(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】合成ペプチド、それを備える薬学的組成物及び血栓塞栓症関連疾患の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20220222BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220222BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220222BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220222BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20220222BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220222BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A61K47/65
A61K45/00
A61P7/02
A61K38/36
C12N15/09 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020047406
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2020-03-18
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ハン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】クオ, ユアン・スン
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-533317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FQNEWFHNFLHD(配列番号1)、TEANLSSWVFAR(配列番号2)又はLQKNPFDLVQIL(配列番号3)のアミノ酸配列を
含む、合成ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の合成ペプチドと、請求項1に記載の合成ペプチドに結合された治療剤と、を具備し、前記治療剤が、抗凝固剤又は血栓溶解剤である、抗血栓剤。
【請求項3】
グリシン(G)及びセリン(S)残基を具備するリンカーをさらに具備し、前記治療剤が、前記リンカーを介して請求項1に記載の合成ペプチドに結合される、請求項2に記載の抗血栓剤。
【請求項4】
前記抗凝固剤が、クマリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、フェニンジオン、ブロジファクム、ジフェナクム、ヘパリン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、バトロキソビン、ヘメンチン、クマジン、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル又はプラスグレルである、請求項2に記載の抗血栓剤。
【請求項5】
前記血栓溶解剤が、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ又はウロキナーゼである、請求項2に記載の抗血栓剤。
【請求項6】
前記tPAが、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ又はラノテプラーゼである、請求項5に記載の抗血栓剤。
【請求項7】
請求項1に記載の合成ペプチド又は前記治療剤に結合されるレポーター分子をさらに具備し、前記レポーター分子が、タグ分子、放射性分子、蛍光分子、燐光分子又は化学発光分子である、請求項2に記載の抗血栓剤。
【請求項8】
前記合成ペプチドの上流に配置されて接続されているシグナルペプチドをさらに具備する請求項2に記載の抗血栓剤。
【請求項9】
それを必要とする被検体において、血栓塞栓症関連疾患を予防及び/又は治療するための薬学的組成物であって、請求項2に記載の抗血栓剤及び薬学的に許容可能な賦形剤を具備する薬学的組成物。
【請求項10】
前記抗凝固剤が、クマリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、フェニンジオン、ブロジファクム、ジフェナクム、ヘパリン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、バトロキソビン、ヘメンチン、クマジン、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル又はプラスグレルである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記血栓溶解剤が、tPA、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ又はウロキナーゼである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記tPAが、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ又はラノテプラーゼである、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記被検体がヒトである、請求項9に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略として疾患治療の分野に関する。より具体的には、本開示は3つの合成ペプチド及び血栓塞栓症関連疾患の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症は、血管又は心室腔内での血栓(血餅としても知られている)の形成である。それは、虚血性心疾患(例えば、狭心症、心筋梗塞及び心臓突然死)、虚血性脳卒中及び静脈血栓塞栓症(VTE)を含む種々の血栓塞栓症関連疾患の根底にある一般的な病理である。世界保健機関(WHO)によると、心筋梗塞及び脳卒中は、全世界における死因の合計25%をもたらす、世界的な死亡原因の上位2つである。したがって、血栓塞栓症関連疾患の分子機構及び治療についての研究は、非常に重要である。
【0003】
血栓塞栓症関連疾患の治療の主力は、外科的処置、抗凝固療法及び血栓溶解を含む。しかし、有害となる副作用の制限により、すべての治療が血栓塞栓症関連疾患に満足な効果をもたらすことはできない。例えば、外科的処置は出血、創傷血腫、感染及び/又は神経損傷をもたらすこともあり、一方で抗凝固療法及び血栓溶解は命にかかわる出血をもたらすオフターゲット効果を誘発することが報告されている。
【0004】
上記を考慮して、関連技術において、より安全かつ効率的な方法において血栓塞栓症関連疾患を治療する新規な方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の詳細な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を詳述するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0006】
