(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の防食工法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/04 20060101AFI20220224BHJP
B32B 13/12 20060101ALI20220224BHJP
C04B 41/70 20060101ALI20220224BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20220224BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20220224BHJP
E04G 21/06 20060101ALI20220224BHJP
F16L 57/00 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
B28B11/04
B32B13/12
C04B41/70
E03F3/04 Z
E04B1/66 Z
E04G21/06
F16L57/00 B
(21)【出願番号】P 2019221912
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2019-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】397018811
【氏名又は名称】日本ジッコウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匡良
(72)【発明者】
【氏名】井上 敬介
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】長尾 達彦
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-141097(JP,A)
【文献】特開平06-042149(JP,A)
【文献】特開平06-049971(JP,A)
【文献】実開平04-127352(JP,U)
【文献】特開昭52-091509(JP,A)
【文献】特開平05-248061(JP,A)
【文献】特開2006-083007(JP,A)
【文献】特開2006-037181(JP,A)
【文献】特開平05-209455(JP,A)
【文献】特開昭59-179959(JP,A)
【文献】特開昭63-000095(JP,A)
【文献】実開平06-032028(JP,U)
【文献】特開平06-229097(JP,A)
【文献】特開平07-241829(JP,A)
【文献】特開平08-261357(JP,A)
【文献】特開2010-189834(JP,A)
【文献】特開2016-030913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/70
E03F 3/04
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の表面にモルタルを塗布する第1のステップと、
第1のステップにおいてコンクリート構造物に塗布された前記モルタルにコンクリート構造物表面の面内
所定方向に延在する凹部を形成する第2のステップと、
前記モルタルに板状の防食部材を配置する第3のステップと、
前記モルタル上に配置された前記防食部材を前記凹部の延在方向に沿って圧着させる第4のステップと、を有
し、
前記コンクリート構造物に対する垂直方向における前記凹部の深さは3mm以上であることを特徴とするコンクリート構造物の防食工法。
【請求項2】
前記防食部材を前記モルタルに圧着する際に前記防食部材は振動を発するバイブレータによって振動を与えられる請求項
1に記載のコンクリート構造物の防食工法。
【請求項3】
前記凹部は、周方向に連続して延在する凸部を有するローラーによって形成される請求項1
または2に記載のコンクリート構造物の防食工法。
【請求項4】
前記防食部材は、板状物と該板状物の一方面に設けられている突起物を有しており、
前記第1のステップの後であり、且つ、前記第2のステップの前の前記モルタルの厚みが、前記突起物の板状物に垂直な方向の長さよりも大きい請求項1~
3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の防食工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工工程が容易であり、空気溜りができにくいコンクリート構造物の防食工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物はその設置環境によっては有害な液体やガスに暴露することで急激に劣化することがある。特に下水道関連施設のコンクリート構造物は、汚水の腐敗によって生じる硫化水素に起因して発生する硫酸により、コンクリート構造物が急激に劣化する。
【0003】
