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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-21
(45)【発行日】2022-03-02
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20220222BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
A61M25/00 534
A61M25/14 512
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021014858
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2021-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596147736
【氏名又は名称】森 厚夫
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】森 厚夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 篤志
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513458(JP,A)
【文献】特公平01-023142(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0129095(US,A1)
【文献】特開2017-148098(JP,A)
【文献】特表2003-504132(JP,A)
【文献】特開2006-110339(JP,A)
【文献】特表2014-524285(JP,A)
【文献】特表2013-543410(JP,A)
【文献】米国特許第5718678(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを備え、硬膜外腔への液体注入用のカテーテルであって、
内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する複数の第1側孔が形成されている第1内腔と、
前記第1内腔と流体連通しないように隔離されているとともに、内側から外側へ流れる第2液体の流路を構成する複数の第2側孔が形成されている第2内腔と、
前記第1内腔及び前記第2内腔と流体連通しないように隔離されているとともに、内側から外側へ流れる第3液体の流路を構成する複数の第3側孔が形成されている第3内腔とを備え、
前記第1内腔には、前記第1液体の流出を阻害する第1閉塞部が前記第1側孔よりも前記遠位端側に形成されており、
前記第1側孔は、前記カテーテルの長さ方向において互いに離隔するように形成されており、
前記第2内腔には、前記第2液体の流出を阻害する第2閉塞部が前記第2側孔よりも前記遠位端側に形成されており、
前記第2側孔は、前記長さ方向において互いに離隔するように、前記第1側孔よりも前記近位端側に形成されており、
前記第3内腔には、前記第3液体の流出を阻害する第3閉塞部が前記第3側孔よりも前記遠位端側に形成されており、
前記第3側孔は、前記長さ方向において互いに離隔するように、前記第2側孔よりも前記近位端側に形成されており、
前記第1内腔は、前記第1液体を流入させる第1延長部に接続され、且つ前記第2内腔及び前記第3内腔と隣り合って延在しており、
前記第2内腔は、前記第2液体を流入させる第2延長部に接続され、且つ前記第1内腔及び前記第3内腔と隣り合って延在しており、
前記第3内腔は、前記第3液体を流入させる第3延長部に接続され、且つ前記第1内腔及び前記第2内腔と隣り合って延在しており、
前記第1内腔、前記第2内腔、及び前記第3内腔は、前記長さ方向に沿って捩じれた形状を有している、カテーテル。
【請求項2】
前記第1側孔、前記第2側孔、及び前記第3側孔の少なくとも一つは、前記カテーテルの中心線を中心に少なくとも一周するように配列している、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
複数の前記第1側孔、複数の前記第2側孔、及び複数の前記第3側孔は、互いに隣接する側孔のうち、前記遠位端側にある一方の側孔の位置が他方の側孔の位置とは、前記長さ方向及び前記長さ方向に直交する円周方向において異なるように配列されている、請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1側孔、前記第2側孔、及び前記第3側孔は、前記長さ方向に直交する円周方向で異なる向きに開口するように形成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1側孔、前記第2側孔、及び前記第3側孔が形成されている側孔形成領域よりも前記近位端側に側孔非形成領域が設けられており、