ここで具現化され、概括的に記載されるように、本開示の一態様は、血栓を標的とする合成ペプチドを具備する生体分子に関する。本開示の実施形態によると、合成ペプチドは、FQNEWFHNFLHD(配列番号(SEQ ID No:)1)、TEANLSSWVFAR(配列番号2)又はLQKNPFDLVQIL(配列番号3)のアミノ酸配列を有する。
【0007】
選択的に、生体分子は、合成ペプチドの上流に配置されて接続されているシグナルペプチドをさらに具備する。
【0008】
好ましい実施形態によると、生体分子は合成ペプチドに結合された治療剤をさらに具備し、治療薬は抗凝固剤又は血栓溶解剤である。抗凝固剤の例としては、クマリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、フェニンジオン、ブロジファクム、ジフェナクム、ヘパリン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、バトロキソビン、ヘメンチン、クマジン、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル及びプラスグレルが含まれるが、これらに限定されない。例示的な血栓溶解剤には、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA;例えば、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ又はラノテプラーゼ)、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ又はウロキナーゼが含まれる。
【0009】
本開示の所定の実施形態によると、生体分子は、グリシン(G)及びセリン(S)残基を備えるリンカーをさらに具備する。これらの実施形態では、治療剤は、リンカーを介して合成ペプチドに結合される。一実施例によると、リンカーは、GGGGS(配列番号4)のアミノ酸配列を具備する。
【0010】
選択的に、生体分子は、合成ペプチド又は治療剤に結合されたレポーター分子をさらに具備する。所望の目的に応じて、レポーター分子は、タグ分子、放射性分子、蛍光分子、燐光分子又は化学発光分子であり得る。
【0011】
また、血栓症又は血栓塞栓症関連疾患を治療する薬学的組成物又は医薬品もまた、ここに開示される。医薬品又は薬学的組成物は、本開示の生体分子と、生体分子が合成ペプチド及び合成ペプチドに結合された治療剤を備える薬学的に許容可能な賦形剤とを具備する。
【0012】
本開示の他の態様は、それを必要とする被検体における血栓症又は血栓塞栓症関連疾患の、予防及び/又は治療の方法に関する。方法は、本開示の任意の態様又は実施形態に応じて、有効量の上記生体分子又はそれを備える医薬品若しくは医薬組成物を被検体に投与するステップを具備する。
【0013】
本生体分子、薬学的組成物又は医薬品で治療可能な被検体は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0014】
本開示の付随する構成及び効果の多くは、添付図面との関連で検討される以下の詳細な説明を参照してより深く理解されることになる。
【0015】
特許又は出願は、カラーで示された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を有するこの特許公報又は特許出願公開公報の複製は、要求及び必要な料金の支払に応じて特許庁によって提供されることになる。
【0016】
本記載は、添付図面を考慮して読まれる以下の詳細な説明からより深く理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本開示の一実施形態によるヒト血栓を標的とするファージクローンをスクリーニングした結果を示す。
図1Aは、バイオパニングの異なるラウンドから溶出されたファージの力価を示すヒストグラムである。
【
図1B】
図1Bは、本開示の一実施形態によるヒト血栓を標的とするファージクローンをスクリーニングした結果を示す。
図1Bは、特定されたファージ及びヒト血栓の結合親和性を示す酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のデータである。Y軸は、450nmでの吸光度である。
【
図1C】
図1Cは、本開示の一実施形態による指示されたタンパク質に対する選択されたファージクローンの結合親和性を示す。
図1Cは、容量依存的に血栓と結合する特定されたファージを示すELISAのデータである。
【
図1D】
図1Dは、本開示の一実施形態による指示されたタンパク質に対する選択されたファージクローンの結合親和性を示す。
図1Dは、この実験において陰性対照物として作用するウシ血清アルブミン(BSA)に対する特定のファージの結合親和性を示すELISAのデータである。
【
図2A】
図2Aは、本開示の他の実施例による生体内における血栓に対する特定されたペプチドの標的能力を示す。
図2Aは、血栓を誘発する前(左写真)及び後(右写真)のマウスの右頸静脈の写真である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の他の実施例による生体内における血栓に対する特定されたペプチドの標的能力を示す。
図2Bは、特定のファージの組織分布のELISAの結果である。Y軸は、450nmでの吸光度である。
【
図2C】
図2Cは、本開示の他の実施例による生体内における血栓に対する特定されたペプチドの標的能力を示す。
図2Cは、特定のファージの組織分布を示すファージ力価アッセイの結果である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による免疫組織化学(IHC)の写真であり、陰性対照物と比較して、特定のファージは生体内の血栓に特異的に結合する。
【
図4】
図4は、本開示の他の実施例によるペプチド-tPA融合タンパク質の分析結果を示す。パネルAは、特定された融合タンパク質の発現を分析するゲル電気泳動の写真である。パネルBは、特定された融合タンパク質の発現を確認するウエスタンブロットの写真である。野生型tPAは、この実験において陽性対照物として使用される。パネルCは、特定された融合タンパク質の切断活性を示す折れ線グラフである。tPA活性は、蛍光基質としてZ-Gly-Gly-Arg-AMCを使用してアッセイした。特定の開裂に応じて、基質は、380nmで励起し、420nmで発光する蛍光性となる。Y軸は、EX380/EM420、蛍光発光任意単位である。
【
図5A】
図5Aは、特定の融合タンパク質で処置したマウスの赤外蛍光イメージングの結果を示す。
図5Aは、処置後0分、5分、20分、40分及び1時間で撮影された赤外蛍光画像の写真である。最も強い赤外蛍光シグナルは、頸部近くの右外頸静脈に位置する。矢印は、誘発された血栓を示す。
【
図5B】
図5Bは、特定の融合タンパク質で処置したマウスの赤外蛍光イメージングの結果を示す。
図5Bは、誘発された血栓における特定の融合タンパク質の定量結果を示すヒストグラムである。誘発された血栓内の特定の融合タンパク質の蛍光測定値は、処置後の時間に対してプロットされる。
