(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】粘着シート接合体分離方法
(51)【国際特許分類】
C09J 5/00 20060101AFI20220222BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220222BHJP
【FI】
C09J5/00 ZAB
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020104849
(22)【出願日】2020-06-17
(62)【分割の表示】P 2015204996の分割
【原出願日】2015-10-16
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 香織
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 淳
(72)【発明者】
【氏名】長友 あや
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-129030(JP,A)
【文献】国際公開第2007/018239(WO,A1)
【文献】特開平10-147752(JP,A)
【文献】特開2010-037355(JP,A)
【文献】特開2014-189671(JP,A)
【文献】特開2000-319599(JP,A)
【文献】国際公開第2008/150227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体を含有する粘着剤層を有し第1導電性被着体と第2導電性被着体との間に介在して当該被着体どうしを接合する粘着シートにおいて、前記粘着剤層が当該第1および第2導電性被着体に貼着している状態で当該第1および第2導電性被着体を介して、前記粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように当該粘着剤層に電圧を印加しつつ、前記粘着剤層を前記第1導電性被着体および/または第2導電性被着体から剥離することで、前記二つの被着体を分離させる、粘着シート接合体分離方法であって、
前記電圧の印加時間は、60秒以内であり、
電圧の前記印加によって、前記粘着剤層のプラス極側表面でのアニオンの偏在よりもマイナス極側表面でのカチオンの偏在の方が先行して生じつつ、前記粘着剤層の両粘着面の接着力が低下することにより分離させる、
粘着シート接合体分離方法。
【請求項2】
イオン液体を含有する第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、並びに、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置して前記第1の粘着剤層と電気的に接続している導電層、を含む積層構造を有する粘着シートにおいて、
前記第1の粘着剤層が導電性被着体に貼着し且つ前記第2の粘着剤層が別の被着体に貼着している状態で、前記第1の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように前記導電性被着体および前記導電層を介して前記第1の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第1の粘着剤層を前記導電性被着体および/または前記導電層から剥離する、粘着シート接合体分離方法であって、
前記電圧の印加時間は、60秒以内であり、
電圧の前記印加によって、前記第1の粘着剤層のプラス極側表面でのアニオンの偏在よりもマイナス極側表面でのカチオンの偏在の方が先行して生じつつ、前記第1の粘着剤層の両粘着面の接着力が低下することにより分離させる、
粘着シート接合体分離方法。
【請求項3】
第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置する第1導電層および第2導電層、並びに、当該第1および第2導電層の間に位置し且つイオン液体を含有して当該第1および第2導電層と電気的に接続している第3の粘着剤層、を含む積層構造を有する粘着シートにおいて、
前記第1の粘着剤層が第1被着体に貼着し且つ前記第2の粘着剤層が第2被着体に貼着している状態で、前記第3の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように前記第1導電層および前記第2導電層を介して前記第3の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第3の粘着剤層を前記第1導電層および/または前記第2導電層から剥離する、粘着シート接合体分離方法であって、
前記電圧の印加時間は、60秒以内であり、
電圧の前記印加によって、前記第3の粘着剤層のプラス極側表面でのアニオンの偏在よりもマイナス極側表面でのカチオンの偏在の方が先行して生じつつ、前記第3の粘着剤層の両粘着面の接着力が低下することにより分離させる、
粘着シート接合体分離方法。
【請求項4】
前記イオン液体を含有する前記粘着剤層は、1~1000μmの厚さを有する、請求項1から3のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
【請求項5】
前記電圧は、1~100Vである、請求項1から4のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
【請求項6】
前記イオン液体を含有する前記粘着剤層は、前記イオン液体のアニオンとして、(FSO
2)
2N
-,(CF
3SO
2)
2N
-,(CF
3CF
2SO
2)
2N
-,(CF
3SO
2)
3C
-,CH
3COO
-,CF
3COO
-,CF
3CF
2CF
2COO
-,CF
3SO
3
-,CF
3(CF
2)
3SO
3
-,Br
-,AlCl
4
-,Al
2Cl
7
-,NO
3
-,BF
4
-,PF
6
-,AsF
6
-,SbF
6
-およびF(HF)
n
-からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1から
5のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
【請求項7】
前記イオン液体を含有する前記粘着剤層は、前記イオン液体のカチオンとして、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1から
6のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面粘着シートによって接合された被着体どうしを分離させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野において、部材間を接合するために、いわゆる両面粘着シートが利用されている。部材間接合用途の両面粘着シートの粘着剤層には、被着体たる部材に対して一定の接着力を発揮することが求められる。
【0003】
一方、例えば電子部品や電子装置の製造においては、製造される部品・装置に関する歩留まり向上等のためのリワーク技術や、一旦製造された部品・装置を分解してその構成部品を回収するためのリサイクル技術に対する、要望がある。このような要望の下では、例えば電子部品や電子装置の製造過程で部材間を接合するために両面粘着シートが利用される場合、当該粘着シートについては、部品・装置製造上のリワークやリサイクルを実施すべく接合部材間を分離できるように、被着体たる部材に対する粘着剤層の接着力を意図的に低下可能であることが求められる。粘着剤層の接着力を意図的に低下可能に構成された両面粘着シートとしては、例えば、加熱を経ると接着力が低下する粘着剤層を有する加熱剥離型両面粘着シートや、電圧印加を経ると接着力が低下する粘着剤層を有する電気剥離型両面粘着シートが、知られている。
【0004】
従来、電気剥離型両面粘着シートによって接合された部材間を分離するには、まず、当該粘着シートの電気剥離型の粘着剤層の組成や厚さに応じた所定電圧が当該粘着剤層に対して印加される。そして、電圧印加を停止した後、部材間が分離される。接合部材間についてこのような分離作業を実施するための電気剥離型両面粘着シートに関する技術については、例えば、下記の特許文献1および特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-037355号公報
【文献】特開2014-189671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気剥離型両面粘着シートないしその電気剥離型の粘着剤層の被着体に対する接着力は、粘着剤層に対する電圧印加を停止した後、時間の経過に伴って有意に上昇ないし回復する場合がある。このような接着力の上昇・回復は、当該粘着剤層の被着体からの剥離性を低下させ、ひいては、当該電気剥離型両面粘着シートによって接合された部材間の分離にとって障害となる場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、粘着シートを介して接合された被着体間の分離時に粘着シートについて高い剥離性を実現するのに適した粘着シート接合体分離方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面により提供される粘着シート接合体分離方法では、電解質を含有する粘着剤層を有し且つ二つの被着体の間に介在して当該被着体どうしを接合する粘着シート(両面粘着シート)において、前記の電解質含有粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように当該粘着剤層に電圧を印加しつつ、前記二つの被着体を分離させる。二つの被着体の間に介在して当該被着体どうしを接合する前記の粘着シートの電解質含有粘着剤層は、当該粘着シートによる二つの被着体の接合に寄与する層である。例えば、被着体間接合時の前記粘着シートの電解質含有粘着剤層は、一方の面の側で一方の被着体に貼着しているとともに前記一方の面とは反対の面の側で他方の被着体に貼着している。例えば、被着体間接合時の前記粘着シートは表面粘着剤層として電解質含有粘着剤層を含む積層構造を有し、且つ、当該電解質含有粘着剤層は一方の被着体に貼着している。例えば、被着体間接合時の前記粘着シートは、表面粘着剤層としての一対の粘着剤層と当該粘着剤層対の間に位置する中間粘着剤層としての電解質含有粘着剤層とを含む積層構造を有し、各表面粘着剤層が一の被着体に貼着しているとともに当該電解質含有粘着剤層が中間粘着剤層として両被着体間の接合状態の維持に寄与する。
【0009】
