(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】流体透過性材料のコーティング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220224BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220224BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/455
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020098635
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510275024
【氏名又は名称】ピコサン オーワイ
【氏名又は名称原語表記】PICOSUN OY
【住所又は居所原語表記】Tietotie 3, FI-02150 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルコ,プダス
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-306625(JP,A)
【文献】特開平06-057433(JP,A)
【文献】特表2016-506013(JP,A)
【文献】特開2016-222530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蒸着により流体透過性基板の表面にコーティングを形成するように構成された反応器アセンブリ(100)であって:
-コーティングされる標的表面(10A)を有する流体透過性基板(10)を少なくとも部分的に受け入れるように構成された反応チャンバー(101);
-反応性流体(12)の前記反応チャンバーの中への流れを媒介するように構成された少なくとも1つの反応性流体吸入ライン(21);および
-前記表面において、前記反応性流体(12)の流れが前記流体透過性基板(10)の中に透過するのを防ぐように、不活性流体(11)の流れが前記反応性流体(12)の流れに出会うように、その標的表面に向かう前記流体透過性基板(10)を通る前記不活性流体(11)の流れを媒介するように構成された少なくとも1つの封鎖部分(31)を有する不活性流体供給装置;
-少なくとも1つの不活性流体流調整装置(33)、
を備え、
前記少なくとも1つの不活性流体調整装置(33)は、所定の時点で前記不活性流体(11)の流れを変え、特に、前記反応性流体(12)が前記基板(10)の前記標的表面(10A)に到達する時点で前記不活性流体(11)の流れを中断するように構成され、それによって、前記標的表面(10A)における前記反応性流体(12)の前記流体透過性基板(10)の中への透過深さを調整するように構成され、かつ前記流体透過性基板の前記標的表面(10A)全体に、所定の深さ分解能までコーティング(121)が形成されるように構成される、反応器アセンブリ(100)。
【請求項2】
前記基板の前記標的表面(10A)のみが前記反応性流体(12)の流れに曝露されるように、前記流体透過性基板(10)が前記反応チャンバー(101)の中に受け入れられる、請求項1に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項3】
前記封鎖部分(31)は前記反応チャンバー(101)から分離して配置されており、かつ前記封鎖部分と前記反応チャンバーとの間の流体の流れは前記流体透過性基板(10)を介してのみ生じる、請求項1または2のいずれか1項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項4】
前記封鎖部分(31)と前記反応チャンバー(101)との間の流体の流れが前記流体透過性基板(10)を介してのみ生じるように、前記封鎖部分(31)は前記反応チャンバー(101)に隣接するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ。
【請求項5】
前記流体透過性基板(10)は前記封鎖部分(31)の内部に少なくとも部分的に受け入れられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項6】
前記不活性流体供給装置は少なくとも1つの不活性流体吸入ライン(311)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項7】
前記封鎖部分(31)は本質的に前記反応チャンバー(101)の外部に設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項8】
前記封鎖部分(31)は蓋(102)の中に設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項9】
前記封鎖部分(31)は前記反応チャンバー(101)の本質的に内部に設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項10】
前記封鎖部分(31)は前記流体透過性基板(10)のための基板ホルダーとして構成されている、請求項9に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項11】
前記不活性流体供給装置は、少なくとも1つの不活性流体吸入ライン(311)をさらに備え、かつ前記反応器アセンブリ(100)は、前記封鎖部分(31)および/または1つ以上の前記不活性流体吸入ライン(311)に隣接しているかそれらの中に一体化されている少なくとも1つの加熱要素(313、313A)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの反応性流体吸入ライン(21)の中の前記反応性流体(12)の流れを制御するように構成された少なくとも1つの反応性流体流調整装置(23)をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項13】
原子層堆積(ALD)装置、任意に光支援ALD装置として構成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の反応器アセンブリ(100)。
【請求項14】
化学蒸着により流体透過性基板の表面をコーティングするための方法であって:
-コーティングされる標的表面(10A)を有する流体透過性基板(10)を少なくとも部分的に受け入れるように構成された反応チャンバー(101)を有する化学蒸着反応器(100)を得る工程;
-反応性流体(12)を前記反応チャンバーの中に導く工程;
-前記表面において、前記反応性流体(12)の流れが前記流体透過性基板(10)の中に透過するのを防ぐように、不活性流体(11)の流れが前記反応性流体(12)の流れに出会い、それにより前記流体透過性基板の前記標的表面(10A)上においてコーティング(121)が形成されるように、前記不活性流体(11)を流体透過性基板(10)を通して前記標的表面(10A)に向かって導く工程、
を包含し、
前記方法において、前記反応性流体(12)が前記流体透過性基板(10)の中に透過する深さは、所定の時点で前記不活性流体(11)の流れを変えることによって調整され、特に、前記反応性流体(12)が前記基板(10)の前記標的表面(10A)に到達する時点で前記不活性流体(11)の流れを中断することによって調整され、それによって、前記流体透過性基板の前記標的表面(10A)全体に、所定の深さ分解能までコーティング(121)が形成される、ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
封鎖部分(31)と前記反応チャンバー(101)との間の流体の流れが前記流体透過性基板(10)を介してのみ生じるように、前記不活性流体(11)は、前記反応チャンバー(101)とは分離して配置された少なくとも1つの前記封鎖部分(31)を有する不活性流体供給装置により前記流体透過性基板を通して導かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性流体(12)の前記基板(10)の内部への透過が防止されるように、前記不活性流体(11)は前記流体透過性基板を通して前記標的表面(10A)に向かって導かれる、請求項14または15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応性流体(12)が前記標的表面(10A)における前記流体透過性基板(10)の中に透過する深さを調整するために、前記反応性流体(12)が前記流体透過性基板(10)の前記標的表面(10A)に到達する時点で前記不活性流体(11)の流れを中断して反転させる、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応チャンバーの中に供給される前記反応性流体(12)は所定の前駆体化合物(12-1、12-2)を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
いくつかの所定の前駆体(12-1、12-2)は前記反応チャンバーの中に順番に供給され、かつ各前駆体の供給後に前記反応チャンバー(101)の洗い流しが行われ、前記洗い流しは不活性流体
