(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】イメージング剤及び治療薬として有用な置換ビスホスホネートを有するマンガン錯体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220224BHJP
A61K 49/06 20060101ALI20220224BHJP
A61K 31/663 20060101ALI20220224BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220224BHJP
C07F 9/38 20060101ALI20220224BHJP
C07F 9/40 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
A61B5/055 383
A61K49/06
A61K31/663
A61P31/04
A61P35/00
C07F9/38 E
C07F9/40 E
(21)【出願番号】P 2018555227
(86)(22)【出願日】2016-10-26
(86)【国際出願番号】 US2016058845
(87)【国際公開番号】W WO2017184200
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2019-10-23
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/028946
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500093122
【氏名又は名称】デューク・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ラスコーラ,クリストファー・デイヴィッド
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520849(JP,A)
【文献】Fazle Hosain et al.,Targeted Delivery of Antineoplastic Agent to Bone: Biodistribution Studies of Technetium-99m-LabeledGem-Bisphosphonate Conjugate of Methotrexate,The Journal of Nuclear Medicine,1996年,Vol.37 No.1,p.105-107
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/00- 9/6596
A61B 5/055
A61K 31/663
A61K 49/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像法(MRI)造影剤であって、
Y-X-Z
[式中、
XはMn(II)であり、Y及びZはそれぞれ独立して、式
【化1】
(式中、
R
1は-OHであり
、
R
3、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、H、
又は1から10個の炭素原子を含有するアルキ
ルであり、
R
2
は-LR’であり、
Lは、存在し又は存在せず、存在する場合には連結基であり、
R’は治療薬である)
のビスホスホネートである]
によって表される構造を有する錯体又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩を含む造影剤。
【請求項2】
R
3
、R
4、R
5及びR
6が、それぞ
れHである、請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
前記錯体が、1:2(Mn(II):ビスホスホネート)の化学量論で医薬組成物中に提供される、請求項1に記載の造影剤。
【請求項4】
Lが、ポリ(アルキレンオキシド)を含む、請求項1に記載の造影剤。
【請求項5】
前記治療薬が、細胞毒である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項6】
前記細胞毒が、抗がん薬又は抗微生物薬である、請求項5に記載の造影剤。
【請求項7】
前記細胞毒が、ラパチニブ、アミノキノリン類及びHSP-90阻害剤からなる群から選択される、請求項5に記載の造影剤。
【請求項8】
前記造影剤が、2,000ダルトン未満の分子量を有する、請求項1に記載の造影剤。
【請求項9】
前記錯体の化学構造が、八面体である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項10】
前記錯体が、一水和物又は二水和物である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項11】
前記錯体が、1から3個のカチオンを含む塩である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項12】
前記カチオンが、ナトリウム及びメグルミンから選択される、請求項11に記載の造影剤。
【請求項13】
前記Mn(II)と配位している少なくとも1つの水分子と、
少なくとも1つのアルカリ金属又はアルカリ土類金属と、
少なくとも1つの追加のカチオンと
を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の造影剤。
【請求項14】
前記錯体が、2mM Tris緩衝ddH
2O、pH7.0において、7テスラ、摂氏22度において測定して、5から18mM
-1sec
-1のr
2緩和度を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の造影剤。
【請求項15】
前記錯体が、カルシウム及びマグネシウムから選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の造影剤。
【請求項16】
前記錯体が、ナトリウムを含む、請求項15に記載の造影剤。
【請求項17】
Y-X-Z
[式中、
XはMn(II)であり、Y及びZはそれぞれ独立して、式
【化2】
(式中、
R
1は-OHであり
、
R
3
、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、H、
又は1から10個の炭素原子を含有するアルキ
ルであり、
R
2
は-LR’であり、
Lは、存在し又は存在せず、存在する場合には連結基であり、
R’は治療薬である)
のビスホスホネートである]
によって表される構造を有する錯体又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩を、医薬として許容される担体中に含む組成物。
【請求項18】
前記医薬として許容される担体が、水又はリン酸緩衝生理食塩水である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、6.0から8.0のpHを有する、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
対象に対して磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを行うための請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物であって、前記MRIスキャンの前及び/又は前記MRIスキャンの間に前記対象に投与することにより用いられる、組成物。
【請求項21】