【
図6】
図6は、中大脳動脈閉塞(MCAO)マウスモデルにおける特定の融合タンパク質の治療効果を示す。パネルAは、ビヒクル(PBS)、tPA、SP30-tPA又はSP66-tPAを注入したMCAOマウスのT2強調磁気共鳴画像である。T2強調MRIにおける白色は、梗塞の領域を示す。パネルBは、特定の処置を施したMCAOマウスの脳における梗塞領域の分析結果を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。その説明は、実施例の機能及び実施例を構成して動作させるためのステップのシーケンスを説明する。ただし、同一又は同等の機能及びシーケンスが、異なる実施例によっても実現され得る。
【0019】
1. 定義
便宜上、明細書、実施例及び付随する特許請求の範囲において採用される所定の用語をここにまとめる。ここで特に断りがない限り、本開示で採用される科学的及び技術的用語は、一般的に当業者に理解及び使用される意味を有するものとする。また、文脈によってそれ以外が必要とされない限り、単数形の語はその複数形を含むものとし、複数形の語は単数形を含むものとすることが理解される。具体的には、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」及び「an」は、それ以外を文脈が明示しない限り、複数の参照を含む。また、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。
【0020】
用語「ペプチド」は、ポリマーの長さに関わらず、アミノ酸のポリマーのことをいう。この用語はまた、本発明のペプチドの化学的又は発現後変性を特定も除外もしないが、これらのペプチドの化学的又は発現後変性は特定の実施形態として含まれてもよいし、又は除外されてもよい。したがって、例えば、グリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基などの共有結合を含むペプチドに対する変性は、ペプチドという用語に明確に含まれる。また、これらの変性を有するペプチドは、本発明に含まれるか又はそれから除外されるように個々の種として特定され得る。本開示を通じて、ペプチド内のいずれの特定のアミノ酸残基の位置にも、ペプチドのN末端から始まる番号が付けられている。アミノ酸がD-又はL-アミノ酸のどちらにも指定されない場合、文脈が特定の異性体を要件としない限り、アミノ酸は、L-アミノ酸又はD-若しくはL-アミノ酸のいずれかであり得る。また、ペプチドアミノ酸残基に関してここで使用される表記は、当技術内で一般に使用される略語である。
【0021】
ここで使用されるように、用語「合成ペプチド」とは、自然発生のタンパク質分子の全体を備えていないペプチドのことをいう。ペプチドは、ファージディスプレイ技術、化学合成、組換え遺伝子技術又は全抗原の断片化などの技術を使用して人間の介入によって生成され得るということにおいて「合成」である。
【0022】
ここに記載されるように、ペプチドのアミノ酸配列における軽微な変更は、アミノ酸配列の変性が、少なくとも70%、71%、72%、73%、75%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の配列同一性など、少なくとも70%の配列同一性を維持することを条件として、ここに開示され又は請求項に記載される発明の概念によって包含されているものとして考慮される。本開示のペプチドは、具体的にはその生理活性に無関係であるペプチドの特徴を変化するように変性され得る。例えば、所定のアミノ酸は、本研究におけるペプチドの生理活性(すなわち、血栓を標的にするその能力)に影響を与えることなく変化及び/又は欠失し得る。特に、保存アミノ酸置換が考慮される。保存的置換は、それらの側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、以下のファミリー:(1)酸性のもの=アスパラギン酸、グルタミン酸、(2)塩基性のもの=リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)無極性のもの=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及び(4)非電荷極性のもの=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、に大別される。より好ましいファミリーとして:セリン及びスレオニンが脂肪族ヒドロキシファミリーであり、アスパラギン及びグルタミンがアミド含有ファミリーであり、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンが脂肪族ファミリーであり、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリンで単独で置換すること、アスパラギン酸をグルタミン酸で単独で置換すること、スレオニンをセリンで単独で置換すること、又はアミノ酸を構造的に関連するアミノ酸で同様に置換することは、特に置換がフレームワーク部位内のアミノ酸に関与しない場合、結果として得られる分子の結合又は特性に大きな影響がないと想定するのが合理的である。アミノ酸変化が機能性ペプチドをもたらすか否かは、ペプチド誘導体の特異的な活性をアッセイすることによって直ちに判定され得る。タンパク質/ペプチドの断片又は類似体は、当業者によって直ちに調製可能である。断片又は類似体の好ましいアミノ末端及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近にある。一例として、本合成ペプチドの1つのアミノ酸残基(例えばバリン)は、(例えばロイシンにより)保存的に置換されている。他の例として、本合成ペプチドの2つのアミノ酸残基は、他の適切なアミノ酸残基によって保存的に置換されており、例えば、バリン(V)及びアルギニン(R)は、メチオニン(M)及びリジン(K)、リジン(K)及びプロリン(P)、トリプトファン(W)及びイソロイシン(I)、イソロイシン(I)及びプロリン(P)、アスパラギン(N)及びバリン(V)、並びにグルタミン(G)及びリジン(K)を含むがこれらに限定されないアミノ酸の対によって置換される。
【0023】
「パーセンテージ(%)配列同一性」は、最大割合の配列同一性を得るように必要に応じて配列の整列及びギャップの導入を行った後、保存的置換をいずれも配列同一性の一部として考慮せずに、特定のペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセント配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いる当技術内の種々の態様で達成可能である。当業者であれば、対比されている配列の全長にわたって最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のため、2つのアミノ酸配列間の配列比較は、国立生物工学情報センター(NCBI)によってオンラインで提供されるコンピュータプログラムBlastp(protein-protein BLAST)によって実行された。所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのパーセントアミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対して所定%のアミノ酸配列同一性を有する所与のアミノ酸配列Aということもできる)は、以下の式で計算される。
