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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】物品積層装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/12 20060101AFI20220224BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20220224BHJP
   B65H 29/32 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B65H5/12 B
B65G47/86 H
B65H29/32 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018029975
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019142685
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 達利
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137178(JP,A)
【文献】特開2015-086037(JP,A)
【文献】特表2002-519267(JP,A)
【文献】米国特許第05254071(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104016157(CN,A)
【文献】特開2005-298193(JP,A)
【文献】特開2017-108054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 29/00
B65G 47/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物品を吸着保持する平坦な吸着面を備えたピッカーと、水平に設定された回転軸を中心に回転するとともに、上記吸着面が外周を向くように上記ピッカーを保持する回転体と、上記ピッカーを揺動させる揺動手段と、上記回転体の下方に位置するとともに、上記ピッカーが上記シート状物品の吸着保持を解除する受け渡し位置において上記シート状物品を受け取るプレートとを備え、
上記揺動手段は、上記受け渡し位置よりも回転体の回転方向上流側の位置で、上記ピッカーの吸着面が回転体の回転方向前方を向くようにし、その状態から当該ピッカーの吸着面が上記受け渡し位置における回転体の中心から放射状に伸びる線を向くように、上記ピッカーを回転体の回転方向後方側に揺動させることにより、上記ピッカーが上記シート状物品を吸着保持して回転移送させつつ、上記受け渡し位置で上記プレートに受け渡す物品積層装置において、
上記ピッカーの吸着面を該ピッカーの揺動中心線を含む平面に対して垂直となるように形成、該吸着面の上記回転方向の先端部を上記平面と同一位置または回転方向後方位置に設定するとともに、吸着された上記シート状物品の上記回転方向の後端部が、該吸着面の上記回転方向の後端部と一致もしくは回転方向後方側へ突出するように吸着し、
かつ上記揺動手段は、上記ピッカーが上記受け渡し位置で上記シート状物品を上記プレートに受け渡す際上記ピッカーが吸着保持する上記シート状物品の回転方向後端部を上記積層プレートの載置面に最も近接させた状態で、当該シート状物品の回転方向後端部を支点とし、当該シート状物品の回転方向先端部が上記載置面に向けて回転するようにピッカーを揺動させて、当該シート状物品を上記載置面と平行にしてから、上記プレートに受け渡すことを特徴とする物品積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品積層装置に関し、より詳しくはシート状物品を所定の受渡し位置に積層して載置する物品積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品積層装置として、シート状物品を吸着保持する平坦な吸着面を備えたピッカーと、水平に設定された回転軸を中心に回転するとともに、上記吸着面が外周を向くように上記ピッカーを保持する回転体と、上記ピッカーを揺動させる揺動手段と、上記回転体の下方に位置するとともに、上記ピッカーが上記シート状物品の吸着保持を解除する受け渡し位置において上記シート状物品を受け取るプレートとを備え、
