(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】検査対象物の状態評価装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20220224BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20220224BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/11
G01N29/24
(21)【出願番号】P 2020176931
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2016096082の分割
【原出願日】2016-05-12
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598105732
【氏名又は名称】株式会社シスミック
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴正
(72)【発明者】
【氏名】濱田 崇行
(72)【発明者】
【氏名】岸村 雄平
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-073668(JP,U)
【文献】米国特許第04918988(US,A)
【文献】特開2002-048772(JP,A)
【文献】特開2004-101413(JP,A)
【文献】特開平08-043362(JP,A)
【文献】特開2005-291918(JP,A)
【文献】特開2001-041940(JP,A)
【文献】徳臣 佐衣子 他,コンクリート構造物のための遠隔操作打音検査装置,日本機械学会2013年度年次大会講演論文集,2013年,J041051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、かつ、前記開口から出没して前記筐体の外部における検査対象物を打撃する
単一の打撃部と、
前記筐体の外部に配置され、第1の検出信号を生成する第1のマイクと、
前記筐体の外部に配置され、第2の検出信号を生成する第2のマイクと、
を備え、
前記第1の検出信号に基づいて、前記検査対象物のうち前記第1のマイクと対向する第1の箇所の状態を評価し、かつ、前記第2の検出信号に基づいて、前記検査対象物のうち前記第2のマイクと対向する第2の箇所の状態を評価
し、前記第1の箇所の状態の評価および前記第2の箇所の状態の評価に基づいて前記検査対象物のうち前記打撃部で打撃された箇所の状態を評価する、
ことを特徴とする検査対象物の状態評価装置。
【請求項2】
前記第1の箇所と前記第2の箇所は異なる、
ことを特徴とする請求項1記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項3】
前記第1のマイクは、前記第1の箇所と正対する第1の受音面を備え、
前記第2のマイクは、前記第2の箇所と正対する第2の受音面を備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項4】
前記第1のマイクと前記第2のマイクは、前記打撃部を中心として対称かつ等距離に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項5】
前記第1の検出信号に基づいて第1の打音検出波形を生成する第1の検出回路と、
前記第2の検出信号に基づいて第2の打音検出波形を生成する第2の検出回路と、
前記第1の打音検出波形及び前記第2の打音検出波形が入力される評価部と、を更に備え、
前記評価部は、第1の打音検出波形に基づいて前記第1の箇所の状態を評価し、かつ、前記第2の打音検出波形に基づいて前記第2の箇所の状態を評価
し、前記第1の箇所の状態の評価および前記第2の箇所の状態の評価に基づいて前記検査対象物のうち前記打撃部で打撃された箇所の状態を評価する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項6】
前記筐体の外部に配置され、第3の検出信号を生成する第3のマイクと、
前記筐体の外部に配置され、第4の検出信号を生成する第4のマイクと、
を備え、
前記第1乃至第4のマイクは、前記打撃部を中心とする円周上に配置され、
前記評価部は、前記第3の検出信号に基づいて前記検査対象物のうち前記第3のマイクと対向する第3の箇所の状態を評価し、かつ、前記第4の検出信号に基づいて前記検査対象物のうち前記第4のマイクと対向する第4の箇所の状態を評価し、前記第1の箇所の状態の評価と前記第2の箇所の状態の評価と前記第3の箇所の状態の評価と前記第4の箇所の状態の評価とに基づいて前記検査対象物のうち前記打撃部で打撃された箇所の状態を評価する、
ことを特徴とする請求項
5記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項7】
前記第1乃至第4のマイクは、前記打撃部を中心とする円周上において互いに90度の角度をおいて点対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項6記載の検査対象物の状態評価装置。
【請求項8】
前記第3の検出信号に基づいて第3の打音検出波形を生成する第3の検出回路と、
前記第4の検出信号に基づいて第4の打音検出波形を生成する第4の検出回路と、
を更に備え、
前記評価部は、
第1の打音検出波形に基づいて前記第1の箇所の状態を評価し、前記第2の打音検出波形に基づいて前記第2の箇所の状態を評価し、第3の打音検出波形に基づいて前記第3の箇所の状態を評価し
、前記第4の打音検出波形に基づいて前記第4の箇所の状態を評価
し、前記第1の箇所の状態の評価と前記第2の箇所の状態の評価と前記第3の箇所の状態の評価と前記第4の箇所の状態の評価とに基づいて前記検査対象物のうち前記打撃部で打撃された箇所の状態を評価する、
ことを特徴とする
請求項5を引用する請求項6または7記載の検査対象物の状態評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外装材等のような検査対象物の状態を評価する検査対象物の状態評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外装材(外壁材)の剥離、剥落を未然に防止するため、建物の状態を診断する方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、対象となるタイルを打撃手段で打撃したときに得られる反射音から得られるクレストファクタ(波高率:波形のピーク値と実効値の比:ピーク値/実効値)と所定値との比較結果に基づいて外装材の接着状態の良否を診断し、あるいは、反射音から数式に基づいて得られる期待周波数と健全タイルにおける期待周波数との比較結果に基づいて外装材の接着状態の良否を診断する方法が開示されている。
また、特許文献2には、検査対象物の表面を打撃して得られる応答音の第1の波形に含まれる基本周波数を判定基準として剥離または空洞のある箇所と無い箇所とを識別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2906973号公報
【文献】特許第3922459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、外装材を打撃して得られる反射音(あるいは応答音)からクレストファクタ、期待周波数といった特殊な値を算出する必要があり、処理が複雑なものとなり、外装材の接着状態の良否を診断するに要する時間が掛かり、また、診断を行なう機器の構成が複雑で高価なものとなっている。
また、特許文献2に記載の技術は、波長のみを評価対象としているため、検査対象物によっては波長(基本周波数)の差が出にくく、検査対象物の評価を的確に行なう上で不利がある。
そのため、検査対象物の状態の評価に要する時間の短縮化、診断に要する機器の簡素化を図る上で、また、建物外面部の状態を的確に行なう上で改善の余地がある。
【0005】
一方、打撃部とマイクから構成される剥離判定装置においては、打撃部の駆動部分等から発生する不要な音をマイクが検出しないようにするために、マイクをタイルへの打点から一定の距離(例えば、タイル一枚分に相当する距離:53mm)離した位置に配置するようにしている。そのため、打撃部によるタイルの打点箇所が剥離している箇所であるにもかかわらず、音をピックアップするマイクの位置が剥離のない健全部の真上にある場合、またはこれと逆にマイクが剥離のない健全部上に位置し打撃部の打点箇所が剥離部に位置する場合には、マイクからは健全部と同等の検出信号しか出力されない。その結果、タイルの剥離箇所を健全部と誤判定してしまうことになる。特に、このような誤判定は、健全部と剥離部との境界付近で多く発生し、剥離境界の様相を把握できないと正確なタイルの剥離診断ができないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、建物の表面を構成する検査対象物の建物躯体に対する剥離の有無及び剥離境界を含む検査対象物の状態の評価判定を効率よく短時間で的確かつ簡便に行ない得るとともに構成の簡素化を図る上で有利な検査対象物の状態評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、開口を有する筐体と、前記筐体の内部に配置され、かつ、前記開口から出没して前記筐体の外部における検査対象物を打撃する単一の打撃部と、前記筐体の外部に配置され、第1の検出信号を生成する第1のマイクと、前記筐体の外部に配置され、第2の検出信号を生成する第2のマイクと、を備え、前記第1の検出信号に基づいて、前記検査対象物のうち前記第1のマイクと対向する第1の箇所の状態を評価し、かつ、前記第2の検出信号に基づいて、前記検査対象物のうち前記第2のマイクと対向する第2の箇所の状態を評価し、前記第1の箇所の状態の評価および前記第2の箇所の状態の評価に基づいて前記検査対象物のうち前記打撃部で打撃された箇所の状態を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査対象物の表面を打撃ハンマーで打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマーの打撃点を中心に配置した複数のマイクにより検出して打音検出波形を各マイク毎に生成し、各マイク毎に打音検出波形をそれぞれ生成するようにした。
したがって、検査対象物である外装材の状態、すなわち外装材の剥離の有無及び外装材の健全部と剥離部と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】検査対象物の状態評価装置の検出ユニットの側面図である。
【
図5】外装材の状態を表す健全部及び剥離部とこれら健全部及び剥離部の打音の音圧との関係を示す線図である。
【
図6】外装材の背面の剥離部の深さと外装材に打撃される打音の音圧との関係を示す線図である。
【
図7】外装材の厚さ、貼り付け方法、剥離位置を説明する図である。
【
図8】第1の波形の最大値と最小値との間の時間(ピーク間波長)(μs)と剥離深さ(mm)との関係を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の動作フローチャートである。
