(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】フルカラーのページ幅印刷のためのインクジェットプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220222BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14 613
B41J2/155
(21)【出願番号】P 2019542391
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2018051365
(87)【国際公開番号】W WO2018141564
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-15
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】セランダー,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】バーク,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,アンドリュー
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0090541(US,A1)
【文献】特開2007-008167(JP,A)
【文献】特表2010-521343(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリントヘッドにおいて、
剛性の細長いマニホールドであって、前記マニホールドに沿って延在する第1、第2、第3および第4の平行インク供給チャンネルと、前記マニホールドに画定される
貫通孔の対応する第1、第2、第3および第4の平行列とを有し、
貫通孔の各列は、前記インク供給チャンネルのそれぞれの1つと流体連通し、第1のインク送出群は、前記
貫通孔の第1および第2の列を含み、かつ第2のインク送出群は、前記
貫通孔の第3および第4の列を含む、剛性の細長いマニホールドと、
前記マニホールドの単一下面に実装された
互いに当接するプリントヘッドチップの第1の列であって、前記第1の列の各プリントヘッドチップは、前記
貫通孔の第1および第2の列からインクを受け取る、
互いに当接するプリントヘッドチップの第1の列と、
前記マニホールドの前記下面に実装された
互いに当接するプリントヘッドチップの第2の列であって、前記プリントヘッドチップの第1の列と平行でありかつ位置合わせされ、前記第2の列の各プリントヘッドチップは、前記
貫通孔の第3および第4の列からインクを受け取る、
互いに当接するプリントヘッドチップの第2の列と
を含み、
前記インク供給チャンネルは、対をなして配置され、それぞれの各対の前記インク供給チャンネルは、長手方向の隔壁によって分離され、
前記インク供給チャンネルの対は、長手方向の中央壁によって分離され、前記長手方向の中央壁は、前記第1のインク送出群と前記第2のインク送出群との間の距離が前記
貫通孔の第1の列および第2の列間の距離または前記
貫通孔の第3の列および第4の列間の距離より大きいように、前記長手方向の隔壁より比較的厚いことを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、プリントヘッドチップの各列は、それぞれの介在構造を介して前記下面に実装されることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各介在構造は、フィルムまたはシムであって、その中に画定される複数の開口を有するフィルムまたはシムを含むことを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各プリントヘッドチップは、前記プリントヘッドチップに沿って長手方向に延在する奇数個のカラーチャンネルを含み、中央カラーチャンネルは、作動しないことを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項5】
請求項3に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記シムは、5ppm/℃以下のCTEを有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記シムは、鉄と、ニッケル、コバルトおよびクロムからなる群から選択される少なくとも1つの他の金属との合金から構成されることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項7】
請求項3に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記シムは、前記下面のそれぞれの凹部に受けられることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項8】
請求項1に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各インク供給チャンネルは、異なる有色インクを含み、および各プリントヘッドチップは、2つの異なる色のインクを印刷するように構成されることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各プリントヘッドチップは、各色のインクのために少なくとも2列の並べられたノズルを含むことを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各プリントヘッドチップは、長手方向軸を中心として非対称であることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、プリントヘッドチップの第1および第2の列は、鏡面対称性を有し、前記プリントヘッドチップの第2の列は、前記プリントヘッドチップの第1の列に対して反対向きであることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記第1および第2の列のプリントヘッドチップの対向する遠位長手方向縁は、前記プリントヘッドチップへの電気的接続のためのボンドパッドを有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項13】
請求項1に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記プリントヘッドチップの第1の列および第2の列間の距離は、30mmより小さいことを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項14】
請求項3に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記マニホールドは、その下面に画定された長手方向インクキャビティを有し、前記シムは、前記長手方向インクキャビティに橋渡しするように前記マニホールドの前記下面に取り付けられることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項15】
請求項14に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記長手方向インクキャビティは、ルーフと、前記ルーフと前記下面との間に延在する側壁とを有し、前記複数のインク出口は、前記ルーフに画定されることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項16】
請求項15に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、長手方向リブは、前記インクキャビティを前記リブの両側の長手方向インク供給チャンネルに分割し、前記リブは、前記マニホールドの前記下面と同一平面である下面を有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項17】
請求項16に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、前記シムは、前記リブおよび前記マニホールドの前記下面に接合されることを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【請求項18】
請求項17に記載のインクジェットプリントヘッドにおいて、各プリントヘッドチップは、前記リブと並べられた中央部分と、それぞれの長手方向インク供給チャンネルと重なり合う対向する側部とを有することを特徴とするインクジェットプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリントヘッドに関する。それは、主に高速ページ幅印刷に適した堅固なフルカラープリントヘッドを提供するために開発された。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/143700号パンフレット、国際公開第2011/143699号パンフレットおよび国際公開第2009/089567号パンフレットに記載されるような広範囲のMemjet(登録商標)インクジェットプリンタを開発している。Memjet(登録商標)プリンタは、シングルパス方式でプリントヘッドを超えて印刷媒体を供給する供給機構を併用した1つまたは複数の固定インクジェットプリントヘッドを採用している。したがって、Memjet(登録商標)プリンタは、従来のスキャンインクジェットプリンタよりはるかに速い印刷速度を提供する。
