(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】放射性核種吸着剤、その製造方法及びそれを用いた放射性核種の除去方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/12 20060101AFI20220222BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20220222BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220222BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220222BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220222BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
G21F9/12 501B
G21F9/12 501D
G21F9/12 501J
G21F9/12 501F
B01J20/06 A
B01J20/26 E
B01J20/28 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01J20/32 Z
(21)【出願番号】P 2020149502
(22)【出願日】2020-09-06
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110973
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100597
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヒマン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャヌ
(72)【発明者】
【氏名】イ クンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム イルグク
(72)【発明者】
【氏名】ユン インホ
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0231598(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2017-0125597(KR,A)
【文献】特開2012-237735(JP,A)
【文献】特開2019-141836(JP,A)
【文献】特開2017-090373(JP,A)
【文献】特開2014-206469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00-9/36
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空(hollow)の空間;及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含
み、且つ、
前記空間の内部に前記フェロシアン化遷移金属シェルと離隔されて存在する遷移金属酸化物粒子を含む、
放射性核種吸着剤。
【請求項2】
内部が中空(hollow)の空間;及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含み、
前記フェロシアン化遷移金属シェルは、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造を有する
、
放射性核種吸着剤。
【請求項3】
前記放射性核種吸着剤は、放射性セシウム;又は2価以上の陽イオン性放射性核種を選択的に除去するためのものであることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の放射性核種吸着剤。
【請求項4】
前記放射性セシウム又は2価以上の陽イオン性放射性核種は、pH1~pH11範囲内に存在することを特徴とする、
請求項3に記載の放射性核種吸着剤。
【請求項5】
前記放射性核種吸着剤内の水の含量は、前記放射性核種吸着剤の総含量に対して10重量%~20重量%であり、前記放射性核種吸着剤の比表面積は、10m
2/g~300m
2/gであることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の放射性核種吸着剤。
【請求項6】
ビード;及び
前記ビードの内部に封入された
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の放射性核種吸着剤を含むことを特徴とする、
ビード型放射性核種吸着剤。
【請求項7】
前記ビードの内部に封入された2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤をさらに含むことを特徴とする、
請求項6に記載のビード型放射性核種吸着剤。
【請求項8】
コア;及び
前記コア上に形成された
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の放射性核種吸着剤を含むことを特徴とする、
複合型放射性核種吸着剤。
【請求項9】
前記コアは、磁性コア;又は2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤コアであることを特徴とする、
請求項8に記載の複合型放射性核種吸着剤。
【請求項10】
請求項1~請求項9のうちいずれか一項に記載の放射性核種吸着剤を放射性核種が含まれた溶液に分散させて前記放射性核種吸着剤に
前記放射性核種を吸着させた後に
前記放射性核種を回収するステップを含むことを特徴とする、
放射性核種の除去方法。
【請求項11】
前記回収された放射性核種吸着剤内のフェロシアン化遷移金属を遷移金属炭酸塩に転換させるステップをさらに含むことを特徴とする、
請求項10に記載の放射性核種の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性核種吸着剤、その製造方法及びそれを用いた放射性核種の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所を含む原子力施設だけでなく、放射性核種を扱う多様な業種で多様な放射性廃液を発生させている。このような放射性廃液を処理するために、吸着(adsorption)、溶媒抽出(solvent extraction)、化学的沈澱(chemical precipitation)、メンブレン工程(membrane processing)、凝集(coagulation)、電気透析(electrodialysis)、イオン交換(ion exchange)など多様な技術が産業的に用いられている。このうち、吸着(adsorption)は、簡便であり、且つ大容量の放射性廃液を処理するにおいて有利な方法として知られている。このような吸着に用いられる吸着剤は、放射性核種の種類によって多様な物質が用いられ得、一般的には、イオン交換樹脂、粘土、ゼオライトなどが広く用いられる。多様な放射性核種のうち放射性セシウムは、核分裂生成物の生成率(fission yield)が6.337%でSr(4.505%)とともに主要核分裂生成物であり、熱負荷核種で核廃棄物の長期処分のための主要障害物として知られている。Cs-137の場合、半減期が30.2yearで非常に長く、強いガンマ線とともに水に対する溶解度が高く、特に、potassium(K)と生物学的挙動が類似しているので、環境的にも生態学的にも非常に危険な放射性核種の一つに分類されている。また、Sr-90の場合、半減期が28.9年と高く、カルシウムと化学的類似性が高いので、放射性セシウムとともに主要汚染源として知られている。
【0003】
しかし、原子力産業から発生する多様な放射性廃液内の放射性セシウムの濃度は、Na+、K+、Ca2+、Mg2+などのような競争イオンに比べて顕著に低い濃度で存在しているので、放射性核種、特に、放射性セシウム及びストロンチウムのみを選択的に除去することには困難がある。さらに、福島あるいはチェルノブイリ原発事故から発生する放射性汚染の地下水、川、海水などの汚染水には、Na+、K+、Ca2+、Mg2+などのような競争イオンの濃度は、放出された放射性セシウム濃度に比べて顕著に多い量が存在する。したがって、原子力施設の放射性廃液及び原発事故後に発生した放射性汚染水内の放射性核種、特に、放射性セシウム及びストロンチウムのみを選択的に除去するためには、放射性セシウムに対する選択性がないイオン交換樹脂、粘土、ゼオライトなどの既存吸着剤の外に、放射性核種、放射性、特に、セシウム及びストロンチウムのみを選択的に除去する新しい吸着剤の開発が必要な状況である。
【0004】
現在までに報告された主要放射性セシウムあるいはストロンチウム除去用吸着剤としては、結晶質シリコチタネート(crystalline silicotitanate;CST)、バナドシリケート(vanadosilicate)、金属硫化物(metal sulfides)などがある。しかし、このような物質は、高価な重金属(Sn、Sb、In、Ge、V、Tiなど)を用いるので、大量生産に制約があり、合成が難しいという短所が存在する。これに対する代案として、金属イオンとシアニド(-CN-)が互いに化学結合された(coordinated)フェロシアン化金属(metal ferrocyanides、MFC)は、セシウムに対する高い選択度と低いコスト、そして金属イオンとフェロシアン化塩(ferrocyanide salt)の間の単純化学反応により容易に製造できる長所がある。しかし、金属イオンとフェロシアン化塩との反応により合成される従来のフェロシアン化金属は、凝集現象により通常的に数十ナノメートルサイズからサブミクロン(submicron)サイズ以上の非常に不規則な粒子形態(granular form)を有する、したがって、合成された従来のフェロシアン化金属は、多様なサイズ分布によってカラムなどの充填材でも使いにくく、廃液内に直接的に用いるためには、使用後にフェロシアン化金属を回収するための別の遠心分離器あるいは高性能分離膜などの追加的な回収工程装置が必要である。また、凝集されたフェロシアン化金属は、既存吸着剤であるゼオライトあるいは粘土に比べてセシウムの吸着速度が相対的におそく、最大セシウム吸着量も比較的少ないことが知られている。
【0005】
最近、フェロシアン化金属のセシウム吸着速度を向上させて使用後の吸着剤回収を容易にするために、高分子マトリックス(polymer matrices)、シリカ(silica)、カーボン(activated carbon、CTN、graphene oxideなど)又は磁性材料(magnetic materials)のような機能性素材の表面や内部にナノサイズのフェロシアン化金属が結合された複合体の研究が活発に行われた。このような機能性素材が支持体(supporting)の役目をしてフェロシアン化金属の凝集現象を阻んでナノサイズ領域のフェロシアン化金属が合成される。フェロシアン化金属の粒子サイズが小さいほど比表面積が高くなってセシウムの吸着特性が向上され、支持体の存在により使用後の吸着剤の回収が容易であり、カラム内の充填材として使用が可能である。しかし、上記のような複合体に用いられた機能性素材自体はセシウムを選択的に吸着する機能がないので、単位重さ当たり吸着剤がセシウムを吸着できる吸着用量が阻害されるという短所を有し、複合体内の多様な構成成分により合成が単純ではなく、多段階に行われるという短所があり、特に、高分子マトリックス、カーボンのように有機成分が含まれた複合体の場合、放射性条件での安全性が不足し、最終放射性廃棄物の処分が容易ではないという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本登録特許公報第5957290号(2016年6月24日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、放射性核種を効果的/選択的に除去するためのものであって、遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩間の化学反応条件の最適化を通じて、内部が中空(hollow)の空間(具体的に、内部が全部空洞であるか、内部に遷移金属酸化物粒子が存在する空間);及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェル(具体的に、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった構造のフェロシアン化遷移金属シェル)を含む放射性核種吸着剤などを提供することを目的とする。
