(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】車両用蓋体ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20220224BHJP
E05B 81/28 20140101ALI20220224BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20220224BHJP
【FI】
E05B83/34
E05B81/28
E05B79/08
(21)【出願番号】P 2019089738
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】野田 昌明
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第5580576(JP,B2)
【文献】特開2017-155520(JP,A)
【文献】特開2012-30749(JP,A)
【文献】特開平4-238980(JP,A)
【文献】特開平7-164972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられ、取付孔が貫設された支持壁を有する開口部と、前記開口部を開閉可能に前記車体に支持された蓋体との間に設けられる車両用蓋体ロック装置であって、
嵌合孔と被係合部とを有し、前記嵌合孔が前記取付孔内に延びるように前記支持壁に固定されるリテーナと、
ハウジング本体と、前記ハウジング本体と一体をなし、前記嵌合孔に嵌合する嵌合部と、前記ハウジング本体に接続され、前記嵌合部が前記嵌合孔に嵌合した状態で前記被係合部と係合する係合部と、前記ハウジング本体に接続され、前記被係合部と前記係合部との係合を解除する解除操作部とを有するハウジングと、
前記ハウジングに直動可能に支持され、前記嵌合部が前記嵌合孔に嵌合した状態で前記嵌合孔を通過して前記支持壁に対して前記ハウジング本体とは反対側に突出し、前記開口部を閉じた状態の前記蓋体を保持するロックシャフトとを備えた前記車両用蓋体ロック装置において、
前記被係合部は、前記リテーナの外周側に形成され、
前記ハウジングは、前記ハウジング本体に設けられ、前記ロックシャフトの軸心に対して前記軸心と直交する径方向に離間する位置に配置された支持部と、前記支持部から前記径方向に延びて先端に前記解除操作部が形成され、前記解除操作部が前記支持壁から離間するように変位可能な第1アームと、前記支持部から前記被係合部に向かって延びて先端に前記係合部が形成され、前記第1アームの変位によって前記係合部と前記被係合部との係合を解除する第2アームとを有していることを特徴とする車両用蓋体ロック装置。
【請求項2】
前記第1アーム及び前記第2アームは一体に形成されている請求項1記載の車両用蓋体ロック装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ハウジング本体と一体をなし、前記径方向に延びて先端に前記支持部が形成された支持アームを有し、
前記第1アーム及び前記第2アームは、前記支持部と一体をなし、
前記支持アームは、前記ハウジング本体と前記支持部との間において弾性変形可能である請求項2記載の車両用蓋体ロック装置。
【請求項4】
前記解除操作部は、前記支持部よりも前記支持壁側に位置している請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用蓋体ロック装置。
【請求項5】
前記係合部は、前記解除操作部よりも前記支持壁側に位置している請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用蓋体ロック装置。
【請求項6】
前記被係合部及び前記係合部は、前記車体に対して上側に配置されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用蓋体ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用蓋体ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用蓋体ロック装置の例が開示されている。この車両用蓋体ロック装置は、車体に設けられた開口部と、開口部を開閉可能に車体に支持された蓋体との間に設けられている。開口部は、取付孔が貫設された支持壁を有している。
【0003】
この車両用蓋体ロック装置は、リテーナ、ハウジング及びロックシャフトを備えている。リテーナは、嵌合孔と被係合部とを有し、嵌合孔が支持壁の取付孔内に延びるように支持壁に固定されている。被係合部は、嵌合孔によって形成されるリテーナの内周側に形成されている。
【0004】