X/Y×100%
ここで、Xは、そのプログラムのA及びBのアライメントにおいて配列アライメントプログラムBLASTによる完全な一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、いずれか短い方のA又はBにおけるアミノ酸残基の合計数である。
【0024】
用語「投与され」、「投与する」又は「投与」は、本発明のペプチドを備える生体分子、薬学的組成物又は医薬品を、限定することなく、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、動脈内に、頭蓋内に、又は皮下に投与することを含む送達のモードをいうのにここでは互換可能に使用される。ある実施形態では、本発明のペプチドを備える生体分子は、静脈内注入などの使用の前に適切な賦形剤(例えば緩衝液)と混合される。
【0025】
ここで使用されるように、用語「治療/処置する」、「治療/処置している」又は「治療/処置」は、互換可能であり、血栓に関連する症状、続発性障害又は状態の部分的又は完全な予防、改善、緩和及び/又は管理を含む。ここで使用される用語「治療/処置している」は、血栓に関連する1以上の症状、続発性障害又は特徴の部分的又は完全な軽減、改善、解放、緩和、発症の遅延、進行の抑制、重症度の低下及び/又は発症率の低下の目的で、血栓に関与する症状、続発性障害又は状態を有する被検体に対しての本開示の1以上の生体分子の適用又は投与をいう。血栓に関連する症状、続発性障害及び/又は状態には、狭心症、心筋梗塞、心臓突然死、虚血性脳卒中、及び静脈血栓塞栓症(VTE)が含まれるが、これらに限定されない。治療は、血栓に関連する症状、続発性障害及び/又は状態の進行のリスクを減少させる目的のために、そのような症状、障害及び/又は状態の初期の兆候のみを示す被検体に施され得る。治療は一般に、その用語がここで定義されるように1以上の症状又は臨床マーカーが低減される場合に「有効」となる。あるいは、治療は、症状、障害又は状態の伝達が軽減又は停止される場合に「有効」となる。
【0026】
ここでいう用語「有効量」は、所望の反応をもたらすのに充分な量の成分を示す。治療の目的のため、有効量は、治療的に有益な効果が成分の任意の毒性又は有害な効果を上回る量でもある。薬剤の有効量は、疾患又は状態を治癒することは要件とされないが、疾患若しくは状態の発症が遅延、阻害若しくは予防され、又は疾患若しくは状態の症状が改善されるように、疾患又は状態に対する治療を与えることになる。有効量は、指定期間を通じて1回、2回又はそれ以上の回数で投与される適切な形態で1、2又はそれ以上の用量に分割され得る。具体的な有効な又は充分な量は、治療されている特定の状態、患者の肉体的状態(例えば、患者の体重、年齢又は性別)、治療されている哺乳類又は動物の種類、治療の継続期間、(それがある場合には)併用療法の性質、並びに採用される具体的製剤及び化合物又はその誘導体の構造といった要因とともに変化することになる。有効量は、例えば、グラム、ミリグラム若しくはマイクログラムで、又は体重の1キログラムあたりのミリグラム(mg/kg)として表現され得る。あるいは、有効量は、モル濃度、質量濃度、体積濃度、重量モル濃度、モル分率、質量分率及び混合比などの活性成分(例えば、本開示の生体分子)の濃度で表現され得る。当業者であれば、動物モデルから決定された用量に基づいて(本生体分子などの)医薬品についてのヒト等価用量(HED)を計算できるはずである。例えば、ヒト被検体での使用に対する最大安全投与量を推定する際に、米国食品医薬品局(FDA)によって発行された工業用ガイダンス「Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」に従うことができる。
【0027】
「薬学的に許容可能」という文言は、例えば、ヒトに投与されたとき生理学的に寛容性があり、一般にアレルギー又は類似の有害な反応を生成しない「一般に安全であるとみなされる」分子実体及び組成物のことをいう。好ましくは、ここで使用されるように、用語「薬学的に許容可能」とは、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されているか、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用に関して米国薬局方又は他の一般的に認められた薬局方に列挙されていることを意味する。
【0028】
ここで使用される用語「賦形剤」は、活性薬剤に対するビヒクル/担体を形成する任意の不活性物質(粉末又は液体など)を意味する。賦形剤は、一般に、安全で非毒性であり、広義には、充填剤、希釈剤、凝着剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、安定化剤、着色剤、湿潤剤、崩壊剤などのような薬学的組成物を調製するのに有用な製薬業において公知の任意の物質も含み得る。
【0029】
用語「被検体」は、本発明の生体分子、薬学的組成物、医薬品及び/又は方法を用いて治療可能なヒト種を含む哺乳類を指す。用語「被検体」は、ある性別が具体的に示されない限り、雄及び雌の両方の性別をいうものとする。
【0030】
2.本発明の説明
本開示は、アミノ酸配列FQNEWFHNFLHD(配列番号1)、TEANLSSWVFAR(配列番号2)及びLQKNPFDLVQIL(配列番号3)をそれぞれ備える3つの合成ペプチドが血栓に対する結合親和性及び特異性を示すという発見に少なくともある程度基づく。したがって、本開示は、合成ペプチドを備える生体分子及び血栓の治療におけるその使用を提供することを目的とする。
【0031】
したがって、本開示の第1の態様は、合成ペプチドを備える生体分子に関し、それは、配列番号1、2又は3に対して少なくとも85%(すなわち、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、99%又は100%)同一のアミノ酸配列を有する。本開示の実施例によると、合成ペプチドは配列番号1、2又は3に対して100%同一のアミノ酸配列を備える。
【0032】
本発明の合成ペプチドは、ファージディスプレイ技術(すなわち、標的分子に対する結合親和性を示す所望のペプチドを選択するファージディスプレイペプチドのバイオパニング)又はα-アミノ基のt-BOC若しくはFMOC保護(すなわち、ペプチドのC末端から始まる各ステップにおいて単一のアミノ酸が付加される段階的合成)などの一般に使用される任意の方法によって生成され得る。本発明のペプチドは、周知の固相ペプチド合成方法によっても合成され得る。あるいは、本発明の合成ペプチドは、ペプチドをコードする核酸でトランスフェクトされた宿主細胞(例えば、HEK293細胞)によって生成され得る。
【0033】