前記錯体又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩を治療有効量で含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記対象において前記錯体又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩をMRIで検出するために用いられる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記対象が、がんの治療を必要としている、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記対象が、微生物感染の治療を必要としている、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項25】
前記微生物感染が、治療抵抗性又は慢性の細菌感染である、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年4月22日に出願されたPCT/US2016/028946の優先権を請求する。
【0002】
政府資金提供
本発明は一部、国防総省によって与えられた助成金番号W81XWH-12-1-0447の下で政府支援によって行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
医用画像診断及び分子診断の進歩により、早期がん検出及び治療は改善されているが、最も一般的な悪性腫瘍の多くについては死亡率の改善はごくわずかである。がんで死亡するほとんどの患者は、転移性疾患及びそれに伴う合併症に屈する。早期には成功する化学療法は、がんが広がると常に有効性を失う。細胞が脱分化して遺伝的により異質になるに従って、発がん性シグナル伝達ノード(signaling node)を標的とする高選択性薬物(例えば、受容体型チロシンキナーゼ)は最終的に効力を失う。広範な遺伝子プロファイルにわたって広範な効能を有する細胞毒性治療薬(例えば、有糸分裂阻害剤、放射線)は、殺腫瘍活性をより持続することが可能であるが、それらのオフターゲット毒性によって用量限定される。したがって、毒性を最小限に抑えながら効能を維持する、選択的がん治療薬に対して大きな必要性がある。
【0004】
低毒性であるが変異し得る標的に対して持続的な効力を有する新しい治療薬に対する必要性は、感染性疾患に対しても重要である。一世紀足らずのうちに、認可された薬物に対して耐性を示す微生物(microrganism)(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌)の数は指数関数的に増加している。抗微生物薬耐性は、微生物標的における正確な細胞経路を標的とするように設計された薬物自体によって駆動される選択圧から生じる。微生物耐性になりにくい、広範に活性であるがそれほど精度が高くない薬剤(例えば、アルコール、クロルヘキシジン、紫外線)は、不可避のオフターゲット毒性を常に有する。したがって、感染性疾患とがんの両方における根本的な課題は、同じであって、標的の変異性に対して耐性がありながらオフターゲット毒性を制限し得る新しい治療薬を発見することである。
【発明の概要】
【0005】
効力が持続可能であると共に毒性が最小であるという理想に近づくための1つの戦略は、疾患親和性(disease-avid)分子を利用することと、細胞毒性薬(殺腫瘍薬、殺微生物薬(microbidical))の送達における画像誘導を可能にする機能的修飾を導入することである。
【0006】
高分解能磁気共鳴画像法(MRI)を使用してインビボで検出可能な治療薬は、最も早期に薬物開発の情報を与える手段を提供して、全ての動物における薬物動態及び体内分布の非侵襲的評価を可能にする手段を提供する。新しい治療薬の体内分布及び標的濃度の理解が依然として大きな課題であるヒトの研究において、二つの機能性は更に価値がある。臨床診療において、認可された薬剤による潜在的利益は類似しており、これは、全ての治療薬が、患者集団全体にわたって広範囲の体内分布及び薬物動態挙動を示すからである。したがって、MRIは、治療薬送達のリアルタイム監視のためのツールとして使用でき、個々の患者における薬物投与に対する個別化及び最適化されたアプローチを可能にする。
【0007】
本明細書中では、MRI造影剤及び治療薬として有用な化合物であって、
Y-X-Z
[式中、
XはMn(II)であり、Y及びZはそれぞれ独立して、式
【化1】
(式中、
R
1は-OHであり、
R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、H、アルキル(例えば、低級アルキル)、又は-LR’であり、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の少なくとも1つは-LR’であり、
各Lは、存在し又は存在せず、存在する場合には連結基であり、
各R’は独立して治療薬(例えば、細胞毒)である)
のビスホスホネートである]
によって表される構造を有する化合物又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩が提供される。
【0008】
一部の実施形態において、R2は-LR’であり、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、H又はアルキル(例えば、低級アルキル)である。
【0009】
一部の実施形態において、化合物は1:2(Mn(II):ビスホスホネート)の化学量論を有する。
【0010】
一部の実施形態において、Lはポリ(アルキレンオキシド)を含む。
【0011】
一部の実施形態において、化合物は八面体である。
【0012】
一部の実施形態において、化合物は一水和物又は二水和物である。
【0013】
一部の実施形態において、化合物は、1から3個のカチオンを含む塩である(例えば、ナトリウム、メグルミンなど)。
【0014】
一部の実施形態において、化合物は、前記Mn(II)と配位している少なくとも1つの水分子、少なくとも1つのアルカリ金属又はアルカリ土類金属及び少なくとも1つの追加のカチオンを含む。
【0015】
一部の実施形態において、化合物は、カルシウム及びマグネシウムから選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属を含む。
【0016】
一部の実施形態において、化合物はナトリウムを含む。
【0017】
医薬として許容される担体中に、本明細書中で教示するMRI造影剤及び治療薬として有用な化合物を含む組成物も提供される。一部の実施形態において、医薬として許容される担体は、水又はリン酸緩衝生理食塩水である。
【0018】
更に、対象に対してMRIスキャンを行う方法であって、MRIスキャンの前及び/又はMRIスキャンの間に本明細書中で教示する化合物又は組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法も提供される。
【0019】
それを必要とする対象に治療薬を投与する方法であって、本明細書中で教示する化合物又は組成物を治療有効量で前記対象に投与するステップを含む、方法も提供される。一部の実施形態において、この方法は、前記対象においてMRIによってMRI造影剤を検出するステップを更に含む。一部の実施形態において、投与するステップは、前記検出するステップに基づいて調整される(例えば、針の配置、投与量、送達速度など)。
【0020】
一部の実施形態において、対象はがんの治療を必要としている。
【0021】
一部の実施形態において、対象は微生物感染(例えば、治療抵抗性又は慢性の細菌感染)の治療を必要としている。
【0022】
更に、本明細書中で教示する治療方法を実施するための又は本明細書中で教示する方法を実施するための、又は医薬及び/若しくはイメージング剤を調製するための、本明細書中で教示する化合物又は組成物の使用も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】塩付加物として追加のNa又はメグルミンを有する常磁性Na:Mn(エチドロネート)