そのため、上記のようなコンクリート構造物の急激な劣化を防ぐため、例えば、特許文献1に記載されているような、既製コンクリート部材の下向き又は横向きの表面に、セメント質分質組成物を付着させると共に表面を平滑に仕上げ、該セメント質分質組成物の固化前に、板状の耐食部材を、裏面に植設されたアンカーを当該セメント質分質組成物に埋め込む形で、前記セメント質分質組成物の表面に押し付けて貼着する耐食ライニングの施工方法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている耐食ライニングの施工方法においては工程が煩雑であり、耐食部材とセメント質分質組成物との間に空隙が生じることによって接着安定性が低下し、防食性能の低下が生じる恐れがあることなどから、耐久性の面でも未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工工程が容易であり、耐久性の高いコンクリート構造物の防食工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決できた本発明のコンクリート構造物の防食工法とは、コンクリート構造物の表面に接合材料を塗布する第1のステップと、第1のステップにおいてコンクリート構造物に塗布された接合材料にコンクリート構造物表面の面内方向に延在する凹部を形成する第2のステップと、凹部が形成された接合材料に防食部材を配置する第3のステップと、を有することを特徴とするコンクリート構造物の防食工法である。本発明の防食工法は、接合材料にコンクリート構造物表面の面内方向に延在する凹部を設け、そこに防食部材を配置することで、防食部材とコンクリート構造物との間の空気が凹部を通って外に抜けやすく、防食部材とコンクリート構造物との間に空気溜りが形成されにくくすることができるもので、耐久性を向上させることができる。また、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法は、例えば、防食部材を建築物の天井表面に配置するような場合であっても支保が必須ではなく、施工者が当該部材を接合材料に対向させて配置すればよいものである。さらに、防食部材を設置した後にアンカー固定を行わずしても防食部材がコンクリート構造物に固定されるものである。このため、施工工程が少なく、特殊機械や大型機材を用いることなく容易にコンクリート構造物の保護を行うことができる。
【0008】
接合材料上に配置された防食部材を凹部の一端から他端に向かって圧着させる第4のステップを有することが好ましい。
【0009】
防食部材を接合材料に圧着する際に防食部材は振動を発するバイブレータによって振動を与えられることが好ましい。
【0010】
接合材料は非流動性の物質であることが好ましい。
【0011】
凹部は、周方向に連続して延在する凸部を有するローラーによって形成されることが好ましい。
【0012】
防食部材は、板状物と該板状物の一方面に設けられている突起物を有しており、第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料の厚みが、突起物の板状物に垂直な方向の長さよりも大きいことが好ましい。
【0013】
凹部は、接合材料を塗布したコンクリート構造物表面の一端から他端に向かって連続していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコンクリート構造物の防食工法は、接合材料にコンクリート構造物表面の面内方向に延在する凹部を設け、その後に防食部材を配置することで、防食部材とコンクリート構造物との間の空気が凹部を通って外に抜けやすく、防食部材とコンクリート構造物との間に空気溜りが形成されにくくすることができるもので、工程が容易であり、耐久性も向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を表す断面図である。xは横方向、yは縦方向、zは高さ方向を示す。
【
図2】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を表す断面斜視図である。xは横方向、yは縦方向、zは高さ方向を示す。
【
図3】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を表す断面斜視図である。xは横方向、yは縦方向、zは高さ方向を示す。
【
図4】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を表す断面図である。xは横方向、yは縦方向、zは高さ方向を示す。
【
図5】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法に用いるローラーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0017】
図1から
図4は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を表す図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法に用いるローラーの上面図である。
【0018】
上記課題を解決できた本発明のコンクリート構造物の防食工法とは、コンクリート構造物10の表面に接合材料11を塗布する第1のステップと、第1のステップにおいてコンクリート構造物10に塗布された接合材料11にコンクリート構造物10表面の面内方向に延在する凹部12を形成する第2のステップと、凹部12が形成された接合材料11に防食部材13を配置する第3のステップと、を有することを特徴とするコンクリート構造物の防食工法である。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法のうち第1のステップ後、第2のステップ前を表す断面図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法のうち、第2のステップ後、第3のステップ前を表す断面斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法のうち第3のステップを行っている様子を表す断面斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を施工したコンクリート構造物を表す断面図である。
