(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】埋め込み可能なデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220222BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20220222BHJP
A61M 5/172 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
A61M5/142 524
A61M5/168 512
A61M5/172
(21)【出願番号】P 2019530700
(86)(22)【出願日】2017-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2017081905
(87)【国際公開番号】W WO2018104481
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-02
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(73)【特許権者】
【識別番号】518263900
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ウニヴェルシテール・グルノーブル・アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・サンカン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・チュヴィニョン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/087657(WO,A2)
【文献】特開2005-052656(JP,A)
【文献】特表2011-505988(JP,A)
【文献】特開平03-011059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022180(US,A1)
【文献】国際公開第2011/090003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(P)の胃(30)の壁部に対する固定位置に固定されるのに適した埋め込み可能なデバイス(20)であって、当該埋め込み可能なデバイス(20)が前記固定位置にある場合に、前記胃(30)内に収容される埋め込み可能なデバイス(20)において、
作用物質のリザーバ(67)と、前記患者(P)に対して、前記患者(P)の体液中に前記作用物質を投与するのに適したインジェクタ(70)と、を備えて
おり、
前記インジェクタ(70)は、2つのカテーテル(114)と、ポンプと、を含み、
前記インジェクタ(70)は、前記カテーテル(114)のうちの少なくとも一方を経由して前記患者(P)に対して前記作用物質を投与するように構成され、
前記ポンプは、前記カテーテル(114)のうちの一方を経由して前記患者(P)の体液(F)を吸引し、他方の前記カテーテル(114)を経由して前記吸引された体液(F)を排出するように構成されている
埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項2】
前記体液は、腹腔液または血液であることを特徴とする、請求項
1に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項3】
前記インジェクタ(70)は、前記患者(P)の消化管内に前記作用物質を注入するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項4】
前記インジェクタ(70)は、前記インジェクタ(70)により前記患者(P)の腸の管腔内への前記作用物質の注入を可能にするのに適した少なくとも1つのカテーテル(114)を含むことを特徴とする、請求項
3に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項5】
前記作用物質は、インスリン、レボドパ、鎮痛剤、および抗がん剤から形成されるセットより選択されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項6】
センサと、前記センサに対して前記患者(P)の体液(F)を送るのに適した少なくとも1つのカテーテルとを備え、前記センサは、前記体液(F)内の生物学的マーカのレベルの少なくとも1つの値を測定するのに適していることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項7】
少なくとも1つの測定されたレベル値にしたがって、前記インジェクタ(70)による前記作用物質の投与を命令するのに適したコントローラ(45)をさらに備えていることを特徴とする、請求項
6に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項8】
前記コントローラ(45)は、少なくとも1つの測定されたレベル値にしたがって、前記患者(P)に対して投与されるべき作用物質の頻度および/または用量を算出するのに適していることを特徴とする、請求項
7に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項9】
前記体液は、腹腔液または血液であることを特徴とする、請求項
6~8のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項10】
取外し可能な電気エネルギー・リザーバ(90)を含む電源(55)と、前記電気エネルギー・リザーバ(90)を収容するのに適したコネクタ(85)と、を備え、前記電気エネルギー・リザーバ(90)は、前記電気エネルギー・リザーバ(90)が接続位置において前記コネクタ(85)に対して電気接続される場合に前記インジェクタ(70)に給電するのに適しており、好ましくは、前記患者(P)により嚥下されるように、および、前記電気エネルギー・リザーバ(90)が前記患者(P)の前記胃(30)内に収容され前記コネクタ(85)から接続解除される切断位置から前記接続位置へと自発的に移動するように構成されて
おり、
前記電気エネルギー・リザーバ(90)は、アトラクタ(110)を含み、前記アトラクタ(110)は第1の磁石を含んでおり、