ハウジングは、ハウジング本体、嵌合部、操作レバー部及び係合部を有している。嵌合部は、ハウジング本体と一体をなし、リテーナの嵌合孔に嵌合している。操作レバー部は、嵌合部と一体をなし、嵌合部から離間するように延びた後に屈曲してハウジング本体に向って延出している。係合部は、操作レバー部の延出方向の中間部位に形成されている。係合部は、嵌合部が嵌合孔に嵌合した状態で、リテーナの内周側において被係合部と係合している。
【0005】
ロックシャフトは、ハウジングに直動可能に支持されている。ロックシャフトは、嵌合部が嵌合孔に嵌合した状態で嵌合孔を通過して支持壁に対してハウジング本体とは反対側に突出し、開口部を閉じた状態の蓋体を保持する。
【0006】
この車両用蓋体ロック装置では、ハウジングをリテーナから外すときに、作業者が操作レバー部をロックシャフトに接近させるように操作することによって、係合部と被係合部との係合が解除される。次に、作業者がハウジング本体を支持壁から離間する方向に移動させることにより、ハウジングの嵌合部をリテーナの嵌合孔から外すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の車両用蓋体ロック装置では、ハウジングの嵌合部をリテーナの嵌合孔から外すときに、操作レバー部をロックシャフトに接近させる方向と、ハウジング本体を移動させる方向とが異なっていることから、作業者が2段階の動作を行う必要がある。このため、この車両用蓋体ロック装置では、ハウジングをリテーナから外すときの操作性が良くないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ハウジングをリテーナから外すときの操作性の向上を実現できる車両用蓋体ロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用蓋体ロック装置は、車体に設けられ、取付孔が貫設された支持壁を有する開口部と、前記開口部を開閉可能に前記車体に支持された蓋体との間に設けられる車両用蓋体ロック装置であって、
嵌合孔と被係合部とを有し、前記嵌合孔が前記取付孔内に延びるように前記支持壁に固定されるリテーナと、
ハウジング本体と、前記ハウジング本体と一体をなし、前記嵌合孔に嵌合する嵌合部と、前記ハウジング本体に接続され、前記嵌合部が前記嵌合孔に嵌合した状態で前記被係合部と係合する係合部と、前記ハウジング本体に接続され、前記被係合部と前記係合部との係合を解除する解除操作部とを有するハウジングと、
前記ハウジングに直動可能に支持され、前記嵌合部が前記嵌合孔に嵌合した状態で前記嵌合孔を通過して前記支持壁に対して前記ハウジング本体とは反対側に突出し、前記開口部を閉じた状態の前記蓋体を保持するロックシャフトとを備えた前記車両用蓋体ロック装置において、
前記被係合部は、前記リテーナの外周側に形成され、
前記ハウジングは、前記ハウジング本体に設けられ、前記ロックシャフトの軸心に対して前記軸心と直交する径方向に離間する位置に配置された支持部と、前記支持部から前記径方向に延びて先端に前記解除操作部が形成され、前記解除操作部が前記支持壁から離間するように変位可能な第1アームと、前記支持部から前記被係合部に向かって延びて先端に前記係合部が形成され、前記第1アームの変位によって前記係合部と前記被係合部との係合を解除する第2アームとを有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用蓋体ロック装置では、ハウジングをリテーナから外すときに、作業者が第1アームの先端に形成された解除操作部を支持壁から離間する方向に操作しながら、ハウジング本体を支持壁から離間する方向に移動させるという1段階の動作を行うだけでよい。これにより、作業者は、ハウジングをリテーナから容易に外すことができる。
【0012】
したがって、本発明の車両用蓋体ロック装置では、ハウジングをリテーナから外すときの操作性の向上を実現できる。また、この車両用蓋体ロック装置では、係合部がリテーナの外周側に形成された被係合部に係合することから、上記従来の車両用蓋体ロック装置と比較して、係合部が被係合部に係合する状態を作業者が目視し易く、係合部の係合不良を容易に発見できる。
【0013】
第1アーム及び第2アームは一体に形成されていることが望ましい。この場合、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0014】
ハウジングは、ハウジング本体と一体をなし、径方向に延びて先端に支持部が形成された支持アームを有していることが望ましい。第1アーム及び第2アームは、支持部と一体をなしていることが望ましい。そして、支持アームは、ハウジング本体と支持部との間において弾性変形可能であることが望ましい。この場合、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を一層実現できる。
【0015】