【0008】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は下の記載から当業者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩を酸溶液に分散させた分散液を製造するステップ;及び(b)前記分散液内の遷移金属イオンと前記フェロシアン化塩を反応させることで、前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を形成させるステップを含む放射性核種吸着剤の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一具現例は、内部が中空(hollow)の空間;及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含む放射性核種吸着剤を提供する。
【0011】
本発明の他の具現例は、ビード;及び前記ビードの内部に封入された前記放射性核種吸着剤を含むビード型放射性核種吸着剤を提供する。
【0012】
本発明のまた他の具現例は、コア;及び前記コア上に形成された前記放射性核種吸着剤を含む複合型放射性核種吸着剤を提供する。
【0013】
本発明のまた他の具現例は、前記放射性核種吸着剤を放射性核種が含まれた溶液に分散させて前記放射性核種吸着剤に放射性核種を吸着させた後にこれを回収するステップを含む放射性核種の除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による放射性核種吸着剤は、遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩間の化学反応条件の最適化を通じて製造されたもので、内部が中空(hollow)の空間(具体的に、内部が全部空洞であるか、内部に一部の遷移金属酸化物粒子が存在する空間);及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェル(具体的に、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった構造のフェロシアン化遷移金属シェル)を含むことで規則的な形態を有し、比表面積が高いことを特徴とすることで、放射性核種を効果的/選択的に除去することができる。
【0015】
本発明によると、原子力発電所を含む原子力施設だけでなく、放射性核種を扱う多様な業種から発生する多様な放射性廃液(特に、放射性核種により汚染された土壌の除染時に発生する強酸性土壌廃液)を浄化させることに有用に用いられ得、福島原発事故のような重大事故時の放射性核種により汚染された多様な水環境(地下水、川、河川、海水など)を修復することに効果的に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】Fe(CN)
6
4-(FC)及び酸(HCl)の濃度によるhf-TiFC、f-TiFC及びh-TiFCの形成メカニズムを示した模式図である。
【
図2】(a)水和TiO
2粒子、(b)、(c)h-TiFC及び(e)、(f)、(g)hf-TiFCのSEM写真であり、(d)h-TiFC及び(h)hf-TiFCのSTEM写真であり、(i)hf-TiFCのEDS元素マッピングであり、(j)hf-TiFCの2次元片の縁部を高拡大したTEM写真である。
【
図3】水和TiO
2粒子のXRDパターンのグラフである。
【
図4】h-TiFC及びhf-TiFCの(a)FT-IRスペクトラム、(b)XRDパターンのグラフであり、hf-TiFCの(c)N1s及び(d)Fe2p XPSスペクトラムのグラフである。
【
図5】(a)水和TiO
2粒子、(b)hf-TiFC、(c)h-TiFCのXPS照射グラフであり、水和TiO
2粒子の(d)Fe2p及び(e)N1s XPSスペクトラムのグラフである。
【
図6】最大600℃で10℃min
-1の加熱速度で窒素雰囲気下でh-TiFC及びhf-TiFCから獲得されたTGA曲線のグラフである。
【
図7】(a)、(b)0.1M FC、(c)、(d)0.2M FC、(e)、(f)0.3M FC及び(g)(h)0.4M FCを用いて1.5MのHCl濃度で12時間の間反応して合成された多様なTiFCのSEM及びTEM写真である。
【
図8】(a)反応時間12時間の間1.5M HCl水溶液で0.1、0.2、0.3又は0.3M FCを用いて合成された多様なTiFC(
図7のTiFC)、(b)多様な反応時間の間1.5M HCl水溶液で0.4M FCを用いて合成されたhf-TiFC、(c)多様な反応時間の間1.5M HCl水溶液で0.2M FCを用いて合成されたhf-TiFC及び(d)多様な反応時間の間1.5M HCl水溶液で0.1M FCを用いて合成されたh-TiFCのXRDパターンのグラフである。
【
図9】反応時間10分~6時間の間1.5M HCl水溶液で0.4M FCを用いて合成されたhf-TiFCのSEM写真である。
【
図10】反応時間(a)、(b)1時間、(c)、(d)2時間、(e)、(f)12時間の間1.5M HCl水溶液で0.4M FCを用いて合成されたhf-TiFCのSTEM写真及びEDS元素マッピングである。
【
図11】反応時間(a)1時間、(b)2時間、(c)6時間、(d)12時間の間1.5M HCl水溶液で0.2M FCを用いて合成されたhf-TiFCのSTEM写真である。
【
図12】反応時間(a)2時間、(b)6時間、(c)12時間の間1.5M HCl水溶液で0.1M FCを用いて合成されたhf-TiFCのSTEM写真である。
【
図13】他の酸性条件で反応時間12時間の間0.2M FCを用いて合成されたTiFCのSTEM写真である。
【
図14】Cs吸着後のhf-TiFCのSTEM写真及びEDS元素マッピングである。
【
図15】TiCl
4及びフェロシアン化カリウム間の反応により合成されたg-TiFCの(a)XRDパターンのグラフであり、(b)SEM写真である。
【
図16】HCSTの(a)XRDパターンのグラフであり、(b)TEM及びEDS元素マッピングである。
【
図17】CHAの(a)XRDパターンのグラフであり、(b)TEM及びEDS元素マッピングである。
【
図18】h-TiFC、hf-TiFC及びg-TiFCを含む多様なCs吸着剤のCs吸着の(a)動力学データ及び(b)等温線グラフであり、h-TiFC、hf-TiFC及びg-TiFCを含む多様なCs吸着剤の(c)除去率及び(d)K
d値の側面からCs吸着性能上にpHの影響を示したグラフである。
【
図19】h-TiFC、hf-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAの除去率及びK
d値の側面からCs吸着性能上に(a)、(b)Na及び(c)(d)Kのような競争イオンの影響を示したグラフである。
【
図20】多様な吸着剤を用いて強酸性土壌の廃液内のCsイオンを選択的に除去できるか否かを比較したグラフである。
【
図21】NaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードの製造過程を示した模式図である。
【
図22】多様なアルジネートビード(Bare bead、Bead-1、Bead-2及びBead-3)のFTIRスペクトラムの分析結果を示したグラフである。
【
図23】NaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビード(Bead-3)の内部を分析したSEM写真である。
【
図24】多様なアルジネートビード(Bare bead、Bead-1、Bead-2及びBead-3)の有・無機成分の含量を調査するためにTGA分析したグラフである。
【
図25】(a)蒸溜水内の単一成分でCs
+(1ppm)又はSr
2+(1ppm)が存在する場合(single component)、(b)蒸溜水内の複合成分でCs
+(1ppm)及びSr
2+(1ppm)が存在する場合(multi component)、多様なアルジネートビード(Bare bead、Bead-1、Bead-2及びBead-3)がCs
+又はSr
2+を吸着するか否かを確認したグラフである。
【
図26】地下水条件の溶液にCs
+(1ppm)及びSr
2+(0.667ppm)を注入した後に多様なアルジネートビード(Bare bead、Bead-1、Bead-2及びBead-3)がCs
+又はSr
2+を吸着するか否かを確認したグラフである。
【
図27】磁性コア上にhf-TiFCを適用した吸着剤の製造過程を示した模式図である。
【
図28】2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤のコア上にhf-TiFCを適用した吸着剤の製造過程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、フェロシアン化遷移金属を用い、規則的な形態を有し、比表面積が高い放射性核種吸着剤を製造するための研究を続けるなかで、遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩間の化学反応条件を最適化することで、内部が中空(hollow)の空間(具体的に、内部が全部空洞であるか、内部に一部の遷移金属酸化物粒子が存在する空間);及び前記空間表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェル(具体的に、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった構造のフェロシアン化遷移金属シェル)を含む放射性核種吸着剤を製造した。これは、放射性核種を効果的/選択的に除去できることを確認し、本発明を完成した。
【0018】
本明細書で「放射性核腫」とは、1価又は2価以上の陽イオン性放射性核種を全て含むもので、1価陽イオン性放射性核種として放射性セシウムと、2価以上の陽イオン性放射性核種として放射性ストロンチウム、放射性コバルト、放射性亜鉛、放射性バリウムなど2価陽イオン性放射性核種;放射性クロム、放射性ユウロピウム、放射性テルビウム、放射性ネオジム、放射性アメリシウムなど3価陽イオン性放射性核種;放射性トリウムなど4価陽イオン性放射性核種;放射性モリブデン、放射性ウランなど6価放射性核種;及び放射性ラジウムなど7価陽イオン性放射性核種などを全て含む広範囲な意味であってもよい。特に、「放射性セシウム」とは、137Cs、135Cs、134Csなどを含むが、このとき、代表的な137Csは、核分裂時に発生する主要放射性同位体であって、半減期が30.17年である有毒物質である。また、「放射性ストロンチウム」とは、89Sr、90Srなどを含むが、このとき、代表的な90Srも核分裂時に発生する主要放射性同位体であって、半減期が27.7年で体内ではカルシウムと類似しているので骨や血液形態の組織(骨髓)に蓄積される問題がある。
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
放射性核種吸着剤の製造方法
本発明は、(a)遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩を酸溶液に分散させた分散液を製造するステップ;及び(b)前記分散液内の遷移金属イオンと前記フェロシアン化塩を反応させることで、前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を形成させるステップを含む放射性核種吸着剤の製造方法を提供する。
【0021】
