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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】害虫駆除用液体コアカプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20220224BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20220224BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20220224BHJP
   A01N 47/40 20060101ALI20220224BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220224BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20220224BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20220224BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/28
A01N43/90 101
A01N47/40 Z
A01P7/04
A01P19/00
A01M1/20 A
A01M1/02 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018528022
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 DE2016000430
(87)【国際公開番号】W WO2017097282
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】102015016114.8
(32)【優先日】2015-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518184236
【氏名又は名称】カツビオテック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KATZ BIOTECH AG
【住所又は居所原語表記】An der Birkenpfuhlheide 10 15837 Baruth/Mark Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ラーデマッハ、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】カツ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー、ディアナ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムンド、マークス
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第90/000005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00
A01N 43/90
A01N 47/40
A01P 7/04
A01N 25/28
A01P 19/00
A01M 1/20
A01M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半翅類の昆虫、シラミ、アザミウマ、セミの少なくともいずれかであり、刺し通して吸引する口器を有する害虫を駆除する害虫駆除用の液体コアカプセル剤(10;20)であって、平均直径が1~10mmの範囲であり、前記液体コアカプセル剤が水性コア(11;21)および拡散抑制性機能的外殻(13;23)を有し、前記コア(11;21)が少なくとも1種の害虫駆除剤を含み、前記外殻(13;23)が前記害虫用の少なくとも1種の誘引剤を含み、前記水性コア(11;21)が少なくとも1種の摂食刺激物質を含む、液体コアカプセル剤(10;20)。
【請求項2】
前記外殻が、油脂および/またはワックス、ならびに油ベースにした基材物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項3】
前記基材物質がパラフィンあることを特徴とする、請求項2に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項4】
前記外殻が1~25%の範囲の比率の前記油を有することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項5】
前記外殻が誘引剤を含まない外側領域を有することを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項6】
前記少なくとも1種の摂食刺激物質が、少なくとも1種の炭水化物および/または少なくとも1種のアミノ酸および/または少なくとも1種の脂肪、好ましくは栄養組成物を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項7】
前記水性コアが、ヒドロゲルシェル(12)により囲まれていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項8】
前記ヒドロゲルシェル(12)が生体高分子組成物から形成され、前記生体高分子が好ましくはアルギネートおよび/またはペクチンであることを特徴とする、請求項7に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項9】
前記生体高分子組成物シェラックおよび/またはワックスをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項10】
前記少なくとも1種の誘引剤が、揮発性誘引剤であり、前記誘引剤が好ましくは、(Z)-3-ヘキセニルアセテートおよび/または(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または(E)-β-カリオフィレンおよび/または1-ヘキサノールおよび/またはノナナールおよび/またはヘキシルブチレートおよび/または(E)-2-ヘキセニルブチレートおよび/またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤(10;20)の製造方法であって、
・前記液体コアカプセル剤(10;20)の水性コア(11;21)用の混合物を用意するステップであって、前記混合物が害虫駆除剤および少なくとも1種の摂食刺激物質を含むステップ、
・前記液体コアカプセル剤(10;20)の拡散抑制性機能的外殻(13;23)用の少なくとも1種の混合物を用意するステップであって、前記少なくとも1種の混合物が前記害虫用の誘引剤を含むステップ、および
・前記水性コア用混合物および前記機能的外殻用の少なくとも1種の混合物を用いて、液体コアカプセル剤(10;20)を製造するステップ、を含む方法。
【請求項12】
・ヒドロコロイド溶液を用意するステップ、
前記水性コア用の混合液と前記ヒドロコロイド溶液の混合液を用いて、ヒドロゲルシェル(12)および水性コア(11)を有する一次カプセルを製造するステップ、および
・前記機能的外殻(13)用の少なくとも1種の混合物を用いて、前記液体コアカプセル剤(10)の製造のために、流動床中で前記一次カプセルを噴霧コーティングするステップ、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の液体コアカプセル剤の使用であって、前記害虫駆除製剤が作物に適用される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫駆除用液体コアカプセル剤、このようなカプセル剤の製造方法および害虫駆除における使用に関する。本発明はさらに、活性物質の制御放出のための担体にも関する。
【背景技術】
【0002】
害虫駆除は、農業および園芸作物において重要な役割を果たしている。特に、種々の昆虫およびダニは、農業および園芸活動に大きな損害を与えることがある。半翅類の昆虫(例えば、リグス属種)は、多くの野菜作物および観賞植物(例えば、トマト、キュウリ、胡椒、ナス、豆、レタス、葉もの野菜、および茎もの野菜、さらには、ガーベラデイジー、菊、および薔薇などの切り花など)に大きな損害をもたらすことがある。幼虫および成虫の両方共、口器を使って、植物中に刺し通し、植物組織または植物液を吸い出して栄養摂取する。損傷の典型的な症状は、刺し通した部位の周りに、特に、壊死部、斑点、成長障害部が形成される。通常、花および果実が穿孔され、その後、全滅するかまたは深刻な損傷を受ける。穿孔された後、果実または観賞植物は、多くの場合、もはや市場価値はない。さらに、半翅類の昆虫は、ウイルスおよび細菌を感染させることができ、これらは植物に対し病原性であり、結果として腐敗などの損害をもたらす。したがって、特に植物生産に関連して、害虫駆除処理に対する大きなニーズが存在する。
【0003】
半翅類の昆虫の害虫駆除に伴う特殊な問題は、一般に、この動物が非常に頑強であり、したがって、全滅させるまでには、比較的多量の活性物質を吸収させる必要があることである。原理的には、これは、食用毒物(活性物質)の経口摂取により可能であろう。半翅類の昆虫のような吸引害虫の場合、毒物が吸い出され、摂取されるように、活性物質それ自体を植物に添加することが必要となろう。さらに、これらのタイプの半翅類の昆虫は全て、植物の地上部分を吸引するので、薬剤がうまく機能するためには、保護剤は、理想的には、全植物組織中に高用量で均一に分配する必要があろう。しかし、このような食用毒物は利用可能ではない。理由は、それらは、既存の法的要件(最大残留量に対する規制、認可)に適合しないためである。したがって、半翅類の昆虫の駆除は、現時点では、比較的高用量の接触殺虫剤を用いる場合のみが可能である。このような接触殺虫剤の例は、合成ピレスロイドおよびネオニコチノイドである。接触殺虫剤の有害生態毒性プロファイルは、問題が多い。加えて、通常、消費者を保護するために、これらの殺虫剤の使用は、収穫の14日~7日前は、禁止されている。活性物質は、ミツバチにも有害である。したがって、このような植物保護剤の使用は、厳しく規制されている。さらに、このような化学的害虫駆除は持続可能ではない。理由は、耐性が形成されること、および有益な生物も全滅するためである。このような害虫駆除に関連する、有益な生物集団に対する連続的で強力な悪影響は多くの場合、有益な統合的植物保護の終わりを意味する。この統合的植物保護では、有益な生物が主に使用され、それらの作用が緩やかな化学的植物保護剤を用いた個別の補充による支援を受けている。
【0004】
害虫駆除における生物学的植物保護剤の使用は、このような物質は表面に適用され、半翅類の昆虫は内部の植物組織を吸引するのみであるため、半翅類の昆虫はそれらを摂取しないか、または不十分な量のみ摂取するという理由で、これまで成功しなかった。生物学的に培養された作物では、半翅類の昆虫を駆除するために有益であるが、同時に、有益な生物または種に有害でない生物および植物保護剤が利用できないので、現時点で、利用可能な好適する害虫駆除剤が全く存在しない。不十分な害虫駆除の選択肢に起因して、特に有機農法では、半翅類の昆虫寄生は、大きな経済的損失に繋がっている。