前記側孔形成領域は、前記長さ方向において前記側孔非形成領域よりも長い、請求項1から4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第2閉塞部が、前記第1側孔が形成されている第1領域と、前記第2側孔が形成されている第2領域との間に形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第3閉塞部が、前記第2領域と、前記第3側孔が形成されている第3領域との間に形成されている、請求項6に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側孔が形成されているカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一のルーメンおよび第二のルーメンを含むマルチルーメン・カテーテル組立体が記載されている。当該マルチルーメン・カテーテル組立体は、ユニタリーカテーテル、第一の末端管、第二の末端管、ハブ、第一の延伸管、および第二の延伸管を含んでいる。そして、第一の末端管および第二の末端管は、各末端における末端孔に加え、末端近くの複数の側孔を有している。また、側孔は、第一の末端管及び第二の末端管の外側の部位から内側の部位に流れる流体、内側の部位から外側の部位に流れる流体のための流路を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-510301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背骨の横断面図である図1を用いて、硬膜外腔へ疼痛治療のために麻酔薬又は鎮痛剤などの液体を注入する様子を説明する。まず、ステンレス管よりなる外套管針と、ステンレス棒よりなる内套芯棒とによる二重針で構成されている硬膜外針を、硬膜外腔へ穿刺する。そして、硬膜外腔へ到達している内套芯棒を抜去して、外套管針の中を通して液体注入用のカテーテル100を硬膜外腔の所望の部位まで挿入する。続いて、カテーテル100を残したまま外套管針を抜去して、カテーテル100を留置する。そして、カテーテル100を介して液体を注入する。
【0005】
カテーテル100の留置部位のみに麻酔薬などの薬液を注入すると、留置部位の神経のみしか薬液の効果が及ばない。しかし、全部位に行き渡る量の薬液を注入すると患者に害があるので、薬液の量を増やすことはできない。そのため、薬液の量を増やすことなく、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るカテーテルは、近位端と遠位端とを備える液体注入用のカテーテルであって、内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する複数の第1側孔が形成されている第1内腔を備え、前記第1内腔には、前記第1液体の流出を阻害する第1閉塞部が前記第1側孔よりも前記遠位端側に形成されており、前記第1側孔は、前記カテーテルの長さ方向において互いに離隔するように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
これにより、各側孔から確実に薬液を流出させて、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】背骨の概略横断面図である。
図2】第1実施形態に係るカテーテルの概略側面図である。
図3】第2実施形態に係るカテーテルの概略説明図である。
図4】第3実施形態に係るカテーテルの概略説明図である。
図5】第4実施形態に係るカテーテルの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。
【0010】
[第1実施形態]
図2は近位端Pと遠位端Dとを備える液体注入用のカテーテル100の側面を示しており、図2Aは複数の第3側孔36が形成されている第3領域3AのA-A断面を示す。また、図2Bは複数の第2側孔26が形成されている第2領域2BのB-B断面を示し、図2Cは複数の第1側孔16が形成されている第1領域1CのC-C断面を示す。さらに、図2Dは、遠位端D側から見た閉塞部60を示している。なお、図2においては、カテーテル本体50の一部の図示を省略している。
【0011】
カテーテル100は、カテーテル本体50と、第1延長チューブ10と、第2延長チューブ20と、第3延長チューブ30と、ハブ40とを備えている。当該ハブ40は、カテーテル100を患者に固定するために、一対のウィング41を有している。ウィング41は、ハブ40の略中央部分から水平方向に伸びている。
【0012】
また、カテーテル100は、第1延長チューブ10と接続されている第1コネクタ11と、第2延長チューブ20と接続されている第2コネクタ21と、第3延長チューブ30と接続されている第3コネクタ31とを備えている。第1コネクタ11、第2コネクタ21、及び第3コネクタ31は、カテーテル100の近位端Pに設けられており、麻酔液等の液体(例えばキシロカイン)が充填されたシリンジ、又は流体回路等と接続される。一例として、第1コネクタ11に接続されるシリンジに第1液体が充填され、第2コネクタ21に接続されるシリンジに第2液体が充填され、第3コネクタ31に接続されるシリンジに第3液体が充填される。第1液体、第2液体、及び第3液体は、同一の液体であってもよい。ただし、第1液体、第2液体、及び第3液体の少なくとも一つが異なる薬液であってもよい。例えば、麻酔液と冷却水を患者へ注入してもよい。