上記揺動手段は、上記受け渡し位置よりも回転体の回転方向上流側の位置で、上記ピッカーの吸着面が回転体の回転方向前方を向くようにし、その状態から当該ピッカーの吸着面が上記受け渡し位置における回転体の中心から放射状に伸びる線を向くように、上記ピッカーを回転体の回転方向後方側に揺動させることにより、上記ピッカーが上記シート状物品を吸着保持して回転移送させつつ、上記受け渡し位置で上記プレートに積層しながら受け渡すようにしたものが知られている(特許文献1)。
上記物品積層装置においては、上記受け渡し位置の近傍でピッカーを上述のように揺動させているので、ピッカーの吸着面で吸着したシート状物品を予めプレートに近接させた状態に維持して該プレートに受け渡すことができ、したがって高速運転時でもシート状物品とプレートとの間の相対移動速度を小さく保って円滑にピッカーからプレート上にシート状物品を受け渡すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-137178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記物品積層装置においては、上記ピッカーの吸着面は、該ピッカーの揺動中心線を含む平面に対して垂直となるように、かつ吸着面の上記回転方向の中心がその平面上に位置するように形成されていた。つまりピッカーの吸着面における回転方向前端部と後端部とは、上記平面に対して等距離となるように設定されていた。したがってピッカーを揺動させた際には、吸着面がプレートの表面と平行となる上記受け渡し位置の手前の状態では吸着面の回転方向後端部がプレート側に突出して近接するようになり、また受け渡し位置を通過した後の状態では吸着面の回転方向前端部がプレート側に突出して近接するようになる。
上記シート状物品が大型となり、それに伴ってピッカーの吸着面を大きくすると、すなわちピッカーの吸着面における前端部と後端部とを上記平面から離れた位置とすると、ピッカーを揺動させた際の上記突出量が大きくなり、したがってピッカーの吸着面とプレートとの接触を防止するために両者の間隔を大きくする必要が生じるが、間隔を大きくするとシート状物品をプレート上に載置する際に位置ずれが生じ易くなる。
本発明はそのような事情に鑑み、吸着面の後端部を上記平面から離れた位置としても、該吸着面とプレートの表面との間隔を大きくする必要がない物品積層装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、シート状物品を吸着保持する平坦な吸着面を備えたピッカーと、水平に設定された回転軸を中心に回転するとともに、上記吸着面が外周を向くように上記ピッカーを保持する回転体と、上記ピッカーを揺動させる揺動手段と、上記回転体の下方に位置するとともに、上記ピッカーが上記シート状物品の吸着保持を解除する受け渡し位置において上記シート状物品を受け取るプレートとを備え、
上記揺動手段は、上記受け渡し位置よりも回転体の回転方向上流側の位置で、上記ピッカーの吸着面が回転体の回転方向前方を向くようにし、その状態から当該ピッカーの吸着面が上記受け渡し位置における回転体の中心から放射状に伸びる線を向くように、上記ピッカーを回転体の回転方向後方側に揺動させることにより、上記ピッカーが上記シート状物品を吸着保持して回転移送させつつ、上記受け渡し位置で上記プレートに受け渡す物品積層装置において、
上記ピッカーの吸着面を該ピッカーの揺動中心線を含む平面に対して垂直となるように形成、該吸着面の上記回転方向の先端部を上記平面と同一位置または回転方向後方位置に設定するとともに、吸着された上記シート状物品の上記回転方向の後端部が、該吸着面の上記回転方向の後端部と一致もしくは回転方向後方側へ突出するように吸着し、
かつ上記揺動手段は、上記ピッカーが上記受け渡し位置で上記シート状物品を上記プレートに受け渡す際上記ピッカーが吸着保持する上記シート状物品の回転方向後端部を上記積層プレートの載置面に最も近接させた状態で、当該シート状物品の回転方向後端部を支点とし、当該シート状物品の回転方向先端部が上記載置面に向けて回転するようにピッカーを揺動させて、当該シート状物品を上記載置面と平行にしてから、上記プレートに受け渡すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の構成によれば、上記ピッカーの吸着面の上記回転方向の先端部を上記平面と同一位置又は回転方向後方位置に設定し、かつ上記揺動手段は、上記ピッカーが上記受け渡し位置で上記シート状物品を上記プレートに受け渡す際に、上記ピッカーが吸着保持する上記シート状物品の回転方向後方部が支点となるように上記シート状物品を回転させて上記プレートに受け渡すようにしているので、吸着面が上記受け渡し位置を通過した後に該吸着面が回転しても、つまり吸着面とプレートとが平行となった後に該吸着面が回転しても、吸着面の回転方向前端部がプレート側に突出して近接することがないので、よりピッカーとプレートとの間隔を小さく維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかる物品積層装置2の構成図。