を少なくとも1つの反応性流体吸入ライン(21)および/または前記少なくとも1つの封鎖部分(31)を介して前記反応チャンバー内に導くことによって行われる、請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
センサ装置、特にガスセンサ装置をコーティングするための、請求項1~13のいずれか一項に記載の反応器アセンブリの使用。
【請求項21】
固体状態の多孔性触媒を製造するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の反応器アセンブリの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、薄層堆積方法および関連する機器に関する。特に本発明は、反応器アセンブリおよび化学蒸着技術を用いて多孔性材料などの流体透過性材料の表面にコーティングを形成するための関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学気相蒸着(CVD)および原子層堆積(ALD)などの化学蒸着方法は当該技術分野において広範囲に記載されている。一般にCVDプロセスのサブクラスとみなされているALD技術は、3次元基板構造の表面に高品質でコンフォーマルなコーティングを形成するための効率的なツールであることが分かっている。
【0003】
ALDは交互の自己飽和表面反応に基づいており、ここでは非反応性(不活性)ガス状担体中の化合物または元素として提供される異なる反応物(前駆体)を、基板を収容する反応空間の中に順次導入する。反応物の堆積後に当該基板を不活性ガスでパージする。従来のALDサイクルは2つの半反応(第1の前駆体の導入およびパージと第2の前駆体の導入およびパージ)で進行し、これにより典型的には0.05~0.2nmの厚さの材料の層が自己制御(自己飽和)的に形成される。このサイクルを所定の厚さを有する膜を得るために必要に応じて何度でも繰り返す。各前駆体のための典型的な基板曝露時間は0.01~1秒以内の範囲である。一般的な前駆体としては金属酸化物、元素金属、金属窒化物および金属硫化物が挙げられる。
【0004】
ALDは、1種以上の前駆体ガスが多孔性基板を通って流れ、かつそれらの孔の内部を完全にコーティングするという理由で、様々な化学物質が含浸した本質的に多孔性の構造の表面にコーティングを形成するためのその方法の能力の点からみて大きな利点を提供する。
【0005】
しかし、同じ機能性が本質的に多孔性の材料の表面へのコーティング層の形成に適用された場合に顕著な欠点となる。従来のALDプロセスでは、前駆体ガスを1秒で約1mmの深さまで特定の多孔性基板の中に吸収させることができる。ナノメートル規模の厚さの膜の形成が望まれる場合、前記多孔性基板から過剰な(約1mmの深さまで透過される)反応性化学物質の除去が必要となる。これは、各導入後に1分以上などの比較的長い時間にわたって当該基板を不活性ガスで洗い流す(パージする)ことによって達成される。(前駆体)導入持続時間が典型的には0.1秒であり、かつパージ持続時間が典型的に各導入後1~10秒であることを考慮に入れると(例えば非多孔性基板の場合)、導入ごとに1分以上の時間で洗い流すことは当該手順を著しく妨害する。さらに大部分の場合に、多孔性基板に形成されたコーティング層の均一性を制御することは不可能である。他方、導入持続時間(秒)の短縮により反応性化学物質の多孔性基板への透過深さに対する制御性は向上しない。故に、従来のALD方法による多孔性基板の表面への薄膜の形成は均一性の欠如、低い膜厚の制御およびその結果としての当該方法の不十分なレベルの再現性によって妨害される。
【0006】
この点に関して、表面がコーティングされた多孔性材料を製造する際のALDの適用に伴う課題に対処するために、原子層堆積技術の更新がなお望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来の技術の限界および欠点から生じる問題のそれぞれを解決するか少なくとも軽減することにある。この目的は、化学蒸着により本質的に流体透過性の基板の表面にコーティングを形成するために構成された反応器アセンブリ、関連する方法およびその使用の様々な実施形態によって達成される。従って本発明の一態様では、反応器アセンブリが独立請求項1に記載されている内容に従って提供される。
【0008】
好ましい実施形態では、コーティングされる標的表面を有する流体透過性基板を少なくとも部分的に受け入れるように構成された反応チャンバーと、反応性流体の反応チャンバーの中への流れを媒介するように構成された少なくとも1つの反応性流体吸入ラインと、前記表面において不活性流体の流れが反応性流体の流れに出会い、それにより前記基板の標的表面にコーティングが形成されるように、その標的表面までの流体透過性基板を通る不活性流体の流れを媒介するように構成された少なくとも1つの封鎖部分を有する不活性流体供給装置とを備える、反応器アセンブリが提供される。
【0009】
前記反応器アセンブリにおいて、流体透過性基板は、前記基板の標的表面のみが反応性流体の流れに曝露されるように反応チャンバーの中に受け入れられる。
【0010】
複数の実施形態では、前記封鎖部分と反応チャンバーとの間の流体の流れが流体透過性基板を介してのみ生じるように、封鎖部分は反応チャンバーに隣接するように構成されている。
【0011】
複数の実施形態では、流体透過性基板は封鎖部分の内部に少なくとも部分的に受け入れられる。
【0012】
複数の実施形態では、不活性流体供給装置は少なくとも1つの不活性流体吸入ラインをさらに備える。
【0013】
複数の実施形態では、封鎖部分は本質的に反応チャンバーの外部に設けられている。複数の実施形態では、封鎖部分は反応器の蓋の中に設けられている。
【0014】
他の実施形態では、封鎖部分は本質的に反応チャンバーの内部に設けられている。複数の実施形態では、封鎖部分は流体透過性基板のための基板ホルダーとして構成されている。
【0015】
複数の実施形態では、反応器アセンブリは、封鎖部分および/または1つ以上の不活性流体吸入ラインに隣接しているかそれらの中に一体化されている少なくとも1つの加熱要素をさらに備える。
【0016】
複数の実施形態では、反応器アセンブリは、所定の時点で不活性流体の流れを変え、かつ標的表面における反応性流体の流体透過性基板の中への透過深さを調整するように構成された少なくとも1つの不活性流体流調整装置をさらに備える。
【0017】
複数の実施形態では、反応器アセンブリは、少なくとも1つの反応性流体吸入ラインの中の反応性流体の流れを制御するように構成された少なくとも1つの反応性流体流調整装置をさらに備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、反応器アセンブリは原子層堆積(ALD)装置として構成されている。いくつかの実施形態では、反応器アセンブリは光支援ALD装置として構成されている。さらなる実施形態では、反応器アセンブリはプラズマ強化原子層堆積(PEALD)装置として構成されている。
【0019】
別の態様では、化学蒸着により流体透過性基板の表面をコーティングするための方法が独立請求項15に記載されている内容に従って提供される。
【0020】
一実施形態では、上記方法は、コーティングされる標的表面を有する流体透過性基板を少なくとも部分的に受け入れるように構成された反応チャンバーを有する化学蒸着反応器を得る工程と、反応性流体を反応チャンバーの中に導く工程と、前記表面において不活性流体流が反応性流体流に出会い、それにより前記流体透過性基板の標的表面にコーティングが形成されるように、不活性流体を流体透過性基板を通して標的表面に向かって導く工程とを含む。
【0021】
前記方法において、不活性流体は、封鎖部分と反応チャンバーとの間の流体の流れが流体透過性基板を介してのみ生じるように、反応チャンバーから分離して配置された少なくとも1つの封鎖部分を有する不活性流体供給装置により流体透過性基板を通して導かれる。
【0022】
複数の実施形態では、不活性流体は、反応性流体の前記基板の内部への透過が防止されるように、流体透過性基板を通して標的表面に向かって導かれる。
【0023】
複数の実施形態では、反応性流体が流体透過性基板の中に透過する深さは、所定の時点で不活性流体の流れを変えることによって調整される。
【0024】
いくつかの実施形態では、反応性流体が流体透過性基板の中に透過する深さは、反応性流体が前記基板の標的表面に到達する時点で不活性流体の流れを中断することによって調整される。
【0025】
いくつかのさらなる実施形態では、反応性流体が流体透過性基板の標的表面に到達する時点で不活性流体の流れを中断して反転させ、それにより反応性流体は前記基板の中に透過するのが許される。
【0026】
複数の実施形態では、反応チャンバーの中に供給される反応性流体は所定の前駆体化合物を含む。
【0027】
複数の実施形態では、いくつかの所定の前駆体が反応チャンバーの中に順番に供給される。当該実施形態では、各前駆体の供給後に反応チャンバーの洗い流しが行われ、この洗い流しは、不活性流体を少なくとも1つの反応性流体吸入ラインおよび/または少なくとも1つの封鎖部分を介して前記反応チャンバー内に導くことによって行われる。