【
図10】(A)~(D)は第1の実施の形態に示す状態評価装置10を用いて、検査対象物である建物外面部のタイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する説明図である。
【
図11】第2の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置における打音検出波形および打撃ハンマー側検出波形の検出結果を示す線図であり、(A)は外装材の健全部における波形の検出結果を示す線図、(B)は外装材の剥離部における検出波形の検出結果を示す線図である。
【
図12】第4の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】第4の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置に適用されるマーキング部の構成を示す説明図である。
【
図14】1つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の最大振幅値で外装材の剥離判定を行なう場合の説明図である。
【
図15】1つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の最大振幅値を基に外装材の剥離診断を行なった時の結果を示す説明図である。
【
図16】2つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の最大振幅値で外装材の剥離判定を行なう場合の説明図である。
【
図17】2つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の最大振幅値を基に外装材の剥離診断を行なった時の結果を示す説明図である。
【
図18】第5の実施の形態に係る検査対象物状態評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図19】第5の実施の形態に係る検査対象物状態評価装置の検出ユニットの側面図である。
【
図22】(A)及び(B)は予め設定された時間内に生成される打音検出波形の振幅から第1実効値を求めるための説明用波形図である。
【
図23】1つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の実効値で外装材の剥離判定を行なう場合の説明図である。
【
図24】1つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の実効値を基に外装材の剥離診断を行なった時の結果を示す説明図である。
【
図25】2つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の実効値で外装材の剥離判定を行なう場合の説明図である。
【
図26】2つのマイクを有する検出ユニットを用いて打音検出波形の実効値を基に外装材の剥離診断した時の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係る検査対象物の状態評価装置(以下、状態評価装置という)について図面を参照して説明する。
まず、
図1を参照して、本実施の形態に示す状態評価装置10の構成について説明する。
本実施の形態では、状態評価装置10が、検査対象物である建物外面部の状態、すなわち、タイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明する。
なお、本明細書において、検査対象物とは建物や構造物であり、検査対象物が建物であった場合、検査対象物は、建物外面部の他、例えば、室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを広く含むものである。
また、本明細書において建物外面とは、建物の最も外側に位置する建物の外面をいい、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を含むものとする。また、建物外面部とは、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を含むものとする。
図1において、状態評価装置10は、検出ユニット12と、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12で検出された打音や振動を表す信号に基づいて外装材2の状態(剥離の有無及び健全部と剥離部との境界等)を評価するものである。
検出ユニット12と本体ユニット14とは、前記の信号を伝送するケーブル11によって接続されている。
【0011】
図2から
図4に示すように、検出ユニット12は、筐体16と、3個のローラ18A、18B、18Cと、打撃部20と、第1マイク22Aと、第2マイク22Bと、第3マイク22Cと、第4マイク22Dと、打撃ハンマー振動センサ24とを含んで構成されている。
筐体16は、矩形状の底壁1602と、底壁1602の四辺から起立する4つの側壁1604、1606、1608、1610と、4つの側壁1604、1606、1608、1610の上部を接続する上壁1612とを備えている。
底壁1602には後述する打撃ハンマー28が出没する開口1620が設けられている。
3個のローラ18A、18B、18Cのうち、2個のローラ18A、18Bは、底壁1602の対向する一対の端面に回転可能に取着され、同軸上に配置されている。
残りの1個のローラ18Cは、底壁1602の下部に金具17を介して回転可能に取着され、平面視したときにローラ18Cは、2個のローラ18A、18Bの軸線と平行する軸線上に配置されている。
そして、3個のローラ18A、18B、18Cは、それら3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で底壁1602の下面と外装材2の表面とが一定の間隔をおいて互いに平行するように設けられている。
【0012】
図3に示すように、打撃部20は、ソレノイド26と、打撃ハンマー28とを備えている。
ソレノイド26は、筐体16内の底壁1602上に設けられた台1614上に設置されている。
ソレノイド26は、コイルを備えるソレノイド本体2602と、3個のローラ18A、18B、18Cが外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する方向に移動可能に設けられたプランジャ2604とを備えている。
プランジャ2604は、コイルに駆動電流が供給されることでソレノイド本体2602から突出する突出位置に移動され、駆動電流の供給が停止されることでソレノイド本体2602に没入する没入位置に移動されるように構成されている。
図3、
図4に示すように、打撃ハンマー28は、プランジャ2604の下端に設けられ、プランジャ2604の移動により底壁1602の開口1620を介して出没する。
3個のローラ18A、18B、18Cの外周面が外装材2の表面に当接された状態で、プランジャ2604が突出位置に移動することで打撃ハンマー28が外装材2の表面を打撃し、マーキングロッド2604が没入位置に移動することで打撃ハンマー28が外装材2の表面から離間する。
【0013】
第1マイク22A、第2マイク22B、第3マイク22C及び第4マイク22Dは、打撃ハンマー28が外装材2の表面を打撃したときに発生する打音を収音して打音に対応する検出信号を生成するもので、打撃ハンマー28による外装材2への打撃部P1(
図3参照)を中心にして当該中心から等距離(例えばタイル一枚分に相当する距離:53mm)離して対称に配置されている。具体的には、打撃部P1を中心とする半径53mmの円周上に互いに90°の角度をおいて点対称に配置されている。
なお、本実施の形態では、打撃部P1から各マイク22A~22Dまでの距離を53mmとした場合について説明するが、これに限らず、100mm以内であればよい。
【0014】
このように配置された第1マイク22A、第2マイク22B、第3マイク22C及び第4マイク22Dのうち、第1マイク22Aは、
図2、
図4に示すように、筐体16を構成する前面側の側壁1604の外面下部に防振ゴム22A1を介して取着されている。
第2マイク22Bは、
図2、
図4に示すように、筐体16を構成する後面側の側壁1606の外面下部に防振ゴム22B1を介して取着されている。
第3マイク22Cは、
図3、
図4に示すように、筐体16を構成する左面側の側壁1608の外面下部に防振ゴム22C1を介して取着されている。
第4マイク22Dは、
図2、
図3、
図4に示すように、筐体16を構成する右面側の側壁1610の外面下部に防振ゴム22D1を介して取着されている。
本実施の形態では、第1マイク22A、第2マイク22B、第3マイク22C及び第4マイク22Dの4つのマイクを備える場合について説明するが、マイクの数は2つまたは6つ乃至それ以上であってもよい。
また、各マイク22A~22Dの受音面は、外装材2の検査対象面である表面に対して正対するように配置されており、外装材2の表面から各マイク22A~22dまでの高さは5mm以内であることが望ましい。
【0015】
図3に示すように、打撃ハンマー振動センサ24は、打撃ハンマー28に取着され、打撃ハンマー28の外装材2への打撃によって発生する打撃ハンマー28の振動を検出して振動に対応する検出信号を生成するものである。このような打撃ハンマー振動センサ24として圧電素子など従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0016】
本体ユニット14は、
図1に示すように、駆動部30と、操作部32と、第1検出回路34Aと、第2検出回路34Bと、第3検出回路34Cと、第4検出回路34Dと、第1サンプリング部36Aと、第2サンプリング部36Bと、第3サンプリング部36Cと、第4サンプリング部36Dと、打撃ハンマー振動検出回路38と、打撃ハンマー振動サンプリング部40と、評価部42と、出力部44とを含んで構成されている。
【0017】
駆動部30は、ソレノイド本体2602のコイルに駆動電流を供給するものである。
操作部32は、作業者によって操作されることで駆動部30に対してコイルへの駆動電流の供給を指示するものであり、押しボタンスイッチなどにより構成されている。
【0018】
第1検出回路34Aは、第1マイク22Aで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成するものである。
第2検出回路34Bは、第2マイク22Bで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成するものである。
第3検出回路34Cは、第3マイク22Cで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成するものである。
第4検出回路34Dは、第4マイク22Dで生成された検出信号をA/D変換して打音検出波形を生成するものである。
本実施の形態では、第1マイク22Aと第1検出回路34A、第2マイク22Bと第2検出回路34B、第3マイク22Cと第3検出回路34C、第4マイク22Dと第4検出回路34Dは、それぞれ特許請求の範囲に記載した波形生成部を構成している。
【0019】
