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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】保冷箱及び保冷箱管理システム
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20220224BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20220224BHJP
   B65D 81/18 20060101ALI20220224BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20220224BHJP
   B07C 5/36 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
F25D23/00 301G
B65D81/38 N
B65D81/18 D
B65D81/38 J
B65D25/20 K
B65D25/20 P
B07C5/36
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017154134
(22)【出願日】2017-08-09
(65)【公開番号】P2019031308
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】396023328
【氏名又は名称】株式会社タケトモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩明
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-064293(JP,A)
【文献】特開2005-265302(JP,A)
【文献】特開2010-227119(JP,A)
【文献】特開2002-081848(JP,A)
【文献】特開2002-267313(JP,A)
【文献】特開2002-358591(JP,A)
【文献】特開2009-050076(JP,A)
【文献】特開2015-104648(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053238(JP,U)
【文献】特開2014-065557(JP,A)
【文献】特開2009-203058(JP,A)
【文献】特開平11-122146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
B65D 81/18,81/38
B65D 25/20
B07C 5/34,5/36
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの収容物を収容できる収容部と、該収容部の開口部を覆う蓋部と、該収容部を保冷する保冷装置と、を備えた保冷箱であって、
該収容物に備えた温度センサー付きRFタグと、
該収容部内に備えた第一アンテナ部と、
該蓋部の内面側に備えた第二アンテナ部と、
該第一アンテナ部を介して該収容部に収容した該収容物の該RFタグと適宜時間間隔で交信し、該RFタグのID情報及び該RFタグの温度センサーで感知した温度情報を記憶するとともに、該蓋部が開いた状態のときに該第二アンテナ部を介して該収容部に出入りする該収容物の該RFタグと交信し、該RFタグのID情報及び出入時刻情報を記憶する制御部と、
を備えた保冷箱。
【請求項2】
前記蓋部の開閉状態を感知する開閉センサーを備え、
前記制御部は、前記第二アンテナ部と前記RFタグとの交信する時間間隔を前記蓋部が開いた状態のときに前記蓋部が閉じた状態のときよりも短くする、請求項1に記載の保冷箱。
【請求項3】
前記保冷箱は、医薬品、ワイン又は日本酒のために用いる請求項1又は2に記載の保冷箱。
【請求項4】
前記制御部は、少なくとも前記温度情報を外部端末に送信できる送信部を備えた、請求項1~3に記載の保冷箱。
【請求項5】
前記制御部は、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記外部端末に異常情報を送信して報知する、請求項4に記載の保冷箱。
【請求項6】
前記制御部は、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記保冷箱に備えた発光部を発光させる、請求項1~4のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項7】
前記制御部は、取出時間が設定され、前記ID情報が該取出時間を超えて前記第一アンテナ部を介して検出されないときに前記保冷箱に備えた発光部を発光させる、請求項1~4のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項8】
前記制御部を作動させる電力を無線により受電可能な受電部を有する請求項1~7のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項9】