【0028】
他の実施形態では、コーティングは単一の前駆体化合物から形成される。
【0029】
複数の実施形態では、流体透過性基板は多孔性基板または粒子状基板である。
【0030】
複数の実施形態では、流体透過性基板は多孔性金属、多孔性セラミックスおよび多孔性ポリマーからなる群から選択される。
【0031】
複数の実施形態では、流体透過性基板の標的表面に形成されたコーティング層は触媒化合物を含む。
【0032】
さらなる態様では、上記態様に係る方法によって形成されたコーティング層を含む表面を有する流体透過性材料のコーティングされた物品が独立請求項23に記載されている内容に従って提供される。
【0033】
複数の実施形態では、前記コーティングされた物品は粒子状材料によって確立された流体透過性材料を含む。複数の実施形態では、前記コーティングされた物品は、多孔性金属、多孔性セラミックスおよび多孔性ポリマーからなる群から選択される多孔性材料によって確立された流体透過性材料を含む。当該実施形態では、前記コーティングされた物品の表面に形成されたコーティング層は触媒化合物を含む。
【0034】
複数の実施形態では、コーティングされた物品は、その中に少なくとも1つの開口部または経路を含む多孔性材料で作られた本体として構成されている。
【0035】
なおさらなる態様では、センサ装置、特にガスセンサ装置をコーティングするためのいくつかの上記態様に係る反応器アセンブリの使用が独立請求項27に記載されている内容に従って提供される。
【0036】
なおさらなる態様では、固体状態の多孔性触媒を製造するためのいくつかの上記態様に係る反応器アセンブリの使用が独立請求項28に記載されている内容に従って提供される。
【0037】
本発明の有用性はその各特定の実施形態に応じた様々な理由により得られる。本発明は、様々な程度の多孔度(例えば1~99%)を有する多孔性材料の表面に、比較的速く、かつ努力を要しない方法で薄膜の形態でコーティングを堆積させる工程を提供する。実際には本発明は、非多孔性基板の表面への堆積のための速度と同じか少なくとも匹敵する速度で多孔性基板の表面で化学蒸着反応を行うのを可能にする。迅速な製造速度により生産チェーン全体の費用対効果を高めることが可能になる。
【0038】
従って本発明は、前記反応空間の中への前駆体の導入の間に不活性流体により反応空間を洗い流す工程を時間に関して著しく短縮するのを可能にする。
【0039】
本発明は、前駆体が多孔性基板の中に透過することが許される程度を示す尺度を微調整する工程をさらに提供し、それにより深さ分解能(コーティングの厚さを示す)を高精度に制御することができる。これは、マイクロおよびナノ電子機器などのサブミクロンの分解能を有する多孔性基板への層の堆積を必要とする用途および/または医学的用途(例えばインプラント)にとって特に重要である。
【0040】
さらに本明細書に開示されている反応器設備は、様々な形状およびサイズの基板を収容するという点で極めて柔軟である。従って当該反応器は、シート、スラブおよびディスクなどの比較的単純な形状の単一もしくは複数の基板または本質的に複雑な3D形状を有する1つ以上の基板を収容するように構成することができる。大抵の場合、コーティングされた物品は固体状態の触媒のための支持体の提供および/またはセンシング装置の提供などの様々な用途のためにすぐに使える物品を確立する。
【0041】
本開示では、1マイクロメートル(μm)未満の層厚を有する材料を「薄膜」と呼ぶ。
【0042】
「反応性流体」という表現は、本開示では不活性担体中に少なくとも1種の化学物質(以後、前駆体)を含む流体の流れを示す。この表現は、各前駆体が1種ずつ反応チャンバーの中に導入されるように少なくとも2種の異なる前駆体を順番に運ぶように構成された流体の流れにさらに適用可能である。
【0043】
本出願の文脈ではALDという用語は、全ての適用可能なALDに基づく技術およびあらゆる同等もしくは密接に関連する技術、例えば以下のALDサブタイプ:プラズマ支援ALD、PEALD(プラズマ強化原子層堆積)およびフォトン強化原子層堆積(光ALDまたはフラッシュ強化ALDとしても知られている)などを含む。
【0044】
いくつかの(a number of)」という表現は本開示では1から開始する任意の正の整数、例えば1、2または3を指す。「複数の」という表現は本明細書では2から開始する任意の正の整数、例えば2、3または4を指す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、本発明の一態様に係る化学蒸着反応器アセンブリの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図2】本発明の一態様に係る化学蒸着反応器アセンブリの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図3】
図3A~
図3Dは、当該実施形態に係る反応器アセンブリ内の特定の要素の提供を概略的に示す。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、本発明の一態様に係る化学蒸着反応器アセンブリの様々な実施形態を概略的に示す。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、当該実施形態に係る反応器アセンブリの動作方法の基礎をなす概念を概略的に示す。
【
図6】当該実施形態に係るコーティング方法を概略的に示す。
【
図7】当該実施形態に係る化学蒸着反応器アセンブリを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
添付の図面を参照しながら本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示する。同じ部材を指すために図面全体を通して同じ符号が使用されている。以下の抜粋された符号は当該部材のために使用されている。
100 反応器アセンブリ
101 反応チャンバー
102 蓋
103 中央排気ライン/ポンプフォアライン
104 ポンプ
105 弁(排気)
10、10A 多孔性基板およびそれに応じたコーティングされるその標的表面
11 不活性流体
11A 1種以上の前駆体化学物質のための不活性担体流体
12 反応性流体
12-X、12-1、12-2 前駆体
13 排気流
21 反応性流体吸入ライン
22 反応チャンバーの中に反応性流体を受け入れるための入口
23 反応性流体流調整装置
24 前駆体供給源
25 前駆体流調整装置
31 不活性流体供給装置内の封鎖部分
31A 一実施形態に係る封鎖部分31内の開口部
31-1、31-2 一実施形態に係る補助的封鎖部分
311 不活性流体吸入ライン
312 不活性流体排出ライン(任意)
313、313A 加熱要素
314 供給物貫通保持装置
32 電磁放射線源
33 不活性流体流調整装置
34 運搬装置
35 載置装置
36 取り出し装置
110 外部チャンバー
121 コーティング
【0047】
図1、
図2、
図4および
図7は、様々な実施形態に係る反応器アセンブリ(以後、「反応器」)を100で示す。全ての構成において、反応器100は、例えば化学蒸着により本質的に流体透過性の基板の表面にコーティングを形成するのを可能にするように実装されている。本質的に流体透過性の基板は好ましくは多孔性材料で作られた基板(
図1、
図2、
図4)または代わりとして粒子状材料で作られた基板(
図7)である。
【0048】
当該反応器は好ましくは、気相蒸着に基づく技術の原理を利用するように構成されている。全体的実装に関して反応器100は、例えば米国特許第8211235号(Lindfors)に記載されているALD設備またはフィンランドのPicosun Oy社から入手可能なPicosun R-200 Advanced ALDシステムとして商標登録されている設備に基づいていてもよい。それにも関わらず、本発明の概念の基礎をなす特徴は、例えばALD、MLD(分子層堆積)またはCVD装置として具体化されている任意の他の化学蒸着反応器の中に組み込むことができる。
【0049】
一実施形態に係る反応器100を示す
図1Aを参照する。反応器100は反応チャンバー101を備える。反応空間(堆積空間)は前記反応チャンバー101の内部によって確立されている。
【0050】
場合によっては、反応チャンバー101は蓋102(
図1~
図3、
図6)で密閉される上部が開放された容器として構成することができる。従って
図1~
図3および
図6に示されている反応チャンバーはシャワーヘッド型の流れを有する。反応器100は上から見た場合に本質的に円形のレイアウトを有する。
【0051】
場合によっては、反応チャンバーは側部または底部から載置可能な容器として構成することができる(図示せず)。そのような構成では、蓋は反応容器の側方(側壁内)または底に配置されたハッチとして構成されている。そのような種類の反応チャンバーは、例えば側方から吹き付けられる直交流を有してもよい。
【0052】
反応器100は、反応チャンバー101の中への反応性流体12の流れを媒介するように構成されたいくつかの器具をさらに備える。上記器具はいくつかの吸入ライン(以後、供給経路)21および以下にさらに開示されている弁などの関連する切換および/または調整装置23として提供される。