打撃ハンマー振動検出回路38は、打撃ハンマー振動センサ24で生成された検出信号をA/D変換して打撃ハンマー振動検出波形を生成するものである。
本実施の形態では、打撃ハンマー振動センサ24および打撃ハンマー振動検出回路38によって打撃ハンマー振動検出部が構成されている。
【0020】
第1サンプリング部36Aは、第1検出回路34Aによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
第2サンプリング部36Bは、第2検出回路34Bによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
第3サンプリング部36Cは、第3検出回路34Cによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
第4サンプリング部36Dは、第4検出回路34Dによって生成された打音検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
【0021】
打撃ハンマー振動サンプリング部40は、打撃ハンマー振動検出回路38によって生成された打撃ハンマー振動検出波形を予め定められたサンプリング周期でサンプリングするものである。
【0022】
評価部42は、第1検出回路34Aで生成された打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、この第1の波形の振幅または波長に基づいて外装材2の状態を評価し、第2検出回路34Bで生成された打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、この第1の波形の振幅または波長に基づいて外装材2の状態を評価し、第3検出回路34Cで生成された打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、この第1の波形の振幅または波長に基づいて外装材2の状態を評価し、さらに、第4検出回路34Dで生成された打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、この第1の波形の振幅または波長に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
なお、上記第1検出回路34A~第4検出回路34Dでそれぞれ生成された打音検出波形のうちの第1の波形は、その振幅が大きいほど、振幅の値、あるいは、波長の値を正確に計測する上で有利となる。したがって、本実施の形態では、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形が2番目以降の波形に比較して振幅が大きく、そのため、打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形とした場合について説明する。
しかしながら、第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する波形生成部の特性、検出時の環境、あるいは、検査対象物の状態などの諸条件によっては、打音検出波形のうち2番目以降に発生する波形が最も振幅が大きなものとなる場合がある。
したがって、その場合は、2番目以降に発生する振幅が最も大きくなる波形を第1の波形とすればよい。
詳細に説明すると、評価部42は、第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する第1の波形の振幅と予め定められた第1の閾値との比較結果に基づいて、外装材2の剥離の有無判定を行うと共に、外装材2の健全部と剥離部の剥離境界の様相を把握することなく外装材2の剥離判定を行なうことを可能する。
なお、本実施の形態では、第1の波形の振幅は、第1の波形の最大値と最小値との差分の絶対値とした。しかしながら、第1の波形の振幅は、振幅の基準値(電圧0V)を基準として第1の波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、第1の波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
【0023】
ここで、第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する第1の波形の振幅と外装材2の剥離の有無及び外装材2の健全部と剥離部の剥離境界との関係について説明する。
図5は、外装材2の状態と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。
図5において、横軸は外装材2を打撃ハンマー28で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
打撃ハンマー28で打撃する外装材2の箇所として以下の4箇所を選んでいる。
なお、本明細書において、外装材2の健全部とは建物躯体に対する外装材2の接着状態が良好で剥離が無い部分を示し、外装材2の剥離部とは外装材2が部分的に建物躯体から剥離した部分を示す。
打音検波形a:健全部
打音検波形b:健全部きわ(健全部のうち外装材2が建物躯体から剥離した剥離部に近接した境界部分)
打音検波形c:剥離部きわ(剥離部のうち健全部に近接した境界部分)
打音検波形d:剥離部
図5から明らかなように、健全部の打音検波形a、健全部きわの打音検出波形bの振幅に対して、剥離部きわの打音検波形c、剥離部の打音検出波形dの振幅が大きな値となっていることがわかる。
このような知見から第1の波形の振幅と予め定められた第1の閾値との比較結果に基づいて、第1~第4マイク22A~22Dがそれぞれ対向する箇所の外装材2の剥離の有無の判定を行なうと共に、外装材2の健全部と剥離部の剥離境界を判定することが可能となる。
なお、第1の閾値は、
図5のように、外装材2の接着状態、言い換えると、外装材2の剥離の有無及び剥離境界の様相のそれぞれに対応した打音検出波形の振幅を実測し、外装材2の剥離及び剥離境界を確実に判定するに足る第1の閾値を設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において第1の波形の振幅を実測し、その振幅の値に予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして第1の閾値を設定すればよい。
【0024】
また、評価部38は、第1の波形の波長に基づいて外装材2の厚さ方向において外装材2の背面側に位置する空洞の外装材2の厚さ方向における位置を検出する。言い換えると、建物躯体の厚さ方向において建物外面(検査対象物の表面)の内側に位置する空洞(剥離)の位置を検出する。
ここで、第1の波形の波長と、外装材2の厚さ方向における空洞の位置との関係について説明する。
図6は外装材2の背面の空洞の位置と外装材2の打音の音圧との関係を示す線図であり、言い換えると打音検出波形を示す。
図6において、横軸は外装材2を打撃ハンマー28で打撃してからの経過時間(μs)を示し、縦軸は打音の音圧(Pa)を示す。
すなわち、外装材2としてタイルの張り付け方法を異ならせた5種類の試験体を用意し、打撃ハンマー28を用いて打撃を行った。
【0025】
図6における符号XDT、XDH、XMH、XMS、XMSwは、試験体とした各外装材2を示し、
図7に試験体とした各外装材2の仕様、貼り付け方法、剥離位置を示す。
なお、符号のうちXD、XMは、タイルの貼り付け方法を示しており、XDは、タイル~張付けモルタル~コンクリート躯体の順番で貼り付けており、XMは、タイル~張付けモルタル~下地モルタル~コンクリート躯体の順番で貼り付けている。
各試験体における剥離深さは以下の通りである。
なお、剥離深さとは、外装材2の厚さ方向において外装材2の表面から剥離箇所または空洞までの距離であり、言い換えると、外装材2の厚さ方向における空洞の位置を示す。
XDT:剥離深さ7mm
XDH:剥離深さ9mm
XMH:剥離深さ9mm
XMS:剥離深さ19mm
XMSw:剥離深さ19mm
図6から明らかなように剥離深さすなわち空洞の位置が深いほど打音検出波形の波長が短い傾向にあることがわかる。
なお、
図6に示すように、実際の打音検出波形は音圧0(Pa)を中心とした線対称の形状になるとは限らないため、第1の波形の1周期の長さを正確に規定できない場合が多い。そのため、本実施の形態では、第1の波形の最大値と最小値との間の時間を波長というものとする。また、第1の波形の1周期の長さを実測できる場合は、第1の波形の1周期の長さを波長としてもよい。
【0026】
図8は第1の波形の最大値と最小値との間の時間(ピーク間波長)(μs)と剥離深さ(mm)との関係を示す図である。
打撃ハンマー28で打撃する外装材2として、厚さ及び取付工法が異なるXタイル、Yタイル、Zタイルの3種類を用いてピーク間波長と剥離深さとの関係を実測した。
ここでXタイルは二丁掛タイル(厚7mm)を張り付けモルタルで張り付けた試験体、Yタイルは二丁掛タイル(厚13mm)を張り付けモルタルで張り付けた試験体、Zタイルは二丁掛タイル(厚11mm)を弾性接着剤で張り付けた試験体である。
なお、張り付けモルタルおよび弾性接着剤を含む接着剤は、建物躯体の表面にタイルとともに配置されるものであり、本明細書において張り付けモルタルおよび接着剤はタイルとともに外装材に含まれる。
図8から明らかなように、剥離深さが大きいほどピーク間波長が長くなることがわかる。
このような知見から第1の波形の波長に基づいて外装材2の厚さ方向において外装材2の背面側に位置する空洞の外装材2の厚さ方向における位置を検出することが可能となる。
すなわち、
図8のように、多数の外装材2について第1の波形の波長と空洞の位置とを実測して第1の波形の波長と空洞の位置との関係を示す相関式を求め、このような相関式を用いることで第1の波形の波長から空洞の位置を検出するようにすればよい。
【0027】
また、打撃ハンマー振動検出波形のうち第1の波形に対応して発生する1周期分の波形を第2の波形とし、第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻とする。
したがって、本実施の形態では、打撃ハンマー振動検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第2の波形とする。
この場合、評価部42は、打撃ハンマー振動サンプリング部40によりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって形成される第1の波形に基づいて外装材2の状態、すなわち、外装材2の剥離の有無を検出する。
このようにすることで第1の波形を確実に検出する上で有利となる。
【0028】
また、評価部42は、打撃ハンマー振動検出波形の振幅が予め定められた第2の閾値を下回ったときに第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する第1~第4サンプリング部36A~36Dのそれぞれでサンプリングされた波形データを無効として外装材2の状態の評価を中止する。
すなわち、何らかの原因によって打撃ハンマー28による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することで、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