【0003】
現在、デスクトップ印刷のためのマルチカラーのMemjet(登録商標)プリントヘッドは、4色のインクを、プリントヘッドの5つのカラーチャンネル(CMYKK)を通して複数の突合せプリントヘッドチップに送出する、米国特許第7347534号明細書に記載の液晶高分子(LCP)マニホールドに基づいている。Memjet(登録商標)プリントヘッドチップは、対向する接着剤層間にはさみ込まれる中央高分子ウェブから構成される開口ダイ取付フィルムを介してLCPマニホールドの表面に接合される。LCPマニホールドは、ダイ取付フィルムと協働して、5つのインクチャンネルのそれぞれから、一連の曲がりくねったインク経路を介して各プリントヘッドチップのそれぞれのカラープレーンにインクを送る。黒色(K)チャンネルの冗長性は、印字品質および黒色光学濃度の向上に有用である。
【0004】
しかしながら、印刷速度が高速である場合、LCPマニホールドは、実用面で限界がある。LCPマニホールドからプリントヘッドチップまで複数のインクを送出するための複数の複雑なインク経路は、プリントヘッドが高速で走行中に予期しないデプライミングを引き起こす原因となることがある。プリントヘッドチップに近いインクの中身が十分に多くなければ、チップは、インクの需要が高い時期にインク不足が生じ、チップのデプライミングをもたらす。第2に、複雑なインク経路は、気泡のトラップが生じやすくなり、気泡がシステム内でトラップされると、プリントヘッドチップは、インク不足となってデプライムが生じる。したがって、気泡に強く、デプライム現象の生じにくい、高速プリントに適したカラープリントヘッドを提供することが望ましい。
【0005】
LCPは、シリコンに類似のCTEを有する、A4プリントヘッドのための材料として満足のいく選択肢であるが、LCPは、通常、より長いプリントヘッド(例えば、A3プリントヘッド)を製造するのに必要な剛性がない。A4サイズより長いことができるプリントヘッドを製造するのに適したプリントヘッドアーキテクチャを提供することが望ましい。
【0006】
ページ幅プリントヘッドにおけるプリントヘッドの電気的接続は、通常、プリントヘッドの外側側壁を回り込む1つまたは複数のフレックスPCBを介して行われる。代替のより複雑なアプローチは、積層セラミックインクマニホールドの層を通して電気配線を引き回すことである(例えば、HP,Inc.に付与された米国特許第6322206号明細書を参照されたい)。しかしながら、フレックスPCBは、高価であり、製造原価を大きく増加させる。さらに、急な角度でのフレックスPCBの曲げは、PCBに歪を生じさせ、その上に組み込むことができる構成要素を限定する。したがって、ページ幅プリントヘッドで使用される従来の電気配線配置の堅固で安価な代替形態を提供することが望ましい。
【0007】
インクジェット式のデジタル印刷機では、複数のモノクロプリントヘッドは、通常、米国特許第8845080号明細書に記載のように媒体供給方向に沿って積み重ねられる。この配置により、単色のインクを印刷する各プリントヘッドで複数のインクチャンネルを使用することにより、超高速印刷が可能になる。しかしながら、プリントヘッドをこのように積み重ねることに関する問題は、ユーザがプリントヘッドを交換するときにプリントヘッドの正確な位置決めが必要であることである。さらに、媒体供給機構に関して、比較的長い印刷ゾーンを通して印刷媒体とプリントヘッドとの位置合わせを維持しなければならないという強い要求がある。したがって、高速で多色印刷することができ、現場での複数のプリントヘッドの位置決めを必要としない、デスクトップ印刷に適した交換可能なプリントヘッドを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
剛性の細長いマニホールドであって、マニホールドに沿って延在する第1、第2、第3および第4の平行インク供給チャンネルと、マニホールドに画定される出口の対応する第1、第2、第3および第4の平行列とを有し、出口の各列は、インク供給チャンネルのそれぞれの1つと流体連通し、第1のインク送出群は、出口の第1および第2の列を含み、かつ第2のインク送出群は、出口の第3および第4の列を含む、剛性の細長いマニホールドと、
マニホールドの単一下面に実装されたプリントヘッドチップの第1のアレイであって、それぞれの第1のプリントヘッドチップは、出口の第1および第2の列からインクを受け取る、プリントヘッドチップの第1のアレイと、
マニホールドの下面に実装されたプリントヘッドチップの第2のアレイであって、プリントヘッドチップの第2のアレイは、プリントヘッドチップのアレイと平行でありかつ位置合わせされ、それぞれの第2のプリントヘッドチップは、出口の第3および第4の列からインクを受け取る、プリントヘッドチップの第2のアレイと
を含み、第1のインク送出群と第2のインク送出群との間の距離は、出口の第1の列および第2の列間の距離または出口の第3の列および第4の列間の距離より大きい、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0009】
第1の態様によるプリントヘッドは、有利には、単一の交換可能なプリントヘッドからの4色のインク(例えば、CMYK)の印刷を可能にし、同時にプリントヘッド配管および位置合わせ問題を単純にする。特に、多チャンネル化されたプリントヘッドチップは、2つのインク色のみを印刷するために配管され得、プリントヘッドチップは、例えば、2つの平行列のマニホールドの共通面に取り付けられて、すべての4つのインク色の印刷を可能にする。単一の交換可能なマニホールド上にプリントヘッドチップの2つの列を配置することにより、チップの正確な位置合わせは、ユーザまたは技術者により、現場ではなく工場で高精度に実行され得る。さらに、各プリントヘッドチップは、印刷する4つ以上(例えば、4、5、6または7つ)のインクチャンネルのために構成されるため、各色は、印刷速度を向上させ、かつ/または作動しないノズルによって引き起こされる印刷アーチファクトを最小化する冗長性を有する。5つのインクチャンネルを有するMemjet(登録商標)プリントヘッドチップの場合、中央チャンネルは、色ごとに2つのインクチャンネルを提供するために作動しなくてもよい。この配置は、有利には、異なる色を印刷するカラーチャンネル間の距離を増加させ、それによりプリントヘッドチップのノズルプレート上の色混合を最小化する。換言すれば、第1の態様によるプリントヘッドは、印刷速度、冗長性、プリントヘッド位置合わせおよびノズルプレート上での色混合の要求間の優れた妥協を提供する。
【0010】
好ましくは、プリントヘッドチップの各列は、それぞれの介在構造を介して下面に取り付けられる。介在構造は、好ましくは、プリントヘッドチップのそれぞれの列に共通である。
【0011】
好ましくは、各介在構造は、フィルムまたはシムであって、その中に画定される複数の開口を有するフィルムまたはシムを含む。
【0012】
好ましくは、シムは、5ppm/℃以下のCTE、より好ましくは2ppm/℃以下のCTEを有する。
【0013】
好ましくは、シムは、鉄と、ニッケル、コバルトおよびクロムからなる群から選択される少なくとも1つの他の金属との合金から構成される。通常、合金は、Invar材である。好ましくは、Invar材は、約36%のニッケルおよび64%の鉄からなる単相合金である。しかしながら、他のInvarの変更形態は、本発明の範囲内である。
【0014】
好ましくは、シムは、下面のそれぞれの凹部に受けられる。凹部は、下面の1つまたは複数の段差形状によって画定され得る。
【0015】
好ましくは、プリントヘッドチップの各列は、一列に配置される複数の突合せプリントヘッドチップを含む。
【0016】
好ましくは、各インク供給チャンネルは、異なる有色インクを含み、および各プリントヘッドチップは、2つの異なる色のインクを印刷するように構成される。
【0017】
好ましくは、各プリントヘッドチップは、各色のインクのために少なくとも2列の並べられたノズルを含む。したがって、プリントヘッドは、各色のインクについて冗長性を有し、それは、有利にはページ幅アレイの印字品質を向上させる。
【0018】
好ましくは、各プリントヘッドチップは、長手方向軸を中心として非対称である。
【0019】
好ましくは、プリントヘッドチップの第1および第2の列は、鏡面対称性を有し、プリントヘッドチップの第2の列は、プリントヘッドチップの第1の列に対して反対向きである。
【0020】
好ましくは、第1および第2の列のプリントヘッドチップの対向する遠位長手方向縁は、プリントヘッドチップへの電気的接続のためのボンドパッドを有する。
【0021】