前記第一又は第二アンテナ部はアルミ箔からなり、該アルミ箔は前記収容部を保冷する断熱材を兼ねている請求項1~8のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項10】
前記保冷箱は、前記制御部と通信できる通信手段を備えた冷蔵庫に収納することができ、該冷蔵庫に収納したときに前記保冷装置を停止させる、請求項1~9のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項11】
前記RFタグは、電池部と、前記制御部との交信が設定した時間を超えて途絶えた場合、該電池部の電力により適宜時間間隔で測定した温度を記憶できる記憶部と、を備えた請求項1~10のいずれかに記載の保冷箱。
【請求項12】
前記RFタグは、設定した上限温度を超える前記温度情報を検知したときに発光する発光部を備えた請求項11に記載の保冷箱。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の保冷箱を用いた保冷箱管理システムであって、
前記保冷箱をベルトコンベア上に流し、流れてきた前記保冷箱に収容された各収容物の温度情報を温度管理装置で受信し、温度情報を照合して設定した上限温度を超えたことがあると判定した場合は、前記温度管理装置が前記保冷箱を仕分けるように制御する保冷箱管理システム。
【請求項14】
前記温度管理装置で受信した温度情報をクラウドサーバの記憶部に記憶させる請求項13に記載の保冷箱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、飲食品等の収容物を保冷して収容できる保冷箱に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や飲食品は適切に温度管理しておかなければ品質劣化を起こしてしまい廃棄処分しなければならないこともある。
そこで、監視対象食品の経時的な温度変化の履歴を検出して前記履歴に関する検出データを無線で送信可能な履歴計と、前記履歴計から送信された検出データを受信し、その検出データに基づいて前記監視対象食品の状態を監視するデータ処理装置とを備えたことを特徴とし、冷凍食品等の温度変化の履歴をリアルタイムで監視することができ、かつ監視データを正確に送信することが可能な食品監視装置が開発されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、配送する複数の荷物の温度を個別に管理する荷物温度管理装置であって、前記荷物毎の温度を検出する温度検出手段と、前記荷物毎の保存温度範囲を示す保存情報を記憶する保存情報記憶手段と、前記保存情報記憶手段が記憶している前記保存情報が示す前記保存温度範囲を、前記温度検出手段が検出した前記温度が逸脱しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が逸脱していると判定すると、該判定に対応する前記荷物の異常温度を警報するための警報情報を生成する警報情報生成手段と、前記警報情報生成手段が生成した警報情報に基づいて前記警報を行う警報手段と、を備えることを特徴とし、配送する荷物毎の温度を個別に管理することができる荷物温度管理装置が開発されている(下記特許文献2参照)。
【0004】
さらに、物品IDを記録する識別媒体を付した状態で場所IDがそれぞれ付された複数の場所を経由して搬送される物品の温度を管理する物品温度管理装置であって、前記物品IDごとの搬送履歴を前記場所IDと対応づけた搬送履歴情報を記憶する搬送履歴情報記憶部、および、前記複数の場所の各々における場所温度の時間的な変化を各場所の場所IDと対応づけた場所温度履歴情報を記憶する場所温度履歴情報記憶部とそれぞれ通信可能に接続される通信処理部と、管理対象物品の物品IDである管理対象物品IDの前記搬送履歴情報を、前記通信処理部を介して前記搬送履歴情報記憶部から取得する搬送履歴取得部と、前記搬送履歴取得部が取得した前記搬送履歴情報に含まれる場所IDの場所温度履歴情報を、前記通信処理部を介して前記場所温度履歴情報記憶部から取得する場所温度履歴取得部と、前記場所温度履歴取得部が取得した場所温度履歴情報に基づいて前記管理対象物品の搬送時の温度履歴を与える物品温度履歴情報を作成する物品温度履歴作成部と、を備えたことを特徴とし、簡易な構成で物品の温度履歴情報を取得可能とした物品温度管理装置が開発されている(下記特許文献3参照)。
【0005】