【0053】
図1Aは、前駆体流体12が対応する入口22を介して少なくとも1つの供給経路21によって反応チャンバー101の内部に供給される実施形態を示す。
【0054】
場合によっては、当該反応器は2つ、3つまたはそれ以上の供給経路21および対応する数の入口22(図示せず)を備えることが好ましい。そのような構成によって、いくつかの異なる前駆体をそれに応じた別個の供給経路および入口を介して反応チャンバーの中に導くことができる。反応器100は、堆積プロセスおよび装置設計の観点から可能であるとみなされるだけ多くの供給経路および関連する入口を備えることができる。
【0055】
当該反応器は供給経路21を備えずにさらに構成することができる(すなわち供給経路21が完全に省略されている)。そのような場合、弁23は反応チャンバー101を形成している容器の側壁または蓋102の中に一体化されている。
【0056】
いくつかの構成では当該反応器は、1つの共通の入口22またはいくつかの共通の入口を有するいくつかの供給経路ならびに様々な前駆体供給源および1つ以上の不活性ガス供給部(図示せず)に接続可能な定量吐出配管を備えていてもよい。
【0057】
1種以上の前駆体は流体の形態で供給経路21の中に供給される。供給経路21を通って流れる反応性流体12は好ましくは不活性担体11Aによって運ばれる所定の前駆体化学物質12-Xを含むガス状物質である。1種以上の前駆体は例えば容器、カートリッジまたは配管システムとして構成された1つ以上の供給源24から供給経路21の中に供給される。各供給源24は好ましくは化合物または元素として提供される所定の前駆体12-Xを含む。各供給源24には例えば手動の閉鎖弁として提供される少なくとも1つの弁25が備えられている。ALD反応などの堆積反応のために必要とされる様々な前駆体化学物質は単一の供給経路21を介して反応空間の中に導くことができる。
【0058】
場合によっては、1種以上の前駆体12-Xはアンモニアガス(NH3)などのガスの形態で提供される。いくつかの他の場合には、1種以上の前駆体は液体もしくは固体の形態で提供され、かつ不活性担体に混合する前に気化させることができる。
【0059】
不活性担体11Aは、本質的に前駆体(反応物)および反応生成物と全く反応しない窒素(N2)、アルゴン(Ar)またはあらゆる他の好適なガス状の媒体などの流体、好ましくはガスである。不活性担体ガス11Aは1つ以上の別個の供給源(図示せず)から供給される。
【0060】
一例として、微小電気機械システム(MEMS)を作製するのに普及しているトリメチルアルミニウム(第1の前駆体)および水(第2の前駆体)を用いて酸化アルミニウムを堆積させるためのALDプロセスは、同じ供給経路21または2つの異なる供給経路を介して2つの供給源24から反応チャンバーの中に順次供給される2種の化学物質を用いる。
【0061】
各層が別個のALDサイクルで形成され、かつ/または前記層が組成の点で互いに異なる複雑な多層構造(いわゆる積層体)の製造では、3種またはそれ以上の異なる前駆体およびそれに応じた供給源を用いてもよい。
【0062】
場合によっては、例えば溶媒中の所定の前駆体などの化合物の混合物を同じ供給源24から供給することができる。
【0063】
異なる供給源から供給される1種以上の前駆体12-Xおよび不活性担体11Aはマルチポート弁23を介して供給経路21に入る。弁23は、自動化制御システムおよび任意に手動のバックアップ制御による例えば3ポート弁として構成されている。好ましい構成では、弁23は三方ALD弁である。ALD弁は、反応チャンバーの中への不活性担体流体11Aの定常流を維持し、かつ流体の1種以上の前駆体12-Xを所定の時点で前記担体の中に導入するように構成されている。ALD弁は前駆体12-Xを(連続的に)流れている担体の中に注入するように構成することができる。追加または代わりとして、例えば1つ以上のマスフローコントローラなどの他の制御手段(図示せず)を前記弁23の上流に設けて、前駆体12-Xが供給経路21の中に注入されている期間に担体流体11Aの流れを中断することができる。いずれの状況でも、前駆体の注入は短い導入(0.01~100秒、典型的には0.1秒)で行う。
【0064】
当該反応器が2つ以上の供給経路21を備えている構成では、各前記供給経路にALD弁23が備えられていることが好ましい。
【0065】
1つ以上の供給経路21および関連する1つ以上の弁23は一緒に反応性流体供給装置を確立する。前記装置は弁23の上流に配置された前駆体および不活性担体吸入ライン、例えば1つ以上の弁25などのさらなる流体流調整器具ならびに制御装置(図示せず)などのいくつかの補助的構成要素をさらに備えていてもよい。
【0066】
いくつかの構成(図示せず)では、供給経路21は、例えば反応性流体12を蓋102を介して反応チャンバー101の中に導くように構成されていてもよい。蓋102はそのエッジに沿っておよび/またはその周りに1つ以上のフランジを任意に含んでいてもよい。
【0067】
反応器100は、過剰な担体、前駆体および反応生成物などの排気流13を反応チャンバー101から排出するための排気ライン103をさらに備える。排気ライン103は排気ポンプ104のためのフォアラインを構成し、かついくつかの構成では好ましくはポンプユニット104の上流に閉鎖弁105を備えていてもよい。反応チャンバーからの流体物質の回収を途切れなく行い、それにより好ましくは真空ポンプとして構成されたポンプユニット104により全堆積プロセスの間に反応チャンバーから流体物質を連続的に除去することが好ましい。
【0068】
反応チャンバー101を操作、載置および取り出し中に真空下に維持し、その際にその中の圧力を典型的には100Pa(1mbar)または好ましくはそれ未満のレベルに維持することが好ましい。さらにいくつかの構成では、反応チャンバー内の圧力を周囲圧力と同じレベルに設定する。
【0069】
図1Bに示されている構成では、反応器100はその中に反応チャンバー101が収容される外側ハウジング110をさらに備える。場合によっては、前記外側ハウジング110の内部によって確立された中間空間を真空下に維持し、これを真空室と呼ぶ。前記中間空間内の圧力を少なくとも1kPa(10mbar)のレベルに維持して、反応チャンバー101の内部と外側ハウジング110の内部との圧力差(典型的には100Pa未満)を確立することが好ましい。
【0070】
前記中間空間はいくつかの加熱要素313、313Aをさらに収容することができる。いくつかの加熱要素313は例えば反応チャンバー101に隣接するように配置することができる。追加または代わりとして、いくつかの加熱要素は反応チャンバー101を形成する容器の1つ以上の壁に一体化させることができる。さらなる追加もしくは代替構成では、例えば供給経路21を介してガスなどの予め加熱した流体をその中に導くことによって反応空間の加熱を行うことができる。そのような場合、いくつかの加熱要素は例えば前記供給経路21に隣接するかそれを包含するように、あるいは前記供給経路を形成するパイプ(図示せず)の中に組み込むように配置することができる。
【0071】
外側ハウジング110はさらに、
図1Bに示されている同じ方法で
図2、
図4A、
図4Bおよび
図7に示されている構成の中に含めることができる。
【0072】
再度
図1Aを参照すると、多孔性材料として構成され、かつコーティング層をその上に堆積させることが意図されている標的表面10Aを有する流体透過性基板10は、反応チャンバー101の中にその全体または少なくとも一部がさらに受け入れられる。本発明の目的のために、標的表面10A以外の前記基板の1つ以上の他の表面が反応性流体の流れに曝露されない方法で基板10が反応チャンバーの中に受け入れられることが好ましい。従って、反応器アセンブリにおける基板10の位置は、反応性流体12の流れに曝露されるのが前記多孔性材料の標的表面10Aのみであるような位置である。
【0073】
「標的表面」という表現は、本明細書ではコーティングされる多孔性材料の外面を表す。
図1~
図6を参照すると、「多孔性材料」とは前記多孔性材料からなるかそれを含む有限物品を指す。後者の場合、多孔性材料はその上に多孔性材料の層を含むか前記多孔性材料の中に封入されている物品として構成することができる。複数の実施形態では、多孔性材料10は化学蒸着反応のために本質的に固体の1つ以上の多孔性基板として提供される。
【0074】
限定されるものではないが金属、セラミックス、ポリマー、複合材および半導体材料(例えばシリコン)などの様々な多孔性材料を1つ以上の多孔性基板として利用することができる。金属発泡体およびセラミック発泡体などの多孔性固体をさらに利用することができる。
【0075】
図7を参照すると、流体透過性基板は、限定されるものではないが粉末状基板および/または繊維状基板などの本質的に流動性の粒子状基板によってさらに確立することができる。実際には前記粒子状基板は、粒子、繊維または任意の他の関連する粒子状物質の間に確立される空隙によって形成される孔を有する多孔性基板の修正形態とみなすことができる。
【0076】