本発明によって製造される放射性核種吸着剤は、コアであって、内部が中空(hollow)の空間;及びシェルとして、前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含んで形成されたものである。このとき、コアは、前記金属酸化物粒子が全部溶解されて内部が中空(hollow)の空間であることを特徴とするが、場合によって、前記金属酸化物粒子が全部溶解されずに前記フェロシアン化遷移金属シェルとは離隔された状態で残存してもよい(すなわち、ヨーク-シェル構造)。一方、シェルを構成する前記フェロシアン化遷移金属シェルは、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された3次元構造(階層的構造又は花びら類似構造)のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった3次元構造のフェロシアン化遷移金属シェルであってもよい。
【0022】
本明細書で「2次元ナノ片」とは、ナノサイズの薄い片又は薄片を意味するもので、2次元構造を包括する広義の意味で解釈されるべきである。また、本明細書内で「3次元ナノ多面体」とは、ナノサイズの六面体(例えば、キュービック)など多面体を意味するもので、3次元構造を包括する広義の意味で解釈されるべきである。
【0023】
本発明によって製造される放射性核種吸着剤は、内部が全部中空(hollow)の空間構造コア/多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された3次元構造(階層的構造又は花びら構造)シェルである場合、本明細書内で「hollow flower-like titanium ferrocyanide(hf-TiFC)」で表現し、内部が全部中空(hollow)の空間構造コア/多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった3次元構造シェルである場合、本明細書内で「hollow titanium ferrocyanide(h-TiFC)」で表現した。
【0024】
一方、本発明によって製造される放射性核種吸着剤は、内部が一部中空(hollow)の遷移金属酸化物粒子が残存する空間構造コア/3次元構造シェルである場合、本明細書内で「Yolk/shell TiFC」で表現した。
【0025】
まず、本発明による放射性核種吸着剤の製造方法は、遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩を酸溶液に分散させた分散液を製造するステップ(ステップ(a))を含む。
【0026】
前記遷移金属酸化物粒子は、4周期遷移金属酸化物粒子であってもよく、多様な放射性核種を吸着するための役目をすることができる。前記遷移金属酸化物粒子は、遷移金属酸化物粒子のうち単一構造又は多孔性構造を全て有することができる粒子であって、Ti、Zn、Cu及びMnのうち一つの以上を含む遷移金属酸化物粒子であってもよく、好ましくは、TiO2、ZnO、CuO、Cu2O、MnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4のうち一つの以上を含む遷移金属酸化物粒子であることが好ましく、TiO2粒子であることがより好ましいが、これに限定されない。特に、前記酸化物の粒子がTiO2粒子である場合、放射性セシウム、放射性コバルト、放射性ユウロピウム、放射性トリウム、放射性モリブデンなどを吸着することができ、前記酸化物の粒子がZnO粒子である場合、放射性ストロンチウム、放射性トリウム、放射性ウランなどを吸着することができ、前記酸化物の粒子がMnO、MnO2、Mn2O3及びMn3O4粒子である場合、放射性ストロンチウム、放射性ユウロピウム、放射性ウランなどを吸着することができる。前記遷移金属酸化物粒子は、多様な合成条件で単一構造又は多孔性構造を有するように合成が可能な粒子として知られており、したがって、前記遷移金属酸化物粒子は、特別な反応条件でフェロシアン化塩と反応して、それぞれ3次元構造を有するTi-フェロシアナイドシェル、Zn-フェロシアナイドシェル、Cu-フェロシアナイドシェル及びMn-フェロシアナイドシェルを形成することができる。
【0027】
例えば、前記TiO2粒子は、水和された状態であって、平均直径は、約20nm~1μmであってもよく、約300nm~約800nmであることが好ましいが、これに限定されない。本発明の実施例では、セシウムの吸着実験後、セシウム溶液に残っているTi-フェロシアナイドを除去するために用いられるシリンジフィルタのMWCO気孔サイズが450nmであるので、これを考慮して平均直径が500nmであるTiO2粒子を用いた。
【0028】
前記水和TiO2粒子は、従来知られている多様な前駆体を用いて加水分解及び自己組織化を通じて製造され得るが、前記前駆体として、炭素数が1個~10個であるチタンアルコキシド化合物を用いることができ、一つの例示で、下記化学式1で表示される化合物を用いることができる:
【0029】
【0030】
このとき、前記加水分解及び自己組織化のためには、アンモニア溶液、水、エタノール及びアセトニトリルを含む混合溶液を用いることができる。
【0031】
前記フェロシアン化塩は、フェロシアン化ナトリウム(Na4Fe(CN)6)、フェロシアン化カリウム(K4Fe(CN)6)及びフェロシアン化アンモニウム((NH4)4Fe(CN)6))、potassium hexacyanoferrate(III)(K3Fe(CN)6)からなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記酸溶液は、0.1M~2.0M HCl溶液であってもよく、1.0M~2.0M HCl溶液であることが好ましいが、これに限定されない。このとき、HClのモル濃度が過度に低い場合には、遷移金属酸化物粒子の溶解がよく行われず内部が中空(hollow)の空間を形成しない問題点がある。内部が中空(hollow)の空間を形成するようになる場合、放射性セシウムは、フェロシアン化遷移金属の内部に移動させずに、放射性セシウムではない他の2価以上の陽イオン性放射性核種(放射性ストロンチウムなど)のみを内部に移動させて封じ込められる利点がある。したがって、内部が中空(hollow)の空間の存在だけでも2価以上の陽イオン性放射性核種(放射性ストロンチウムなど)の吸着性能を有することができる。また、内部の遷移金属酸化物が残っている場合(すなわち、ヨーク-シェル構造)、水和された状態の遷移金属酸化物との化学的結合(主に、静電気的引力)により多様な放射性核種を吸着することができる。
【0033】
一方、前記分散液内の遷移金属酸化物粒子の濃度は、0.1g/L~10g/Lであってもよく、前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度は、0.001M~1.0Mであってもよく、0.01M~0.5Mであることが好ましく、0.05M~0.3Mであることがより好ましく、0.15M~0.3Mであることが最も好ましいが、これに限定されない。このような分散液内のフェロシアン化塩の濃度は、遷移金属酸化物-フェロシアナイドの構造を決定する要素であって、前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度が過度に低い場合、シェルを構成するフェロシアン化遷移金属シェルは、多数個の3次元ナノキュービックが互いに固まった構造を形成するようになる。このような多数個の3次元ナノキュービックが互いに固まった構造は、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造に比べて比表面積が低いという限界がある。前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度が過度に高い場合、シェルを構成するフェロシアン化遷移金属は、多数個の2次元ナノ片が互いに過度に重畳された構造を形成するが、このとき、2次元ナノ片の高い密度により比表面積がさらに低くなる。
【0034】
次に、本発明による放射性核種吸着剤の製造方法は、前記遷移金属酸化物粒子の表面で生成された遷移金属イオンと前記フェロシアン化塩を反応させることで、前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を形成させるステップ((ステップ(b))を含む。
【0035】
前記分散液内の遷移金属イオンと前記フェロシアン化塩が互いに反応して前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を形成させることができるが、反応が進行されるによって、前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を離隔形成させ得る。これは、シアノ基(-C≡N-)の存在を通じて確認できる。
【0036】
一方、前記反応は、10℃~80℃で10分~72時間の間行われ得る。例えば、前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度は、0.3M以下である場合、前記反応は、20℃~40℃で2時間~15時間の間行われることで、内部が中空(hollow)の空間構造コアを形成することができる。特に、前記反応時間を6時間~10時間に調節することで、ヨークコアを形成することができ、放射性セシウム及び放射性ストロンチウムを同時に効果的に除去できる利点がある。前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度は、0.3M超過である場合、前記反応は、20℃~40℃で4時間~15時間の間行われることで、内部が中空(hollow)の空間構造コアを形成することができる。
【0037】
放射性核種吸着剤
本発明は、内部が中空(hollow)の空間;及び前記空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含む放射性核種吸着剤を提供する。
【0038】
本発明による放射性核種吸着剤は、(a)遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩を酸溶液に分散させた分散液を製造するステップ;及び(b)前記分散液内の遷移金属イオンと前記フェロシアン化塩を反応させることで、前記遷移金属酸化物粒子の表面にフェロシアン化遷移金属を形成させるステップを通じて製造され得る。
【0039】
まず、本発明による放射性核種吸着剤は、コアであって、内部が中空(hollow)の空間を有することを特徴とする。
【0040】
前記内部が中空(hollow)の空間は、酸溶液でHClのモル濃度を十分に高めて遷移金属酸化物粒子を溶解させることで形成され得る。このように内部が中空(hollow)の空間の存在により、放射性セシウムは、フェロシアン化遷移金属の内部に移動させずに放射性セシウムではない他の2価以上の陽イオン性放射性核種(放射性ストロンチウムなど)のみを内部に移動させて封じ込められる利点がある。したがって、内部が中空(hollow)の空間の存在だけでも2価以上の陽イオン性放射性核種(放射性ストロンチウムなど)の吸着性能を有することができる。また、内部の遷移金属酸化物が残っている場合(すなわち、ヨーク-シェル構造)、水和された状態の遷移金属酸化物との化学的結合(主に、静電気的引力)により多様な放射性核種を吸着することができる。
【0041】
すなわち、前記内部が中空(hollow)の空間は、内部が全部空洞であってもよいが、場合によって、前記内部が中空(hollow)の空間の内部に前記フェロシアン化遷移金属と離隔されて存在する遷移金属酸化物粒子をさらに含むことができる(すなわち、ヨーク-シェル構造)。言い換えれば、前記遷移金属酸化物粒子は、溶解されず前記フェロシアン化塩と反応が行われなかった状態であって、フェロシアン化遷移金属シェルとは離隔された状態で残存できる。したがって、放射性セシウムではない他の2価以上の陽イオン性放射性核種(放射性ストロンチウムなど)が離隔された中空(hollow)の空間に移動した後、残存する水和された状態の遷移金属酸化物粒子の吸着部位でさらに吸着され得る。
【0042】
前記内部が中空(hollow)の空間の平均直径は、用いられた遷移金属酸化物粒子サイズと同一であり、約20nm~約1μmであってもよく、約300nm~約800nmであることが好ましいが、これに限定されない。
【0043】
次に、本発明による放射性核種吸着剤は、シェルであって、内部が中空(hollow)の空間の表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェルを含む。このとき、フェロシアン化遷移金属シェルは、多様な3次元構造を有することを特徴とする。
