマスクを介して実施される。この例は、図10に関連して記載される。1つのそのような実施形態においては、第2の導電型のドーパント不純物種は、第1のスリットパターンとは異なる第2のスリットパターンを有する第3のシャドーマスクを介して注入される。1つのそのような実施形態においては、第1のスリットパターン及び第2のスリットパターンは、一次元櫛型フィンガパターンをともに形成する。第1及び第2のシャドーマスクの場合と同じく、一実施形態においては、第3のシャドーマスクは、シリコン層706に近接して位置付けされるが、シリコン層706から離れているグラファイトシャドーマスクである。
【0096】
図7E及びフローチャート800の対応する操作810を参照すると、シリコン層706の残留非注入領域712は、例えば、選択的エッチングプロセスによって除去され、シリコン層706の変更された第1の注入領域708'及び第2の注入領域710が保持される。
【0097】
実施形態では、変更された第1の注入領域708'を形成するために操作806で提供される補助不純物種は、変更された第1の注入領域708'のエッチングを抑制する(例えば、変更された第1の注入領域708'のエッチング速度を遅くする)。1つのそのような実施形態においては、補助注入種は、エッチング選択比に作用するために用いられ、意図的に、より浅い拡散(例えば、表面近傍)を実現するためにより低いエネルギーで注入される。更に、そのような補助種の量は、特に、それらを含むことの唯一の理由が、操作810でN+領域のエッチングを抑制することである場合、後のウェット及び/又はドライエッチング/洗浄操作において低減しても、更には完全に除去してもよい。
【0098】
再度、図9A及び図9Cを参照すると、一実施形態においては、補助不純物種の対応領域は、完全に、元の第1の注入領域708のそれぞれの内部にある。特定の実施形態においては、図9Cのみを参照すると、補助不純物種の対応領域は、それぞれの第1の注入領域の幅よりも狭い幅を有する。いずれの場合においても、一実施形態においては、図9A及び図9Cに示されるように、得られるエッチング幅は、補助不純物種の領域750又は領域750"の幅によって決定される。図9Cの場合、したがって、一実施形態においては、シリコン層706の残留非注入領域の除去には、変更された第1の注入領域708'の補助不純物種の対応領域750"を含まない部分の除去を更に含む。比較のため、図9Bを参照すると、そのような得られるエッチングプロファイルには、N+領域の外に形成された、補助不純物種を有する領域を含む。上述のチェーサーの注入に、より狭い寸法のスリットを有する補助不純物種注入マスクの使用が考慮され得るのはこの理由のためである。
【0099】
一実施形態においては、シリコン層706の残留非注入領域712は水酸化物系ウェットエッチング液によって除去され、更に、薄い誘電体層704の露出部が除去され、基板702内にトレンチ714が形成される。トレンチは、基板702のテクスチャ化部をトレンチ底部として提供するように形成してもよい。一実施形態においては、トレンチ714の位置は、シリコン層706の第1の注入領域708'及び第2の注入領域710によって決定されるため、図7Eに示されるように、トレンチ714はシリコン層706の第1の注入領域708'と第2の注入領域710との間に自己整合されて形成される。一実施形態においては、水酸化物系ウェットエッチング液処理に続いて、フッ化水素酸/オゾン(HF/O)ウェット清浄処理が行われる。
【0100】
受光面701のテクスチャ化と自己整合トレンチ714形成のタイミングが異なってもよいことは理解すべきである。例えば、一実施形態においては、図7A図7Gに示されるように、受光面701のテクスチャ化はトレンチ714の形成/テクスチャ化に先行する別個のプロセスで実施される。しかしながら、別の実施形態においては、受光面701のテクスチャ化はトレンチ714の形成/テクスチャ化と同じプロセスにて実施される。更に、トレンチ714の形成/テクスチャ化のタイミングは、第1の注入領域708'及び第2の注入領域710を結晶化するために使用されるアニールプロセスに対し異なってもよい。例えば、一実施形態においては、図7Eに示されるように、トレンチ714の形成/テクスチャ化は、シリコン層706の残留非注入領域712を除去するために使用されるプロセスにて実施される。しかしながら、別の実施形態においては、トレンチ714の形成/テクスチャ化は、シリコン層706の残留非注入領域712の除去及びその後のアニールプロセスに続いて実施される。一実施形態では、テクスチャ化表面(トレンチ714内にあるか表面701にあるかを問わず)は、入射光を散乱させることによって太陽電池の受光及び/又は露出表面から反射される光の量を減少させるための、規則的又は不規則的な形状の表面を有するものであってよい。