なお、第2の閾値は、打撃ハンマー28により外装材2の表面を打撃した場合と、空打ちした場合とのそれぞれで検出された打撃ハンマー側振動検出波形の振幅を実測し、外装材2に対して正確に打撃がなされた状態と、空打ちあるいは不十分な打撃がなされた状態とを確実に判定するに足る第2の閾値を設定すればよい。
【0029】
出力部44は、評価部42による外装材2の剥離の有無の判定結果、および評価部42による外装材2の健全部と剥離部の剥離境界の様相結果を出力するものである。
出力部40として以下のものが例示される。
判定結果および位置検出結果を表示するディスプレイ装置。
判定結果および位置検出結果を印刷媒体に印刷するプリンタ装置。
判定結果および位置検出結果を記録媒体に記録する記録装置。
判定結果および位置検出結果を通信回線を介して各種端末装置やデータロガーに送信する通信装置。
【0030】
なお、評価部42は、コンピュータによって構成することができる。
コンピュータは、CPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、入出力インターフェースなどを有している。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、評価部42を実現するための制御プログラムを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ装置は、画像を表示するものであり、例えば、液晶表示装置などで構成される。ディスプレイ装置は出力部44として機能させることができる。
【0031】
次に、
図9のフローチャートを参照して状態評価装置10の動作について説明する。
まず、作業者は、検出ユニット12の3個のローラ18A、18B、18Cを診断対象となる外装材2の表面に当接させる(ステップS10)。
次に、作業者は、操作部32を操作し(ステップS12)、これにより打撃部20が外装材2の表面を打撃する(ステップS14)。
打撃部20が外装材2の表面を打撃することで発生した打音は、外装材2への打点から等距離で対称に配置され第1マイク22A~第4マイク22Dによってそれぞれ検出され、それら4つのマイクから生成された検出信号に基づいて、それぞれの第1検出回路34A~第4検出回路34Dにより打音検出波形が生成され、生成されたそれぞれの打音検出波形は第1サンプリング部36A~第1サンプリング部36Dのそれぞれによってサンプリングされ評価部42に供給される(ステップS16)。
また、打撃部20が外装材2の表面を打撃することにより打撃ハンマー28で発生した振動は、打撃ハンマー振動センサ24によって検出され、打撃ハンマー振動センサ24で検出された検出信号に基づいて打撃ハンマー振動検出回路38により打撃ハンマー振動検出波形が生成され、生成された打撃ハンマー振動検出波形は打撃ハンマー振動サンプリング部40によってサンプリングされ評価部42に供給される(ステップS18)。
【0032】
評価部42は、打撃ハンマー振動検出波形の振幅が予め定められた第2の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS20)。
打撃ハンマー振動検出波形の振幅が予め定められた第2の閾値未満であると判定された場合には、評価部42は、第1サンプリング部36A~第4サンプリング部36Dでサンプリングされた波形データを無効として外装材2の状態の評価を中止し、出力部44から測定のやり直しを促す旨の報知を行なう(ステップS26)。このような報知は例えばディスプレイ装置により定のやり直しを促す旨のコメントを表示することでなされる。
そして、ステップS10に移行する。
一方、ステップS20で打撃ハンマー振動検出波形の振幅が予め定められた第2の閾値未満でないと判定された場合には、評価部42は、第1サンプリング部36A~第4サンプリング部36Dでサンプリングされた波形データを基に外装材2の剥離の有無の判定と、健全部と剥離部の剥離境界の検出とを行なう(ステップS24)。
すなわち、評価部42は、第1サンプリング部36A~第4サンプリング部36Dのそれぞれによりサンプリングされた各波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって形成される第1の波形に基づいて、外装材2の剥離の有無及び剥離境界を検出する。
具体的には、評価部42は、第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する第1の波形の振幅と予め定められた第1の閾値との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定すると共に、第1の波形の波長に基づいて健全部と剥離部の剥離境界を判定する。
出力部44は、評価部42から供給された外装材2の剥離の有無の判定結果と、剥離境界の判定結果とを出力し(ステップS24)、一連の動作を終了する。これ以降、次の診断対象となる外装材2について上記と同様の処理を繰り返して行なう。
【0033】
次に、第1の実施の形態に示す状態評価装置10を用いて、検査対象物である建物外面部のタイルなどの外装材の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について、
図5及び
図10を参照して説明する。
図10に示すように、建物のコンクリート躯体4の外表面には、外装材2が設けられている。外装材2は、コンクリート躯体4の外表面に層状に設けられた下地モルタル202と、下地モルタル202の外表面に張り付け材204により張り付けられたタイル206とを備えている。
また、
図10は、コンクリート躯体4の外表面と下地モルタル202との間に剥離部6が発生している場合を示しており、L1は剥離部6と健全部8との境界を表わす剥離境界線を示している。
なお、
図10(A)~(D)において、第3マイク22C、第4マイク22Dは図示を省略している。
【0034】
図10(A)に示すように、状態評価装置10の打撃ハンマー28による外装材2への打撃点P1が剥離境界線L1より剥離部6の範囲の内側にある時に、打撃ハンマー28が外装材2の外表面を打撃すると、健全部8には
図5に示す打音検波形aが発生する。これと同時に剥離境界線L1に近接する健全部きわには
図5に示す打音検波形bが発生する。さらに、剥離境界線L1に近接する剥離部きわには、健全部8の応答音相対振幅より大きい
図5に示す打音検波形cが発生する。また、剥離部6には、剥離部きわの応答音相対振幅より大きい
図5に示す打音検波形dが発生する。
ここで、筐体16に取着されている第1マイク22A及び第2マイク22Bは、
図10(A)に示すように、剥離境界線L1より剥離部6の範囲の内側に位置しているため、これら第1マイク22A及び第2マイク22Bは
図5に示す打音検波形aをピックアップし、当該振幅に対応する波形の信号を出力する。この場合、第3マイク22C及び第4マイク22Dにおいても、第1マイク22A及び第2マイク22Bと同様な波形の信号が出力される。
これに伴い、上述したように評価部42において、各第1マイク22A~第4マイク22Dで検出された信号に基づいて第1~第4マイク22A~22Dのそれぞれに対応する第1の波形の振幅と予め定められた第1の閾値との比較結果に基づいて、打撃された箇所の外装材2に剥離が発生していることを判定する。
【0035】
また、
図10(B)に示すように、状態評価装置10が剥離境界線L1側へ移動されると、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離境界線L1より剥離部6の範囲の内側にあり、そして第1マイク22Aは剥離境界線L1から外れて健全部8に近接する健全部きわに対向され、第2マイク22Bは剥離境界線L1より剥離部6の範囲の内側に対向されている。これに伴い、打撃ハンマー28の外装材2への打撃により剥離部6の箇所には、
図5に示す打音検波形aが発生する。このため、この打音検波形aをピックアップする第2マイク22Bからは
図5に示す打音検波形dに対応する波形の信号が出力される。同様にして、第3マイク22C及び第4マイク22Dにおいても、第2マイク22Aと同様な波形の信号が出力される。その結果、この信号を受けた評価部42では、打撃ハンマー28で打撃された外装材2の箇所に剥離が発生していると判定する。
一方、第1マイク22Aが対向する剥離境界線L1外の健全部8の健全部きわには、
図5に示す打音検波形bが発生する。このため、この打音検波形bをピックアップする第1マイク22Aからは、打音検波形bに対応する波形の信号が出力される。この信号を受けた評価部42では、第1マイク22Aが対向する健全部きわの外装材2の箇所は剥離のない健全部であると判定するとともに、健全部きわは剥離部6と健全部8との境界であると判定する。
したがって、外装材2のコンクリート躯体に対する剥離部、健全部及び剥離境界を同時に判定することが可能になる。
【0036】
また、
図10(C)に示すように、状態評価装置10の打撃ハンマー28が剥離境界線L1から健全部8側に位置するようにさらに移動されると、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離境界線L1外の健全部8の範囲内にあり、かつ第1マイク22Aは剥離境界線L1から外れて健全部8に対向され、第2マイク22Bは剥離境界線L1から外れて剥離部6に近接する剥離部きわに対向される。これに伴い、打撃ハンマー28の外装材2への打撃により第1マイク22Aが対向する剥離境界線L1外の健全部8には、
図5に示す打音検波形aが発生する。このため、この応答音相対振幅をピックアップする第1マイク22Aからは打音検波形aに対応する波形の信号が出力され、この信号を受けた評価部42では、第1マイク22Aが対向する外装材2の箇所は健全部であると判定する。
同様にして、第3マイク22C及び第4マイク22Dにおいても、第1マイク22Aと同様な波形の信号が出力される。その結果、第3マイク22C及び第4マイク22Dが対向する外装材2の箇所は健全部であると判定する。
一方、第2マイク22Bが対向する剥離境界線L1の内側に位置する剥離部6の剥離部きわ箇所には、打撃ハンマー28の外装材2への打撃により
図5に示す打音検波形cが発生する。このため、この応答音相対振幅をピックアップする第2マイク22Bからは打音検波形cに対応する波形の信号が出力される。この信号を受けた評価部42では、剥離部6の剥離部きわ箇所に剥離が発生している判定するとともに、この剥離部きわは剥離部6と健全部8との境界であると判定する。
したがって、外装材2のコンクリート躯体に対する剥離部、健全部及び剥離境界を同時に判定することが可能になる。
【0037】
また、
図10(D)に示すように、状態評価装置10全体が剥離境界線L1より外側の健全部8の範囲内に移動されると、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1及び第1マイク22Aと第2マイク22Bは全て健全部8に対向される。これに伴い、打撃ハンマー28の外装材2への打撃により第1マイク22Aが対向する健全部8には、
図5に示す打音検波形aが発生し、第2マイク22Bが対向する健全部8には、
図5に示す打音検波形bが発生する。このため、
図5に示す打音検波形aをピックアップする第1マイク22Aからは、当該打音検波形aに対応する波形の信号が出力され、この信号を受けた評価部42では、第1マイク22Aが対向する外装材2の箇所は健全部であると判定する。