本発明は、多孔性基板または粒子状基板などの流体透過性基板の性質について制限を設定せず、それどころか、当業者には当該基板の選択は、温度および圧力などの反応条件に耐えるための潜在的な基板材料の能力ならびに予め設計されたコーティングを形成するための所定の前駆体化学物質の前記基板材料および互いとの適合性によって決まることは明らかである。
【0077】
上述のようにALDシステムなどの従来の化学蒸着システムでは、1種以上の前駆体化学物質は、例えば1秒当たり約1mmの速度などの0.001~1000mm/秒の範囲内で可能な速度で反応チャンバーの中に配置されたいくつかの多孔性基板の中に拡散し、かつこれらの孔の内部に堆積する。
【0078】
反応器100は、前記基板の内部における反応性流体12と共に流体透過性基板10に到達する1種以上の前駆体化学物質の拡散を効果的に防止するように構成されている。1種以上の前駆体は基板10の内部に透過しないが、代わりに反応性流体流に曝露される前記基板の表面(すなわち標的表面10A)に残留し、それにより前記標的表面にコーティングが形成される。
【0079】
不活性流体11を流体透過性基板10を通して反応チャンバー101の方向に導くことによって向流を確立および/または調節するとコーティングが形成される。前駆体12-Xを含有する反応性流体12が反応チャンバー101を介して標的表面10Aに到達する間に、不活性流体11の流れが流体透過性材料10を通って前記標的表面10Aに到達する。表面10Aにおいて不活性流体11の流れは反応性流体12の流れに出会い、かつ1種以上の前駆体が当該基板の中に透過するのを防止する。これによりコーティング121が形成されるが、これについては
図5および
図6を参照しながら以下にさらに詳細に記載されている。
【0080】
反応チャンバー101の中への不活性流体11の流れは不活性流体供給装置によって媒介される。前記装置は、所定の体積(V)を有する本質的に中空の封鎖空間(以後、封鎖部分31)を含む。部分31と反応チャンバー101との間の流体連通(流体の流れ)が流体透過性材料10を介してのみ生じるように、封鎖部分31は本質的に反応チャンバー101から隔離されている。不活性流体11は妨害されずに封鎖部分31の内部を通って流れることが許される。
【0081】
流体透過性基板10は封鎖部分31の内部に少なくとも部分的に受け入れられることが好ましい。
【0082】
いくつかの構成では、不活性流体供給装置は少なくとも1つの不活性流体吸入ライン311をさらに備える。
【0083】
いくつかの構成では、不活性流体供給装置は、前記少なくとも1つの不活性流体吸入ライン311によって確立された封鎖部分31を含む。そのような種類の例示的な構成は
図3Aに示されている。
【0084】
本質的に固体(多孔性)または粒子状の材料を通した流体の伝播と同時に、速度、流動形状および境界条件などの前記流体の流体力学特性の変化が生じる。従って流体力学の変化は、(本質的に中空の)体積から、例えば封鎖部分31の内部を介して多孔性材料10を通って流れる不活性流体11の伝播により生じる。流体伝播特性の変化により、一端に多孔性「入口」10を有する本質的に管状の部材として構成された流体吸入体積の提供が可能になる(
図3A)。
【0085】
一様な流速で流体透過性材料、特に多孔性材料の特に本質的に大きい部品(例えば1cm2超でコーティングされる表面を有する)を通る十分な流量を確保するために、封鎖部分すなわち空間31が反応チャンバー101に隣接するように構成されていると有利である。そのような場合、封鎖部分31は不活性流体吸入ライン311の拡張部とみなすことができる。従って、前記部分31と反応チャンバー101との間での流体の流れが多孔性材料10を介してのみ生じ、かつ不活性流体の妨害されない流れが封鎖空間31全体を通して可能になるように、部分31は反応チャンバー101に隣接するように構成されている。
【0086】
1つ以上の不活性流体吸入ライン311は1つ以上の供給経路21と同じように実装することができ、すなわち好ましくは1つ以上の弁などの適当な1つ以上の定量吐出装置を介して関連する流体供給源に接続可能なパイプまたは配管として提供することができる(本明細書の下に記載されている)。
【0087】
いくつかの実施形態では、封鎖部分31は反応チャンバー101の本質的に外部に提供される(
図1A、
図1B、
図2)。
【0088】
図1Aは、封鎖空間31が本質的に前記反応チャンバーを形成する容器の側壁を介して反応チャンバーに隣接している反応器レイアウトを示す。前記側壁には、多孔性基板10を収容するための開口部が配置されている(図示せず)。この開口部は任意に調整可能にすることができる。例えばこの開口部は、二層回転刃型の虹彩絞りのように構成された電動式外周調節システムを備えていてもよい(図示せず)。従って多孔性基板10は、封鎖部分31によって画定された体積から反応空間に流れる不活性流体11のための流体透過性の入口を形成する。
【0089】
いくつかの構成では、封鎖部分31はいくつかの不活性流体吸入ライン311を含む細長い本質的に管状の部材としてさらに提供することができる。そのような構成は、2つ以上の反応器を共通の不活性流体供給源(図示せず)に接続するのを可能にする。
【0090】
場合によっては、符号11、11Aで表されている不活性流体は、同じ供給源またはいくつかの相互接続された供給源(図示せず)から供給されてもよい。
【0091】
図2は、封鎖部分31が蓋102の中に設けられている反応器100の別の実施形態を示す。封鎖空間31(蓋102の中に配置されている)から吸入ライン311を介した反応空間への不活性流体11の流れを可能にするために、流体透過性の入口が多孔性基板10によって確立されている。他の構成としては、吸入ライン311の形態の封鎖空間31の提供(
図3Aに示されているように)またはいくつかの吸入ライン311を含む空間31の提供が挙げられる。
【0092】
同様の方法で、封鎖空間31は当該反応器の側壁または底にあるハッチ(図示せず)として構成された蓋の中に設けることができる。
【0093】
当該実施形態では上記多孔性基板10は、コーティングされる前記基板の表面10Aが反応チャンバー101から前記表面に到達する反応性流体12に曝露されるという条件で、封鎖空間31の内部に少なくとも部分的に組み込まれている。
【0094】
図3Bおよび
図3Cは、それに応じた
図1A、
図1Bおよび
図2に示されている構成の代替構成を示す。従って、流体透過性基板10は当該反応器(
図3B)または蓋(
図3C)の内面に取り付けられているものとして反応チャンバー101内に完全に配置されている。限定されるものではないが、ピン、釘、ねじ込み式コネクタ、接着剤および/またはメッシュもしくはネットなどの支持材料(後者は反応チャンバーの側面に設けられている)などのいくつかの保持装置またはコネクタは、基板10を適所に保持するように構成することができる。
【0095】
図1A、
図1Bおよび
図2に示されている構成は、不活性流体11を封鎖空間31によって画定された体積から抜き出すように構成された任意の不活性流体排出ライン312を備えていてもよい。不活性流体排出ライン312は、1つ以上の別個の経路(図示せず)を介してポンプ104またはさらなるポンプあるいは排気流の排気のために構成された任意の他の適当な器具にさらに接続することができる。従って封鎖空間31は、
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、さらなる不活性流体排出ライン312によってそこを通る不活性流体11の流れを媒介するように構成されている。排出ライン312の提供が省略されているかに関わらず(
図4A、
図4B)、流体透過性基板10を介して反応チャンバー101に入る不活性流体11は中央排気ライン103を介して反応空間から排出される。あるいは、例えば吸入ライン311として提供される単一の流体接続部は、適当な調整器具(例えば以下にさらに説明されている器具33)によって制御された際に流体を両方向に移動させるように構成することができる。
【0096】
さらなる実施形態に係る反応器100を示す
図4Aおよび
図4Bを参照する。
図4A、
図4Bに示されている反応器は反応チャンバー101の本質的に内部に封鎖部分31を含む。
図4Aは個々の基板10をコーティングするためのレイアウトを示し、
図4Bは複数の個々の基板をコーティングするためのレイアウトを示す。
【0097】
図4A、
図4Bに示されている不活性流体吸入装置は、封鎖部分31および関連する不活性流体吸入ライン311を含む。封鎖部分31は、本明細書では流体透過性材料で作られた1つ以上の基板のための基板ホルダーとして構成されている。単一の基板または複数の(少なくとも2つの)基板を反応チャンバー101の中に一度に位置決めすることができる。不活性流体11は、吸入ライン311を介して基板ホルダーとして構成された封鎖部分31の中に受け入れられ、そこから不活性流体11は、多孔性材料10で作られた1つ以上の基板を通して反応チャンバーの中にさらに導かれる。1つ以上の基板10を基板ホルダー上に配置および/または固定することができる(
図4A、
図4B)。あるいは、1つ以上の基板10を少なくとも部分的に前記基板ホルダーの中に組み込むことができる(
図4A)。