解除操作部は、支持部よりも支持壁側に位置していることが望ましい。この場合、解除操作部を把持し易く、また、解除操作部を変位させるときのストローク量を確保し易いので、ハウジングをリテーナから外すときの操作性の向上を一層実現できる。
【0016】
係合部は、解除操作部よりも支持壁側に位置していることが望ましい。この場合、係合部と被係合部との係合を解除するために必要な解除操作部のストローク量を小さくできるので、ハウジングをリテーナから外すときの操作性の向上をより一層実現できる。
【0017】
被係合部及び係合部は、車体に対して上側に配置されていることが望ましい。この場合、係合部が被係合部に係合する状態を作業者が見下ろすだけで目視できるので、係合部の係合不良を容易に発見できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用蓋体ロック装置によれば、ハウジングをリテーナから外すときの操作性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1の車両用蓋体ロック装置が適用された車両の模式部分断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の車両用蓋体ロック装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例1の車両用蓋体ロック装置の正面図である。
【
図4】
図4は、実施例1の車両用蓋体ロック装置に係り、カバー部材を外してハウジング本体に収容された駆動機構を示す背面図である。
【
図5】
図5は、実施例1の車両用蓋体ロック装置に係り、嵌合部が嵌合孔に嵌合し、係合部が被係合部と係合する状態を示す部分断面図である。
【
図6】
図6は、実施例1の車両用蓋体ロック装置に係り、ハウジングをリテーナから外した状態を示す部分正面図である。
【
図7】
図7は、実施例1の車両用蓋体ロック装置に係り、リテーナの斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例1の車両用蓋体ロック装置に係り、嵌合部、支持アーム、第1アーム、第2アーム、解除操作部、係合部等を主に示す部分斜視図である。
【
図9】
図9は、
図5と同様の部分断面図であって、ハウジングをリテーナから外す操作を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施例2の車両用蓋体ロック装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例1)
図1~
図3に示すように、実施例1の車両用蓋体ロック装置1は、本発明の車両用蓋体ロック装置の具体的態様の一例である。車両用蓋体ロック装置1は、自動車、バス、産業車両等である車両に適用されている。
図1では、車両の車体9における右側面側かつ後側の一部を図示している。
【0022】
図1に示す前後方向は、車両の前後方向を基準としている。また、
図1及び
図2に示す車両内外方向は、車両の車室内に搭乗する者を基準として、車両の右側面側を車両外側とし、その反対側を車両内側、すなわち車室側としている。さらに、
図2に示す上下方向は、車両の上下方向を基準としている。
図3以降に示す前後方向、車両内外方向及び上下方向は、
図1及び
図2に対応させて表示している。
【0023】
<車体の開口部、支持壁及び蓋体等の構成>
図1に示すように、車体9は、ボディパネル9A及びインナーパネル9Bを有している。ボディパネル9Aは、車体9の右側面を構成している。インナーパネル9Bは、ボディパネル9Aに対して車両内側に配置され、トランクルーム等の車室を区画している。
【0024】
車体9のボディパネル9Aには、開口部8が設けられている。開口部8は、ボディパネル9Aの一部が車体9の右側面から車両内側に向って凹むように形成された凹部であり、車体9の右側面に開いている。
【0025】
開口部8は、開口部8の底面を形成する底壁8Bと、開口部8の内壁面の一部を形成する支持壁7とを有している。底壁8Bの中央には、給油孔8Hが配置されている。支持壁7は、車両内外方向及び上下方向に略平板状に延びて、開口部8の後側の内壁面を形成している。
図3に示すように、支持壁7には、取付孔6が貫設されている。
【0026】
図1に示すように、車体9のボディパネル9Aには、蓋体5が開閉軸心X5周りに揺動可能に支持されている。開閉軸心X5は、開口部8の前側の開口縁に沿って上下方向に延びている。蓋体5は、
図1に実線で示すように開口部8を開じる閉鎖位置と、
図1に二点鎖線で示すように開口部8を開放する開放位置との間で揺動可能である。
【0027】
蓋体5は、蓋体係止部4を有している。蓋体係止部4は、蓋体5の後端側に一体に設けられている。蓋体係止部4は、蓋体5の車両内側を向く面から車両内側に向って突出している。蓋体係止部4の先端には、テーパ部4Aが形成されている。蓋体係止部4におけるテーパ部4Aよりも蓋体5側には、係止凹部4Bが前向きに凹むように形成されている。