【0013】
図2Aから図2Cに示すように、カテーテル本体50には、第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15が形成されている。第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15は、互いに並んで延在している。すなわち、第3内腔35は、第1内腔15及び第2内腔25と並んで延在しており、且つ第1内腔15及び第2内腔25と流体連通しないように隔壁によって隔離されている。また、第2内腔25は、第1内腔15と並んで延在しており、第1内腔15と流体連通しないように隔壁によって隔離されている。
【0014】
第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15は、いずれも略扇形の断面形状を有している。ただし、第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15は、円形、楕円形、多角形、又は涙形等の他の断面形状を有していてもよい。また、第1内腔15は、第3内腔35及び第2内腔25よりも大きい。一例として、図2Aに示す断面において、第1内腔15の幅W1は、約1.63mmであり、第2内腔25及び第3内腔35の幅W2は約1.17mmである。なお、一例として、カテーテル100の長さ方向LDにおいて、カテーテル本体50の長さは約30cmである。ただし、カテーテル本体50の長さは約20cmから約70cmまでの範囲で選択されてもよい。さらに、カテーテル本体50の直径は、遠位端Dに向かうにつれて徐々に小さくなっている。具体的に、カテーテル本体50の直径は、約2.54mmから約1.98mmまで遠位端Dに向かうにつれて徐々に小さくなる。
【0015】
第3延長チューブ30は第3内腔35と流体連通しており、第3内腔35には内側から外側へ流れる第3液体の流路を構成する複数の第3側孔36が形成されている。また、第2延長チューブ20は第2内腔25と流体連通しており、第2内腔25には内側から外側へ流れる第2液体の流路を構成する複数の第2側孔26が形成されている。そして、第1延長チューブ10は第1内腔15と流体連通しており、第1内腔15には内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する複数の第1側孔16が形成されている。一例として、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、パンチング加工によって形成できる。
【0016】
第3側孔36は、長さ方向LDにおいて互いに離隔するように、第3側孔36同士が、長さ方向LDにおいて離れた位置に形成されている。そして、第3側孔36は、第2側孔26よりも近位端Pに近い位置に形成されている。また、図2において第3側孔36は、長さ方向LDに直線状に並んで配列している。また、第2側孔26は、長さ方向LDにおいて互いに離隔するように、第2側孔26同士が、長さ方向LDにおいて離れた位置に形成されている。そして、第2側孔26は、第1側孔16よりも近位端Pに近い位置に形成されている。また、図2において第2側孔26は、長さ方向LDに直線状に並んで配列している。
【0017】
さらに、第1側孔16は、長さ方向LDにおいて互いに離隔するように、第1側孔16同士が、長さ方向LDにおいて離れた位置に形成されている。そして、第1側孔16は、第2側孔26よりも遠位端Dに近い位置に形成されている。また、図2において第1側孔16は、長さ方向LDに直線状に並んで配列している。一例として、側孔同士の間隔は1cmから5mmである。第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、等間隔で配列されている。なお、薬液の分布に偏りが生じる可能性を考慮しなければ、不規則な間隔で各側孔同士が形成されていてもよい。また、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36においては、複数の側孔が二列又は三列に配列されていてもよく、複数の側孔がジグザグに並んだ千鳥配列であってもよい。
【0018】
一例として、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、それぞれ5個から10個形成されており、図2の例では5個ずつ形成されている。しかし、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、2個から4個、又は6個以上形成されていてもよい。また、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、円形の形状を有している。ただし、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、扇形、楕円形、多角形、又は涙形等の他の形状を有していてもよい。
【0019】