治療効果を提供する目的のため、本生体分子は、合成ペプチドに結合された治療剤をさらに備え得る。本開示のある実施形態によると、治療剤は、抗凝固剤又は血栓溶解剤である。本生体分子に採用されるのに適した抗凝固剤の例としては、クマリン、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アトロメンチン、フェニンジオン、ブロジファクム、ジフェナクム、ヘパリン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、イドラビオタパリヌクス、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、ダレキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、バトロキソビン、ヘメンチン、クマジン、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル及びプラスグレルが含まれるが、これらに限定されない。血栓溶解剤については、tPA(例えば、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ又はラノテプラーゼ)、スタフィロキナーゼ、ストレプトキナーゼ又はウロキナーゼのいずれかであり得る。理解されるように、治療剤は、代替的に、血栓に対する予防及び/又は治療効果(例えば、血栓形成の阻害又は閉塞血栓の溶解)を示す他の分子であってもよく、例えば、線維素溶解剤又は抗血小板剤である。所定の実施例によると、治療剤はtPAである。
【0034】
選択的に、合成ペプチド及び治療剤は、リンカーを介して結合される。本開示のある実施形態によると、リンカーのアミノ酸配列は、複数のグリシン(G)及び/又はセリン(S)残基を備える。特定の一実施形態では、リンカーは、GGGGSのアミノ酸配列(配列番号4)を備える。
【0035】
さらに選択的に、本生体分子は、合成ペプチド又は治療剤に結合するレポーター分子をさらに備え得る。意図する目的に応じて、レポーター分子は、タグ分子(例えば、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン(TRX)、strepタグ、FLAG(登録商標)タグ、Mycタグ、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ若しくはポリヒスチジン(His)タグ)、放射性分子(例えば、ガリウム-67、モリブデン-99、インジウム-111若しくはタリウム-201)、蛍光分子(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)若しくはその増強変異体)、燐光分子(例えば、ユウロピウム-ドープ、ジスプロシウム-ドープ若しくはテルビウム-ドープされたオルトリン酸ルテチウム、アルミン酸ストロンチウム若しくはケイ酸マグネシウムストロンチウム、銅活性化硫化亜鉛、銀活性化硫化亜鉛、銅活性化硫化亜鉛カドミウム若しくはビスマス活性化硫化カルシウムストロンチウム)又は化学発光分子(例えば、セレンテラジン、ルシゲニン、ルシフェリン、ルシフェラーゼ若しくは色素と組み合わせたシュウ酸塩)となり得る。本開示の一実施形態によると、本生体分子は、治療剤に結合されたMycタグを備える。本開示の他の実施形態によると、本生体分子は、治療剤に結合されたHisタグを備える。本開示のさらに他の実施形態によると、本生体分子は、治療剤に結合されたMycタグ及びMycタグに結合されたHisタグを備える。
【0036】
ある実施例によると、生体分子は、融合タンパク質の形態である。これらの例では、シグナルペプチドは、合成ペプチドの発現又は分泌を指示又は増強するように、本開示の合成ペプチドの上流に配置されて接続されている。シグナルペプチドは、天然又は合成シグナルペプチドであり得る。特定の一例によると、シグナルペプチドは、マウス免疫グロブリン(IG)カッパに由来する。本開示の融合タンパク質は、順に、すなわちN末端からC末端に、シグナルペプチド、合成ペプチド、リンカー、治療剤、Mycタグ及びHisタグを備える。
【0037】
また、血栓又は血栓塞栓症関連疾患の治療に対する医薬品又は薬学的組成物の調製における本生体分子の使用も、ここに開示される。医薬品又は薬学的組成物は、本開示の生体分子と、生体分子が合成ペプチド及び合成ペプチドに結合された治療剤を備える薬学的に許容可能な賦形剤とを備える。好ましくは、治療剤は、抗凝固剤又は血栓溶解剤である。
【0038】
一般に、本生体分子は、医薬品又は薬学的組成物の総重量に基づいて、およそ0.01重量%から99.9重量%のレベルで医薬品又は薬学的組成物中に存在する。ある実施形態では、本生体分子は、医薬品又は薬学的組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%のレベルで医薬品又は薬学的組成物中に存在する。所定の実施形態では、本生体分子は、医薬品又は薬学的組成物の総重量に基づいて、少なくとも5重量%のレベルで医薬品又は薬学的組成物中に存在する。さらに他の実施形態では、本生体分子は、医薬品又は薬学的組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のレベルで医薬品又は薬学的組成物中に存在する。さらに他の実施形態では、本生体分子は、医薬品又は薬学的組成物の総重量に基づいて、少なくとも25重量%のレベルで医薬品又は薬学的組成物中に存在する。
【0039】
医薬品又は薬学的組成物は、投与の意図する経路に応じて異なるタイプの賦形剤又は担体を備え得る。本医薬品又は薬学的組成物は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、鼻腔内に、胸膜内に、気管内に、直腸内に、局所的に、筋肉内に、皮下に、小胞内に、心膜内に、眼内に、口内に、局所的に、局部的に、注入によって、吸入によって、点滴によって、局所潅流によって、粉末、クリーム、液体、エアロゾルなどのような任意の適切な形態で投与され得る。
【0040】
ある実施形態では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、経口投与用の固形投与形態である。そのような固形投与形態は、カプセル、サシェ、タブレット、ピル、甘味入りの錠剤、粉末又は顆粒であり得る。そのような形態では、上記の生体分子のような活性成分のいずれも、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と混合される。記載された固形投与形態のいずれも、腸溶コーティングなどのコーティング及びシェル並びに成分のいずれかの放出速度を変更するコーティングを選択的に含有し得る。そのようなコーティングの例は、当技術分野において周知である。一例では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、速放性タブレットなどのタブレットである。さらに他の例では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、持続放出形態に処方される。他の例では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、軟質及び硬質ゼラチンカプセルにカプセル化された粉末である。
【0041】