好ましくは、プリントヘッドチップの第1の列および第2の列間の距離は、50mmより小さいか、30mmより小さいか、20mmより小さいか、または15mmより小さい。好ましくは、プリントヘッドチップの第1の列および第2の列間の距離は、5~20mmである。
【0022】
好ましくは、プリントヘッドチップの第1および第2の列によって画定される印刷ゾーンの幅は、50mmより小さいか、30mmより小さいか、20mmより小さいか、または15mmより小さい。好ましくは、印刷ゾーンは、5~20mmの幅を有する。
【0023】
第2の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
マニホールド表面に画定された複数のインク出口を有するマニホールドと、
マニホールド表面に実装され、かつインク出口と並べられた複数のプリントヘッドチップと、
マニホールド表面に実装され、かつインク出口からオフセットされるPCBであって、プリントヘッドチップに電気的に接続されるPCBと、
PCBを覆うシールドプレートと
を含み、シールドプレートは、PCBと熱接触する1つの面と、プリントヘッドの下面を画定する露出した反対側の面とを有する、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0024】
第2の態様によるプリントヘッドは、有利には、印刷中、シールドプレート上のインクエアロゾルの結露を最小化するようにプリントヘッドのための保護シールドプレートを暖める。インクエアロゾルの結露は、インクジェットプリンタにおいて、特により長い印刷の実行中に問題となり、なぜなら、プリントヘッド上の凝縮されたインク液滴の形成は、潜在的に印字品質の低下につながるためである。
【0025】
好ましくは、シールドプレートは、電気絶縁性である。
【0026】
好ましくは、プリントヘッドチップは、シムを介してマニホールド表面に実装される。
【0027】
好ましくは、シールドプレートは、PCBの下面に密接に接触する。
【0028】
好ましくは、PCBは、剛性のPCB(例えば、FR4に基づくPCB)である。
【0029】
好ましくは、PCBの下面は、シムの下面と同一平面である。
【0030】
好ましくは、PCBは、シムより厚く、およびマニホールド表面は、それぞれの同一平面である下面を有するPCBおよびシムに適合するために階段状である。
【0031】
好ましくは、シールドプレートは、PCBおよびシムの一部に接合される。
【0032】
好ましくは、シムは、プリントヘッドチップからオフセットされた少なくとも1つのボイド領域を有し、ボイド領域は、シールドプレートの一部をマニホールドから熱的に隔離する。
【0033】
好ましくは、プリントヘッドは、プリントヘッドチップの列を含み、およびPCBは、プリントヘッドチップの列に隣接して長手方向に延在する。
【0034】
好ましくは、プリントヘッドは、プリントヘッドチップの第1および第2の列を含み、プリントヘッドチップの第1の列は、それぞれの第1のPCBを有し、かつプリントヘッドチップの第2の列は、それぞれの第2のPCBを有し、第1および第2のPCBは、プリントヘッドチップの第1および第2の列の対向する遠位長手方向側部に位置付けられる。
【0035】
好ましくは、第1および第2のPCBは、プリントヘッドチップの第1および第2の列の端部の周りを少なくとも部分的に包む。
【0036】
好ましくは、中央長手方向領域は、プリントヘッドチップの第1の列と第2の列との間に画定される。
【0037】
好ましくは、シールドプレートは、第1および第2のPCBを覆うペリメータシールドプレートであり、ペリメータシールドプレートは、中央長手方向領域を覆う中央脚を有する。
【0038】
好ましくは、プリントヘッドチップの第1および第2の列は、シムを介してマニホールドに実装され、シムは、中央長手方向領域と一致する少なくとも1つのボイド領域を有し、ボイド領域は、シールドプレートの中央脚をマニホールドから熱的に隔離する。
【0039】
第3の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
剛性の細長いマニホールドであって、その長さに沿って延在する1つまたは複数のインク供給チャンネルと、その中に画定されたインク出口とを有する剛性の細長いマニホールドと、
マニホールドに取り付けられたシムであって、インク出口からのインクを受け取るための複数のシム開口を有するシムと、
シムに接着接合された複数のプリントヘッドチップであって、各プリントヘッドチップは、インク出口の1つまたは複数からのインクを受け取る、複数のプリントヘッドチップと
を含み、シムは、5ppm/℃以下の熱膨張率(CTE)を有する金属合金から構成される、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0040】
第3の態様による本発明は、有利には、比較的長い一体構造のプリントヘッドの構造を可能にし、それは、A4サイズより長い(例えば、長さ210mmより大きい)ことができる。例えば、第2の態様による本発明は、一体構造のA3サイズのプリントヘッドの構造を可能にする。
【0041】
上記のように、LCPは、その成型性、剛性および比較的小さいCTEのため、ページ幅プリントヘッドのための材料の共通の選択肢である。しかしながら、他のプラスチックより堅固であるが、LCPは、長い一体構造のプリントヘッドマニホールドの構造のために必要な剛性を有しない。金属が剛性のプリントヘッドマニホールドを構築するための材料の明らかな選択肢であるが、金属の熱膨張性は、一般に、金属とシリコンとの間の熱膨張特性の不一致のため、金属上へのプリントヘッドチップの直接の取付に適していると考えられない。より長いプリントヘッドを構築する問題に対する1つのアプローチは、それ自体のそれぞれのキャリア上の各プリントヘッドチップを熱的に隔離することである。しかしながら、個別的なプリントヘッドチップキャリアは、突合せプリントヘッドチップの列に適しておらず、印刷ゾーンの幅を増加させる。
【0042】
第3の態様によるプリントヘッドは、例えば、一方または両方の接合面に液体として加えられるエポキシ系接着剤を使用する、マニホールドへの複数のプリントヘッドチップの接着接合に適した金属合金(例えば、Invar)シムを採用する。シムは、高温での膨張が最小限であり、複数のプリントヘッドチップをマニホールドに実装するための安定構造を提供する。これは、次に、マニホールドのための材料の選択におけるより大きい柔軟性を提供する。マニホールドは、シムと同じであるかまたはシムと異なる材料から構成され得、剛性、コスト、製造容易性などに基づいて選択され得る。例えば、マニホールドは、ステンレス鋼、Invarまたは高分子などの材料から構成され得る。通常、マニホールドは、シムと同じ材料から構成される。
【0043】
好ましくは、シムは、鉄と、ニッケル、コバルトおよびクロムからなる群から選択される少なくとも1つの他の金属との合金から構成される。
【0044】
好ましくは、マニホールドは、一体構造である。
【0045】
好ましくは、マニホールドは、その下面に画定された長手方向インクキャビティを有し、シムは、長手方向インクキャビティに橋渡しするようにマニホールドの下面に取り付けられる。
【0046】
好ましくは、長手方向インクキャビティは、ルーフと、ルーフと下面との間に延在する側壁とを有し、複数のインク出口は、ルーフに画定される。
【0047】
好ましくは、長手方向リブは、インクキャビティをリブの両側の長手方向インク供給チャンネルに分割し、リブは、マニホールドの下面と同一平面である下面を有する。
【0048】
好ましくは、シムは、リブおよびマニホールドの下面に接合される。
【0049】
好ましくは、各プリントヘッドチップは、リブと並べられた中央部分と、それぞれの長手方向インク供給チャンネルと重なり合う対向する側部とを有する。
【0050】
好ましくは、シムおよびPCBは、マニホールドの下面に隣接して接合される。
【0051】
好ましくは、シムおよびPCBは、同一平面である下面を有する。
【0052】
好ましくは、マニホールドの下面は、シムおよびPCBの異なる厚さに適合するために階段状である。
【0053】
第4の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
剛性の細長いマニホールドであって、少なくとも1つのインク供給チャンネルと、その中に画定された長手方向インクキャビティを有する下面とを有し、長手方向インクキャビティは、ルーフと、ルーフと下面との間に延在する側壁とを有する、剛性の細長いマニホールドと、
長手方向インクキャビティに橋渡しするように下面に取り付けられたシムであって、長手方向インクキャビティからインクを受け取るための複数のシム開口を有するシムと、
シムに取り付けられた複数のプリントヘッドチップであって、各プリントヘッドチップは、シム開口の1つまたは複数を介して長手方向インクキャビティからインクを受け取る、複数のプリントヘッドチップと