一例として、第1側孔16が形成されている第1領域1Cは、遠位端Dから1cm離れた位置に設けられている。また、第1領域1Cと、第2側孔26が形成されている第2領域2Bと、第3側孔36が形成されている第3領域3Aとは、それぞれカテーテル100の長さ方向において5cmから10cm程度の長さを有する。第1領域1Cと第2領域2B、及び第2領域2Bと第3領域3Aとは隣接しているが、領域同士の間に間隔が設けられていてもよい。さらに、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36が形成されている側孔形成領域よりも近位端Pに近い位置には、側孔非形成領域4Dが設けられている。そして、第1領域1C、第2領域2B、及び第3領域3Aからなる側孔形成領域は、長さ方向LDにおいて側孔非形成領域4Dよりも長い。一例として、側孔非形成領域4Dの長さは10cmから15cmであり、側孔形成領域の長さは20cmから30cmである。
【0020】
さらに、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、長さ方向LDにおいて異なる位置に形成されている。すなわち、第3側孔36が形成されている第3領域3Aと、第2側孔26が形成されている第2領域2Bと、第1側孔16が形成されている第1領域1Cとの位置は、長さ方向LDにおいて異なる。つまり、第3領域3Aと、第2領域2Bと、第1領域1Cとは、互いに重なり合わないように設定されている。これにより、頭尾方向で異なる位置にある部位に対して、同時に薬液の効果を及ぼすことができる。例えば、麻酔液を硬膜外腔に注入して、胸椎及び腰椎の両方の神経に鎮痛効果を及ぼすことができる。さらに、頸椎、胸椎及び腰椎の神経に鎮痛効果を及ぼすこともできる。
【0021】
加えて、薬液による効果(例えば鎮痛効果)が高い注入位置を探ることができる。例えば、第1内腔15を介した注入、第2内腔25を介した注入、及び第3内腔35を介した注入のそれぞれの鎮痛効果を比較できる。これによって、より鎮痛効果が高い注入位置を把握できる。さらに、ペインコントロール又は疼痛管理をすることができる。すなわち、薬液による効果が高い注入位置の注入量を選択的に増減できる。そして、患者が痛みを感じる部位が時間に応じて変化する場合であっても、患者が痛みを感じる部位の注入位置に対応させて注入量を調整できる。
【0022】
また、第1側孔16、第2側孔26、及び第3側孔36は、円周方向で異なる向きに開口するように形成されている。具体的に、第3側孔36は図2中上方に開口しており、第2側孔26は図2中下方に開口しており、第1側孔16は図2中側方に開口している。これにより、側孔の形成位置が分散されるので、カテーテル本体50の強度の低下を抑制できる。さらに、カテーテル本体50の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できるので、薬液の分布の偏りを抑制できる。
【0023】
また、カテーテル100は、液体の流出を阻害する閉塞部60を備えている。図2の例では、カテーテル100の遠位端Dが封止されている。具体的に、図2Dに示すように、第1内腔15には、第1液体の流出を阻害する第1閉塞部61が形成されている。そして、第1閉塞部61は、第1側孔16よりも遠位端Dに近い位置に形成されている。また、第2内腔25には、第2液体の流出を阻害する第2閉塞部62が形成されている。そして、第2閉塞部62は、第2側孔26よりも遠位端Dに近い位置に形成されている。さらに、第3内腔35には、第3液体の流出を阻害する第3閉塞部63が形成されている。そして、第3閉塞部63は、第3側孔36よりも遠位端Dに近い位置に形成されている。
【0024】
一例として、閉塞部60は、各内腔を溶着することによって形成できる。代替的に、閉塞部60となる蓋状の部材を遠位端Dに接着してもよい。また、各閉塞部の形成位置は、遠位端D又は遠位端Dの近傍には限定されない。例えば、第2領域2Bの近傍、又は第1領域1Cと第2領域2Bの間に第2閉塞部62を形成してもよい。さらに、第3領域3Aの近傍、又は第2領域2Bと第3領域3Aとの間に第3閉塞部63を形成してもよい。第1閉塞部61、第2閉塞部62、及び第3閉塞部63は、一体的に閉塞部60を構成してもよい。ただし、閉塞部60を遠位端Dに形成することによって、閉塞部60を通過して遠位端Dから漏出する液体を視覚的に確認することが容易となる。また、第1閉塞部61、第2閉塞部62、及び第3閉塞部63が、それぞれ別体であってもよい。各閉塞部が形成されていることによって、先端の開口から薬液が流出する場合と比較して、内腔のそれぞれに対応して異なる位置に形成されている側孔から確実に薬液を注入できる。
【0025】
第1実施形態のカテーテル100によれば、各側孔から確実に薬液を流出させて、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることができる。さらに、患者の頭尾方向における複数の部位に薬液を注入できる。加えて、薬液による効果が高い注入位置を把握できる。なお、閉塞部60は液体の流出を完全に阻害するように構成されているが、閉塞部の少なくとも一つは、わずかに薬液を透過させるフィルター等で構成されていてもよい。この場合であっても、各閉塞部を透過する薬液の流出が阻害される結果、殆どの薬液は各側孔から流出するため、広い範囲の部位に薬液の効果を及ぼすことができる。