本方法においては、例えば上述のような構成を具備する粘着シート(両面粘着シート)の電解質含有粘着剤層に対し、当該粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように電圧が印加される。この電圧印加に起因して、電解質含有粘着剤層内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて当該粘着剤層の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、被着体等の他要素に対する当該粘着面の接着力が低下する。電圧印加に対する電解質の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、電解質含有粘着剤層ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。前記粘着シートの電解質含有粘着剤層の接着力が低下するほど、当該粘着シートによって接合状態が維持されていた二つの被着体の分離を促す当該粘着シートの剥離性は高くなる。そして、本方法では、電解質含有粘着剤層にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、当該粘着シートによって接合状態が実現されていた二つの被着体が、分離される。
【0010】
このような粘着シート接合体分離方法においては、電解質含有粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に被着体間の分離作業が行われるのではなく、電解質含有粘着剤層に対する電圧印加が維持された状態で被着体間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、電解質含有粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に当該粘着剤層の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートの剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0011】
以上のように、本発明の第1の側面に係る粘着シート接合体分離方法は、粘着シートを介して接合された被着体間の分離時に粘着シートについて高い剥離性を実現するのに適するのである。
【0012】
本発明の第1の側面において、好ましくは、粘着シートにおける粘着剤層が第1導電性被着体と第2導電性被着体との間に介在して当該第1および第2導電性被着体に貼着している状態で当該第1および第2導電性被着体を介して電圧を印加しつつ、粘着剤層を第1導電性被着体および/または第2導電性被着体から剥離する。本構成においては、電解質含有粘着剤層が粘着シートの両粘着面をなし、そのような電解質含有粘着剤層に対して第1および第2導電性被着体を介して適切に電圧を印加することが可能である。
【0013】
本発明の第2の側面により提供される粘着シート接合体分離方法では、電解質を含有する第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、並びに、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置して第1の粘着剤層と電気的に接続している導電層、を含む積層構造を有する粘着シートにおける、第1の粘着剤層が導電性被着体に貼着し且つ第2の粘着剤層が別の被着体に貼着している状態で、第1の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように導電性被着体および導電層を介して第1の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第1の粘着剤層を導電性被着体および/または導電層から剥離する。第1の粘着剤層(電解質含有粘着剤層)は粘着シートにおける一方の表面粘着剤層をなし、本方法では、そのような第1の粘着剤層に対して導電性被着体および導電層を介して電圧が印加される。
【0014】
このような粘着シート接合体分離方法においては、第1の粘着剤層(電解質含有粘着剤層)に対する電圧印加に起因して、第1の粘着剤層内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて当該粘着剤層の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、導電性被着体および/または導電層に対する当該粘着面の接着力が低下する。電圧印加に対する電解質の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、第1の粘着剤層ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。粘着シートの第1の粘着剤層の接着力が低下するほど、当該粘着シートによって接合状態が維持されていた二つの被着体の分離を促す当該粘着シートの剥離性は高くなる。そして、本方法では、第1の粘着剤層にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、当該粘着シートによって接合状態が実現されていた二つの被着体が、分離される。また、本方法では、第1の粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に被着体間の分離作業が行われるのではなく、第1の粘着剤層に対する電圧印加が維持された状態で被着体間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、第1の粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に当該粘着剤層の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートの剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0015】
以上のように、本発明の第2の側面に係る粘着シート接合体分離方法は、粘着シートを介して接合された被着体間の分離時に粘着シートについて高い剥離性を実現するのに適するのである。
【0016】
本発明の第3の側面により提供される粘着シート接合体分離方法では、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置する第1導電層および第2導電層、並びに、当該第1および第2導電層の間に位置し且つ電解質を含有して当該第1および第2導電層と電気的に接続している第3の粘着剤層、を含む積層構造を有する粘着シートにおける第1の粘着剤層が第1被着体に貼着し且つ第2の粘着剤層が第2被着体に貼着している状態で、第3の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように第1導電層および第2導電層を介して第3の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第3の粘着剤層を第1導電層および/または第2導電層から剥離する。第3の粘着剤層(電解質含有粘着剤層)は、粘着シートにおける第1および第2の粘着剤層の間に位置して被着体間接合状態の維持に寄与する中間粘着剤層をなし、本方法では、そのような第3の粘着剤層に対して第1および第2導電層を介して電圧が印加される。
【0017】
このような粘着シート接合体分離方法においては、第3の粘着剤層(電解質含有粘着剤層)に対する電圧印加に起因して、第3の粘着剤層内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて当該粘着剤層の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、第1導電層および/または第2導電層に対する当該粘着面の接着力が低下する。電圧印加に対する電解質の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、第3の粘着剤層ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。粘着シートの第3の粘着剤層の接着力が低下するほど、当該粘着シートによって接合状態が維持されていた二つの被着体の分離を促す当該粘着シートの剥離性は高くなる。そして、本方法では、第3の粘着剤層にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、当該粘着シートによって接合状態が実現されていた二つの被着体が、分離される。また、本方法では、第3の粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に被着体間の分離作業が行われるのではなく、第3の粘着剤層に対する電圧印加が維持された状態で被着体間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、第3の粘着剤層に対する電圧印加が停止された後に当該粘着剤層の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートの剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0018】
以上のように、本発明の第3の側面に係る粘着シート接合体分離方法は、粘着シートを介して接合された被着体間の分離時に粘着シートについて高い剥離性を実現するのに適するのである。
【0019】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電解質を含有する上記の粘着剤層は、1~1000μmの厚さを有する。このような構成は、電解質含有粘着剤層に対する印加電圧を低減するうえで好適である。
【0020】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電解質を含有する上記の粘着剤層に対する印加電圧は、1~100Vである。このような構成は、粘着シート接合体の分離作業を効率よく行ううえで好適である。例えば、このような構成によると、電圧印加手段として乾電池など入手しやすいものを用いることが可能である。
【0021】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電圧の印加時間は、60秒以内である。このような構成は、接合体分離作業の効率化を図るうえで好適である。
【0022】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電解質はイオン液体である。当該イオン液体を含有する粘着剤層は、イオン液体のアニオンとして、好ましくは、(FSO2)2N-,(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)3C-,CH3COO-,CF3COO-,CF3CF2CF2COO-,CF3SO3
-,CF3(CF2)3SO3
-,Br-,AlCl4