【0028】
車体9のインナーパネル9Bには、メンテナンス開口部9M及び開口カバー9Nが設けられている。メンテナンス開口部9Mは、開口部8の支持壁7よりも後方に形成されている。メンテナンス開口部9Mは、車両用蓋体ロック装置1が通過可能な大きさでインナーパネル9Bを貫通している。
【0029】
開口カバー9Nは、インナーパネル9Bに取り外し可能に装着されて、メンテナンス開口部9Mを閉鎖している。開口カバー9Nは、車両用蓋体ロック装置1の着脱やメンテナンス等の作業を行う際に、作業者によって取り外される。これにより、作業者が開放されたメンテナンス開口部9Mからボディパネル9Aとインナーパネル9Bとの間の空間に手を差し入れて、上記作業を容易に実施できる。
【0030】
<車両用蓋体ロック装置の構成>
車両用蓋体ロック装置1は、開口部8と蓋体5との間に設けられて、蓋体5を閉鎖位置に保持するためのものである。車両用蓋体ロック装置1は、
図1~
図7及び
図9に示すリテーナ90と、
図1~
図6、
図8及び
図9に示すハウジング70及びロックシャフト50と、
図4に示す駆動機構60と、
図1~
図3に示す伝達レバー67とを備えている。なお、以下の説明では、車両用蓋体ロック装置1の構成要素の形状等を説明するときに、ロックシャフト50の前後方向に延びる軸心X50と、軸心X50と直交する径方向とを適宜用いる。
【0031】
<リテーナ>
図3、
図5及び
図7等に示すように、リテーナ90は、基板91及びリテーナ本体92が一体に形成された樹脂成形品である。基板91は、車両内外方向及び上下方向に延びる略矩形平板形状とされている。リテーナ本体92は、基板91の後面に接続され、前後方向に略筒状に延びている。リテーナ本体92の内周側には、前後方向に延びる嵌合孔94が形成されている。
【0032】
図7に示すように、嵌合孔94の前端縁94Fは、ロックシャフト50の軸心X50を中心として基板91を貫通する丸穴である。
【0033】
嵌合孔94における前端縁94Fよりも後方に位置する4つの内周面94B1、94B2、94B3、94B4は、軸心X50を中心とし、かつ前端縁94Fよりも大径である1つの円筒面の互いに異なる4つの領域である。
【0034】
嵌合孔94における内周面94B1と内周面94B3との間には、嵌合溝部94C1が形成されている。嵌合溝部94C1は、車両外側に向って凹み、かつ前後方向に延びる溝である。嵌合溝部94C1は、嵌合孔94の後端縁に開いている。
【0035】
嵌合孔94における内周面94B2と内周面94B4との間には、嵌合溝部94C2が形成されている。嵌合溝部94C2は、車両内側に向って凹み、かつ前後方向に延びる溝である。嵌合溝部94C2も、嵌合孔94の後端縁に開いている。
【0036】
嵌合孔94における内周面94B3と内周面94B4との間には、嵌合溝部94C3が形成されている。嵌合溝部94C3は、下向きに凹み、かつ前後方向に延びる溝である。嵌合溝部94C3も、嵌合孔94の後端縁に開いている。
【0037】
リテーナ本体92には、一対の突出壁92A1、92A2と、接続壁93とが形成されている。車両外側に位置する突出壁92A1は、嵌合孔94の内周面94B1の上端縁から上向きに突出し、かつ前後方向に延びて基板91に接続している。車両内側に位置する突出壁92A2は、嵌合孔94の内周面94B2の上端縁から上向きに突出し、かつ前後方向に延びて基板91に接続している。接続壁93は、基板91から後方に離間した位置で車両内外方向に延びて、突出壁92A1の上端と突出壁92A2の上端とを接続している。
【0038】
接続壁93の前端面は、被係合部95とされている。つまり、被係合部95は、リテーナ90のリテーナ本体92の外周側に形成されて、ロックシャフト50の軸心X50に対して上側に配置されている。
【0039】
リテーナ90は、基板91が支持壁7に前方から当接し、かつリテーナ本体92が支持壁7の取付孔6に挿入されて嵌合孔94が取付孔6内に延びる状態で、基板91がネジやファスナ等の周知の締結手段によって支持壁7に締結されることにより、支持壁7に固定されている。被係合部95は、車体9に対して上側に配置されている。
【0040】
<ハウジング>
図1~
図3に示すように、ハウジング70は、ハウジング本体71と、ハウジング本体71は別体であるカバー部材72とを有している。ハウジング本体71及びカバー部材72はそれぞれ、樹脂成形品である。
【0041】
図4に示すように、ハウジング本体71には、駆動機構60を収容するための収容部71Aが車両外側に向って凹むように形成されている。また、ハウジング本体71における収容部71Aの周囲には、複数の矩形穴71Hが車両内外方向に貫通するように形成されている。