【0005】
害虫駆除剤と害虫の誘引剤とを組み合わせることは既に知られている。例えば、独国特許出願公開第102005056795A1号(特許文献1)は、クリハモグリムシ(chestnut leaf miner)を駆除するための植物保護剤について記載しており、忌避、抑止、および/または阻害効果を有する行動変容物質が、例えば、フェロモンと組み合わせて使われる。独国特許出願公開第19528529A1号(特許文献2)は、少なくとも1種の信号伝達物質を有し、また場合により殺虫活性物質を含む害虫駆除剤について記載している。この場合、物質の適用後の環境条件による薬剤の迅速な分解を防ぐためにUV吸収体も提供される。これらの薬剤では、半翅類の昆虫の駆除におけるそれらの有効性は、まだ問題がある。理由は、通常、目的の効果が得られるまでに、比較的多くの殺虫剤または害虫駆除剤がこれらの頑強な昆虫により摂食される必要があるためである。したがって、このような薬剤は、昆虫の誘引剤と組み合わせたにしても、半翅類の昆虫の駆除における目的の有効性をまだ達成していない。
【0006】
特に、クサカゲロウ、または中気門亜目用の食品基材を模倣するマイクロカプセルは、欧州特許第2415356B1号(特許文献3)により既知である。マトリックスカプセル剤は、全体がマトリックス構造で満たされているので、昆虫またはダニは、内容物に到達するためには、カプセル剤全体を食べるかまたはそれらを極めて強い吸引力で吸引しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102005056795A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第19528529A1号明細書
【文献】欧州特許第2415356B1号明細書
【文献】DE112010005095(T5)(国際公開第2011084241(A1)号のドイツ国内移行)
【非特許文献】
【0008】
【文献】DARA,p.(2013):Biological and Microbial Control Options for Managing Lygus Bug in Strawberries.Lygus Bug IPM Seminar,UCCE,Watsonville,18 April 2013.http://cesantabarbara.ucanr.edu/files/165601.pdf
【文献】PARE,P.W.& TUMLINSON J.H.(1999):Plant Volatiles as a Defense against Insect herbivores.Plant Physiology,October 1999,Vol.121,pp.325-331
【文献】FRATI F.et al(2008):Role of the plant-conspecific complex in host location and intra-specific communication of Lygus rugulipennis.Physiol.Entomol.(2008)33,129-137
【文献】HOLOPAINEN,J.K.& VARIS,A.-L.1991:Host Plants of the European tarnished plant bug Lygus rugulipennis.J.Appl.Ent.111(1991).484-498
【文献】DRAGLAND,S.1991:Lygus rugulipennis,a harmful insect to many cultivated plants-II.Damage in cabbage fields and control measures.Haret entege.II.Skadar i kalfelt.67-76
【文献】BECH,R.1967:Zur Bedeutung der Lygus-Arten als Pflanzenschadlinge.Biol.Zentrbl.Heft 2.205-232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
害虫駆除のための植物保護剤は、植物の表面に適用されるが、半翅類の昆虫は内部の植物組織を吸引するのみであるため、半翅類の昆虫がそれらを摂取しないか、または不十分な量のみ摂取するという理由で、これまで不十分な結果しか得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基本的な目的は、害虫駆除用の効果的製剤を提供することである。この目的は、請求項1に記載の液体コアカプセル剤を用いることにより達成される。液体コアカプセル剤の好ましい実施形態、液体コアカプセル剤の製造方法、害虫駆除における使用、および活性物質の制御放出(誘引剤放出)用の担体がその他の請求項の主題である。
【0011】
本発明は、コアおよびシェルの別々の構造(コアシェルカプセル)を有する液体コアカプセル剤に基づいた害虫駆除用の新規製剤を提供する。本発明による液体コアカプセル剤は、少なくとも1種の害虫駆除剤を含む水性コアを含む。用語の「水性コア」は、カプセル剤の中空内部に配置された液相を含むコアを意味する。さらに、本発明による液体コアカプセル剤は、少なくとも1種の害虫用誘引剤を含む拡散抑制性の機能的外殻を有する。拡散抑制性外殻は、低含水量により区別され、原理的には、液体コアカプセル剤の外側は乾燥しており、特に流し込み可能な顆粒の形で提供され得る。外殻の含水量は、1%未満、特に0.5%未満であるのが好ましい。外殻の含水量は、ゼロに近いのが特に好ましい。これは、特に、外殻に対しワックスおよび/または油脂を使って実現し得る。さらに、水性コアの含有量は、拡散抑制性外殻により蒸発から保護され、液体コアカプセル剤を作物に適用可能であり、このカプセル剤は、長期間にわたり乾き切ることはないと思われ、それらの効果を伸ばすことができる。
【0012】
本発明による液体コアカプセル剤の1つの重要な態様は、外殻からの誘引剤の放出である。油脂および/またはワックス、好ましくはパラフィンをベースとする基材物質を、外殻の製造に使用するのが好ましい。特に好ましい一実施形態では、外殻は、油脂および/またはワックス、および、追加の油、特に植物油をベースにした基部構造を含む。例えば、菜種油またはひまわり油が好適する。原理的には、その他の油、例えば、合成油を使ってもよい。基材物質が油脂および/またはワックスから部分的にのみ作製されることも可能である。特に、基材物質と油との組み合わせは、外殻からの誘引剤の一定量での長期放出を達成し得、この放出は、液体コアカプセル剤の害虫駆除作用にとって特に有利である。
【0013】
一般に、必要とされる機能(障壁、強度、粘度)に対しフィルムを形成できる脂肪酸またはワックス状物質は、基材物質として好適する。特に好ましい一実施形態では、外殻の基材物質は、少なくとも部分的に、好ましくは全てが、パラフィン、好ましくは軟パラフィンから作製される。特に、軟パラフィンは、特に好適であることが明らかになった。理由は、第1に、それは、蒸発に対して極めて信頼性の高い保護を与え、第2に、誘引される昆虫が口器を刺し通すのが特に容易であるためである。
【0014】
外殻中の油の比率は、1~25%(w/w)の範囲であるのが好ましい。誘引剤のパーセンテージ比率は、例えば、0.0001~1%の範囲であってよい。発明者らは、この基材物質の組み合わせ、特に、外殻中のパラフィン、油、および誘引剤の組み合わせ特有の効果は、基材物質中へ混合した油が、極めてゆっくりと、比較的連続的に表面上で分離する(汗かき)という事実に由来すると考えている。この効果の理由は、おそらく、異なる密度で、これが、非極性物質の分離をもたらすためであろう。パラフィンの室温での密度は、約0.81~0.89g/cmであり、例えば、菜種油の密度は幾分高く、0.9~0.92g/cmである。分離速度は、密度の差異と共に増加し、したがって、適切な組み合わせを選択することにより調節し得る。別の駆除機構は、使われる油の量から生ずる。誘引剤の単位時間当たりの絶対放出量は、実験で示されたように、基材物質に混合した油の量と共に低下する。したがって、油は、誘引剤放出の抑制剤として機能する。
【0015】
外殻における植物油の使用は、駆除される害虫に対し、植物油が穿孔刺激薬として作用し得るというさらなる効果を有する。穿孔刺激薬は、動物(害虫)に対する潜在的栄養源であることを示すまたは少なくとも示唆する信号化学物質である。穿孔刺激により、主として害虫の穿孔挙動のきっかけとなるまたはそれが強化される。例えば、アブラナ科植物の油、例えば、菜種油の油、またはれに由来する物質は、特定の害虫に対して穿孔刺激薬として作用し、そのため、菜種油は特に好ましい。その他の植物油以外の穿孔刺激薬も使用してよく、または複数の穿孔刺激薬を液体コアカプセル剤として使用することも可能である。
【0016】
外殻から流出する油は、特に半翅類の昆虫の穿孔挙動および食物摂取(食刺激)の誘発を強化し、また、同時に誘引剤のカプセル剤表面への輸送を遅らせる追加の効果を有する。誘引剤は空気中に放出される(蒸発)。カプセル剤から摩り落とされるまたは洗い流される油(例えば、機械プロセスまたは雨の間に)は、外殻の層からほぼ連続的に置換される。
【0017】
したがって、外殻の個々の成分は、次の機能を有する:
・基材物質、例えば、パラフィン:コア溶液に対する拡散、酸化、およびUVからの保護、および誘引剤および油の貯蔵所
・油、例えば、植物油:穿孔刺激薬および摂食刺激物質、誘引剤放出の調節物質
・誘引剤、特に揮発性誘引剤:害虫を誘引する
【0018】
したがって、外殻は、特定の機能として、害虫を誘引する揮発性誘引剤の連続的および長期放出を可能とし、また、害虫の魅力的な栄養成分としてまたは穿孔および栄養摂取の刺激薬として作用する油の連続的および長期放出を可能とする。
【0019】
一般に、害虫駆除のための植物保護手段の分野では、約1週間の期間が許容可能な反応時間と考えられている。誘引剤放出のこのような期間は、本発明による液体コアカプセル剤それだけを用いて達成し得る。しかし、さらに長い期間の誘引剤放出、および当然ながら長い期間の液体コアカプセル剤の安定性は、可能な異なる調節を用いて達成可能である。例えば、外殻の層厚みを増やすことにより、誘引剤の放出を延長することができる。一般に、外殻は、例えば、カプセル剤の重量を基準にして、約15~30%の材料、すなわち、特に、基材物質+油から形成され得る。比較的高い比率、例えば、30%を使って、誘引剤の放出を長期間にわたり遅らせることができる。
【0020】
外殻は、誘引剤不含の外側領域を有するのが特に好ましい。この外側領域は、例えば、基本的に基材物質から、または基材物質+油から形成され得る。この手段を用いて、誘引剤放出の速度または期間を調節する追加の機会が得られ、さらなる活性物質の放出の減速がこの追加の外側領域を使って達成される。さらに、この実施形態では、この放出速度の最適化を使用して、カプセル剤の元のままの有効性を維持しながら、一般に高価な誘引剤の必要量を減らし得る。外殻中の油は、誘引剤放出に対する抑制性機能に加えて、穿孔刺激薬としても作用するので、同様に油の遅延放出を達成するために、追加の外殻の外側領域中を油なしにするのは、有利であり得る。油の遅延放出は、誘引剤の放出に適応される。したがって、油および誘引剤は同時に放出され、これは、両方の物質が害虫に対する作用において相互作用する場合には、特に有利であり得る。外殻は、例えば、異なる領域が異なる誘引剤濃度を有し、誘引剤が相互にスムーズに移行するように構成されてよい。外殻の誘引剤濃度は、特に、内側から外側に減少してよい。