-,Al2Cl7
-,NO3
-,BF4
-,PF6
-,AsF6
-,SbF6
-およびF(HF)n
-からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。イオン液体を含有する粘着剤層は、イオン液体のカチオンとして、好ましくは、イミダゾリウム系カチオン、アンモニウム系カチオン、およびピリジニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する。これら構成は、電圧印加対象である電解質含有粘着剤層ないしイオン液体含有粘着剤層を有する粘着シートについて高い剥離性を実現するうえで、好適である。
【0023】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電解質を含有する上記の粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有する。このような構成は、電解質含有粘着剤層について良好な接着力を実現するうえで好適である。
【0024】
本発明の第1から第3の側面において、好ましくは、電解質を含有する上記の粘着剤層における電解質含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して0.5~30質量部である。このような構成は、電解質含有粘着剤層について、良好な接着力と電圧印加時の高い剥離性とをバランス良く実現するうえで好適である。
【0025】
好ましくは、上記のアクリル系ポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有するメタアルキル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニット、および、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含む。好ましくは、メタアルキル酸アルキルエステルは、ブチルメタアクリレートおよびイソノニルメタアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種である。好ましくは、極性基含有モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、およびビニル基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である。好ましくは、カルボキシル基含有モノマーはアクリル酸である。好ましくは、水酸基含有モノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレートである。これら構成は、電解質を含有する上記の粘着剤層について良好な接着力を実現するうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
【
図2】本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
【
図3】
図2に示される粘着シート接合体の端部の一例を表す断面図である。
【
図4】本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
【
図5】
図4に示される粘着シート接合体の端部の一例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
図1に示される粘着シート接合体は、粘着シートX1および被着体Y1,Y2を含む積層構造を有する。粘着シートX1は、電気剥離型両面粘着シートであって、粘着剤層11を有し、且つ、二つの被着体Y1,Y2の間に介在して被着体Y1,Y2どうしを接合する。
【0028】
粘着剤層11は、電気剥離型の粘着剤層であって、ポリマーおよび電解質を含有する。また、粘着剤層11は、一方の面の側で被着体Y1に貼着しているとともに他方の面の側で被着体Y2に貼着している。
【0029】
粘着剤層11に含有されるポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、およびエポキシ系ポリマーが挙げられる。本実施形態の粘着剤層11をなすためには、1種類のポリマーを用いてもよいし、2種以上のポリマーを用いてもよい。
【0030】
粘着剤層11に含有されるポリマーとしては、コストの抑制や高い生産性の実現という観点からは、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを、質量比で最も多い主たるモノマーユニットとして含む重合体である。以下では、「(メタ)アクリル」をもって、「アクリル」および/または「メタクリル」を表す。
【0031】
粘着剤層11がアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、好ましくは、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットを含む。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチルブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、およびn-テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、およびイソノニル(メタ)アクリレートが好ましい。粘着剤層11内のアクリル系ポリマーをなすためには、一種類の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いてもよい。
【0032】
上記のアクリル系ポリマーにおける、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットの割合は、粘着剤層11について高い接着力を実現するという観点からは、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。すなわち、上記のアクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、粘着剤層11について高い接着力を実現するという観点からは、好ましくは50質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0033】
粘着剤層11がアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、粘着剤層11について高い接着力を実現するという観点からは、好ましくは極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含む。当該極性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、およびビニル基含有モノマーが挙げられる。
【0034】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、およびカルボキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。粘着剤層11内のアクリル系ポリマーをなすためには、一種類のカルボキシル基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のカルボキシル基含有モノマーを用いてもよい。
【0035】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、およびジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。これらのうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。粘着剤層11内のアクリル系ポリマーをなすためには、一種類の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。
【0036】
ビニル基含有モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、およびラウリン酸ビニルが挙げられる。これらのうち、酢酸ビニルが好ましい。粘着剤層11内のアクリル系ポリマーをなすためには、一種類のビニル基含有モノマーを用いてもよいし、二種類以上のビニル基含有モノマーを用いてもよい。
【0037】
上記のアクリル系ポリマーにおける、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合は、粘着剤層11において凝集力を確保して粘着剤層11の剥離後の被着体表面での糊残りを防止するという観点からは、好ましくは0.1質量%以上である。すなわち、上記のアクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における極性基含有モノマーの割合は、当該凝集力確保および糊残りの防止という観点からは、好ましくは0.1質量%以上である。また、上記のアクリル系ポリマーにおける、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットの割合は、炭素数1~14のアルキル基を有する上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニットに起因する特性をアクリル系ポリマーにおいて適切に発現させるという観点からは、好ましくは30質量%以下である。すなわち、上記のアクリル系ポリマーを形成するための原料モノマーの総量における極性基含有モノマーの割合は、当該特性発現という観点からは、好ましくは30質量%以下である。
【0038】
以上のようなアクリル系ポリマーは、上記のモノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
【0039】
粘着剤層11におけるポリマーの含有量は、粘着剤層11において充分な接着力を実現するという観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0040】
粘着剤層11に含有される電解質は、アニオンとカチオンとに電離可能な物質であり、そのような電解質としては、イオン液体や、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。粘着剤層11において良好な電気剥離性を実現するという観点からは、粘着剤層11に含有される電解質としては、イオン液体が好ましい。イオン液体は、室温(約25℃)で液体の塩であってアニオンとカチオンとを含む。
【0041】
粘着剤層11がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のアニオンは、好ましくは、(FSO2)2N-,(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)3C-,Br-,AlCl4
