(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】配管用パイプベンダ
(51)【国際特許分類】
B21D 7/024 20060101AFI20220224BHJP
【FI】
B21D7/024 A
(21)【出願番号】P 2020035358
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2020-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
(72)【発明者】
【氏名】山下 清一郎
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19956046(DE,A1)
【文献】米国特許第04425784(US,A)
【文献】米国特許第05669258(US,A)
【文献】実開昭56-007422(JP,U)
【文献】実開平04-054513(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/024
B21D 7/02
B21D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と、前記柄の端部に設けられたベンダヘッド板と、前記ベンダヘッド板の一方の面より突設し、曲げ加工すべきパイプを所定の間隔を開けて上下方向から挟む一対の突設体とより構成され、前記突設体にパイプを挟んで前記パイプ自身に圧力を加えることにより所定の曲げ加工を行う配管用のパイプベンダであって、
前記ベンダヘッド板の他方の面に回転中心部が回動可能に取付けられた扇形の板状の形状を有し、その外周側に回転角度を表す目盛りが設けられた回転スケールと、
前記扇形の回転スケールの外周側に設けられ、前記突設体に挟まれた前記パイプの曲げ加工による前記パイプの移動に同期して前記回転スケールが前記回転中心部を中心として回転するように前記パイプを保持するフック部と、
前記回転スケールに設けられた前記目盛りの位置に対応して前記柄に設けられ、前記回転スケールの回転角度の変化を読み取るための角度
指示部と、
より構成されていることを特徴とする配管用パイプベンダ。
【請求項4】
パイプの曲げ加工を行うに当たり、パイプの曲げ加工の目標角度に対応する角度を前記角度指示部との間で設定可能なように、曲げ加工を止めるための角度を指示する曲げ止まり指示部を前記円弧状スリット孔の所定の角度位置に選択的に取り付け可能に構成され、
パイプの曲げ加工とともに前記回転スケールが回転して前記曲げ止まり指示部が前記角度指示部と一致することでパイプの曲げ加工の目標角度を判別可能としたことを特徴とする請求項3記載の配管用パイプベンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管用パイプベンダに関する。
【背景技術】
【0002】
電線管の配管用パイプベンダとして、特許文献1には、柄と、その柄の一端に、柄軸方向に設けたベンダヘッド板と、そのベンダヘッド板の片面から垂直に突設した、パイプを両側からずらしてはさむ一組の突設体と、を有することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、曲げ角度が刻まれた湾曲部材に沿って曲げ加工されたパイプの曲げ角度を拡大レンズにより、読み取る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭56-7422公報
【文献】実開平4-54513公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合は、配管用途に応じて、電線管の曲げ率を変えながら、曲げ加工することが可能となるが、電線管の曲げ率を目分量で曲げていくことになるので、曲げる角度が正確性を欠きやすい。
それに対して、特許文献2の場合は、湾曲部材に曲げ角度が刻まれているため、曲げる角度が正確ではあるが、管の径に応じて湾曲部材を個別に準備する必要があるし、管の径が小さい場合は湾曲部材が小さくなり、刻まれた曲げ角度の読取りが難しくなり正確を欠きやすい。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決する為のもので、個別の湾曲部材を必要とせず、曲げる角度を確実正確に測定しながら、曲げ率を変えても、特に曲げ率が大きい場合でも、必要な曲率半径の角度に曲げることができる配管用パイプベンダを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明に係る配管用パイプベンダは、柄と、前記柄の端部に設けられたベンダヘッド板と、前記ベンダヘッド板の一方の面より突設し、曲げ加工すべきパイプを所定の間隔を開けて上下方向から挟む一対の突設体とより構成され、前記突設体にパイプを挟んで前記パイプに圧力を加えることにより所定の曲げ加工を行う配管用のパイプベンダであって、前記ベンダヘッド板の他方の面に回転中心部が回動可能に取付けられた扇形の板状の形状を有し、その外周側に回転角度を表す目盛りが設けられた回転スケールと、前記扇形の回転スケールの外周側に設けられ、前記突設体に挟まれた前記パイプの曲げ加工による前記パイプの移動に