を含み、複数の貫通孔は、インク供給チャンネルと長手方向インクキャビティとの間の流体連通を提供するためにマニホールドに画定され、各貫通孔は、ルーフに画定された第1の端部を有する第1の部分と、マニホールドの下面に画定された第2の端部を有するそれぞれの側壁を通して延在する第2の部分とを有し、シムは、第2の端部を封止する、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0054】
第4の態様によるプリントヘッドは、有利には、プリントヘッドチップのための後面開放チャンネルアーキテクチャを提供し、それは、チップから出る気泡の放出および/またはプリントヘッドで別にトラップされる気泡の放出を容易にする。特に、貫通孔の第2の部分は、気泡がプリントヘッドから簡単に流れ出すことができる比較的大きいインク供給チャンネルへの気泡の排出の可能性を最大化する。さらに、ブリッジングシムを有する長手方向インクキャビティは、プリントヘッドの複雑なインク経路を回避し、それによりプリントヘッドチップへのインクの供給力を最大化し、高い印刷頻度においてインクジェットノズルのインクが不足する危険性を最小化する。
【0055】
好ましくは、各貫通孔の第2の部分の少なくとも一部は、それぞれのプリントヘッドチップからオフセットされる。
【0056】
好ましくは、それぞれの第2の部分は、気泡がそれぞれのプリントヘッドチップからインク供給チャンネルの方へ上昇することを可能にするように構成される。
【0057】
好ましくは、それぞれの第2の部分は、それぞれの側壁にノッチを画定する。
【0058】
好ましくは、各貫通孔は、円形であり、かつ第1および第2の部分は、一般に半円形である。
【0059】
第5の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
剛性の細長いマニホールドであって、少なくとも1つのインク供給チャンネルと、その上に実装された複数のプリントヘッドチップを有する下面とを有する剛性の細長いマニホールドと、
マニホールドの下面に取り付けられた剛性のPCBであって、マニホールドの長さを延長し、かつマニホールドの側壁を越えて横方向に突出する剛性のPCBと、
マニホールドの側壁に取り付けられたリードリテーナと、
PCBの第1の長手方向縁部に沿って位置付けられた接触パッドから上向きに延在する複数のリードであって、各リードは、リードリテーナを介してマニホールドの側壁に固定される、複数のリードと
を含み、PCBは、PCBとプリントヘッドチップとの間の電気的接続を介してプリントヘッドチップに電力およびデータを供給する、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0060】
第5の態様によるプリントヘッドは、有利には、例えばFR-4基材に基づく従来のPCBを介してプリントヘッドチップに電力およびデータを供給するための堅固な配線配置を提供する。
【0061】
好ましくは、プリントヘッドは、プリントヘッドチップの列の対の側面に位置するPCBの対を構成し、各PCBは、プリントヘッドチップのそれぞれの列に電力およびデータを供給する。
【0062】
好ましくは、各PCBは、プリントヘッドチップを囲むシールドプレートによって覆われ、シールドプレートは、プリントヘッドのためのキャッピング面を画定する。
【0063】
好ましくは、プリントヘッドは、中央長手面を中心として対称である。
【0064】
好ましくは、マニホールドの下面は、段差を有し、およびPCBの対向する第2の長手方向縁部は、段差に対して突き合わされる。
【0065】
好ましくは、リードは、リードリテーナからPCBの接触パッドの方へ外方に広がる。
【0066】
第6の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
剛性の細長いマニホールドであって、その長さに沿って延在する1つまたは複数のインク供給チャンネルを有し、各インク供給チャンネルは、複数のインク出口を画定するベースと、細長い可撓性フィルムを含むルーフとを有する、剛性の細長いマニホールドと、
マニホールドに取り付けられた複数のプリントヘッドチップであって、各プリントヘッドチップは、インク出口の1つまたは複数からのインクを受け取る、複数のプリントヘッドチップと
を含み、可撓性フィルムは、可撓性フィルムの長さに沿って位置付けられる複数の作動可能に独立した蛇腹を含む、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0067】
第6の態様によるプリントヘッドは、有利には、細長いインク供給チャンネルにおける圧力変化に対する動的応答を提供する。特に、複数の離散した蛇腹は、インク供給チャンネルの任意の所定の領域において局所的な圧力変化に対する迅速かつ動的な応答を可能にし、同時にインク供給チャンネルの他の領域における好ましくない共振効果を回避する。さらに、第6の態様によるプリントヘッドは、圧力スパイクを減衰させるためのエアボックスを有するプリントヘッドとは対照的に、脱気されたインクにおける圧力スパイクの減衰を可能にする。
【0068】
好ましくは、各蛇腹は、可撓性フィルムの波形領域を含む。
【0069】
好ましくは、蛇腹は、バッフルによって互いから作動可能に分離される。
【0070】
好ましくは、バッフルは、フィルムを隣接する作動可能に独立した蛇腹に分割するように連続波形フィルムから上方に延在する。
【0071】
好ましくは、プリントヘッドは、マニホールドと係合され、かつ可撓性フィルムを覆うために位置付けられたカバープレートを含み、カバープレートは、大気に開放された複数の通気孔を有する。
【0072】
好ましくは、可撓性フィルムは、高分子から構成される。
【0073】
好ましくは、各インク供給チャンネルは、1つの長手方向端部でマニホールドポートを有し、および蛇腹は、その側壁からインク供給チャンネルに吊り下げられる。
【0074】
好ましくは、マニホールドポートのレベルは、インク供給チャンネルに吊り下げられる蛇腹の最も低い部分のレベルに対応する。
【0075】
第7の態様において、プリントヘッドのための多チャンネル流体結合部であって、
第1のチャンネルおよび第2のチャンネルを有する本体であって、第2のチャンネルは、第1のチャンネルより比較的長い、本体と、
第1の入口ポートおよび第1のチャンネルの反対側の端部の第1の出口ポートと、
第2の入口ポートおよび第2のチャンネルの反対側の端部の第2の出口ポートと
を含み、第1および第2のチャンネルは、それを通って流れる流体の流れ抵抗を比例的に調整するように構成される、多チャンネル流体結合部が提供される。
【0076】
第7の態様の流体結合部は、有利には、流体結合部における異なる長さの流体チャンネルによる圧力低下を補償する。したがって、結合部における比較的より長い流体チャンネルおよび比較的より短い流体チャンネルは、同じまたは類似した圧力低下を有するであろう。通常、より長いチャンネルは、増加する粘性抵抗のため、同様に寸法決めされたより短いチャンネルより大きく圧力低下する。これは、プリントヘッドインク送出システムなどのシステムで好ましくなく、インク圧力は、プリントヘッド性能、最終的には印字品質を最適化するために重要である。第7の態様の流体結合部は、小型流体結合部を比較的より長いチャンネルおよび比較的より短いチャンネルで設計することを可能にし、同時に流体結合部を出る流体の圧力低下の差を最小化する。このように、流体結合部の上流の圧力調整器は、流体結合部の特有の流体力学によって損なわれることなく、インクジェットプリントヘッドのための関連する流体圧力を設定することができる。
【0077】
好ましくは、第1および第2のチャンネルを通って流れる流体の流れ抵抗は、均一にされる。
【0078】
好ましくは、第2のチャンネルは、第1のチャンネルより大きい断面積を有する少なくとも一部を含む。
【0079】
好ましくは、第2のチャンネルは、傾斜壁を有する。
【0080】
好ましくは、第1および第2の出口ポートは、第1および第2の入口ポートに対して横に広がる。
【0081】
好ましくは、第2のチャンネルは、出口チャンネルから入口チャンネルの方へ傾斜するルーフを有する。
【0082】
好ましくは、複数の第1のチャンネルおよび複数の第2のチャンネルである。
【0083】
好ましくは、第1の入口ポートは、第1の出口ポートに比較的近位であり、かつ第2の入口ポートは、第2の出口ポートに比較的遠位である。
【0084】
好ましくは、流体結合部は、4つのインク色のための2つの第1のチャンネルと2つの第2のチャンネルとを含む。
【0085】
好ましくは、入口ポートまたは出口ポートは、放射状に配置される。
【0086】
さらなる態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
少なくとも第1および第2のインク供給チャンネルを有するマニホールドと、
マニホールドの少なくとも一端に接続された上記のような流体結合部と
を含むインクジェットプリントヘッドが提供される。
【0087】
流体結合部は、流体結合部であり得、プリントヘッドの入口結合部であり得る。好ましくは、入口結合部の入口ポートは、プリントヘッドの長手方向軸に対して垂直に延在する。
【0088】
好ましくは、入口ポートは、プリントヘッドのインク吐出方向の反対方向に延在する。