-,Al2Cl7
-,NO3
-,BF4
-,PF6
-,CH3COO-,CF3COO-,CF3CF2CF2COO-,CF3SO3
-,CF3(CF2)3SO3
-,AsF6
-,SbF6
-およびF(HF)n
-からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【0042】
粘着剤層11がイオン液体を含有する場合、当該イオン液体のカチオンは、好ましくは、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【0043】
イミダゾリウム系カチオンとしては、例えば、1-メチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へプチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ノニル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ウンデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-トリデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ペンタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘプタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ウンデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、および1,3-ビス(ドデシル)イミダゾリウムカチオンが挙げられる。
【0044】
ピリジニウム系カチオンとしては、例えば、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、および1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオンが挙げられる。
【0045】
ピロリジニウム系カチオンとしては、例えば、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオンおよび1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオンが挙げられる。
【0046】
アンモニウム系カチオンとしては、例えば、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン、テトラデシトリヘキシルアンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、およびトリメチルアミノエチルアクリレートカチオンが挙げられる。
【0047】
粘着剤層11に含有されるイオン液体の市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「エレクセルAS-110」、「エレクセルMP-442」、「エレクセルIL-210」、「エレクセルMP-471」、「エレクセルMP-456」、および「エレクセルAS-804」が挙げられる。
【0048】
アルカリ金属塩としては、例えば、LiCl,Li2SO4,LiBF4,LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiCF3SO3,LiN(SO2CF3)2,LiN(SO2C2F5)2,LiC(SO2CF3)3,NaCl,Na2SO4,NaBF4,NaPF6,NaClO4,NaAsF6,NaCF3SO3,NaN(SO2CF3)2,NaN(SO2C2F5)2,NaC(SO2CF3)3,KCl,K2SO4,KBF4,KPF6,KClO4,KAsF6,KCF3SO3,KN(SO2CF3)2,KN(SO2C2F5)2およびKC(SO2CF3)3が挙げられる。
【0049】
粘着剤層11における電解質の含有量は、粘着剤層11において電気剥離性を付与するために例えば0.1質量%以上である。粘着剤層11において良好な電気剥離性を実現するという観点からは、粘着剤層11における電解質の含有量は、粘着剤層11内のポリマー100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。粘着剤層11について良好な接着力と電気剥離性とをバランス良く実現するという観点からは、粘着剤層11における電解質の含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0050】
粘着剤層11は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。そのような成分としては、例えば、粘着付与剤、シランカップリング剤、着色剤、顔料、染料、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状物、および箔状物が挙げられる。これら成分の含有量は、使用目的に応じて決定され、本発明の効果を損なわない範囲においてポリマー100質量部に対して例えば10質量部以下である。
【0051】
粘着シートX1の粘着剤層11の厚さは、粘着剤層11において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~1000μmである。粘着剤層11の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層11の厚さの上限は、より好ましくは500μm、より好ましくは100μm、より好ましくは30μmである。本実施形態では、粘着剤層11の厚さは粘着シートX1の厚さでもある。
【0052】
粘着シートX1においては、良好な接着力を実現するという観点から、その180°剥離粘着力(対SUS304板,引張速度300mm/分,剥離温度23℃)が0.1N/10mm以上に設定されるのが好ましい。180°剥離粘着力については、実施例に関して後述する方法によってJIS Z 0237に準じて測定することができる。
【0053】
以上のような構成の粘着シートX1は、例えば、粘着剤層11を形成するための粘着剤組成物を作製し、この粘着剤組成物を基材上に塗布し、塗布された粘着剤組成物を乾燥させることによって、製造することができる。
【0054】
被着体Y1,Y2は、それぞれ、導電性を有する被着体である。そのような導電性被着体の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、および、これらを含有する合金が挙げられる。
【0055】
本実施形態の粘着シート接合体分離方法では、電気剥離型の粘着剤層11を有し且つ二つの被着体Y1,Y2の間に介在して被着体Y1,Y2どうしを接合する粘着シートX1において、粘着剤層11の厚さ方向に電位差が生じるように粘着剤層11に電圧を印加しつつ、二つの被着体Y1,Y2を分離させる。粘着シートX1の粘着剤層11は、上述のように電解質を含有し且つ両被着体Y1,Y2に貼着しているところ、粘着剤層11に対する電圧の印加は、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一対の端子を被着体Y1,Y2に接触させて当該被着体Y1,Y2を介して適切に行うことが可能である。このような電圧印加に起因して、粘着剤層11内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて粘着剤層11の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、粘着剤層11の粘着面の接着力が低下する。粘着剤層11が電解質として上述のイオン液体を含有する場合、前記電圧印加によって、粘着剤層11内のイオン液体のカチオンおよびアニオンにおいて配向変化や層の厚さ方向への移動が生じる。カチオンは電位の低いマイナス極の側に移動し、アニオンは電位の高いプラス極の側に移動する。イオン液体においては、アニオンよりもカチオンの方が拡散係数が大きくて速く移動する傾向があるところ、イオン液体を含有する粘着剤層11に対する電圧印加によって、粘着剤層11のプラス極側表面での組成変化(アニオンの偏在)よりもマイナス極側表面での組成変化(カチオンの偏在)の方が先行して生じつつ、粘着剤層11の両粘着面の接着力は低下する。電圧印加に対する電解質ないしイオン液体の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、粘着剤層11ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。粘着シートX1の粘着剤層11の接着力が低下するほど、粘着シートX1によって接合状態が維持されていた二つの被着体Y1,Y2の分離を促す粘着シートX1の剥離性は高くなる。そして、本方法では、粘着剤層11にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、粘着剤層11を被着体Y1および/または被着体Y2から剥離する。このようにして、粘着シートX1によって接合状態が実現されていた二つの被着体Y1,Y2が、分離される。
【0056】
粘着剤層11に対する印加電圧は、好ましくは1~100Vである。当該電圧の下限は、より好ましくは3V、より好ましくは6Vである。当該電圧の上限は、より好ましくは50V、より好ましくは30V、より好ましくは15Vである。このような構成は、粘着シート接合体の分離作業を効率よく行ううえで好適である。例えば、このような構成によると、電圧印加デバイスの電源として乾電池など入手しやすいものを用いることが可能である。また、粘着剤層11に対する電圧の印加時間は、好ましくは60秒以内、より好ましくは40秒以内、より好ましくは20秒以内である。このような構成は、接合体分離作業の効率化を図るうえで好適である。これら好ましい印加電圧や好ましい印加時間に関する構成は、後述の実施形態においても同様である。
【0057】
このような粘着シート接合体分離方法においては、粘着剤層11に対する電圧印加が停止された後に被着体Y1,Y2間の分離作業が行われるのではなく、粘着剤層11に対する電圧印加が維持された状態で被着体Y1,Y2間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、粘着剤層11に対する電圧印加が停止された後に粘着剤層11の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートX1の剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0058】