同期して前記回転スケールが前記回転中心部を中心として回転するように前記パイプを保持するフック部と、前記回転スケールに設けられた前記目盛りの位置に対応して前記柄に設けられ、前記回転スケールの回転角度の変化を読み取るための角度指示部と、より構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る配管用パイプベンダの前記角度指示部は、前記回転スケールの外周端部を前記柄との間に挟み込んでいることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る配管用パイプベンダは、前記回転スケールの外部側に設けられている前記回転角度を表す目盛りの内側に、扇形形状と同心となるように設けられた円弧状スリット孔をさらに有し、前記フック部は、前記円弧状スリット孔の所定の位置に調整用ねじを介して固定されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る配管用パイプベンダは、パイプの曲げ加工を行うに当たり、パイプの曲げ加工の目標角度に対応する角度を前記角度指示部との間で設定可能なように、曲げ加工を止めるための角度を指示する曲げ止まり指示部を前記円弧状スリット孔の所定の角度位置に選択的に取り付け可能に構成され、パイプの曲げ加工とともに前記回転スケールが回転して前記曲げ止まり指示部が前記角度指示部と一致することでパイプの曲げ加工の目標角度を判別可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配管用パイプベンダは、柄の端部に設けた一対の突設体にパイプ挟んで曲げ加工を行う時に、ベンダヘッド板に回転中心部が回転可能に取り付けられた回転スケールを前記曲げ加工によるパイプの移動に同期して回動させるためのパイプを保持するフック部を設けるとともに、回転スケールに設けられた目盛りを読み取るための角度指示部を柄に設けたことを第1の特徴するものである。この構成により、パイプの移動に同期して回転スケールを回動させることが可能となり、回転スケールが曲げ加工の際に邪魔になるようなことはなく、角度指示部による回転スケールに設けられた目盛りの角度変化を正確に判別可能となり、正確にパイプの曲げ加工を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る配管用パイプベンダの角度指示部は、回転スケールの外周端部を柄との間に挟み込んで保持しているため、回転スケールがふらふらしたりすることなく安定して回動可能となる。
【0013】
また、本発明に係る回転スケールには円弧状スリット孔を有しており、フック部は、このスリット孔の所定の位置に調整用ねじを介して固定されるため、フック部と回転スケールの位置関係を調整可能となり、作業性に影響与えないように取付け可能になるととも
に、柄に設けた角度指示部と目盛りとの位置関係を任意調整可能であり、使用者の回転角度の確認の自由度を増すことが出来る。
【0014】
さらに、本発明では、回転スケールに設けたスリット孔に対して曲げ止まり指示部を備えている。この曲げ止まり指示部は、曲げ加工の開始前において、角度指示部との間で、実際に曲げ加工が必要な角度を示すことが出来るので、必要の角度を曲げ加工を容易に確認することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の配管用パイプベンダの概略斜視図を示している。
【
図2】本発明の配管用パイプベンダを使用してパイプを曲げる方法を示している。
【
図3】本発明の配管用パイプベンダを使用してパイプを曲げる方法を示している。
【
図4】本発明の配管用パイプベンダのベンダヘッド板を地面側にしてパイプを曲げる方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の柄は、下記のベンダヘッド板の一端部に固着し、垂直方向伸びた棒状体で、軽量化のため中空になっていてもよく、手で握れる程度の径となっている。
具体的には、鋼管等が使用できる。
【0017】
本発明のベンダヘッド板は、柄の一端に設けた板状のもので、柄と一体でも別部材でもよい。この部分でパイプが曲げられる。
【0018】
本発明の突設体は、ベンダヘッド板の片面から垂直に突設した部分または別部材で、その側面で、パイプを両側からずらしてはさむ一組のものをさす。
【0019】
本発明の回転スケールは、扇形の板の表面に角度目盛りを設けたもので、扇形の半径は、上記の角度目盛り間隔が見やすい程度の長さで、おおよそ5cmから20cm程度で、扇形の中心角は、おおよそ40度から180度程度が好ましい。透明板であると、曲げ作業がしやすくなる。
【0020】
本発明のフック部は、一端部分がパイプの側面に接しパイプをフックし、他端部分が回転スケールに接する。回転スケールと接する部分で固定すると、フック部と回転スケールとは一体的に回転する。
回転スケールに接する側は、回転スケールの回転の中心部分まで延長し、回転スケールの回転軸と同じ軸とすることにより、パイプと回転スケールとフック部が同じ軸で回転するようになる。
【0021】