図2図1の物品積層部5および排出部4を拡大して示す正面図。
図3】排出部4の平面図。
図4】物品積層部5についての断面図。
図5】揺動手段を説明する図。
図6】本実施例の受け渡し状態を説明する説明図。
図7】従来装置の受け渡し状態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は繰り出されたウェブSを切断してシート状物品としてのシート材1を得るとともに、当該シート材1を複数枚積層させる物品積層装置2を示している。
上記シート材1は短冊状を有しており、段ボール紙や模様が印刷されたラベルなど様々な用途に用いることができ、さらにシート材1の材質としては、紙や合成樹脂製のフィルムや金属など、様々な材質とすることができる。
上記物品積層装置2は、上記ウェブSを切断して上記シート材1を作製する供給部3と、複数枚のシート材1を積層してこれを図示しない後工程に排出する排出部4と、供給部3と排出部4との間に設けられて、供給部3から受け取ったシート材1を排出部4へと積層させながら受け渡す物品積層部5とから構成されている。
【0009】
まず上記供給部3について説明すると、ウェブSを供給するフィードローラ11と、上記ウェブSを切断するカッター12と、得られたシート材1を搬送するバキュームコンベヤ13と、バキュームコンベヤ13から供給されたシート材1を上記物品積層部5へと搬送する供給コンベヤ14とから構成されている。
上記ウェブSは図示しないがロール状に巻回されており、上記フィードローラ11が所定の送り速度でウェブSを供給すると、上記カッター12が所定のタイミングでウェブSを切断し、短冊状を有したシート材1が得られるようになっている。
上記バキュームコンベヤ13は、回転ベルト13aの搬送面の裏側に負圧発生手段13bを備えており、上記回転ベルト13aのベルトには無数の孔が穿設されている。
このような構成により、バキュームコンベヤ13の搬送面には負圧発生手段13bの負圧が供給され、上記カッター12で切断されたシート材1を吸着保持した状態で搬送することが可能となっている。
また、バキュームコンベヤ13の搬送速度はフィードローラ11によるウェブSの供給速度よりも高速に設定されており、切断されたシート材1がバキュームコンベヤ13に乗り移ると、未だ切断されていないウェブSの先端との間隔が広がるようになっている。
【0010】
上記供給コンベヤ14は平行に設けられた2本の回転ベルト14aを有しており、上記シート材1を水平に搬送するようになっている。
上記2本の回転ベルト14aの間に上記バキュームコンベヤ13の下流側の一部が位置するようになっており、このためシート材1がバキュームコンベヤ13の下流端に到達すると、その後供給コンベヤ14に乗り移るようになっている。
また、上記2本の回転ベルト14aの間には、上記バキュームコンベヤ13に対して下流側に隣接した位置に位置決め用回転ベルト15が設けられている。
上記位置決め用回転ベルト15の搬送面は上記2本の回転ベルト14aと同じ高さか、もしくは若干高い位置に設定され、かつ位置決め用回転ベルト15の搬送速度は上記回転ベルト14aの搬送速度よりもさらに高速に設定されている。
さらに、上記2つの回転ベルト14aには所定の間隔で突起14bが設けられており、シート材1が当接することにより位置決めを行うようになっている。
このような構成により、上記バキュームコンベヤ13から供給コンベヤ14にシート材1が乗り移ると、位置決め用回転ベルト15はその速度差により回転ベルト14aの搬送面上で当該シート材1を前方に移動させ、当該シート材1を上記突起14bの後方に当接させて位置決めするようになっている。
【0011】
次に上記排出部4について説明すると、上記物品積層部5がシート材1を受け渡しながら複数枚のシート材1を積層させる積層手段21と、積層されたシート材1を排出する排出コンベヤ22とから構成されている。
図2図3に示すように、積層手段21はその上面にシート材1が載置される略L字型を有した2組の積層プレート23と、各積層プレート23を移動させる移動手段24と、各積層プレート23上に積層されたシート材1をクランプするクランプ手段25とから構成されている。
上記排出コンベヤ22は、平行に設けられた2つの回転ベルト22aを有しており、各積層プレート23がその間に位置するように配置されている。
また排出コンベヤ22に載置されたシート材1は、その両端が上記回転ベルト22aの外方に突出するようになっている。
【0012】
図2に示すように、各積層プレート23の上部には水平に形成された載置面23aが形成され、当該載置面23aの前後方向の幅は上記シート材1の幅よりも若干狭く設定されている。