【0101】
図7F及びフローチャート800の対応する操作812を参照すると、シリコン層706の第1の注入領域708'及び第2の注入領域710がアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域716及び718がそれぞれ形成される。一実施形態では、アニーリングはおよそ摂氏850~1100度の範囲の温度でおよそ1~100分の範囲の間実施される。一実施形態においては、加熱又はアニーリング中に光リンドーパントドライブが実施される。更なる実施形態は、受光面701上へのパッシベーション又は反射防止コーティング層720の形成を含み得る。この例は図7Gに示され、以下に記載される。
【0102】
一般に、シリコン層706の非注入エリアのエッチング(すなわち除去)は、高温アニール及び活性化プロセスの実施前に完了することが最も有利とされ得るが、上記のように、特定の注入条件では、テクスチャ化エッチングにおける反応性が(例えば非注入領域に対して)本質的により高くなる可能性があることは理解すべきである。このような場合では、高温アニールはトレンチのエッチング前に実施され得る。
【0103】
図7Gを参照すると、導電性コンタクト722及び724は、第1のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域716及び第2のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域718それぞれに接触するように作製される。一実施形態においては、コンタクトは、まず、絶縁層740を堆積させ、この絶縁層740を、穴を有するようにパターニングし、その後、この穴内に1又は複数の導電層を形成することによって作製される。一実施形態では、導電性コンタクト722及び724は金属を含み、堆積、リソグラフ法、及びエッチング法、又はその代わりに、プリンティング法によって形成される。
【0104】
図7Gを再度参照すると、例示的な実施形態においては、バックコンタクト型太陽電池は、受光面701及び裏面を有する結晶シリコン基板702を含む。第1の多結晶シリコンエミッタ領域716が結晶シリコン基板702上に配設される。第1の多結晶シリコンエミッタ領域716には、第1の導電型のドーパント不純物種(例えば、リン又はヒ素原子)がドープされ、更に、第1の導電型のドーパント不純物種とは異なる補助不純物種(例えば、窒素原子、炭素原子及び/又は酸素原子)を含む。第2の多結晶シリコンエミッタ領域718は結晶シリコン基板702の上方に配設され、第1の多結晶シリコンエミッタ領域716に隣接してはいるが、第1の多結晶シリコンエミッタ領域716から離れている。第2の多結晶シリコンエミッタ領域718には第2の反対の導電型のドーパント不純物種(例えばホウ素原子)がドープされる。第1及び第2の導電性コンタクト構造722及び724は第1及び第2の多結晶シリコンエミッタ領域716及び718にそれぞれ電気的に接続される。
【0105】
別の態様においては、図10は、本開示の一実施形態による、移動するウェハ及び固定されたシャドーマスクを含む、パターン注入用インラインプラットフォームの断面図を概略的に示す。
【0106】
図10を参照すると、インラインプラットフォーム1000は、シリコンの層706を有するインプットウェハのためのウェハインプット領域を含む。第1のステーション1050は、第1のシャドーマスクを介して、基板上方に配設された材料層706の第1の領域に第1の導電型のドーパント不純物原子を注入するように構成される。第2のステーション1052は、第2のシャドーマスクを介して、材料層706の第1の領域に補助不純物種を注入するように構成される。第3のステーション1054は、第3のシャドーマスクを介して、材料層706の第2の異なる領域に第2の異なる導電型のドーパント不純物原子を注入するように構成される。特定の実施形態においては、図10のアウトプットウェハによって例示されるように、第1のステーション1050は、リン(又は、その代わりに、ヒ素原子)又はイオンを注入するように構成され、第3のステーション1054は、ホウ素原子又はイオンを注入するように構成され、第2のステーション1052は、窒素原子又はイオン(又は、その代わりに、炭素原子若しくはイオン又は酸素原子若しくはイオン)を注入するように構成される。
【0107】