以上のように、本実施形態の粘着シート接合体分離方法は、粘着シートX1を介して接合された被着体Y1,Y2間の分離時に粘着シートX1について高い剥離性を実現するのに適するのである。
【0059】
図2は、本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
図2に示される粘着シート接合体は、粘着シートX2および被着体Y3,Y4を含む積層構造を有する。粘着シートX2は、電気剥離型両面粘着シートであって、粘着剤層12と、粘着剤層21と、これらの間の通電用基材30とを含む積層構造を有し、且つ、二つの被着体Y3,Y4の間に介在して被着体Y3,Y4どうしを接合する。
【0060】
粘着剤層12は、電気剥離型の粘着剤層であって、ポリマーおよび電解質を含有する。また、粘着剤層12は、一方の面の側で被着体Y3に貼着しているとともに他方の面の側で通電用基材30に貼着している。粘着剤層12に含有される成分とその含有量については、粘着剤層11に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。粘着剤層12の厚さは、粘着剤層12において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~1000μmである。粘着剤層12の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層12の厚さの上限は、より好ましくは500μm、より好ましくは100μm、より好ましくは30μmである。
【0061】
粘着剤層21は、粘着剤層21にて粘着性を発現させるためのポリマーを含有する。また、粘着剤層21は、一方の面の側で被着体Y4に貼着しているとともに他方の面の側で通電用基材30に貼着している。粘着剤層21に含有される成分とその含有量については、電解質の点の除き、粘着剤層11に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。粘着剤層21の厚さは、粘着剤層21において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~2000μmである。粘着剤層21の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層21の厚さの上限は、より好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、より好ましくは100μmである。
【0062】
通電用基材30は、本実施形態では、基材31と導電層32とを含む積層構造を有する。基材31は、支持体として機能する部位であり、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材、または紙系基材である。導電層32は、導電性を有する層であり、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。導電層32の厚さは、例えば10~1000μmである。このような導電層32は、基材31上においてメッキ法、化学蒸着法、またはスパッタリング法によって形成することができる。通電用基材30の当該導電層32の側に上述の粘着剤層12は貼着し、粘着剤層12と導電層32とは電気的に接続している。本実施形態の通電用基材30は、例えば
図3に示すように、その面広がり方向において粘着剤層12,21よりも延びて露出する延出部30aを有する。このような構成においては、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一方の端子と通電用基材30ないし導電層32との電気的接続について、延出部30aを介して実現しやすい。また、本実施形態において、通電用基材30は、基材31と導電層32とを含む積層構造を有するのに代えて、導電性の基材であってもよい。そのような通電用基材30は、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。以上のような構成の通電用基材30の厚さは、例えば10~1000μmであり、好ましくは30~500μmであり、より好ましくは50~300μmである。
【0063】
粘着シートX2においては、良好な接着力を実現するという観点から、その180°剥離粘着力(対SUS304板,引張速度300mm/分,剥離温度23℃)が0.1N/10mm以上に設定されるのが好ましい。180°剥離粘着力については、実施例に関して後述する方法によってJIS Z 0237に準じて測定することができる。
【0064】
以上のような構成の粘着シートX2の製造においては、例えば、まず、粘着剤層12を形成するための粘着剤組成物(第1組成物)、および、粘着剤層21を形成するための粘着剤組成物(第2組成物)を、それぞれ作製する。次に、第1組成物を通電用基材30の導電層32の側に塗布してこれを乾燥させる。これによって粘着剤層12が形成される。次に、第2組成物を通電用基材30の基材31の側に塗布してこれを乾燥させる。これによって粘着剤層21が形成される。例えばこのようにして、粘着シートX2を製造することができる。
【0065】
被着体Y3は、導電性を有する被着体である。そのような導電性被着体の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、および、これらを含有する合金が挙げられる。これに対し、被着体Y4は、導電性被着体であってもよいし、非導電性被着体であってもよい。
【0066】
本実施形態の粘着シート接合体分離方法では、電気剥離型の粘着剤層12を有し且つ二つの被着体Y3,Y4の間に介在して被着体Y3,Y4どうしを接合する粘着シートX2において、粘着剤層12の厚さ方向に電位差が生じるように粘着剤層12に電圧を印加しつつ、二つの被着体Y3,Y4を分離させる。粘着シートX2の粘着剤層12は、電解質を含有し且つ被着体Y3と通電用基材30の導電層32とに貼着しているところ、粘着剤層12に対する電圧の印加は、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一対の端子を被着体Y3と導電層32に接触させて当該被着体Y3と導電層32を介して適切に行うことが可能である。この電圧の印加は、例えば、電圧印加デバイスにおけるマイナス極端子を被着体Y3に接触させ且つプラス極端子を導電層32に接触させて、行う。このような電圧印加に起因して、粘着剤層12内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて粘着剤層12の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、粘着剤層12の粘着面の接着力が低下する。粘着剤層12が電解質として上述のイオン液体を含有する場合、前記電圧印加によって、粘着剤層12内のイオン液体のカチオンおよびアニオンにおいて配向変化や層の厚さ方向への移動が生じる。カチオンは電位の低いマイナス極の側に移動し、アニオンは電位の高いプラス極の側に移動する。イオン液体においては、上述のようにアニオンよりもカチオンの方が拡散係数が大きくて速く移動する傾向があるところ、イオン液体を含有する粘着剤層12に対する電圧印加によって、粘着剤層12のプラス極側表面での組成変化(アニオンの偏在)よりもマイナス極側表面での組成変化(カチオンの偏在)の方が先行して生じつつ、粘着剤層12の両粘着面の接着力は低下する。電圧印加に対する電解質ないしイオン液体の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、粘着剤層12ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。粘着シートX2の粘着剤層12の接着力が低下するほど、粘着シートX2によって接合状態が維持されていた二つの被着体Y3,Y4の分離を促す粘着シートX2の剥離性は高くなる。そして、本方法では、粘着剤層12にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、粘着剤層12を被着体Y3および/または通電用基材30(導電層32)から剥離する。このようにして、粘着シートX2によって接合状態が実現されていた二つの被着体Y3,Y4が、分離される。
【0067】
このような粘着シート接合体分離方法においては、粘着剤層12に対する電圧印加が停止された後に被着体Y3,Y4間の分離作業が行われるのではなく、粘着剤層12に対する電圧印加が維持された状態で被着体Y3,Y4間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、粘着剤層12に対する電圧印加が停止された後に粘着剤層12の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートX2の剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態の粘着シート接合体分離方法は、粘着シートX2を介して接合された被着体Y3,Y4間の分離時に粘着シートX2について高い剥離性を実現するのに適するのである。
【0069】
図4は、本発明の一の実施形態に係る粘着シート接合体分離方法が実施される粘着シート接合体の断面構成図である。
図4に示される粘着シート接合体は、粘着シートX3および被着体Y5,Y6を含む積層構造を有する。粘着シートX3は、電気剥離型両面粘着シートであって、粘着剤層13、粘着剤層22,23、および通電用基材40,50を含む積層構造を有し、且つ、二つの被着体Y5,Y6の間に介在して被着体Y5,Y6どうしを接合する。
【0070】
粘着剤層13は、電気剥離型の粘着剤層であって、ポリマーおよび電解質を含有する。また、粘着剤層13は、一方の面の側で通電用基材40に貼着しているとともに他方の面の側で通電用基材50に貼着している。粘着剤層13に含有される成分とその含有量については、粘着剤層11に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。粘着剤層13の厚さは、粘着剤層13において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~1000μmである。粘着剤層13の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層13の厚さの上限は、より好ましくは500μm、より好ましくは100μm、より好ましくは30μmである。
【0071】