【0044】
前記フェロシアン化遷移金属は、前記放射性核種吸着剤の比表面積を高めるために多様な3次元構造を有することができる。具体的に、前記フェロシアン化遷移金属シェルは、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された3次元構造(階層的構造又は花びら類似構造)のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった3次元構造のフェロシアン化遷移金属であってもよい。このとき、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造は、前記分散液内のフェロシアン化塩の濃度を最適化させることで形成され得る。このように、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造の場合、比表面積が高いという利点を有する。
【0045】
また、前記2次元ナノ片の平均厚さ(最も薄い部分に該当する平均厚さ)は、約10nm~約50nmであってもよい。
【0046】
一方、前記放射性核種吸着剤内の水の含量は、前記放射性核種吸着剤の総含量に対して、10重量%~20重量%であってもよく、10重量%~15重量%であることが好ましいが、これに限定されない。
【0047】
また、前記放射性核種吸着剤は、規則的な形態を有することで比表面積を高めることができるが、前記放射性核種吸着剤の比表面積は、10m2/g~300m2/gであってもよく、30m2/g~200m2/gであることが好ましく、50m2/g~200m2/gであることがさらに好ましいが、これに限定されない。したがって、放射性核種を効果的/選択的に除去することができる。
【0048】
それによって、前記放射性核種吸着剤は、放射性セシウム;又は2価以上の陽イオン性放射性核種を選択的に除去することができる。前記放射性核種吸着剤で3次元構造を有するフェロシアン化遷移金属シェルは、放射性セシウムを選択的に除去すると共に、前記放射性核種吸着剤で内部が中空(hollow)の空間又はその中に残存する遷移金属酸化物粒子は、放射性ストロンチウムなどの2価以上の陽イオン性放射性核種を選択的に除去することができる。
【0049】
また、前記放射性セシウム又は2価以上の陽イオン性放射性核種は、pH1~pH11範囲内に存在することができるが、前記放射性核種吸着剤は、遷移金属イオンが最大に酸化された形態で存在するため、それ以上は酸化されずに強酸性でも構造及び形態をよく維持することができる。したがって、前記放射性核種吸着剤は、pH1~pH11範囲内で、特に、pH1~pH3範囲のような強酸性条件でも放射性核種を効果的/選択的に除去することができる。
【0050】
一方、本発明は、ビード;及び前記ビードの内部に封入された前記放射性核種吸着剤を含むビード型放射性核種吸着剤を提供する。
【0051】
本発明によるビード型放射性核種吸着剤は、カラム(column)に適用して回収が容易である利点を有するもので、ビード;及び前記ビードの内部に封入された前記放射性核種吸着剤を含む。
【0052】
前記ビードは、アルジネートビードであってもよいが、アルギン酸は、環境親和型多糖類の一種として、構造的に1,4-連結-L-グルロン酸(guluronic acid)(G)及びD-マンヌロン酸(mannuronic acid)(M)が連結された陰イオン性フ゛ロックで構成されている。水溶性やCa、Ba及びSrのような特定の2価陽イオンの存在下で不溶性ハイドロゲルに転換され、アルジネートビードは、放射性ストロンチウムを含んで多くの希土類遷移金属に対する吸着性能に優れていることを特徴とする。
【0053】
また、前記ビードの内部に封入された2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤をさらに含むことができ、2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤として、NZVI(Nanoscale zero-valent iron);遷移金属硫化物(metal sulfides);ゼオライト(zeolite);遷移金属有機構造体(Metal-organic frameworks);遷移金属炭化物/窒化物(Metal carbides/nitrides)、セルロースナノ結晶/ナノファイバー(Cellulose nanocrystals/nanofibrils);LDH(Layered double hydroxides);ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)など公知の吸着剤を多様に用いることができる。
【0054】
本発明の実施例では、2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤として放射性ストロンチウム吸着剤に該当するゼオライトNaXを用いた。それによって、放射性セシウム及び2価以上の陽イオン性放射性核種を同時に効果的に除去できる利点がある。
【0055】
また、本発明は、コア;及び前記コア上に形成された前記放射性核種吸着剤を含む複合型放射性核種吸着剤を提供する。
【0056】
本発明による複合型放射性核種吸着剤は、コア;及び前記コア上に形成された前記放射性核種吸着剤を含む。すなわち、前記放射性核種吸着剤でフェロシアン化遷移金属シェルと前記コアの間に内部が中空(hollow)の空間を有する。このとき、空間の内部に、フェロシアン化遷移金属シェルと離隔され、前記コア上に存在する遷移金属酸化物粒子をさらに含むことができる。
【0057】
まず、前記コアは、磁性コアであってもよいが、この場合、磁性の回収が可能な利点を有する。前記磁性コア上に前記放射性核種吸着剤を形成する前に、前記磁性コア上にSiO2層がコーティングされ得る。
【0058】
一方、前記コアは、2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤コアであってもよいが、2価以上の陽イオン性放射性核種吸着剤コアとして、NZVI(Nanoscale zero-valent iron);遷移金属硫化物(metal sulfides);ゼオライト(zeolite);遷移金属有機構造体(Metal-organic frameworks);遷移金属炭化物/窒化物(Metal carbides/nitrides)、セルロースナノ結晶/ナノファイバー(Cellulose nanocrystals/nanofibrils);LDH(Layered double hydroxides);ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)など公知の吸着剤コアを多様に用いることができる。この場合、放射性セシウム及び2価以上の陽イオン性放射性核種を同時に効果的に除去できる利点がある。
【0059】
放射性核種の除去方法
本発明は、前記放射性核種吸着剤を放射性核種が含まれた溶液に分散させて前記放射性核種吸着剤に放射性核種を吸着させた後にこれを回収するステップを含む放射性核種の除去方法を提供する。
【0060】
前記放射性核種吸着剤及びその製造方法に対しては上述した通りなので、その重複説明は省略する。前記放射性核種吸着剤は、規則的な形態を有することで比表面積が高いことを特徴とし、放射性核種を効果的/選択的に除去することができる。
【0061】
本発明による放射性核種の除去方法は、前記放射性核種吸着剤を放射性核種が含まれた溶液に分散させて前記放射性核種吸着剤に放射性核種を吸着させた後、前記放射性核種が吸着された放射性核種吸着剤を前記溶液から回収するステップを含む。
【0062】
前記回収は、遠心分離器、フィルタなどの既存の粒子回収工程を通じて容易に放射性核種が吸着された放射性核種吸着剤を回収することができる。
【0063】
また、前記回収された放射性核種吸着剤の最終処分を容易にするためには、フェロシアン化遷移金属を無機成分である遷移金属炭酸塩に転換させた方がよい。それによって、フェロシアン化遷移金属に存在する有機成分であるシアナイド(-C≡N-)を除去することで処分安定性を向上させ得る利点がある。このような過程は、強塩基条件(pH9~12)で行われることが好ましいが、これに限定されない。前記回収された放射性核種吸着剤は放射性廃棄物に分類される一方、前記のように転換された遷移金属炭酸塩(例えば、チタン酸塩)は、ガラス化又はセメント化方法を通じて容易に処分され得る利点を有する。
【0064】
一方、前記放射性核種吸着剤がビード型である場合、カラム(column)に適用して回収することが容易ある利点があり、前記放射性核種吸着剤に磁性コアが適用された場合、磁性の回収が可能である利点を有する。
【0065】
したがって、本発明による放射性核種吸着剤は、遷移金属酸化物粒子及びフェロシアン化塩間の化学反応条件の最適化を通じて製造されたもので、内部が中空(hollow)の空間(具体的に、内部が全部空洞であるか、内部に一部の遷移金属酸化物粒子が存在する空間);及び前記空間表面に形成されたフェロシアン化遷移金属シェル(具体的に、多数個の2次元ナノ片が互いに重畳された構造のフェロシアン化遷移金属シェル又は多数個の3次元ナノ多面体が互いに固まった構造のフェロシアン化遷移金属シェル)を含むことで、規則的な形態を有し、比表面積が高いことを特徴とすることで、放射性核種を効果的/選択的に除去することができる。
【0066】
本発明によると、原子力発電所を含む原子力施設だけでなく、放射性核種を扱う多様な業種から発生する多様な放射性廃液(特に、放射性核種により汚染された土壌の除染時に発生する強酸性土壌廃液)を浄化させることに有用に用いられ、福島原発事故のような重大事故時に放射性核種により汚染された多様な水環境(地下水、川、河川、海水など)を修復することに効果的に用いられ得る。
【0067】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0068】
<実施例>
<実施例1:放射性核種吸着剤の製造>
水和TiO
2
粒子(平均直径:500nm)の合成
NH4OH溶液(28%、0.42mL)、H2O(0.91mL)、エタノール(150mL)及びアセトニトリル(100mL)が混合された溶液(250Ml)を準備し、下記化学式1で表示されるチタンイソプロポキシドを添加して牛乳色の溶液を製造した。6時間の間追加撹拌した後、遠心分離機を用いて水和TiO2粒子を回収し、水及びエタノールで数回洗浄した後、60℃の真空オーブンで乾燥した。
【0069】
【0070】
放射性核種吸着剤(h-TiFC又はhf-TiFC)の製造
100mgの水和TiO2粒子を1.5M HCl溶液に分散させた後、フェロシアン化カリウム(FC、K4Fe(CN)6・3H2O)が含有された1.5M HCl溶液と素早く混合して分散液を製造した。このとき、hollow titanium ferrocyanide(h-TiFC)又はhollow flower-like titanium ferrocyanide(hf-TiFC)を製造するための分散液内の水和TiO2粒子の濃度は、1.0g/Lであった。また、h-TiFCを製造するための分散液内のFCの濃度は、0.1Mであり、hf-TiFCを製造するための分散液内のFCの濃度は、0.2Mである。25℃で10分~12時間の間反応させた後、メンブレンフィルタ(気孔サイズ:0.45μm)を用いて回収し、脱イオン水で数回洗浄した後、60℃の真空オーブンで乾燥した。
【0071】
非放射性セシウムを用いた吸着動力学及び等温線
吸着動力学及び等温線は、25℃で配置実験で実行した。吸着動力学実験時に用いられた初期Cs濃度は、68.7ppmである。20mgのh-TiFC又はhf-TiFCを68.8ppm Cs溶液(20mL)に添加した後、5分~1440分の多様な時間の間撹拌した。その後、メンブレンフィルタ(気孔サイズ:0.45μm)を用いてh-TiFC又はhf-TiFCを除去した。反応前後のCs濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で分析した。吸着動力学は、類似二次モデルに該当する下記式(1)で計算した:
【0072】
dqt/dt=k2(qe qt)2・・・(1)
【0073】