さらには、温度管理の対象となる物品を収納する収納箱に設けられた温度管理装置であって、前記物品を識別する物品IDを記憶する物品ID記憶部と、前記収納箱の内部における前記物品の周囲温度を一定周期で温度センサにより検出し、前記周囲温度、前記物品IDおよび計測時間を含む温度データを生成する温度管理部と、前記周囲温度の上限値および下限値を設定温度条件として記憶する設定温度条件記憶部と、前記温度データに含まれる前記周囲温度と前記設定温度条件を比較し、温度異常の有無を判定する温度異常判定部と、前記収納箱の扉開閉動作または前記物品IDに付されたタグの検出結果に基づいて前記物品が前記収納箱から取り出されてからの経過時間を計測する経過時間計測部と、前記経過時間の上限値を設定時間条件として記憶する設定時間条件記憶部と、前記経過時間と前記設定時間条件を比較して時間異常の有無を判定する時間異常判定部と、前記温度異常判定部および前記時間異常判定部における判定結果に応じて前記物品に係る異常発生の有無を示すステータス情報と前記温度データをリアルタイムで表示する表示部と、を備えることを特徴とし、物品の周囲温度および積み替え作業時間を物品単位で管理し、温度変化による物品の品質劣化を防止する温度管理装置が開発されている(下記特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-330492号公報
【文献】特開2002-267313号公報
【文献】特開2015-202918号公報
【文献】特開2016-204094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように医薬品や飲食品等の品質の安全性を確保するため、温度を適切に管理し、品質劣化が起こる環境下にないかを確認できるような装置等が開発されてきた。
しかし、医薬品のなかでも希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等は、需要が少なく高価でありながら、医療機関などに卸してしまうと、適切に温度管理がなされて保管されていることが担保できなければ返品することは不可になる。そのため、希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等を利用促進させることの障壁になっていた。
希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)等は治療の困難な難病に有効な医薬品として社会的な役割は大きく、患者の数にかかわらず利用を促進させるように努めなければならないものである。このような観点から医薬品や飲食品等の温度管理が適切に行われていたことを確認できる手段の必要性が高まっていた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、医薬品や飲食品等の収容物が適切な温度で管理されていたことを個別に確認することができる保冷箱を提供することにあり、さらには、その保冷箱を用いた管理システムをも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態の保冷箱は、少なくとも1つの収容物を収容できる収容部と、該収容部の開口部を覆う蓋部と、該収容部を保冷する保冷装置と、を備えた保冷箱であって、該収容物に備えた温度センサー付きRFタグと、該収容部内に備えた第一アンテナ部と、該蓋部の内面側に備えた第二アンテナ部と、該第一アンテナ部を介して該収容部に収容した該収容物の該RFタグと適宜時間間隔で交信し、該RFタグのID情報及び該RFタグの温度センサーで感知した温度情報を記憶するとともに、該蓋部が開いた状態のときに該第二アンテナ部を介して該収容部に出入りする該収容物の該RFタグと交信し、該RFタグのID情報及び出入時刻情報を記憶する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このようにすることにより、保冷箱に収容した個々の収容物の温度を適宜時間間隔で記録させておくことができるため、個々の収容物が晒された温度履歴を確認し、個々の収容物が適切に温度管理なされていたことを担保することができる。
【0011】
上記形態の保冷箱は、さらに、前記蓋部の開閉状態を感知する開閉センサーを備えた構成とし、前記制御部は、前記第二アンテナ部と前記RFタグとの交信する時間間隔を前記蓋部が開いた状態のときに前記蓋部が閉じた状態のときよりも短くすることができる。このようにすることにより、個々の収容物が保冷箱に出入りしたことを確認でき、さらに、蓋部を閉じたときは制御部の電力消費を抑えることができる。
【0012】
上記形態の保冷箱は、前記制御部に、少なくとも該収容物の温度履歴を外部端末に送信できる送信部を備えることができる。このようにすることにより、保冷箱を移動させなくとも、収容物の温度履歴を外部端末から簡単に確認することができ、また、外部端末に温度履歴を保存しておくこともできる。
【0013】
上記形態の保冷箱は、前記制御部を、上限温度及び制限時間が設定され、前記収容物の温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記外部端末に送信して報知する構成にすることができる。このようにすることにより、外部端末において個々の収容物が異常な状態にあることを認知することができ、個々の収容物の品質劣化をできるだけ防ぐことができる。
【0014】