【0021】
コアの内容物には、害虫にコアの内容物を摂取するように促し、刺激する少なくとも1種の摂食刺激物質がさらに含まれる。一般に、摂食刺激物質は動物に摂食させるように機能する物質である。特に、炭水化物および/またはアミノ酸および/または油脂が摂食刺激物質として使用され得る。特に好適するのは、このような物質を含む害虫用の栄養組成物であり、この目的のために、半翅類の昆虫またはその他の昆虫用の標準的栄養溶液を使用し得る。甘味料、例えば、ステビアおよび/またはエリスリトールもまた、摂食刺激物質として好適する。
【0022】
液体コアカプセル剤の水性コアは、ヒドロゲルシェルにより囲まれているのが好ましい。これは、特に、液体コアカプセル剤の製造の観点から特別な利点を有する。ヒドロゲルシェルは、好ましい液体コアカプセル剤の製造プロセス中に主にカプセル剤の水性コアを安定化する。この製造プロセス中に、最初に、ヒドロゲルシェルにより被われた液体コアを含む一次カプセルが製造される。その後、これらの一次カプセルは外殻用の材料でコートされる。しかし、ヒドロゲルシェルが必ずしも必要ではない他の製造プロセスも可能である。一次カプセルを含む前述の製造プロセスは、特に有利で、好適することが明らかになったが、これについては以降でさらに詳細に説明する。
【0023】
液体コアカプセル剤は、特に有利となる方式で、害虫駆除、特に極めて頑強な害虫、例えば、駆除が極めて困難な、または従来の害虫駆除剤では不満足な状態でのみ駆除できる、植物に損害を与える半翅類の昆虫の駆除も可能にする。本発明による液体コアカプセル剤の機能的外殻は、噛んで吸引するおよび/または刺し通して吸引する駆除害虫の口器により穿孔可能なのが好ましい。したがって、本発明による液体コアカプセル剤は、このような噛んで吸引するおよび/または刺し通して吸引する口器を有する、植物に損害を与える害虫の駆除に特に好適する。
【0024】
本発明による液体コアカプセル剤のコアは、水溶液または水性エマルションを有する。したがって、液体コアカプセル剤の内容物の粘稠度は、害虫が液体コアカプセル剤の内容物を口器で摂取できるように、害虫の天然の食物に適応されている。本発明による液体コアカプセル剤は、害虫の食物基材を特定の方法で模擬する。すなわち、例えば、液体コアカプセル剤は果実または別の植物部分を模擬する。害虫は、液体コアカプセル剤の外殻中またはその上に含まれる誘引剤(単一または複数)により誘引され、液体コアカプセル剤を食料源であると見なし、液体コアカプセル剤中に刺し通すまたは噛みつき、害虫駆除剤を含む液体コアカプセル剤の内容物の少なくとも一部を摂取するように刺激される。コアの内容物が水溶液から形成されるかまたは水性エマルションから形成されるかは、主として、どの特定の害虫駆除剤が使われるかおよびこの特定の害虫駆除剤が水中もしくは緩衝水溶液中に溶解するかまたはより単純にエマルションとして提供されるかに依存する。重要なのは、コアの内容物である水相が害虫の口器により吸引され得ることである。
【0025】
本発明による液体コアカプセル剤は、いわゆる誘引殺虫原理に基づいて、害虫を誘引する。液体コアカプセル剤からコア内容物を吸引することによって、害虫は、コア中に含まれる害虫駆除剤により効果的に駆除され、害虫駆除剤の効果は、用いられる害虫駆除剤に依存する。例えば、害虫を、固定、損傷、または死滅させ得、それにより、害虫に起因する作物に対する損害、またはいくつかの他の種類の損害が防止されるか、または少なくとも大きく低減される。
【0026】
原理的には、本発明による液体コアカプセル剤は、噛んで吸引するまたは刺し通して吸引する口器を有する全ての害虫、および特に、例えば、シラミ、アザミウマ、セミを駆除するのに好適する。特に、本発明による液体コアカプセル剤は、農業および園芸の仕事で植物害虫を駆除するのに好適する。
【0027】
本発明による液体コアカプセル剤は、異なる害虫駆除剤と共に使用するのに好適する。例えば、液体コアカプセル剤は、液体コアカプセル剤と組み合わせて、食用毒物として使用できる従来の化学的害虫駆除剤(化学的活性物質)の使用に好適する。本発明で使用し得る化学的食用毒物の例には、ラムダシハロトリン(例えば、KARATE(登録商標)ZEON中の有効成分)、スピノサド(例えば、CONSERVE(商標)中の有効成分)、およびチアクロプリド(例えば、CALYPSO(登録商標))がある。
【0028】
生物学的および天然の害虫駆除剤は、活性物質として特に植物に損害を与える害虫に対し有利に使用し得る。本発明による液体コアカプセル剤の構造に起因して、以前に使われていないまたは不十分な結果を伴って使用されてきた害虫駆除剤を、この形態のこれらのカプセル剤を使ってうまく用い得る。本発明による液体コアカプセル剤の特に好ましい一実施形態では、害虫駆除剤は、少なくとも1種の生物学的活性物質である。既に試験が終了して、承認されている生物学的活性物質を使用し得ることは、特に有利である。例えば、昆虫病原性細菌および/または昆虫病原性ウイルスおよび/またはニーム活性物質および/またはこれらの物質の少なくとも1種の誘導体の生物学的活性物質は特に好適する。昆虫病原性細菌の活性物質は、好ましくはいわゆるBt分離株(Bt=バチルス・チューリンゲンシス)であり、これらは、植物を食べる害虫の駆除用として既に既知である。Bt毒素は、腸壁の分解に繋がる。害虫はすぐには死なないが、極めて急速に食物摂取が停止し、それにより、植物に損害を与える作用が終了する。ウイルス性昆虫病原性活性物質は、特に、消化管に損傷を与え、例えば、特定の毛虫では1~2日以内に死に繋がる、顆粒病ウイルスである。特定のBtおよび顆粒病ウイルスを用いた害虫駆除用製剤は、従来の噴霧処理ではそれらを半翅類の昆虫が摂取できないために、現在利用できない。しかし、これらの活性物質は、本発明による液体コアカプセル剤と共に効果的に使用し得る。さらに、ニーム製剤が特に好ましい。それらは、害虫駆除用として既に既知であり、本発明による液体コアカプセル剤にとって、特に有利に使用し得る。本発明による液体コアカプセル剤と組み合わせたニーム製剤は、特に効果的であることが明らかになった。アザジラクチンを含むニーム油製剤の使用が好ましく、これは、殺虫剤として作用し、生物学的害虫駆除に特に好適する。アザジラクチンによる噴霧処理後の半翅類の昆虫に対する作用は、研究室および実地研究で既に実証されている(例えば、DARA,p.(2013):Biological and Microbial Control Options for Managing Lygus Bug in Strawberries.Lygus Bug IPM Seminar,UCCE,Watsonville,18 April 2013.http://cesantabarbara.ucanr.edu/files/165601.pdf(非特許文献1))。活性物質アザジラクチンは、半翅類の昆虫生物に対して多くの効果があり、例えば、食物摂取、成長、運動、および生殖作用が阻害される。活性物質アザジラクチンと本発明による液体コアカプセル剤との組み合わせは、半翅類の昆虫に起因する損害を大きく低減させ得る。
【0029】
本発明による液体コアカプセル剤で提供され得るヒドロゲルシェルは、生体高分子組成物から形成されるのが好ましい。生体高分子アルギネートおよび/またはペクチンが特に使用される。その他の添加物、特にシェラックおよび/またはワックスを添加し、特定の利点が得られる。これらの添加物は、ヒドロゲルシェルは、特に、例えば、アルギネートおよび/またはペクチンのみから構築したシェルと比較して、極めて薄く、より安定に実現し得るという利点がある。同時に、ヒドロゲルシェルの安定性および特性は、水拡散の点で改善される。特に、水拡散が制限され、それにより、液体コアは、機能的外殻の製造のためのコーティングプロセス中に蒸発による水を全く失わないか、または極めてわずかに失う。液体コアカプセル剤の特に好ましい一実施形態では、微結晶セルロース(MCC)がヒドロゲルシェルの添加物として使用される。例えば、生体高分子組成物中の約0.1~0.5%の濃度範囲、特に0.3%のMCCの添加により、その他のヒドロゲルシェルより薄く、同時により安定なヒドロゲルシェルが得られる。
【0030】
プロセスの観点から、水相を内部に含むコア、およびこのコアを囲い込むヒドロゲルシェルは、いわゆる一次カプセルを形成し、これは、機能的外殻でコートされる。一方では、この外殻は、駆除される害虫の口器が穿孔可能であるという機能を有する。さらに、外殻は、少なくとも1種の誘引剤が外殻に組み込まれることにより、害虫を誘引する機能を有する(機能的外殻)。さらに、外殻は、拡散抑制性であり、外殻は液体コアカプセル剤にとって必要な安定性および損害を与える環境の影響からの保護、例えば、特に、乾燥およびUV照射からの保護を提供できる。
【0031】
外殻は、好ましくは、機能的外殻のための適切な混合物が一次カプセル上に噴霧されるように製造され、一次カプセルは、好ましくは流動床中で噴霧コートされる。さらに、基材物質および誘引剤(単一または複数)を含む別々の混合物を、二重層として一次カプセルに適用することが可能である。上記記述においては、この二重層は、複数のまたは2つの領域を有する外殻として解釈されるべきである。この二重層は、外層(外側領域)が、好ましくは基材物質単独でまたは油と組み合わせて形成され、さらに遅い誘引剤放出という前述の利点を有する。この一次カプセルの二重噴霧コーティングは、流動床を中断することなく、1つのプロセスで製造することも可能である。このためには、内層用の物質が入っている1つの容器からの噴霧溶液の吸引を、外側領域用の物質が入っている異なる容器に切り替えることが必要なだけである。あるいは、機能的外殻はまた、一次カプセルを製造する中間ステップなしで、以下でさらに詳細に記載される方式で、製造することも可能である。
【0032】
油脂および/またはワックスをベースにしたコーティング物質の使用は、コア溶液中の蒸発による水の損失を大幅に制限できるという利点がある。さらに、これらの物質は、損害を与えるUV照射をほとんど通さず、したがって、コア内容物物質の環境による分解に対し保護を与えるという利点がある。
【0033】