再度、図10を参照すると、注入中、固定されたグラファイトマスクなどの固定されたステンシルマスク1002は基板の近傍に、しかし基板に接触せずに、保持される。3つの対応するスリットパターンを有する1つのマスクとして示されるが、通常、モジュール1050、1052及び1054のそれぞれに対し、個別のシャドーマスクが使用されることは理解すべきである。受容基板からの間隔に使用可能な距離は、イオンビームが平行化され得る程度によって決定されてもよい。一般的な間隔は50~250マイクロメートルであってもよく、Siソーラーウェハ基板とほぼ同じオーダーの厚さである。しかしながら、この間隔は、シャドーマスクの下端下における(垂直からの)発散角が最小になる条件下では、1000マイクロメートル(1mm)に達してもよい。一実施形態においては、得られる注入領域のパターンは一次元櫛型フィンガパターンである。
【0108】
1又は複数の実施形態によれば、したがって、パターンBイオン注入と、相補的なP注入ドーピング及び浅いNイオン表面改質(エッチング耐性のため)との組み合わせは、ポリシリコン系n及びpドープエミッタ構造をドープ、パターニング及び分離するために現在使用されている、大幅に遅く、あまり直接的ではない手法に実質的に取って代わる可能性がある。2つ以上のパターンイオン注入ステップを1つの高真空プロセスシーケンスに統合及び整合しようとする新たなプラットフォームは、ブランケット堆積、パターニング及び高温ドーパント拡散ステップ並びに後の、トレンチ分離シーケンスで使用するための酸化膜マスクのパターニングを含む、ポリシリコン堆積とテクスチャ化/洗浄操作との間の本質的にすべてのフロントエンドプロセスに取って代わることのできる極めて高いスループットフローを促進し得る。これらすべては、より低いエネルギーで表面近傍にN又はCを注入することによって浅いマスキング層を形成することが可能な、注入のみに基づくスキームを用いて回避される可能性がある。露出した非注入ポリシリコン膜の選択的Siエッチングを可能にすることによって、本明細書中に記載されるようなプロセスフローは、高効率n+及びp+ポリシリコンエミッタの形成及び分離に重要なトレンチ分離機能を備える、ポリシリコンエミッタ領域に基づくバックコンタクト型太陽電池のための簡略化された手法を可能にできる。
【0109】
したがって、パターニング性能を備えた、高効率太陽光発電用途向けの新たな高スループットイオン注入ツールの導入は、櫛型バックコンタクト型(IBC)太陽電池の製造に適用可能であってもよい。特に、物理的及び化学的変化がイオン注入操作の実施に関連する場合では、そのような注入を用いて自己整合トレンチパターンの形成を可能にすることができる。
【0110】
全体として、特定の材料が具体的に上述されたが、いくつかの材料は、本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、他のそのような実施形態と直ちに置換され得る。例えば、一実施形態では、III-V族材料基板等の、異なる材料基板をシリコン基板の代わりに用いることができる。別の実施形態においては、多結晶(polycrystalline)又は多結晶(multi-crystalline)シリコン基板が使用される。更に、特に、太陽電池の裏面のエミッタ領域に関し、N+型ドーピング、次いで、P+型ドーピングの順序で記載されている場合、企図される他の実施形態は、導電型を反対の順序、例えば、それぞれ、P+型ドーピング、次いで、N+型ドーピングで含むことは理解すべきである。加えて、バックコンタクト型太陽電池の配置構成についてかなり述べているが、本明細書中に記載される手法はフロントコンタクト型太陽電池にも適用してもよいことは理解すべきである。概して、本明細書中に記載される実施形態は、高効率櫛型バックコンタクト(IBC)型太陽電池の製造用のより低いコスト、高スループットのイオン注入プラットフォームを提供するために実施してもよい。特定の実施形態は、注入によって形成されるエミッタ領域間に自己整合トレンチを生じさせるための有利な手法を提供することができる。
【0111】
したがって、イオン注入を用いた太陽電池エミッタ領域の製造方法及び結果として生じる太陽電池が開示されてきた。
【0112】
具体的な実施形態が上述されてきたが、これらの実施形態は、特定の機構に関して単一の実施形態のみが説明される場合であっても、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示で提供される機構の実施例は、別段の定めがある場合を除き、制約的であることよりも、むしろ例示的であることを意図するものである。上記の説明は、本開示の利益を有する当業者には明らかとなるような、変更、修正、及び等価物を包含することを意図するものである。
【0113】