【0020】
コンクリートは主にセメント・砂・砂利・水などを混ぜて作られるもので、コンクリート構造物10は、例えば、コンクリートを凝固させたものやコンクリートの中に鉄筋を配した状態で凝固させたものをいう。
【0021】
防食部材13は、少なくとも一部または全体が繊維強化プラスチック(FRP)やビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの薬品に対して耐性を有する材料で形成されている部材であることが好ましい。なかでも、防食性能や強度の観点から、強化繊維を含んだFRPが使用されていることが好ましく、強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、金属繊維、セラミックス繊維などを用いることができる。
【0022】
接合材料11は、コンクリート構造物10と防食部材13を接合する材料である。接合材料11は、コンクリート構造物10の表面に塗布されるもので、
図1ではコンクリート構造物10の下側の表面に接合材料11が塗布される実施の形態を示しているが、コンクリート構造物10の上側の表面、横面の表面のいずれの面に塗布されるものであってもよい。
【0023】
凹部12は
図2で示すように、第1のステップにおいてコンクリート構造物10に塗布された接合材料11の中で周辺よりもコンクリート構造物10からの垂直方向の厚みLが短い部分を有する窪み部分のことをいう。凹部12は
図2で示すように、コンクリート構造物10表面の面内方向に延在するように形成される。
【0024】
図2で示すように、凹部12がコンクリート構造物10の面内方向に直線を描くように延在していてもよいし、その他、凹部12がコンクリート構造物10の面内方向に曲線を描くように延在していてもよいし、凹部12がコンクリート構造物10の面内方向に波形を描くように延在していてもよい。また、
図2で示すようにコンクリート構造物10の面内方向において複数の凹部12は平行に並ぶように形成されていてもよい。また、図示はしないが、コンクリート構造物10の面内方向において複数の凹部12は放射線状や扇状に並ぶように形成されていてもよい。
【0025】
コンクリート構造物10からの垂直方向の凹部12の深さNは1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。コンクリート構造物10からの垂直方向の凹部12の深さNは40mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。凹部12の深さNは、一の凹部12の垂直方向の深さの中で最も深い部分のことをいう。
【0026】
コンクリート構造物10の面内方向に複数の凹部12が形成されていることが好ましく、複数の凹部12が接合材料11に存在するとき、隣り合う凹部12の深さNが同じ深さであることがより好ましく、全ての凹部12の深さNが同じ深さであることがさらに好ましい。ここでいう同じ深さとは、それぞれの凹部12の深さNを測定した後、複数の凹部12の深さNの標準偏差を求めたときの値が5mm以内であれば同じ深さであるというものとする。複数の凹部12の深さNが大きく異なる深さを有している場合、防食部材13を配置した際に極端に深い凹部12に存在する空気が抜けきらない可能性があるが、上記のようにすることで防食部材13の押し込みムラができにくくなるため、防食部材13を配置した際に凹部12から空気が抜けきりやすく、空気溜りが形成されにくくすることができる。
【0027】
防食部材13の形状は特に限定されるものではないが、直方体状や板状のものであることが好ましい。防食部材13が直方体状や板状である場合、接合材料11に対向する面とは反対側の面が上記で示したような薬品に対して耐性を有する材料で構成されていることがより好ましく、接合材料11に対向する面とは反対側の面がFRPで構成されていることがさらに好ましい。
【0028】
本発明のコンクリート構造物の防食工法は、接合材料11に凹部12を設け、そこに防食部材13を配置することで、防食部材13とコンクリート構造物10との間の空気が凹部12を通って外に抜けやすく、防食部材13とコンクリート構造物10との間に空気溜りが形成されにくくすることができるもので、接合部分の安定性を高めることができ、耐久性を向上させることができる。また、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法は、防食部材13を配置する際の支保が必須ではなく、施工者が当該部材を接合材料11に対向させて配置すればよいものである。さらに、防食部材13を設置した後にアンカー固定を行わずしても防食部材13がコンクリート構造物10に固定されるものである。このため、施工工程が少なく、容易にコンクリート構造物10の保護を行うことができる。
【0029】
防食部材13は第3のステップを行うことによって凹部12が形成された接合材料11に配置されるが、防食部材13が接合材料11に配置された後に、防食部材13は接合材料11に押しつけられることが好ましい。防食部材13が接合材料11に押しつけられることで凹部12から空気が抜けやすく、空気溜りが形成されにくくなる。
【0030】
本発明のコンクリート構造物の防食工法は、接合材料11上に配置された防食部材13を凹部12の一端から他端に向かって圧着させる第4のステップを有することが好ましい。例えば、
図2及び
図3のように、直線状の凹部12が図面の手前から奥に向かって連続して存在しているような場合、