上記移動手段24は、積層プレート23を前後に移動させるエアシリンダ24aと、当該エアシリンダ24aごと積層プレート23を上下方向に移動させるサーボモータとギヤとを組み合わせた昇降手段24bとから構成されている。
そして本実施例の積層手段21は、上記2組の積層プレート23を交互に用いることで、上記物品積層部5から連続してシート材1を受け取ることができるようになっている。
そのため、上記2つの積層プレート23が移動する際に相互に干渉しないよう、図3に示すように、図示左方に位置する一方の積層プレート23に連結されたエアシリンダ24aは、図示右方に位置する他方の積層プレート23と図示上方に位置する回転ベルト22aとの隙間を通過するように設けられ、これと同様、上記他方の積層プレート23に連結されたエアシリンダ24aも、上記一方の積層プレート23と図示下方に位置する回転ベルト22aとの隙間を通過するように設けられている。
【0013】
そして上記構成を有する移動手段24は、各積層プレート23を上下方向および排出コンベヤ22の搬送方向に沿って前後方向に移動させることで、載置位置、排出位置、待機位置の各位置に移動させるようになっている。
上記載置位置は、上記物品積層部5の下方に位置し、かつ積層プレート23の載置面23aが上記排出コンベヤ22の搬送面よりも上方に位置するように設定されている。また載置位置では、後に詳述するように、上記物品積層部5が積層プレート23にシート材1を載置する度に当該積層プレート23をシート材1の厚さ分ずつ下降させるようになっている。
上記排出位置は、上記積層プレート23の載置面23aが排出コンベヤ22の搬送面に一致するよう設定され、これにより積層プレート23に積層されたシート材1が排出コンベヤ22上に載置されるようになっている。
そして上記待機位置は、上記載置位置や排出位置に位置する他方の積層プレート23と干渉しないよう、当該他方の積層プレート23よりも排出コンベヤ22の搬送方向後方に設定されている。
【0014】
上記各クランプ手段25は、各積層プレート23の後方側両側に設けたそれぞれ2つのシート材押圧部材25aと、各シート材押圧部材25aを回転かつ昇降させる駆動手段25bとから構成されている。
各駆動手段25bはそれぞれシート材押圧部材25aを回転かつ昇降させる駆動ロッド25c(図2)を備えており、各駆動ロッド25cは通常は上昇端に位置され、各駆動手段25bによって下降されると、図示しない螺旋状の溝によって直ちに90度回転され、90度回転された後は回転されることなく下降されるようになっている。
上記各シート材押圧部材25aは各駆動ロッド25cの上端部に固定されており、各駆動ロッド25cが上昇端に位置されている際には、積層プレート23の上方から退避して積層プレート23の長手方向に向いた状態に位置されている(図3の点線参照)。そして各駆動ロッド25cが下降されると、直ちに回転されて積層プレート23上に所定枚数積層載置されたシート材1の上方に突出し、引き続く駆動ロッド25cの下降により積層されたシート材1を積層プレート23とシート材押圧部材25aとでクランプすることができるようになっている。
【0015】
上記排出コンベヤ22は上記積層プレート23が上記載置位置に位置している間は停止されており、所定枚数のシート材1を積層した積層プレート23が移動手段24によって排出位置に位置すると、所定枚数のシート材1が排出コンベヤ22の搬送面に載置されるようになっている。
そしてこの状態で上記シート材押圧部材25aによるシート材1のクランプが解放されると、排出コンベヤ22が間欠駆動されてシート材1を所定ピッチだけ前進させるようになっている。この所定ピッチは、シート材1の上述した回転体32の回転方向の幅よりも大きく設定されていることは勿論である。
【0016】
次に上記物品積層部5について説明すると、図1に示すように、該物品積層部5は、シート材1を吸着保持するピッカー31と、上記ピッカー31を等間隔に保持する回転体32と、上記ピッカー31を揺動させる揺動手段33とを備えている。
図4に示すように、上記回転体32は図示しないモータに連結されて水平方向に設けられた回転軸としての駆動軸34と、当該駆動軸34によって回転する2つの基部側皿状部材35と先端側皿状部材36とを備えている。
上記基部側皿状部材35と先端側皿状部材36との間隔は上記シート材1の幅よりも広く設定されており、供給コンベヤ14の下流側の一部がその間に位置することにより、基部側皿状部材35と先端側皿状部材36との間にシート材1が供給されるようになっている。