本開示の範囲は、本明細書で対処される問題のいずれか又はすべてを軽減するか否かにかかわらず、本明細書で(明示的又は暗示的に)開示される、あらゆる機構又は機構の組み合わせ、若しくはそれらのあらゆる一般化を含む。したがって、本出願(又は、本出願に対する優先権を主張する出願)の実施の間に、任意のそのような機構の組み合わせに対して、新たな請求項を形式化することができる。具体的には、添付の特許請求の範囲を参照して、従属請求項からの機構を、独立請求項の機構と組み合わせることができ、それぞれの独立請求項からの機構を、任意の適切な方式で、単に添付の特許請求の範囲で列挙される具体的な組み合わせのみではなく、組み合わせることができる。
【0114】
一実施形態においては、太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域の製造方法は、基板上にシリコン層を形成するステップを含む。第1の導電型のドーパント不純物原子が、第1のシャドーマスクを介して、シリコン層内に注入され、第1の注入領域を形成し、シリコン層の非注入領域が生じる。第2の反対の導電型のドーパント不純物原子が、第2のシャドーマスクを介して、シリコン層の非注入領域の一部に注入され、第2の注入領域を形成し、シリコン層の残留非注入領域が生じる。シリコン層の残留非注入領域は選択的エッチングプロセスによって除去され、シリコン層の第1の注入領域及び第2の注入領域は保持される。シリコン層の第1の注入領域及び第2の注入領域がアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域が形成される。
【0115】
一実施形態においては、シリコン層を形成するステップは、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップを含む。
【0116】
一実施形態においては、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップは、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用するステップを含む。
【0117】
一実施形態においては、シリコン層の残留非注入領域を選択的エッチングプロセスにより除去するステップは、水酸化物系ウェットエッチング液を使用して基板の露出部をテクスチャ化するステップを含む。
【0118】
一実施形態においては、シリコン層の第1の注入領域及び第2の注入領域をアニールするステップは、基板の露出部への低量のP型ドーパント注入を実施するステップを含む。
【0119】
一実施形態においては、シリコン層を形成するステップは、基板上に配設された薄い誘電体層上にシリコン層を形成するステップを含み、基板は単結晶シリコン基板である。
【0120】
一実施形態においては、第1及び第2のシャドーマスクを介して注入するステップは、第1及び第2のグラファイトシャドーマスクを介してそれぞれ注入するステップを含み、第1及び第2のグラファイトシャドーマスクは、順次、シリコン層に近接して位置付けされるが、シリコン層から離れている。
【0121】
一実施形態においては、方法は、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に導電性コンタクトを形成するステップを更に含む。
【0122】
一実施形態においては、太陽電池のエミッタ領域の製造方法は、基板上にシリコン層を形成するステップを含む。カルボシラン層が、このシリコン層上に形成される。ドーパント不純物原子が、シャドーマスクを介して、カルボシラン層及びシリコン層内に注入され、注入済みシリコン領域及び対応するカルボシラン層の自己整合注入領域を形成し、シリコン層の非注入領域及び対応するカルボシラン層の非注入領域が生じる。シリコン層の非注入領域及びカルボシラン層の非注入領域は除去される。除去中、カルボシラン層の注入領域はシリコン層の注入領域を保護する。シリコン層の注入領域はアニールされ、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を形成する。
【0123】
一実施形態においては、方法は、アニーリング後に、カルボシラン層の注入領域を除去するステップ及びドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に導電性コンタクトを形成するステップを更に含む。
【0124】
一実施形態においては、方法は、カルボシラン層の注入領域を貫通して、ドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に導電性コンタクトを形成するステップを更に含む。
【0125】