【0089】
好ましくは、第1および第2のインク供給チャンネルは、マニホールドに沿って長手方向に延在する。
【0090】
第8の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
マニホールド表面に画定された複数のインク出口を有するマニホールドと、
マニホールド表面に接着接合されたシムであって、インク出口と並べられた開口を有するシムと、
シムに接着接合されたプリントヘッドチップの第1の列と、
シムに接着接合されたプリントヘッドチップの第2の列と
を含み、シムは、第1および第2の列のすべてのプリントヘッドチップを実装するための一部共通のシムである、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0091】
第8の態様によるプリントヘッドは、有利には、プリントヘッドチップの複数の列の相対位置合わせを容易にする。
【0092】
好ましくは、シムは、プリントヘッドチップの第1および第2の列に対応する第1および第2の長手方向シム部分を含み、第1および第2の長手方向シム部分のそれぞれは、それぞれの第1および第2の開口を含む。
【0093】
好ましくは、第1および第2の長手方向シム部分は、複数のトラスを介して相互接続される。通常、トラスは、長手方向シム部分に対して短手方向に延在する。
【0094】
好ましくは、シムは、金属または金属合金から構成される。通常、シムおよびマニホールドは、同じ材料から構成される。
【0095】
好ましくは、シムは、マニホールド表面に画定された相補的な位置合わせ特徴部と係合される複数の機械的位置合わせタブを含む。
【0096】
好ましくは、シムは、複数のトラスを介して相互接続された第1および第2の長手方向シム部分を含み、トラスは、1つまたは複数の位置合わせタブを含む。
【0097】
好ましくは、第1および第2の列は、一列に一緒に突き合わされた複数のプリントヘッドチップを含む。
【0098】
第9の態様において、プリントヘッドカートリッジであって、
細長いマニホールドと、
マニホールドの下部に実装された複数のプリントヘッドチップと、
マニホールドの上部に実装されたケーシングと
を含み、ケーシングは、第1のケーシング部と第2のケーシング部とを含み、第1および第2の部分は、ケーシングがマニホールドの長手方向軸に沿って伸縮可能であるようにそれぞれの方へ長手方向に付勢される、プリントヘッドカートリッジが提供される。
【0099】
第9の態様によるプリントヘッドカートリッジは、有利には、使用中、長手方向の伸長によって引き起こされるマニホールドの歪を最小化する。通常、プリントヘッドカートリッジは、ユーザが取り扱うためのケーシングを有し、それは、マニホールドに取り付けられる。比較的短いプリントヘッドでは、マニホールドの長手方向への伸長が比較的小さい。しかしながら、より長いプリントヘッド(例えば、A3サイズのプリントヘッド)では、マニホールドの熱膨張は、より大きくなり、長手方向の伸長を過度に拘束する剛性のケーシングではプリントヘッドのそりおよび印字品質の低下がもたらされるであろう。第9の態様による2つの部分からなるケーシングは、特により長いプリントヘッドにおいてそりを最小化する。
【0100】
好ましくは、ケーシングは、プリントヘッドカートリッジのユーザによる取扱いのために構成される。
【0101】
好ましくは、プリントヘッドカートリッジは、第1のケーシング部と第2のケーシング部との間に位置付けられる中央位置決め装置を含む。
【0102】
好ましくは、第1および第2のケーシング部は、中央位置決め装置の方へ付勢される。
【0103】
好ましくは、第1および第2のケーシング部は、中央位置決め装置を橋渡しするばねクリップを介して相互接続される。
【0104】
好ましくは、中央位置決め装置は、プリンタへのユーザによる挿入中、プリントヘッドカートリッジを並べるための位置合わせ特徴部を有する。
【0105】
好ましくは、マニホールドは、金属または金属合金から構成され、かつ一体構造であり得る。
【0106】
好ましくは、マニホールドは、5ppm/℃以下のCTEを有する金属合金から構成される。
【0107】
好ましくは、ケーシングは、インクコネクタを受けるためにその一端または両端に開口を有する。インクコネクタは、上記の種類の流体結合部に接続され得る。
【0108】
第10の態様において、インクジェットプリントヘッドであって、
マニホールド表面に画定された複数のインク出口を有するマニホールドと、
マニホールド表面に実装された複数のプリントヘッドチップであって、各プリントヘッドチップは、奇数個のカラーチャンネルを有し、各カラーチャンネルは、インクジェットノズル装置の少なくとも1つのそれぞれの列を有する、複数のプリントヘッドチップと
を含み、各プリントヘッドチップの中央カラーチャンネルは、マニホールドからインクを受け取らないダミーカラーチャンネルである、インクジェットプリントヘッドが提供される。
【0109】
第10の態様によるプリントヘッドは、有利には、ダミーカラーチャンネルを採用してプリントヘッドの構造的完全性を改善し、かついくつかの実施形態において、使用中、改善された熱調整を提供する。さらに、例えば、5つのカラーチャンネルを有するプリントヘッドは、各色が冗長性を有する2色の印刷に適合され得、同時に改善された確実性および任意選択的に熱調整の上記の利点を享受する。
【0110】
好ましくは、ダミーカラーチャンネルには、プリントヘッドの裏側表面に画定されるインク供給チャンネルがない。
【0111】
好ましくは、マニホールド表面の長手方向リブは、ダミーカラーチャンネルと並べられる。
【0112】
好ましくは、プリントヘッドチップは、シムを介してマニホールド表面に実装される。
【0113】
好ましくは、シムは、マニホールド表面の長手方向リブと並べられたシムリブと、マニホールドのそれぞれのインク出口からのインクを受け取るためのシムリブの両側にある長手方向シムスロットの対とを有する。
【0114】
好ましくは、ダミーカラーチャンネルの両側のカラーチャンネルのみがマニホールドからインクを受け取る。
【0115】
好ましくは、各プリントヘッドチップは、マニホールドから2つの異なる色のインクを受け取る。
【0116】
好ましくは、長手方向インク供給チャンネルの対は、長手方向リブの両側に画定され、各長手方向インク供給チャンネルは、少なくとも1つのそれぞれのカラーチャンネルまたはより好ましくは複数のそれぞれのカラーチャンネルにインクを送出する。
【0117】
1つの実施形態において、各プリントヘッドチップは、中央のダミーチャンネルを含む5つのカラーチャンネルを含み、ダミーカラーチャンネルの一方側のカラーチャンネルの第1の対は、第1のインクを印刷し、かつダミーカラーチャンネルの反対側のカラーチャンネルの第2の対は、第2のインクを印刷する。
【0118】
好ましくは、各カラーチャンネルは、インクジェットノズル装置の列の対を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、ダミーカラーチャンネルのインクジェットノズル装置は、PCBに電気的に接続される。
【0120】
好ましくは、インクジェットノズル装置は、熱応動装置であり、それにより、使用中、ダミーカラーチャンネルは、ダミーカラーチャンネルにおけるインクジェット装置の作動を介してそれぞれのプリントヘッドチップの温度調整を容易にする。
【0121】
さらなる態様において、奇数個のカラーチャンネルであって、各カラーチャンネルは、インクジェットノズル装置の少なくとも1つの列を含む、奇数個のカラーチャンネルを有し、プリントヘッドチップの中央カラーチャンネルは、インクを受け取らないダミーカラーチャンネルである、プリントヘッドチップが提供される。
【0122】
ダミーカラーチャンネルのインクジェットノズル装置は、熱調整のためにプリントヘッドチップの電子機器を駆動するように電気的に接続され得る。
【0123】
本発明の特定の態様に関連する上記のような好ましい実施形態は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9および第10の態様のそれぞれに等しく適用可能であり得ることが理解されるであろう。上記の好ましい実施形態は、1つの特定の態様と厳密に関連付けることを意図せず、当業者は、好ましい実施形態が本発明の特定の他の態様に適用可能であることを容易に理解するであろう。
【0124】
本明細書で使用されるように、「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドから印刷することができる任意の印刷流体を意味するものとする。インクは、着色剤を含んでも含まなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来のダイベースまたは顔料ベースのインク、赤外線インク、媒染剤(例えば、プレコートまたはフィニッシャ)、3D印刷流体等を含み得る。流体または印刷流体が参照される場合、これは、本明細書では「インク」の意味に限定することを意図しない。
【0125】