上記先端側皿状部材36には上記駆動軸34と同軸上に円柱状の突出部36aが設けられており、当該突出部36aはベアリングを介して所要のフレームに固定されたリング状部材37に回転可能に保持されている。また上記先端側皿状部材36の端面とリング状部材37の端面とは相互に摺接するようになっている。
【0017】
上記ピッカー31は上記シート材1を吸着保持する吸着部38と、当該吸着部38を保持する支柱39と、上記基部側皿状部材35および先端側皿状部材36の間に設けられた支持軸40とによって構成されている。
上記ピッカー31の内部には負圧通路42が形成されており、上記リング状部材37に接続された負圧発生手段41からの負圧が上記吸着部38に供給されるようになっている。
上記吸着部38の表面に形成された吸着面38aは平坦に形成され、上記供給部3より供給されたシート材1を変形させることなく保持することが可能となっており、また当該吸着面38aには上記負圧通路42と連通する無数の吸着孔が穿設されており、吸着面38aの略全面で上記シート材1を吸着保持するようになっている。
また上記吸着部38の幅は上記供給コンベヤ14の2つの回転ベルト14aが配置されている間隔よりも狭く設定されており、これによりピッカー31が2つの回転ベルト14aの間を通過し、上記吸着面38aが供給コンベヤ14の搬送面の高さに位置するようになっている。
上記支柱39は上記支持軸40に固定され、また上記支持軸40の図示左方端は上記基部側皿状部材35を貫通し、図示右方端は上記先端側皿状部材36に形成された有底の保持孔36bに挿入されている。
【0018】
上記負圧通路42は、上記支柱39を貫通して形成された通路39aと、上記支持軸40の略中央部から図示右方へと貫通するように形成された通路40aと、上記先端側皿状部材36に形成された上記保持孔36bの底部を貫通する貫通孔36cと、リング状部材37の端面に形成された円弧状溝37aとによって構成されている。
上記リング状部材37に形成された円弧状溝37aには上記負圧発生手段41が接続され、また上記貫通孔36cの移動軌跡に沿って設けられている。従って、上記先端側皿状部材36が回転して上記貫通孔36cが上記円弧状溝37aと連通した部分では、負圧発生手段41の負圧が上記吸着部38に供給され、貫通孔36cが上記円弧状溝37aの形成されていない部分にさしかかると、吸着部38の負圧が解消されてシート材1が解放されるようになっている。
【0019】
上記揺動手段33は各ピッカー31に設けられており、上記ピッカー31の支持軸40の先端に設けられたギヤ43と、このギヤ43に噛合して基部側皿状部材35に揺動可能に設けられたセグメントギヤ44と、当該セグメントギヤ44に設けられたカムフォロア45と、カムフォロア45を案内する溝カム46aが形成され、上記駆動軸34を囲繞するように設けられたカム46とから構成されている。
ピッカー31は回転体32の周囲に等間隔で6つ配置され、支持軸40の端部は1つとばしで上記基部側皿状部材35からの突出量が異なっており、隣接するギヤ43とセグメントギヤ44とが干渉しないように、上記基部側皿状部材35からの高さ位置を異ならせている。
上記セグメントギヤ44は略扇形の部材となっており、その基部側の揺動軸44aを軸に上記基部側皿状部材35に揺動可能に設けられ、先端部が上記支持軸40に設けられたギヤ43に噛合して当該支持軸40を回転させるようになっている。
また上記セグメントギヤ44には揺動軸44aに対して偏倚した位置に上記カムフォロア45が設けられており、上記カムフォロア45が上記溝カム46aに沿って移動する過程でカムフォロア45の位置が変化し、これによりセグメントギヤ44が揺動し、それに噛合するギヤ43が支持軸40と一体的に回転することでピッカー31を揺動させるようになっている。
【0020】
本実施例では上記ピッカー31が上記供給部3の供給コンベヤ14からシート材1を受け取る受取り位置は、上記回転体32の回転中心Oに対して真上に設定され、またピッカー31が上記排出部4の積層手段21へとシート材1を受け渡す受渡し位置は、上記回転体32の回転中心Oに対して真下に設定されている。
ここで、上記負圧通路42を構成する円弧状溝37aは、上記ピッカー31が上記受取り位置から受渡し位置にかけて移動する間に、当該ピッカー31に負圧が供給されるように形成されており、上記受渡し位置にピッカー31が位置すると、上記吸着部38の吸着面38aによる吸着保持が解除される。この際、吸着面38aは上記排出部4における上記積層手段21の積層プレート23の載置面23aと平行となっており、吸着面38aで吸着保持していたシート材1を載置面23aに載置するようになっている。
【0021】
続いて、図2を用いてピッカー31の受渡し位置における揺動動作について説明する。上記ピッカー31は回転体32の回転に伴って回転方向の上流側から順に添え字a~eの各位置に位置し、また説明のため、各位置のピッカー31a~31eのそれぞれに対応する回転体32の中心Oから放射状に伸びる線L1~L5を記載している。