図4Aに示されている構成は個々の基板を収容するのを可能にし、その最大サイズ尺度は反応チャンバーの寸法によってのみ制限される。
図4Aの反応器は有利には、本質的に滑らかな表面またはパターン化された表面を有するシート、スラブおよびディスクなどとして成形された個々の基板のコーティングを行う。
【0098】
図4Bは、基板ホルダーとして構成されており、かつ多孔性材料10で作られた本質的にカップ形状の(内部からは凹状の)基板でキャップされたいくつかの突起部を含む封鎖部分31のための例示的な構成を示す。キャップされた端部では、これらの突起部は多孔性材料を通る不活性流体の制限されない流れを可能にするために開放されている。1種以上の前駆体は、反応空間において反応性流体12の流れに曝露される多孔性基板の表面全体に沿って堆積される。従って
図4Bに示されている構成は、複雑な3次元構造などの任意の形状の別個の(互いに分離した)多孔性基板をコーティングするのを可能にする。上記構造は、不活性流体11の妨害されない流れが多孔性部分を通して許される限り、上記突起部または任意の他の適当な保持器具によって基板ホルダー31に固定することができる。
【0099】
各基板は
図4Bに示されているように、多孔性材料で作られ、かつその中に少なくとも1つの開口部または経路(鈍端または貫通経路)を含む本体としてさらに提供することができる。従って
図4Bに示されている構成は、多孔性材料で作られた本質的に管状の部材の内面および外面などの表面に堆積コーティングを塗布するのを可能にする。従って場合によっては、多孔性基板10は様々な幾何学的形状(円形、半円形、楕円形、矩形および五角形など)から選択されるクロスカットを有する少なくとも1つの本質的に管状の部材またはパイプ様構造(フロースルーまたは鈍端)として提供される。堆積コーティングは、前記構造の外面および追加または代わりとして前記構造の内面に少なくとも部分的に塗布することができる。
【0100】
図4Bに示されている構成は、様々なガスセンサ(例えば、カップ形状のガスセンサ)などの多孔性材料で作られたセンシング/検出装置の表面に堆積コーティングを塗布するのを可能にする。
【0101】
図4Bに示されている構成は、各種医療装置および/またはその一部の表面に堆積コーティングを塗布するのを可能にする。いくつかの構成では、当該医療装置は流体透過性材料で作られた本質的に管状の部材として提供される。いくつかの特定の構成では、当該医療装置はカテーテル、ステントまたは内視鏡装置として提供される。
【0102】
本明細書によって開示されている反応器アセンブリは、反応性化学物質が基板材料の中に流れる距離(深さ分解能)を制限することにより、化学反応を前記装置の表面に対して必要とされる/望まれる深さまでに狙いを定めることによって、堆積コーティングを医療装置またはその一部などの上述の基板に高精度に塗布するのを可能にする。
【0103】
図3Dに示されている構成は、前記装置またはその一部の反応性流体の流れへの部分的曝露に対応するものであり、それにより堆積コーティングの提供を先端(例えば内視鏡の先端)などの前記装置の所定の領域に制限することができる。部分的曝露は供給物貫通基板保持装置などの好適な基板保持装置314によって基板10またはその一部を反応チャンバーの中に配置することにより達成することができる。
図3Dに示されている構成は、基板を少なくとも部分的に反応空間101にとって典型的な高温に到達する範囲外に保持するのを可能にする。反応性化学物質が本質的に管状の基板10の内部の中に(反応空間101から離れるように)流れることが許される距離尺度は、例えば調整装置33による不活性流体11の逆流により制御することができる。
【0104】
図4Aおよび
図4Bに示されている基板ホルダーは1つ以上の吸入ライン311から取り外し可能かつ取り換え可能に構成することができる。
【0105】
いくつかの加熱要素313Aを封鎖部分31と共に(例えば、中間空間110の中に、および/または部分31を形成する封鎖部分の1つ以上の壁の中に組み込んで)さらに提供することができる。
図1B、
図3Bおよび
図4Aは非限定的に当該反応器内での加熱要素313Aの配置を示す。
【0106】
追加または代わりとして、ガスなどの予め加熱した流体を、前記封鎖部分31および/または1つ以上の吸入ライン311を介して反応チャンバー101の中に導くことができる。複数の実施形態では、少なくとも1つの加熱要素313A(
図1B、
図4A)は吸入ライン311の1つ以上の壁に隣接しているか、それを包含しているか、あるいはそれに一体化されており、その際に前記ライン311および封鎖部分31を介して反応チャンバーの中に導かれる不活性流体11は、反応チャンバー101内の1種以上の流体と比較してより高い温度を有する。
【0107】
好ましい複数の実施形態では、反応器アセンブリ100は、所定の時点で不活性流体11の流れを変えるように構成された少なくとも1つの装置33をさらに備える。装置33は関連する制御モジュール(図示せず)に接続された被制御切換弁として構成することができる。
【0108】
器具21、23および器具31、311、33は非常に協調的に独立して、反応チャンバーの中へのそれに応じた反応性流体の供給および不活性流体の供給を媒介するように構成されていることを強調しておく。従って、いくつかの機能モジュールを確立することができ、そこには流体供給機能を媒介する器具が一実施形態によって決まる様々なレイアウトで配置されている。明確性のために、いくつかの特徴および関連する実施形態のためのグラフィカル表示は、特定の図面(
図1B、
図3A~
図3D)のみを参照して与えられている。当業者であれば、
図1B、
図3A~
図3Dおよび関連する記載の教示に基づいて
図1A、
図2、
図4A、
図4Bおよび
図7のためにも上記構成を認めることができるものと思われる。
【0109】
封鎖部分すなわち空間31は、いくつかの反応器100を不活性流体11の共通の供給源に接続するのを可能にする(図示せず)。そのような構成では、1つ以上の装置33を介した不活性流体供給の集中管理的調整を実現することができる。
【0110】
反応器100(
図1、
図2、
図4、
図7)は好ましくはALD装置として構成されている。さらなる構成は有利には、1つ以上の光支援ALD装置および1つ以上のプラズマ強化原子層堆積(PEALD)装置を備える。反応器100は、MLD、CVDおよびそれらの修正形態などの他の化学蒸着プロセスのためになお調節することができる。
【0111】
本明細書の上に開示されている反応器アセンブリ100の動作方法の基礎をなす概念は
図5Aおよび
図5Bによって図示されている。
【0112】
図5Aは、
図1~
図3および
図4Aに示されている実施形態にいずれか1つに従って実装される反応器100における、本質的に固体の流体透過性材料10で作られた個々の多孔性基板の標的表面10Aへのコーティング121の形成を示し、ここではコーティング121は前記基板の標的表面10A全体に沿って確立されている。
【0113】
図5Bは、標的表面10Aを有する複数の個々の流体透過性基板10へのコーティング121の形成を示す(コーティングされていない状態で示されている最も左の基板を参照)。カップ形状の基板10は基板ホルダーとして構成された封鎖部分31に配置された端部が開放された突起部上に位置している。
【0114】
反応性流体12は基板10を少なくとも部分的に収容している反応チャンバーの中に導かれる。コーティングが堆積される基板(標的)表面10Aは反応性流体12の流れに曝露される基板の表面である。
【0115】
当該方法では、反応チャンバーの中に供給される反応性流体12は所定の前駆体化合物を含む。
【0116】
次に不活性流体11は、前記表面において不活性流体11の流れが反応性流体12の流れに出会い、このようにして反応性流体12が多孔性基板10の内部に透過するのを防止するように、多孔性材料(基板)10を通って標的表面10Aに向かって導かれる。従って反応性流体12はコーティング121の形態でもっぱら標的表面10Aに堆積される。
【0117】
場合によっては、不活性流体11を連続的な途切れない方法で反応空間へ導くことができる。典型的なALD堆積プロセスに当て嵌めた場合、封鎖部分31を介した多孔性材料10を通る不活性流体11の途切れた流れはALDサイクル全体を通して実施することができる。不活性流体11を多孔性材料を通して標的表面10Aに向かって連続的に導くことによって、多孔性材料10の内部への反応性流体12に含まれる特に1種以上の前駆体の前記反応性流体の透過は持続または防止される。そのような場合、不活性流体流の速度を徹底的に調節して前駆体分子が標的表面10Aに接触するのを可能にすると有利である。従ってコーティング121は基板10の一番端の(最上)表面層に形成される。当該手順は薄いコーティング層(例えば0.1~100nm)の形成が望まれる場合に有利である。
【0118】
場合によっては、反応性流体12に含まれる前駆体が多孔性基板の中に所定の深さ(深さ分解能)まで流れるのを許すことが好ましい。反応性流体12が多孔性材料10の中に透過する深さは、不活性流体流調整装置33(
図1~
図4)によって所定の時点で不活性流体11の流れを変えることにより調整することができる。
【0119】