前記埋め込み可能なデバイス(20)はハウジング(65)を備え、前記ハウジング(65)は、前記ハウジングの外側に備えられた空洞部(95)を含むコネクタ(85)を備え、前記空洞部(95)は、前記電気エネルギー・リザーバ(90)の挿入を可能にするように構成され、
前記コネクタ(85)は、前記第1の磁石と協働するのに適している第2の磁石(112)または強磁性部分を備えている
請求項1~
9のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項11】
前記患者(P)の体内に存在する少なくとも1つの化学種、特にグルコースに反応することにより前記インジェクタの電源電流を発生させるのに適した電源(55)を備えていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項12】
力学エネルギーを電気エネルギーに変換することにより前記インジェクタの電源電流を発生させるのに適した電源(55)を備えていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項13】
前記インジェクタ(70)は、排出された体液(F)中に前記作用物質を注入するように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項14】
少なくとも1つのカテーテル(114)が、多孔性材料から作製されていることを特徴とする、請求項
1~13のいずれか一項に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【請求項15】
前記多孔性材料は、前記作用物質および/または患者(P)の体液(F)が横断するのに適していることを特徴とする、請求項
14に記載の埋め込み可能なデバイス(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み可能なデバイスに関する。本発明は、患者に対して作用物質を投与するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
体内に埋め込み可能なデバイスは、患者に対して医薬品を投与するために使用される。このため、埋め込みデバイスは、バッテリーと、医薬品リザーバとを備える。しかし、このような埋め込み可能なデバイスのバッテリーおよびリザーバは、定期的な再充電または交換を必要とする。特に、多くの場合において、この交換は外科的手技により実施される。このような手技は、病院施設の手術室で行われ、麻酔と術後モニタリングのために病院施設内での長期入院とを必要とするため、患者にとって比較的高額となり制約のあるものとなる。さらに、いかなる外科手技に関しても、手術中に患者が感染症に罹患するリスクが存在する。
【0003】
他の場合では、上述したタイプの埋め込みデバイスが、患者の体外で患者に着用されたエネルギー貯蔵モジュールによって外部から給電される。例えば、いくつかの電源デバイスが、患者の皮膚および胸郭を通して刺激デバイスまで超音波によりエネルギーを伝達し得る。しかし、超音波は、骨を通過しにくく、このため、埋め込みデバイスに十分な電力を供給するために、埋め込みデバイスが胸郭の前方に位置させられる場合には、超音波源の配置において高い精度が必要とされる。さらに、患者の体外のこのような電源デバイスは、不体裁である。
【0004】
いくつかの埋め込み可能なデバイスは、有線コネクタを備えることにより、埋め込み可能なデバイスと外部デバイスとの間における電気接続または流体輸送を可能にし得る。このようにして、電源電流または医薬品の流れが、外部デバイスを用いて交換される。この場合も、患者の皮膚を貫通して現れるこれらのコネクタが不体裁となり、患者の日常生活に対して健康上のリスクおよび重大な制約を必然的にもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、患者に対する制約がより少ない埋め込み可能なシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、患者の胃の壁部に対する固定位置に固定されるのに適した埋め込み可能なデバイスであって、埋め込み可能なデバイスが固定位置にある場合に、埋め込み可能なデバイスが胃内に収容される埋め込み可能なデバイスにおいて、作用物質のリザーバと、患者に対して作用物質を投与するのに適したインジェクタとを備えることを特徴とする、埋め込み可能なデバイスが提案される。
【0007】
実施形態によれば、埋め込み可能なデバイスは、単独でまたは任意の技術的に可能な組み合わせによって、以下の特徴のうちの1つまたは複数を備える。
- インジェクタは、患者の体液中に作用物質を注入するように構成される。
- 体液は、腹腔液または血液である。
- インジェクタは、患者の消化管内に作用物質を注入するように構成される。
- インジェクタは、インジェクタにより患者の腸の管腔内への作用物質の注入を可能にするのに適した少なくとも1つのカテーテルを含む。
- 作用物質は、インスリン、レボドパ、鎮痛剤、および抗がん剤から形成されるセットより選択される。
- 埋め込み可能なデバイスは、胃の上部において固定されるのに適している。
- 作用物質リザーバは、インジェクタに対して継手連結されたコネクタと、作用物質を収容するカプセルとを備え、カプセルは、患者により嚥下されること、およびインジェクタに対して作用物質を送達するためにコネクタに対して連結することに適している。
- 埋め込み可能なデバイスは、センサと、センサに対して患者の体液を送るのに適した少なくとも1つのカテーテルとを備え、センサは、体液内の生物学的マーカのレベルの少なくとも1つの値を測定するのに適している。
- 埋め込み可能なデバイスは、少なくとも1つの測定されたレベル値にしたがって、インジェクタによる作用物質の投与を命令するのに適したコントローラをさらに備える。
- コントローラは、少なくとも1つの測定されたレベル値にしたがって、患者に対して投与されるべき作用物質の頻度および/または用量を算出するのに適している。
- 体液は、腹腔液または血液である。
- 埋め込み可能なデバイスは、取外し可能な電気エネルギー・リザーバを含む電源と、電気エネルギー・リザーバを収容するのに適したコネクタとを備え、電気エネルギー・リザーバは、電気エネルギー・リザーバが接続位置においてコネクタに対して電気接続される場合にインジェクタに給電するのに適しており、好ましくは、患者により嚥下されるように、および電気エネルギー・リザーバが患者の胃内に収容されコネクタから接続解除される切断位置から接続位置へと自発的に移動するように構成される。