2錯体のポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI MS)を示す図である。それぞれ、イオン化中のPO
3フラグメント消失後の所定の錯体の基準ピークを表す。1Na:C
4H
11O
11P
3:Mn:H
2O(m/z=424)。2Na:C
4H
10O
11P
3:Mn:H
20(m/z=446) 3Na:C
4H
9O
11P
3:Mn:H
2O(m/z=468) 1Na:C
4H
11O
11P
3:Mn:H
2O:C
7H
17NO
5(m/z=619.1) 2Na:C
4H
10O
11P
3:Mn:H
2O:C
7H
17NO
5(m/z=641.1) 3Na:C
4H
9O
11P
3:Mn:H
2O:C
7H
17NO
5(m/z=663.0)
【
図2】市販のビスホスホネートを含むMnビスホスホネート錯体のT
1及びT
2緩和度(r
1、左及びr
2、右)を、遊離Mn(II)と比較して示すグラフである。
【
図3】A、1-OHビスホスホネートとMn
2+の2:1の錯体が熱力学的に有利である。合成中に化学量論を変えても、ビスホスホネートとMn
2+の比が2:1より高くなるとMn
2+の追加の錯体形成は観察されない。Mn
2+のr
2は完全にキレート化された一水和Mn
2+のr
2の30倍であるので、遊離Mn
2+は、溶媒のT
2を時間の関数として測定することによって決定される(Caravan et al.,Mol.Imaging 2009,4:89)。B、アルカリ金属カチオンは、2:1のビスホスホネート:Mn
2+錯体の安定性を増加させる。少なくとも1つのNa
+カチオン及び少なくとも1つのCa
2+カチオンを含有する異核錯体は、最も安定な2:1錯体を形成し、過剰な配位子なしで一水和Mn
2+が完全にキレート化される。横点線は、r
2が、溶液中のMnCl
2の値より30倍低くなる点を示している。C、合成の2カ月後の異核2:1のエチドロネート:Mn錯体のESI MSであり、その安定性及び化学量論を裏付けている。C
4H
9O
14P
4:Mn
2+:Ca
2+:Na
+(m/z=522.8)。
【
図4】
図4Aは、MnNTAのi.v.投与後の対照マウスにおけるインビボMRIを示す図であり、
図4Bは、Mn:ETID(40mM溶液50μL)のi.v.投与後のMRIを示す図である。
【
図5】スキーム1Cの場合と同様に、HSP90阻害剤に連結された1-ヒドロキシビスホスホネート:Mn錯体のi.v.投与(25mg/kg)後の4T1腫瘍の動的コントラスト強調を示すグラフ及び図である。左のグラフは、標識薬物(n=5)後及びMn:ETID錯体単独(n=6)後の腫瘍におけるT1強調の相対的変化を示している。
【
図6】Na
+及びCa
2+を用いて合成された2:1のエチドロネート:Mn
2+錯体(C
4H
9O
14P
4:Mn
2+:
xCa
2+:
xNa
+)のPK及び体内分布を示すグラフ及び図である。A、静脈内投与後60分にわたる造影剤のダイナミック造影(DCE)分析。臓器及び筋骨格系のピーク強調は、大動脈における変化に時間的に一致し、これは、造影剤が依然として未変化のまま、細胞外にあることを示している。B、排泄系のDCE分析は、腎臓及び肝臓/胆嚢からの排出が完全な状態であることを示している。C、標準化されたカラーリュートT1強調画像は、最初の60分間にわたって、次いで24時間及び48時間に臓器系において相対的な変化を示した。24時間において、残留コントラスト変化は、対象の全体にわたって腎臓以外では認められない。後者における変化は、48時間でほぼ消失する。24及び48時間の胃(左上腹部)のより高い信号強度変化は、摂食における偶発的な常磁性により続発する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書では、一部の実施形態によれば、治療薬の常磁性標識のための生体適合性戦略として、明確に定義された安定なマンガンビスホスホネート錯体を使用する画像誘導療法が記載される。共有結合のための種々の化学的アプローチを使用してビスホスホネート配位子を1種又は複数の治療活性のある薬剤に結合させて、臨床MRIを使用してインビボでリアルタイムに追跡できるコンジュゲート分子を創出することができる。一部の実施形態において、MRIは、これらのコンジュケートが経口、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、指定血管内、髄腔内又は経皮経路により投与されるかに関わらず、その投薬を最適化するのに使用でき、画像誘導下において、広範に有効で、持続可能で且つ毒性が最小の治療薬の疾患特異的送達を可能にする。
【0025】
本明細書中に引用された全ての特許文献の開示は、本明細書中に示した開示と矛盾しない範囲内で、参照によって本明細書中に組み入れる。本明細書において発明の説明及び添付した特許請求の範囲中で使用した単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈からそうでないことが明白に示されない限り、複数形も同様に含むものとする。
【0026】
前述の通り、造影剤及び治療薬として有用な化合物が、本明細書中で提供される。本明細書中で使用する「化合物」は、共有結合、配位結合及び/又はイオン結合によって原子が結合されている分子を指す。
【0027】
本明細書中で使用する「造影剤」は、医用画像において身体内の構造又は体液のコントラストを強調するのに使用する物質である。公知の造影剤の例としては、放射線造影剤及びMRI造影剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
「放射線造影剤」は、X線に基づくスキャン中に身体内の構造又は体液のコントラストを強調できる物質である。例としては、ヨウ素及びバリウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
「MRI造影剤」は、MRIスキャン中に身体内の構造又は体液のコントラストを強調できる物質(例えば、化合物及び/又は錯体)である。例としては、常磁性造影剤、例えば、ガドリニウム(III)含有造影剤又はマンガンキレート、及び超常磁性造影剤、例えば、鉄白金粒子が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、米国特許出願公開第2014/0350193号(Axelssonら);米国特許出願公開第2014/0234210号(Linら)を参照のこと。
【0030】
一部の実施形態において、本発明の造影剤の使用は、造影材料が血管からの「初回通過」後に患部領域の細胞外区画(間質)に一時的に蓄積する場合に、対象の患部組織における「減衰作用」又は「信号」を強調することができる。したがって、組織の強調は、多くの場合、腫瘍、感染、炎症、脱髄及び急性梗塞組織で観察される。
【0031】
一部の実施形態において、本明細書中で教示する造影剤は、2,000ダルトン未満、1,500ダルトン未満、1,000ダルトン未満、800ダルトン未満又は500ダルトン未満の分子量を有する。このような低分子量の造影剤は、例えば、患部の「漏出性」血管を通して血液から拡散させることによって、組織の画像化を強調できる。
【0032】
一部の実施形態において、造影剤は、ビスホスホネートと錯体形成している、高スピンマンガン(5つの不対電子を有するMn(II))を含む。
【0033】
一部の実施形態において、ビスホスホネートは、置換1-ヒドロキシビスホスホネートである。一部の実施形態において、1-ヒドロキシビスホスホネートは、治療薬で置換されている。
【0034】
一部の実施形態において、ビスホスホネートは、式