図3の矢印Aで示す方向のように、防食部材13が凹部12の一端から他端に向かって押し当てられながら圧着されることで、凹部12は一端から他端に向かって順に押し潰される。このため、空気を凹部12の一端から他端に向かって順に押し出すことができ、防食部材13とコンクリート構造物10との間においてより確実に空気溜りが形成されにくくすることができる。これによって耐久性をより高くすることができる。凹部12が曲線状や波形である場合も同様の理由で、凹部12の一端から他端に向かって圧着させることで上記と同様の効果を得ることができる。
【0031】
防食部材13を接合材料11に圧着する際に防食部材13は振動を発するバイブレータによって振動を与えられることが好ましい。
【0032】
バイブレータは、連続または断続した一定の振動を生む機械のことをいうが、ここではコンクリートを締固める目的でコンクリートに振動を与える際に使用されるバイブレータを用いることが好ましい。
【0033】
防食部材13がバイブレータによって振動を受けることで接合材料11にも振動が伝わるため、接合材料11は比較的空隙の広い部分に押し込まれやすくなる。特に、防食部材13を凹部12の一端から他端に向かって圧着させる第4のステップを行う際にバイブレータによって振動を与えながら圧着することで、凹部12は一端から他端に向かって順により確実に押し潰され、空気を凹部12の一端から他端に向かって順に押し出すことができる。このため、バイブレータを使用して振動を与えながら防食部材13を配置することで、防食部材13とコンクリート構造物10との間においてより確実に空気溜りが形成されにくくすることができる。
【0034】
接合材料11は非流動性の物質であることが好ましい。ここでいう非流動性の物質とは、外因的な力が加わらなければ流動することがなく、力が加わると流動する程度の硬さを有するものをいう。上記のような非流動性の物質を接合材料11として使用することで、凹部12を形成しやすくすることができる。また、防食部材13が凹部12を有する非流動性の物質に押し当てられる際には、凹部12以外の盛り上がっている部分を押し潰しやすくすることができる。これによって、施工が容易になるうえ、容易に空気溜りの形成を防ぐことができる。
【0035】
接合材料11は、モルタルであることが好ましい。モルタルは、主にセメントと砂と水を混ぜて作られるもので、これらの材料の混合割合を変更することで容易に硬さを調節することができる。このため凹部12の形成を行いやすい硬さにすることができる。また、接合材料11として用いるモルタルは、チクソ性の高いものであると施工が容易になるためより好ましい。
【0036】
モルタルは左官コテなどを用いてコンクリート構造物10に塗布すればよく、その後、モルタルが硬化する前に凹部12を形成し、防食部材13を配置すればよい。モルタルが硬化した後はコンクリート構造物10と防食部材13は強固に接合された状態が保たれるため、強度を担保する点でもモルタルが接合材料11として使用されることが好ましい。
【0037】
凹部12は、施工者が指を接合材料11に押し当てて指で線を描くようにして形成されてもよいし、直径0.5cmから2.0cmほどの円柱状の棒を接合材料11に押し当てるようにして形成されてもよいし、コテの端部を波型、三角または四角に加工したパターンコテなどを用いて形成されてもよいが、凹部12は、周方向に連続して延在する凸部21aを有するローラー2によって形成されることが好ましい。
【0038】
ローラー2は、
図5で示すように、周方向に連続して延在する凸部21aを有するものであることが好ましく、凸部21aはローラー2の回転軸方向に複数存在していることがより好ましい。上記のような構成を有するローラー2を使用することで、1回の賦形作業で複数の凹部12を形成することができる。
【0039】
ローラー2は、周方向に対して垂直な方向に存在している複数の凸部21aが等間隔であることが好ましい。ただし、ここでいう等間隔とは、隣り合う凸部21aの先端同士を結ぶ最短距離Pの標準偏差を求めたときの値が5mmよりも小さい値であるとき、等間隔であるというものとする。
【0040】
コンクリート構造物10に塗布した接合材料11の表面上において、
図5に示すような複数の凸部21aを有するローラー2を転がすことで、凹部12の深さにばらつきができることがなく、防食部材13の押し込みムラができにくいため、防食部材13を配置した際に空気溜りが形成されにくくすることができる。また、ローラー2を使用することで、凹部12を容易に、効率的に形成することができるため、施工にかかる時間や施工後の仕上がりが施工者の経験年数や習熟度に依存しにくくなる。
【0041】
防食部材13は、板状物13aと該板状物13aの一方面に設けられている突起物13bを有しており、第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料11の厚みが、突起物13bの板状物13aに垂直な方向の長さMよりも大きいことが好ましい。
【0042】
板状物13aは、防食部材13のうち直方体状の形状をした板状の部分のことをいう。突起物13bは、板状物13aの一方面に設けられている板状物13aから突出した部分のことをいう。突起物13bの形状は、例えば
図3及び
図4に示すような直方体状のものであってもよいし半円状のものであってもよく、かえしの構造を有する形状であってもよい。他にも、二股の形状や、先端部分のみが肥大している形状の突起物13bであってもよい。このような突起物13bを有することで、接合材料11と接触する表面積を大きくしたり、接合材料11との引っかかりを持たせることができ、より強く固定することができる。
【0043】