一実施形態においては、シリコン層を形成するステップは、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップを含む。
【0126】
一実施形態においては、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップ及びカルボシラン層を形成するステップは、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用するステップを含む。
【0127】
一実施形態においては、シリコン層の非注入領域及びカルボシラン層の非注入領域を除去するステップは、水酸化物系ウェットエッチング液を使用して基板の露出部をテクスチャ化するステップを含む。
【0128】
一実施形態においては、シリコン層を形成するステップは、基板上に配設された薄い誘電体層上にシリコン層を形成するステップを含み、基板が単結晶シリコン基板である。
【0129】
一実施形態においては、シャドーマスクを介して注入するステップは、グラファイトシャドーマスクを介して注入するステップを含み、グラファイトシャドーマスクは、シリコン層に近接して位置付けされるが、シリコン層から離れている。
【0130】
一実施形態においては、バックコンタクト型太陽電池は、受光面及び裏面を有する単結晶シリコン基板を含む。薄い誘電体層が単結晶シリコン基板の裏面上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域が薄い誘電体層上に配設される。多結晶シリコンエミッタ領域には不純物原子がドープされる。カルボシラン層が、多結晶シリコンエミッタ領域上に配設され、多結晶シリコンエミッタ領域と整合される。導電性コンタクト構造がカルボシラン層を貫通して多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される。
【0131】
一実施形態においては、カルボシラン層にも不純物原子がドープされる。
(項目1)
太陽電池の交互のN型及びP型エミッタ領域の製造方法であって、
基板上にシリコン層を形成するステップと、
第1のシャドーマスクを介して、複数の第1の導電型のドーパント不純物原子を上記シリコン層に注入して、複数の第1の注入領域を形成し、上記シリコン層の複数の非注入領域を生じさせるステップと、
第2のシャドーマスクを介して、複数の第2の反対の導電型のドーパント不純物原子を上記シリコン層の上記複数の非注入領域の一部に注入して、複数の第2の注入領域を形成し、上記シリコン層の残留する複数の非注入領域を生じさせるステップと、
上記シリコン層の残留する上記複数の非注入領域を選択的エッチングプロセスによって除去し、上記シリコン層の上記複数の第1の注入領域及び上記複数の第2の注入領域を保持するステップと、
上記シリコン層の上記複数の第1の注入領域及び上記複数の第2の注入領域をアニールし、複数のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を形成するステップと、を含む、方法。
(項目2)
上記シリコン層を形成するステップが、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記水素化アモルファスシリコン層を形成するステップが、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用するステップを含む、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
上記シリコン層の残留する上記複数の非注入領域を上記選択的エッチングプロセスにより除去するステップが、水酸化物系ウェットエッチング液を使用して上記基板の複数の露出部をテクスチャ化するステップを含む、項目1から3のうちいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
上記シリコン層の上記複数の第1の注入領域及び上記複数の第2の注入領域をアニールするステップが、上記基板の複数の露出部への低量のP型ドーパント注入を実施するステップを含む、項目1から4のうちいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記シリコン層を形成するステップが、上記基板上に配設された薄い誘電体層上に上記シリコン層を形成するステップを含み、上記基板が単結晶シリコン基板である、項目1から5のうちいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記第1及び第2のシャドーマスクを介して注入する上記ステップが、第1及び第2のグラファイトシャドーマスクを介してそれぞれ注入するステップを含み、上記第1及び第2のグラファイトシャドーマスクが、順次、上記シリコン層に近接して位置付けされるが、上記シリコン層から離れている、項目1から6のうちいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記複数のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に複数の導電性コンタクトを形成するステップを更に含む、項目1から7のうちいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