粘着剤層22は、粘着剤層22にて粘着性を発現させるためのポリマーを含有する。また、粘着剤層22は、一方の面の側で被着体Y5に貼着しているとともに他方の面の側で通電用基材40に貼着している。粘着剤層22に含有される成分とその含有量については、電解質の点の除き、粘着剤層11に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。粘着剤層22の厚さは、粘着剤層22において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~2000μmである。粘着剤層22の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層22の厚さの上限は、より好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、より好ましくは100μmである。
【0072】
粘着剤層23は、粘着剤層23にて粘着性を発現させるためのポリマーを含有する。また、粘着剤層23は、一方の面の側で被着体Y6に貼着しているとともに他方の面の側で通電用基材50に貼着している。粘着剤層23に含有される成分とその含有量については、電解質の点の除き、粘着剤層11に含有される成分とその含有量に関して上述したのと同様である。粘着剤層23の厚さは、粘着剤層23において良好な粘着性を実現するという観点から、好ましくは1~2000μmである。粘着剤層23の厚さの下限は、より好ましくは3μm、より好ましくは5μm、より好ましくは8μmである。粘着剤層23の厚さの上限は、より好ましくは1000μm、より好ましくは500μm、より好ましくは100μmである。
【0073】
通電用基材40は、本実施形態では、基材41と導電層42とを含む積層構造を有する。基材41は、支持体として機能する部位であり、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材、または紙系基材である。導電層42は、導電性を有する層であり、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。導電層42の厚さは、例えば10~1000μmである。このような導電層42は、基材41上においてメッキ法、化学蒸着法、またはスパッタリング法によって形成することができる。通電用基材40の当該導電層42の側に上述の粘着剤層13は貼着し、粘着剤層13と導電層42とは電気的に接続している。本実施形態の通電用基材40は、例えば
図5に示すように、その面広がり方向において粘着剤層13,22よりも延びて露出する延出部40aを有する。このような構成においては、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一方の端子と通電用基材40ないし導電層42との電気的接続について、延出部40aを介して実現しやすい。また、本実施形態において、通電用基材40は、基材41と導電層42とを含む積層構造を有するのに代えて、導電性の基材であってもよい。そのような通電用基材40は、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。以上のような構成の通電用基材40の厚さは、例えば10~1000μmであり、好ましくは30~500μmであり、より好ましくは50~300μmである。
【0074】
粘着シートX3においては、良好な接着力を実現するという観点から、その180°剥離粘着力(対SUS304板,引張速度300mm/分,剥離温度23℃)が0.1N/10mm以上に設定されるのが好ましい。180°剥離粘着力については、実施例に関して後述する方法によってJIS Z 0237に準じて測定することができる。
【0075】
通電用基材50は、本実施形態では、基材51と導電層52とを含む積層構造を有する。基材51は、支持体として機能する部位であり、例えば、プラスチック系基材、繊維系基材、または紙系基材である。導電層52は、導電性を有する層であり、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。導電層52の厚さは、例えば10~1000μmである。このような導電層52は、基材51上においてメッキ法、化学蒸着法、またはスパッタリング法によって形成することができる。通電用基材50の当該導電層52の側に上述の粘着剤層13は貼着し、粘着剤層13と導電層52とは電気的に接続している。本実施形態の通電用基材50は、例えば
図5に示すように、その面広がり方向において粘着剤層13,23よりも延びて露出する延出部50aを有する。このような構成においては、電圧印加デバイスの一方の端子と通電用基材50ないし導電層52との電気的接続について、延出部50aを介して実現しやすい。そして、粘着剤層13,23からの延出部50aの延び方向と、粘着剤層13,22からの上述の延出部40aの延び方向とは、異なり、本実施形態では反対方向である。このような構成によると、電圧印加デバイスによる粘着シートX3ないし粘着剤層13に対する電圧印加を、例えばデバイス端子間の短絡を避けつつ、適切に行いやすい。また、本実施形態において、通電用基材50は、基材51と導電層52とを含む積層構造を有するのに代えて、導電性の基材であってもよい。そのような通電用基材50は、例えば、金属や導電性ポリマーよりなる。以上のような構成の通電用基材50の厚さは、例えば10~1000μmであり、好ましくは30~500μmであり、より好ましくは50~300μmである。
【0076】
以上のような構成の粘着シートX3の製造においては、例えば、まず、粘着剤層13を形成するための粘着剤組成物(第1組成物)、粘着剤層22を形成するための粘着剤組成物(第2組成物)、および、粘着剤層23を形成するための粘着剤組成物(第3組成物)を、それぞれ作製する。次に、第2組成物を通電用基材40の基材41の側に塗布してこれを乾燥させる。これによって粘着剤層22が形成される。次に、第3組成物を通電用基材50の基材51の側に塗布してこれを乾燥させる。これによって粘着剤層23が形成される。次に、粘着剤層22を伴う通電用基材40の導電層42の側に第1組成物を塗布した後、粘着剤層23を伴う通電用基材50を、その導電層52が第1組成物塗膜に接するように第1組成物塗膜上に積層する。この後、通電用基材40,50間で第1組成物塗膜を乾燥させる。例えばこのようにして、粘着シートX3を製造することができる。
【0077】
被着体Y5,Y6は、導電性被着体であってもよいし、非導電性被着体であってもよい。
【0078】
本実施形態の粘着シート接合体分離方法では、電気剥離型の粘着剤層13を有し且つ二つの被着体Y5,Y6の間に介在して被着体Y5,Y6どうしを接合する粘着シートX3において、粘着剤層13の厚さ方向に電位差が生じるように粘着剤層13に電圧を印加しつつ、二つの被着体Y5,Y6を分離させる。粘着シートX3の粘着剤層13は、電解質を含有し且つ通電用基材40の導電層42と通電用基材50の導電層52とに貼着しているところ、粘着剤層13に対する電圧の印加は、電圧印加デバイスないし直流電源デバイスの一対の端子を導電層42,52に接触させて当該導電層42,52を介して適切に行うことが可能である。このような電圧印加に起因して、粘着剤層13内の電解質において配向変化や層の厚さ方向への移動が生じて粘着剤層13の表面(粘着面)の組成が変化し、これによって、粘着剤層13の粘着面の接着力が低下する。粘着剤層13が電解質として上述のイオン液体を含有する場合、前記電圧印加によって、粘着剤層13内のイオン液体のカチオンおよびアニオンにおいて配向変化や層の厚さ方向への移動が生じる。カチオンは電位の低いマイナス極の側に移動し、アニオンは電位の高いプラス極の側に移動する。イオン液体においては、上述のようにアニオンよりもカチオンの方が拡散係数が大きくて速く移動する傾向があるところ、イオン液体を含有する粘着剤層13に対する電圧印加によって、粘着剤層13のプラス極側表面での組成変化(アニオンの偏在)よりもマイナス極側表面での組成変化(カチオンの偏在)の方が先行して生じつつ、粘着剤層13の両粘着面の接着力は低下する。電圧印加に対する電解質ないしイオン液体の配向変化や移動の応答速度によっては、電圧印加の開始からの時間が長いほど、粘着剤層13ないしその粘着面の接着力は、より低下する傾向を示す。粘着シートX3の粘着剤層13の接着力が低下するほど、粘着シートX3によって接合状態が維持されていた二つの被着体Y5,Y6の分離を促す粘着シートX3の剥離性は高くなる。そして、本方法では、粘着剤層13にこのような接着力の低下をもたらす電圧印加が維持された状態で、粘着剤層13を通電用基材40(導電層42)および/または通電用基材50(導電層52)から剥離する。このようにして、粘着シートX3によって接合状態が実現されていた二つの被着体Y5,Y6が、分離される。
【0079】
このような粘着シート接合体分離方法においては、粘着剤層13に対する電圧印加が停止された後に被着体Y5,Y6間の分離作業が行われるのではなく、粘着剤層13に対する電圧印加が維持された状態で被着体Y5,Y6間の分離作業が行われる。そのため、本方法によると、粘着剤層13に対する電圧印加が停止された後に粘着剤層13の一旦低下した接着力が上昇ないし回復して粘着シートX3の剥離性が低下するという現象が生じるのを、回避することが可能である。
【0080】
以上のように、本実施形態の粘着シート接合体分離方法は、粘着シートX3を介して接合された被着体Y5,Y6間の分離時に粘着シートX3について高い剥離性を実現するのに適するのである。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0082】
〔ポリマー溶液の調製例1〕
攪拌機、環流冷却器、温度計、滴下装置、および窒素導入管を備えたフラスコ内に、n-ブチルアクリレート(BA)95質量部と、アクリル酸(AA)5質量部と、重合溶媒たる酢酸エチル150質量部とを投入した。そして、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら前記投入成分を室温で1時間攪拌し、これによって反応系内の酸素を除去した。次に、フラスコ内に重合開始剤たる2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えた後、63℃に昇温し、6時間、重合反応を行った。反応停止後、フラスコ内に酢酸エチルを加え、固形分濃度40質量%でアクリル系ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液P1)を得た。ポリマー溶液P1中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は50万であった。
【0083】
〔ポリマー溶液の調製例2〕