誘引剤は、好都合にも、外殻によりすぐ近傍に放出される揮発性誘引剤である。したがって、この誘引剤は特定の長い距離にわたり効果を広げ、近傍で休止する害虫が誘引される。誘引剤は、好ましくは、天然の植物から分離された物質またはそれから誘導した物質、特に、炭化水素骨格を有する物質、例えば、揮発性アルデヒド、アルコール、エステル、またはテルペンである。これらは、天然の植物から分離され、本質的に多くの機能を満たす、特に、揮発性有機化合物(VOC)である。このような物質は、例えば、植物部分(クチクラ物質)の表面上で認められるか、または気孔または分泌腺を介して植物により放出される。さらに、揮発性化学化合物を誘引剤として使用してもよい。特に好ましいのは、機械的に損傷を受けた植物が放出する、天然の成分のいわゆる「緑の香り」(GLV)である物質である。これらの物質に1つの効果は、それらが害虫を誘引することである。本発明では、このような誘引剤またはそれから誘導される害虫に対し同じ効果を有する物質は、本発明による液体コアカプセル剤に対して使用される。天然の誘引剤および/または例えば、害虫に対し天然の誘引剤と同じ効果を有する合成物質(誘導体)を誘引剤として使用し得る。誘引剤として特に好ましい一基本組成としては、ヘキセノール(例えば、46.7%)、(Z)-3-ヘキセニルアセテート(例えば、32.5%)、(Z)-3-ヘキセナール(例えば、5.7%)、(E、E)-α-ファルネセン(例えば、4%)、β-ブルボネン異性体(+)(例えば、3.9%)、(Z)-3-ヘキセニルブタノエート(例えば、3.6%)、β-カリオフィレン異性体(-)(例えば、0.8%)、(E)-4,8-ジメチル-1,3,7-ノナトリエン(例えば、0.1%)が挙げられる。このような化合物が傷ついた葉物質からより濃縮されて出てきて、昆虫を誘引することは既に知られている(PARE,P.W.& TUMLINSON J.H.(1999):Plant Volatiles as a Defense against Insect herbivores.Plant Physiology,October 1999,Vol.121,pp.325-331(非特許文献2);FRATI F.et al(2008):Role of the plant-conspecific complex in host location and intra-specific communication of Lygus rugulipennis.Physiol.Entomol.(2008)33,129-137(非特許文献3))。誘引剤の基材物質は、様々な方法で補充され得、それらの相互の比率は、駆除される害虫に対する効果を修正し、調節するために変えてもよい。典型的な花の匂い、例えば、フェニルアセトアルデヒドおよび(E)-シンナムアルデヒドなどの匂いも、害虫をうまく誘引するために使用してよい。
【0034】
揮発性誘引剤の使用は特に有利である。理由は、通常、駆除される害虫は、誘引剤を特異的化学受容体を使ってそれらのアンテナ上に登録し、その後、誘導される方式で移動する(走化性)。この動物の天然の挙動が、特に濃縮形態の好適な誘引剤を液体コアカプセル剤の外殻に添加することにより利用される。これに関して、主として一般的な植物の匂い(緑の香り)中に含まれる物質が植物害虫用、特に半翅類の昆虫(リグス属種)用の誘引剤として好適する。誘引剤(単一または複数)は、誘引剤が、したがって、本発明による液体コアカプセル剤が植物より魅力的であるような濃度で選択および使用されるのが好ましい。
【0035】
本発明による液体コアカプセル剤は、乾燥した、拡散抑制性外殻により区別される。したがって、それらは、例えば、液体コアカプセル剤を作物に適用する場合、扱いが簡単な乾燥状態の流し込み可能な顆粒として提供される。
【0036】
機能的外殻に対して、また、必要に応じ、ヒドロゲルシェルに対して、特に有利な方式で、懸念材料なしに環境に付加し得る物質が使用される。食品産業で既に使われている物質が特に好適する。例えば、油脂、ワックス、およびシェラックは、この理由で、液体コアカプセル剤として特に好適する。
【0037】
本発明の液体コアカプセル剤の外殻は、好ましくは、50~500μm、特に、100~300μmの範囲の平均厚さを有する。ヒドロゲルシェルの層厚さは、平均で、好ましくは50~350μm、特に80~150μmである。試験は、液体コアカプセル剤のこのような構造により、害虫はカプセル剤のシェルに刺し通すことができ、それだけで、液体コアカプセル剤の内容物に到達することができる。
【0038】
液体コアカプセル剤の平均直径は、1~10mm、特に2~6mmの範囲が好ましい。マイクロカプセルのこのサイズは、特に有利であることが明らかになった。理由は、このサイズは、半翅類の昆虫あるいはその他の害虫により容易に扱うことができ、個々のカプセルが害虫により固定され、穿孔され得る。さらに、液体コアカプセル剤のこの範囲のサイズは、種子散布機を使って従来の方法により液体コアカプセル剤を作物に適用し得るので、極めて好ましい。
【0039】
本発明による球形状の液体コアカプセル剤は、誘引剤(単一または複数)を放出させ得る大きな表面を提供する。活性物質、すなわち、害虫駆除剤(単一または複数)が、損害を与える環境の影響、特に、乾燥、UV損傷および酸化の可能性から機能的外殻により保護される。さらに、本発明による液体コアカプセル剤は、既存の方法および装置、例えば、種子散布機または肥料混合機を使って、密に、大きな表面積にわたり適用し得る。それらはまた、土壌以外の使用にも好適し、原理的には、多くの種類の害虫に対し使用可能であり、その場合、特定の生物に対し物質を適切に調節する必要がある。
【0040】
本発明による液体コアカプセル剤は、活性物質がカプセル剤中にあるので、作物と直接接触しないという特殊な利点がある。したがって、残留物が食物連鎖中に入り込む危険性が大きく低減される。さらに、一般的に、処理の時間と、収穫の時間との間で待機時間を確保する必要がなく、作物は適用期間の間隙がなく保護できる。害虫が本発明による液体コアカプセル剤により誘い出されて、液体コアカプセル剤の方に、したがって、害虫駆除剤の方に移動するので、従来の害虫駆除剤に比べて、本発明による液体コアカプセル剤およびその中に含まれる活性物質は、極めて高度に節約して使用される。したがって、作物の全体を網羅して処理する必要がない。さらに、本発明による液体コアカプセル剤の特定の標的生物、すなわち、特定の駆除される害虫に対する効果は、特異的誘引剤により限定される。この高度に特異的な害虫駆除方法のために、存在する有益な生物が保護されるので、本発明により処方された害虫駆除剤は、ミツバチに対し有害でなく、それらの効果は持続可能である。さらに、本発明による液体コアカプセル剤はまた、以前の適用で何ら効果を示さなかった害虫駆除剤と組み合わせて使用し得る。この理由は、特に、従来方式で適用されると、植物の表面上に蓄積されるだけであって、そのために、吸引害虫に摂取されなかった食用毒物を、適用可能であるということである。さらに、UV照射に対して非常に敏感である害虫駆除剤(例えば、特殊Bt毒素および顆粒病ウイルス)または通常は急速な分解速度を有する害虫駆除剤を使用し得る。理由は、それらが、本発明による液体コアカプセル剤形態の製剤により分解から保護されるためである。さらに、本発明による液体コアカプセル剤はまた、比較的大きな活性物質分子を含み、そのために、植物に輸送できない害虫駆除剤の製剤として好適する。例えば、本発明による液体コアカプセル剤はまた、マッシュルーム胞子、ウイルス、線虫、酵素、または粘着性物質などの生物学的または生物工学的害虫駆除剤用として使用し得る。したがって、本発明による液体コアカプセル剤は、資源を温存し、活性物質を標的化および節約方式で使用する環境に優しい、作物が活性物質とは直接接触しない、選択肢を提供する。さらに、本発明による液体コアカプセル剤は、好ましい生態毒性プロファイルを有する。
【0041】
本発明はさらに、液体コアカプセル剤を製造する方法を含む。この方法は、最初に、液体コアカプセル剤の水性コア用の混合物を用意することを含む。混合物は、少なくとも1種の害虫駆除剤、および場合により、害虫に対する少なくとも1種の摂食刺激物質を含む。この混合物は、水溶液または水性エマルションであるのが好ましい。さらに、混合物または場合により、複数の混合物が、拡散抑制性機能的外殻用として調製される。この/これらの混合物(単一または複数)は、好ましくは油と組み合わせた機能的外殻用の基材物質、および少なくとも1種の害虫用の誘引剤を含むのが好ましい。2種以上混合物が外殻用として調製されることも可能であり、この場合、1つの混合物が基材物質(単一または複数)および別の混合物が少なくとも1種の誘引剤を含む。本発明による液体コアカプセル剤は、これらの混合物を用いて製造される。
【0042】
製造方法の特に好ましい一実施形態では、カプセル剤の水性コアは、最初に、一次カプセルの形で安定化され、水性コアはヒドロゲルシェルにより囲まれている。このために用意されるのは、ヒドロコロイド溶液であり、これは、ヒドロゲルシェルを形成するために提供される。ヒドロコロイド溶液は、特に、生体高分子組成をベースにする。アルギネートおよび/またはペクチンが生体高分子として特に好ましい。さらに、ヒドロゲルシェルの安定性および水拡散特性に影響を与えるために添加物を付与するのは有益である。特に、シェラックおよび/またはワックスを使用し得、これは、添加物が無い場合より、かなり薄く、より安定であるようなシェルの実現を可能とする。微結晶セルロースは添加物として特に好適する。コアとして、ヒドロゲルシェルにより囲まれた液相を含む一次カプセルが、水性コアおよびヒドロコロイド溶液の混合物を用いて製造される。その後、一次カプセルは、外殻用の混合物(単一または複数)を用いて、1つのまたは複数の層でコートされる。この場合、一次カプセルは噴霧コートされ、好ましくは未乾燥であるかまたは流動床で表層的に乾燥されている。
【0043】
一次カプセルを製造するためのヒドロゲルシェルの実施形態は、生体高分子の架橋、特に架橋アルギネートに基づいている。架橋は、特に、例えば、アルギン酸ナトリウムによる溶液を二価のカルシウムイオン(Ca2+)と接触させることにより達成される。カルシウムは、ナトリウムを置換し、アルギネート分子は直ちに架橋される。カルシウムアルギネートを含むゲルが形成される。ゲルは海綿状構造を有し、約99%までの水または水性液体を含む。この海綿状構造体はヒドロゲルとも呼ばれる。液体コアカプセル剤の内殻は、好ましくは、このようなヒドロゲルを含み、コアそれ自体は、液体のままであり、ヒドロゲル構造を含まない。本発明による方法のシェル形成は、内側から外側に起こり、したがって、コアは液体のまま残る。したがって、例えば、欧州特許第2415356B1号(特許文献3)による既知のマトリックスカプセル剤の製造に比べて、これは逆球状化である。
【0044】
ヒドロゲルシェルの実施形態に起因して、コアの液相は、その後の機能的外殻を実現するためのコーティングを可能とする扱いやすい球形状(一次カプセル)に変換される。害虫駆除剤、および場合により、摂食刺激物質、例えば、害虫を活性物質を摂取するように刺激する栄養液、に加えて、水性コアは、特定の状況中で製造プロセスにとって有利である追加の物質を含む。有益にも、添加物は、害虫駆除剤に対して負の効果を有さない。
【0045】
2つの異なる方法は、一次カプセルの製造に特に有利である。第1の特に好ましい方法では、コア用の混合物が液滴によりヒドロコロイドに添加されるが、この場合、二価イオン、例えば、Ca2+が予め混合物に添加されている。液滴がヒドロコロイド溶液中に侵入するや否や直ちに架橋が起こり、ヒドロゲル構造が一次シェルとして形成される。ヒドロゲルの実施形態は、シェルに限定され、コアは液体のまま残る。別法では、一次カプセルが共押出を使って製造され得、コア用の混合物およびヒドロコロイド溶液が特殊ノズルを用いて、液滴として沈殿浴に添加される。共押出用の特殊ノズルは、内側にコア用混合物を含み、外側にヒドロコロイド溶液による被覆を含む液滴を生成する、いわゆる二成分ノズルである。沈殿浴および有益にもコア用混合物も、二価のイオン、例えば、CaCl2の形のCa2+を含み、この方法では、さらに、架橋がヒドロコロイド溶液中で起こり、ヒドロゲルシェルを液体コアの周りに形成させる。ヒドロゲルシェルの実施形態では、一次カプセルは洗浄され、流し出される。