同様にして、第3マイク22C及び第4マイク22Dにおいても、第1マイク22Aと同様な波形の信号が出力される。その結果、打撃された箇所の外装材2には剥離が発生して
いないと判定する。
一方、第2マイク22Bは健全部きわに近接しているため、
図5に示す打音検波形bをピックアップする第2マイク22Bからは、当該打音検波形bに対応する波形の信号が出力され、この信号を受けた評価部42では、第2マイク22Aが対向する外装材2の箇所は健全部であると判定するとともに、健全部8の健全部きわは剥離部6と健全部8との境界であると判定する。
したがって、外装材2のコンクリート躯体に対する健全部及び剥離境界を同時に判定することが可能になる。
【0038】
上述したように第1の実施の形態の状態評価装置10によれば、建物躯体に接着された外装材2の表面を打撃ハンマー28で打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマー28の打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つのマイク22A~22Dにより検出して打音検出波形を各マイク毎に生成し、この各マイク毎に生成されたそれぞれの打音検出波形を検査対象物の状態評価に用いることにより、外装材2の剥離の有無及び外装材2の健全部と剥離部と境界である剥離境界の評価判定を効率よく的確に行なうことができる。
さらに、打撃ハンマー28の打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つのマイク22A~22D毎に生成された各打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形である第1の波形の振幅または波長に基づいて検査対象物の状態を評価するようにしたので、従来のように、外装材2の表面を打撃して得られる反射音(あるいは応答音)からクレストファクタ、期待周波数、基本周波数といった特殊な値を算出する必要がなく、このため、外装材2の状態、すなわち外装材2の剥離の有無及び外装材の健全部と剥離部の境界である剥離境界部分の評価判定を同時に行なうことができ、かつこれらの評価判定を効率よく短時間で的確かつ簡便に行ない得るほか、状態評価装置10の構成の簡素化を図る上で有利となる。さらに剥離境界の様相が分からなくても、健全部きわ及び剥離部きわの音圧を検出するマイクからの打音検出波形に基づいて剥離境界の判定を容易に行なうことができる。
【0039】
また、第1の実施の形態によれば、第1の波形の振幅と予め定められた第1の閾値との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無を判定するようにしたので、外装材2の剥離の有無を簡単かつ確実に判定する上で有利となり、さらに、剥離境界の様相が分からなくても剥離範囲内にあるマイクにより剥離の有無判定を容易に行なうことができる。
また、第1の実施の形態によれば、第1の波形の波長に基づいて外装材2の厚さ方向において外装材2の背面側に位置する空洞(剥離部)の厚さ方向の位置を検出するようにしたので、空洞の位置を簡単かつ確実に検出する上で有利となる。
【0040】
また、第1の実施の形態によれば、打撃ハンマー振動検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第2の波形とし、第2の波形の最大値または最小値のうち時間的に早い方の値に対応する時刻を基準時刻としたとき、それぞれの第1~第4サンプリング部36A~36Dによりサンプリングされた波形データのうち基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって形成される第1の波形に基づいて外装材2の状態を評価するようにしたので、第1の波形を正確に得ることができ、外装材2の状態、すなわち外装材2の剥離部6、健全部8及び剥離境界部分を、第1~第4マイク22A~22Dを利用して同時に診断することができ、かつこれらの診断をより正確に行なう上で有利となる。
【0041】
なお、駆動部30からソレノイド20に供給される駆動信号からトリガ信号を生成し、第1~第4検出回路34A~34Dによって生成されたそれぞれの打音検出波形を第1~第4サンプリング部36A~36Dでトリガ信号に同期してサンプリングして第1の波形を得るようにしてもよいが、駆動信号は時間的なばらつきがあるため、第1の波形を安定して正確に得る上で不利となる。
これに対して、第1の実施の形態のようにすると、打撃ハンマー振動検出波形から生成された第2の波形から得た基準時刻よりも前の時点からサンプリングされた波形データによって第1の波形を得ることができるため、第1の波形を安定して正確に得る上でより有利となる。
【0042】
また、第1の実施の形態によれば、打撃ハンマー側振動検出波形の振幅が予め定められた第2の閾値未満であるときに第1~第4サンプリング部36A~36Dでサンプリングされたそれぞれの波形データを無効として外装材2の状態の評価を中止するようにしたので、打撃ハンマー28による外装材2の表面に対する打撃がなされなかった場合(空打ち)か、打撃が不十分であった場合には、外装材2の状態の評価を中止することにより、誤った評価を行なうことが回避でき、外装材2の状態の評価を正確に行なう上で有利となる。
【0043】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1~第4マイク22A~22Dに対応するそれぞれの打音検出波形から得られる第1の波形に加えて、打撃ハンマー振動検出波形から得られる第2の波形を検出し、これら第1の波形のピーク値と第2の波形のピーク値との時間差に基づいて外装材2の状態を評価するものである。
図11(A)は外装材2の健全部における打音検出波形および打撃ハンマー検出波形の検出結果を示す線図、(B)は外装材2の剥離部における打音検出波形および打撃ハンマー検出波形の検出結果を示す線図である。
図10において横軸は時間、縦軸は各波形の電圧を示す。
【0044】
第1~第4マイク22A~22Dに対応するそれぞれの打音検出波形のうち最初に発生する1周期分の波形を第1の波形とし、打撃ハンマー振動検出波形のうち第1の波形に対応して発生する(最初に発生する)1周期分の波形を第2の波形とする。
第1の波形の最大値および最小値のうち時間的に早い方の値を第1のピーク値とし、第2の波形の最大値および最小値のうち時間的に早い方の値を第2のピーク値としたとき、第1のピーク値と前記第2のピーク値との時間差Δtに着目する。
図11(A)、(B)から明らかなように、外装材2の健全部における時間差をΔt1、外装材2の剥離部における時間差をΔt2としたとき、Δt1>Δt2となっている。
したがって、時間差Δtが予め定められた第3の閾値未満であるか否かに基づいて外装材2の剥離の有無を第1~第4マイク22A~22Dを利用して得られる複数のデータで判定することができることが明らかである。
なお、第3の閾値は、外装材2の接着状態、言い換えると、外装材2の剥離の有無のそれぞれに対応した時間差Δtを実測し、外装材2の剥離を確実に判定するに足る第3の閾値を設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において時間差Δtを実測し、その時間差Δtの値に予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして第3の閾値を設定すればよい。
また、時間差Δtと空洞(剥離部)の位置とを実測することで時間差Δtと空洞の位置との相関式を求めることできる。このような相関式を用いることで時間差Δtから空洞の位置を検出することが可能である。
【0045】
このような第2の実施の形態によれば、打音検出波形から得られる第1の波形のピーク値と、打撃ハンマー側振動検出波形から得られる第2の波形のピーク値との時間差Δtに基づいて外装材2の状態を評価するため、外装材2の状態、すなわち外装材2の剥離部6、健全部8及び剥離境界部分の診断を同時に行なうことができ、しかも、これらの診断を短時間で的確に行ないつつ構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0046】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の波形のピーク値と第2の波形のピーク値との時間差に基づいて外装材2の状態を評価する場合について説明した。
これに対して、第3の実施の形態では、第1の波形の振幅A1と第2の波形の振幅A2との比率に基づいて外装材の状態をマイク数に応じて得られる複数のデータで評価する。
すなわち、
図11(A)、(B)に示すように、第1の波形の振幅A1と第2の波形の振幅A2との比率A1/A2を考えた場合、健全部と剥離部とで比率A1/A2が大きく異なっているため、この比率A1/A2の値に基づいて外装材2の状態を評価することが可能である。
詳細には、評価部42は、第1の波形の振幅A1と第2の波形の振幅A2との比率A1/A2を算出する。
そして、比率A1/A2と予め定められた比率閾値Bとの比較結果に基づいて、すなわち、比率A1/A2が比率閾値Bを上回るか、あるいは、下回るかによって、外装材の剥離を評価する。
なお、第2の波形の振幅は、第2の波形の最大値と最小値との差分の絶対値として規定される。あるいは、第2の波形の振幅は、振幅の基準値(電圧0V)を基準として第2の波形の1周期のうち前半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよく、あるいは、第2の波形の1周期のうち後半の波形のピーク値(極値)の絶対値としてもよい。
また、比率閾値Bは、外装材2の剥離の有無のそれぞれに対応した比率A1/A2を実測し、外装材2の剥離を確実に判定するに足る比率閾値Bを設定すればよい。
あるいは、外装材2の健全部において比率A1/A2を実測し、その比率A1/A2に予め定められた定数を乗算しあるいは定数を加算するなどして比率閾値Bを設定すればよい。
第3の実施の形態によれば、第1の波形の振幅A1と第2の波形の振幅A2との比率A1/A2に基づいて外装材2の状態を評価するので、打撃ハンマー28の打撃の強弱による評価結果のばらつきを抑制でき、外装材2の状態、すなわち外装材2の剥離部6、健全部8及び剥離境界部分の診断を同時に行なうことができ、しかも、これらの診断を的確に評価する上で有利となる。
【0047】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について
図12及び
図13を参照して説明する。
第4の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、第1の実施の形態に示す
図1と同様の構成要素部分、部材には
図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
この第4の実施の形態に示す状態評価装置10の特徴は、評価部42による外装材2の状態の評価結果に基づいてその評価結果に対応する外装材2の箇所、すなわち外装材2の剥離部6、健全部8及び剥離境界部分にこれらを認識し得るマーキングを行なうようにしたところにある。
【0048】
本実施の形態に示す状態評価装置10は、