【0042】
図2に示すように、カバー部材72は、車両内側からハウジング本体71に当接され、カバー部材72の周縁から車両外側に向けて突出する複数のフック72Hが各矩形穴71Hに係合することによりハウジング本体71に接合され、収容部71Aを覆っている。
【0043】
また、ハウジング70は、
図5、
図6及び
図8に示すように、ハウジング本体71に一体に形成された嵌合部40を有している。嵌合部40は、筒状基部41、フランジ42及び嵌合凸部41C1、41C2、41C3を含んでいる。
【0044】
筒状基部41は、ハウジング本体71の前端71Fの下部分から軸心X50を中心として前向きに突出する略円筒形状とされている。筒状基部41の先端には、軸心X50を中心とする円環状のシールリング41Sが装着されている。
【0045】
フランジ42は、筒状基部41の外周面におけるシールリング41Sよりも後方の位置から軸心X50の径方向に突出し、軸心X50の周方向において筒状基部41を一周している。フランジ42の外径は、内周面94B1、94B2、94B3、94B4が含まれる円筒面の内径よりも僅かに小さく設定されている。
【0046】
図8に示すように、嵌合凸部41C1、41C2、41C3は、フランジ42よりも後方の位置で筒状基部41に接続している。
【0047】
嵌合凸部41C1は、筒状基部41の外周面における車両外側に位置する部分から車両外側に向って突出し、かつ前後方向に延びている。嵌合凸部41C1の前部分は、前向きに尖っている。
【0048】
嵌合凸部41C2は、筒状基部41の外周面における車両内側に位置する部分から車両内側に向って突出し、かつ前後方向に延びている。嵌合凸部41C2の前部分も、前向きに尖っている。
【0049】
嵌合凸部41C3は、筒状基部41の外周面の下部分から下向きに突出し、かつ前後方向に延びて、フランジ42の下部分に接続している。
【0050】
ハウジング70を
図6に示すリテーナ90よりも後方の位置から軸心X50に沿って前向きに変位させることより、
図5に示すように、嵌合部40がリテーナ90の嵌合孔94に嵌合する。
【0051】
この状態では、嵌合部40のフランジ42が嵌合孔94の内周面94B1、94B2、94B3、94B4に嵌合し、シールリング41Sが嵌合孔94の前端縁94Fに密着している。また、嵌合凸部41C1が嵌合孔94の嵌合溝部94C1に嵌合し、嵌合凸部41C2が嵌合孔94の嵌合溝部94C2に嵌合し、嵌合凸部41C3が嵌合孔94の嵌合溝部94C3に嵌合している。
【0052】
さらに、ハウジング70は、
図5、
図6及び
図8に示すように、ハウジング本体71に一体に形成された支持アーム30、支持部35、第1アーム10、第2アーム20、解除操作部15及び係合部25を有している。
【0053】
支持アーム30は、筒状基部41の根元側に位置する外周面の上部分から軸心X50の径方向に沿って上向きに突出している。つまり、支持アーム30は、筒状基部41を介してハウジング本体71と一体をなしている。
【0054】
支持アーム30は、ハウジング本体71の前端71Fから前方に離間している。また、支持アーム30は、
図5に示すように、嵌合部40が嵌合孔94に嵌合した状態で、リテーナ90のリテーナ本体92よりも後方に位置している。また、この状態で、支持アーム30の先端は、リテーナ本体92の接続壁93及び被係合部95よりも上方に位置している。
【0055】
図5、
図6及び
図8に示すように、支持アーム30の先端には、支持部35が形成されている。つまり、支持部35は、ロックシャフト50の軸心X50に対して径方向に離間する位置に配置されている。
【0056】
図9に示すように、支持アーム30は、ハウジング本体71と支持部35との間において、支持部35を後向きに変位させるように弾性変形可能である。
【0057】
図5、
図6及び
図8に示すように、第1アーム10は、支持部35から軸心X50の径方向に沿って上向きに延びている。第1アーム10は、その中間部においてクランク状に折れ曲がっている。第1アーム10の先端は、ハウジング本体71の前端71Fに対して支持部35よりも前方に離間している。
【0058】
第1アーム10の先端には、被係合部95と係合部25との係合を解除するための解除操作部15が形成されている。つまり、解除操作部15は、筒状基部41、支持アーム30、支持部35及び第1アーム10を介してハウジング本体71に接続されている。解除操作部15は、作業者が指で押すことができる程度に大きい略平板形状とされている。
【0059】
図5に示すように、嵌合部40が嵌合孔94に嵌合した状態で、解除操作部15は、支持部35よりも支持壁7側に位置している。
図9に示すように、支持アーム30が弾性変形することにより、第1アーム10は、解除操作部15が支持壁7から後方に離間するように変位可能である。