【化2】
[式中、R
1は-OHであり;R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、H、アルキル(例えば、低級アルキル、例えば、C
1アルキル、C
2アルキル、C
3アルキル又はC
4アルキル)、又は-LR’であり、式中、Lは、存在し又は存在せず、存在する場合には連結基であり、R’は治療薬(例えば、細胞毒)である]
を有する。一部の実施形態において、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の少なくとも1つは-LR’である。
【0035】
本明細書中で使用する「アルキル」は、1から10個の炭素原子を含有する(即ち、C1-10)飽和直鎖若しくは分岐鎖又は環状炭化水素を指す。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で使用する「低級アルキル」は、アルキルの一部であり、1から4個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。低級アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロプロピル、シクロブチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一部の実施形態において、Lが存在しない場合、ビスホスホネートは、金属錯体形成の前に治療薬(例えば、細胞毒)に直接結合させる。一部の実施形態において、連結基Lが存在し、連結基としては、アルキレン、アルキレンカルボニル、カルボニルアルキレン、カルボニル基、マレイミド、アルキルアミノ、ポリ(アルキレンオキシド)又はポリエーテル、例えば、ポリプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール(PEG)、それらの組合せなどを挙げることができる。米国特許第4,179,337号(Davisら);米国特許第7,122,189号(Zhaoら);米国特許第8,247,572号(Krausら);米国特許出願公開第2009/0285780号(Lee)も参照のこと。
【0037】
一部の実施形態において、連結基LはR2位に結合している。一部の実施形態において、連結基Lは、R3、R4、R5及び/又はR6位に結合している。
【0038】
一部の実施形態において、Lは、以下
【化3】
[式中、nは0(即ち、直接共有結合)又は1から6である]
のような、アルキレン、アルキレンカルボニル、カルボニルアルキレン、カルボニル基又はマレイミドであることができる。このようなアルキレン基は、飽和であっても不飽和であってもよく、C1~C4アルキル、ハロ、フェニル又はハロ置換フェニルで1、2、3又は4回置換されていてもよい。例は、以下の通りである。
【化4】
【0039】
フェニル若しくはフェニレン基又は2つ以上の連結されたフェニレン基が連結基として提供されてもよく、フェニレン基は場合により、ハロゲン又はアルキル基で1、2、3又は4回置換されていてもよい。例は、以下の通りである。
【化5】
【0040】
置換又は無置換フェニレン基は、いずれか又は両方の末端で、連結基を提供する上記のような置換又は無置換アルキレン、アルキレンカルボニル、カルボニルアルキレン又はカルボニル基と結合されていてもよい。例は、以下の通りである。
【化6】
【0041】
前述の置換又は無置換アルキレン、アルキレンカルボニル、カルボニルアルキレン又はカルボニル基は、いずれか又は両方の末端で、連結基を提供する上記のような置換又は無置換フェニレン基と結合されていてもよい。例は、以下の通りである。
【化7】
[式中、「n」は上記で定義した通りである]。
このような化合物は、いずれか又は両方の末端で、なおも更なる連結基を提供する上記のような置換又は無置換アルキレン、アルキレンカルボニル、カルボニルアルキレン又はカルボニル基によって更に置換されていてもよい。例は、以下の通りである。
【化8】
[式中、「n」は上記で定義した通りである]。
【0042】
前述の連結基は、互いに(例えば、マレイミド基がアルキル鎖に)結合して、本発明を実施するのに有用な更に他の連結基を生成することができる。
【0043】
連結基の更なる例は、米国特許第6,872,841号、第6,607,741号、第6,624,317号、第6,593,334号、第6,566,393号、第6,420,377号及び第6,207,673号に記載されている。
【0044】
高スピンMn(II)は、5つの不対電子、MRI強調に好ましい電子緩和時間及び水滞留時間(Tm<<T1)を有する優れた候補常磁性金属である。遊離金属としては、Mnはまた、普通の体液(a natural pool)及びプロセシングのためのいくつかの恒常性維持機構に関して、Gdほど有毒でない。
【0045】
従来、MRIのための常磁性Mn錯体の開発は、インビボにおいて他の内因性金属、例えば、亜鉛によってMn(II)が金属交換される傾向をもたらす、Mn(II)に固有の配位不安定性(例えば、アーヴィング-ウィリアムズ系列)が課題となっていた。しかし、本明細書中で開示したMn(II)ビスホスホネート錯体は、注目に値するインビボ安定性を有し、組織造影材料として単独で又は他の小分子薬物と結合させて使用する場合のいずれでも、そのままである。単独で使用する場合、それは、市販のGd系造影材料と同様の時間経過で、腎臓及び肝臓/胆嚢/腸のいずれかを通して最終的に排出される。
【0046】
一部の実施形態において、Mnビスホスホネート化合物は、1 Mn:2 ビスホスホネート(例えば、エチドロネート)の化学量論を有し;少なくとも1つの配位H2Oを有し(例えば、一水和物又は二水和物);少なくとも1つのアルカリ金属(例えば、Na+、K+)若しくはアルカリ土類金属(例えば、Ca++又はMg++)を有し;且つ/又は少なくとも1つの追加のカチオン(例えば、Na+、メグルミンなど)を有する。一部の実施形態において、Mnビスホスホネート化合物は、1 Mn:2 ビスホスホネート(例えば、エチドロネート):1 アルカリ金属(例えば、Na+、K+):1 アルカリ土類金属(例えば、Ca++又はMg++)の化学量論を有する。
【0047】
一部の実施形態において、造影剤は、7テスラで(例えば、摂氏22度、2mM Tris緩衝ddH
2O及び/又はpH7.0において)測定して、5、8又は10から15、18、20、25、30、35又は40mM
-1秒
-1)のr
2緩和度を有する。理論に拘泥するものではないが、溶液中の遊離Mn(例えば、MnCl
2塩)は、T2
*磁化率及びスピン-スピン(T2’)効果がいずれも高いため、低T
2緩和/高r
2緩和度(mM
-1sec
-1)を有する。T2(及び、したがって、r2)は、T2
*とT2’の両方の関数である。水和した遊離イオンは、いくつかの配位内圏水と一緒にクラスター形成し、局所磁場不均一性及び結合水分子と溶媒水分子とのスピン-スピン相互作用を増加させる。個々のMnイオンが配位子と配位している場合には、クラスター形成、したがって、T2
*効果(及びr
2緩和度)が減少する。配位内圏水を1つだけ有する強いMn錯体はまた、スピン-スピン相互作用を減少させており、したがって、結合水分子と溶媒水分子との交換がより少ないことにより、T2’効果も減少させている。個々のMnイオンが、溶液中で配位子キレートと完全に錯体形成している場合には、キレート金属の測定r
2は、溶液中の遊離金属のr
2の30分の1であると以前決定されている。Caravan et al.,Mol.Imaging 2009,4:89を参照のこと。したがって、r
2は、錯体形成度のマーカーとなり得る。
図3を参照のこと。
【0048】