上記揺動手段33は、上記線L1に対応するピッカー31aの位置する揺動開始位置から、上記線L3に対応する受渡し位置を超えて、上記線L5に対応するピッカー31eの位置する揺動終了位置までの揺動区間で、上記ピッカー31を揺動させるようになっている。
また図6の中央の図で示すように、各ピッカー31の吸着面38aは、支持軸40の軸線を通る(支持軸40の揺動中心線を含む)平面Pに対して垂直となるように形成してあり、かつ、各ピッカー31の吸着面38aにおける上記回転方向の長さW0が上記シート材1の同方向の長さW1よりも短くなるように設定するとともに、上記ピッカー31がシート材1を吸着する際には、上記ピッカー31の吸着面38aにおける回転方向中央部C38がシート材1における回転方向中央部C1よりも回転方向後方側となるように位置をずらして設定してある。
そして図示実施例では、ピッカー31の吸着面38aの後端部がシート材1の後端部1’に略一致するようにしてあり、また吸着面38aの前端部がシート材1の中央部C1よりも手前となる位置で、該シート材1を吸着保持することができるようにしてある。
【0022】
まず図2で示すように、上記L1で示す揺動開始位置に位置するピッカー31aは、上記支持軸40の軸線を通る平面Pが上記線L1上に位置しており、当該ピッカー31aの吸着面38aは上記線L1を向く(垂直となる)ようになっている。
そして線L1に対応する揺動開始位置のピッカー31aが回転体32により移動すると、上記受渡し位置に対して回転方向上流側に位置する上記線L2に対応するピッカー31bの位置に到達する。
ピッカー31が線L1から線L2へと移動する間、上記揺動手段33は上記カムフォロア45を変位させてセグメントギヤ44を揺動させ、当該ピッカー31bの吸着面38aが回転体32の回転方向前方を向くように揺動させる。
換言すると、上記揺動開始位置においてピッカー31aの支持軸40の軸線を通る平面Pが上記線L1と一致していた状態から、当該平面Pが上記線L2に対して回転方向前方の下流側となるように揺動させる。
【0023】
次に、線L2に対応する上記ピッカー31bは、上記排出部4における上記積層プレート23に設定された上記受渡し位置に位置する上記線L3に対応するピッカー31cの位置に到達する。
ピッカー31が線L2から線L3へと移動する間、上記揺動手段33はこれまでとは逆方向にピッカー31を揺動させ、ピッカー31cの吸着面38aが上記回転体32の中心Oから放射状に伸びる線L3を向くようになっている。
換言すると、線L2に対応する上記ピッカー31bの支持軸40の軸線を通る平面Pが上記線L2に対して回転方向前方の下流側を向くように揺動した状態から、線L2に対応する位置へと移動するまでの間に、ピッカー31cの支持軸40の軸線を通る平面Pが上記線L3と一致するよう、回転方向後方に向けて揺動させる。
上記吸着面38aは、上記線L2に対応する位置ですでに上記受渡し位置を向いているため、その後揺動手段33がピッカー31を揺動させることにより、当該吸着面38aは上記受渡し位置に徐々に接近しながら、積層プレート23の載置面23aと平行となるように徐々にその傾斜角度が変更されるようになる。
【0024】
次に上記受渡し位置で吸着面38aが線L3を向いたピッカー31cは、当該受渡し位置よりも回転体32の回転方向下流側に位置する上記線L4に対応するピッカー31dの位置に到達する。
ピッカー31が線L3~線L4に移動する間、上記揺動手段33はこれまでと同様回転方向後方に向けてピッカー31を揺動させ、吸着面38aが回転体32の回転方向後方を向くように揺動させる。
換言すると、受渡し位置においてピッカー31cの支持軸40の軸線を通る平面Pが線L3と一致した状態から、当該平面Pが上記線L4に対して回転方向後方を向くように揺動させる。
これにより、受渡し位置において積層プレート23の載置面23aと平行な状態であった吸着面38aは、当該載置面23aから徐々に傾斜しながら離脱するようになっている。
【0025】
最後に、上記受渡し位置よりも回転体32の回転方向下流側に位置した線L4に対応するピッカー31dは、回転体32によって移動して線L5に対応する上記揺動終了位置に到達する。
ピッカー31が線L4~線L5に移動する間、上記揺動手段33はこれまでと逆方向の回転方向前方に向けてピッカー31を揺動させ、ピッカー31cの吸着面38aが上記線L5を向くようにする。
換言すると、上記ピッカー31の支持軸40の軸線を通る平面Pが上記線L4に対して回転方向後方を向くように揺動した状態から、当該平面Pが上記線L5と一致するよう、回転方向前方に向けて揺動させる。