攪拌機、環流冷却器、温度計、滴下装置、および窒素導入管を備えたフラスコ内に、イソノニルアクリレート(iNA)80質量部と、2-メトキシエチルアクリレート(MEA)15質量部と、アクリル酸(AA)5質量部と、重合溶媒たる酢酸エチル150質量部とを投入した。そして、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら前記投入成分を室温で1時間攪拌し、これによって反応系内の酸素を除去した。次に、フラスコ内に重合開始剤たる2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えた後、63℃に昇温し、6時間、重合反応を行った。反応停止後、フラスコ内に酢酸エチルを加え、固形分濃度40質量%でアクリル系ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液P2)を得た。ポリマー溶液P2中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は60万であった。
【0084】
〔ポリマー溶液の調製例3〕
攪拌機、環流冷却器、温度計、滴下装置、および窒素導入管を備えたフラスコ内に、n-ブチルアクリレート(BA)80質量部と、酢酸ビニル(VAc)15質量部と、アクリル酸(AA)5質量部と、重合溶媒たる酢酸エチル150質量部とを投入した。そして、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら前記投入成分を室温で1時間攪拌し、これによって反応系内の酸素を除去した。次に、フラスコ内に重合開始剤たる2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えた後、63℃に昇温し、6時間、重合反応を行った。反応停止後、フラスコ内に酢酸エチルを加え、固形分濃度40質量%でアクリル系ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液P3)を得た。ポリマー溶液P3中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万であった。
【0085】
〔ポリマー溶液の調製例4〕
攪拌機、環流冷却器、温度計、滴下装置、および窒素導入管を備えたフラスコ内に、n-ブチルアクリレート(BA)70質量部と、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)25質量部と、アクリル酸(AA)5質量部と、重合溶媒たる酢酸エチル150質量部とを投入した。そして、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら前記投入成分を室温で1時間攪拌し、これによって反応系内の酸素を除去した。次に、フラスコ内に重合開始剤たる2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を加えた後、63℃に昇温し、6時間、重合反応を行った。反応停止後、フラスコ内に酢酸エチルを加え、固形分濃度40質量%でアクリル系ポリマーを含む溶液(ポリマー溶液P4)を得た。ポリマー溶液P4中のアクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万であった。
【0086】
〔粘着シートの作製例1〕
上記のポリマー溶液P1(BAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)に対し、ポリマー溶液P1中のアクリル系ポリマーを100質量部として5質量部のイオン液体(商品名「エレクセルAS-110」,カチオン;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)を加えて混合し、粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を、表面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレートセパレーター(商品名「MRF38」,三菱樹脂株式会社製)の剥離処理面上に、アプリケータを使用して塗布し、粘着剤組成物の塗膜を形成した。この後、この塗膜を130℃で3分間の加熱乾燥に付して厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS1を作製した。
【0087】
〔粘着シートの作製例2〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「エレクセルMP-442」,カチオン;グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS2を作製した。
【0088】
〔粘着シートの作製例3〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「エレクセルIL-210」,カチオン;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン,アニオン;(CF3SO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS3を作製した。
【0089】
〔粘着シートの作製例4〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」,カチオン;1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン,アニオン;(CF3SO2)2N-,関東化学株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS4を作製した。
【0090】
〔粘着シートの作製例5〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「エレクセルMP-471」,カチオン;トリメチルアミノエチルアクリレートカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS5を作製した。
【0091】
〔粘着シートの作製例6〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「CIL-312」,カチオン;1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン,アニオン;(CF3SO2)2N-,日本カーリット株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS6を作製した。
【0092】
〔粘着シートの作製例7〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート」,カチオン;1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン,アニオン;BF4
-,関東化学株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS7を作製した。
【0093】
〔粘着シートの作製例8〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド」,カチオン;1-ヘキシルピリジニウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS8を作製した。
【0094】
〔粘着シートの作製例9〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「エレクセルMP-456」,カチオン;メチルトリオクチルアンモニウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS9を作製した。
【0095】
〔粘着シートの作製例10〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」)5質量部に代えて別のイオン液体(商品名「エレクセルAS-804」,カチオン;1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン,アニオン;(FSO2)2N-,第一工業製薬株式会社製)5質量部を配合して粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS10を作製した。
【0096】
〔粘着シートの作製例11~15〕
イオン液体(商品名「エレクセルAS-110」,第一工業製薬株式会社製)の配合量を5質量部に代えて1質量部(作製例11)、2質量部(作製例12)、3質量部(作製例13)、4質量部(作製例14)、または10質量部(作製例15)として粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS11,S12,S13,S14,S15をそれぞれ作製した。
【0097】
〔粘着シートの作製例16〕
ポリマー溶液P1(BAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)に代えてポリマー溶液P2(iNAとMEAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)を用いて粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS16を作製した。
【0098】
〔粘着シートの作製例17〕
ポリマー溶液P1(BAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)に代えてポリマー溶液P3(BAとVAcとAAとHEAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)を用いて粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS17を作製した。
【0099】
〔粘着シートの作製例18〕
ポリマー溶液P1(BAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)に代えてポリマー溶液P4(BAと2EHAとAAとの共重合体たるアクリル系ポリマーを含有する)を用いて粘着剤組成物を調製したこと以外は上記の作製例1と同様にして、厚さ30μmの粘着剤層を形成し、両面粘着シートS18を作製した。
【0100】
〈初期接着力〉
上述のようにして作製される両面粘着シートS1~S18のそれぞれについて、次のようにして、被着体に対する初期接着力を測定した。まず、幅10mmかつ長さ100mmのサイズに切り出した導電層付きフィルム(商品名「BR1075」,東レフィルム加工株式会社製)と測定対象の両面粘着シート(幅10mm×長さ80mm)とを貼り合せてなる積層構造を有する試験片(導電層付きフィルムと両面粘着シートとの重なりサイズ;幅10mm×長さ80mm)を用意した。次に、当該試験片を被着体たるステンレス板(SUS304,幅30mm×長さ120mm)に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させることによって試験片と被着体とを圧着させた。そして、30分間静置した後、剥離試験機(商品名「変角ピール測定機YSP」,旭精工株式会社製)を使用して、180°剥離粘着力(引張速度:300mm/分,剥離温度23℃)を測定した。