【0060】
図5、
図6及び
図8に示すように、第2アーム20は、支持部35から軸心X50と略平行に前向きに延びている。第2アーム20の先端は、ハウジング本体71の前端71Fに対して解除操作部15よりも前方に離間している。
【0061】
第2アーム20の先端には、嵌合部40が嵌合孔94から抜けることを規制するための係合部25が形成されている。つまり、係合部25は、筒状基部41、支持アーム30、支持部35及び第2アーム20を介してハウジング本体71に接続されている。係合部25は、第2アーム20の先端から下向きに突出する凸部である。係合部25は、ロックシャフト50の軸心X50に対して上側に配置されている。
【0062】
図5に示すように、嵌合部40が嵌合孔94に嵌合した状態で、第2アーム20が支持部35からリテーナ90の被係合部95に向かって延び、係合部25が被係合部95と係合している。これにより、嵌合部40が嵌合孔94から抜けることが規制される。また、この状態で、係合部25は、解除操作部15よりも支持壁7側に位置しているとともに、車体9に対して上側に配置されている。
【0063】
<ハウジングをリテーナから外すときの操作>
図9に示すように、ハウジング70をリテーナ90から外すときに、作業者は、第1アーム10の先端に形成された解除操作部15を支持壁7から離間する方向、すなわち後向きの解除方向D1に操作する。これにより、支持アーム30が弾性変形するので、解除操作部15が支持壁7から後方に離間するように第1アーム10が変位する。この第1アーム10の変位によって、第1アーム10と一体をなす第2アーム20は、その先端に形成された係合部25を被係合部95から上方に離間させるように上向きに変位する。その結果、係合部25と被係合部95との係合が解除される。
【0064】
また、作業者は、解除操作部15を解除方向D1に操作しながら、ハウジング本体71を支持壁7から離間する方向、すなわち後向きの引き抜き方向D2に移動させて、嵌合部40を嵌合孔94から引き抜く。つまり、解除方向D1と引き抜き方向D2とは同じ方向である。このような1段階の動作により、作業者は、ハウジング70をリテーナ90から容易に外すことができる。
【0065】
<ロックシャフト>
図2及び
図5に示すように、ロックシャフト50は、円柱軸51を含んで前後方向に延びる樹脂成形品である。円柱軸51は、ロックシャフト50の前部分に形成されている。円柱軸51は、軸心X50を中心とする円柱軸である。円柱軸51は、筒状基部41に挿通されている。
【0066】
図5に示すように、ロックシャフト50の後部分は、ハウジング本体71の後端側に形成されたガイド部71Gに挿通されている。
図2に示すように、ロックシャフト50の後端には、緊急時に作業者がロックシャフト50を後向きに引っ張るための手動操作部59が形成されている。
【0067】
ロックシャフト50は、筒状基部41及びガイド部71Gによって、前後方向に直動可能にハウジング70に支持されている。ロックシャフト50の円柱軸51は、嵌合部40が嵌合孔94に嵌合した状態で、嵌合孔94を通過して支持壁7に対してハウジング本体71とは反対側に、すなわち支持壁7よりも前側に突出している。
【0068】
図1に示すように、ロックシャフト50は、円柱軸51の先端が蓋体5の蓋体係止部4の係止凹部4Bに嵌入することにより、閉鎖位置にあって開口部8を閉じた状態の蓋体5を保持する。
【0069】
図1~
図6、
図8及び
図9に示すロックシャフト50の位置は、前方に移動した位置である。図示は省略するが、ロックシャフト50は、
図1等に示す位置から後方に移動することにより、円柱軸51の先端が蓋体係止部4の係止凹部4Bから離間して、蓋体5を保持しなくなる。これにより、蓋体5は、図示しない付勢手段に付勢されて、
図1に実線で示す閉鎖位置から
図1に二点鎖線で示す開放位置に揺動する。
【0070】
<駆動機構及び伝達レバー>
図4に示すように、駆動機構60は、収容部71Aに収容されたモータ61、ウォームギヤ62及びウォームホイールギヤ63及び伝達軸64を有している。モータ61は、ハウジング本体71の後端側の上部分に設けられたコネクタ71Cを経由して、図示しない制御部に接続されている。
【0071】
モータ61は、その制御部によって給電されることにより、駆動軸61Aに固定されたウォームギヤ62を回転させ、ウォームギヤ62と噛み合うウォームホイールギヤ63を
図4に示す位置から
図4の時計方向に回動させる。伝達軸64は、ウォームホイールギヤ63と一体に形成されている。伝達軸64は、
図4の紙面奥側に向って、すなわち車両外側に向って延びてハウジング本体71を通過している。
【0072】
図2に示すように、伝達レバー67は、伝達軸64における車両外側に突出する端部64Aに接続されて、ウォームホイールギヤ63及び伝達レバー67と一体で回転可能となっている。