- 埋め込み可能なデバイスは、患者の体内に存在する少なくとも1つの化学種、特にグルコースに反応することによりインジェクタの電源電流を発生させるのに適した電源を備える。
- 埋め込み可能なデバイスは、力学エネルギーを電気エネルギーに変換することによりインジェクタの電源電流を発生させるのに適した電源を備える。
【0008】
埋め込み可能なデバイスは、2つの第1のカテーテルを備え得る。2つの第1のカテーテルは、流体連通部を形成するようにポンプを介して連結され得る。一方の第1のカテーテルが、ポンプの取込み部に対して連結され、他方の第1のカテーテルが、排出部に対して連結され得る。体液の取込みおよび排出は、ポンプにより実施される。
【0009】
本発明は、作用物質を投与するための方法にも関する。この方法は、特に、本明細書において開示されるような埋め込み可能なデバイスを使用する。さらなる例では、埋め込み可能なデバイスは、患者の胃内以外の他の部位に埋め込まれるのに適している点に留意されたい。
【0010】
本方法は、特に、1つ、2つ、またはそれ以上の第1のカテーテルを備えるこのようなデバイスの使用または取付けを含む。デバイスは、胃の内方壁部に対接する位置にあり、第1のカテーテル、または好ましくは2つの第1のカテーテルは、胃の壁部を横断する。第1のカテーテルの自由端部は、作用物質が注入されることとなる器官または腔部内に配置される。本方法は、第1のカテーテルによる作用物質の注入または送達を含む。好ましい一実施形態では、2つの第1のカテーテルが使用され、一方の第1のカテーテルの自由端部は、体液が吸引されることとなる器官または腔部の中に配置されるのに対して、他方の第1のカテーテルの自由端部は、作用物質が注入されることとなる器官または腔部内に配置される。一実施形態では、前記2つの端部が、腹膜腔内に配置される。さらなる実施形態では、前記2つの端部は、静脈腔または動脈腔の中に配置される。この場合に、本方法は、この流体の取込み端部から排出端部までのこれらの2つの第1のカテーテルを経由して移行する体液流の形成を含む。本方法によれば、作用物質の注入または送達は、この体液流中において実施される。本方法は、デバイスの種々のモジュールの使用を含む。したがって、本方法は、所定の、管理された、またはモニタリングされた期間にわたる、連続注入または分割注入などの作用物質注入流量の制御を含む。したがって、本方法は、マーカレベルの測定と、作用物質を投与する命令とを含み得る。本方法は、作用物質の残留レベルの検出も含み、作用物質リザーバの交換を開始させ得る。本方法は、残留電気エネルギーレベルの検出も含み、エネルギー・リザーバの交換を開始させ得る。
【0011】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ非限定的な例としてのみ提示された、以下の説明を読むことにより、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】電源を含む埋め込み可能なシステムの一例を示す図である。
【
図2】患者の体内に埋め込まれた、
図1の埋め込み可能なデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
埋め込み可能なシステム10の第1の例が、
図1に示される。
【0014】
埋め込み可能なシステム10は、アンカー15と、埋め込み可能なデバイス20とを含む。
【0015】
「埋め込み可能なシステム」とは、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20により構成されるリストの中の少なくとも1つの要素が、人体内に埋め込まれるように想定されたものとして理解される。
【0016】
特に、「埋め込み可能な」とは、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20の中の少なくとも1つの要素が、厳密には1週間超の期間、好ましくは1月超の期間、好ましくは1年以上の期間にわたり、患者Pの体内に留まるように想定されたものとして理解される。
【0017】
埋め込み可能なシステム10が患者Pの体内に埋め込まれた場合の埋め込み可能なシステム10は、
図2概略的に示されている。
【0018】
図2の例によれば、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20は、それぞれ患者Pの体内に埋め込まれる。
【0019】
アンカー15は、患者Pの胃30内の所定の位置に固定されるのに適している。
【0020】
例えば、アンカー15は、胃30の上部中に固定されるように構成される。特に、アンカー15は、胃30の胃底中に固定されるように構成される。例えば、アンカー15は、胃底中においてHis角に可能な限り近くに固定されることが想定される。
【0021】
代替的には、アンカー15は、胃30の下部中に固定されるように構成される。
【0022】
アンカー15は、埋め込み可能なデバイス20を好ましくは可動的に支持するように構成される。特に、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20は、固定デバイスにより相互に対して固定されるように構成され、アンカー15は、胃30中に固定された場合に、埋め込み可能なデバイス20を固定位置に保持するように構成される。
【0023】
アンカー15は、ヘッド35と、第1のコネクタ40とを含む。
【0024】
ヘッド35は、所定の位置にアンカー15をアンカリングするように構成される。特に、ヘッド35は、胃30の壁部に対してアンカー15をアンカリングするように構成される。
【0025】
ヘッド35は、例えばヘッド35の2つのブランチ間において胃30の壁部の一部分を把持するように構成された胃腸管クリップなどである。
【0026】
代替的には、ヘッド35は、胃30の壁部に対して縫合糸を使用して縫合されるのに適している。
【0027】
さらなる代替的な実施形態によれば、ヘッド35は、胃粘膜が切開された後に胃粘膜内部に埋設されるのに適している。
【0028】
第1のコネクタ40は、ヘッド35に対して埋め込み可能なデバイス20を固定するように構成される。
【0029】
埋め込み可能なデバイス20は、患者Pに対して作用物質を投与するように構成される。
【0030】
例えば、埋め込み可能なデバイス20は、患者Pの体液中に作用物質を注入するように構成される。この体液は、例えば患者の腹腔液である(非経口ルート)。代替的には、この体液は、患者Pの血液である。