このとき、k2は、類似二次速度定数(g mg1 min1)であり;qeは、平衡で捕獲されたCs+の量(mg g1)であり、qtは、t時間(min)で捕獲されたCs+の量(mg g1)である。式の統合された形態は、下記式(2)のように再構成され得る:
【0074】
t/qt=1/k2 qe
2+t/qe・・・(2)
【0075】
吸着等温線実験は、20mgのh-TiFC又はhf-TiFCを20mLの50-1000ppm Cs溶液と撹拌して実験した。吸着平衡後、メンブレンフィルタ(気孔サイズ:0.45μm)を用いてh-TiFC又はhf-TiFCを除去した。反応前後のCs濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で分析した。吸着等温線は、ラングミュア等温線に該当する下記式(3)で計算した:
【0076】
q=qmax bCe/(1+bCe)・・・(3)
【0077】
このとき、qe及びqmaxは、それぞれ平衡吸着能力及び最大吸着能力である。ここで、bは、Cs+及び固体間の親和度を示すラングミュア定数(kg mg1)である。式の統合された形態は、下記式(4)のように再構成され得る:
【0078】
1/qe=1/qmax+1/(qmax b Ce)・・・(4)
【0079】
多様なpH溶液及び塩溶液でCsの選択度
多様なpH条件(pH1~11)でのCs吸着実験及びNa+とK+などの競争イオンがある条件でのCs吸着実験は、NaOHとHClでpHを調節し、NaCl(99%、Junsei Chemicals)とKCl(99%、Junsei Chemicals)を競争イオンで用いた。このとき、用いられたCsの濃度は、約1ppmである。また、競争イオンの影響に対する実験時のNa+/Cs+とK+/Cs+のモル比は、100、1000、10000、100000である。実験時にh-TiFC又はhf-TiFCと多様な比較群が用いられた。用いられた比較群としては、結晶性シリコチタネートのプロトン化された形態(HCST;Poojary、D.M.;Cahill、R.A.;Clearfield、A.Synthesis、Crystal Structures、and Ion-Exchange Properties of a Novel Porous Titanosilicate.Chem.Mater.1994、6、2364-2368.)、chabazite(CHA;Robson、H.E.Verified Syntheses of Zeolitic Materials;Elsevier、2001.)及びチタンフェロシアナイドの粒状形態(g-TiFC;Zakaria、E.S.;Ali、I.M.;Aly、H.F.Adsorption Behaviour of 134Cs and 22Na Ions on Tin and Titanium Ferrocyanides。Adsorption 2004、10、237-244.)が用いられた。10mgの多様な吸着剤を10mLの溶液と反応して吸着平衡した後、メンブレンフィルタ(気孔サイズ:0.45μm)を用いて吸着剤を除去した。反応前後のCs濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)で分析した。Cs+除去率(%)及び分配係数(Kd、mL: g1)は、下記式(5)及び式(6)でそれぞれ計算した:
【0080】
Cs+ removal(%)=(Ci Ce)/CiX100・・・(5)
【0081】
Kd(mL g-1)=V(Ci Ce)/Ce m・・・(6)
【0082】
このとき、Ciは、初期Cs+濃度(ppm)であり;Ceは、平衡Cs+濃度(ppm)であり;Vは、溶液の体積(mL)であり;mは、吸着剤の質量(g)である。
【0083】
放射性実験
放射性実験は、多様な吸着剤を模擬海水又は模擬放射性廃液(5.7M Na+及びpH1)の水溶液に放射性セシウム(137cs)が含まれた汚染水を用いた。125ppmのNa+、25ppmのCa2+、10ppmのMg2+及び5ppmのK+が添加され、模擬放射性廃液には、HNO3でpH1を合わせて5.7MのNa+溶液を用いた。放射性セシウムが含有された模擬海水又は模擬放射性廃液を多様な吸着剤と反応して吸着平衡した後、メンブレンフィルタ(気孔サイズ:0.45μm)を用いて吸着剤を除去した。反応前後の放射性Cs放射能は、HPGe検出器(Canberra、USA)で分析し、Cs+除去率(%)及び除染係数(DF)は、下記式(7)及び式(8)でそれぞれ計算した。
【0084】
Cs+ removal(%)=(A0 Af)/A0 X100・・・(7)
【0085】
DF=A0/Af・・・(8)
【0086】
このとき、A0及びAfは、吸着剤処理した後、それぞれ初期溶液で137Cs活性及び最終溶液で137Cs活性である。
【0087】
図2(a)のSEM写真は、合成された水和TiO
2粒子が500nmサイズを有し、無数に多くのナノサイズの水和TiO
2で構成されたことを示している。また、
図3で、XRD分析を通じて合成された水和TiO
2粒子は非晶質である。合成された水和TiO
2粒子のBET表面積は、403m
2 g
-1で非常に大きいが、これはナノサイズの水和TiO
2が固まっている間の中空によるものと判断できる。
【0088】
TiFCの粒状形態(g-TiFC)は、一般的にフェロ二酸化塩とTiCl4のTi4+の反応により容易に合成される。本発明では、水和TiO2が酸条件で溶解されてTi4+ソースで用いられた。1g/Lの固定された水和TiO2粒子の濃度条件で、0.1Mあるいは0.2M濃度のFCと1.5M HCl及び常温条件で12時間の間撹拌してTiFCを合成した。このとき、0.1MのFCは、一般的にg-TiFCを合成するためのFCの濃度条件である。
【0089】
図4の(a)に示したように、FTIR分析で水和TiO
2のFTIR分析結果と比較して、0.1M、0.2MのFCと反応したサンプル(二つのサンプルは全て12時間反応時間、1g/1のTiO
2、1.5MのHClで同一)の結果において、2065cm
-1位置で新しいピークが現われるが、これはシアナイド(-C≡N-)伸縮振動を示すピークで、上の結果を通じて合成した後にTiFC合成されたことを間接的に確認することができる。また、
図4の(b)のX-ray diffraction(XRD)分析で、17.48°、24.64°、35.17°、39.49°で特性ピークが現われるが、これは合成されたサンプルがFe
4(Fe(CN)
6)
3(PDF#01-073-0687、17.50°、24.84°、35.42°、39.76°でピーク)ではないTiFe(CN)
6・2H
2O(PDF#00-023-0605)特性ピークと一致することが確認できる。
【0090】
合成されたTiFCの形態は、SEM TEMで確認した。
図2の(b)では、0.1M FCと反応して合成されたTiFCが粗い表面の球形態を有することを確認することができる。
図2の(c)の高拡大SEM写真で、合成されたTiFCは、小さいナノ粒子が固まっているキュービック模様のTiFCを確認することができる。また、
図2の(d)のTEM写真は、製造されたTiFCが500nmサイズの空の空間を有していることを示すが、これは500nmサイズのTiO
2templateがとけて内部が中空(hollow)の構造を有するTiFC(h-TiFC)が形成されたことを意味する。
【0091】
特に、
図2の(e)、(f)及び(g)のように、0.2M FCと反応したTiFCは、2次元片が互いに連結された花模様の階層的構造(hierarchical structure)を有することを確認することができる。また、
図2の(h)のTEM写真は、前記花模様のTiFCが500nmサイズの空の空間を有するhollow flower like TiFC(hf-TiFC)であることを示す。合成されたhf-TiFCの粒子サイズは、約2μmで、これは約1μmのサイズを有するh-TiFCより約2倍程度大きく、したがって、セシウムの吸着時に吸着剤の回収が一層容易である長所が期待される。
図2の(g)を参照すると、2次元片の平均厚さが26.86±4.26nmである。
【0092】
図2の(i)の高解像度TEM写真は、結晶面を示しており、格子距離は、0.3587nmで、これは一般的に知られたTiFCの[220]面での内部-面空間と同一のサイズを有する。したがって、製造された素材がTiFCであることが確認できる。h-TiFCのXRD分析結果とは異なり、hf-TiFCは、2θ値が24.84°である[200]面に比べて17.5°である[200]面及び2θ値が35.2°である[400]面で非常に強い強度を示すが、これはhf-TiFCで合成されるTiFC 2次元ナノ片が主に[100]planesで成長することを意味する(
図4の(b))。表1に示したように、計算されたhf-TiFCの[220]及び[420]面での結晶粒子のサイズは、h-TiFCとほとんど同一である一方、hf-TiFCの[200]及び[400]面での結晶粒子のサイズは、h-TiFCの同一面での結晶粒子のサイズより約2倍以上大きい。
図2の(j)に示したように、hf-TiFCのエネルギー分散型X-ray(EDX)分光計のマッピング写真を参照すると、Ti、Fe、C、N元素が均質に分布されていることが確認でき、これは、2次元片がTiFCで構成されたことを意味する。さらに、Kの存在を確認することができるが、これは、合成されたTiFCが主にチタンフェロシアン化カリウムであることを意味する。
図5の(b)及び(c)のX-ray光電子分光計(XPS)の分析を通じてもFe、N、Kの存在を確認することができ、これら元素は、TiO
2のXPS結果では確認できなかった元素である。
【0093】
図4の(C)のように、hf-TiFCのN 1s spectraを参照すると、398.08eVでピークが観察されるが、これは、Fe(CN)
6
4-内のN≡C(cyanide group)を意味する。また、
図4の(d)でも四つの互いに異なるFe2p XPSスペクトラムを示しているが、708.41及び721.30eVの2個の主要ピークは、Fe(CN)
6
4-内のFe
2+ 2p
3/2及びFe
2+ 2p
1/2を意味する。また、709.38及び723.30eVでの小さいピークは、Fe
3+ 2p
3/2及びFe
3+ 2p
1/2も一緒に観察されるが、このようなFe
2+ 2p
3/2及びFe
3+ 2p
3/2のピーク面積比は、1~0.11で非常に少ない量である。このようにFe
3+が存在する理由は、おそらく反応溶液で反応しないFe(CN)
6
4-は強い酸条件でFe
2+に解離されることができるが、大気下で12時間の反応時間の間解離されたFe
2+がFe
3+に酸化されて負の電荷を有するhf-TiFC表面に表面吸着されてXPS分析で観察されたと判断される。
【0094】
合成されたh-TiFc及びhf-TiFCを全部溶解して分析したh-TiFC及びhf-TiFC内のTi、Fe、Kの重量%を表1に示した。また、h-TiFc及びhf-TiFC内の水の含量を計算するために、TGA分析した後に計算されたH
2Oの含量を計算した。
図6のように、250℃での損失された重さ%を水の含量で計算し、h-TiFCは、17.94重量%、hf-TiFCは、13.61重量%の水を含有している。
【0095】
TiO2が全て溶解されたと仮定した状態で、TiとFeの間のモル比、KとFeの間のモル比、水の含量分析を通じて計算されたTiFCの化学的組成は、h-TiFCは、K0.49Ti1.64Fe(CN)6・3.76H2O、hf-TiFCは、K0.84Ti1.08Fe(CN)6・2.59H2Oである。Hf-TiFCのTi/Fe比は、1.08であるが、これは、XRD分析時の参照物質であるTiFe(CN)6・2H2Oと類似しているが、h-TiFCのTi/Fe比は、それより1.5倍大きい。これは、hf-TiFCがh-TiFCより約1.5倍さらに多くのTiFCが形成されたことを意味し、これは、おそらく2倍以上のFCを反応物で用いてより多くのTiFCが形成されたと判断される。このような多様な分析結果を土台に、私たちはh-TiFC又はhf-TiFCが成功的に合成されたことを証明した。また、BET分析を通じてh-TiFC及びhf-TiFCの比表面積を分析し、その結果を表1に示した。TiO2の比表面積である403m2g-1に比べてh-TiFC又はhf-TiFCの比表面積は小さいが、これは、TiO2の場合、非常に小さいナノサイズのTiO2凝集体内の間の空の空間により大きい比表面積がTiO2が溶解されることで空いた空間が消えるためである。また、予想したように、h-TiFCに比べてhf-TiFCがさらに大きい比表面積を有する。これは、hf-TiFCの場合、階層的構造(hierarchical structur)を有するためである。