【0046】
このようにして製造された一次カプセルは、ヒドロゲルシェル中の高含水量のために湿潤表面を有する。次のステップでは、これらの湿潤カプセル剤に、拡散抑制性、機能的外殻が設けられるが、このために、流動床中で噴霧コーティングが行われるのが好ましい。噴霧コーティングは、流動床、例えば、いわゆる流動床噴霧コーター中で行われる。一次カプセルは、コーティングチャンバー中に導入され、空気が吹き込まれ、一次カプセルが気流中である程度まで浮遊する。コーティング材料、すなわち、機能的外殻用の混合物(単一または複数)が一次カプセルの目的のコーティングが達成されるまで噴霧される。コア混合物の元の含水量は、実質的に維持される。
【0047】
原理的には、コーティング材料は、コーティング中、2つの形態で適用され得る。ホットメルトを用いるのかまたは溶液を用いるのかは、使用する材料に依存する。水または有機物質は溶媒として好適する。ホットメルトは、油脂またはワックスを適用するために特に好適する。コーティング物質が好適な溶媒中に溶解できる場合は、溶液を用いたコーティングが好適する。機能的外殻を適用するために、好ましくは、カプセル剤の重量を基準にして、約15~30%の材料が適用される。機能的外殻の層の厚さは、好ましくは50~500μm、特に100~300μmである。ホットメルトでは、一般的に、コーティングは、水溶液を用いたコーティングより、幾分大きい厚さで沈着し得る。外殻用の混合物は、基材物質、好ましくは混合物中の1~25%のパーセント比率の、特にパラフィンおよび油成分をベースにするのが好ましい。さらに、誘引剤(単一または複数)は、例えば、0.0001~1%の比率で混合物中に含まれる。適切な誘引剤の制御放出により害虫を誘引する機能に加えて、機能的外殻は主に蒸発に対する保護する機能も有する。外殻は、したがって、一次カプセルを外側に対ししっかりと遮断しているのが好ましい。これに関して、外殻に対するワックスおよび/または油脂の使用は、これが極めて効果的な蒸発からの保護を達成するので、特に有利である。
【0048】
特定のプロセス条件、特に、噴霧コーティングに対するプロセス条件を調節する場合、コーティング物質の接着性、浸透性、および機械的性質が、例えば、噴霧速度、噴霧圧、プロセス空気量、プロセス気温、および噴霧温度などの因子が適切に調節されるという観点から、有用に考慮される。
【0049】
個別のカプセル剤要素(コア、ヒドロゲルシェル、外殻)に対する異なる物質が、機能および製造プロセスに影響を与えるので、製造条件は、特定の使用物質に対し有用に適応され、調節される。このようにして、好ましくない化学的相互作用を防ぐことが可能である。
【0050】
液体コアカプセル剤用の製造プロセスの他の特徴、例えば、製造プロセスの過程で添加される、使用する誘引剤および使用する害虫駆除剤に関しては、上記記述で言及されている。
【0051】
本発明による液体コアカプセル剤および本発明による製造方法の1つの特定の利点は、液体コアカプセル剤が大規模生産、特に、工業生産に好適するということである。したがって、害虫駆除のための、例えば、非常に頑強な半翅類の昆虫(リグス属種)を駆除するための製剤が提供され、この製剤を用いて、植物生産における害虫に起因する経済的損害を防ぐ、または少なくとも大きく低減させ得る。本発明による液体コアカプセル剤をベースにした製剤は、本発明による液体コアカプセル剤は比較的頑強であるために、利用可能な技術を用いて大きな表面積に適用し得る。
【0052】
本発明は、記載の製造方法を使って、特に製造方法の好ましい実施形態を使って、製造し得る液体コアカプセル剤をさらに含む。特に、本発明は、液体コアカプセル剤の水性コア用の混合物を液滴により、液体コアカプセル剤のヒドロゲルシェル形成用混合物に加えることにより、または液体コアカプセル剤の水性コア用混合物およびヒドロゲルシェル用混合物を一次カプセルを実現するために沈殿浴中で共押出し、その後流動床中で一次カプセルに噴霧コーティングすることにより、製造され得る液体コアカプセル剤を含む。コーティングまたは機能的外殻は、誘引剤の放出、コア液体の保護、およびヒドロゲルカプセル剤の安定化に関与する。
【0053】
本発明は、害虫駆除用の製剤または害虫駆除用の製剤中での本発明による液体コアカプセル剤の使用をさらに含み、製剤は記載した液体コアカプセル剤を含む。液体コアカプセル剤は、作物に適用される、流し込み可能な顆粒の形で提供され得る。液体コアカプセル剤または顆粒は、例えば、従来の種子散布機を使って、散布可能である。さらに、製剤は、小さいバッグに充填された複数分割部分の形態で供給し得、このバッグを作物に添加してよい。さらに、製剤は、本発明による液体コアカプセル剤を接着、または何らかの方法で取り付けた、例えば、小さいカードなどの形態で供給し得る。本発明はまた、害虫駆除の方法を含み、該方法では、害虫駆除用の製剤には本発明による液体コアカプセル剤が提供され、該製剤は作物に適用される。
【0054】
害虫駆除用に設定された記載の液体コアカプセル剤に関係なく、本発明は、少なくとも1種の活性物質の制御放出または調節放出用の担体をさらに含む。担体は、油脂および/またはワックス、特にパラフィン(例えば、軟パラフィン)をベースにした基材物質により形成される。さらに、好ましくは、その層中の追加の成分として、油、特に植物油が添加される。少なくとも1種の活性物質がこの層に添加または組み込まれる。本明細書では、用語の「活性物質」は、特に、上記記載による誘引剤、すなわち、昆虫またはその他の害虫を誘引する物質を意味する。さらに、「活性物質」はまた、昆虫またはその他の害虫に対し忌避作用を有する忌避剤を意味してもよい。したがって、これは通常、動物により登録され、通常、行動的反応のきっかけとなり得る匂いを意味する。さらに、これは、害虫駆除とは関係なく使用し得るその他の物質、例えば、薬学的にまたは美容的に活性な物質などを意味してもよい。本発明の担体は、例えば、ヒトにとって快適な好適する匂い(活性物質)を有する空気清浄スプレー用としても使用され得る。
【0055】
層中の油の比率は、1~25%の範囲であるのが好ましい。さらに、この層は、担体の反対側に面し、活性物質を含まない外側領域を有するのが好ましいであろう。発明者らの実験で示されたように、基材物質と特定の割合の油との組み合わせは、得るべき活性物質の遅延(減速)放出を可能とする。層の成分を調節するかまたは変えることにより、特定の放出を修正し、異なる要件に適合させることが可能である。特に、油の割合の増加は、活性物質の放出をさらに遅くすることができる。活性物質の放出は、層厚みを増やすことによっても遅くし得る。さらに、活性物質を含まない別の外層を適用することにより、または活性物質濃度を低減したまたは活性物質を含まない別の外側領域を適用することにより、活性物質の放出を遅くし、したがって、活性物質放出期間を延長し得る。本発明のこの態様の追加の背景および有利な実施形態に関しては、上記記載で言及されており、上記液体コアカプセル剤の外殻は、請求された担体の1つの層として理解されるべきである。担体それ自体は、粒子担体の形態、例えば、プラスチックまたはポリマーまたは発泡スチロールビーズまたはその他の球状もしくは粒子状材料であってよい。粒子状担体は、粒子が、例えば、流動床法により層としてコーティングするための凝結核を提供するという利点がある。さらに、粒子形状は、担体の後での使用に対し有利な場合がある。例えば、適切な活性物質を有するこのような散布可能な担体はまた、植物保護に使用し得る。しかし、他の担体形状も可能であり、例えば、板形状または小カード形状(cardlet-shaped)担体も、用途に応じて同様に好ましい場合がある。放出される活性物質(単一または複数)を有する本発明による担体は、原理的には、好ましくは長期間にわたり、例えば、数日または数週間にわたり活性物質の標的化および特に遅延放出を必要とする全ての分野で使用し得る。本発明の担体の特定の利点は、層の成分およびそれらの相互比率の適切な選択により、放出速度を意図的に特定の用途に対し調節し得る点である。
【0056】
本発明の追加の特徴および利点は、図面と併せて、次の代表的実施形態の記述から得られる。個々の特徴は、単独でまたは相互に組み合わせて実現してもよい。図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明によるヒドロゲルシェルを有する液体コアカプセル剤の構造の略図である。
図2図2は、本発明によるヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤の構造の略図である。
図3図3は、活性物質を含む層における異なる油含量を有するモデルシステムでの活性物質(ヘキシルブチレート)の放出を示す。
図4図4は、活性物質を含む層における異なる油含量を有するモデルシステムでの活性物質((E)-β-カリオフィレン)の放出を示す。
図5図5は、活性物質を含む層における異なる油含量を有するモデルシステムでの活性物質((Z)-3-ヘキセン-1-オール)の放出を示す。
図6図6は、異なるタイプの液体コアカプセル剤における活性物質放出の時間的経過を示す。
図7図7は、異なる活性物質(誘引剤)による半翅類の昆虫を誘引する能力に換算した嗅覚測定器の測定結果を示す(0.01μg/μL)。
図8図8は、電気生理学的検査を用いた異なる活性物質の半翅類の昆虫に対する効果を示す(0.1μgの活性物質)。
図9図9は、電気生理学的検査を用いた異なる活性物質の半翅類の昆虫に対する効果を示す(10μgの活性物質)。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1に示す液体コアカプセル剤10は、液相を含むコア11により形成される。水性コア11は、害虫駆除剤または場合により、複数の害虫駆除剤、および好ましくは摂食刺激物質、特に駆除される害虫用の食物組成物を含む。このコア11は、ヒドロゲルシェル12により囲まれている。ヒドロゲルシェル12は、好ましくは生体高分子、特に、アルギネートおよび/またはペクチンにより形成され、架橋により水性コア11の周りにシェルを形成する。水性コア11は、ヒドロゲルシェル12と一緒に、いわゆる一次カプセルを形成する。この一次カプセルは、機能的外殻13により囲まれている。外殻13は、誘引剤(単一または複数)および場合により、1種または複数の害虫用穿孔刺激薬を含む。外殻13は、駆除される害虫の口器により、特に、噛んで吸引するおよび/または刺し通して吸引する口器により穿孔可能であるように、実施される。外殻13に組み込まれた誘引剤(単一または複数)により、害虫は誘引され、それらの口器で外殻13を穿孔し、コア11の少なくとも一部の水性内容物を摂取するように促される。これにより、コア11中に含まれる害虫駆除剤の作用に応じて、害虫に対する損傷、その固定化、および/または死亡を引き起こす。
【0059】
本発明による液体コアカプセル剤10の製造は、最初に、水性コア11がヒドロゲルシェル12により囲まれている一次カプセルが製造される。その後、湿潤一次カプセルは流動床中でコートされ、乾燥した、機能的外殻13を形成する。
【0060】
ヒドロゲルシェル12に対する添加物の添加により、一次カプセルのシェルを通る水拡散が低減される。これは、一次カプセル間の接着力を大きく低減する場合があり、それにより、それらは噴霧コーティング用の気流中で相互から離れて移動(流動化)し得、また、コア混合物中の含水量は基本的に高いままで残る。これは流動床での噴霧コーティングにとって極めて有利である。