図12に示すように、
図1に示す場合と同様の構成要素を備えているとともに、検出ユニット12には外装材2にマーキングを行なうマーキング部52が設けられ、また、本体ユニット12にはマーキング部52を動作させるマーキング駆動部54が設けられている。
【0049】
マーキング部52は、
図13に示すように、例えば外装材2の健全部、剥離部及び剥離境界部分に対応する数の複数のソレノイド体5202と、各ソレノイド体5202のそれぞれに対応する複数のスタンプ5204とを備えている。
各ソレノイド体5202は、これに対応する各スタンプ5204を別々にスタンピング動作させるもので、筐体16の内部に配置されブラケット5206を介して底壁1602に取着されている。
各ソレノイド体5202は、ソレノイド体5202に内蔵のソレノイドコイル(図示省略)により上下動可能に支持されたマーキングロッド5208を備え、このマーキングロッド5208はソレノイド体5202に内蔵されたソレノイドコイル(図示省略)により上下に駆動されるように構成されている。
各ソレノイド体5202のマーキングロッド5208の下端には、それぞれスタンプ5204が取着されている。
各スタンプ5204は、外装材2の健全部、剥離部及び剥離境界部分に対応する所定形状のマークを押印する印字面を有し、予めインクが含浸されており、スタンプ5204の印字面が外装材2の表面に当接してスタンピングされることで所定形状のマークを外装材2の表面にマーキングするものである。
マーキング駆動部54は、各ソレノイド体5202のソレノイドコイルに、外装材2の健全部、剥離部及び剥離境界部分に応じた評価結果に基づいて駆動電流を供給するものである。
【0050】
上記のように構成された状態評価装置10において、評価部42は、第1の実施の形態と同様の手順で外装材2の剥離の有無及び剥離境界を判定する。
ここで、評価部42において、打撃ハンマーで打撃された外装材2に剥離があると判定された場合は、複数のソレノイド体5202のうち、剥離をスタンピングするソレノイド体5202を駆動部54により駆動し、そのスタンプ5204により外装材2の表面に押印を行なう。すなわち、ソレノイド体5202によりマーキングロッド5208を介してスタンプ5204を作動させ、底壁1602に形成した開口1604を通して外装材2の表面に当接させることで、評価部42による外装材2の状態の評価結果に基づいて評価結果に対応する外装材2の剥離箇所にマーキングがなされる。
また、評価部42において、打撃ハンマーで打撃された外装材2が健全部あると判定された場合は、複数のソレノイド体5202のうち、健全部をスタンピングするソレノイド体5202をマーキング駆動部54により駆動し、そのスタンプ5204により外装材2の表面に押印を行なう。すなわち、ソレノイド体5202によりマーキングロッド5208を介してスタンプ5204を作動させ、開口1604を通して外装材2の表面に当接させることで、評価部42による外装材2の状態の評価結果に基づいて評価結果に対応する外装材2の健全部箇所にマーキングがなされる。
また、評価部42において、打撃ハンマーで打撃された外装材2に剥離境界があると判定された場合は、複数のソレノイド体5202のうち、剥離をスタンピングするソレノイド体5202をマーキング駆動部54により駆動し、そのスタンプ5204により外装材2の表面に押印を行なう。すなわち、ソレノイド体5202によりマーキングロッド5208を介してスタンプ5204を作動させ、開口1604を通して外装材2の表面に当接させることで、評価部42による外装材2の状態の評価結果に基づいて評価結果に対応する外装材2の剥離境界のある箇所にマーキングがなされる。
【0051】
上記のような第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果が奏されることは無論のこと、マーキング部52によって、評価部42による外装材2の状態の評価結果に基づいて、外装材2の状態の評価結果に対応する外装材2の箇所にマーキングがなされるので、外装材2の状態の評価と同時に外装材2の箇所にマークをつける。
そのため、外装材2の状態の評価結果、すなわち外装材2の健全部、剥離部及び剥離境界部分を目視で確認することができ、作業効率の向上を図る上で有利となる。
また、作業者が外装材2の状態の評価を行なう作業の流れを妨げることなく外装材2の状態の評価に対応してマーキングを行なうことができ、作業の効率化を図る上で有利となる。
また、第4の実施の形態のマーキング部52を第2~第3の実施の形態に適用できることは無論である。
また、マーキング部52は1つのソレノイド体5202と1つのスタンプ5204で構成された方式のものでもよい。
【0052】
次に、外装材2の打撃応答音を、1つのマイクを基に生成される打音検出波形の最大振幅に基づいて外装材2の剥離判定を行なう場合と、複数のマイクを基に生成されるそれぞれの打音検出波形の最大振幅に基づいて外装材2の剥離判定を行なう場合について、
図14~
図17を参照して比較検討する。
図14は、1つのマイク22を備えた検出ユニット12を有する状態評価装置を用いて建物外面部のタイルを含む外装材2の剥離診断を行なった場合の説明図であり、
図10と同一の構成要素には同一符号が付されている。また、1つのマイク22は筐体16を構成する前面側の側壁1604に取着されている。
このような検出ユニット12を用いて外装材2の剥離診断を行なった場合の診断結果を
図15に示す。
図15において、太線で囲った領域が実際に剥離が生じている部分を表しており、この太線で囲った領域の内側にある梨地の箇所は、1つのマイク22を備えてなる状態評価装置により剥離が生じていると診断されたタイル206であり、また、太線で囲った領域の外側にある白地の箇所は、状態評価装置により健全部であると診断されたタイル206である。
この
図15から明らかなように、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離部6と健全部8との境界、すなわち剥離部6寄りの剥離部きわに位置している場合、マイク22は健全部8と正対する状態におかれるものの、剥離部きわに連なる外装材2の剥離部6に正対するマイクが存在しない。その結果、打撃ハンマー28の打撃点P1が剥離部きわで、しかも剥離が生じている箇所であるにもかかわらず、
図15の破線で囲った箇所のタイル206は、剥離のない健全部であると診断されてしまう。
【0053】
図16は、打撃部20を中心にして該中心から等距離で対称に配置された2つのマイク22A、22Bを備えた検出ユニット12を有する状態評価装置を用いて建物外面部のタイル206を含む外装材2の剥離診断を行なった場合の説明図であり、
図10と同一の構成要素には同一符号が付されている。また、2つのマイクのうち、一方のマイク22Aは筐体16の前面側の側壁1604に取着され、他方のマイク22Bは筐体16の後面側の側壁1606に取着されている。
このような検出ユニット12を用いて外装材2の剥離診断を行なった場合の診断結果を
図17に示す。
図17において、太線で囲った領域が実際に剥離が生じている部分を表しており、この太線で囲った領域の内側にある梨地の箇所は、2つのマイク22A、22Bを備えてなる状態評価装置により少なくとも一つのマイクを基に生成されるそれぞれの打音検出波形の最大振幅に基づいて剥離が生じていると診断されたタイル206であり、また、太線で囲った領域の外側にある白地の箇所は、状態評価装置により全てのマイクを基に生成されるそれぞれの打音検出波形の最大振幅に基づいて健全部であると診断された部分である。
この
図17から明らかなように、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離部6と健全部8との境界、すなわち剥離部6寄りの剥離部きわに位置している場合、一方のマイク22Aが健全部8と正対する状態におかれていても、他方のマイク22Bが剥離部きわに連なる外装材2の剥離部6に正対している。これにより、打撃ハンマー28により打撃されることにより発生する打音は他方のマイク22Bで検出できる。その結果、剥離が生じている剥離部きわであると診断することが可能になる。
したがって、1つのマイク22を備えてなる振幅方式の状態評価装置では、
図15に示すように破線で囲った箇所のタイル206が剥離しているにもかかわらず健全部であると診断されていたものが、2つのマイク22A、22Bを備えてなる振幅方式の状態評価装置では、
図16の破線で囲った箇所の剥離部きわに連なるタイル206は剥離していると診断することが可能になるため、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を大幅に改善することができる。
このことは、本実施の形態に示すように、マイクの数を2ないし4個またはそれ以上設けることにより、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を更に改善できることを表わしている。
【0054】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について
図18~
図21を参照して説明する。
図18において、第5の実施の形態に示す状態評価装置10は、検出ユニット12と、本体ユニット14とで構成されている。
検出ユニット12は、作業者が把持して状態を評価すべき外装材2の表面に当て付けて使用されるものであり、本体ユニット14は、検出ユニット12で検出された打音や振動を表す信号に基づいて外装材2の状態(外装材2の健全部、健全部端部、剥離部段部および剥離部等)を評価するものである。
検出ユニット12と本体ユニット14とは、信号を伝送するケーブル11によって接続されている。
【0055】
検出ユニット12は、
図19~
図21に示すように、筐体16と、ベース18と、打撃部20と、第1マイク22Aと、第2マイク22Bと、第3マイク22Cと、第4マイク22Dと、打撃ハンマー振動センサ24と、マーキング部52を含んで構成されている。
ベース18は、矩形の平板状を呈しており、ベース18の下面を外装材2の表面に当接した状態で外装材2の表面上を移動できるようになっている。
筐体16は、ベース18の四辺から起立する4つの側壁1602、1604、1606、1608と、4つの側壁1602、1604、1606、1608の上部を接続する天板1610とを備えている。
ベース18には、後述する打撃ハンマー28が出没する第1開口1802と、後述するスタンプ5204が出没する第2開口1804が設けられている。
第2の実施の形態における筐体16、ベース18、打撃部20は、第1の実施の形態に示す筐体16、ベース18、打撃部20と同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
【0056】
第1マイク22A、第2マイク22B、第3マイク22C及び第4マイク22Dは、第1の実施の形態に示す第1~第4マイク22A~22Dと同様に筐体16の4つの側壁にそれぞれ取着され、かつ同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
【0057】
第2の実施の形態における打撃ハンマー振動センサ24は、第1の実施の形態に示す打撃ハンマー振動センサ24と同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