【0031】
代替的には、埋め込み可能なデバイス20は、経腸ルートにより、具体的には胃内における放出によって作用物質を投与するように構成される。
【0032】
「作用物質」とは、患者の健康に対して好ましい効果を有する物質をいう。
【0033】
例えば、医薬品が作用物質である。ホルモンが、作用物質のさらなる例である。
【0034】
作用物質は、例えばインスリンである。
【0035】
代替的には、作用物質は鎮痛剤である。例えば、作用物質はモルヒネである。
【0036】
さらなる代替的な実施形態によれば、作用物質はレボドパである。レボドパすなわちL-ドパは、パーキンソン病の治療に使用される医薬品である。
【0037】
さらなる代替的な実施形態によれば、作用物質は抗がん剤である。例えば、作用物質は化学療法成分である。
【0038】
埋め込み可能なデバイス20は、第1のコントローラ45、第2のコネクタ50、電源55、ハウジング65、作用物質リザーバ67、およびインジェクタ70を含む。
【0039】
第1のコントローラ45は、データ処理ユニットである。第1のコントローラ45は、第1のメモリ75と、第1のプロセッサ80とを含む。
【0040】
代替的には、第1のコントローラ45は、専用の集積回路またはプログラマブル論理構成要素の形態で具現化される。
【0041】
一実施形態によれば、第1のコントローラ45は高周波エミッタ/レシーバを含む。
【0042】
プログラム命令を含むコンピュータプログラムが、第1のメモリ75内に格納される。プログラム命令は、第1のプロセッサ80により実行された場合に、患者Pに対して作用物質を投与するための方法を実行するのに適している。
【0043】
第1のプロセッサ80は、レジスタまたは他のタイプのディスプレイデバイス、送信デバイス、もしくは格納デバイスにおいて、第1のメモリ75中の電子量または物理量として表されたデータを第1のメモリ75中の物理データに対応する他の同様のデータへと処理および/または変換するのに適している。
【0044】
第2のコネクタ50は、第1のコネクタ40と協働して固定位置に埋め込み可能なデバイス20を保持するように構成される。
【0045】
例えば、第2のコネクタ50は、スナップ嵌めにより第1のコネクタ40と協働するように構成される。
【0046】
代替的には、第2のコネクタ50は、第1のコネクタに対して第2のコネクタを固定するように構成された磁石を含む。この磁石は、例えば電磁石である。
【0047】
さらなる代替的な実施形態によれば、第1のコネクタ40は、螺合により第2のコネクタ50に対して固定されるように構成される。代替的には、第1のコネクタ40は、第2のコネクタ50中に形成された固定オリフィスと相補的な1つのまたは好ましくは2つの差し込みピン(bayonet)を含む。
【0048】
好ましくは、第2のコネクタ50は、埋め込み可能なデバイス20がアンカー15から分離可能となるように想定される。特に、第2のコネクタ50は、アンカー15が患者Pの胃30中に固定される場合に埋め込み可能なデバイス20がアンカー15から分離可能となるように構成される。
【0049】
【0050】
電源55は、第1のコントローラ45に第1の電源電流C1を供給するように構成される。
【0051】
電源55は、インジェクタ70に第2の電源電流C2を供給するようにさらに構成される。
【0052】
電源55は、第3のコネクタ85と、第1の電気エネルギー・リザーバ90とを含む。
【0053】
第3のコネクタ85は、第1の電気エネルギー・リザーバ90から第1の電源電流C1および第2の電源電流C2を受け取るように、ならびに第1のコントローラ45およびインジェクタ70に第1の電源電流C1および第2の電源電流C2をそれぞれ供給するように構成される。
【0054】
第3のコネクタ85は、第1の電気エネルギー・リザーバ90を収容するように構成される。特に、第3のコネクタ85は、接続位置において第1の電気エネルギー・リザーバ90を少なくとも部分的に収容するように構成された空洞部95を画成する。
【0055】
図3の例によれば、空洞部95は、ハウジング65の外部に露呈されている。特に、空洞部95は、ハウジング65の外部から空洞部95内への第1の電気エネルギー・リザーバ90の挿入を可能にするように構成される。
【0056】
第3のコネクタ85は、第1の電気エネルギー・リザーバ90が接続位置にある場合に第1の電気エネルギー・リザーバ90に対して電気接続されるように構成された、2つの第1の電気接触子100をさらに含む。特に、これらの2つの第1の電気接触子100は、空洞部95の内部に露呈されている。
【0057】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、電気エネルギーを貯蔵するように構成される。特に、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、患者Pの体外で電気エネルギーを充電され、第1の電気エネルギー・リザーバ90が接続位置にある場合に放電されるように構成される。例えば、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、バッテリーを含む。代替的には、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、少なくとも1つのコンデンサまたは超コンデンサ(supercapacitor)を含む。
【0058】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、接続位置にある場合に第1のコントローラ45に第1の電源電流C1を供給するように構成される。さらに、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、接続位置にある場合にインジェクタ70に第2の電源電流C2を供給するように構成される。
【0059】
図3の例によれば、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、第1の電気接触子100に対して相補的な2つの第2の電気接触子105を含む。
【0060】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、患者Pにより嚥下されることが想定され得る。
【0061】
代替的な実施形態によれば、第1のエネルギー・リザーバ90は、内視鏡法で置換されるのに適している。