【0061】
ヒドロゲルシェル12用のヒドロコロイド溶液は、例えば、アルギン酸ナトリウムをベースに製造される。このために、例えば、約0.5~2%のアルギネート(w/v)を、長期間撹拌することにより、蒸留水中に溶解し得る。シェラックを添加物として使用し得、その場合、例えば、25%のシェラック水溶液がアルギネート溶液に添加される(例えば、20部のシェラック溶液+80部のアルギネート溶液)。
【0062】
予備実験は、ヒドロゲルシェルへの添加物を加えることによりコアからの質量の減少が効果的に低減され得ることを示した。次の表は、種々の添加物のそれらの最適濃度を添加し、240分後のアルギネートモデル円柱(d=13mm、h=13mm)に対する質量の絶対減少および相対的減少を、添加物を含まない標準的供試体の質量減少と比較してまとめている(MCC-微結晶セルロース、EC-エチルセルロース)。
【0063】
【表1】
【0064】
これは、例えば、シェラックの添加により、質量減少を約17%だけ減らし得ることを示す。
【0065】
場合により、提供されたヒドロゲルシェルは、コアの液相用として十分な空間が提供されるように、一次カプセルの直径の約10~15%を構成するのが好ましい。1つの代表的平均合計直径が約4mmの液体コアカプセル剤では、ヒドロゲルシェルの厚さは、例えば、約250μmであってよい。これは、一次カプセルに対し、流動床中の噴霧コーティングの力に耐える十分な強度を付与する。好適なヒドロゲルの選択ならびに物質濃度およびプロセスパラメータの適応により、一次カプセル中で可能な限り低い水拡散速度を達成し、流動床中で最適コーティングが得られる。ヒドロゲルシェルによる水拡散の低減は、特に、加えた添加物を用いて達成される。
【0066】
一次カプセルは、液滴によりヒドロコロイド溶液に水性コア用混合物を加えるために使用される特殊ノズルによって製造され得る。液滴によるコア用の混合物のヒドロコロイド溶液への添加は、撹拌している間に成し遂げられる。温度、圧力、混合比率、pH、撹拌速度、粘度、ポンプ出力、およびプロセス時間は、使用材料に応じて、調節および最適化され得る。例えば、乳酸カルシウムまたは塩化カルシウムなどの二価イオンを、コア用混合物に予め添加してよい。あるいは、例えば、塩化マグネシウムを使用し得る。このプロセスの間に実現された一次カプセルは、水性コアおよび架橋生体高分子(アルギネート)から作製された取り囲むヒドロゲルシェルを含む。製造中、アルギネートシェルは、コア用混合物の液滴上にある程度まで堆積する。1回または複数の洗浄ステップ後、一次カプセルを乾燥させ、流動床中で機能的外殻を製造するために、流動床コーターで噴霧コートされる。誘引剤(単一または複数)は、これが行われている間に外殻中に組み込まれる。したがって、外殻の強度は、例えば、半翅類の昆虫により穿孔され得るように、作製される。他方では、外殻は十分に安定であり、本発明による液体コアカプセル剤の産出の間の機械的ストレスに耐えることができ、さらに、液体コアカプセル剤の内容物を有害な環境側面、例えば、乾燥およびUV照射から保護する。したがって、本発明による液体コアカプセル剤は、誘引剤を長期間にわたり環境中に放出し、害虫を誘引することから、それらの効果を長期間にわたり延長し得る。液体コアカプセル剤の内部の害虫駆除剤はまた、長期間にわたり保護され、安定であり、したがって、その効果は延長される。
【0067】
図2はまた、液体コア21および拡散抑制性機能的外殻23を有する、本発明による液体コアカプセル剤20を示す。この実施形態では、この液体コアカプセル剤用の製造プロセスは、一次カプセルの形の液体コアを安定化する中間ステップを使用しないので、ヒドロゲルシェルは設けられていない。例えば、原理的には、いわゆるinducap(登録商標)-CORE技術をこのような製造方法のために使用し得、この方法では、コアおよび機能的外殻用の液体出発混合物は、同心の二成分ノズルを介して、液圧パルスにより個々の液体体積に分配され、固化領域へ添加され、コア液体の液滴は、固化シェル液体により囲まれる。例えば、外殻の材料の融点未満の温度チャンバーが固化領域として好適する。
【0068】
液体コアカプセル剤の機能的外殻13、23は、実質的に乾燥しており、また、拡散抑制性であり、そのために、本発明による液体コアカプセル剤10、20は、原理的には流し込み可能で、したがって、使用中の扱いが簡単である。外殻13、23は、蒸発に対する保護を確実にし、それにより、液体コアカプセル剤10、20は、作物に適用可能であり、したがって、それらの効果は、長期間にわたり延長される。
【0069】
本発明による液体コアカプセル剤は、種々の害虫駆除剤、特に、植物に損害を与える半翅類の昆虫に対し保護する生物学的および天然の害虫駆除剤と組み合わせて使用し得る。適切な害虫駆除剤の選択および好適な誘引剤の選択により、本発明による液体コアカプセル剤は、特定のタイプの駆除される害虫に適応可能であり、この場合、液体コアカプセル剤の製造方法は、特定の物質に有用に適応される。
【0070】
害虫駆除剤は、害虫によるそれ以上の損害が生じないように、出来る限り急速に全滅、または少なくとも弱体化させる必要がある。生物学的活性物質群の内で、特にBt分離株およびニームの活性物質が、半翅類の昆虫を駆除するのに好適する。両方の物質は、広域スペクトルの作用を有し、迅速な効果を示し、また、有機農法を可能とする。駆除される害虫用の好適な害虫駆除剤では、害虫による活性物質の直接摂取後、害虫に対する損傷率(死亡率および/または食物摂取の中断)は、好ましくは70%超に達するべきであり、効果は2,3時間後に開始されるべきである。特に、液体コアカプセル剤と組み合わせたニーム活性物質は、半翅類の昆虫の駆除に特に効果的であることが明らかになった。
【0071】
嗅覚測定器試験における害虫の判定率を、植物(害虫用の宿主植物)と比較した、本発明により使われる誘引剤の誘引性の評価に使用し得る。判定率は、好ましくは、用いられる誘引剤に対し、明確に50%超であるべきである。駆除される害虫への適応に好適する誘引剤を特定するために、第1のステップでは、天然の匂いを、例えば、好適な溶媒を用いて抽出することにより濃縮してよい。その後、濃縮した匂いの活性成分がより正確に特定され、例えば、濃縮合成物質として、それらの効果が増大し得る。好適な誘引剤を特定するために、異なる匂い源を検討してもよい。例えば、完全な植物、植物部分、抽出物、樹液、または溶液を嗅覚測定器試験で使用、検討し、効果的な物質を特定し得る。効果的物質は、さらに、ガスクロマトグラフにより分析して、さらに検討し得る。特定された誘引剤を、好ましくは、濃縮して、実質的に純粋な形態の、添加物を含有または非含有の状態で、外殻中に組み込み、液体コアカプセル剤の誘引効果を高め得る。
【0072】
誘引剤は、例えば、下記のステップで特定および取得される:
・好適な誘引剤源、例えば、害虫用の既知の宿主植物または好ましくは果実の選択;
・抽出物を生成することによる植物の匂い(匂い混合物)の取得;
・嗅覚測定器試験による適合性の調査;
・匂い混合物中の活性成分を特定するためのガスクロマトグラフィーによる分離と組み合わせた触角電図(下記参照);
・決定した活性物質(単一または複数)基づく合成または部分的合成誘引剤混合物の製造。
【0073】
好適な誘引剤は、特に、ワックスおよび/または油脂と混合される非極性揮発性物質であり、液体コアカプセル剤の機能的外層としての共通層に適用し得る。極性物質が誘引剤として使用される場合、それらは、水性コアからの水の蒸発の増加が起こらないように、追加の層の形で適用されるのが好ましい。
【0074】
緑の香り(GLV)および/または揮発性有機化合物(VOC)が特に誘引剤として好適する。通常、GLVは、C6物質(Z)-3-ヘキセナール由来であってよい。VOCは特に、次のクラスに分類され得る親油性物質である:テルペノイド、脂肪酸代謝産物の誘導体、フェニルプロパン(ベンゼン誘導体を含む)、窒素含有化合物、および硫黄含有化合物。(Z)-3-ヘキセニルアセテートおよび/または(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよび/または(E)-β-カリオフィレンおよび/または1-ヘキサノールおよび/またはノナナールおよび/またはヘキシルブチレートおよび/または(E)-2-ヘキセニルブチレートおよび/またはこれらの混合物が誘引剤として用いられる。例えば、均質化(裏ごしした)ジャガイモもまた、誘引剤として使用し得る。カリオフィレン、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよびヘキシルブチレートの混合物が特に好ましい。半翅類の昆虫の誘引の観点から、これらの物質の特に有利な効果が本発明者らにより実証された。
【0075】
本発明による液体コアカプセル剤の組成は、誘引剤が14日以上の期間にわたり放出されるように調節されるのが好ましく、この液体コアカプセル剤は、害虫に対し、保護される植物より強い誘引作用を有する。
【0076】
外殻の強度は、害虫が穿孔することができる十分な柔らかさであるように調節されるのが好ましい。同時に、外殻の強度は、機械への適用に対し、適切な安定性を示すように調節される。外殻の強度は、例えば、異なる融点を有するワックスの使用により、または異なる長鎖脂肪酸の使用により、変え得る。脆性または硬質外殻は、グリセリンの添加により軟化させてよい。機能的外殻の組成は、誘引剤(単一または複数)に対し十分な浸透性があるように、さらに有用に調節される。
【0077】
次の代表的実施形態の記述は、液体コアカプセル剤の製造のための、特に好ましい選択肢を示す。
【0078】
A.液体コアカプセル剤の製造方法
使用されるノズルのタイプおよび関連技術機能(調節、収率、プロセスの安定性)が基本的に相互に異なる2つの方法を本発明の液体コアカプセル剤の製造に使用した。差異は、ヒドロゲルシェルを有する液体コアカプセル剤の製造と、ヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤の製造との間で生じる。ヒドロゲルシェルは、製造プロセス中に液体カプセルコアを安定化して一次カプセルを形成するための1種の補助的構造である。その機能は、外殻が方法の第2のステップで適用されると直ぐに現れる。一次カプセルは中間体生成物であり、特殊な一成分ノズルまたは二成分ノズル(共押出ノズル)により製造し得る。ヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤は、特殊な二成分ノズルを使って製造される。形状、安定化、およびコーティングが、ヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤製造中の1つのプロセスにおいて組み合わされる。結果として、コアは外殻により直接に囲まれる。
【0079】
A.1 ヒドロゲルシェルを有する液体コアカプセル剤
栄養液の含水量を基準にして6%(w/w)の乳酸カルシウムが従来の昆虫の栄養素混合物に加えられる。好適な栄養素混合物は、例えば、下記を含む:68%蒸留水、5%乾燥酵母、6%酵母エキス、10%粉末状卵黄、5%糖、5%蜂蜜、および1%カゼイン、合計含水量73%。
【0080】