【0026】
[第2実施形態]
図3を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態は、カテーテル200における複数の側孔の配列が、第1実施形態と異なる。具体的に、カテーテル200において、複数の側孔は、カテーテル本体250の外周面上において互いに離隔するように開口している。さらに、隣接する側孔216A,216B同士のうち、遠位端D側にある一方の側孔216Aの位置が、近位端P側にある他方の側孔216Bの位置とは、カテーテル本体250の長さ方向LD及び長さ方向LDに直交する円周方向CDにおいて異なるように、複数の第1側孔216が配列されている。なお、図3においては、説明の便宜上、複数の第1側孔216を主に図示している。ただし、第2内腔225及び複数の第2側孔226と、第3内腔235及び複数の第3側孔(不図示)とは、第1内腔215及び複数の第1側孔216と同様の態様でカテーテル本体250に形成されている。そのため、以下では第1内腔215及び複数の第1側孔216について説明し、他の説明は省略する。また、図3において、第1内腔215、第2内腔225及び第3内腔235は外部から視認できないが、説明の便宜上破線で図示している。また、破線で示した第1側孔216は、図3の観察方向を表側としたときに、カテーテル200の裏側に位置する。
【0027】
なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0028】
カテーテル200においては、内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する第1側孔216が、カテーテル本体250の外周面上において互いに離隔するように開口している。さらに、互いに隣接する側孔216A,216Bのうち、遠位端D側にある一方の側孔216Aの位置が、近位端P側にある他方の側孔216Bの位置とは、カテーテル本体250の長さ方向LDにおいて異なり、且つ長さ方向LDに直交する円周方向CDにおいて異なるように、複数の第1側孔216が配列されている。なお、円周方向CDとは、略円柱状のカテーテル本体250の外周面に沿った方向である。
【0029】
具体的に、カテーテル本体250の外周面に沿って少なくとも一周するように、長さ方向LDに延びる第1領域1Cが設定されている。そして、10個の第1側孔216が、長さ方向LDにおいて互いに離隔するように、カテーテル本体250の外周面に沿って、カテーテル本体250の中心線を中心に少なくとも一周するように配列している。そのため、複数の第1側孔216は、カテーテル本体250の周囲に向かって各方向に開口している。また、第1側孔216と同様に、第2側孔226及び第3側孔(不図示)も、カテーテル本体250の外周面に沿って、カテーテル本体250の中心線を中心に少なくとも一周するように配列されている。一例として、このような配列は、第1実施形態のカテーテル本体50を、元の形状に復帰しないように捩じることによって形成できる。なお、第1側孔216は、長さ方向LDにおいて等間隔に形成されている。ただし、第1側孔216同士の間隔が不一致であってもよい。間隔が不一致である場合であっても、カテーテル本体250の外周面に沿って少なくとも一周するように第1側孔216を配列する。なお、第1側孔216の数は10個より少なくともよく、又は11個以上であってもよい。
【0030】
図1に示すように、硬膜外腔の両側にはそれぞれ神経が存在している。そのため、各側孔がいずれか一方の神経に向いていると、薬液の分布に偏りが生じてしまう。すなわち、一方の神経に効果を及ぼす薬液の量と、他方の神経に効果を及ぼす薬液の量とが異なってしまう。そのため、薬液の効果を発揮させる効率が低下してしまう。これに対して、第2実施形態のカテーテル200によれば、複数の側孔がいずれか一方の神経にのみ向いてしまうことを抑制できる。その結果、カテーテル本体250の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できる。これにより、両方の神経に薬液の効果を及ぼすことができる。
【0031】
以上説明した第2実施形態のカテーテル200によれば、各側孔から確実に薬液を流出させて、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることができる。さらに、患者の頭尾方向における複数の部位に薬液を注入できる。加えて、薬液による効果が高い注入位置を把握できる。また、カテーテル本体250の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できるので、薬液の分布の偏りを抑制できる。
【0032】
[第3実施形態]