本明細書で使用されるように、「実装される」という用語は、介在部を介した直接実装および間接実装の両方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0126】
本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら一例のみとして説明する。
【0127】
【
図1】
図1は、インクジェットプリントヘッドの前方斜視図である。
【
図2】
図2は、プリントヘッドの底面斜視図である。
【
図3】
図3は、プリントヘッドの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、プリントヘッドのケーシングの中央部分の拡大図である。
【
図5】
図5は、入口および出口結合部を有するプリントヘッドの本体の分解斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、流体結合部の第1のチャンネルを通した断面斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、流体結合部の第2のチャンネルを通した断面斜視図である。
【
図8】
図8は、1つの流体結合部が取り外された本体の端部の拡大分解斜視図である。
【
図9】
図9は、可撓性フィルムが取り外されたインクマニホールドの拡大上面斜視図である。
【
図11】
図11は、シムを有し、プリントヘッドチップの1つの列が取り外されたインクマニホールドの拡大断面斜視図である。
【
図12】
図12は、インクマニホールドの下面の拡大底面斜視図である。
【
図13】
図13は、シムおよびプリントヘッドチップ実装配置の側断面図である。
【
図14】
図14は、シムおよびプリントヘッドチップ実装配置の断面底面斜視図である。
【
図18】
図18は、プリントヘッドの一部の底面斜視図である。
【
図19】
図19は、シールドプレートおよび封止材の1つの列が取り外されたプリントヘッドの拡大底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
図1~4を参照すると、ユーザがプリンタ(図示せず)に挿入する交換可能プリントヘッドカードリッジの形態のインクジェットプリントヘッド1が示されている。プリントヘッド1は、中央位置決め装置4の両側に位置付けられる第1のケーシング部3Aおよび第2のケーシング部3Bを有する細長い成形プラスチックケーシング3を含む。中央位置決め装置4は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0313061号明細書に記載の種類の印刷モジュールなどの印刷モジュールに対してプリントヘッドカートリッジ1を位置付けるための位置合わせノッチ5を有する。第1および第2のケーシング部3Aおよび3Bは、第1のケーシング部と第2のケーシング部との間に係合されるばねクリップ6により、互いに向けてかつ中央位置決め装置4に向けて付勢される(
図4を参照されたい)。2つの部品からなるケーシング3は、ばねクリップ6と組み合わせることにより、少なくともある程度まで長手方向に伸長することが可能になり、プリントヘッド1の本体17におけるある程度の長手方向の伸長に適合する。この配置は、使用中、プリントヘッド1の本体17の応力またはそりを最小化する。
【0129】
多チャンネル入口結合部8Aの入口コネクタ7Aは、ケーシング3の一端で開口を通って上方へ突出し、多チャンネル出口結合部8Bの出口コネクタ7Bは、ケーシングの反対側の端部で開口を通って上方へ突出する(2つの入口コネクタおよび2つの出口コネクタのみが
図1に示されている)。入口コネクタ7Aおよび出口コネクタ7Bは、プリントヘッドへのインクを供給する/プリントヘッドからインクを供給される相補的な流体結合部(図示せず)との結合のために構成される。相補的な流体結合部は、例えば、インク送出モジュールおよび/または米国特許出願公開第2017/0313061号明細書に記載の種類の印刷モジュールの一部であり得る。
【0130】
プリントヘッド1は、プリントヘッドのそれぞれの側壁に沿って延在する電気接点13の両列を介して電力およびデータ信号を受け取る。電気接点13は、プリンタ(図示せず)または印刷モジュールの相補的な接触から電力およびデータ信号を受け取り、以下でさらに詳細に説明されるようなPCBを介して電力およびデータをプリントヘッドチップ70に送出するように構成される。
【0131】
図2に示されるように、プリントヘッド1は、プリントヘッドの下を通る印刷媒体(図示せず)上に印刷するためのプリントヘッドチップの第1の列14および第2の列16を含む。プリントヘッドチップの各列は、2色のインクを印刷するように構成され、プリントヘッド1は、4つのインク色(CMYK)を印刷することが可能なフルカラーのページ幅プリントヘッドとなる。プリントヘッド1は、一般に、使用中のプリントヘッドの異なるインク色にも関わらず、プリントヘッドチップの第1の列14および第2の列16を二分する長手面を中心として対称である。
【0132】
図3に示される分解斜視図において、本体17は、さまざまな他の構成要素を取り付けるためのプリントヘッド1の剛性コアを形成することが分かる。特に、ケーシング3は、本体17の上部にスナップ嵌めされ、入口結合部8Aおよび出口結合部8B(ケーシング3によって包み込まれる)は、本体の両端に接続され、PCB18の対は、本体の下部に取り付けられ(次にシールドプレート20によって覆われ)、(電気接点13を画定する)複数のリード22は、本体の両側壁に実装される。
【0133】
図5を参照すると、本体17は、それ自体、細長いマニホールド25と、相補的なカバープレート27とを含む2つの部分からなる部機械加工された構造である。マニホールド25は、プリントヘッドチップの第1の列14および第2の列16の両方を取り付けるための単一下面を有するキャリアとして機能する。マニホールド25は、カバープレート27の対向する長手方向側部から下向きに延在する対向するフランジ29の対間に受けられる。フランジ29は、マニホールド25の相補的なスナップ係止特徴部26とのスナップ係止係合のために構成され、組み立てられた本体17を形成する。
【0134】
マニホールド25およびカバープレート27は、優れた剛性および比較的小さい熱膨張率を有する金属合金材料(例えば、Invar)から形成される。組み合わせて、マニホールド25およびカバープレート27は、その長手方向軸に沿って最小限の伸長をするプリントヘッド1のコアに堅い剛性の構造を提供する。上記のように、ケーシング3は、本体17の任意の長手方向の伸長を拘束しないように構成され、それにより使用中のプリントヘッドのそりを最小化する。したがって、プリントヘッド1は、A4長さプリントヘッドまたはA3長さプリントヘッドとして設けられ得る。単一のページ幅プリントヘッドが最大A3長さ(すなわち最大で300mm)で構成され得ることは、本発明の利点である。これまで、A3サイズの媒体上へのページ幅印刷は、ページ幅アレイおよびプリントヘッド1でつぎ合わされた複数のプリントヘッドモジュールを介してのみ可能であった。したがって、A3サイズのカラーページ幅印刷のための商業化が拡大される。
【0135】
図6は、多チャンネル流体結合部8の1つを詳細に示し、それは、入口結合部8Aまたは出口結合部8Bの何れでもあり得る。しかしながら、
図6に関して特徴を説明するために、示された流体結合部8は、入口結合部8Aであることを前提とする。
【0136】
流体結合部8は、例えば、印刷モジュールの相補的な流体結合部へのプリントヘッド1の垂直結合のための90度の角度を通して4色のインクを伝送するように設計され、同時に、4つの流体コネクタは、プリントヘッドおよびその周囲の空間制約内に幾何学的に収めることができることを保証する。さらに、流体結合部8は、流体結合部を通した任意の圧力低下を均一にするように設計され、それにより、4つのインク色は、マニホールド25に入るときに同じまたは類似した相対圧力を有する。
【0137】
次いで、
図6、7Aおよび7Bを参照すると、流体結合部8は、結合部本体10から上方へ垂直に延在する4つの入口ポート9A~Dと、入口ポートに垂直に結合部本体から延在する対応する出口ポート11A~Dとを含む。入口ポート9A~9Dは、結合部本体10の周りで放射状に配置され、それにより、2つの外側入口ポート9Aおよび9Dは、それらのそれぞれの出口ポート11Aおよび11Dに比較的近位であり、2つの内側入口ポート9Bおよび9Cは、それらのそれぞれの出口ポートに比較的遠位である。入口ポート9A~9Dの放射状の配置により、入口ポートを、プリントヘッドと係合される印刷モジュール(図示せず)の空間制約内に収めることができる。さらに、入口ポートは、プリントヘッド挿入/除去中、同時の垂直係合/解放のための同一平面である上面を有する。
【0138】