【0073】
伝達レバー67は、伝達軸64の端部64Aから上向きに延びている。伝達レバー67の先端は、ロックシャフト50の前後方向の中間部に連結されている。
【0074】
伝達レバー67には、伝達軸64の端部64Aから下向きに延びる板状片67Aが一体に形成されている。
【0075】
図3に示すように、伝達レバー67とハウジング本体71との間には、捩じりコイルバネ67Tが設けられている。捩じりコイルバネ67Tは、コイル部分が伝達軸64を挿通させた状態で、コイル部分から延びる一端がハウジング本体71に係止され、コイル部分から延びる他端が伝達レバー67の板状片67Aに係止されている。捩じりコイルバネ67Tは、伝達レバー67を
図3の時計方向に回動させる付勢力を発揮する。
【0076】
ロックシャフト50は、捩じりコイルバネ67Tの付勢力が伝達レバー67を経由して伝達されることにより、
図1及び
図3等に示す前向きに移動した位置に保持される。
【0077】
ウォームホイールギヤ63も、捩じりコイルバネ67Tの付勢力が伝達レバー67及び伝達軸64を経由して伝達されることにより、
図4に示す位置に保持される。
<蓋体を開閉するときのロックシャフト、駆動機構及び伝達レバーの動作>
車両への給油を行う場合、蓋体5を開放位置に揺動させるために、ユーザによって、車室内に設けられたスイッチが操作される。すると、図示しない制御部がモータ61を作動させ、ウォームホイールギヤ63を
図4に示す位置から
図4の時計方向に回動させる。これにより、伝達レバー67は、捩じりコイルバネ67Tの付勢力に抗して
図3に示す位置から
図3の反時計方向に回動し、ロックシャフト50を後方に移動させる。その結果、ロックシャフト50は、
図1に示す位置から後方に移動して、円柱軸51の先端が蓋体係止部4の係止凹部4Bから離間するので、蓋体5が
図1に二点鎖線で示す開放位置に揺動する。
【0078】
その後、図示しない制御部がモータ61への給電を停止すると、捩じりコイルバネ67Tの付勢力によって、ロックシャフト50が
図1等に示す位置に復帰し、ウォームホイールギヤ63が
図4に示す位置に復帰する。
【0079】
車両への給油が終了し、ユーザによって、開放位置にある蓋体5が
図1に実線で示す閉鎖位置に向けて押されると、蓋体係止部4のテーパ部4Aが円柱軸51の先端に摺接して、ロックシャフト50を後方に移動させる。そして、蓋体5が閉鎖位置に到達すると、捩じりコイルバネ67Tの付勢力によってロックシャフト50が前向きに移動して、円柱軸51の先端が蓋体係止部4の係止凹部4Bに嵌入するので蓋体5が閉鎖位置に保持される。
【0080】
<作用効果>
実施例1の車両用蓋体ロック装置1では、
図9に示すように、ハウジング70をリテーナ90から外すときに、作業者が第1アーム10の先端に形成された解除操作部15を支持壁7から離間する方向、すなわち後向きの解除方向D1に操作しながら、ハウジング本体71を支持壁7から離間する方向、すなわち解除方向D1と同じ後向きの引き抜き方向D2に移動させるという1段階の動作を行うだけでよい。これにより、作業者は、ハウジング70をリテーナ90から容易に外すことができる。
【0081】
したがって、実施例1の車両用蓋体ロック装置1では、ハウジング70をリテーナ90から外すときの操作性の向上を実現できる。また、この車両用蓋体ロック装置1では、
図2に示すように、係合部25がリテーナ90の外周側に形成された被係合部95に係合することから、上記従来の車両用蓋体ロック装置と比較して、係合部25が被係合部95に係合する状態を作業者が目視し易く、係合部25の係合不良を容易に発見できる。
【0082】
さらに、この車両用蓋体ロック装置1では、第1アーム10及び第2アーム20が一体に形成されているので、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現できる。
【0083】
また、この車両用蓋体ロック装置1では、ハウジング本体71と一体をなす支持アーム30の先端に支持部35が形成され、第1アーム10及び第2アーム20が支持部35と一体をなし、支持アーム30がハウジング本体71と支持部35との間において弾性変形可能な構成により、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を一層実現できる。
【0084】
さらに、この車両用蓋体ロック装置1では、
図9に示すように、解除操作部15は、支持部35よりも支持壁7側に位置している。この構成により、解除操作部15を把持し易く、また、解除操作部15を解除方向D1に変位させるときのストローク量を確保し易いので、ハウジング70をリテーナ90から外すときの操作性の向上を一層実現できる。
【0085】