植物保護剤NeemAzal(登録商標)-T/Sを約1:200の比率で混合物に加える。これらの化合物は、製造される液体コアカプセル剤のコア溶液を構成する。
【0081】
0.1%のアルギン酸ナトリウム溶液を架橋性ヒドロコロイド溶液として調製する。所望により、生成される一次カプセルのシェル特性を改善するために、添加物もヒドロコロイド溶液に添加される。ヒドロコロイド溶液と混合される1:6の比率の20%水性シェラック溶液が1つのバッチにおける添加物として使用される。別のバッチでは、0.9%(w/w)の蜜蝋がヒドロコロイド溶液中で使用される。蜜蝋を含む混合物に対しては、約80℃のホットメルトを生成し、20,000~25,000rpmで少なくとも3分間、ヒドロコロイド溶液中に分散させるのが好都合である。別のバッチでは、0.3%のMCCがアルギン酸ナトリウム溶液中に分散される。
【0082】
A1.1 液滴形成による一次カプセルの製造
コア溶液は、撹拌している間に、ノズルを用いた液滴によりヒドロコロイド溶液へ添加される。2,3分後、一次カプセル形態がヒドロコロイド溶液からの通篩により分離され、水で洗浄される。ノズルは、コア溶液が液滴として出てくるチャネルを含む。チャネルは、空気が通過する第2のチャネルにより同心円状に取り囲まれている。液滴のサイズは、調整可能であり、出口開口部からの離脱は、空気量セット(分離空気)を用いて、かなり加速される。中心チャネルは、0.5~1.5mmの内径を有し、周囲のチャネルは、1.5~3mmの直径を有する。この基本構造は、比較的技術的に単純であるため、大部分は所望通り再現可能で、生産能率を高められる。したがって、例えば、128個の二重チャネルを1つのノズル頭部に組み合わせ得る。コア溶液は、ポンプまたは圧力増大により供給部容器から送出される。供給量は、ノズルチャネル当たり0.5~2g/分であるのが好ましい。
【0083】
あるいは、一次カプセルは、2つの液流が同時に送られる二成分ノズルによっても製造され得る(共押出)。また、比較的小さく(0.5~1mm)、特に均一な、一次カプセルを共押出ノズルを用いて製造可能である。一成分ノズルに比べて、これらのノズルは産出量が少なく、より多くの技術的調節を要し、より大きなユニットを形成するために組み合わせるのがそれほど容易ではない。前述の一成分ノズルに加えて、共押出ノズルは別のチャネルを有する。栄養液が内側チャネルに送られ、ヒドロコロイド溶液が周りのチャネルに送られる。出口開口部で、ヒドロコロイド溶液からできる被覆物が球状のコア液滴の周りに沈着し、直ちに架橋反応(ヒドロゲルシェルの形成)が内側から外側に開始される。前述で一成分ノズルに対し既に記載したように、出口開口部からの離脱は、追加の分離空気チャネルにより加速され得る。材料を連続的には送らないが、代わりにパルスを使って、出ていくヒドロコロイド溶液を通してコア溶液を送る二成分ノズルも使用し得る。液滴形成および放出は、インクジェット印刷機の技術と同様に行い得る。結果はいずれの場合にも同じであり、第2の液体を通過時に、コア液滴はこの第2の液体により囲まれる。最終的に、自由落下状態で形成されている一次カプセルは、架橋溶液の浴に液滴により加えられる。この浴は、ヒドロゲルシェルを完全に形成し、安定化させるために、例えば、1%の塩化カルシウムまたは6%の乳酸カルシウムを含む。その後、一次カプセルは、架橋溶液から分離され(例えば、通篩法による分離)、水で洗浄される。
【0084】
A.1.2 機能的外殻の製造
外殻用のコーティング混合物は、基本的に3種の成分:ワックス状基材物質、例えば、軟パラフィン、穿孔刺激薬および活性物質の放出調節物質としての菜種油、ならびに誘引剤、を含む。使われる誘引剤には、最も広く使われている成分の緑の香り(GLV)および植物由来の揮発性有機化合物(VOC)の組成を含む。誘引剤の好適な混合物としては、例えば、ヘキセノール、(Z)-3-ヘキセニルアセテート、(Z)-3-ヘキセナール、(E、E)-α-ファルネセン、β-ブルボネン異性体(+)、(Z)-3-ヘキセニルブタノエート、β-カリオフィレン異性体(-)、および/または(E)-4,8-ジメチル-1,3,7-ノナトリエンを挙げ得る。純粋な形態のこれらの物質は、化学企業(例えば、SigmaAldrich Co.LLC)から入手し、必要に応じ正確に混合し得る。さらに、特殊な抽出方法(例えば、ヘッドスペースサンプリングまたは固相マイクロ抽出(SPME))により葉(例えば、キュウリ、アルファルファ、トチノキ、タバコ)から得られる匂い混合物を使用してもよい。1つの特定の好ましい誘引剤混合物は、1:1:1の比率の(Z)-3-ヘキセン-1-オール、ヘキシルブチレートおよび(E)-β-カリオフィレンから製造される。基材物質(約90%)、穿孔刺激薬(約9.8%)および誘引剤(約0.2%)が混合される。最初に、誘引剤と穿孔刺激薬との予備的混合物が製造され、次に、この混合物を基材物質融解物に攪拌添加する。融解物の温度は、基材物質の融点より少なくとも10~30℃高い。分散装置(約20,000rpm)を使って、極めて均質で、微細分布の予備的混合物が得られる。
【0085】
一次カプセルの製造およびコーティング混合物の調製後、噴霧コーティングシステムを用いて外殻が一次カプセルに適用される(コーティングプロセス)。液滴により生成された約300~400gの一次カプセルが、約1リットルの生産容器中でコートされ得る。生産量は、生産システムに応じて大きく増大させ得る。必要とされる一次カプセルの流動化は、50~70m/時間のプロセス空気量で達成される。流動化の直後に、融解物の形態のコーティング混合物は、生産容器中に噴霧される。必要な機能は、次のパラメータを用いて達成され得る:基材物質の融点より30~50℃高い融解物の温度、および4~7g/分の噴霧速度。約15%~35%(カプセル剤重量を基準にして)、特に15%~30%、および好ましくは20%~30%のコーティング混合物が一次カプセルに適用された場合に、コーティングプロセスを終了する。この製造方法を用いて、液体コアカプセル剤の望ましい特性を、特に外殻の層厚さおよび境界面形成の鮮明度に関し、正確に、再現性よく調節し得る。
【0086】
穿孔刺激薬(菜種油)およびそれに混合されている誘引剤の基材物質に比べた低粘度に起因して、これらの物質は、外殻の基材物質からゆっくり流出し、それらは害虫に対して長期にわたる効果を発揮できる。この放出プロセスの速度は、温度と共に増加する。予備試験は、例えば、重量100gで、元々10%の菜種油を含むワックスブロックから、25℃で10日以内に、約15%の菜種油が流出したことを示した。この効果は、穿孔刺激薬および誘引剤の連続放出に繋がり、液体コアカプセル剤の必要とされる一定の距離を隔てた作用および長期効果を提供する。
【0087】
A.2 ヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤
コア溶液用の内側のチャネルおよびコーティング混合物の融解物用の同心の周囲チャネルを有する共押出ノズル(二成分ノズル)が、ヒドロゲルシェルを含まない液体コアカプセル剤の製造に使用される。コア液滴が通過する場合、コア液滴はコーティング混合物により囲まれる。コア液体の温度は、コーティング混合物の融点より約10℃低く、それにより、融解物は内側から外側に急速に硬化し、液滴を安定化する。カプセルは、液滴により冷却した水浴(約10~20℃)に加えられ、同時に、撹拌により硬化が完成される。
【0088】
B.マキバカスミカメ(European tarnished plant bug(Lygus rugulipennis))の駆除
昆虫マキバカスミカメは、ヨーロッパ全体を通して極めて一般的であり、50科を越える植物由来の約400種類の宿主植物を攻撃する。例えば、イチゴ、キュウリ、ジャガイモ、キャベツ、アルファルファ、ニンジン、タバコおよび種々の観賞植物、例えば、キクおよびフクシアに関し、経済的な損害を被っている(HOLOPAINEN,J.K.& VARIS,A.-L.1991:Host Plants of the European tarnished plant bug Lygus rugulipennis.J.Appl.Ent.111(1991).484-498(非特許文献4);DRAGLAND,S.1991:Lygus rugulipennis,a harmful insect to many cultivated plants-II.Damage in cabbage fields and control measures.Haret entege.II.Skadar i kalfelt.67-76(非特許文献5);BECH,R.1967:Zur Bedeutung der Lygus-Arten als Pflanzenschadlinge.Biol.Zentrbl.Heft 2.205-232(非特許文献6))。
【0089】
マキバカスミカメおよび本発明による液体コアカプセル剤を用いて、実験を実施した。この実験では、0.5%のNeemAzal(登録商標)T/S(生物学的活性物質:アザジラクチン0.1%)を有する水性の栄養液をカプセル剤のコア中に存在させた。化学的活性物質アセタミプリド(0.01%)を用いて、別の実験を実施した。それらを液体コアカプセル剤と接触させた場合、半翅類の昆虫はそれらの口吻を使って液体コアカプセル剤の外殻を穿孔し、少なくとも一部のコア溶液を摂取した。これは、特にペトリ皿(d=35mm)中で証明された。そのペトリ皿のそれぞれに、1匹の完全に成長した昆虫(成虫)または終齢幼虫(L4/L5)を、液体コアカプセル剤と一緒に加え、半翅類の昆虫の挙動を5分間にわたり観察した。実験の開始前に、動物を6時間の空腹期に供した。口吻が本発明による液体コアカプセル剤の外殻と接触した全ての動物は、前記外殻を穿孔し、コア液体を摂取した。カプセル剤中の口吻の長い滞留時間によりこの結論が可能となる。成虫の昆虫を用いた場合、この時間は平均160秒であり、幼虫では150秒であった。成虫の昆虫の場合、この前に約30秒の平均テスト時間(口吻でカプセル剤を感ずる時間)があった。他方、幼虫では、口吻は、最初の接触のほぼ直後に穿孔のために使用された。観察した全ての動物の内の28%が観察時間中にカプセル剤のテストを行わなかったが、むしろ長い静止期があったかまたは単純にそのカプセル剤を回避した。
【0090】
半翅類の昆虫は、活性物質アザジラクチンを含むコア液体を摂食後約1日で、ほぼ全て活動を停止し、平均5日後に死亡した。化学的活性物質アセタミプリドは、摂取後数秒で効果が生じた。動物は、激しい震えが観察され、数分後に死亡した。
【0091】
C.液体コアカプセル剤の作物への適用
嗅覚測定器選択実験を用いて、処理される栽培面積における好適な平均カプセル剤間隔は、約5cmであることを決定し、それにより、作物への適用を、約400個のカプセル剤/mであると計算した。平均カプセル剤重量が15.1mgであることを考慮すると、必要な量は約61kg/haである。本発明による液体コアカプセル剤を大きな表面積にわたり適用する選択肢を、APV-Technische Produkte GmbH製の空気圧播種機、タイプPS 250を用いて試験した。この機械を用いると、必要な61kgを、平均移動速度3km/時間、および幅7mで、1ha上に均一に、約30分で散布することができた。単位時間当たりの散布量は、播種シャフトスピードを使って調節される。前述の例では、必要な設定値は、75%であった。機械的ストレスのない本発明による液体コアカプセル剤の、播種機を通して排出してストレスをかけた液体コアカプセル剤に対する比較により、2%未満の損傷率が得られた。蒸発による質量損失を損傷の尺度として使用した。したがって、外殻は機械による処理に耐える十分な強度を有していた。