【0096】
h-TiFC及びhf-TiFCの組成及び比表面積
【表1】
【0097】
反応時にFCの濃度を0.4Mまで増加させても類似のhf-TiFCを得ることができ、
図7に示したように、FCの濃度が変わっても粒子の全体サイズと2次元片の厚さには大きい差を示さないが、FCの濃度が増加するほど2次元片の粒子表面での密度が一層高いことが確認できる。これは、FCの濃度が増加するほど同一の特定時間に形成されるTiFCの2次元片の数がさらに多いためである。
【0098】
図8の(a)のXRD分析結果から、他の量のFC(0.4Mまで)が用いられても観察される結晶構造は全て同一のTiFe(CN)
6・2H
2Oであり、FCの量が増加するほどXRD内の各ピークの強度が増加することが確認できる。
【0099】
hf-TiFCの形成メカニズムを把握するために0.4M FCで合成されたhf-TiFCを時間別(10分から12時間)に合成した。
【0100】
図9の(a)のSEM分析結果のように、10分の反応時間では、TiO
2表面に2次元片ではない不規則な粒子がまばらに形成されることが観察できる。
図9の(b)のように、20分の反応条件では、TiO
2表面に2次元片の凝集が形成されることが確認でき、これは、2次元片がTiFC粒子の凝集により構成されていることを意味する。
図9の(d)、(e)及び(f)に示したように、TiO
2は、60分の反応時間以上の条件でTiFC 2次元片で全てコーティングされたことが確認できる。
【0101】
表面の構造のみが分析できるSEM装備の限界点により、hf-TiFCの内部が中空(hollow)の構造はSTEMとEDXマッピングで分析した。
図10の(a)のように、1時間の反応時間で、サンプルは内部が中空(hollow)の構造を有しない。これは、TiO
2-コア及びTiFC-シェル構造を意味する。
図10の(b)のように、EDXマッピング写真で、Ti元素がTiFCの構成元素として粒子のシェル部分にも存在するが、TiO
2の構成元素として主に粒子のコア部分に分布している。一方で、[Fe(CN)
6]
4-構成元素であるFeは粒子のシェル部分に存在するが、これは、TiO
2表面にTiFC 2次元片が成功的に形成されたことを意味する。また、
図10の(c)のように、反応時間2時間では、TiO
2-ヨーク/TiFC-シェル構造が発見される。
図10の(d)のEDXマッピングでもFe元素が主に粒子の表面に存在することが確認でき、このようなヨーク-シェル構造の形成は、1.5M HCl条件でTiO
2の溶解速度がFCの溶液からTiO
2表面への拡散速度より速いからである。結果的に、
図10の(e)及び(f)に示したように、hf-TiFCは、反応時間が進行するほど内部が中空(hollow)の構造を有するようになる。
図11及び
図12は、FCの濃度の量を0.2M及び0.1Mにそれぞれ減らした時の時間によるSTEMイメージを示している。このような場合でもTiO
2-ヨーク/TiFC-シェル構造を観察することができる。結果的に、カーケンドール(kirkendall)型拡散メカニズムがTiFCの内部の中空(hollow)の構造を形成するための主要因子と言える。
【0102】
次に、hf-TiFC合成時のHClの濃度の影響について説明する。
図13は、0.2M FCに12時間反応条件を同一にしながら溶液内のHClの濃度を0.1、0.5、1、1.5Mに変化させた。0.1M HClでは、TiO
2表面に2次元片が形成されるが、TiO
2が溶解されずに残っており、0.5M HCl条件でも2次元片はさらにたくさん形成されるが、内部が中空(hollow)の構造は形成されず、1MのHCl条件から内部が中空(hollow)の構造を有するhf-TiFCが観察され始めた。したがって、1M以上の強い酸性がhf-TiFCの内部が中空(hollow)の構造を合成するにおいて主な因子であると言える。
【0103】
多様なhf-TiFCうち0.2M FC及び12時間で製造されたhf-TiFCが最も広い表面積によりCs吸着素材に選定された。比表面積は、セシウム吸着と関連して最も大きい影響を及ぼす因子であるためである。また、最も少ないFCの濃度で最も収率が高いので、前記条件で製造されたhf-TiFCを選定した。そして、h-TiFCは、内部が中空(hollow)の構造を有するが、2次元片構造を有しておらず比較群で採択した。まず、吸着剤と非放射性セシウム溶液の比が1g/1Lの条件で初期濃度1000ppmのCsに対して24時間の間のq
t値を比較した。測定されたhf-TiFC及びh-TiFCのq
tは、それぞれ443.84mg/g、281.28mg/gである。この二つの差は、表2で示したように、主にhf-TiFCがh-TiFCに比べて3.5倍さらに大きい比表面積を有しているからであると判断される。さらに、
図14のEDXマッピング写真に示したように、TiFC構造の変化なしに吸着されたCsがTiFCに均一に分散されていることが確認できる。上の結果を通じてhf-TiFCがCsによく吸着できることを確認した。表2は、同一の実験条件でbare TiO
2、常用プルシアンブルー(PB、Fe
4(Fe(CN)
6)
3、Sigma-Aldrich ltd.)、g-TiFC(
図15)、プロトン化されたCST(HCST、
図16)及びCHA(Chabazite、Csの除去のためのゼオライト、
図17)のq
t値を示している。これらの値は、それぞれ101、60、151、205及び368mg/gである。ここで、プロトン化されたCST(HCST)は、一般的にNa-CSTに比べてさらに優れたCs吸着性質を有することが知られているので、Na-CSTの代わりにHCSTをCSTの代表群に選定した。bare TiO
2は、常用PBよりさらに高いq
t値を有するが、これは、TiO
2自体が負の電荷を有しており、403.01m
2/gの非常に高い比表面積を有しているためである。表3に示したように、hf-TiFCは、既存のCs吸着剤であるHCSTとCHAよりさらに高いq
t値を有する。
【0104】
24時間接触時間で多様な吸着剤のq
t=24h
値
【表2】
【0105】
hf-TiFC、h-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAに対するCs吸着動力学を比較評価した。
図18の(a)は、それぞれの吸着剤に対して時間当たり除去されたCsの除去率を示している。g-TiFCを除いた全ての吸着剤が吸着時間5分内に99.92%のCsが除去される非常に優れた吸着速度を示した(Cs初期濃度は、68ppm)。g-TiFCの場合、吸着平衡のためには24時間以上の時間が必要であった。一般的に、g-TiFCのように沈澱法で製造されたフェロシアン化遷移金属は、TiFC結晶粒子の凝集体で構成された2次粒子の構造的な限界によりCsの内部-結晶拡散が低下して遅い動力学を有する短所がある。
図14に示したように、g-TiFCの2次粒子のサイズは、3~5μmサイズを有する。~2μmサイズを有するhf-TiFCと~1μmサイズを有するh-TiFCは、内部が中空(hollow)の構造を有するので、g-TiFCの短所である内部-結晶拡散低下による短所がない。したがって、hf-TiFCとh-TiFCは、g-TiFCとのように沈澱法で製造された多様なMFCと比較してセシウムに対して非常に優れた吸着動力学を有する。
【0106】
速い吸着速度を有する他の吸着剤と比較するために、
図18の(a)の吸着結果を類似2次モデルで分析した(表3)。R
2値は、全て1で吸着速度が類似2次動力学によく合い、これは、速度-制限段階が化学吸着であることを意味する。特に、hf-TiFCのk
2値は、g-TiFCに比べて約11,100倍高く、これは、形態効果によるものと判断される。さらに、hf-TiFCのk
2値は、h-TiFCに比べて5.3倍さらに大きい。これは、3次元ナノ多面体が固まったTiFCで構成されたh-TiFCに比べて2次元ナノ片が重畳されたTiFCで構成されたhf-TiFCがCsの内部-結晶拡散に有利であるためである。特に、hf-TiFCの表面積がCHAの表面積である749.12m
2/gよりさらに低い63.89m
2/gの値を有するにもかかわらず、HCST及びCHAに比べてそれぞれ31.8倍及び1.57倍さらに大きいk
2値を有する。したがって、hf-TiFCは、既存のCs吸着剤と比較してもCsに対して非常に優れた吸着速度を有し、これは、実際のCs除去に適用するにおいて非常に有利である。
【0107】
h-TiFC、hf-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAのCs吸着の類似2次動力学
【表3】
【0108】
hf-TiFC、h-TiFC及びg-TiFCのCs吸着等温線実験結果を
図18の(b)に示した。等温線データは、ラングミュアモデル(
図18の(b)内の傾向線)に適用し、フィッティング結果は、表4に示した。R
2値は、全て0.99以上であって、これは、Cs吸着が断層吸着であることを意味する。hf-TiFCの最大吸着量(q
max)は、454.54mg/gであって、これは、h-TiFCの1.64倍であり、増加した有効表面積のためである。hf-TiFCとh-TiFCのq
max値が全てg-TiFCより高く、これは、g-TiFCの場合、Csに対して低い接近性を有するからである。また、内部が中空(hollow)の構造を有しないので、hf-TiFc及びh-TiFCより低いq
maxを有する。hf-TiFCのq
max値を他の吸着剤と比較するために、現在まで報告されたクレイ、常用CST、常用フェロシアン化金属、多様なゼオライトのq
max値を表5に示した。表5に示したように、hf-TiFCは、Cs吸着剤として広く用いられる常用CST(266mg/g UOP)及び常用MFCであるCsTreat(48mg/g、K
2CoFe(CN)
6、Fortum、Finlan)などの全ての他の吸着剤に比べてさらに優れたCs吸着能力を有する。
【0109】
hf-TiFc、h-TiFC及びg-TiFCのCs吸着等温線のラングミュアのフィッティング結果
【表4】
【0110】
多様な無機吸着剤によるCsの最大吸着能力(q
max
)の比較
【表5】
【0111】
a Chitra、S.;Viswanathan、S.;Rao、S.V.S.;Sinha、P.K.Uptake of Cesium and Strontium by Crystalline Silicotitanates from Radioactive Wastes。J.Radioanal.Nucl.Chem.2011、287、955-960.b Ali、I.M.;Zakaria、E.S.;Aly、H.F.Highly Effective Removal of 22Na、134Cs and 60Co from Aqueous Solutions by Titanosilicate:A Radiotracer Study.J.Radioanal.Nucl.Chem.2010、295、483-489.
【0112】
c Torad、N.L.;Hu、M.;Imura、M.;Naito、M.;Yamauchi、Y.Large Cs Adsorption Capability of Nanostructured Prussian Blue Particles with High Accessible Surface Areas.J.Mater.Chem.2012、22、18261-18267.
【0113】
d Galambos、M.;Paucova、V.;Kufcakova、J.;Rosskopfova、O.;Rajec、P.;Adamcova、R.J.Radioanal.Nucl.Chem.2010、284、55-64
【0114】
e Borai、E.H.;Harjula、R.;Malinen、L.;Paajanen、A.J.Hazard.Mater.2009、172、416-422.
【0115】
f Han、E.;Kim、Y.-G.;Yang、H.-M.;Yoon、I.-H.;Choi、M.Chem.Mater.2018、30、5777-5785.