例示的なALD堆積プロセスに当て嵌めた場合、いくつかの好ましい構成では装置33は、反応性流体12の中で運ばれる前駆体12-Xが標的表面10Aに到達するとされる例示的な時点1で不活性流体11の流れを変える(例えば中断する)ように設定することができる。そのような場合、装置33および/または関連する制御モジュール(図示せず)は、前駆体が弁23(
図1、
図2、
図4)を介して担体流体11Aの中に注入される時点0を記録し、かつ反応性流体12の中で運ばれる前記前駆体が供給経路21および反応チャンバー101を通って標的表面10Aに到達するとされる所定の期間0-1の満了時に時点1を開始する。例えば前駆体が標的表面と接触するのを可能にするように期間0-1の持続時間を計算する。基板材料10を通る不活性流体11の流れを時点2で再開し、ここでは期間1-2の持続時間は、多孔性基板10の中への前駆体透過深さの必要とされる/望まれる尺度に基づいて決定される。
【0120】
実際には、各期間0-1、1-2の持続時間は0.001秒~100秒の範囲内で異なってもよい。いくつかの構成では各前記期間の持続時間は0.1秒である。
【0121】
上記期間は、当該反応器設計、基板材料、前駆体化学物質、流体流速、必要とされる/望まれる深さ分解能および他のパラメータによって決まる調節対象である。
【0122】
上記行為(時点1での不活性流体流の中断)と同時に、さらに不活性流体の逆流を作動させてもよい。そのような場合、前駆体が標的表面10Aに到達するとされる時点1において、不活性流体11の流れを中断して反転させ、それにより反応性流体12を多孔性材料10の中に吸収させる。不活性流体の逆流(標的表面10Aから離れる)は所定の期間1-2にわたって維持される。時点2では不活性流体11の流れを標的表面10Aに向かう方向に戻す。
【0123】
いくつかの他の構成では、装置33は本明細書の上に開示されている内容に従って時点0で不活性流体の流れを休止し、かつ反応性流体12の中で運ばれる前記前駆体が標的表面10Aに到達するとされる例示的な時点1で前記不活性流体11の流れを再開するように設定することができる。期間0-1の持続時間は、例えば前駆体分子が標的表面10Aに接触するのを可能にするように計算する。
【0124】
装置33および23の動作機能の制御(それぞれ不活性流体11の流れを調整すること、および1種以上の前駆体12-Xの不活性担体11Aの中への注入を調整すること;
図1、
図3、
図4)が独立した非常に協調的な方法で実現することが好ましい。従って反応器100は、ユーザインタフェースおよび関連するソフトウェアを備えた一体化型もしくは独立型CPUソリューションとして提供される中央制御モジュール(図示せず)をさらに備えることが好ましい。ソフトウェア管理機能としては好ましくは、ローカルおよび/またはリモート制御の実施、いくつかの反応器アセンブリの一度での監視、および緊急電源制御などが挙げられる。
【0125】
当該実施形態では、コーティング121は、単一のALDサイクルで標的表面10Aに確立された薄膜、層またはシートである。
【0126】
いくつかの実施形態に係るコーティング方法を示す
図6を参照する。
図6に示されている方法は、原子層堆積の原理を利用し、かつ反応空間の中に少なくとも2種の異なる前駆体12-1、12-2の順次の時間的に分離された供給を提供する。前駆体12-1、12-2は好ましくは、例えば多孔性基板の表面に予め選択された化合物または組成物121(本明細書ではコーティング)を形成するために選択された別個の化学物質である。堆積半反応はローマ数字(i)および(ii)で示されている。
【0127】
不活性流体11は、不活性流体の流れが本明細書の上に記載されている方法で装置33によって調整可能である制御された方法で反応チャンバーの中に導かれる。
【0128】
当該方法では、第1の所定の前駆体12-1を含む反応性流体12が反応チャンバーの中に供給され(工程i;左側)、前駆体分子12-1が前記表面10Aに接触することが許されるような方法で前記標的表面に向かって多孔性基板を通る不活性流体11の向流を調節することによって前駆体副層を標的表面10Aに堆積させる。第1の前駆体12-1は基板10との典型的には化学吸着による化学反応を開始し、それにより副層が形成される(工程i;右側)。その後、反応チャンバーを不活性担体11Aでパージし、その際に過剰な前駆体および反応生成物を排気流と共に排気させる(
図1、
図2、
図4の13)。パージ中に、不活性担体流体11A(前駆体を含まない)は弁23を介して反応チャンバーの中に導かれる(
図1、
図2、
図4)。パージ工程と同時に、不活性流体11の流れを反応チャンバーの方向に多孔性基板および副層12-1を通して導いてもよい。
【0129】
当該方法はii(
図6)を続け、ここでは第2の所定の前駆体12-2を含む反応性流体12が反応チャンバーの中に供給される。第2の前駆体12-2は、関連する副層として提供される第1の前駆体12-1と化学反応を起こす(工程ii;左側)。標的表面10Aおよび反応空間に向かう不活性流体11の向流は、例えば前駆体分子12-2が工程iで形成された副層と接触するのを可能にするように調節される。
【0130】
第2の前駆体12-2の堆積中に、前駆体化合物12-1および12-2は互いに反応して12-1および12-2のいずれか1つとは異なる化合物121を形成する(ii、右)。
【0131】
工程iiの後に、工程iに関して上述したように反応チャンバーを不活性担体11Aでパージする。前記パージ工程と同時に、不活性流体11の流れを多孔性基板および確立されたコーティング層121を通して反応チャンバーの方向に導いてもよい。
【0132】
多孔性材料10および1種以上の前駆体12-X、12-1、12-2のための担体として使用される不活性流体11Aを通して反応チャンバー101の中に伝播する不活性流体11は好ましくは同じ媒体、例えばガス状の窒素(N2)またはアルゴンである。場合によっては、異なる非反応性媒体11、11Aの使用は除外されない。
【0133】
当該実施形態では、基板10を通る不活性流体11の流れは、少なくとも1つのパージ工程を不活性流体11のみを用いることによって(すなわち(不活性な)担体流体11Aの非存在下で)実施することができるように調整することができる。従ってパージ中に、反応空間の中への(基板10を通る)不活性流体11の流れは供給経路21を介して担体流体11Aの流れの代わりに使用することができる。「パージ流」11Aを不活性流体11の流れで置き換えることはALDサイクル内の少なくとも1回の半反応後に実現することができる。
【0134】
1つ以上のコーティング121が確立されたら、いくつかのさらなるALDサイクルを任意に多孔性基板10を介する不活性な向流11の非存在下でn回実行していくつかのさらなるコーティング層121nを標的表面に確立することができ、それにより多層(積層体)構造を作製することができる。
【0135】
流体透過性材料10を通る流体の流れは、排気ポンプ104および例えば25、33などのいくつかの調整装置により前記材料10の内外で生じる圧力差によって制御することができる。後者は1つ以上のマスフローコントローラおよび/または1つ以上のガス流量計が備えられた切換弁として構成することができる。他の制御手段としては、ガスおよび圧力センサなどの従来の器具が挙げられる。反応器アセンブリ100は有利には、例えばコンピュータユニットとして実装される(自動化)制御システムを備え、かつ少なくとも1つのプロセッサおよび適当なコンピュータプログラムまたはソフトウェアを含むメモリを備える。
【0136】
ALD技術に基づくいくつかの非限定的な例を以下に示す。
【0137】
実施例1:前駆体12-1として使用されるトリメチルアルミニウム(TMA、Al(CH3)3)および前駆体12-2として使用される水からの、グラフェン、酸化ケイ素などの多孔性基板への酸化アルミニウム(Al2O3)コーティング121の形成。
【0138】
実施例2:白金(II)アセチルアセトネート(Pt(acac)2;前駆体12-1)およびオゾン(O3;前駆体12-2)からの、例えばシリコン基板などの多孔性基板への白金(Pt)コーティング121の堆積。
【0139】
実施例3:前駆体12-1としての塩化アルミニウム(AlCl3)またはTMAおよび前駆体12-2としてのアンモニア(NH3)を用いた、例えばシリコン基板などの多孔性基板への窒化アルミニウム(AlN)コーティング121の堆積。
【0140】
実施例4:前駆体12-1としての塩化クロミル(CrO2Cl2)蒸気および前駆体12-1としての水または過酸化水素H2O2を用いた、例えばセラミック基板などの多孔性基板への0.3~0.4nmの厚さを有する酸化クロム(IV)コーティング121の堆積。
【0141】
実施例5:前駆体12-1としての四塩化チタン(TiCl4)蒸気および前駆体12-1としての水を用いた、例えばセラミック基板などの多孔性基板への約0.1nmの厚さを有する酸化チタンコーティング121の堆積。
【0142】
実施例6:前駆体12-1としてのH2Si[N(C2H5)2]2(SAM.24という製品名でAir Liquide社によって市販で供給されている)蒸気および前駆体12-1としてのオゾン(O3)を用いた、例えばセラミック基板などの多孔性基板への約0.1nmの厚さを有する酸化ケイ素コーティング121の堆積。