金属の錯体形成は、造影剤の毒性を低下させ且つ/又は安定性を増加させることができる。静脈内投与されるMnなどの遊離金属は、即時型の有害な毒性作用を有する可能性がある。遊離Mnに関しては、陰性変時/変力(chronotropic/ionotropic)効果のため、特に心臓毒性が問題となることがある。PK/体内分布の差が、例えば、1:1のMn:ビスホスホネート錯体対1:2錯体で、並びにNa+及びCa++の代わりにメグルミン及びコリンなどのカチオンを用いた合成で、認められる(データは示さず)。注射中に毒性も検出されることもあり、Na+及びCa++では認められない急速な心臓及び呼吸抑制が同等な用量の1:2のMn:ビスホスホネート錯体で認められる(データは示さず)。
【0049】
本明細書中で教示する通り、造影剤は1種又は複数の治療薬を含むことができる。これらの実施形態において、治療薬(1種又は複数)の送達のリアルタイム監視を、治療薬が送達される場所を正確に示す造影剤の検出によって行うことができる(「セラノスティクス」)。
【0050】
本明細書中で使用する用語「医薬として許容される」が、化合物又は組成物が、本明細書中で記載した治療を達成するために対象に投与するのに好適であり、疾患の重症度及び治療の必要性に鑑みて、過度に有害な副作用を伴わないことを意味する。
【0051】
一部の実施形態において、造影剤は、細胞毒のような治療薬に結合されている、例えば、共有結合されている。本明細書中で使用する「細胞毒」は、細胞死を引き起こす薬剤、例えば、抗がん薬、抗微生物薬、又は細胞死を引き起こす他の薬剤を指す。例としては、インターフェロン、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、タキソール、タキソテール、ナベルビン、アドリアマイシン、両親媒性アミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
細胞毒の種類の例としては、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード類、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素類、エチレンイミン類及びトリアゼン類;代謝拮抗薬、例えば、葉酸拮抗薬、プリン類似体及びピリミジン類似体;抗生物質、例えば、アントラサイクリン類、ブレオマイシン類、マイトマイシン、ダクチノマイシン及びプリカマイシン;酵素、例えば、L-アスパラギナーゼ;ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ホルモン剤、例えば、グルココルチコイド、エストロゲン/抗エストロゲン、アンドロゲン/抗アンドロゲン、プロゲスチン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン拮抗薬、酢酸オクトレオチド;微小管破壊薬、例えば、エクチナサイジン類又はそれらの類似体及び誘導体;微小管安定化剤、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、コンブレタスタチンA、B、C及びD並びにそれらの誘導体、水和物及びプロドラッグ(例えば、コンブレタスタチンA-4ホスフェート)、並びにエポチロンA~F並びにそれらの類似体、プロドラッグ、水和物、溶媒和物又は誘導体;植物由来製品、例えば、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン類、タキサン類;並びにトポイソメラーゼ阻害薬;プレニル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬;並びに種々の薬剤、例えば、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ミトタン、ヘキサメチルメラミン、白金配位錯体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;並びに抗がん薬及び細胞毒性薬として使用される他の薬剤、例えば、生体応答修飾物質(例えば、チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、ラパチニブ)、増殖因子;免疫調節薬、抗マラリア薬(例えば、クロロキン、ヒドロキシクロロキン)及びモノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は、適宜、放射線療法と併用することもできる。
【0053】
細胞毒性薬の種類の更なる代表例としては、塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochlordie)、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、イフォスファミド、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、チオテパ、ダカルバジン、メトトレキセート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペントスタチン(pentastatin)、クラドリビン(cladribin)、シタラビン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、硫酸ブレオマイシン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、サフラシン類、サフラマイシン類、キノカルシン類、ディスコデルモリド類、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、タモキシフェン、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン類、ジインゼス(diyneses)、レバミゾール、アフラコン(aflacon)、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、塩酸イリノテカン、ベタメタゾン(betamethosone)、塩酸ゲムシタビン、アルトレタミン、及びトポテカン(topoteca)並びにそれらの任意の類似体又は誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
これらの種類の好ましい要素としては、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カルミノマイシン(caminomycin)、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキセート、メトプテリン、マイトマイシンC、エクチナサイジン743、ポルフィロマイシン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン又はポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド又はテニポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ビンデシン及びロイロシンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