ある実施形態では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、経口投与用の液体投与形態である。液体製剤は、所望のpHを維持する緩衝剤をさらに含み得る。液体投与製剤は、軟質ゼラチンカプセル内に充填されてもよい。例えば、液体は、上記の生体分子のいずれか又は薬学的に許容可能なその誘導体、塩若しくは溶媒和物若しくはそれらの組合せを担持する溶液、懸濁液、乳濁液、マイクロ乳濁液、沈殿物又は任意の所望の溶液媒体を含み得る。液体は、放出に際して薬物含有乳濁液又は分散相を形成するように、上記の活性生体分子の溶解性を改善するように設計され得る。
【0042】
ある実施形態では、本開示の医薬品又は薬学的組成物は、皮下、ボーラス注入、筋肉内、腹腔内及び静脈内注入を含むがこれに限定されない注入による投与などの非経口投与に適した製剤である。医薬品又は薬学的組成物は、油性又は水性ビヒクルにおける等張性懸濁液、溶液又は乳濁液として処方されてもよく、懸濁剤、安定剤又は分散剤などの処方剤を含有し得る。あるいは、組成物は、使用前に滅菌発熱性物質除去蒸留水又は等張食塩水で粉末、結晶又は凍結乾燥固体などの乾燥形態で提供され得る。それらは、滅菌アンプル又はバイアルで提供され得る。
【0043】
本生体分子が静脈内、皮膚又は皮下注入により投与されるように処方される場合、ペプチドは発熱性物質除去による非経口的に許容可能な水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを適切に考慮してそのような非経口的に許容可能なポリペプチド溶液の調製は、当技術内のものである。静脈内、皮膚又は皮下注入のための好ましい医薬品又は薬学的組成物は、本生体分子に加えて、塩化ナトリウム液、リンゲル液、デキストロース液、デキストロース及び塩化ナトリウム液、乳酸リンゲル液、又は当技術で公知の他のビヒクルなどの等張性ビヒクルを含有すべきである。本発明の医薬品又は薬学的組成物はまた、安定化剤、防腐剤、緩衝剤、抗酸化剤又は当業者に公知の他の添加物を含有してもよい。本発明の医薬品又は薬学的組成物を用いる静脈内治療の継続期間は、治療されている疾患の深刻度、並びに各個々の被検体の状態及び潜在的な特異的な反応に応じて変わることになる。本生体分子の各適用の継続期間は連続静脈内投与の12~24時間の範囲となることが考慮される。最終的には、主治医が、静脈内治療の適切な継続期間を決定することになる。
【0044】
本生体分子はまた、局所的、組織的又は局部的に投与するのに適した生理学的に許容可能な形態に処方され得る。例えば、本生体分子は、インプラント又はデバイスの表面に塗布され得る。また、組成物は、望ましくは、血栓への送達のための粘稠性形態でカプセル化又は注入され得る。追加の有用な薬剤が、上述のように医薬品又は薬学的組成物に選択的に含まれてもよいし、発明の医薬品又は薬学的組成物とともに同時又は順次に投与されてもよい。
【0045】
本開示の他の態様は、合成ペプチド及びそれに結合された治療剤を備える本生体分子の使用による、それを必要とする被検体における血栓症又は血栓塞栓症関連疾患の、予防及び/又は治療の方法に関する。方法は、有効量の上記生体分子又はそれを備える医薬品若しくは医薬組成物を被検体に投与するステップを備える。
【0046】
本生体分子、薬学的組成物の医薬品の有効量は、特定の医療従事者の知識と専門性の範囲内で、治療される特定の状態、状態の重症度、(年齢、肉体的状態、サイズ、性別及び体重を含む)個々の患者のパラメータ、治療の継続期間、(それがある場合には)併用療法の性質、並びに特定の投与経路などの多数の要因で変化し得る。
【0047】
一実施形態では、被検体はマウスである。マウスにおける治療効果を引き出すように、1回の投与あたり体重につき約0.1~100mg/Kg(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、60、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100mg/Kg)の本生体分子が投与され、好ましくは、1回の投与あたり体重につき約0.5~50mg/Kg体重の本生体分子が投与され、さらに好ましくは、1回の投与あたり体重につき1~20mg/Kgの本生体分子が投与される。一実施例によると、被検体において、治療効果(例えば血栓の体積の減少又は血流の回復)を引き出すのに、1回の投与あたりKg体重あたり2~10mgの本生体分子で充分である。
【0048】
当業者は、動物モデルから決定される用量に基づいて、本生体分子のヒト等価用量(HED)を計算することができる。それにより、ヒト被検体における使用に適した本生体分子の有効量は、ヒトに対する1回の投与あたり体重につき10μg/Kg~10mg/Kg(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900若しくは950μg/Kg又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/Kg)の範囲であってもよく、好ましくは、1回の投与あたり体重につき50μg/Kg~5mg/Kgであってもよく、より好ましくは、有効HDEは、1回の投与あたり約100~1000μg/Kgである。
【0049】
理解されるように、本方法は、単独で又は血栓症若しくは血栓塞栓症関連疾患の予防若しくは治療に対してある有益な効果を有する追加の療法と組み合わせて被検体に適用することができる。意図される目的に応じて、本方法は、追加の療法の投与前、投与中又は投与後に被検体に適用可能である。
【0050】
血栓塞栓症関連疾患には、虚血性心疾患(例えば心筋梗塞)、四肢虚血、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓塞栓症(DVT)及び肺塞栓症(PE)を含むVTE)、動脈血栓塞栓症(ATE)、腫瘍症、溶血性貧血、炎症、敗血症、副腎皮質機能亢進症、脳血管疾患(例えば脳卒中)又は血栓症に関連する若しくは血栓症によって引き起こされる他の疾患若しくは状態が挙げられる。
【0051】
本開示の更なる態様は、合成ペプチド及びそれに結合されたレポーター分子を備える本生体分子の使用により、血栓又は塞栓の存在又は位置を、それを必要とする被検体(例えば血栓又は塞栓を有しているか又は有する疑いのある被検体)において特定する方法に関する。方法は、充分な量の上記生体分子を被検体に投与するステップと、レポーター分子のシグナルを検出することにより血栓又は塞栓の存在又は位置を特定するステップとを備える。
【0052】
本開示のある実施例によると、被検体はマウスであり、血栓の存在及び位置を特定するように、1回の投与あたり体重につき約1~20mg/Kgの本生体分子がマウスに投与される。当業者は、本出願の実施例において提供される動物研究から決定される用量に基づいて、本生体分子のHEDを容易に決定し得る。
【0053】
被検体は、マウス及びヒトに加えて、代替的に他の哺乳動物、例えば、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、サル及びウマであり得る。
【0054】