本発明の自由回転防止機構は、回転スケールが自由に回転するのを抑制するもので、回転スケールと、柄またはベンダヘッドとのすき間を埋めるように、摩擦係数の高いものを設け、手動等で回転スケールを動かすことができる程度の回転摩擦を生じさせることができる。具体的には、片面フェルト製粘着テープなどが使用できる。
【0022】
本発明の回転スケール外れ止めは、回転スケールが外側に外れる事を防止するためのもので、ナベねじとナットで表裏を縫い付けて設置してある。
【0023】
本発明の角度指示部は、回転スケールの角度目盛りの角度を指し示すもので、柄に取り付ける。一端を柄の表面に固定し、他端で回転スケールの角度目盛りの角度を指し示す。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の配管用パイプベンダの概略斜視図を示している。
本発明の配管用パイプベンダには、柄1と、柄1の上方端の柄軸方向にベンダヘッド板2を設けていて、そのベンダヘッド板2の片面から垂直に突設させた、パイプを両側からずらしてはさむ一組の突設体3と、その突設体3の反対面に、その反対面とは平行に、パイプの屈曲部分を軸として回転する回転スケール4を柄側に設ける。
回転スケール4は、
扇形の板で、その表面に回転角度の角度目盛り4aを印刷などにより設けている。
【0025】
また、回転スケール4には、図に示すように、回転スケール4の外部側に設けられている前記回転角度を表す角度目盛り4aの内側に、扇形形状と同心となるように設けられた円弧状スリット孔12が設けられている。
そして、パイプをフックするフック部5をこのスリット孔12に取り付け、フック調整用ネジ5a等で固定すると一体的に回転するようになる。
フック部5は、パイプ側面に沿ってフックする側は、断面が三日月状の挟み込み部分5bとなっていて、反対側の回転スケール4に接する側を、回転スケール4の回転の中心部分まで延長し、回転スケールの回転軸6と同じ軸とすることにより、パイプと回転スケール4とフック部5が同じ軸で回転するようになる。
【0026】
また、回転スケール4の弧側には、回転スケール4の角度目盛りの角度を指し示す角度指示部7を柄1に取り付けている。一端を柄1の表面に固定し、他端で回転スケール4の角度目盛りの角度を指し示す。
【0027】
また、回転スケール4の自由回転を防止するために、自由回転防止機構8を、角度指示部7と回転スケール4とのすき間に設けている。
また、一回のパイプの曲げ角度を設定するために、回転スケール4の表面の回転軸7の放射線状に、曲げ止まり指示部9を設けている。設定に従って回転スケール4に曲げ止まり用ネジ9a等でスリット孔12にねじ止めされる。
【0028】
図2と
図3は、本発明の配管用パイプベンダを使用してパイプを曲げる方法を示している。
図2(a)は曲げる前を、
図2(b)最初の曲げ後を、
図3(a)は次の曲げる前を、
図3(b)は次の曲げ後を、
図3(c)は曲げ終了後を示している。
【0029】
まず柄を地面に立てる。曲げ角を10度ずつ、パイプ10を移動させて複数回曲げる場合の曲げ加工の手順としては、
まず初めに、
図2(a)に示すように、柄1に設けた角度指示部7の指示点に、回転スケール4の0点(角度目盛り4aとしては「10目盛り」)を合わせる。
次に、フック調整用ネジ5aをゆるめる。
次に、パイプ10を配管用パイプベンダの一組の突出体3にはさむ。
次に、パイプ10を、フック部5の挟み込み部分5bにフックする。
次に、フック調整用ネジ5aを締めて、回転スケール4とフック部5を固定する。
次に、一回目に必要なパイプ曲げ角になるように、曲げ
止まり指示部9を、曲げ
止まり用ネジ9aを使用して、スリット孔12を介して回転スケール4に固定する。
(今回の場合、一回目に必要なパイプ曲げ角は12度とし、曲げ
止まり指示部9の角度目盛り4aとしては「20目盛り」
となるようにスリット孔12に固定する。)
【0030】
次に、
図2(b)に示すように、フック部5の方のパイプ10と柄1とが狭まるようにして、角度指示部7の指示点と曲げ
止まり指示部9の曲げ
止まり角度が一致するように、パイプを曲げる。
【0031】
次に、
図3(a)に示すように、パイプ10を次の曲げ箇所まで移動させ、
(このときパイプ10、回転スケール4、フック部5は回転して元の位置に戻る)
次に、
図3(b)に示すように、フック部5の方のパイプ10と柄1とが狭まるように、角度指示部7の指示点と曲げ
止まり指示部9の曲げ
止まり角度が一致するように、パイプを曲げる。
以上を複数くり返した後、
図3(c)に示すように、曲げが終了する。
【0032】
図4はパイプベンダのベンダヘッド板を地面側にしてパイプを曲げる方法を示している。
パイプ10を地面に置き、回転スケール4の0点を確認し、その他前項と同様に調整し、柄1を手前に引き、パイプ10を曲げる。
回転スケール4を柄側に設けているので、パイプ10を地面に置くことができ、パイプ10を持つ必要がないので、曲げに集中することができる。パイプ10が長尺の時も安全に作業することが出来る。
【符号の説明】
【0033】
1…柄、2…ベンダヘッド板、3…突設体、4…回転スケール、4a…角度目盛り、5…フック部、5a…フック調整用ネジ、5b…挟み込み部分、6…回転スケールの回転軸、7…角度指示部、8…自由回転防止機構、9…曲げ止まり指示部、9a…曲げ止まり用ネジ、10…パイプ、11…回転スケール外れ止め、12…スリット孔