図4を参照して第3実施形態について説明する。図4Aは第3側孔336を通るA’-A’断面を示し、図4Bは第2側孔326を通るB’-B’断面を示し、図4Cは第1側孔316を通るC’-C’断面を示す。第3実施形態は、カテーテル300における複数の側孔の配列が、第1及び第2実施形態と異なる。具体的に、カテーテル300において、複数の側孔は、カテーテル本体350の外周面上において互いに離隔するように開口している。さらに、複数の第1側孔316、複数の第2側孔326、及び複数の第3側孔336は、カテーテル本体350の長さ方向LDにおいて互い違いとなるように配列されている。なお、第1内腔315、第2内腔325、及び第3内腔335は、その図示が省略されているが、第1実施形態と同様に形成されている。また、第3実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0033】
図4Aから図4Cに示すように、カテーテル本体350には、第3内腔335、第2内腔325、及び第1内腔315が形成されている。第3内腔335、第2内腔325、及び第1内腔315は、互いに隔壁によって隔離された状態で並んで延在している。そして、カテーテル300においては、内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する第1側孔316が、カテーテル本体350の外周面上において互いに離隔するように開口している。すなわち、図4Cに示すように、各第1側孔316は、第1内腔315に至る貫通孔である。また、内側から外側へ流れる第2液体の流路を構成する第2側孔326が、カテーテル本体350の外周面上において互いに離隔するように開口している。そして、図4Bに示すように、各第2側孔326は、第2内腔325に至る貫通孔である。さらに、内側から外側へ流れる第3液体の流路を構成する第3側孔336が、カテーテル本体350の外周面上において互いに離隔するように開口している。そして、図4Aに示すように、各第3側孔336は、第3内腔335に至る貫通孔である。
【0034】
第1側孔316は、カテーテル本体350の長さ方向LDにおいて、第1側孔316は直線状に並ぶように配列されている。すなわち、第1側孔316は、各第1側孔316の中心が直線上に位置するように配列されている。そして、第2側孔326及び第3側孔336も、第1側孔316と同様に配列されている。ただし、複数の第1側孔316は、長さ方向LDにおいて、直線状に並んでいなくともよい。例えば、複数の第1側孔316の各中心を結んだ線がジグザクに、又は湾曲するように、複数の第1側孔316が配列されていてもよい。また、各第1側孔316は、カテーテル本体350の外周面に沿った円周方向において、第2側孔326及び第3側孔336を含む他の側孔とは異なる位置に形成されている。すなわち、複数の第1側孔316、複数の第2側孔326、及び複数の第3側孔336は、円周方向において互いに異なる向きに開口するように形成されている。また、第2側孔326及び第3側孔336についても同様である。さらに、複数の第1側孔316と、第2側孔326及び第3側孔336の少なくとも一方との配列態様が異なっていてもよい。例えば、複数の第1側孔316が直線状に配列され、第2側孔326及び第3側孔336の少なくとも一方がジグザグに配列されていてもよい。
【0035】
図1に示すように、硬膜外腔の両側にはそれぞれ神経が存在している。そのため、第1側孔316、第2側孔326及び第3側孔336のいずれもが一方の神経に向いていると、薬液の分布に偏りが生じてしまう。すなわち、一方の神経に効果を及ぼすように十分な薬液を注入できても、他方の神経には効果を及ぼすに十分な量の薬液を注入できない事態が生じる。そのため、薬液の効果を発揮させる効率が低下してしまう。これに対して、第3実施形態のカテーテル300によれば、第1側孔316、第2側孔326及び第3側孔336のいずれもが一方の神経にのみ向いてしまうことを抑制できる。その結果、第1内腔315に薬液を注入して十分な効果が得られなくとも、第1内腔315に加えて又は代えて第2内腔325又は第3内腔335を介して効果を及ぼすに十分な量の薬液を注入することができる。これにより、両方の神経に薬液の効果を及ぼすことができる。
【0036】
以上説明した第3実施形態のカテーテル300によれば、各側孔から確実に薬液を流出させて、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることができる。さらに、カテーテル本体350の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できる。すなわち、第1側孔316が開口している方向、第2側孔326が開口している方向、及び第3側孔336が開口している方向に薬液を流出させることができる。また、カテーテル本体350の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できるので、薬液の分布の偏りを抑制できる。
【0037】
[第4実施形態]