上記形態の保冷箱は、前記制御部を、上限温度及び制限時間が設定され、前記温度情報が該上限温度以上であることを検知し、その時間が該制限時間を超えたときに前記保冷箱に備えた発光部を発光させる構成にすることができる。また、前記制御部を、取出時間が設定され、前記ID情報が該取出時間を超えて前記第一アンテナ部を介して検出されないときに前記保冷箱に備えた発光部を発光させる構成にすることもできる。このようにすることにより、保冷箱の外部から収容物が異常な状態にあることを認知することができ、多くの保冷箱がある場合はどの保冷箱に異常が発生しているのかをすぐに見つけ出すことができる。
【0015】
上記形態の保冷箱は、前記制御部を作動させる電力を無線により受電可能な受電部を有することができる。このようにすることにより、例えば、保冷箱を収納する箇所に送電部を設けておけば、収納時に電力を受電することができるため、畜電力が喪失することがない。
【0016】
上記形態の保冷箱は、前記第一又は第二アンテナ部をアルミ箔から形成し、該アルミ箔を、前記収容部を保冷する断熱材を兼ねた構成にすることができる。このようにすることにより、別途アンテナを実装する必要がなく、安価に作製することができる。
【0017】
上記形態の保冷箱は、前記制御部と通信できる通信手段を備えた冷蔵庫に収納することができ、該冷蔵庫に収納したときに前記保冷装置を停止させる構成にすることができる。このようにすることにより、冷蔵庫に保冷箱を収納した場合は、保冷箱の保冷装置を作動させる必要がないため、自動的に停止させ、保冷装置による電力消費を抑えることができる。
【0018】
上記形態の保冷箱は、前記RFタグを、電池部と、前記制御部との交信が設定した時間を超えて途絶えた場合、該電池部の電力により適宜時間間隔で測定した温度情報を記憶できる記憶部と、を備えた構成にすることができる。このようにすることにより、電力不足などにより制御部が作動しなくなった場合でも、RFタグが温度履歴を管理することにより、そのような場合でも、収容物が適切に温度管理なされていたことを確認することができる。
【0019】
上記形態の保冷箱は、前記RFタグを、設定した上限温度を超える温度情報を検知したときに発光する発光部を備えた構成にすることができる。このようにすることにより、多くの収容物がある場合はどの収容物に異常が発生しているのかをすぐに見つけ出すことができる。
【0020】
上記形態の保冷箱を用いて保冷箱管理システムを構成することができ、例えば、前記保冷箱をベルトコンベア上に流し、流れてきた前記保冷箱に収容された収容物の温度履歴を温度管理装置で受信し、温度履歴において設定した上限温度を超えたことがあると判定した場合は、前記温度管理装置が前記保冷箱を仕分けるように制御する保冷箱管理システムにすることができる。
【0021】
このようにすることにより、適切な温度で管理された収容物と異常な状態に置かれた状態ことある収容物とに簡単に選別することができる。
【0022】
上記形態の保冷箱管理システムにおいて、前記温度管理装置で受信した個々の収容物の温度履歴をクラウドサーバの記憶部に記憶させることができる。このようにすることにより、コンピュータ等やモバイル端末等をインターネットなどに接続して、施設の外部から個別の収容物の温度履歴を確認及び管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の保冷箱を示した斜視図である。
図2図1の保冷箱において制御部などの構成例を示した図である。
図3図1の保冷箱において制御部の記憶部に記憶されたID情報の一例を示した図である。
図4図1の保冷箱において制御部の記憶部に記憶された温度情報及びID情報の一例を示した図である。
図5図1の保冷箱を用いた保冷箱管理システムの一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態の保冷箱を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施形態の保冷箱1は、図1又は図2に示すように、収容部2と、蓋部3と、保冷装置4と、制御部5と、を備える。
【0026】
保冷箱1は、例えば発泡ポリスチレンなどの断熱材などからなり、蓋部3を閉じて収容部2内を低温に保つことができるようにしてある。
収容部2は、本実施形態では上部を開口部21とした矩形箱形としてあり、温度センサー付きRFタグ9を備えた収容物8を収容できるようにしてある。収容部2は、少なくとも1つの収容物8を収容することができ、例えば、10個、20個、30個などの収容物8を収容することができる。収容部2の底面側には、アンテナ部6を備えてある。
本実施形態では、アンテナ部6は、収容部2の底面側に設けてあるが、これに限定されるものではなく、収容部2の内面側に設けてあればよく、収容部2の側面に設けてもよい。
【0027】
収容物8は、特に限定するものではないが、保冷管理する必要があるもの、例えば、医薬品や飲食品等、具体的には、血液、希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)、日本酒、ワインなどを挙げることができる。