その後揺動手段33は、上記ピッカー31を上記吸着面38aが回転体32の中心Oから放射状に伸びる線を向いた状態を維持して、当該ピッカー31が再び線L1の位置に到達したら、再度揺動を開始させるようになっている。
【0026】
図6は、上記ピッカー31が上記受渡し位置に位置する直前から直後に至る状態を図2よりも詳細に示したもので、また図7は、比較として従来装置の同一箇所における作動を示したものである。
この従来装置では、ピッカー31の吸着面38aの回転方向中央部C38を支持軸40の軸線を通る平面Pに一致させて、該平面Pに対して垂直となるように形成してある。この場合、吸着面38aにおける回転方向前端部と後端部とは、上記平面Pに対して等距離の位置に設けられる。また、ピッカー31の吸着面38aにおける上記回転方向の長さW0と上記シート材1の同方向の長さW1は、本発明の実施例のものと同一となるようにしてある。
本発明装置においては、図6の右側の図で示すように、ピッカー31は、吸着面38aの後端部すなわちシート材1の後端部1’を積層プレート23の載置面23aに最も近接させた状態で、その位置のシート材1の後端部1’を支点として該シート材1を積層プレート23の載置面23aと平行となるまで(図6の中央の図の状態となるまで)後方側に回転させるようになっている。シート材1が載置面23aと平行となった際の両者の間隔δを図6の中央の図に示してある。
他方、図7に示す従来装置においても、シート材1の後端部1’を積層プレート23の載置面23aに最も近接させた状態で、その位置のシート材1の後端部1’を支点として該シート材1を積層プレート23の載置面23aと平行となるまで後方側に回転させることが可能である。しかしながら、シート材1が載置面23aと平行となった際の両者の間隔δは、以下に述べるように本発明装置に比較して大きく設定せざるを得なかった。
【0027】
すなわち、本発明装置によれば、図6の中央の図の状態から左側の図の状態となる際に、ピッカー31の吸着面38aの回転方向前方に位置する先端部をシート材1の中央部C1よりも回転方向の後に位置させているので、ピッカー31の吸着面38aが回転を継続しながら積層プレート23上に載置されたシート材1から離隔する際に、上記間隔δを小さくしても、吸着面38aの先端部がシート材1に接触することがない。そして上記間隔δを小さくすれば、シート材1の吸着保持を解放した際に、該シート材1が載置面23aに対して位置ずれしてしまうことを可及的に防止することができる。
これに対し従来装置では、図6の左側の図の点線と図7の左側の図とで示すように、ピッカー31の吸着面38aの先端部が上記平面Pよりも前方に突出していると、ピッカー31の回転により吸着面38aの先端部がシート材1の表面側に突出する。
このため従来装置では、吸着面38aの先端部がシート材1の表面に接触することを防止するために上記間隔δを大きくする必要があり、間隔δを大きくすれば載置面23aに対するシート材1の位置ずれが大きくなる危険性がある。
【0028】
次に、上記構成を有する物品積層装置2の全体的な動作を説明すると、まず供給部3では、上記フィードローラ11がウェブSを所定の送り速度で移動させると、上記カッター12が所定の間隔で当該ウェブSを切断して、所要の形状を有したシート材1が得られる。
シート材1は上記バキュームコンベヤ13によって吸着保持された状態で搬送されるとともに、その下流端の位置で上記供給コンベヤ14上に乗り移り、その後上記位置決め用回転ベルト15によって供給コンベヤ14に形成された突起14bに後方から当接し、位置決めされる。
上記供給部3と物品積層部5とは同期して作動しており、上記シート材1が供給コンベヤ14の下流端に位置すると同時に、上記物品積層部5のピッカー31が上記受取り位置に位置するようになっており、供給コンベヤ14に載置されたシート材1の裏面側から吸着部38が吸着するようになっている。
このとき、上記ピッカー31の吸着面38aは平坦となっていることから、吸着保持されたシート材1が変形しないようになっている。
【0029】
受取り位置においてシート材1を吸着したピッカー31は、シート材1を吸着保持した状態で回転体32によって受渡し位置へ向けて回転搬送される。
上記ピッカー31が上記受渡し位置の回転方向上流側であって図2の線L1に対応する揺動開始位置に到達すると、揺動手段33は当該ピッカー31を回転方向前方に向けて揺動を開始させ、線L2の位置において吸着面38aが積層プレート23の積層部23aを向くようにする。
この線L2の位置からピッカー31が線L3に対応する受渡し位置に移動するまでの間、揺動手段33は上記ピッカー31を、吸着面38aが回転体32の中心Oから放射状に伸びる線L3を向くように揺動させる。