抗微生物薬としては、抗生物質を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。抗生物質の例としては、アミノグリコシド、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン;アンサマイシン類、例えば、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、リファキシミン;カルバセフェム類、例えば、ロラカルベフ;カルバペネム類、例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム、メロペネム;セファロスポリン類、例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリンフォサミル、セフトビプロール;グリコペプチド、例えば、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、オリタバンシン、クリンダマイシン、リンコマイシン;リポペプチド、例えば、ダプトマイシン;マクロライド類、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン;モノバクタム類、例えば、アズトレオナム;ニトロフラン類、例えば、フラゾリドン、ミクロフラントイン(microfurantoin);オキサゾリジノン類、例えば、リネゾリド、ポジゾリド、ラデゾリド、トレゾリド;ペニシリン類、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン(azolcillin)、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、ペニシリンG、テモシリン、チカルシリン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB;キノロン類、例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン;スルホンアミド類、例えば、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、スルホンアミドクリソイジン;テトラサイクリン類、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン;マイコバクテリアの治療に有用な薬剤、例えば、クロファジミン、ダプソン、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、ストレプトマイシン;他の抗微生物薬、例えば、アルスフェナミン(arspenamine)、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、メトロニダゾール、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾール、トリメトプリム、テイクソバクチンなど(それらの組合せを含む)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
一部の実施形態において、細胞毒性薬としては、テトラサイクリン、メトトレキセート、ラパチニブ、アミノキノリン類、例えば、クロロキン及びヒドロキシクロロキン、及びHSP-90阻害剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、米国特許出願公開第2006/0074105号(Ware,Jr.ら);米国特許出願公開第2015/0191471号(Haysteadら)を参照のこと。
【0057】
使用方法
本発明は主として、ヒト対象のスキャニング及び/又は治療に関するが、本発明は動物対象、特に哺乳動物対象、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜及びウマに対して獣医学の目的で、並びに/又は薬物スクリーニング及び/若しくは薬物開発の目的で実施することもできる。
【0058】
本明細書中で使用する用語「治療する」は、対象の状態(例えば、1つ又は複数の症状)の改善、疾患の進行遅延などを含む利益を、疾患に苦しむ対象に与えるあらゆる型の治療を指す。
【0059】
本明細書中で教示するイメージング剤及び治療薬は、結合された治療薬の薬物動態及び体内分布の個別的な非侵襲的評価を可能にすることによって、インビボで検出可能であり、個別化MRI誘導療法の機会を提供する。十分に特性決定された認可治療薬でも、患者集団全体にわたって広範囲の薬物動態及び体内分布挙動を有することができるので、薬剤送達のリアルタイム監視により、特定の対象に対して治療効能を最大化し、毒性を最小にすることができる。
【0060】
本明細書中で教示するイメージング剤及び治療薬は、腫瘍の個別化MRI誘導局所治療を可能にすることもできる。ほとんどの化学療法薬は全身に送達されるが、MRI誘導治療は、監視された局所送達を可能にし、治療薬がその意図された標的に蓄積していることを保証することができる。更に、送達位置及び/又は投薬を治療中に調整し得る。
【0061】
例えば、本明細書中で教示する造影剤の一部としての破壊的細胞毒性薬の送達は、MRIによってリアルタイムに誘導及び監視でき、薬剤がその意図された標的(例えば、腫瘍)に達するが、他の組織に過度に分布して望ましくない毒性を引き起こすことがないことを保証する。
【0062】
一部の実施形態において、治療は、腫瘍の外科的切除の前又は後に行う。一部の実施形態において、治療は、「切除不可能な」がん(即ち、適用可能な治療指針によって外科的切除が推奨されないもの)又は「切除可能境界」がん(例えば、局所進行性非転移性膵がん)を対象とする。このような場合、本明細書中で教示する造影剤と錯体形成した破壊的細胞毒性薬は、必要に応じて局所送達に調整を加えながら、がんに誘導してがんを治療することができる。一部の実施形態において、治療により、がんをその後に切除可能にすることもできる。
【0063】
本明細書中で教示するイメージング剤及び治療薬は、感染の個別化MRI誘導局所破壊的治療を可能にすることもできる。MRI誘導治療は監視された局所送達を可能にして、治療薬が感染を弱めるためにその意図された標的、例えば、細菌/細菌バイオフィルム、感染宿主組織などに蓄積していることを保証することができる。更に、送達位置及び/又は投薬を治療中に調整し得る。
【0064】
例えば、本明細書中で教示する造影剤の一部としての抗微生物薬の送達は、MRIによってリアルタイムに誘導及び監視でき、薬剤がその意図された標的(例えば、微生物感染、例えば、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染の部位)に達するが、他の組織に過度に分布して望ましくない毒性及び/又は副作用を引き起こすことがないことを保証する。
【0065】
一部の実施形態において、感染は治療抵抗性(即ち、1種又は複数の治療薬に対して耐性がある)又は慢性(即ち、少なくとも6カ月続く)である。
【0066】
本発明を、以下の非限定的な実施例において更に詳述する。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
分子イメージング及び多重療法のための低分子量マンガンビスホスホネート錯体
高スピンMn(II)錯体の合成例
所望の最終容量の再蒸留水に絶えず撹拌しながら、2当量のエチドロン酸及び4当量の炭酸水素ナトリウムを添加する。溶液のpHは、10分後に約3.8~4.0となる。その後、pHは、希NaOHによって約5.5~7.0に更に調整することができる。この後、1当量のMnCl2を添加する。MnCl2の添加後、溶液は予想通り、より酸性(pH約3~4)となるが、pHは中程度に希釈した塩基、例えば、NaOHで7.0~7.5に上昇させるべきである。最も一貫性のある有効な結果は、Mn(II)添加前にpHが5~7であり且つアルカリ金属カチオン(例えば、Na)が予め存在して、pKaが0.70及び1.46のエチドロネート上の2つのホスフェート酸素と少なくとも配位結合している場合に、達成された。
【0068】
弱塩基性アミン緩衝液、例えば、Tris緩衝液を最初に又は主要な試薬の添加後に使用して、pHを確実に中性以上にする良好な結果を得ることができるが、Mnの添加前は、エチドロン酸1分子当たり少なくとも2当量のNa+が特に有益であると思われる。この反応のための加熱は、必要でない。
【0069】