【0028】
蓋部3は、開口部21を密閉して覆うことができるようにしてあり、保冷箱1の背面側でヒンジ状に回転して開閉できるようにしてある。また、蓋部3の内面側には、アンテナ部7が備えてある。アンテナ部7は、RFタグ9と確実に交信できるようにするため、蓋部3は開いた状態で垂直状に静止するのが好ましい。
蓋部3には、開閉センサーを備えることができ、蓋部3の開閉状態を感知して制御部5に通知できるようにすることができる。開閉センサーは従来公知のものでよい。
【0029】
保冷装置4は、本実施形態では収容部2の側面に設けてあり、例えば、温度センサー、ペルチェ素子などを備え、収容部2内を冷却でき、設定した温度に保つことができるようにしてある。温度の設定などの保冷装置4の操作は、制御部5でできるようにするのが好ましい。
【0030】
制御部5は、本実施形態では収容部2の前面側に設けてあり、図1又は図2に示すように、操作ボタン51や情報内容を表示する表示部52を備え、内部に処理部53、通信部54、記憶部55、発光部56、電池部57などを備える。
制御部5は、RFタグ9のリーダライタの機能も備えるものである。
【0031】
操作ボタン51は、例えばキーボードやテンキーなどを備え、収容物8の上限温度やその制限時間などを設定することができ、また、保冷装置4の操作などもすることができる。
表示部52は、例えば液晶などのディスプレイからなり、設定した上限温度、制限時間などを確認でき、また、RFタグ9で感知した温度情報などを確認することができる。
【0032】
処理部53は、演算処理するCPUなどを備え、格納したプログラムを実行して情報処理を行うことができる。
通信部54は、アンテナ部6,7を備え、RFタグ9と交信することができ、また、外部端末54aなどと通信することができる。
【0033】
アンテナ部6は、収容部2に収容した収容物8のRFタグ9と交信できるようにしてあり、制御部5からの指令でアンテナ部6を介して適宜時間間隔で電波を発信し、その電波をRFタグ9が受信し、RFタグ9がID情報及び温度情報を制御部5に返信するようにしてある。
【0034】
アンテナ部7は、収容物8が開口部21付近を通過する際、つまり、収容物8が収容部2に出入りする際、RFタグ9と交信できるようにしてあり、制御部5からの指令でアンテナ部7を介して適宜時間間隔で電波を発信し、その電波をRFタグ9が受信し、RFタグ9が少なくともID情報を制御部5に返信するようにしてある。
【0035】
アンテナ部6,7は、アルミ箔から形成するのが好ましく、このようにすることにより断熱材も兼ねることができる。この際、アンテナ部6,7のアルミ箔は周囲と絶縁させておくことが好ましい。RFタグ9とアンテナ部6,7との交信可能距離は、保冷箱1の大きさにもよるが、約5cm~50cmにするのが好ましい。収容物8を収容部2に収容した際、RFタグ9がこの範囲に入る位置にアンテナ部6を設け、また、収容物8を収容部2に出し入れする際、RFタグ9がこの範囲を通過する位置にアンテナ部7を設ける。
【0036】
外部端末54aとしては、例えばパーソナルコンピュータやポータブルフォン(スマートフォン)などを用いることができる。外部端末54aに記憶部55に記憶させたID情報及び温度情報などを送信することなどができる。外部端末54aとの通信は、ブルートゥース(登録商標)などの通信規格で行うのが好ましい。
【0037】
記憶部55は、メモリーやHDなどからなり、処理部53を実行するためのプログラムや温度情報、ID情報などの情報を記憶することができる。
発光部56は、収容した収容物8の異常を感知した際に発光する発光手段を備え、発光手段を発光させることにより、収容した収容物8に異常が発生したことをお知らせすることができ、保冷箱1の外部から収容物8の異常を察知することができる。発光手段としては、LEDなどを用いることができる。
【0038】
電池部57は、制御部5を駆動させるための電力を供給することができるものであり、充電できるのが好ましく、特に無線により充電できる受電部57aを備えることが好ましい。
【0039】
RFタグ9は、本実施形態では処理部91、温度センサー92、記憶部93、アンテナ部94、電池部95、発光部96などを備える。
RFタグ9としては、パッシブタグ、アクティブタグ、セミアクティブタグなどいずれを用いてもよい。
【0040】
処理部91は、RFタグ9を制御するものであり、ICなどを備えてなる。
温度センサー92は、RFタグ9の周辺温度を感知することができる。感知した温度は、温度情報として制御部5の記憶部55などに記憶される。
【0041】
記憶部93は、温度情報、固有IDなどを記憶することができ、RFタグ9が交信障害などにより制御部5と交信ができない場合に温度情報を記憶するようにすることができる。
【0042】
アンテナ部94は、制御部5と交信するために備えてある。RFタグ9は、制御部5からの電波をアンテナ部94を介して受信して処理部91へ送り、処理部91は、制御部5へ温度情報やID情報などをアンテナ部94を介して返信することができる。