図5を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態は、カテーテル400における複数の第1側孔416の配列が、第1実施形態と異なる。具体的に、カテーテル400において、複数の第1側孔416は、カテーテル本体450の外周面上において互いに離隔するように開口している。さらに、互いに隣接する側孔416A,416B同士のうち、遠位端D側にある一方の側孔416Aの位置が近位端P側にある他方の側孔416Bの位置とは、カテーテル本体450の長さ方向LD及び長さ方向LDに直交する円周方向CDにおいて異なるように、複数の第1側孔416が配列されている。また、第4実施形態は、カテーテル400が、第1内腔415のみを有している点で、第1から第3実施形態と異なる。すなわち、カテーテル400には、第2内腔及び複数の第2側孔と、第3内腔及び複数の第3側孔とが形成されていない。なお、図5において、第1内腔415は外部から視認できないが、説明の便宜上実線で図示している。また、破線で示した第1側孔416は、図5の観察方向を表側としたときに、カテーテル400の裏側に位置する。
【0038】
なお、第4実施形態の説明においては、第1から第3実施形態との相違点について説明し、既に説明した構成要素については同じ参照番号を付し、その説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0039】
カテーテル400においては、一つの内腔として第1内腔415が形成されており、内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する複数の第1側孔416が配列されている。複数の第1側孔416は、カテーテル本体450の外周面上において互いに離隔するように開口している。さらに、互いに隣接する側孔416A,416Bのうち、遠位端D側にある側孔416Aの位置が、近位端P側にある側孔416Bの位置とは、カテーテル本体450の長さ方向LDにおいて異なり、且つ円周方向CDにおいて異なるように、複数の第1側孔416が配列されている。
【0040】
具体的には、カテーテル本体450の外周面に沿って少なくとも一周するように、長さ方向LDに延びる第1領域1Cが設定されている。そして、複数の第1側孔416が、長さ方向LDにおいて互いに離隔するように、カテーテル本体450の外周面に沿って、カテーテル本体450の中心線を中心に少なくとも一周するように配列している。そのため、複数の第1側孔416は、カテーテル本体450の周囲に向かって各方向に開口している。なお、第1側孔416は、長さ方向LDにおいて等間隔に形成されている。ただし、第1側孔416同士の間隔が不一致であってもよい。間隔が不一致である場合であっても、カテーテル本体450の外周面に沿って少なくとも一周するように第1側孔416を配列する。
【0041】
以上説明した第4実施形態のカテーテル400によれば、各側孔から確実に薬液を流出させて、より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせることができる。さらに、カテーテル本体450の周囲に向かって複数の異なる方向に薬液を注入できるので、薬液の分布の偏りを抑制できる。なお、第1側孔416は、側孔非形成領域4D(図2)を除く領域に渡って形成されている。ただし、第1側孔416は、5cmから10cm程度の長さの第1領域1Cのみに形成されていてもよい。
【0042】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0043】
例えば、カテーテル100は、二つの内腔のみを有していてもよく、四つ以上の内腔を有していてもよい。この場合であっても、各内腔に側孔が形成され、内腔毎の側孔形成領域は長さ方向において異なる位置に設定される。さらに、第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15は、直線状に並ぶように延在していてもよい。例えば、第3内腔35、第2内腔25、及び第1内腔15がいずれも円形の断面形状を有するチューブによって構成されていてもよい。この場合、各チューブは互いに接着によって結合させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1C :第1領域(側孔形成領域)
2B :第2領域(側孔形成領域)
3A :第3領域(側孔形成領域)
4D :側孔非形成領域
15 :第1内腔
16 :第1側孔
25 :第2内腔
26 :第2側孔
35 :第3内腔
36 :第3側孔
61 :第1閉塞部
62 :第2閉塞部
63 :第3閉塞部
100 :カテーテル
200 :カテーテル
215 :第1内腔
216 :第1側孔
300 :カテーテル
315 :第1内腔
316 :第1側孔
325 :第2内腔
326 :第2側孔
335 :第3内腔
336 :第3側孔
400 :カテーテル
415 :第1内腔
416 :第1側孔
CD :円周方向
D :遠位端
LD :長さ方向
P :近位端
【要約】
【課題】より広い範囲の部位に薬液の効果を及ばせる。
【解決手段】近位端Pと遠位端Dとを備える液体注入用のカテーテル100は、内側から外側へ流れる第1液体の流路を構成する複数の第1側孔16が形成されている第1内腔15を備え、前記第1内腔には、前記第1液体の流出を阻害する第1閉塞部61が前記第1側孔よりも前記遠位端側に形成されており、前記第1側孔は、前記カテーテルの長さ方向LDにおいて互いに離隔するように形成されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5