【0116】
hf-TiFC、h-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAのCs吸着実験でpHの影響を評価した。
図18の(c)及び(d)と表6に示したように、hf-TiFC及びh-TiFCは、pH1~11まで全てのpH区間で99%以上の高い除去率を示した。しかし、CHAとCSTの除去率は、pH1でそれぞれ7.73%と88.63%に低減されるが、これは、CHAの場合、強酸条件で溶解されるためであり、HCSTの場合、過量のH+がCsの競争イオンとして作用して除去率が低下する。しかし、hf-TiFCのKd値は、全てのpHで最も優秀であり、特に、pH1及びpH11でのhf-TiFCのKd値は、現存する最も優れた吸着剤であるHCSTに比べて96倍(pH1)又は10倍(pH11)さらに高い値を有している。上の結果を通じて、hf-TiFCは、全ての吸着剤に比べて多様なpHでさらによい吸着剤であると言える。
【0117】
pH1~pH11の多様なpH範囲でhf-TiFC、HCST及びCHAに対するCs除去率及びK
d
値(初期Csの濃度は50ppmであり、吸着剤の質量及びCs溶液の体積間の比は、m/V=1g/Lで固定された)
【表6】
【0118】
海水あるいは放射性廃液に過量で存在するNa
+とK
+の影響に対して評価した。
図19及び表7は、Na
+又はK
+のCs
+モル比によるCsの除去率、K
d値を示している。モル比は、最大100,000まで実行し、初期Csの濃度は、0.79ppmである。
図19の(a)及び(b)に示したように、CHAは、428mg/g、表5の優れたq
max値を有するが、Naが過量である際に、非常に悪い選択度を示している。CHAとは異なり、hf-TiFC、h-TiFC、g-TiFC及びHCSTは、Na/Csの100,000モル比でも99.5%以上の除去率、2.05×10
5mL/g以上のK
d値を有する。しかし、hf-TiFC、h-TiFC及びg-TiFCのK
d値は、Na
+対Cs
+の割合が10000以上であるとき、HCSTよりさらに高い値を有する。これは、TiFCが基本的にCSTに比べて優れたセシウム選択度を有することを意味する。さらに、hf-TiFCのK
d値がhf-TiFCあるいはg-TiFCより多少高い最大値を有するが、これは、Naがあってもhf-TiFCのセシウム選択度が最も優れることを意味する。これらTiFC間の差は、
図4の(b)のXRD結果から分かるように、hf-TiFCがh-TiFc及びg-TiFCに比べて高い結晶性を有しているからであると判断される。
【0119】
Na
+
又はK
+
対Cs
+
の多様なモル比でhf-TiFC、h-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAに対するCsの除去率及びK
d
値(初期Csの濃度は、0.79ppmであり、吸着剤の質量及びCs溶液の体積間の比は、m/V=1g/Lで固定された)
【表7】
【0120】
特に、多様なTiFCとHCSTのCs除去率及びK
d値の差は、K
+が競争イオンでCsより1000倍以上存在するときに、Na
+競争イオンであるときよりさらに大きい差を示す(
図19の(c)及び(d))。予想したとおり、hf-TiFCは、競争イオンでK
+が存在するときも他のTiFCより優れたK
d値を有する。これは、上述したとおり、高い結晶性に起因したものと判断される。Hf-TiFCのK
d値は、K/Csのモル比が1000、10000、100000であるとき、HCSTよりそれぞれ14、79、286倍大きい。HCSTがNa
+に比べてK
+が存在するときにK
d値が急激に低くなる理由は、K
+の水和半径(3.3Å)がNA
+の水和半径(3.6Å)よりCsの水和半径(3.25Å)とさらに類似しているためである。したがって、K
+は、N
+よりCs
+にさらに威嚇的な競争イオンとして作用する。同一の理由で、hf-TiFCを含んだ全てのTiFCもNa
+よりK
+が競争イオンとして存在するときにさらに低いK
d値を有する。このような分析結果を土台に、hf-TiFCは、他のCs吸着剤、特に、HCST及びCHAと比較してさらに優れたセシウム選択度を有する。
【0121】
より現実的な実験のために、私たちは実際の放射性セシウムを用いて実験を進行した。放射性セシウム(137CS)が入っている模擬海水(10000ppm NA+、1500ppm Mg2+及び500ppm Ca2+及びK+)と酸性の模擬放射性廃液(5.7M Na+及びpH1)を準備した。放射性セシウムを含んだ模擬海水と模擬放射性廃液の放射性数値は、それぞれ109.03と117.89Bq/gである。上の値は、化学的濃度で約34.072pptと36.841pptである。表8に示したように、hf-TiFCは、99.07%を超える最も優れた除去率を示す。これは、放射性セシウムに非常に優れた選択度を示す。特に、HCSTは、模擬海水で78.93%の除去率を示し、放射性模擬廃液では81.33%の低い除去率を示した。これは、上述した非放射性セシウムで実験した結果と一致する傾向性を示す。さらに、hf-TiFCで処理した模擬海水と模擬放射性廃液の除去後、DF値は、それぞれ110と690を示した。これは、0.1mg/mLの非常に少ない吸着剤を用いたにもかかわらず非常に優れた除染係数(DF)値を示した。上の結果は、本発明のhf-TiFCの非常に優れた適用可能性を意味し、実際の原発事故時に汚染される海水や原子力施設の運営あるいは解体時に発生される多様な放射性セシウム廃液を処理し得る高い適用可能性を示唆する。
【0122】
hf-TiFC、h-TiFC、g-TiFC、HCST及びCHAによる模擬海水又は酸性の模擬放射性廃液におけるCs除去率及び除染係数(Ao:初期活性;Af:処理後最終活性)
【表8】
【0123】
本発明者らは、水から放射性Csを効果的に除去するために、酸性条件下でFC及びTi供給源としてTiO2間の簡単な反応によりhf-TiFCに対する新しい製造方法を報告した。TiFCの2次元片は、0.2Mより高いFC濃度下で生成され、酸性は、カーケンドール(kirkendall)型拡散メカニズムを意味する内部が中空(hollow)の構造の主要因子であることを確認した。g-TiFCと比較して、hf-TiFCのCs吸着特性は顕著に向上され、hf-TiFCの吸着動力学、用量及び選択度は、CHA及びCSTを含む多様なCs吸着剤のうち最も優れていた。5.7Mの塩を含有した海水及び核酸性液体廃棄物で137Csの優れた除去率は、99.1%を超過してhf-TiFCが多様な137Cs-汚染されした水原の処理可能性に優れることを示した。
【0124】
その他に、強酸性土壌の廃液に過量で存在する土壌成分(Al、Fe、Mg、Siなど)の影響に対して評価し、その結果は、
図20に示した。
【0125】
図20に示したように、Csにより汚染された土壌0.35gを35mLのoxalicacid(強酸)で除染した場合、土壌成分が一部溶解されて強酸性土壌廃液(pH1.15)内のAl、Fe、Mg及びSiイオンがCsイオンより多く存在することが確認される(Alイオン=470ppm、Feイオン=641.6ppm、Mgイオン=1100ppm、Siイオン=147.5ppm及びCsイオン=32.4ppm)。強酸性土壌廃液内のCsイオンを選択的に除去するために多様な吸着剤を用いた結果、hf-TiFCは、常用CSTなど他の吸着剤に比べてさらに優れたCs吸着能力を有することが確認される。
【0126】
Ti
4+
及びFCの反応時間によるSr吸着実験
追加的に、100mgの水和TiO2粒子を1.5M HCl溶液に分散させた後、FCが含有された1.5M HCl溶液と素早く混合して分散液を製造した。このとき、分散液内のTiO2粒子の濃度は、1.0g/Lであり、FCの濃度は、0.2Mである。その後、多様な時間で反応を行って放射性核種吸着剤を製造し、これを用いてSr吸着実験を実行した。表9は、Ti4+及びFCの反応時間によるSrの除去率、qe値及びKd値を示している。表9に示したように、Ti4+及びFCの反応時間が2時間以下である場合には、TiO2粒子の表面に形成されたTiFCシェルがTiO2を遮断するようになるので(コア-シェル構造)、Sr吸着性能が大きく低下する問題点があり、Ti4+及びFCの反応時間が長くなることによって、TiO2粒子及びTiFCシェルの間に中空を形成してTiO2が周辺の溶液に露出される面積が広くなるので(ヨーク-シェル構造)、Srの吸着性能がさらに増大する。したがって、Ti4+及びFCの反応時間が8時間である場合、Sr吸着性能が最大であり、Kd値が498.43mL/gでbare TiO2の約1/2レベルであるが、これは、TiO2粒子が一部溶解されてSrの吸着のためのTiO2粒子内のsiteが減ったからである。一方、Ti4+及びFCの反応時間が12時間以上である場合には、TiO2粒子がますます小さくなるか一部では完全に溶解されてSrの吸着性能が低下する。一方、TiO2粒子が完全に溶解された場合にもSrをある程度吸着させ得るが、これは、内部の中空にSrを封じ込められるからである。
【0127】
Ti
4+
及びFCの反応時間によるSrの除去率、q
e
値及びK
d
値(吸着剤の質量及びCs溶液の体積間の比は、m/V=0.5g/Lで固定され、Sr吸着時間は、24時間)
【表9】
【0128】
<実施例12:ビード型放射性核種吸着剤の製造>
hf-TiFCを適用したビード型放射性核種吸着剤の製造
まず、脱イオン水にアルギン酸ナトリウムを可溶化して2(w/v)%アルギン酸ナトリウム溶液を製造した。このとき、溶液は、黄色の粘性溶液である。一方、アルギン酸ナトリウム溶液に吸着剤を適用するために、2(w/v)%アルギン酸ナトリウム溶液の重量を1にしたとき、添加されるNaX(Na
86(AlO
2)
86(SiO
2)
106・xH
2O、2μm、sigma-aldrich)の重量を0.5~2に調節し、添加されるhf-TiFCの重量を0.5~2に調節してアルギン酸ナトリウム組成物を製造した後に十分に混合し、これをピペットを通じてCaCl
2溶液に一滴ずつ落とす。その結果、0.01M及び0.05M CaCl
2溶液ではアルジネートゲルビードが形成されないが、これは、Caイオンの濃度が低くてCa-アルジネートゲルが十分に架橋されないからである。したがって、Ca-アルジネートゲルを十分に形成させるためにCaCl
2溶液を0.5mで固定した。
図21の右側写真は、2(w/v)%アルギン酸ナトリウム溶液の重量を1にしたとき、添加されるNaX及びhf-TiFCの重量を全て2に調節して製造されたアルジネートゲルビード(Bead-3)を示すもので、アルジネートゲルビードの平均粒子サイズは、約1~2mmである。その後、形成されたアルジネートゲルビードを24時間の間撹拌しながらCaCl
2溶液で硬化させた後、蒸溜水を用いて十分に洗浄した。最終製造されたアルジネートビードは、hf-TiFCの色である暗い青緑色であり、最終製造されたアルジネートビードの分散された水溶液は、透明な色であると確認されるが、これは、最終製造されたアルジネートビードでNaX(白色)又はhf-TiFC(青緑色)が外部に再放出されなかったことを意味し、アルジネートビードにNaX及びhf-TiFCが全て成功的に封入されたものと判断できる。
【0129】
NaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードの最終製造のための2(w/v)%アルギン酸ナトリウム溶液、NaX及びhf-TiFCの重量比
【表10】
【0130】
hf-TiFCを適用したビード型放射性核種吸着剤の特性の評価
図22は、表11の重量比によって最終製造されたアルジネートビードのFTIRスペクトラム分析結果を示している。アルギン酸ナトリウムは、多様な作用基を有するので多くのピークが検出され得る。純粋アルジネートのFTIRスペクトラムの分析結果を見ると、3000-3500cm
-1で強いピークを示すが、これは、-OHグループの存在を示す。また、1613及び1417cm
-1でピークは、それぞれ-COOHグループの非対称及び対称伸縮振動を示す。そして、1027cm
-1及び1097cm
-1でピークは、OC-OHを示す。Caイオンと架橋した後に形成されるアルジネートビードは、3610及び1670cm