また、この車両用蓋体ロック装置1では、係合部25は、解除操作部15よりも支持壁7側に位置している。この構成により、係合部25と被係合部95との係合を解除するために必要な解除操作部15のストローク量を小さくできるので、ハウジング70をリテーナ90から外すときの操作性の向上をより一層実現できる。
【0086】
さらに、この車両用蓋体ロック装置1では、
図2に示すように、被係合部95及び係合部25は、車体9に対して上側に配置されている。この構成により、係合部25が被係合部95に係合する状態を作業者が見下ろすだけで目視できるので、係合部25の係合不良を容易に発見できる。
【0087】
(実施例2)
図10に示すように、実施例2の車両用蓋体ロック装置では、実施例1の車両用蓋体ロック装置1に係る支持アーム30、支持部35、第1アーム10、第2アーム20、解除操作部15及び係合部25の代わりに、ハウジング本体71とは別部材であってそれぞれが一体に形成された第1アーム210、第2アーム220、解除操作部215及び係合部225と、ハウジング本体71に一体に形成された支持部235と、支持部235と第1アーム210との間に設けられた捩じりコイルバネ230とを有している。
【0088】
第1アーム210、第2アーム220、解除操作部215及び係合部225の構成は、実施例1に係る第1アーム10、第2アーム20、解除操作部15及び係合部25と同じである。
【0089】
支持部235は、ハウジング本体71の前端71Fにおける筒状基部41から上方に離間した部分に接続し、前向きに突出している。支持部235は、第1アーム210と第2アーム220との接続部に挿通された支持ピン235Pを含んでいる。支持部235は、第1アーム210、第2アーム220、解除操作部215及び係合部225を支持ピン235P周りに回動可能に支持している。
【0090】
捩じりコイルバネ230は、コイル部分が支持ピン235Pを挿通させた状態で、コイル部分から延びる一端がハウジング本体71の前端71Fに係止され、コイル部分から延びる他端が第1アーム210に係止されている。捩じりコイルバネ230は、第1アーム210、第2アーム220、解除操作部215及び係合部225を
図10の時計方向に回動させる付勢力を発揮する。
【0091】
実施例2のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0092】
このような構成である実施例2の車両用蓋体ロック装置では、ハウジング70をリテーナ90から外すときに、作業者が第1アーム210の先端に形成された解除操作部215を支持壁7から離間する方向、すなわち解除方向D1に操作して係合部225と被係合部95との係合を解除しながら、ハウジング本体71を支持壁7から離間する方向、すなわち引き抜き方向D2に移動させるという1段階の動作を行うだけでよい。これにより、作業者は、ハウジング70をリテーナ90から容易に外すことができる。
【0093】
したがって、実施例2の車両用蓋体ロック装置では、実施例1の車両用蓋体ロック装置1と同様に、ハウジング70をリテーナ90から外すときの操作性の向上を実現できる。また、この車両用蓋体ロック装置でも、係合部225が被係合部95に係合する状態を作業者が目視し易く、係合部225の係合不良を容易に発見できる。
【0094】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0095】
例えば、実施例1、2では、開口部8内に給油孔8Hが配置されているがこの構成には限定されず、給油孔8Hの代わりに、給電コネクタ等が配置されていてもよい。
【0096】
実施例1、2では、リテーナ90が支持壁7と別体であるがこの構成には限定されず、例えばリテーナが支持壁と一体であってもよい。
【0097】
実施例1、2では、駆動機構60に駆動されてロックシャフト50が移動するがこの構成には限定さない。例えば、実施例1、2に係る駆動機構60のような駆動機構を有しておらず、手動操作によってロックシャフトが移動する構成にしてもよい。
【0098】
実施例1、2では、ロックシャフト50が軸心X50周りに回転することなく直動するがこの構成には限定さない。例えば、ロックシャフトは、軸心周りに回転しながら直動してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は自動車、バス又は産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0100】
1…車両用蓋体ロック装置
9…車体
6…取付孔
7…支持壁
8…開口部
5…蓋体
94…嵌合孔
95…被係合部
90…リテーナ
70…ハウジング
71…ハウジング本体
40…嵌合部
25、225…係合部
15、215…解除操作部
50…ロックシャフト
X50…ロックシャフトの軸心
35、235…支持部
10、210…第1アーム
20、220…第2アーム
30…支持アーム