生成物は、過剰の極性有機溶媒(例えば、アセトン、MeOH、ETOH)によって沈殿及び単離させることができるが、この錯体に限って言えば、これらの溶媒により可溶(親水性がより低い)であり、したがって、沈殿及び単離により多くの時間及び挑戦が必要である。最終固体生成物の代替的な単離は、直接的な凍結乾燥によっても達成可能である。
【0070】
インビボにおける挙動を、Mn(II)キレート化のための2つの比較的強い(log K
1>7)配位子、EDTAに密接に関連するニトリロ三酢酸(NTA)、及び3,4-ジヒドロ安息香酸(3,4-DBA)について試験した。いずれもMn(II)配位錯体を容易に形成し、市販のGdキレートと同様な緩和プロフィールを示す。しかし、i.v.投与後のこれらの薬剤のインビボMRイメージングから、遊離Mnの放出及び肝細胞への取り込み、即ち、実質強調が強いこと、胆嚢強調がないこと及び腎臓排出(
図4A)の証拠がないことと一致して、NTA及び3,4-DBAの両方の体内分布が同一であることが明らかになった。
【0071】
このインビボの挙動はまた、これまでにFDAに認可された薬剤Teslascan(マンガホジピル三ナトリウム)について観察されたものでもあった。従来、MRIのための常磁性Mn錯体の開発は、インビボにおいて他の内因性金属、例えば、亜鉛によってMn(II)が金属交換される傾向をもたらす、Mn(II)に固有の配位不安定性(例えば、アーヴィング-ウィリアムズ系列)が課題となっていた。FDAに認可された唯一のMRIのためのMn(II) PM錯体はTeslascanであったが、これは現在中止されている。Teslacanは直ちに肝臓に分配されて遊離Mnを放出し、それが次に肝細胞に取り込まれた。したがって、コントラストの強調は遊離Mnに基づき、肝臓に限られた。加えて、心臓の強調もNTA及び3,4-DBAの両方で認められ、これは、遊離Mnが肝臓に入る前に血液プールに放出されることを示している。
【0072】
NTA及び3,4-DBAと比較して、Mn(II)エチドロネート30mg/kgのIV投与は最初に、顕著な動脈血プール相を可視化し、続いて腎集合系及び膀胱並びに胆嚢を迅速に強調する(
図4B)。NTA及び3,4-DBAほどは実質的に強くないが、肝実質の強調が観察され、投与後10~15分でピークに達し、4時間までに正常T
1値に戻る。腸の強調も顕著であるが、より変化しやすく、これは、胆嚢から小腸への配位錯体の排出を意味すると考えられる。加えて、わずかであるが一過性のT
1変化が、骨格筋及び長骨において観察され、主要血管における弱い残留T
1変化と平行して30分後に正常に戻る。これは、局所的な実質の取り込み効果ではなく血液プールの取り込み効果と一致する。T
1変化は、脳又は脊椎では観察されない(n=20)。
【0073】
[実施例2]
造影剤中のMnの錯体形成の差異。
1-OHビスホスホネートとMn
2+の2:1錯体が熱力学的に有利であることが判明した。合成中に化学量論を変えることによって、ビスホスホネート対Mn
2+の比が2:1より高くなっても、Mn
2+の追加の錯体形成は観察されない。(
図3)
【0074】
Mn2+のr2は完全にキレート化されている一水和Mn2+のr2の30倍であるので、遊離Mn2+は、溶媒のT2を時間の関数として測定することによって決定される(Caravan et al.,Mol.Imaging 2009,4:89)。1-OHビスホスホネート:Mn2+錯体及びMnCl2の緩和度測定は、7Tで22℃において2mMのTris緩衝ddH2O中で行った。ナトリウム含有溶液は、NaOHでpH7.0まで滴定した。ナトリウムを含まない溶液は、対応するカチオン塩基(コリン又はメグルミン)で中性pHまで滴定した。各試料の原液を20mM Mn2+を用いて調製した。r1及びr2は、200マイクロモル濃度の試料濃度について従来のMR高速スピンエコー系マッピング方法から算出した。
【0075】
アルカリ金属カチオンは、2:1のビスホスホネート:Mn2+錯体の安定性を増加させることが判明した。少なくとも1つのNa+カチオン及び少なくとも1つのCa2+カチオンを含有する異核錯体は、最も安定な2:1錯体を形成し、過剰な配位子なしで一水和Mn2+が完全にキレート化される。
【0076】
[実施例3]
体内分布の変更、画像診断及び治療活性の向上のための、金属と錯体形成した1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸由来の小分子薬物
Mnビスホスホネート錯体は、MRイメージング及び画像誘導療法のための一連の新規分子イメージングプローブを創出する新しい機会を提供する。1-ヒドロキシルエチレンジホスホネートは、中心炭素から離れたR2基を介して又はリン酸エステル化によって容易に結合することができ、したがって、公知のターゲティング及び/又は治療活性を有する多くの既存の小分子薬物を用いて誘導体化させることができる。
【0077】
骨関連の状態の治療に加えて、ビスホスホネートは最近になって、いくつかの悪性腫瘍のための化学療法補助薬として大いに有望であることが示された。作用メカニズムは、ファルネシルジホスフェートシンターゼ(farnesyl disphosphate synthase)(FDPS)及び/又はビスホスホネートの構造類似体であるピロホスフェートを通常利用する他の細胞内酵素の阻害によると考えられている。腫瘍親和性(tumor-avid)小分子及びMnと錯体形成したビスホスホネートの細胞内共輸送により、ビスホスホネートは、分子イメージング及び親分子の治療活性に加えて二次的な治療活性をいずれも可能にする。
【0078】
最後に、遊離Mnは、特定のニューロン集団に高濃度に蓄積させられるならば、神経病学的に有毒であると考えられている。Mnの濃度が細胞内結合プールを超えると、MnはFe及び他の遷移金属と同様に、特に高いレドックス活性種、例えば、H2O2、アスコルベート及びキノンの共存下で、フェントン媒介フリーラジカル産生を刺激する。しかし、組織内のMn蓄積はMRIによって容易に可視化されるので、Mn含有薬剤の選択的送達は容易に監視される。(実際、高分解度の定量的T1マッピングを用いた全ての動物MRI実験において、MnのCNS蓄積は、10倍超の用量でMnビスホスホネートを投与した後であっても決して観察されなかった。)したがって、MRIによって確認されるがん細胞中のMnの選択的蓄積は、レドックス媒介細胞毒性による別の治療手段を提供することができる。
【0079】
いくつかの合成ストラテジーは、小分子薬物を直接的に又はポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して標識化するのに使用された。2つの錯体、1つ目はアミンを末端基とするPEGリンカーを介するメドロネート類似体との錯体(スキーム1B)及び2つ目はCOOHを末端基とするPEGリンカーを介して結合しているエチドロネート類似体(スキーム1C)が、合成され、同定され、インビボで予備研究された。両錯体のパイロットデータは、常磁性配位錯体単独について認められるものより大きい、4T1腫瘍における強調の漸進的蓄積を示している(
図5)。常磁性配位錯体投与の30分前の非連結HSP90i化合物の投与に関する予備データもまた、親薬物からの常磁性(PM)錯体の若干の競合的阻害を示唆している。
【化9】
【0080】
更に、多くのがんにおいて高い蓄積選択性を有する別の十分に特徴が明らかにされた小分子薬物である4-アミノキノリンであるキノンレダクターゼ2阻害剤クロロキンの1-ヒドロキシビスホスホネート誘導体を合成した。選択的蓄積に加えて、クロロキンは、化学療法試験において有効な補助薬として有望であることが最近示された。
【化10】
【0081】