【0058】
本体ユニット14は、
図18に示すように、駆動部30と、操作部32と、第1打音波形生性部46Aと、第2打音波形生性部46Bと、第3打音波形生性部46Cと、第4打音波形生性部46Dと、サンプリング部4802A付きの第1実効値算出部48Aと、サンプリング部4802B付きの第2実効値算出部48Bと、サンプリング部4802C付きの第3実効値算出部48Cと、サンプリング部4802D付きの第4実効値算出部48Dと、打撃ハンマー振動検出部38と、打撃ハンマー振動サンプリング部40と、評価部42と、出力部44と、マーキング駆動部54とを含んで構成されている。
【0059】
第5の実施の形態における打撃駆動部30及び操作部32は、第1の実施の形態に示す打撃駆動部30及び操作部32と同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
【0060】
第1打音波形生成部46Aは、第1マイク22Aからの電気信号を外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成するものである。
第2打音波形生成部46Bは、第2マイク22Bからの電気信号を外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成するものである。
第3打音波形生成部46Cは、第2マイク22Cからの電気信号を外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成するものである。
第4打音波形生成部46Dは、第4マイク22Dからの電気信号を外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成するものである。
【0061】
サンプリング部4802A付きの第1実効値算出部48Aにおいて、サンプリング部4802Aは、例えば、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)内に第1打音波形生成部46Aで生成される打音検出波形を、予め定められたサンプリング周波数(例えば、500kHz)でサンプリングして瞬時値を求めるものであり、第1実効値算出部48Aは、サンプリング部4802Aで求められた各瞬時値の二乗の平均値の平方根をとることにより第1実効値Arms1を求めるものである。
サンプリング部4802B付きの第2実効値算出部48Bにおいて、サンプリング部4802Bは、例えば、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)内に第2打音波形生成部46Bで生成される打音検出波形を、予め定められたサンプリング周波数(例えば、500kHz)でサンプリングして瞬時値を求めるものであり、第2実効値算出部48Bは、サンプリング部4802Bで求められた各瞬時値の二乗の平均値の平方根をとることにより第1実効値Arms1を求めるものである。
サンプリング部4602C付きの第3実効値算出部48Cにおいて、サンプリング部4802Cは、例えば、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)内に第3打音波形生成部46Cで生成される打音検出波形を、予め定められたサンプリング周波数(例えば、500kHz)でサンプリングして瞬時値を求めるものであり、第3実効値算出部48Cは、サンプリング部4802Cで求められた各瞬時値の二乗の平均値の平方根をとることにより第1実効値Arms1を求めるものである。
サンプリング部4802D付きの第4実効値算出部48Dにおいて、サンプリング部4802Dは、例えば、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)内に第4打音波形生成部46Dで生成される打音検出波形を、予め定められたサンプリング周波数(例えば、500kHz)でサンプリングして瞬時値を求めるものであり、第4実効値算出部48Dは、サンプリング部4802Dで求められた各瞬時値の二乗の平均値の平方根をとることにより第1実効値Arms1を求めるものである。
【0062】
第5の実施の形態における打撃ハンマー振動検出部38は、第1の実施の形態に示す打撃ハンマー振動検出部38と同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
打撃ハンマー振動サンプリング部40は、打撃ハンマー振動検出部38で生成された打撃ハンマー振動検出波形を予め定められたサンプリング周波数でサンプリングすることにより瞬時値(振幅)を得るものである。
ここで、打撃ハンマー振動検出波形の瞬時値(振幅)が予め定められた閾値に達した時点を閾値到達時刻とし、閾値到達時刻から予め設定された時間分遡った時点を打音検出波形の取得開始時刻としたとき、打撃ハンマー振動サンプリング部40は、取得開始時刻から予め設定された一定時間後の時点に第1~第4実効値算出部48A~48Dの各サンプリング部4802A~4802Dに対しサンプリング開始のトリガー指令信号として出力し、かつ打撃ハンマー振動サンプリング部40でサンプリングされた瞬時値を振幅データとして評価部42に供給する。
言い換えると、サンプリング部4802A~4802Dによる打音検出波形のサンプリング開始時刻は、取得開始時刻から予め設定された一定時間後の時点である。
【0063】
なお、サンプリング部4802A~4802Dによる打音検出波形のサンプリングは、以下のようにして行なってもよい。
打撃ハンマー振動検出波形の振幅が最大値となる時点を基準時刻としたとき、打撃ハンマー振動サンプリング部40は、基準時刻から予め定められた一定時間後の時点、または、基準時刻から予め定められた一定時間遡った時点に第1~第4実効値算出部48A~48Dの各サンプリング部4802A~4802Dに対しサンプリング開始のトリガー指令信号として出力し、かつ打撃ハンマー振動サンプリング部40でサンプリングされた瞬時値を振幅データとして評価部42に供給する。
言い換えると、サンプリング部4802A~4802Dによる打音検出波形のサンプリング開始時刻は、基準時刻から予め定められた一定時間後の時点、または、基準時刻から予め定められた一定時間遡った時点である。
【0064】
第5の実施の形態における評価部42は、第1~第4実効値算出部48A~48Dで算出されたそれぞれの第1実効値Arms1と、この各第1実効値Arms1を基に予め定められた第1閾値との比較結果に基づいて外装材2の状態を評価する第1の評価機能と、打撃ハンマー振動サンプリング部40から供給される振幅データのうち、最大振幅Pmaxのデータを抽出し、第1~第4実効値算出部48A~48Dで算出された第1実効値Arms1を最大振幅Pmaxで割ることで打撃力のばらつきを補正(平均化)した第2実効値Arms2を算出し、この第2実効値Arms2と第2実効値Arms2を基に予め定められた第2閾値との比較結果に基づいて外装材2の状態を評価する第2の評価機能を備えている。
【0065】
第5の実施の形態における出力部44は、第1の実施の形態に示す出力部44と同様に構成されているので、第1の実施の形態に示す場合と同一の符号を付してその構成説明は省略する。
【0066】
第5の実施の形態におけるマーキング部52は、
図20及び
図21に示すように、ソレノイド本体5202と、スタンプ5204とを備えている。
ソレノイド本体5202は、筐体16内のベース18上に設置された台1612上に設置されている。
ソレノイド本体5202は、ベース18が外装材2の表面に当接された状態で外装材2の表面と直交する上下方向に移動可能に設けられたマーキングロッド5206と、マーキングロッド5206を後退端(非押印位置)に復帰させる復帰スプリング5208とを備えている。
マーキングロッド5206は、ソレノイド本体5202のコイルに駆動電流が供給されることで復帰スプリング5208に抗して外装材2の表面に向け移動され、駆動電流の供給が停止されることで復帰スプリング5208により後退端に復帰移動されるように構成されている。
スタンプ5204は、
図20に示すように、マーキングロッド5206の下端に取着されており、マーキングロッド5206の移動によりベース18の第2開口1804を介して出没する。
スタンプ5204は、所定形状のマークを押印する印字面を有し、予めインクが含浸されており、スタンプ5204の印字面が外装材2の表面に当接してスタンピングされることで所定形状のマークを外装材2の表面にマーキングするものである。
ベース18の下面が外装材2の表面に当接された状態で、ソレノイド本体5202のコイルに駆動電流が供給されるとマーキングロッド5206が外装材2の表面に向けベース18の第2開口1804から突出位置に移動することでスタンプ5204が外装材2の表面を当接し、ソレノイド本体5202のコイルへの駆動電流の供給停止によりマーキングロッド5206が復帰スプリング5208で後退端に移動し、スタンプ5204は外装材2の表面から離間する。
第5の実施の形態におけるマーキング駆動部54は、第4の実施の形態に示すマーキング部54と同様に構成されているので、その構成説明は省略する。
【0067】
次に、第1~第4打音波形生成部46A~46Dで生成された打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形をサンプリングして第1実効値を求める場合について、
図22を参照して説明する。
図22(A)に示す波形は、外装材2が建物躯体から剥離された状態にある打撃応答音波形であり、
図22(B)に示す波形は、打撃部20の打撃ハンマー28による打撃力の最大振幅波形(Pmax)である。
剥離した外装材2の打撃応答音から第1実効値Arms1を求めるに際しては、打撃ハンマー振動検出部38からの打撃ハンマー振動検出波形を打撃ハンマー振動サンプリング部40でサンプリングすることにより得られる瞬時値が予め定められた閾値に達した時に打撃ハンマー振動サンプリング部40からトリガー指令信号が第1~第4実効値算出部48A~48Dのそれぞれのサンプリング部4802A~4802Dに供給される。これに伴い、サンプリング部4802A~4802Dでは、第1~第4打音波形生成部46A~46Dで生成された打音検出波形を、トリガー指令を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)に亘り、予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。そして、サンプリング毎に得られる瞬時値はそれぞれの第1~第4実効値算出部48A~48Dに供給され、第1~第4実効値算出部48A~48D6において第1実効値Arms1が求められる。
【0068】
次に、第5の実施の形態に示す状態評価装置10の動作について説明する。
まず、操作部32を操作することにより打撃部20の打撃ハンマー28で外装材2の表面を打撃する。これにより外装材2を通して第1~第4マイク22A~22Dと対向する箇所に伝達されるそれぞれの打音はそれぞれの第1~第4マイク22A~22Dによって検出され、さらに、それぞれの第1~第4打音波形生成部46A~46Dによって外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成される。