【0062】
特に、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、厳密に6ミリリットル(ml)未満の容積を有する。
【0063】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、各々がそれぞれの方向に沿って測定される3つの寸法をさらに有し、各方向は、その他の2つの方向に対して垂直であり、各寸法は、厳密に5センチメートル(cm)未満である。
【0064】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、接続位置と切断位置との間で可動である。第1の電気エネルギー・リザーバ90が切断位置にある場合に、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、患者Pの胃30中に収容されるが、第3のコネクタ85に対して電気接続されていない。例えば、第1の電気エネルギー・リザーバ90が切断位置にある場合に、第1の電気エネルギー・リザーバは、空洞部95から完全に除去される。
【0065】
第1の電気エネルギー・リザーバ90は、切断位置から接続位置へと自発的に移動するように構成される。例えば、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、アトラクタ110を含む。
【0066】
アトラクタ110は、第1の電気エネルギー・リザーバ90が切断位置にある場合に、切断位置から接続位置へと第1の電気エネルギー・リザーバ90を移動させる傾向を有する力を第1の電気エネルギー・リザーバ90に対して印加するように構成される。
【0067】
さらに、アトラクタ110は、接続位置に第1の電気エネルギー・リザーバ90を保持するように構成される。
【0068】
アトラクタ110は、例えば第3のコネクタ85の第2の磁石112と協働するのに適した第1の磁石を含む。代替的には、第1の磁石は、第3のコネクタ85の強磁性部分と協働するのに適している。第1の磁石および第2の磁石112は、例えば電磁石である。
【0069】
ハウジング65は、ハウジング65の外部から第1のコントローラ45を隔離するように構成される。例えば、ハウジング65は、少なくとも第1のコントローラ45およびインジェクタ70を収容するチャンバを画成する。
【0070】
作用物質リザーバ67は、作用物質を貯蔵し、インジェクタ70に作用物質を送るように構成される。
【0071】
作用物質リザーバ67は、例えばハウジング65に対して継手連結されたコネクタと、作用物質を収容するカプセルとを含む。カプセルは、患者Pによる嚥下に、およびインジェクタに作用物質を送達するためにコネクタに対して連結するのに適している。特に、各カプセルは、対応するコネクタから空のカプセルを放出するように構成される。
【0072】
インジェクタ70は、患者Pの器官C内に作用物質を注入するのに適している。例えば、インジェクタ70は、ポンプおよび第1のカテーテル114を含む。
【0073】
ポンプは、作用物質リザーバ67内の作用物質を抽出するように、および第1のカテーテル114に作用物質を送るように構成される。
【0074】
蠕動ポンプは、インジェクタ70内に組み込まれるのに適したポンプの一例である。
【0075】
第1のカテーテル114は、第1の端部および第2の端部を有する。第1の端部は、ポンプに対して連結される。第2の端部は、ポンプから受けた作用物質を患者Pに対して投与するのに適している。
【0076】
体液Fが腹腔液である場合には、第2の端部は、腹膜中に露呈しており、インジェクタ70は、患者Pの腹腔液中に作用物質を注入するのに適している。作用物質は、腹腔液から患者Pの血流へと進み得る。
【0077】
代替的には、体液Fが血液である場合に、第2の端部は、患者Pの血管(静脈または動脈)中に露呈している。
【0078】
腸に関する代替的な実施形態では、第2の端部は、患者Pの消化管中に露呈している。例えば、第2の端部は、患者Pの腸の管腔中に露呈している。代替的には、第2の端部は、患者Pの胃中に露呈している。
【0079】
次に、埋め込み可能なシステム10の動作を説明する。
【0080】
アンカー15、埋め込み可能なデバイス20、および第2のデバイス25を患者Pの体内に埋め込む前の第1のステップの最中に、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、電気エネルギーを充電される。したがって、第1の電気エネルギー・リザーバ90は、第1のコントローラ45ように意図された第1の電源電流C1を発生する。
【0081】
第2のステップの最中に、アンカー15、埋め込み可能なデバイス20、および第2のデバイス25は、患者Pの体内に埋め込まれる。
【0082】
第3のステップの最中に、作動メッセージが、外部デバイスにより埋め込み可能なデバイス20へと送信される。特に、作動メッセージは、高周波通信により送信される。作動メッセージは、埋め込み可能なシステム10が実際に患者Pの体内に埋め込まれていることを第1のコントローラ45に通知する。
【0083】
第4のステップの最中に、作用物質は、患者Pに対して投与される。
【0084】
第1のコントローラ45は、ある投与頻度でインジェクタ70による患者Pに対するある量の作用物質の投与を命令する。
【0085】
例えば、投与される作用物質の量および投与頻度は、予め決定されている。
【0086】
この埋め込み可能なデバイス20により、作用物質の送達を腸管内においてまたは腸管外においてのいずれかで行うことが可能となる。したがって、埋め込み可能なデバイス20は、例えば静脈内ルートまたは筋内ルートなどによる通常は注入される作用物質の、患者Pにとって簡単かつ無痛である送達を可能にする。
【0087】
また、埋め込み可能なデバイス20により、ある種のパーキンソン病患者用のL-ドパなど、例えば腸内への到達が可能な限り一定の流量にて行われなくてはならない場合に、作用物質の送達を自動的かつ定期的に行うことが可能となる。デバイス20により、作用物質の投与が容易化される。実際に、作用物質を収容するカプセルは、患者に対して経口投与され得るため、したがって患者にとってあまり苦痛を与えず制約ももたらさない。特に、同一期間において、医薬品が従来のピル形態で投与される場合の同一の投与率に到達するために嚥下すべき作用物質カプセルの個数は、投与すべき医薬品用量の個数をはるかに下回る。
【0088】