【0143】
上記例示的な反応のそれぞれにより通常は1堆積サイクル当たり0.03~0.4nmの厚さ(堆積条件によって決まる)の層が形成され、その際の典型的な(前駆体)導入持続時間は1種の化学物質当たり0.1~1秒であり、各導入は約10秒のパージと交互に行う。各導入により副層の堆積が生じ、いくつかの導入-パージ手順を含む堆積サイクルにおいてコーティング層121を堆積させる。10~100nmの厚さを有する層を堆積させるために、堆積手順は、必要とされるサイクルの回数および各サイクルの持続時間に応じて約10分~約20時間の時間範囲内で完了させることができる。同様の方法で、コーティング121を3種またはそれ以上の前駆体から確立することができる。
【0144】
上記方法は、多孔性支持体上に支持された固体状態の触媒を製造するのに特に有利である。そのような場合、コーティング121は本明細書の上に記載されている内容に従う順次反応i、iiの過程で確立される触媒化合物として提供される。従って触媒化合物によって確立された層121は多孔性材料10の表面10Aに支持されている。
【0145】
多孔性材料の表面に支持されている触媒的コーティングを含む様々な固体状態の触媒は、限定されるものではないが変換、付加および縮合などのプロセスを支援するために提供することができる。特に炭素数2~12のアルケン(オレフィン)の重合のために固体状態の触媒を提供することができる。特に、例えばエチレンおよびプロピレンなどのより低級のオレフィン(C2~C4)の重合のための固体状態の触媒を提供することができる。非限定的な例としては、例えば白金、パラジウムおよびルテニウムなどの白金族金属系の触媒および/または修飾されたフィリップス型触媒が挙げられる。
【0146】
場合によっては、コーティング121は単一の前駆体化合物から確立することができる。当該手順は有利には光支援原子層堆積(本明細書では光ALD)の原理を利用し、ここでは表面膜堆積反応は、標的表面10Aを所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長の電磁放射線に曝露することによりそこに供給されるフォトンによって引き起こされる。紫外線(100~400nm)、可視光(400~800nm)または赤外線(800nm超)を利用することができる。記載されている構成では、反応器100は、所定の波長範囲内の少なくとも1種の波長の放射線を放射するように構成された少なくとも1つの放射線源32(
図4A、
図4Bに示されている;電磁エネルギーはEで示されている)をさらに備えていてもよい。追加または代わりとして、放射線源32は反応チャンバーの外部に提供することができる(図示せず)。そのような場合、反応器アセンブリは、電磁放射線などの電磁エネルギー(E)を標的表面10Aおよびその後に形成された膜121に供給するための1つ以上の器具をさらに備える。そのような1つ以上の器具は例えば窓(例えば蓋の中)またはアンテナ装置であってもよい。反応チャンバーにおける例えばルテニウム(Ru)堆積の場合の300℃などの高温を理由に、反応チャンバーに関しては放射線源の外部への配置が好ましい。当然のことながら、
図1~
図3および
図7に示されている構成は本明細書の上で考察されているように1つ以上の電磁波源32を備えることができる。
【0147】
図7は、例えば粉末状および/または繊維状基板などの粒子状基板として構成された流体透過性基板10上にコーティングを形成するために提供される反応器アセンブリ100の例示的な実施形態を示す。
【0148】
当該反応器は、前記粒子状基板10を少なくとも部分的に受け入れるように構成された封鎖部分31を含む。
図7に示されている構成では、封鎖部分31は、前記基板を載置可能な本質的に管状の部材として構成されている。封鎖部分は好ましくは反応チャンバー101(反応空間)を通り抜けるように構成されている。反応空間101において、基板10は封鎖部分31の少なくとも1つの開口部31Aとして画定された所定の領域内で反応性流体12の流れに曝露される。1つ以上の標的表面10Aはこれらの1つ以上の曝露される領域によって確立される。少なくとも1つの開口部31Aは、粒子状基板10が封鎖部分31から漏出するのを防止するための例えばメッシュ、ネットまたは多孔性フィルタもしくは膜などの支持材料によって任意に覆われた開口部であってもよい。
【0149】
図3Aに開示されているものと同様に、封鎖部分は不活性流体11を標的表面10Aに向かって運ぶように構成された流体吸入ラインによって確立することができる。
図7の実施形態では、不活性流体の吸入と同時に粒子状物質10を封鎖空間を介してコンベヤ装置34によって運ぶ。
【0150】
反応器アセンブリは、第1の補助的封鎖部分31-1および第2の補助的封鎖部分31-2をさらに備え、各前記部分は載置もしくは取り出し装置をそれぞれ備える。部分31-1、31-2は封鎖空間31の両側に配置されている。
【0151】
例えば従来のサイロとして構成された例示的な載置装置35は第1の補助的封鎖部分31-1の中に設けることができる。載置装置35を介して反応器アセンブリ100の中に載置される粒子状物質10は、コンベヤ装置34によって管状の封鎖空間31を介して反応チャンバー101の中に運ばれる。前記コンベヤ装置は封鎖空間31の長さ全体を通して拡張させることができ、あるいは代わりとしてコンベヤ装置は補助的部分31-1の中に設けることができる。
【0152】
第1の補助的部分31-1を介した封鎖部分31の中への不活性流体11の吸入は好ましくは別個の装置(図示せず)を介して行われる。前記不活性流体吸入装置は逆流(破線の矢印、封鎖部分31-1)を可能にするようにさらに構成することができる。
【0153】
コーティングされた粒子状材料10を回収するための容器として構成された例示的な取り出し装置36は第2の補助的封鎖部分31-2の中に設けることができる。31-1のために記載されている同様の方法で、第2の補助的部分31-2を介した封鎖部分31の中への不活性流体11の吸入は別個の装置(図示せず)を介して実施され、前記装置は逆流(破線の矢印、封鎖部分31-2)を可能にするようにさらに構成されている。両方の補助的封鎖部分31-1および31-2から管状封鎖部分31に入る不活性流体11の流れは少なくとも流速、時間および流体圧力の点で同期させることができる。そのような構成によって管状封鎖部分31内部への反応性流体12の伝播を制御することができる。
【0154】
コンベヤ装置34は、コンベヤベルト、ピストンを有する圧縮コンベヤ、スクリューコンベヤまたは振動手段を備えたコンベヤとして構成することができる。コンベヤ装置は任意に重力流を利用するために傾斜させることができる。
【0155】
補助的封鎖部分31-1、31-2は好ましくは調整可能な体積を有するように構成されている。本明細書の上に記載されている不活性流体流調整装置33に加えて、限定されるものではないが質量流量計および/または圧力センサなどのいくつかの補助的制御装置を部分31-1、31-2内に設けることができる。全体的に見て上記調整器具は、例えば時間で制御される逆流を作動させることによって封鎖空間31を通って補助的封鎖部分31-1、31-2のいずれかまたは両方に向かう粒子状物質10の流れおよび不活性流体11の流れの高精度な制御を行う。
【0156】
その結果、粒子状基板10の標的表面10Aに堆積されたコーティング層121は、開口部31Aを移動する粒子状体積を横切るあらゆる望まれる深さ分解能まで拡張させることができる。
【0157】
粒子状基板10(
図7)を通る流体の流れは、振動(例えば振盪)運動を生じ、かつその運動を基板10に伝達させる1つ以上の振動器具によってさらに高めることができる。振動器具は機械振動源、超音波発生源、および無線誘導などを介して振動を誘導するように構成された振動源として構成することができる。本発明者は国際出願の国際公開第2018/050954号に関連する振動手段について記載している。
【0158】
当該反応器は、粒子状材料を反応空間から回収し、かつ粒子状材料を運ぶための容器36をさらに備える。
【0159】
反応器100および関連する堆積方法は、本明細書の上に開示されているように、有利には本質的に流体透過性材料で作られ、かつコーティング層121が形成される少なくとも1つの表面10Aを有するコーティングされた物品を製造する工程を提供する。反応器100は、単一のコーティングされた物品を一度に製造すること、またはコーティングされた物品のバッチを一度に製造することを可能にし、当該バッチはコーティングされる少なくとも2つの基板を含む。
【0160】
多孔性材料10が多孔性金属、多孔性セラミックスまたは多孔性ポリマーであるコーティングされた物品を提供することができる。場合によっては、1つ以上のコーティングされた物品内に設けられる多孔性材料は、粉末状基板または繊維状基板などの粒子状基板によって確立することができる。さらに、多孔性複合材および半導体材料(例えばシリコン)をコーティングすることができる。
【0161】
本開示に記載されている実施形態を所望どおりに適合および組み合わせ可能であることが当業者によって理解されるであろう。従って本開示は、添付の特許請求の範囲内で当業者によって認識可能な装置および堆積方法のあらゆる可能な修正を包含することが意図されている。