その後、第1~第4実効値算出部48A~48Dのそれぞれのサンプリング部4802A~4802Dは、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのサンプリング開始のトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から、予め設定された時間(例えば、0.2~0.4ms)内に生成される打音検出波形を、予め定められたサンプリング周期でそれぞれサンプリングする。さらに各第1~第4実効値算出部48A~48Dは、サンプリング毎に得られる瞬時値を基に第1実効値Arms1をそれぞれ算出し評価部42に供給する。
評価部42は、第1~第4マイク22A~22D毎に第1実効値Arms1と第1の閾値との比較結果、または第2実効値Arms2と第2閾値との比較結果に基づいて外装材2の剥離の有無及び健全部端部や剥離部端部を含む外装対材2の状態を判定する。
出力部44では、評価部42からの外装材2の剥離の有無及び健全部端部や剥離部端部を含む状態の判定結果を出力する。さらに、評価部42において、打撃ハンマー28で打撃された外装材2に剥離があると判定された場合、または外装材2に健全部端部や剥離部端部がある場合は、マーキング部52のスタンプ5204を駆動し、剥離がある外装材2の表面の箇所または健全部端部や剥離部端部を有する箇所に押印を行なう。
【0069】
上述したように第5の実施の形態に示す状態評価装置10によれば、建物躯体に接着された外装材2の表面を打撃ハンマー28で打撃した際に発生する打音を、打撃ハンマー28の打撃点を中心にして当該中心から等距離で対象に配置した4つのマイク22A~22Dにより検出して打音検出波形を各マイク毎に生成し、この各マイク22毎に検出したそれぞれの検出信号を、それぞれの第1~第4打音波形生成部46A~46Dにより外装材2の打撃応答音に対応する振幅の打音検出波形に生成し、打撃ハンマー振動サンプリング部40からのトリガー指令信号を受けた時点を基に算出される打音検出波形の取得開始時間から、予め設定された時間内に生成される打音検出波形を、第1~第2実効値算出部48A~48Dのそれぞれのサンプリング部4802A~4802Dより予め定められたサンプリング周期でサンプリングし、さらに第1~第2実効値算出部48A~48Dにおいて、サンプリング毎に得られる瞬時値を基に第1実効値Arms1をそれぞれ算出し、この第1実効値Arms1と第1実効値Arms1を基に予め定められた第1閾値との比較結果に基づいて外装材2の状態を評価部42で評価するようにした。
したがって、建物の表面を構成するタイル等の外装材2の種類、外装材2の張り付け工法または外装材2の剥離部の性状が異なっていても、外装材2の剥離の有無及び健全部端部や剥離部端部を含む外装材2の状態の評価の判定精度を向上でき、かつ外装材2の評価効率を向上することができるとともに、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を大幅に改善できる。
また、第5の実施の形態によれば、打撃部20が起動されてから打撃ハンマー振動検出部38で検出される打撃ハンマー振動検出波形の振幅が予め定められた閾値に達した時点を第1~第4実効値算出部48A~48Dのそれぞれのサンプリング部4802A~4802Dによる打音検出波形のサンプリング開始時刻とする構成にしたので、外装材2の種類、外装材2の張り付け工法または外装材2の剥離部の性状が異なっていても、高い精度で剥離の有無及び健全部端部や剥離部端部を含む外装材2の状態の評価判定に有効な第1実効値を算出する上で有利となる。
また、第5の実施の形態によれば、第1実効値を打撃ハンマー振動検出波形の最大振幅で除すことにより打撃力のばらつきを補正した第2実効値を算出し、この第2実効値とこれに基づいて予め定められた第2閾値とに基づいて外装材2の状態を評価するようにしたので、打撃力のばらつきに左右されることなく、剥離の有無判定及び健全部端部や剥離部端部を含む外装材2の状態評価の安定性と精度向上を図る上で有利となるほか、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を更に改善できる。
また、第5の実施の形態によれば、評価部42により打撃ハンマーで打撃された外装材2に剥離があると判定された場合、マーキング部52を駆動して剥離がある外装材2の表面の箇所または健全部端部や剥離部端部の箇所に押印することができ、外装材2の建物躯体に対する剥離の有無及び健全部端部や剥離部端部を含む外装材2の状態の評価結果を目視で確認することができ、作業効率の向上を図る上で有利となる。
【0070】
次に、外装材2の打撃応答音を、1つのマイクを基に生成される打音検出波形の実効値に基づいて外装材2の剥離判定を行なう場合と、複数のマイクを基に生成されるそれぞれの打音検出波形の実効値に基づいて外装材2の剥離判定を行なう場合について、
図23~
図26を参照して比較検討する。
図23は、1つのマイク22を備えた検出ユニット12を有する状態評価装置を用いて建物外面部のタイル206を含む外装材2の剥離診断を行なった場合の説明図であり、
図10と同一の構成要素には同一符号が付されている。また、1つのマイク22は筐体16を構成する前面側の側壁1604に取着されている。
このような検出ユニット12を用いて外装材2の剥離診断を行なった場合の診断結果を
図24に示す。
図24において、太線で囲った領域が実際に剥離が生じている部分を表しており、この太線で囲った領域の内側にある梨地の箇所は、1つのマイク22を備えてなる状態評価装置により剥離が生じていると診断されたタイル206であり、また、太線で囲った領域の外側にある白地の箇所は、状態評価装置により健全部であると診断されたタイル206である。
この
図23から明らかなように、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離部6と健全部8との境界、すなわち剥離部6寄りの剥離部きわに位置している場合、マイク22は健全部8と正対する状態におかれるものの、剥離部きわに連なる外装材2の剥離部6に正対するマイクが存在しない。その結果、打撃ハンマー28の打撃点P1が剥離部きわで、しかも剥離が生じている箇所であるにもかかわらず、
図23の破線で囲った箇所のタイル206は、剥離のない健全部であると診断されてしまう。
【0071】
図25は、打撃部20を中心にして該中心から等距離で対称に配置された2つのマイク22A、22Bを備えた検出ユニット12を有する状態評価装置を用いて建物外面部のタイル206を含む外装材2の剥離診断を行なった場合の説明図であり、
図10と同一の構成要素には同一符号が付されている。また、2つのマイクのうち、一方のマイク22Aは筐体16の前面側の側壁1604も取着され、他方のマイク22Bは筐体16の後面側の側壁1606に取着されている。
このような検出ユニット12を用いて外装材2の剥離診断を行なった場合の診断結果を
図26に示す。
図26において、太線で囲った領域が実際に剥離が生じている部分を表しており、この太線で囲った領域の内側にある梨地の箇所は、2つのマイク22A、22Bを備えてなる状態評価装置により少なくとも一つのマイクを基に生成される打音検出波形の実効値に基づいて剥離が生じていると診断されたタイル206であり、また、太線で囲った領域の外側にある白地の箇所は、状態評価装置により全てのマイクを基に生成される打音検出波形の実効値に基づいて健全部であると診断されたタイル206である。
この
図26から明らかなように、打撃ハンマー28の外装材2への打撃点P1が剥離部6と健全部8との境界、すなわち剥離部6寄りの剥離部きわに位置している場合、一方のマイク22Aが健全部8と正対する状態におかれていても、他方のマイク22Bが剥離部きわに連なる外装材2の剥離部6に正対しているため、打撃ハンマー28により打撃されることにより発生する打音を他方のマイク22Bで検出することができる。その結果、剥離が生じている剥離部きわであると診断することが可能になる。
したがって、1つのマイク22を備えてなる実効値法式の状態評価装置では、
図24に示すように破線で囲った箇所のタイル206が剥離しているにもかかわらず健全部であると診断されていたものが、2つのマイク22A、22Bを備えてなる実効値法式の状態評価装置では、
図26の破線で囲った箇所の剥離部きわに連なるタイル206は剥離していると診断することが可能になる。これにより、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を大幅に改善することができる。
このことは、本実施の形態に示すように、マイクの数を2ないし4個またはそれ以上設けることにより、外装材2の剥離部正答率及び健全部正答率を更に改善できることを表わしている。
【0072】
なお、上記実施の形態では、検査対象物が建物であり、タイルなどの外装材2の浮きや剥がれなどの接着状態を評価する場合について説明したが、本発明は、タイルやモルタルなどの外装材が設けられていない場合には、建物外面に加え、この建物外面近くの内部の状態を評価する場合、また、タイルやモルタルなどの外装材が設けられている場合には、外装材の表面に加え、外装材の表面の内側の外装材部分や外装材の内側の建物躯体の表面や表面近くの内部を評価する場合に広く適用可能である。
さらに、本発明は、建物の室内の床、天井、壁面、室内のコンクリート躯体などを評価する場合に広く適用可能である。
また、本発明は、検査対象物が建物に限定されず、高架橋やダムなどの構造物などを評価する場合に広く適用可能である。
また、上記第4の実施の形態では、予めインクが含浸されたスタンプを用いて外装材の健全部や剥離部にマーキングする場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、1つまたは複数の異なる色のインクタンクからインクを噴射して外装材の健全部や剥離部にマーキングするようにしたインク噴射式のマーキング部を用いることも可能である。
また、本実施の形態では、各マイク毎に生成された各打音検出波形のうちN番目(Nは1以上の自然数)に発生する1周期分の波形を第1の波形としたとき、第1の波形の振幅または波長に基づいて検査対象物の状態を評価するようにしたが、検査対象物の状態の評価は、上記のN番目の波形の振幅または波長に限定されず、任意である。ただし、上記のように評価すると、検査対象物の状態をより的確に評価する上で有利となる。
【符号の説明】
【0073】
2 外装材
10 状態評価装置
20 打撃部
22A 第1マイク
22B 第2マイク
22C 第3マイク
22D 第4マイク
24 打撃ハンマー振動センサ
26 ソレノイド
28 打撃ハンマー
30 駆動部
32 操作部
34A 第1検出回路
34B 第2検出回路
34C 第3検出回路
34D 第4検出回路
4A 第1検出回路
36A 第1サンプリング部
36B 第2サンプリング部
36C 第3サンプリング部
36D 第4サンプリング部
38 打撃ハンマー振動検出回路
40 打撃ハンマー振動サンプリング部
42 評価部
44 出力部
46A 第1打音波形生性部
46B 第2打音波形生性部
46C 第3打音波形生性部
46D 第4打音波形生性部
48A 第1実効値算出部
48B 第2実効値算出部
48C 第3実効値算出部
48D 第4実効値算出部
4802A サンプリング部
4802B サンプリング部
4802C サンプリング部
4802D サンプリング部
52 マーキング部
54 駆動部