防食部材13としては、上記のような構成の突起物13bを有するものを使用することができるが、実用新案登録第2594065号に示されているコンクリート用防食板のように、立体編み物の片面に、立体編み物の間隙が残存するように、FRP層からなる合成樹脂層を設けたものを使用することがより好ましい。実用新案登録第2594065号に示されているコンクリート用防食板を防食部材13として使用することで、該実用新案の
図2に示されているような六角柱状の突起物が網目状に存在することで、接合材料11と接触する表面積をより大きくしたり、引っかかりを持たせることができ、より強固に固定することができる。
【0044】
さらに、第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料11の厚みLが、突起物13bの板状物13aに垂直な方向の長さMよりも大きいと、接合材料11にある程度の厚みがあるため、コンクリート構造物10と防食部材13の間で隙間ができにくい。また、凹部12を形成しやすく、防食部材13を配置する際にも余分の接合材料11が空隙のある部分に順に押し込まれることができるため、空気を外に逃がしやすくすることができる。
【0045】
第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料11の厚みLは、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料11の厚みLは、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることがさらに好ましい。ここでいう第1のステップの後であり、且つ、第2のステップの前の接合材料11の厚みLとは接合材料11が有するコンクリート構造物10に対して垂直方向の厚みのことで、当該厚みの中で最も長い部分と最も短い部分の平均を接合材料11の厚みLとする。
【0046】
突起物13bの板状物13aに垂直な方向の長さMは、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。突起物13bの板状物13aに垂直な方向の長さMは、30mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。ここでいう突起物13bの板状物13aに垂直な方向の長さMとは、突起物13bの有する板状物13aに垂直な方向の長さの中で最も長いものをいう。
【0047】
凹部12は、接合材料11を塗布したコンクリート構造物10表面の一端から他端に向かって連続していることが好ましい。
図2に示すように、凹部12がコンクリート構造物10の図面に向かって手前側の一端から奥側の他端に向かって連続していると、防食部材13とコンクリート構造物10との間に存在する接合材料11に存在する空気が凹部12を通って外に抜けやすく、防食部材13とコンクリート構造物10との間に空気溜りが形成されにくくすることができる。
【0048】
第3のステップの後、または、第4のステップの後に隣り合う複数の防食部材13同士の目地部分に目地材を配置することが好ましい。目地材としては例えば、シリコーン系シーリング材、ウレタン系シーリング材、アクリル系シーリング材などから適宜選択すればよいが、耐久性の観点からシリコーン系シーリング材を使用することが好ましい。また、目地部分において上記のようなシーリング材を配置した後に板状のジョイントカバーを配置し、目地の部分をジョイントカバーで覆うことでさらに保護するものとしてもよい。上記のようにシーリング材を配置した後に板状のジョイントカバーを配置することで、シーリング材によってジョイントカバーが防食部材13と接着されるため、ジョイントカバーを接着するための施工工程が少なく済むうえ、目地部分の耐久性を向上させることができるものとなり、コンクリート構造物10の耐久性をより高いものにすることができる。ジョイントカバーは、防食部材13の説明で示したような材料で形成されることができる。ジョイントカバーの形状は、短辺が30mm~100mm、長辺が500mm~3000mm、厚さが0.5mm~10mmの直方体状であることが好ましく、短辺50mm、長辺1800mm、厚さ2mmの直方体状のFRP製の板であることがより好ましい。ジョイントカバーが目地部分に配置される際は、該目地とジョイントカバーの長辺が平行になることが好ましい。ここでいう目地とジョイントカバーの長辺が平行とは、実質的な平行の±10°以内を意味するものとする。
【0049】
従来の方法でコンクリート構造物にモルタルを塗布してから防食部材を貼る施工を行うと、防食部材とコンクリート構造物との間に空気溜りが形成されやすく、防食部材を設置した後で浮きを抑制するための処理が別途必要であった。しかし、本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の防食工法を実施すれば、コンクリート構造物10と防食部材13の間に存在する接合材料11に空気溜りが形成されにくくなるため、上記のような防食部材13を設置した後の浮き抑制のための処理を行う必要もないため、施工者の負担を減らすことができる。
【0050】
以上の通り、本発明のコンクリート構造物の防食工法は、接合材料に凹部を設け、そこに防食部材を配置することで、防食部材とコンクリート構造物との間の空気が凹部を通って外に抜けやすく、防食部材とコンクリート構造物との間に空気溜りが形成されにくくすることができるもので、工程が容易であり、耐久性も向上させることができるものである。
【符号の説明】
【0051】
1: コンクリート構造物の防食工法を施工したコンクリート構造物
2: ローラー
10: コンクリート構造物
11: 接合材料
12: 凹部
13: 防食部材
13a:板状物
13b:突起物
20: 持ち手
21: 本体部
21a:凸部