【0043】
電池部95は、RFタグ9を駆動させるための電力を供給するものである。RFタグ9をパッシブタグとした場合は電池部95を備えなくてもよい。電池部95は、乾電池などを用いた交換式としてもよいが無線により充電できるようにするのが好ましい。
発光部96は、RFタグ9が交信障害などにより制御部5と交信ができない場合に発光する発光手段を備え、発光手段を発光させて異常が生じていることを報知することができる。発光手段としては、LEDなどを用いることができる。
【0044】
以下、保冷箱1の使用方法の一例を示す。
まず、各収容物8に各RFタグ9を備え付ける。この場合、RFタグ9を直接収容物8に貼り付けてもよく、また、収容物8を箱やケースに入れ、その箱やケースに貼り付けてもよい。RFタグ9は、収容物8に備えてあればよく、紐などで括りつけたり、箱やケースに同封したりしてもよい。
【0045】
本例ではRFタグ9の固有IDをID情報として用いる。ID情報は、例えば、外部端末54aなどにおいてRFタグ9を備え付けた収容物8の商品名と予め紐付けしておくのが好ましい。なお、本実施形態ではID情報を16桁の数値からなるものとして説明する。
【0046】
保冷箱1は、以下のように設定しておく。
制御部5は、アンテナ部6を介して収容部2に収容したRFタグ9と適宜時間間隔で交信し、温度センサー92にて感知した温度情報をRFタグ9から返信するように設定しておく。このときID情報も返信する。この時間間隔は、例えば、1分毎、5分毎、10分毎、20分毎などに設定することができる。
また、制御部5は、アンテナ部7を介してRFタグ9と適宜時間間隔で交信し、保冷箱1の開口部21付近を通過した収容物8のID情報を返信するように設定しておく。この時間間隔は、例えば、0.1秒毎、0.5秒毎、1秒毎、2秒毎などに設定することができる。収容部2内は、5.0℃を保つように設定しておく。
【0047】
保冷箱1に収容物8を収容するには、保冷箱1の蓋部3を開いて収容部2を開放し、収容物8を収容部2に収容する。収容する際、RFタグ9は、収容部2の開口部21を通過してアンテナ部7を介して制御部5と交信し、ID情報を制御部5に返信する。ID情報は記憶部55に記憶される。この際の時刻も記憶される。記憶部55には、例えば、図3に示すようにID情報が記憶される。
【0048】
その後、保冷箱1の蓋部3を閉じて収容物8を保管することができる。制御部5は、適宜時間間隔でアンテナ部6を介して電波を発信し、収容部2に収容された個々の収容物8に備え付けた各RFタグ9は、温度センサー92で感知した温度情報及びID情報を返信し、アンテナ部6を介して制御部5に受信され、制御部5の記憶部55に記憶される。この際の時刻も記憶される。記憶部55には、例えば図4に示すように温度情報及びID情報が記憶される。なお、図4は10分毎に温度情報を検知した場合を示し、図中の「-」は温度情報が検知されないことを示す。
【0049】
制御部5の記憶部55には、図3又は図4に示すように、ID情報毎に、保冷箱1の開口部21付近を通過した時刻、および、温度情報とその温度を計測した時刻が記憶されることになる。この情報を基に表示部52に温度履歴を表示させ収容物8の保冷箱1内での温度履歴を確認することができる。また、外部端末54aから無線などで制御部5と通信し、温度情報を制御部5の通信部54を介して送信させ、外部端末54aにおいて収容物8の温度履歴を確認することもできる。
【0050】
制御部5は、上限温度及び制限時間を設定しておくこともでき、温度情報と照合し、温度情報が上限温度以上である時間が制限時間を超えた場合は、外部端末54aなどに異常情報を送信して報知することができる。この異常情報の送信はE-mailなどで行うことができる。この上限温度は、例えば-10、0℃、5℃などと設定することができ、この制限時間は、例えば3分、5分、10分などと設定することができる。
【0051】
異常情報の送信に代えて、或いは異常情報の送信とともに、収容物8の温度が上限温度以上である時間が制限時間を超えた場合は、制御部5に設けた発光部56を発光させることができる。このようにすることにより、保冷箱1の外部からその箱内の収容物8に異常が発生していることを認知することができる。この上限温度は、例えば-10、0℃、5℃などと設定することができ、この制限時間は、例えば3分、5分、10分などと設定することができる。
【0052】
保冷箱1には、蓋部3の開閉状態を感知する開閉センサーを備えることができ、アンテナ部7を介したRFタグ9との交信の時間間隔を蓋部3の開閉状態において変えることができる。例えば、蓋部4を開いた状態の時間間隔を、0.1秒毎、0.5秒毎、1秒毎、2秒毎などに設定し、蓋部3を閉じた状態の時間間隔を、1分毎、5分毎、10分毎、20分毎などに設定しておくことにより、開口部21を通過した収容物8を確実に検知でき、また、蓋部3閉じた状態では制御部5の消費電力を抑えることができる。
【0053】