-1で新しいピークを示すが、このような変化は、アルギン酸ナトリウムのOH-及び-COOグループが架橋されることによって現われるピークであると見られる。
図22に示したように、最終製造された全てのアルジネートビードは、1670cm
-1でピークを示すが、これは、Ca-アルジネートゲルが形成されたことを意味する。また、hf-TiFC、NaXなどの吸着剤を適用したアルジネートビードと吸着剤を適用しないアルジネートビードのFTIRスペクトラムを比較したとき、吸着剤を適用したアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)の全てのFTIRスペクトラムにおいて2065cm
-1で強いピークが新しく現われた。これは、シアナイドグループ(-C≡N-)の伸縮振動を示し、hf-TiFC内部のフェロシアナイドのシアナイドグループから起因したと見られる。したがって、アルジネートビード内にhf-TiFCが成功的に封入されたことが確認される。
【0131】
また、吸着剤を適用したアルジネートビードの構造を調べるためにbead-3内部をSEMで分析した。NaXの平均粒子サイズは、約2μmであり、hf-TiFCの平均粒子サイズも約2μmである。
図23に示したように、NaX及びhf-TiFCがアルジネートビード内に成功的に封入されたことが確認できる。さらに、アルジネートビードは、広い分布の気孔サイズを有する多孔性微細構造で構成されているので、水溶液上に存在するCs及びSrイオンがビード内部に自由に移動できる。このような特性は、吸着剤によるCs及びSrイオンの除去を容易にするものと予測した。
【0132】
また、NaX及びhf-TiFCの重量比によって製造された多様なアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)の有・無機成分の含量を調査するためにTGA分析を行い、測定結果を
図24に示した。結果から分かるように、添加されるNaX及びhf-TiFCの重量比が増加するほどTGA分析後に残っている残存物の含量が増加することが確認できる。このとき、吸着剤を適用しないアルジネートビードの場合、900℃に加熱すると、アルジネートビードからアルジネート高分子が完全に分解されるので残留物は大部分Caと判断される。一方、NaX及びhf-TiFCが添加されたアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)の場合、NaX及びhf-TiFCの有機成分のみ分解されるので、これらの無機成分は残留物として残っていることになる。したがって、TGA分析結果だけではアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)内に含まれたNaX及びhf-TiFCの含量を正確に把握できないので、アルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)を完全に化学分解した後、NaXの無機成分であるAlとSiの含量とhf-TiFCの無機成分であるFeの含量を分析し、その結果を表11に示した。表11に示したように、添加されるNaX及びhf-TiFCの重量比が増加するほどAl、Si及びFeの含量が増加することが確認でき、これを通じてアルジネートビード内部にNaX及びhf-TiFCが成功的に封入されたことを確認した。
【0133】
次に、NaX及びhf-TiFCが添加されたアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)の膨潤率(swelling ratio)を調査して製造されたアルジネートビードの水分吸収特性を評価した。水分吸収特性は、汚染水内のCs及びSrを除去するにおいて非常に重要な指標になる。膨潤率は、次の式を用いて測定した:
【0134】
Swelling Ratio(SR)%=(Ws-Wd)Wd×100
【0135】
ここで、Wdは、凍結乾燥後に乾燥されたアルジネートビードの重量であり、Wsは、48時間の間水に浸した後のアルジネートビードの重量である。吸着剤を適用しないアルジネートビードと吸着剤を適用したアルジネートビード(bead-1、bead-2及びbead-3)の膨潤率は、それぞれ4700、1400、940及び770で測定された。アルジネートビード内のNaX及びhf-TiFCの重量比が増加するほどアルジネートビードの水分吸収特性が低下して膨潤率が減少するものと判断される。たとえ、NaX及びhf-TiFCを添加した後に本来のアルジネートビードが有する水分吸収能力は低下しても、表11から確認されるように、最小770%を超過する結果値は、Cs及びSrを含有する汚染水を吸収するために十分に高いので、汚染水の処理に適合であると判断される。
【0136】
NaX及びhf-TiFCを適用した多様なアルジネートビード内のAl、Si及びFeの含量
【表11】
【0137】
hf-TiFCを適用したビード型放射性核種吸着剤の構造的安定性の評価
NaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードの構造的安定性を地下水条件下で評価するために、bead-3を選定して地下水模写水溶液に分散させた後、時間による水溶液内のAl及びTiの濃度を分析した。Alは、NaXの構成成分であり、Tiは、hf-TiFCの構成成分であって、時間別に溶出されるAl及びTiの濃度を測定することで各吸着剤に対する時間別溶解程度を把握することができる。アルジネートビードから放出されるAl及びTiの初期濃度を100%とするとき、時間別に放出されるAl及びTiの濃度を%単位で変換した後に表12に示した。表12に示したように、アルジネートビードから放出されるAl及びTiの浸出量は、2週の長い時間にもかかわらず0.07%以下を維持した。このような結果を通じてNaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードは、地下水条件でも2週間非常に安定的に構造を維持し、実際の汚染地下水の浄化時にも長期間適用が可能な吸着媒質であると判断される。
【0138】
地下水条件でNaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードから時間別に放出されるAl及びTiの浸出量
【表12】
【0139】
蒸溜水条件でCs及びSr吸着性能の評価
蒸溜水内の単一成分でCs
+(1ppm)又はSr
2+(1ppm)が存在する場合(single component)、多様なアルジネートビードがCs
+又はSr
2+を吸着するか否かを確認した。10mgの多様なアルジネートビードを10mLのCs
+(1ppm)又はSr
2+(1ppm)溶液に浸した後に24時間の間撹拌し、吸着前後のCs
+又はSr
2+の濃度をICP-MSで分析した。
図25の(a)に示したように、NaX及びhf-TiFCを適用しないアルジネートビードの場合、Cs除去率が10.27%で非常に低いことが確認されるが、これは、NaX及びhf-TiFCのような吸着剤がアルジネートビード内部に全くないからである。反対に、Sr除去率は、96.67%で非常に高いことが確認されるが、これは、Sr-アルジネートの架橋結合効果によると見られる。すなわち、NaX及びhf-TiFCの有無と関係なく全てのアルジネートビードでSr除去率は、最小96.67%以上で優れている一方、Cs除去率は、NaX及びhf-TiFの含量が増加するほど徐徐に向上され、NaX及びhf-TiFCの含量が最も少ないbead-1の場合にもCs除去率が98.2%で非常に高いことが確認される。
【0140】
また、蒸溜水内の複合成分でCs
+(1ppm)又はSr
2+(1ppm)が存在する場合(multi component)、多様なアルジネートビードがCs
+又はSr
2+を吸着するか否かを確認した。10mgの多様なアルジネートビードを10mLのCs
+(1ppm)又はSr
2+(1ppm)溶液に浸した後に24時間の間撹拌し、吸着前後のCs
+及びSr
2+の濃度をICP-MSで分析した。
図25の(b)に示したように、single componentの結果と比較して、Cs
+及びSr
2+の同時除去率は、大きく変化せずに類似した除去率値を維持した。これはhf-TiFの場合、Csのみを選択的に吸着する特性がある一方、NaXの場合、Cs
+及びSr
2+の区分なしに多様なイオンとイオン交換できる汎用イオン交換体であるからである。このような結果を通じて、NaX及びhf-TiFCが適用されたアルジネートビードは、蒸溜水条件でCs
+及びSr
2+を同時に97%以上除去できることを確認した。
【0141】
地下水条件でCs及びSr吸着性能の評価
地下水条件の溶液(Naイオン=125ppm、Caイオン=25ppm、Mgイオン=10ppm及びKイオン=5ppm)にCs
+(1ppm)又はSr
2+(0.667ppm)を注入した後、多様なアルジネートビードがCs
+又はSr
2+を吸着するか否かを確認した。ICP-MSを通じて吸着前後のCs
+及びSr
2+濃度を計算して除去率(%)とK
d値を計算した。
図26に示したように、NaX及びhf-TiFCを適用しないアルジネートビードの場合、Cs除去率が1.27%で高濃度の競争イオンによりCsを全く吸着しなかった反面、Sr-アルジネート架橋結合効果により競争イオンが存在するにもかかわらず50.35%のSr除去率を示した。一方、NaX及びhf-TiFCを適用したアルジネートビードの場合、Csを選択的に吸着することができるhf-TiFCの存在により96.7%以上のCs除去率を示し、hf-TiFCの含量が増加するほどCs除去率は徐徐に向上された。同様に、NaXの含量が増加するほどSr除去率も多少向上されたが、最大Sr除去率が65.38%で蒸溜水条件に比べて大きく低下することを確認した。これは、NaXの場合、Srに対する選択性がないイオン交換体として溶液内のSr(0.667ppm)の競争イオンであるCaイオン、Mgイオンが過量存在するからである。
【0142】
<実施例3:磁性放射性核種吸着剤の製造>
Fe
3O
4ナノ粒子(平均直径:100nm)を準備し、その上に10nm厚さのSiO
2層をコーティングした。SiO
2層がコーティングされたFe
3O
4ナノ粒子表面上に10~200nm厚さのTiO
2層をコーティングした。TiO
2層/SiO
2層がコーティングされた磁性粒子(100mg)を1.5M HCl溶液に分散させた後、フェロシアン化カリウム(FC、K
4Fe(CN)
6・3H
2O)が含有された1.5M HCl溶液を塗布した。塗布された総溶液内の粒子の濃度は、1.0g/Lであり、FCの濃度は0.2Mである。その後、25℃で12時間の間反応させてflower-like titanium ferrocyanideを有する磁性放射性核種吸着剤を製造した(
図27参照)。
【0143】
<実施例4:複合型放射性核種吸着剤の製造>
ナトリウム結晶シリコチタネート(Na-CST;
図16のHCSTの製造のために合成されたsodium crystaline silicotitanate、Poojary、D.M.;Cahill、R.A.;Clearfield、A.Synthesis、Crystal Structures、and Ion-Exchange Properties of a Novel Porous Titanosilicate。Chem.Mater.1994、6、2364-2368.)を準備し、その表面上に10~200nm厚さのTiO
2層をコーティングした。TiO
2層がコーティングされたナノ粒子(100mg)を1.5M HCl溶液に分散させた後、フェロシアン化カリウム(FC、K
4Fe(CN)
6・3H
2O)が含有された1.5M HCl溶液を塗布した。塗布された総溶液内の粒子の濃度は、1.0g/Lであり、FCの濃度は0.2Mである。その後、25℃で12時間の間反応させてflower-like titanium ferrocyanideを有する複合型放射性核種吸着剤を製造した(
図28参照)。
【0144】
上述した本発明の説明は例示に過ぎず、本発明が属する技術分野の通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解すべきである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。