【0092】
均一分布に加えて、カプセル剤を保護作物に対し点状に散布してもよい。液体コアカプセル剤が接着された、堅い段ボールで作製された小さいキャリアーカード(約30x80mmサイズ)がこの目的に好適する。このカードは、好適なフックを備え、簡単で迅速な各植物への取り付けを可能とするのが好ましい。この散布形式は、特に、保護作物、例えば、温室またはビニールハウス中の作物用として好適する。その中の作物面積は、多くの場合、大きな機械がアクセスできず、個々の植物は不均一に分布しているが、むしろ、特殊なテーブルの上に配置されており、表面散布が困難である。
【0093】
D.外殻の組成の関数としての誘引剤の放出モデル
匂い混合物(活性物質)
・1:1:1の比率の3種の成分
・緑の香りおよび性フェロモン
・個々の成分中の揮発性の変化
【0094】
変種
ペトリ皿中のシェル混合物のモデルシステム、層厚さ約0.5mm
・シェル混合物1組成:1.2gのパラフィン、10%の植物油、30μgの匂い混合物
・シェル混合物2組成:1.2gのパラフィン、1%の植物油、30μgの匂い混合物
・シェル混合物3組成:1.2gのパラフィン、10%の植物油、3mgの匂い混合物
・シェル混合物4組成:1.2gのパラフィン、1%の植物油、3mgの匂い混合物
【0095】
実施
モデルシステムの作製、パラフィン融解物を80℃で調製。1%または10%植物油を撹拌しながら融解物に混合した。その後、3種の匂い(混合物)を(1.2gの混合物当たり30μgおよび3mgの)2種の異なる量で、マイクロリットル注入により加えた。約0.5~1mmの厚さで、混合物をペトリ皿に注ぎ込んだ。
【0096】
供試体の作製の直後、匂いを特殊な装置を用いて収集した(ヘッドスペースサンプリング)。適切な時間の後、収集フィルターを取り除き、分析まで凍結した。ガスクロマトグラフィー連結質量分析(=GC-MS)により匂いを化学分析した。
【0097】
結果
モデルシステムでは、匂いは72時間の時間にわたり、比較的一定に(直線的に)放出されることが示された。実験は72時間後終了した。モデルシステム中に含まれる一部の匂いのみがこの期間中に放出された。線形放出が、ほぼ一定で続くであろうと仮定すると、全ての匂いが消費し尽くされるまでに約100日を要するであろう。
【0098】
図3図4および図5は、それぞれの匂いについて個別に、時間(72時間まで)と共に放出される匂いの量をグラフにより示したものである。時間当たりほぼ線形放出であることが明らかである。匂い混合物(3種全ての成分)のng/時間単位での合計量は、例えば、1%油および3mgの匂い混合物の合計量の場合、(250+325+80=655)655ng/時間となる。すなわち、一定量放出では、カプセル剤は最大190日間匂いを放出することになる(3000μg/0.655μg=191日)。
【0099】
さらに、1%の油を含むバッチに比べて、10%の油を含むバッチでは、より少ない匂い放出がほぼ連続的であることが明らかであった。これは、油量が匂いの放出に影響することを示している。油含量が増えると、放出の低減に繋がる。この効果は、2つの匂いの濃度において明らかである。したがって、結果として、誘引剤放出は、油分の増加により低減または遅延され得る。
【0100】
E.2種の製造変種の液体コアカプセル剤における活性物質放出の比較
液体コアカプセル剤
・製造変種、タイプ1:第1の噴霧段階(内壁領域)10%パラフィン(カプセル剤重量を基準にして)、第2の噴霧段階(外壁領域)10%シェル混合物4(セクションD参照)。
・製造変種、タイプ2:第1の噴霧段階(内壁領域)15%シェル混合物4、第2の噴霧段階(外壁領域)15%パラフィン。
【0101】
セクションAで記載のようにして液体コアカプセル剤を製造した。原理的には、セクションDで記載のモデルシステムにおけるように、ガスクロマトグラフィー連結質量分析を用いて、匂い収集および分析の観点から実験を実施した。次の表および図6は、実験結果をまとめたものである。
【0102】
【表2】
【0103】
製造変種1型の液体コアカプセル剤で、高放出が観察された。ただの1週間後には、カプセル剤はもはや匂いをほとんど放出しなくなったので、ほぼ全ての匂いが放出されてしまった。他方では、添加した匂いの9.3%を収集するのが可能なだけであった。この差異は、誘引剤の高揮発性が原因で避けられない、製造プロセス中の消失として説明し得る。
【0104】
製造変種2型由来の液体コアカプセル剤で、放出の低下が達成された。最初の1時間の幾分高い放出後、速度は、1週間の測定期間中、ほとんど一定のままであった。絶対匂い放出は、約50%であった。かなりの量の匂いが1週間後も放出された。したがって、この時点で匂い供給部はまだ枯渇しておらず、製造中に匂いの極めて大きな損失を避けることが可能であった。図6は、両タイプのカプセル剤の活性物質放出の経時変化を、個々の匂いについてそれぞれ別々に示す。図は、時間当たりのそれぞれの放出量を示し、これらは、収集時間1時間、3時間、24時間および168時間に収集した量から計算された。図6の放出曲線の傾向を考慮すると、この変種では、少なくとも2週間の放出期間がある。
【0105】
2種の製造変種の比較から、原理的には、例えば、最終的な層および10%シェル混合物として20%の純粋なパラフィンを適用して、あるいは25%パラフィンの外側層および5%パラフィンの内側層を使って、この時間を大きく延長し得ることが明らかである。
【0106】
結果は、カプセル剤製造変種に応じて、匂いの排出を遅らせるまたは加速し得ることを示している。匂い混合物が最後の層として噴霧されるタイプ1は、匂いの放出の増加を示す。対照的に、タイプ2では、匂い混合物は、純粋なパラフィンの層に囲まれる。さらに、層厚さは、10重量%適用から15重量%適用に増加している。したがって、プロセス管理は、カプセル剤構造および匂いの放出に対し直接的効果を有する。
【0107】
まとめ
匂い放出の時間枠および単位時間当たりの匂い放出濃度は、極めて容易に変更可能である。これは、匂い濃度、植物油、およびパラフィンの異なる組み合わせを用いて実施し得る。シェル混合物上に噴霧する方法に適応することにより、標的化による匂い放出の変更を達成することも可能である。したがって、システムを害虫駆除に関する異なる要件(害虫の種類、植物の種類、培養系)に適応させるための極めて優れた選択肢が存在する。害虫を誘引するために必要な匂い濃度は、長期間にわたり調節および延長し得、約1週間の反応時間は通常、植物保護手段として許容され得ると見なされる。
【0108】
F.半翅類の昆虫に対する誘引剤を調査するための嗅覚測定器実験
昆虫種マキバカスミカメに対し、嗅覚測定器で比較挙動調査を実施し、好適な誘引剤(匂い)を特定した。合計28種の異なる濃度の物質および物質混合物の誘引作用を、約380の個別試験で測定した。50%の動物がある匂いを好み、50%がそうでないと決定される場合、結果は純粋に偶然の一致と見なした。約65%を越える動物がその方向に移動する場合、匂いは誘引性であると見なした。実験の性質のために、ほぼ100%の判定率は、期待されるべきではない。理由は、匂いが何の役割(例えば、排出、ストレス)も果たさない場合のその他の挙動パターンの要素も、常に1つの要因であるためである。評価の確実性は、試験の数と共に高まり、約10回の繰り返し後に受け入れられる。図7は、結果の選択で、0.01μg/μLの誘引剤の濃度をこれらの結果を得る試験用に使用した。
【0109】
溶媒として使用したヘキサンは、指向性の決定には影響がない。正確に偶然の一致分布の50%の駆除は同様に、嗅覚測定器で一方向またはもう一方の方向に対する指向性がないことを示した。
【0110】
いくつかの純粋な誘引剤は、非常に強力な誘引作用を示した。例えば、(Z)-3-ヘキセン-1-オールまたは(E)-β-カリオフィレンが与えられると、80%の半翅類の昆虫は誘引剤の方向に走る。文献では、誘引性として記載されている、性的誘引剤ヘキシルブチレートは、嗅覚測定器実験では好まれなかった。3成分混合物を用いても、誘引性が得られた。さらに、個々の誘引剤の濃度が結果に影響することが明らかになった。例えば、濃度の増加は、誘引作用を変えることができることが明らかになった。したがって、例えば、(Z)-3-ヘキセン-1-オールおよびβ-カリオフィレンの効果は、増加した濃度では低下し、一方で、ノナナールの効果は増大し、0.01μg/μLの濃度のノナナールは約45%の誘引作用を有し、1μg/μLの濃度のノナナールは約60%の誘引作用を有する。
【0111】
本発明による液体コアカプセル剤で放出され得る誘引剤濃度は、嗅覚測定器試験で確認されたように、半翅類の昆虫の知覚作用範囲内にある。したがって、半翅類の昆虫は、少なくとも10ng~10μgの調査濃度範囲で使われる匂い混合物を登録する。極めて優れた誘引作用を100ngの濃度で見出した。この必要な放出範囲は、本発明による液体コアカプセル剤の機能的外殻のみで達成され得る。
【0112】
G.半翅類の昆虫の電気生理学的検査
触角電図法は、アンテナに対する電気信号を記録することにより昆虫の嗅覚反応を測定する方法であり、昆虫アンテナ内の細胞外間隙中で記録されるのが好ましい受容体電位の遅い変化が解析される。この方法を用いて、複合匂い混合物を調査し得る。例えば、スズメバチ用の誘引剤を特定するための触角電図の使用は、DE112010005095(T5)(国際公開第2011084241(A1)号のドイツ語翻訳文(特許文献4))により既知である。
【0113】
図8および9は、半翅類の昆虫の電気生理学的検査の結果をまとめたものである。緑の香り(Z)-3-ヘキセニルアセテート、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、1-ヘキセナール、テルペノイド(E)-β-カリオフィレン、サリチル酸メチル、オシメン、フェニルアセトアルデヒド、ノナナール、α-ピネン、およびゲラニオールを植物匂いとして試験した。ヘキシルブチレートおよび(E)-2-ヘキセニルブチレートを昆虫のフェロモンとして試験した。また、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、(E)-β-カリオフィレン、およびヘキシルブチレートから作製される合成活性物質混合物を試験した。図8は、0.1μg/μLの活性物質濃度での雌(a)および雄(b)半翅類の昆虫における応答を示す。図9は、10μg/μLの活性物質濃度での雌(a)および雄(b)半翅類の昆虫における応答を示す。
【0114】
結果は、半翅類の昆虫がアンテナ上に化学受容体を有し、それらは、フェロモンおよびGLV群をこれらの化学受容体に登録できることを示している。摂食誘導型植物の匂い群の中で、ノナナールおよびフェニルアセトアルデヒドのみが、より高い濃度で登録され、ノナナールは基本的に雌により登録された。活性物質が組み合わされる場合に、匂い混合物のアンテナ刺激の強度が、原理的には、誘引作用を高める可能性があることも示した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9