保冷箱1に収容した収容物8を取り出す際は、蓋部3を開いて取り出す。この際、RFタグ9は、アンテナ部7を介して制御部5と交信し、RFタグ9のID情報を返信し、ID情報が記憶部55に記憶される。この際の時刻も記憶部55に記憶される。
【0054】
制御部5は、取出時間を設定することができ、収容物8に備えたRFタグ9の固有IDがID情報としてアンテナ部7を介して検知され、その後、その固有IDと同じ固有IDがアンテナ部6を介して検知されない時間が、取出時間を超えた場合は、発光部56を発光させることができる。このようにすることにより、保冷箱1の外部からその箱内の収容しておいた収容物8に異常が発生していることを認知することができる。この取出時間は、例えば30分、60分、90分などと設定することができる。
【0055】
保冷箱1は、保管場所の近傍に送電部58を備えることが好ましく、このようにすることにより、保管しながら無線(ワイヤレス)電力伝送により受電部57aで電力を受けて電池部57を充電することができる。
【0056】
また、保冷箱1の保管場所は、冷蔵庫にしてもよい。この冷蔵庫は、保冷箱1を収納した際、自動的に制御部5と交信し、保冷装置4を停止させるようにすることが好ましい。このようにすることにより、冷蔵庫内では保冷装置4を作動させる必要がないので、保冷装置4による電力消費を抑え、電池部57の電池の消耗を防ぐことができる。
【0057】
RFタグ9は、保冷箱1内で無線(ワイヤレス)電力伝送により電力を受けて電池部95を充電することができるようにすることが好ましい。この際、RFタグ9は、送電部58から電力を受けることができるようにするのが好ましい。
【0058】
また、制御部5において電池部57の電池切れや誤作動などの発生により、RFタグ9と制御部5とが交信不能になった場合に備え、RFタグ9に設定時間を設けておき、その設定時間を超えて制御部5と交信が途絶えた場合は、RFタグ9の記憶部93に温度センサー92で感知した温度情報を記憶させるようにすることが好ましい。このようにすることにより、何らかの事情で制御部5と交信ができなくなった場合にも、温度情報を保存することができ、収容物8の温度履歴を確認することができる。この設定時間は、制御部5の操作ボタン51などを用いて設定することが好ましく、例えば10分、30分、60分などに設定することができる。
【0059】
RFタグ9は、上限温度を設定することができ、記憶部93に記憶した温度情報が上限温度を超えた場合は、発光部96を発光させることができる。このようにすることにより、そのRFタグ9を備えた収容物8に異常が発生していることを外部から認知することができる。この上限温度は、制御部5の操作ボタン51などを用いて設定することが好ましく、例えば-10°、0℃、5℃などに設定することができ、
【0060】
このように保冷箱1は、収容物8の温度履歴を記憶部55に保存して表示部52や外部端末54aにて確認することができ、医薬品や飲食品等の収容物8が適切な温度で管理されていたことを確認することができる。
【0061】
保冷箱1を用いて以下の保冷箱管理システムを構成することができる。
図5に示すように、収容物8を収容していた保冷箱1をベルトコンベア100上に流す。ベルトコンベア100には温度管理装置101が設けてあり、温度管理装置101は保冷箱1の制御部5と通信することができ、通信部54を介して記憶部55に記憶された温度情報を少なくとも受信することができる。
【0062】
温度管理装置101は、CPUなどからなる制御部を備え、上限温度が設定することができ、受信した温度情報及びID情報と照合して、上限温度を超えたことがある温度情報を含む収容物8がないか検知することができる。検知された収容物8があった場合は、その収容物8を収容した保冷箱1を仕分ける。仕分けるには、例えば、ベルトコンベア100を分岐させ、流れる方向を別れさせ、上限温度を超えたことがある保冷箱1とそうではない保冷箱1とに分別し、異常が発生したおそれのある収容物8を選別できる。
このように個別の収容物8の温度情報を照合して管理時に温度に異常がなかったかを確認することができ、適切に管理されていた収容物8と不適切に管理されていたおそれのある収容物8とに選別することができる。
【0063】
温度管理装置101で受信した各保冷箱1の温度情報は、クラウドサーバの記憶部に保存させるのが好ましい。このようにすることにより、コンピュータ等やモバイル端末等をインターネットなどに接続して、施設の外部から個別の収容物8の温度履歴を確認及び管理することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 保冷箱
2 収容部
21開口部
3 蓋部
4 保冷装置
5 制御部
51操作ボタン
52表示部
53処理部
54通信部
55記憶部
56発光部
57電池部
57a受電部
58送電部
6 アンテナ部
7 アンテナ部
8 収容物
9 RFタグ
91処理部
92温度センサー
93記憶部
94アンテナ部
95電池部
96発光部
100 ベルトコンベア
101 温度管理装置
図1
図2
図3
図4
図5