流体結合部8に入る各インクは、(例えば、上流側圧力調整器によって)慎重に制御されたそれぞれの静水圧を有し、インクが流体結合部を通って流れるときにインクの相対的な静水圧が変わらないことが重要である。例えば、4つのインクは、等しい静水圧で入口ポート9A~9Dに入り得、これらのインクは、等しい静水圧でマニホールド25に向けて出口ポート11A~11Dを出ることが望ましい。各インクは、流体結合部8を通って流れ抵抗(すなわち粘性抵抗)を受けるため、ある程度の圧力低下は回避不能である。しかしながら、2つの内側入口ポート9Bおよび9Cを通って流れる2つのインクのための流体経路がより長いにもかかわらず、圧力低下がすべてのインクに関して均一であることが重要である。したがって、
図7Bに示されるように、入口ポート9Bを出口ポート11Bと接続する流体チャンネル12Bは、入口ポート9Bの方へ上方に傾斜したルーフ13Bを有する。入口ポート9Cと出口ポート11Cとを接続する対応する流体チャンネルのルーフ13Cは、同様に、入口ポート9Cの方へ上方に傾斜する。対照的に、入口ポート9Aを出口ポート11Aと接続する流体チャンネル12Aは、同様に傾斜したルーフを有さず、流体は、より湾曲した流体経路から支援なしでより急な角度を通って曲がることが必要である。
【0139】
したがって、2つの内側流体チャンネル12Bおよび12Cのルーフ構成は、2つの外側流体チャンネル12Aおよび12Dと比較して比較的より長いそれらの流体経路によって引き起こされることがあるいかなる追加的な流れ抵抗も打ち消す効果を有する。したがって、流体結合部8を通した圧力低下は、4つのすべての流体チャンネル12A~12Dで同じであるかまたは類似しており、4つの入口ポート9A~Dに入るインクが等しい静水圧を有するとき、4つの出口ポート11A~11Dのそれぞれは、等しい静水圧を有するであろう。対照的に、(HP,Inc.に付与された)米国特許第7,399,069号明細書に記載の流体コネクタなど、当該技術分野において知られているプリントヘッドのための流体コネクタは、異なる長さを有するさまざまな流体チャンネルの流れ抵抗(および圧力低下)に関してかなりの違いを有する。
【0140】
図8は、出口結合部8Bに加えて、マニホールド25の出口端およびカバープレート27の拡大図である。カバープレート27は、その長さに沿って、離間した複数の通気孔30を有し、それは、マニホールド25の上部に取り付けられた可撓性フィルム31を自由に曲げることができるように大気に開放されることが分かるであろう。可撓性フィルム31の機能は、以下でさらに詳細に記載される。
【0141】
さらに
図8を参照すると、多チャンネル出口結合部8Bは、マニホールド25の一端でマニホールドポート34からインクを受け取る。同様に、多チャンネル入口結合部8Aは、マニホールド25の反対側の端部でマニホールドポート34にインクを送出する。当然のことながら、代替的な結合装置は、本発明の範囲内である。
【0142】
ここで、
図9および10を参照すると、インクマニホールド25は、長手方向にかつマニホールド側壁41と平行に延在する4つのインク供給チャンネル40を含む。各インク供給チャンネル40は、マニホールド25の一端でマニホールドポート34からインクが供給され、インクは、マニホールドの反対側の端部でマニホールド出口34を介してインク供給チャンネルを出る。インク供給チャンネル40は、マニホールド25の上部を覆う可撓性フィルム31によって覆われ、可撓性フィルム31は、複数の離散した波形部分または蛇腹43を含む。
【0143】
通常、印刷システムは、異なる流体応答周波数を有するいくつかのサブシステムによって開発され、蛇腹43は、プリントヘッド1における静水圧変化に迅速に応答するように設計される。最適な吐出性能を維持するために、プリントヘッド1内の内圧は、ノズル補充一貫性を可能とするように比較的狭い圧力領域内に最適に維持されなければならない。プリントヘッド1にインクを供給するインク送出システムは、通常、動的な圧力変化に対して比較的遅い応答を有するため、プリントヘッドのインクジェットノズルの迅速な補充は、インク送出システムが応答することができるまで、インクの吐出された体積をふさぐ蛇腹43によって局所的に制御される。同様に、蛇腹43は、減衰機能も実行し、完全なインク流での印刷が突然止まったときに圧力スパイクを「吸収」することができる。
【0144】
蛇腹43の数および構成は、プリントヘッド1の性能を最適化するために変更され得ることが理解されるであろう。特に、蛇腹43の数および構成は、インク供給チャンネル40に沿った好ましくない共振効果を最小化するように最適化され得る。このように、インク供給チャンネル40の1つの部分における高いインク需要は、可撓性フィルム31の全長にわたって定在波を誘導することなく、蛇腹43の数によって適合させることができる。蛇腹43は、フィルムの長さに沿って離間させることにより(例えば、フィルムの介在する平面部分において)、または
図9~11に示されるように短手方向のバッフル45を使用して可撓性フィルム31を長手方向部分に分割することにより、別々に動作するユニットに分離され得る。バッフル45は、フィルム31の全長に沿った定在波の発生を最小化し、同時に4つのすべてのインク供給チャンネルを覆う単一の部品からフィルムを成形することを可能にし、それによりプリントヘッド1の加工を容易にする。
【0145】
蛇腹43は、米国特許第8025383号明細書に記載されているようなエアボックスを必要とすることなく、圧力変動に応答できることがさらに理解されるであろう。したがって、プリントヘッド1は、脱気されたインクとの使用に適切である。
【0146】
図10で最もよく分かるように、蛇腹43は、インク供給チャンネル40のそれぞれにマニホールド25の上面から「吊り下げられる」。蛇腹43は、マニホールドポート34のレベルに対応するレベルまで吊り下げられ、それにより、気泡は、蛇腹の下でインク供給チャンネル40の上部空間にトラップされる可能性がない。したがって、望ましくない気泡がインク供給チャンネル40に入った場合、これらは、インク流れより上の空間にトラップされるのではなく、マニホールドポート34を通してインクの流れとともにマニホールド25から押し流すことができる。
【0147】
さらに
図10を参照すると、4つのインク供給チャンネル40は、対をなして配置され、各対は、長手方向の隔壁44によって分離される。比較的より厚い長手方向の中央壁46は、インクチャンネル40の2つの対を分離する。各インク供給チャンネル40のベース48および隔壁44の両側において複数の貫通孔50が画定される。貫通孔50は、ここで、
図11~13を参照して記載されるようにプリントヘッドチップ70の2本の平行列にインクを供給する。
【0148】
インク供給チャンネル40の1つの対に対応する貫通孔50は、マニホールド25の下面52の方へインク供給チャンネルのベース48から下向きに延在する。各貫通孔50は、マニホールド25の下面52に画定される長手方向インクキャビティ60のキャビティルーフ55に合う第1の部分54を有する。長手方向リブ58は、キャビティルーフ55から下向きに延在し、長手方向インクキャビティ60を、リブの両側に位置付けられる長手方向インク供給チャンネル56の対に分割する。長手方向リブ58は、マニホールドの下面52と同一平面である端面59を有する。
【0149】
長手方向インクキャビティ60は、キャビティ側壁62を有し、キャビティ側壁62は、キャビティルーフ55から下向きに延在し、マニホールド25の下面52と合う。各貫通孔50の第2の部分64は、キャビティルーフ55を越えて延在し、下面52と合う。このように、貫通孔50の第2の部分64は、キャビティ側壁62にノッチを形成する。同様に、
図11に最もよく示されているように、貫通孔50の第1の部分54の少なくとも一部は、隔壁44の両側にノッチを形成する。
【0150】
貫通孔50の第2の部分64によって画定されるノッチは、使用中、気泡が膨張してプリントヘッドチップ70から離れて上昇する空間を提供する。示される実施形態において、貫通孔50は、断面が円形であり、第1の部分54および第2の部分64は、略半円形である。しかしながら、貫通孔50は、インク流れおよび気泡の管理を最適化するための任意の好適な断面形状であり得ることが理解されるであろう。
【0151】
図13および14に最もよく示されているように、Invarシム66は、長手方向インク供給チャンネル56のそれぞれを橋渡しするように、マニホールド25の下面52および長手方向リブ58の同一平面である端面59に接着接合される。したがって、シム66は、マニホールド25の下面52と合う貫通孔50の第2の部分64全体を封止する。
【0152】
示される実施形態において、シム66は、4色のインクに対応する4つのすべての長手方向インク供給チャンネル56を橋渡しするように、マニホールド25の下面52に接合される単一部品のシムである。突合せプリントヘッドチップ70の列は、インク供給チャンネル56のそれぞれの対の上でシム66に接着接合されて、プリントヘッドチップの第1の列14および第2の列16を形成する。
【0153】
図16に単独で示されるInvarシム66は、使用中、プリントヘッドチップ70の各列のための安定したプラットホームを提供し、熱膨張は無視できる。シム66は、プリントヘッドチップ70に相当する厚さを有する(例えば、厚さ約100~1000ミクロン)。事実上、Invarシム66は、複数のプリントヘッドチップを実装できる一体構造のマニホールドに基づく長いプリントヘッドの構造を可能にする。