以下の実施例は、本発明の所定の態様を説明して本発明の実施の際に当業者を補助するために提供される。これらの実施例は、いかなる態様においても発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。更なる詳述なしに、当業者であれば、ここでの説明に基づいて本発明をその最大の範囲で利用することができるはずである。ここに引用される全ての刊行物は、その全体において参照によってここに取り込まれる。
【実施例】
【0055】
材料及び方法
ファージディスプレイバイオパニング
ヒト血栓は、約20年前に未固定の死体解剖の過程において死体から分離及び採取され、部分的血栓を粉末にしてから、2×1011個のファージとともに1%BSA含有PBSにおいて4℃で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、結合したファージを以降の選択ラウンドのために、血栓組織から溶出して大腸菌を使用して増幅した。溶出及び増幅されたファージを、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)及びX-Gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-D-ガラクトシド)を含有する溶原性ブロス(LB)培地プレートにおいて滴定した。血栓ELISAのスクリーニングのためにファージクローンをランダムに選択する前に、上記のバイオパニングのステップを5回繰り返した。
【0056】
ELISAによるファージの血栓結合活性のスクリーニング
コーティングバッファー中の粉砕ヒト血栓組織又はBSAを使用して、96ウェルのELISAプレートを一晩コーティングした。ブロッキングして洗浄した後、選択されたファージクローンを添加して、室温(RT)で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、各ウェルをホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識化マウスの抗M13抗体(1:2000希釈)で室温で1時間プローブ分析した。洗浄ステップを繰り返した後、プレートをELISA基質溶液と反応させた。反応を3N塩酸で停止させ、比色基質の吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して450nmで分析した。
【0057】
フローサイトメトリー分析
マウスの全血を採取し、HUVEC細胞(2×105~2×106個の細胞)を選択されたファージ(5×109~5×109pfu)とともに4℃で1時間インキュベートした。そして、サンプルを抗M13モノクローナル抗体とともに4℃で1時間インキュベートし、続いてFITC又はPE標識化抗マウスFab抗体(Abs)とともに4℃で30分間インキュベートした。蛍光プロファイルをフローサイトメトリーによって分析した。FITC及びPEを488nmレーザで励起し、蛍光発光を、それぞれグリーンチャネルフィルター(530/30)及びイエローチャネルフィルター(585/42)を使用して測定した。
【0058】
生体内ホーミング実験
マウスを麻酔し、10%FeCl3に浸漬された紙を右頸静脈に5~10分間挿入することにより血栓を誘発した。そして、マウスに5×109pfuのファージを静脈内注入した。10分間インキュベートした後、マウスを屠殺し、50mlのPBSで灌流して未結合のファージを除去した。臓器及び血栓を摘出し、サンプル中のファージをIPTG/X-Galプレート上の大腸菌細胞で力価測定した。さらに、血栓及び臓器を最適な切断温度(O.C.T.)コンパウンドに埋め込み、免疫組織化学用の切片を調製した。
【0059】
免疫組織化学的染色
生体内ファージホーミング実験からの組織サンプルをスライスしてスライド上に載置し、O.C.T.を除去し、1%BSAで30分間インキュベートして非特異的結合をブロックする前に、4%パラホルムアルデヒドでサンプルを固定した。洗浄した後、切片を1:250の希釈率でマウス抗M13抗体とともに1時間インキュベートし、続いてポリマーベースのSUPER SENSITIVE(登録商標)IHC検出システムで処置した。簡単に説明すると、切片をSuper Enhancer試薬で20分間及びポリ-HRP試薬で30分間インキュベートした。ペルオキシダーゼ活性を可視化するようにDABを色素原として使用し、サンプルをヘマトキシリンで対比染色し、封入剤で封入し、光学顕微鏡で検査した。
【0060】
tPA及びペプチド-tPA融合物の構築、発現及び精製
ヒト組換えtPA及びペプチド-融合tPAを発現ベクターにクローニングした。プラスミドを293細胞に個別にトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞を無血清培地において37℃で1週間継続的にインキュベートし、組換えタンパク質を生成した。次に、培養培地を回収し、遠心分離し、0.45μmの濾過膜に通した。上清中のタンパク質をカラムクロマトグラフィーによって精製した。生成物をPBSで透析した後、精製したタンパク質をクマシーブルー染色によるSDS-PAGEによって検査した。タンパク質濃度を評価した。
【0061】
tPA及び標的ペプチド-tPA融合物の活性
蛍光定量の動的なELISAにおいてtPAタンパク質活性を測定するために、アッセイバッファー(50mM Tris、0.01%Tween-20、pH8.5)において、5ng/μlのtPA又は標的ペプチド-tPA融合物を100μMのZ-Gly-Gly-Arg-AMCペプチド基質と混合した。酵素活性を380nm励起及び460nm発光での蛍光分光光度計によって測定した。
【0062】
血栓におけるtPA及び標的ペプチド-tPA融合物の局在性
50マイクログラムのtPA又は標的ペプチド-tPA融合物及び4nMのHILYTE FLUOR(登録商標)750を、接合を促進するように室温で45分間混合した。溶液を3.5-kDa-カットオフメンブレンにより4℃で一晩透析した。HILYTE FLUOR(登録商標)750標識化tPA又は標的ペプチド-tPA融合タンパク質を静脈内注入後の血栓を有するマウスにおいて、経時的な蛍光測定を行った。蛍光画像を、撮像システムを用いて撮影した。血栓におけるHILYTE FLUOR(登録商標)750の蓄積を、バックグラウンドの蛍光強度を減少させることによって定量化した。
【0063】
生体マウスの生体内赤外蛍光イメージング
50マイクログラムの血栓親和性ペプチド-tPAを4nMのHILYTE FLUOR(登録商標)750と混合し、接合を促進するように暗所において室温で45分間インキュベートした。過剰な色素を除去するように、3.5-kDa-カットオフメンブレンによって4℃で一晩透析を行った。HILYTE FLUOR(登録商標)750標識化融合タンパク質又はtPAを静脈内に注入した後、赤外蛍光画像の経時変化を取得した。HILYTE FLUOR(登録商標)750結合タンパク質の赤外蛍光画像を、撮像システムを用いて生体において撮影した。誘発された血栓におけるHILYTE FLUOR(登録商標)750蛍光シグナルの蓄積をソフトウェアによって定量化及び分析した。
【0064】
レーザードップラーフローメトリーによる血流の測定