さらに、いったん取り付けられた埋め込み可能なデバイス20は、患者Pに対してあまり制約的なものとはならない。特に、埋め込み可能なデバイス20は、外部点滴との置換に適しているが、外部点滴のような患者の動きに対する支障をもたらさない。
【0089】
埋め込み可能なデバイス20が胃内に位置する場合に、第1の電気エネルギー・リザーバ90の交換は、容易であり、例えば食道を経由して内視鏡法により簡単かつ迅速に実施され得る。さらに、第1の電気エネルギー・リザーバ90の交換は、切開が行われないためわずかな感染症リスクしか伴わない。
【0090】
アトラクタ110の使用により、患者Pが第1の電気エネルギー・リザーバ90を嚥下することだけが単に必要となるため、内視鏡法を用いずとも第1の電気エネルギー・リザーバ90の位置決めがさらに簡単になる。
【0091】
さらに、埋め込み可能なシステム10は、患者Pが体外に電気エネルギー貯蔵手段を継続的に携えることを、または不体裁な導電体が患者Pの体外に露呈されることを意味しない。したがって、埋め込み可能なシステム10は、患者にとってわずかな制約しか伴わない。
【0092】
次に、埋め込み可能なシステム10の第2の例を説明する。
図1の埋め込み可能なシステム10の第1の例と同一の要素は、再び説明されない。相違点のみが強調される。
【0093】
埋め込み可能なデバイス20は、少なくとも1つのセンサを含む。各センサが、患者Pの生理学的現象を示すパラメータの値を測定するのに適している。
【0094】
パラメータは、例えば患者Pの体液F中の生物学的マーカのレベルなどである。
【0095】
この場合に、埋め込み可能なデバイス20は、器官Cからセンサまで患者Pの体液Fを送るように構成された第2のカテーテルを含む。例えば、器官Cは、腹膜であり、流体Fは、腹腔液である。
【0096】
生物学的マーカは、例えばグルコースである。
【0097】
代替的には、生物学的マーカは、体液F中に存在するイオンである。
【0098】
この場合に、センサは、体液F中の生物学的マーカのレベルを測定するのに適している。例えば、センサは、グルコース値を測定するのに適している。
【0099】
第1のコントローラ45は、少なくとも1つの測定されたパラメータ値にしたがってインジェクタ70により作用物質の注入を命令するように構成される。第1のコントローラ45は、測定された値にしたがって患者に対して投与されるべき作用物質の投与期間もしくは投与頻度および/または作用物質用量を修正するのに適している。
【0100】
例えば、センサは、所定の測定期間でパラメータの値を測定し、第1のコントローラ45は、測定された値にしたがってインジェクタ70により作用物質の投与を命令する。
【0101】
例えば、第1のコントローラ45は、所定のしきい値に対して測定されたパラメータの値を比較し、測定された1つまたは複数の値が所定のしきい値以上である場合には、作用物質用量の投与を命令する。投与される作用物質用量は、例えば所定の体積に対応した用量である。
【0102】
代替的には、第1のコントローラ45は、所定の投与期間での作用物質用量の投与を命令し、投与される各用量は、測定された値にしたがって計算された作用物質体積に対応する。
【0103】
第2の例の代替的な実施形態によれば、センサは、埋め込み可能なデバイス20とは別個のものである。例えば、埋め込み可能なシステム10は、患者Pの体内に埋め込まれるのに、および埋め込み可能なデバイス20との高周波通信による通信に適した追加のデバイスを備える。
【0104】
この場合に、センサは、この追加のデバイスに組み込まれる。例えば、追加のデバイスは、高周波通信により埋め込み可能なデバイス20に対して測定値を送るように構成される。
【0105】
この場合に、追加のデバイスは、第2のメモリおよび第2のプロセッサを備えた、ならびにセンサによるパラメータの数値取得と埋め込み可能なデバイス20に対して測定値の高周波送信メッセージの送信とを命令するのに適した、第2のコントローラを備える。
【0106】
次に、埋め込み可能なシステム10の第3の例を説明する。埋め込み可能なシステム10の第1の例と同一の要素は、再び説明されない。相違点のみが強調される。
【0107】
電源55は、第3のコネクタ85および電気エネルギー・リザーバ90を備えない。
【0108】
電源55は、電気エネルギー発生器を含む。「電気エネルギー発生器」は、電流による電気エネルギーで充電されるようには構成されないものとして理解される。
【0109】
電気エネルギー発生器は、患者Pの体内に存在する少なくとも1つの化学種に反応することにより少なくとも1つの電流を発生するのに適している。より具体的には、電気エネルギー発生器は、第1の電源電流C1および第2の電源電流C2を発生するのに適している。
【0110】
例えば、電気エネルギー発生器は、2つの電極を備え、これらの電極は、中央デバイス20が固定位置にある場合に患者Pの胃液中に浸漬される。代替的には、電気エネルギー発生器の電極は、中央デバイス20が固定位置にある場合に患者Pの腸内に浸漬されるように想定される。
【0111】
各電極は、少なくとも1つの酵素を含む。代替的には、各電極は、少なくとも1つの微生物を含む。例えば、電気エネルギー発生器の各電極は、酵素または微生物で被覆された導電体を備え、したがって全体が膜によって囲まれた状態で形成される。この膜は、例えば患者Pの胃内または腸内に自然に存在する特定の化学種が横断するように構成される。
【0112】
電気エネルギー発生器の電極が、胃液または腸液の中に浸漬されると、電極の中の一方が、第1の化学種を伴う酸化還元反応におけるアノードとして機能する。同時に、他方の電極は、第2の化学種を伴う酸化還元反応におけるカソードとして機能する。
【0113】
第1の化学種および第2の化学種の同時的な酸化および還元により、電圧がこれらの2つの導電体の間に発生する。このとき、第1の電源電流C1および第2の電源電流C2が発生する。
【0114】
第1の化学種は、例えばグルコースである。第2の化学種は、例えば酸素である。
【0115】
第1の化学種は、例えばグルコースである。第2の化学種は、例えば酸素である。
【0116】
埋め込み可能なシステム10の第3の例は、電気エネルギー・リザーバ90の充電、または患者Pの体内への電気エネルギー・リザーバ90の挿入を必要としない。
【0117】
この場合には、患者Pに対する制約がやはり軽減される。
【0118】
第4の例によれば、電気エネルギー発生器は、力学エネルギーを電気エネルギーへと変換することにより少なくとも1つの電流を発生するのに適している。特に、電気エネルギー発生器は、胃30の動きにより少なくとも1つの電流を発生するのに適している。