上記ピッカー31が受渡し位置へ到達すると、吸着面38aに吸着保持されているシート材1は水平となり、積層プレート23の載置面23aと平行となる。
【0030】
一方、上記排出部4と物品積層部5とは同期して作動しており、上記積層手段21における一方の積層プレート23の載置面23aが上記移動手段24によって載置位置に位置し、当該積層プレート23の載置面23aが上記ピッカー31の吸着面38aに吸着保持されたシート材1と平行で近接した高さに位置している。
そして上記ピッカー31が受渡し位置に到達すると、上記負圧通路42を介して負圧の供給が停止されるため、シート材1がピッカー31から解放されて積層プレート23に載置される。
上記シート材1を解放したピッカー31は、受渡し位置を通過して線L4に対応する回転方向下流側の位置に到達するまでの間に、揺動手段33によって吸着面38aが積層プレート23の積層部23aを向くよう、回転方向後方に向けて揺動される。
その後さらに揺動手段33は、ピッカー31が線L5に対応する揺動終了位置に到達するまでの間に、吸着面38aが線L5を向くように回転方向前方に向けて揺動させる。
【0031】
一方、積層プレート23にシート材1が載置されると、上記移動手段24が積層プレート23をシート材1の略一枚分だけ下降させ、すでに載置されたシート材1の上面を上記載置位置とする。
その後、移動手段24はシート材1が載置位置においてシート材1の上面に載置されるたびに積層プレート23を下降させ、所定枚数のシート材1を積層させることができる。
この時、物品積層部5の回転体32は連続的に回転しており、上記積層プレート23には上記シート材1を速やかに上方から積層することが可能となっている。
また上記積層プレート23は移動手段24によって徐々に下降するため、シート材1の受け渡しと積層とを同時に行うことができる。
【0032】
所定枚数のシート材1が積層プレート23上に積層されると、受渡し位置に位置しているクランプ手段25の駆動手段25bが作動されて駆動ロッド25cを降下させ、これによりシート材押圧部材25aが回転されて積層プレート23上に載置された所定枚数のシート材1の上方に突出される。そして引き続く駆動ロッド25cの降下によりシート材押圧部材25aが所定枚数積層されたシート材1を積層プレート23との間でクランプするようになる。
この状態となると、移動手段24が積層プレート23を載置位置から排出位置へと移動させる。そして積層プレート23が排出位置へ移動されると、上記駆動手段25bの作動が停止されてシート材押圧部材25aが元の非作動位置に復帰され、これにより上記排出コンベヤ22の搬送面にシート材1が載置される。
上記排出コンベヤ22の搬送面にシート材1が載置されると、該排出コンベヤ22が間欠駆動されて載置されたシート材を所定ピッチだけ前進させるようになる。
一方、一方の積層プレート23が上記載置位置から排出位置へと移動する瞬間に、他方の積層プレート23は移動手段24によって待機位置から載置位置へと移動し、これにより当該他方の積層プレート23において新たにシート材1の積層が行われることとなる。
【0033】
なお、上記実施例ではピッカー31の吸着面38aの後端部がシート材1の後端部1’に略一致するように設定してあるが、シート材1の後端部1’が吸着面38aの後端部よりも回転方向後方側に突出した状態で、吸着面38aでシート材1を吸着保持するようにしてもよい。この場合であっても、上記受け渡し位置では、吸着面38aの後端部より突出したシート材1の後端部1’が支点となるように該シート材を回転させるようにすればよい。
また、上記実施例では吸着部38の吸着面38aを平坦に形成するとともに、該吸着面38aに負圧通路42と連通する無数の吸着孔を穿設しているが、これに限定されるわけではない。図示しないが、吸着部38として複数の、例えば4つの吸盤を上記吸着面38aの四隅となる位置に同一高さで配置し、かつ各吸盤に負圧と正圧とを供給してシート材1の吸着と解放とを行わせるようにしてもよい。
さらに、上記実施例における揺動手段33は上記カム45やカムフォロア46を用いてピッカー31を揺動させているが、上記ピッカー31の支持軸40をサーボモータ等によって揺動させるなど、その他の機構を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 シート材(シート状物品) 2 物品積層装置
3 供給部 4 排出部
5 物品積層部 14 供給コンベヤ
21 積層手段 23 積層プレート
23a 載置面 24 移動手段
25 クランプ手段 31 ピッカー
32 回転体 33 揺動手段
38 吸着部 38a 吸着面
40 支持軸 P 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7