項目1から8のうちいずれか一項に記載の方法に従って製造される太陽電池。
(項目10)
太陽電池のエミッタ領域を製造する方法であって、
基板上にシリコン層を形成するステップと、
上記シリコン層上にカルボシラン層を形成するステップと、
シャドーマスクを介して、複数のドーパント不純物原子を上記カルボシラン層及び上記シリコン層に注入し、複数の注入済みシリコン領域及び対応する上記カルボシラン層の複数の自己整合注入領域を形成し、上記シリコン層の複数の非注入領域及び対応する上記カルボシラン層の複数の非注入領域を生じさせるステップと、
上記シリコン層の上記複数の非注入領域及び上記カルボシラン層の上記複数の非注入領域を除去するステップであって、上記除去中、上記カルボシラン層の複数の注入領域が上記シリコン層の複数の注入領域を保護する、ステップと、
上記シリコン層の上記複数の注入領域をアニーリングし、複数のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域を形成するステップと、を含む、方法。
(項目11)
上記アニーリング後に、上記カルボシラン層の上記複数の注入領域を除去するステップと、
上記複数のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に複数の導電性コンタクトを形成するステップと、を更に含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
上記カルボシラン層の上記複数の注入領域を貫通して、上記複数のドープされた多結晶シリコンエミッタ領域上に複数の導電性コンタクトを形成するステップを更に含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
上記シリコン層を形成するステップが、水素化アモルファスシリコン層を形成するステップを有する、項目10に記載の方法。
(項目14)
上記水素化アモルファスシリコン層を形成するステップ及び上記カルボシラン層を形成するステップが、プラズマ化学気相成長法(PECVD)を使用するステップを含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
上記シリコン層の上記複数の非注入領域及び上記カルボシラン層の上記複数の非注入領域を除去するステップが、水酸化物系ウェットエッチング液を使用して上記基板の複数の露出部をテクスチャ化するステップを含む、項目10に記載の方法。
(項目16)
上記シリコン層を形成するステップが、上記基板上に配設された薄い誘電体層上に上記シリコン層を形成するステップを含み、上記基板が単結晶シリコン基板である、項目10に記載の方法。
(項目17)
上記シャドーマスクを介して注入するステップが、グラファイトシャドーマスクを介して注入するステップを含み、上記グラファイトシャドーマスクが、上記シリコン層に近接して位置付けされるが、上記シリコン層から離れている項目10に記載の方法。
(項目18)
項目10に記載の方法に従って製造される太陽電池。
(項目19)
バックコンタクト型太陽電池であって、
受光面及び裏面を有する単結晶シリコン基板と、
上記単結晶シリコン基板の上記裏面上に配設される薄い誘電体層と、
上記薄い誘電体層上に配設される多結晶シリコンエミッタ領域であって、上記多結晶シリコンエミッタ領域に複数の不純物原子がドープされる、多結晶シリコンエミッタ領域と、
上記多結晶シリコンエミッタ領域上に配設され、上記多結晶シリコンエミッタ領域と整合されるカルボシラン層と、
上記カルボシラン層を貫通して上記多結晶シリコンエミッタ領域上に配設される導電性コンタクト構造と、を備える、バックコンタクト型太陽電池。
(項目20)
上記カルボシラン層にも上記複数の不純物原子がドープされる、項目19に記載のバックコンタクト型太陽電池。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8
図9A
図9B
図9C
図10