【0119】
上記において、埋め込み可能なシステム10の機能は、読者の理解を促すために複数の例へと分けられている。しかし、前述の例は、新たな実施形態をもたらすように組み合わされてもよい点に留意されたい。
【0120】
さらに、上記の説明は、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20が2つの別個のデバイスを形成する場合のものとして示される。埋め込み可能なデバイス20およびアンカー15は単一のデバイスを形成するのに適しており、その場合には、アンカー15および埋め込み可能なデバイス20は相互に分離可能ではない点が、当業者には容易に理解されよう。例えば、アンカー15は、埋め込み可能なデバイス20のハウジング65と一体である。
【0121】
次に、埋め込み可能なシステム10の第5の例を説明する。埋め込み可能なシステム10の第1の例と同一の要素は、再び説明されない。相違点のみが強調される。
【0122】
埋め込み可能なデバイス20の第5の例によれば、インジェクタ70は、2つの第1のカテーテル114を含む。
【0123】
ポンプは、例えば第1のカテーテル114を経由して体液Fを吸引し、他のカテーテル114を経由してこの吸引された体液Fを排出するように構成される。一実施形態によれば、ポンプは、排出された流体Fが作用物質を付加されるように、体液F中に作用物質を注入するようにさらに構成される。
【0124】
一実施形態によれば、各第1のカテーテル114は、腹膜の壁側板と臓側板との間に露呈するように胃30の壁部を横断する。特に、各第1のカテーテル114の第2の端部は、腹膜の壁側板と臓側板との間に露呈する。
【0125】
本発明による第1のカテーテルの長さおよび/または直径は、体液の収集部位および/またはこの流体のポンプ内通過後の排出部位の位置に対して一般的に適合化される。体液Fが腹腔液である場合には、例えば(しかし限定的ではない)各第1のカテーテル114が、具体的には1センチメートル(cm)~20cmの間の、例えば2cm~15cmの間の、特に6cm~12cmの間の長さを有してもよい。各第1のカテーテル114が、3ミリメートル(mm)以下の、例えば2mm以下の直径を有してもよい。
【0126】
一実施形態によれば、埋め込み可能なデバイス20が2つの第1のカテーテル114を含む場合には、一方の第1のカテーテル114は、第2のカテーテルとして機能する。
【0127】
次に、第5の例による埋め込み可能なデバイス20を使用して実施される投与方法を説明する。
【0128】
この投与方法は、取込みステップ、注入ステップ、および放出ステップを含む。
【0129】
取込みステップの最中に、体液Fの流れが、第1のカテーテル114の一方により吸引される。例えば、第1のコントローラ45が、ポンプを介した体液Fの取込みを命令する。
【0130】
注入ステップの最中に、ある用量の作用物質が、体液Fの流れの中へとポンプにより注入される。例えば、第1のコントローラ45は、体液Fの流れの中に作用物質をポンプ送給することによる注入を命令する。
【0131】
放出ステップの最中に、作用物質を含む体液Fは、他方の第1のカテーテル114により排出される。特に、作用物質を含む体液Fは、体液Fが吸引されたのと同一の患者Pの器官または体腔内に放出される。したがって、作用物質は、患者Pの体液F中に投与される。
【0132】
一実施形態によれば、2つの第1のカテーテル114は、例えば腹膜の臓側板と壁側板との間などにおいて腹膜中に露呈する。この場合に、体液Fは腹腔液である。
【0133】
2つの第1のカテーテル114は、患者Pの他の器官中に露呈するのに適している点に留意されたい。例えば、2つの第1のカテーテル114のそれぞれが、患者Pの血管中に露呈する。この場合に、体液Fは血液である。
【0134】
取込みステップ、注入ステップ、および放出ステップは、以降では別個のステップとして説明される。しかし、これらの3つのステップは、同時に実施されるのに適している。例えば、体液Fの連続流が、第1のカテーテル114の中の1つにより取り込まれ、作用物質を受け、他方の第1のカテーテル114により排出される。
【0135】
一実施形態によれば、取込みステップ、注入ステップ、および放出ステップは、例えば1時間以上、1日以上、または1週間以上の期間など、ある長期間にわたって連続的に実施される。
【0136】
さらなる実施形態によれば、取込みステップ、注入ステップ、および放出ステップは、特に第1のコントローラ45により決定された頻度などで別個に実施される。例えば、この頻度は、センサにより測定されたパラメータの値に基づき第1のコントローラ45によって決定される。
【0137】
オプションの洗浄ステップの最中に、体液Fの流れが、第1のカテーテル114の一方により吸引され、作用物質が体液F中に注入されることなく、他方の第1のカテーテル114により排出される。この場合に、体液の流れは、この流れが排出される第1のカテーテル114から、第1のカテーテル114のルーメン中に進入しがちなまたは形成されがちな粒子、集塊、および他の固体要素を放出する。このステップは、例えば流れが排出される第1のカテーテル114と流れが吸引される第1のカテーテル114とを逆転させることにより引き続き繰り返される。
【0138】
代替的な実施形態によれば、洗浄ステップは、カテーテル114内に形成されがちな線維素形成物または血塊を溶解するのに適した酵素の各第1のカテーテル114を経由した注入を含む。ウロキナーゼおよびストレプトキナーゼが、酵素の例である。
【0139】
酵素注入は、例えば少なくとも月に1回、例えば少なくとも週に1回実施される。一実施形態によれば、酵素注入は、日に1回実施される。
【0140】
酵素は、特に埋め込み可能なデバイス20に一体化された酵素リザーバ内に貯蔵される。
【0141】
作用物質注入が、一方の第1のカテーテル114により吸引され他方の第1のカテーテル114により排出された体液Fの流れを介して実施される場合には、第1のカテーテル114からの作用物質の排出は、体液Fの流れにより助長される。特に、作用物質量が、非常に少なく通常であれば第1のカテーテルの内部に部分的に残りがちとなる場合でも、または作用物質が中に排出される体液Fが、作用物質の第1のカテーテル114からの漏出を防止するのに適した圧力を印加する場合でも、ポンプにより注入された全ての作用物質が、第1のカテーテル114から効果的に排出される。