【0154】
長手方向のシム部分66Aおよび66Bの対を有する単一のシム66の使用は、2つのシム部分66Aおよび66B間の平行を保証することにより、プリントヘッドチップ70の第1の列14および第2の列16の相対的なゆがみを最小化する。マニホールド25に対するシム66の位置合わせは、シム上の機械的位置合わせタブ61を使用して容易になり、機械的位置合わせタブ61は、下面に画定される凹部の形態の位置合わせ特徴部63と係合する(
図14を参照されたい)。シム66は、マニホールド63の対応する複数の位置合わせ特徴部63との係合のために位置付けられる複数の位置合わせタブ61を有することが理解されるであろう。複数の位置合わせタブ61は、x軸およびy軸両方における位置合わせを保証する。
【0155】
シム66の中央長手方向部分は、2つの主要な長手方向部分66Aおよび66Bを接続する一連のシムトラス67間にボイド68を画定する。したがって、プリントヘッドチップ70の第1の列14と第2の列16との間の領域は、マニホールド25の下面52から比較的熱的に隔離され、マニホールドを通って循環するインクで冷却されるヒートシンクとしての役割を果たす。プリントヘッド1のこの中央領域の熱的隔離は、第1の列14と第2の列16との間のクールスポットの最小化を支援し、有利には印刷中にプリントヘッドの下面へのインクの結露を最小化する。
【0156】
使用中、プリントヘッドチップ70の各列は、インク供給チャンネル40のそれぞれの対から2つのインクを受け取る。貫通孔50を介して長手方向インク供給チャンネル56の対に、それから各長手方向のシム部分66Aおよび66Bに画定された長手方向シムスロット69の対を介してプリントヘッドチップ70の裏面にインクが供給される。長手方向シムスロット69は、長手方向シムリブ72の両側に沿って延在し、長手方向シムリブ72自体は、マニホールド25の長手方向リブ58と並べられる。
【0157】
長手方向インク供給チャンネル56は、開放インクチャンネルアーキテクチャを提供し、それにより、インクの比較的大きい本体は、プリントヘッドチップ70の裏面に隣接する。この配置は、高い印刷頻度での印刷に好適であり、同時にプリントヘッドチップのインクジェットノズルがインク不足にならないことを保証する。さらに、それぞれがシム66と合い、プリントヘッドチップ70からオフセットされた第2の部分64を有する拡大された貫通孔50は、気泡を許容するアーキテクチャを提供し、それにより、プリントヘッドチップへのインクの流れを妨げるトラップされた気泡の危険性は最小化される。さらに、貫通孔50の第1の部分54および第2の部分64は、任意の気泡をプリントヘッド1から容易に押し流すことができるところからインク供給チャンネルへの、トラップされた気泡の放出を容易にする。
【0158】
インクは、シムスロット72から、各プリントヘッドチップ70の裏面に画定された対応するインク送出スロットに供給される。
図15に示される典型的なMemjet(登録商標)プリントヘッドチップ70は、5つのインクを潜在的に印刷するための5つのカラーチャンネルを含む。単一のプリントヘッドチップの5つのカラーチャンネルは、さまざまな異なる印刷構成のための柔軟性を提供し、これまで、Memjet(登録商標)プリントヘッドチップ70は、米国特許第7,524,016号明細書に記載のCMYK(IR)、米国特許第8,613,502号明細書に記載のCMYKK、米国特許第7,441,862号明細書に記載のCCMMYまたは米国特許出願公開第2017/0313067号明細書に記載のモノクロ(例えば、KKKKK)を印刷するために配管されてきた(上記明細書のそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。プリントヘッド1では、第1の列14は、通常、2色のインクを印刷するため配管されるMemjet(登録商標)プリントヘッドチップ70を含み、第2の列16は、通常、フルカラー(CMYK)印刷のためにインクの2つの異なる色を印刷するために配管されるMemjet(登録商標)プリントヘッドチップを含む。したがって、プリントヘッド1は、Memjet(登録商標)プリントヘッドチップの5つの利用可能なカラーチャンネルの4つのみを利用する。
図15に示されるように、2つの外側カラーチャンネル71Aは、それぞれのインク供給チャンネル56から供給されるインクの単色を印刷するために使用され、2つの反対側の外側カラーチャンネル71Bは、別のそれぞれのインク供給チャンネルから供給される別の色のインクを印刷するために使用される。中央カラーチャンネル71Cは、マニホールド25からいかなるインクも受け取らない、吐出しないノズルのダミー列を含む。
図13に最もよく示されているように、ダミーカラーチャンネル71Cに対応するプリントヘッドチップ70の中央部分は、マニホールド25の長手方向リブ58と並べられて、プリントヘッドチップを実装するためのさらなる機械的支持を提供する。プリントヘッドチップ70のダミーチャンネル71Cに対応する裏面インク送出スロットは、エッチングされなくてもよく、または部分的にのみエッチングされてもよく、さらなる機械的支持を提供する。いくつかの実施形態において、裏面チャンネルの部分エッチングは、プリントヘッドチップ70の実装中に押し出された接着剤の収容に有用であり得る。
【0159】
プリントヘッドチップ70の中央ダミーカラーチャンネル71Cの機械的利点にもかかわらず、温度調節に関するさらなる利点が実現され得る。ダミーカラーチャンネル71Cに対応するノズルの列は、インクを受け取らないが、必要に応じてプリントヘッドチップを加熱するためにプリンタ制御装置にさらに電気的接続され得る。プリントヘッドチップのすべてのカラーチャンネルにわたる温度調節は、一定の印字品質および非吐出ノズルの中央ダミー列の実現に重要であり、アクティブ加熱要素を有するそれぞれは、プリントヘッドチップにわたる改善された温度調節を実現するために使用され得る。
【0160】
図17~19を参照すると、ここで、プリントヘッド1のための電気配線配置がさらに詳細に記載される。長手方向のPCB18の対は、プリントヘッドチップ70の第1の列14および第2の列16の側面にその両側で配置され、各PCBは、マニホールド25の下面52に接合される。各PCB18は、さまざまな電子部品を実装するための剛体基板(例えば、FR-4基板)を含み、マニホールド25の下面52に画定される段差74に対して突き合わされる1つの縁部を有する。各PCB18は、マニホールド25の側壁41を越えて外側へ横方向に延在する。シールドプレート20は、各PCB18の下面に接合され、プリントヘッドチップ70の第1の列14および第2の列16ならびに第1の列と第2の列との間の中央長手方向領域を囲む。各PCB18およびシールドプレート20の突出部分は、プリントヘッド1の両ウィング75を画定する一方、シールドプレート20の均一平面状下面は、プリントヘッドチップの両方の列を囲むペリメータキャッパ(図示せず)との係合のために構成される。
【0161】
プリントヘッドチップ70のそれぞれの列に近位の各PCB18の縁部は、ピンアウト77のそれぞれの列を有し、各ピンアウトは、ワイヤボンド接続(図示せず)を介してプリントヘッドチップの1つの上のそれぞれのボンドパッド73に接続される。封止材79は、ワイヤボンドを保護し、各PCB18の近位縁と、ボンドパッド73を含むプリントヘッドチップ70の対向縁との間に延在する。PCB18は、熱を発生させて、印刷中、インクエアロゾルにさらされるシールドプレート20を暖める。上記のように、シールドプレート20の中心部は、シム66に画定されるボイド68により、マニホールド25から比較的熱的に隔離される。したがって、プリントヘッドチップ70の第1の列14と第2の列16との間のシールドプレート20の中央長手方向領域上のインクの結露は、最小化される。
【0162】
図17で最もよく分かるように、接触パッド80の列は、各PCB18の上面の遠位端部分に沿って長手方向に延在する。各リード22は、接触パッド80に接続された一端を有し、本体17のそれぞれの側壁の方へ上向きに延在する。リード22は、カバープレート27のそれぞれのフランジ29に取り付けられたリードリテーナ24を介してカバープレート27のそれぞれのフランジ29に実装された上部と、接触パッド80の方へ外側に横方向に広がる下部とを有する。各リード22は、外部電源およびプリンタのデータコネクタへの接続のための電気接点13を画定する部分も有する。このように、プリントヘッドチップ70の各列は、プリントヘッドチップの列に隣接するそれぞれのリード22およびそれぞれのPCB18を介して電気接点13から電力およびデータを受け取る。
【0163】
したがって、上記のプリントヘッド1は、ページ幅印刷、特に比較的より長いプリントヘッドを使用するフルカラーのページ幅印刷の課題に対処するための複数の特徴を有する。
【0164】
当然のことながら、本発明は、例示のみによって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の範囲内で詳細の変更形態がなされ得ることが理解されるであろう。