マウスを37℃の加温パッド上に仰向けに載置し、イソフルランで麻酔した。tPA又は標的ペプチド-tPA融合物(2~10mg/kg)を注入する前に、右外頸静脈の血栓症における血流の測定を20分間行った。そして、tPA又は標的ペプチド-tPA融合物の注入の直前及び実験期間を通して、レーザードップラースキャナを使用して血流を評価した。
【0065】
エコーセンサによる血流の測定
右内頸動脈の血栓症の血流の測定を行った。外科的処置の前にマウスをアベルチンで麻酔し、イソフルランで維持した。tPA又は標的ペプチド-tPA融合物(2~10mg/kg)を注入する前及び実験期間を通してカラードップラーを行い、血流を分析した。
【0066】
MCAOモデル及び磁気共鳴画像法(MRI)
マウスMCAOモデルを、軽微な修正によって確立した。簡潔に説明すると、10週齢のC57BL/6マウスの体重を測定し、10%イソフルランで麻酔した。前頸部の皮膚を切開して、総頸動脈、内頸動脈及び外頸動脈を露出させ、そして迷走神経から分離した。総頸動脈分岐部の上流に血管クリップを載置し、内頸動脈上に小さな吸入口を作製した。ナイロン縫合糸を使用して中頸動脈を45分間閉塞し、その後縫合糸を除去した。モデルの成功はレーザードップラー流量計によって確認され、脳の内頸動脈の血流は30%以上減少した。マウスの脳を、水平ボアMRIシステムによって薬物送達後24時間で画像形成した。コントラストT2強調スピンエコー画像を撮影した(TR=400ms、TE=10.8ms、FOV=2×2cm、NEX=8、スライス厚0.8mm)。SNRを、ROI(平均画素強度)の信号をバックグラウンドノイズの標準偏差で除算することによって計算した。
【実施例1】
【0067】
実施例1 新規ペプチドの同定及び特徴付け
1.1 ファージディスプレイ技術による新規ペプチドの選択
血栓症を特異的に標的とするペプチドを同定するために、ファージディスプレイペプチドライブラリを採用して血栓に結合するペプチドを選択した。5ラウンドのバイオパニングの後、血栓結合ファージの力価は106倍まで増加した(
図1A)。バイオパニングの第5ラウンドからの72個のファージクローンのスクリーニングを行い、ファージクローンPC30、PC39、PC44、PC45及びPC66を、それらの比較的高い結合親和性に基づいて選択した(
図1B)。非血栓組織に非特異的に結合するペプチドの選択を回避するように、全血細胞及びHUVECをフローサイトメトリーによる対抗選択についての陰性対照物として使用した(データ不図示)。ELISAによる用量依存的結合の分析により、陰性対照物としてBSAの結合を用いて(
図1D)、ファージクローンPC30(FQNEWFHNFLHD;配列番号1)、PC39(TEANLSSWVFAR;配列番号2)及びPC66(LQKNPFDLVQIL;配列番号3)が最良の血栓特異的結合を示すことが明らかとなった(
図1C)。
【0068】
1.2 選択されたペプチドの結合活性の生体内検証
3つの選択されたファージの生体内での血栓結合を特徴付けるために、実施例1.1で選択されたファージを、右頸静脈に誘発された血栓を有するマウスに注入した(
図2A)。ELISA(
図2B)及びファージの力価アッセイ(
図2C)によって、誘発された血栓においてはファージが高度に蓄積されるが、脳、肺、心臓、肝臓及び腎臓などの臓器は非特異的なファージ結合が低いレベルを示すことが明らかとなった。免疫組織化学によって、選択されたファージは独占的に血栓に存在し、正常な臓器には検出されなかったことが確認された(
図3)。
【実施例2】
【0069】
実施例2 SP30/SP66-tPA融合タンパク質の生成及び特徴付け
2.1 融合タンパク質の調製
生体内において血栓へのtPAを特異的に標的とするために、この実施例において融合タンパク質を構築した。N末端からC末端に、融合物は、マウスIg kappaからの分泌シグナル、(PC30又はPC66からの)選択された血栓結合ペプチド、可動性グリシンリッチリンカー(GGGGS)、tPA、検出用のmycタグ及び精製用のHisタグを備えた。PC30及びPC66のファージクローンからの血栓標的ペプチドを、以下ではそれぞれSP30及びSP66という。
【0070】
発現及び精製後、融合タンパク質をゲル電気泳動によって特徴付けした。クマシーブルー染色(
図4のパネルA)及びtPA特異的な抗血清による免疫ブロッティング(
図4のパネルB)のデータは、2つの血栓特異的結合ペプチド融合タンパク質が電気泳動において可視的に相違なく同様に移動することを示した。
【0071】
次に、Z-Gly-Gly-Arg-AMC基質を用いた酵素活性アッセイを行い、血栓親和性ペプチドの添加がtPA活性を減少させないことを確認した。酵素活性アッセイによって、血栓結合ペプチドの添加がtPA活性に影響を及ぼさないことが明らかとなった(
図4CのパネルC)。
【0072】
2.2 生体内の血栓におけるSP30/SP66-tPAの生体内分布
この実施例では、生体マウスにおけるSP30/SP66-tPAの局在化及び局所濃度を直接モニタリングするように、赤外蛍光プローブ(HILYTE FLUOR(登録商標)750)をSP30-tPA及びSP66-tPAに接合させた。
【0073】
赤外蛍光のライブイメージャーの前に、誘発された血栓を有するマウスに、色素標識化SP30-tPA及びSP66-tPAを静脈内注入した(
図5A)。注入後のいくつかの時点で画像を取得した。(血栓結合ペプチドなしの)色素標識化tPAを陰性対照物として用いた。データは、tPA対照物は注入後5分で速やかに誘導された血栓に蓄積し、蛍光強度は1時間で50%低減したことを示した(
図5B)。これに対して、血栓結合ペプチド-tPA融合タンパク質を注入したマウスは、tPAと比較して注入後5分で2倍高い蛍光を有し、蛍光は注入1時間後にも同様に上昇したままであった(
図5B)。
【0074】
データは、SP30及びSP66標的ペプチドが血栓部位にtPAを集中及び維持するのに効果的な手段であることを示唆した。
【0075】
2.3 生体内MCAOマウスモデル
血栓結合ペプチド-tPA融合タンパク質が脳卒中疾患モデルにおいてtPAよりも血流を回復させるか否かを検査する目的のために、この実施例ではマウスMCAOモデルを採用した。MCAOを行い、マウスをtPA又はSP30/SP66-tPA融合タンパク質で処置した。薬物投与24時間後のMCAOマウスの脳のT2強調MRIによると、SP30-tPAを注入したマウスの脳梗塞の面積は、対照物(PBS)又はtPAのみを注入したこれらのマウスの脳梗塞の面積と比較して小さかった(
図6)。これらの結果は、血栓への標的tPAが脳卒中誘発性組織損傷に対するその効果を改善できることを示唆した。
【0076】
結論として、本開示は、FQNEWFHNFLHD(配列番号1)、TEANLSSWVFAR(配列番号2)及びLQKNPFDLVQIL(配列番号3)のアミノ酸配列をそれぞれ備える3つの新規ペプチドを提供する。本開示の実施例によると、各ペプチドは、血栓に特異的に結合することができ、したがって、治療剤(例えば、tPA)を血栓に送達することによって治療の安全性及び治療剤の有効性を改善する標的要素として作用し得る。
【0077】
実施形態の上記説明は例示のみのために与えられること及び種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。
【配列表】