【0142】
したがって、非常に少量の作用物質が患者に対して高い精度で投与され得るため、注入の調整がより効果的になる。特に、非常に少ない用量の作用物質を複数回にわたりまたは既定の期間にわたる連続放出ベースで投与することにより投与を経時的に分散させることが想定され得る。本発明のこの構成により、作用物質の有利に調整された希釈が実際に可能となる。
【0143】
投与される作用物質の用量が非常に少ないので、患者Pに対する副作用は、より低い頻度でのより多い用量の投与に比べて軽減されるのに適している。
【0144】
さらに、第1のカテーテル114により排出された体液Fの流れは、作用物質注入ステップまたは洗浄ステップの最中に部分的にまたは完全に閉塞しがちな第1のカテーテル114の閉塞解除を可能にする。
【0145】
各第1のカテーテル114は、生体適合性材料から作製される。この生体適合性材料は、例えばポリウレタン、シリコーン、ナイロン、ポリカーボネート樹脂、またはポリスルホンなどから選択される。
【0146】
各第1のカテーテル114は、例えば多孔性材料から作製される。特に、多孔性材料は、作用物質が少なくとも横断するように構成される。一実施形態によれば、多孔性材料は、作用物質および体液Fが横断するように構成される。
【0147】
ポリビニルアルコール(PVAとしても知られる)が、第1のカテーテル114を形成するのに適した多孔性材料の一例である。
【0148】
代替的な実施形態によれば、多孔性材料は、天然の非多孔性材料であるが、穿孔が形成されたものである。この場合に、これらの穿孔は孔として機能する。
【0149】
第2の端部が開口している、すなわち第1のカテーテル114の中央ルーメンが第1のカテーテル114の外部に露呈する実施形態が、第2の端部が閉じられている実施形態と同様に想定され得る。
【0150】
第1のカテーテル114が多孔性材料から作製される場合には、体液Fは、部分的には第2の端部を経由して吸引され、部分的には多孔性材料の孔または穿孔を経由して吸引される。同様に、作用物質および該当する場合には体液Fは、部分的には第2の端部を経由して吸引され、部分的には多孔性材料の孔または穿孔を経由して吸引される。
【0151】
各第1のカテーテル114の第2の端部が閉じられる場合には、作用物質および該当する場合には体液Fは、第1のカテーテル114の孔または穿孔を経由して第1のカテーテル114と患者の身体との間で交換される。
【0152】
第1のカテーテル114用の多孔性材料のこの選択により、当該の第1のカテーテル114の全長にわたる孔を介した流体の取込みおよび/または放出が可能となる。この場合に、第1のカテーテル114は、カテーテルのルーメンの閉塞に対する影響をより被りにくい。さらに、作用物質は、第2の端部のみを経由して放出される場合よりも、患者Pの身体のより広いゾーンにわたり分散される。したがって、作用物質の体積密度に依拠する副作用が、限定される。
【0153】
一実施形態によれば、各第1のカテーテル114は、胃30の外方壁部にまたは腹膜の臓側板に対接するのに適した対接要素を含む。この対接要素は、例えば胃30の外方壁部にまたは腹膜の臓側板に対接する場合に、胃30の内方壁部のより近くへと埋め込み可能なデバイス20を移動させる、特に胃30の内方壁部に対して埋め込み可能なデバイス20を圧接させる傾向となる力を印加するように構成される。
【0154】
この例では、第1のカテーテル114は、胃30の壁部に対して埋め込み可能なデバイス20を固定するためのアンカー15としての役割を果たす。
【0155】
一実施形態によれば、各第1のカテーテル114が、胃30の壁部および第1のカテーテル114をまとめて横断する縫合糸により胃壁に対して固定される。この場合では、各第1のカテーテル114は、胃30の壁部に対して固定されるのに適した例えば少なくとも1つのストランドまたは糸などを有する。
【0156】
さらなる例によれば、埋め込み可能なデバイス20は、胃粘膜の内部に少なくとも部分的に組み込まれる。例えば、埋め込み可能なデバイス20は、胃粘膜と胃の筋との間に配置される。1つの位置決めモードによれば、埋め込み可能なデバイス20は、胃粘膜と胃粘膜下組織との間に配置される。
【0157】
さらなる例によれば、ヘッド35は、胃30の外部に位置する少なくとも1つのベースを含む。例えば、ヘッド35は2つのベースを含む。
【0158】
各ベースは、胃30の壁部の内方面に対して埋め込み可能なデバイス20を押圧する傾向となる力を印加するために、胃30の壁部の外方面に対して対接するように、および埋め込み可能なデバイス20に対して連結されるように構成される。代替的な実施形態によれば、各ベースは、腹膜の臓側板と壁側板との間に配置されるように、および胃30の壁部の内方面に対して埋め込み可能なデバイス20を押圧するために臓側板に対接するように構成される。
【0159】
各ベースは、例えばプレートである。代替的には、各ベースは、フレーム、特に屈曲し内視鏡または中空ニードルまで挿入されるのに適した可撓性フレームの上に広げられたストランド格子を含む。
【0160】
第1のコネクタ40は、例えばハウジング65に対して継手連結された1つまたは複数のリングを含む。各ベースは、例えば1つまたは複数のリングに対して固定された1つまたは複数のストランドにより埋め込み可能なデバイス20に対して固定される。
【0161】
1つまたは複数のベースによる固定によって、胃30の壁部のより大きな表面にわたり埋め込み可能なデバイスにより印加された圧力を分散させ、およびしたがって印加力を軽減することが可能となる。さらに、この固定モードは、固定されたアンカー中に張力を発生させがちな胃の容積の縮小をもたらす折り目を胃壁中に発生させることを伴わない。胃壁に対して印加される力が軽減されることにより、胃粘膜の炎症反応の発症リスクが限定される。
【符号の説明】
【0162】
10 埋め込み可能なシステム
15 アンカー
20 埋め込み可能なデバイス、デバイス、中央デバイス
25 第2のデバイス
30 胃
35 ヘッド
40 第1のコネクタ
45 第1のコントローラ
50 第2のコネクタ
55 電源
65 ハウジング
67 作用物質リザーバ
70 インジェクタ
75 第1のメモリ
80 第1のプロセッサ
85 第3のコネクタ
90 第1の電気エネルギー・リザーバ
95 空洞部
100 第1の電気接触子
105 第2の電気接触子
110 アトラクタ
112 第2の磁石
114 第1のカテーテル
C1 第1の電源電流
C2 第2の電源電流