小分子薬物の1-ヒドロキシビスホスホネート官能基化は、これらの薬物の直接コンジュゲーションによって、又はこれらの小分子と1-ヒドロキシビスホスホネート類似体の両方に連結される分子架橋(例えば、PEG)によって行うことができる。これらは、診断及び/又は治療用途に有用なその後の金属錯体の形成に使用できる。スキーム3及びスキーム4は、HSP90阻害剤への、及び一部の乳がんの治療に使用される「高蓄積」チロシンキナーゼ阻害剤である、FDAによって認可されている薬物ラパチニブへの直接連結のための方法の例を提示している。
【0082】
【0083】
【0084】
[実施例4]
MRI誘導療法のプロトコール例
治療用化合物への常磁性官能基の導入は、薬物の薬物動態及び体内分布のリアルタイムMRイメージングを可能にする。一例において、常磁性医薬品を、従来の経路、例えば、経口又は静脈内送達によって患者に投与し、次いで、投与後にMRIスキャンを行って、種々の組織区画における薬物レベルを決定する。MRIは、所与の医薬品の固有の体内分布特性及び治療目標に応じて、薬物投与の直後に、薬物投与から1~24時間以内に又は薬物投与から2日以上のうちに行うことができる。組織への薬物蓄積の検出及び測定に定量的(例えば、T1マッピング)及び定性的(例えば、T1及びT2加重)取得配列を利用することによって、MRIは、個々の患者における所与の医薬品の薬物動態挙動を特徴づけることができ、それにより、治療レベルが達成され且つ健常組織への蓄積が最小になるように最適な投薬を誘導することができる。
【0085】
別の例において、常磁性医薬品を、より直接的な経路を使用して、例えば、血管内カテーテル(例えば、動脈内、静脈内)を介して又は経皮的に(例えば、針の配置、対流強化送達)投与し、標的への正確な局所薬物送達を最適化するために、MRIをリアルタイムで行う。この特定の用途では、MRIを使用して、送達デバイス(例えば、カテーテル又は針)のインビボ配置及びその標的への医薬品の投与の両方を誘導する。
【0086】
臨床診療においては、現在のところ、ヨード系造影剤又はガドリニウム系造影剤が、X線/CT蛍光透視法又はMRI誘導をそれぞれ使用して、類似した方法で使用されている。これらの薬剤は、薬物送達、局在及び分布の代替マーカーとして役立つと仮定して使用されている。このような診療は、例えば、腫瘍又は腫瘍切除空洞への抗悪性腫瘍薬の投与に一般的である。しかし、これらの造影剤は、治療薬に連結されておらず、顕著に異なる医薬特性(例えば、分子量、親油性、電荷)を常に有するので、代替品としては不十分である。
【0087】
本明細書中に記載される本発明の場合、MRI造影シグナルは、薬物送達、局在及び分布についての正確なマーカーとなる。
【0088】
前述したのは、本発明の例証であって、本発明の限定と解してはならない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等形態も本発明に包含される。出願時の特許請求の範囲は以下の通り。
[請求項1]
磁気共鳴画像法(MRI)造影剤及び治療薬として有用な化合物であって、
Y-X-Z
[式中、
XはMn(II)であり、Y及びZはそれぞれ独立して、式
[化1]
(式中、
R
1は-OHであり、
R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、H、アルキル、又は-LR’であり、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の少なくとも1つは-LR’であり、
各Lは、存在し又は存在せず、存在する場合には連結基であり、
各R’は独立して治療薬である)
のビスホスホネートである]
によって表される構造を有する化合物又は医薬として許容されるその水和物及び/若しくは塩。
[請求項2]
R
2が-LR’であり、R
3、R
4、R
5及びR
6が、それぞれ独立して、H又はアルキル(例えば、低級アルキル)である、請求項1に記載の化合物。
[請求項3]
前記化合物が、1:2(Mn(II):ビスホスホネート)の化学量論で医薬組成物中に提供される、請求項1に記載の化合物。
[請求項4]
Lが、ポリ(アルキレンオキシド)を含む、請求項1に記載の化合物。
[請求項5]
前記治療薬が、細胞毒である、請求項1に記載の化合物。
[請求項6]
前記細胞毒が、抗がん薬又は抗微生物薬である、請求項5に記載の化合物。
[請求項7]
前記細胞毒が、ラパチニブ、アミノキノリン類及びHSP-90阻害剤からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
[請求項8]
前記造影剤が、2,000ダルトン未満の分子量を有する、請求項1に記載の化合物。
[請求項9]
前記化合物が、八面体である、請求項1に記載の化合物。
[請求項10]
前記化合物が、一水和物又は二水和物である、請求項1に記載の化合物。
[請求項11]
前記化合物が、1から3個のカチオンを含む塩である、請求項1に記載の化合物。
[請求項12]
前記カチオンが、ナトリウム及びメグルミンから選択される、請求項11に記載の化合物。
[請求項13]
前記Mn(II)と配位している少なくとも1つの水分子と、
少なくとも1つのアルカリ金属又はアルカリ土類金属と、
少なくとも1つの追加のカチオンと
を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の化合物。
[請求項14]
前記化合物が、2mM Tris緩衝ddH
2O、pH7.0において、7テスラ、摂氏22度において測定して、5から18mM
-1sec
-1のr
2緩和度を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の化合物。
[請求項15]
前記化合物が、カルシウム及びマグネシウムから選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の化合物。
[請求項16]
前記化合物が、ナトリウムを含む、請求項15に記載の化合物。
[請求項17]
請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物を、医薬として許容される担体中に含む組成物。
[請求項18]
前記医薬として許容される担体が、水又はリン酸緩衝生理食塩水である、請求項17に記載の組成物。
[請求項19]
前記組成物が、6.0から8.0のpHを有する、請求項17又は18に記載の組成物。
[請求項20]
対象に対して磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを行う方法であって、前記MRIスキャンの前及び/又は前記MRIスキャンの間に請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項17から19のいずれか1項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
[請求項21]
それを必要とする対象に治療薬を投与する方法であって、請求項1から16のいずれか1項に記載の化合物又は請求項17から19のいずれか1項に記載の組成物を治療有効量で前記対象に投与するステップを含む、方法。
[請求項22]
前記対象において化合物をMRIで検出するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
[請求項23]
前記投与するステップが、前記検出するステップに基づいて調整される(例えば、針の配置、投与量、送達速度など)、請求項22に記載の方法。
[請求項24]
前記対象が、がんの治療を必要としている、請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
[請求項25]
前記対象が、微生物感染の治療を必要としている、請求項21から23のいずれか1項に記載の方法。
[請求項26]
前記微生物感染が、治療抵抗性又は慢性の細菌感染である、請求項25に記載の方法。