【0101】
〔実施例1~18〕
上述のようにして作製される両面粘着シートS1~S18のそれぞれについて、次のようにして、被着体から剥離するのに必要な剥離力を測定した。まず、幅10mmかつ長さ100mmのサイズに切り出した導電層付きフィルム(商品名「BR1075」,東レフィルム加工株式会社製)と測定対象の両面粘着シート(幅10mm×長さ80mm)とを貼り合せてなる積層構造を有する試験片(導電層付きフィルムと両面粘着シートとの重なりサイズ;幅10mm×長さ80mm)を用意した。次に、当該試験片を被着体たるステンレス板(SUS304,幅30mm×長さ120mm)に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させることによって試験片と被着体とを圧着させた。そして、30分間静置した後、直流電流デバイスにおけるマイナス極をステンレス板に取り付け且つプラス極を試験片の導電層付きフィルムに取り付けた状態で、両面粘着シートの粘着剤層に10Vの電圧を印加した。電圧印加の開始から30秒経過後、当該電圧を印加しつつ、剥離試験機(商品名「変角ピール測定機YSP」,旭精工株式会社製)を使用して、180°剥離粘着力(引張速度:300mm/分,剥離温度23℃)を剥離力(N/10mm)として測定した。測定結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例1~6〕
上述のようにして作製される両面粘着シートS5~S10のそれぞれについて、次のようにして、被着体から剥離するのに必要な剥離力を測定した。まず、幅10mmかつ長さ100mmのサイズに切り出した導電層付きフィルム(商品名「BR1075」,東レフィルム加工株式会社製と測定対象の両面粘着シート(幅10mm×長さ80mm)とを貼り合せてなる積層構造を有する試験片(導電層付きフィルムと両面粘着シートとの重なりサイズ;幅10mm×長さ80mm)を用意した。次に、当該試験片を被着体たるステンレス板(SUS304,幅30mm×長さ120mm)に貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させることによって試験片と被着体とを圧着させた。そして、30分間静置した後、直流電流デバイスにおけるマイナス極をステンレス板に取り付け且つプラス極を試験片の導電層付きフィルムに取り付けた状態で、両面粘着シートの粘着剤層に10Vの電圧を印加した。電圧印加の開始から30秒経過後に電圧印加を停止し、当該停止から10秒後に、剥離試験機(商品名「変角ピール測定機YSP」,旭精工株式会社製)を使用して、180°剥離粘着力(引張速度:300mm/分,剥離温度23℃)を剥離力(N/10mm)として測定した。測定結果を表1に示す。
【0103】
[評価]
実施例1~18の粘着シート接合体分離方法は、被着体間の接合に寄与している電気剥離型の粘着剤層に対して電圧を印加しつつ被着体間の分離を図る方法である。このような方法によると、電気剥離型粘着剤層に対する電圧印加を停止した後に被着体間の分離を図る比較例1~6の方法よりも、有意に小さな剥離力をもって被着体間の分離を図ることができる傾向にあると評価できる。実施例1~6,8,13~17の方法においては、測定された剥離力は0N/10mmである。また、実施例5~10の方法と比較例1~6の方法との比較から、同じ構成の電気剥離型両面粘着シートにおいて、電気剥離型粘着剤層の接着力は、電圧印加中に示す値よりも、電圧印加停止後に上昇ないし回復する場合があることが理解できよう。
【0104】
【0105】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0106】
(付記1)
電解質を含有する粘着剤層を有し且つ二つの被着体の間に介在して当該被着体どうしを接合する粘着シートにおいて、前記粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように当該粘着剤層に電圧を印加しつつ、前記二つの被着体を分離させる、粘着シート接合体分離方法。
(付記2)
前記粘着シートにおける前記粘着剤層が第1導電性被着体と第2導電性被着体との間に介在して当該第1および第2導電性被着体に貼着している状態で当該第1および第2導電性被着体を介して前記電圧を印加しつつ、前記粘着剤層を前記第1導電性被着体および/または第2導電性被着体から剥離する、付記1に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記3)
電解質を含有する第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、並びに、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置して前記第1の粘着剤層と電気的に接続している導電層、を含む積層構造を有する粘着シートにおける、前記第1の粘着剤層が導電性被着体に貼着し且つ前記第2の粘着剤層が別の被着体に貼着している状態で、前記第1の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように前記導電性被着体および前記導電層を介して前記第1の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第1の粘着剤層を前記導電性被着体および/または前記導電層から剥離する、粘着シート接合体分離方法。
(付記4)
第1の粘着剤層、第2の粘着剤層、当該第1および第2の粘着剤層の間に位置する第1導電層および第2導電層、並びに、当該第1および第2導電層の間に位置し且つ電解質を含有して当該第1および第2導電層と電気的に接続している第3の粘着剤層、を含む積層構造を有する粘着シートにおける前記第1の粘着剤層が第1被着体に貼着し且つ前記第2の粘着剤層が第2被着体に貼着している状態で、前記第3の粘着剤層の厚さ方向に電位差が生じるように前記第1導電層および前記第2導電層を介して前記第3の粘着剤層に電圧を印加しつつ、当該第3の粘着剤層を前記第1導電層および/または前記第2導電層から剥離する、粘着シート接合体分離方法。
(付記5)
電解質を含有する前記粘着剤層は、1~1000μmの厚さを有する、付記1から4のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記6)
前記電圧は、1~100Vである、付記1から5のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記7)
前記電圧の印加時間は、60秒以内である、付記1から6のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記8)
前記電解質はイオン液体である、付記1から7のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記9)
前記イオン液体を含有する前記粘着剤層は、前記イオン液体のアニオンとして、(FSO2)2N-,(CF3SO2)2N-,(CF3CF2SO2)2N-,(CF3SO2)3C-,CH3COO-,CF3COO-,CF3CF2CF2COO-,CF3SO3
-,CF3(CF2)3SO3
-,Br-,AlCl4
-,Al2Cl7
-,NO3
-,BF4
-,PF6
-,AsF6
-,SbF6
-およびF(HF)n
-からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、付記8に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記10)
前記イオン液体を含有する前記粘着剤層は、前記イオン液体のカチオンとして、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、およびアンモニウム系カチオンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、付記8または9に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記11)
前記電解質を含有する前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含有する、付記1から10のいずれか一つに記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記12)
前記電解質を含有する前記粘着剤層における電解質含有量は、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して0.5~30質量部である、付記11に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記13)
前記アクリル系ポリマーは、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アルキル酸アルキルエステルに由来するモノマーユニット、および、極性基含有モノマーに由来するモノマーユニットを含む、付記11または12に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記14)
前記(メタ)アルキル酸アルキルエステルは、ブチル(メタ)アクリレートおよびイソノニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種である、付記13に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記15)
前記極性基含有モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、およびビニル基含有モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である、付記13または14に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記16)
前記カルボキシル基含有モノマーは、アクリル酸である、付記15に記載の粘着シート接合体分離方法。
(付記17)
前記水酸基含有モノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレートである、付記15に記載の粘着シート接合体分離方法。
【符号の説明】
【0107】
X1,X2,X3粘着シート
11,12,13,21,22,23粘着剤層
30,40,50通電用基材
31,41,51基材
32,42,52導電層
Y1,Y2,Y3,Y4,Y5,Y6被着体