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特許7029194耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム
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  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図1
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図2
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図2A
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図3A
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図3B
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図3C
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図4A
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図4B
  • 特許-耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出のガラスシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20220224BHJP
   C03C 4/08 20060101ALI20220224BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20220224BHJP
   C09K 11/85 20060101ALI20220224BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
G01T1/20 B
C03C4/08
C09K11/00 E
C09K11/85
C09K11/78
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020125436
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2018502247の分割
【原出願日】2016-07-18
(65)【公開番号】P2020197533
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】15/212,263
(32)【優先日】2016-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/194,239
(32)【優先日】2015-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518014003
【氏名又は名称】エーエフオー リサーチ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マルガリャン,アショット,エー.
(72)【発明者】
【氏名】マルガリャン,アルフレッド,エー.
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029314(JP,A)
【文献】特表2012-506838(JP,A)
【文献】特開2013-043823(JP,A)
【文献】特開平09-188543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
C03C 4/08
C09K 11/00
C09K 11/85
C09K 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無アルカリフツリン酸ガラスの、放射線が照射されたときの継続期間に相応する高エネルギー放射の存在の視覚的表示への使用であって、
前記無アルカリフツリン酸ガラスは、
5-60molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(POと、
5-60molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、
フッ化物とから構成される組成物から形成され、
前記フッ化物が10-70molパーセントのバリウムフッ化物BaFおよびRFを含む群から選ばれ、
ドーパントは、CeO 、CeF 、Lu 3 、LuF からなる群から選択され、
Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alから構成される群から選択され;下付き添字xは、化合物RFx内のフッ化物(F)の量を表わす指標であることを特徴とする、
無アルカリフツリン酸ガラスの、放射線が照射されたときの継続期間に相応する高エネルギー放射の存在の視覚的表示への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
この出願は、2015年7月19日に提出された同時係属中の米国仮実用特許出願62/194,239の優先権の利益を主張し、その開示全体は、引用によって本明細書全体に明確に組込まれる。
【0002】
開示全体にわたって、任意の組み込まれた明細書内の用語の定義または使用が一貫しない、または本明細書で提供されるその用語の定義に反している場合、本明細書で提供されるその用語の定義を適用し、組み込まれた明細書内のその用語の定義を適用しないことに留意するべきである。
【0003】
<発明の技術分野>
本発明の1つ以上の実施形態は、耐フッ素性、耐放射線性、および放射線検出の無アルカリフツリン酸ガラスシステム(alkali free fluorophosphate glass systems)に関する。
【背景技術】
【0004】
<関連技術の説明>
従来のフツリン酸系ガラスシステム(fluorophosphate-based glass systems)は周知であり、複数年にわたり使用されてきた。残念ながら、耐放射線性である既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、放射の存在を視覚的に測定するための目視可能な手段を提供しない。すなわち、耐放射線性である既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムはソラリゼーションを引き起こさず、電磁スペクトルの可視部内で透明なままであり、電磁スペクトルの可視部外でシンチレーションするので、放射の存在を判定する従来のガラスシステムと共に使用される外部装置を必要とする。例えば、既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、ドーパントおよびまたは共ドーパント(co-dopants)としてYbを使用し、それらは、ソラリゼーションを引き起こさず、可視スペクトル内で透明なままであるが、赤外スペクトル内で、専門的な装置を使用しないと明らかに検出不可能なシンチレーションを生成する。限定されないが、耐放射線性である従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの例の非網羅的なリストは、Margaryanらの特許文献1、Margaryanらの特許文献2、Margaryanらの特許文献3、Margaryanの特許文献4、Margaryanらの特許文献5、およびMargaryanらの特許文献6に開示され、それら1つひとつの開示全体は、それらの全体を引用することによって本明細書に明確に組み込まれる。
【0005】
さらに、既存で従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、最多でわずか4つの原料組成物しか含まない塩基組成から一般的に構成される。しかしながら、わずか4つの化合物の使用は、ガラス成形領域を制限し、生成されるガラスの構造(またはタイプ)のための順列の数を制限する。
【0006】
加えて、4つの原料化合物のみを備えた既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、元素ごとの一般的に低いZ番号(原子番号)を有する。例えば、元素ごとの従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの組み合わせたZ番号は、塩基ガラス組成物に関しておよそ50-56であり:
【0007】
【化1】
【0008】
であって、
式中:
Rは、Mg、Ca、Bi、Y、Laから構成される群から選択され;
xは、化合物RF中のフッ素(F)の量を表わす指標であり、
ドーパントはYb、Laから構成されてもよい。
【0009】
放射線を照射されたとき、元素ごとのガラス成分のためのZ番号が低ければ低いほど、ガラス成分内の励起性の元素(excitable element)の励起減衰時間がより長くなることは、周知である。例えば、上記の組成物の場合には、放出された高エネルギー放射線に応じるYbドーパントの励起減衰時間が、一般的に長く、そのことは、ポジトロン断層法(PET)で使用される多少悪い選択がスキャンするガラスを作るだろう。
【0010】
さらに、既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、1立方センチメートル(g/cm)当たり約4.1グラム、またはより小さい低密度を有し、そのことは、ほとんど元素ごとの全体的なより低いZ番号が原因である。一般的に、低密度の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、高エネルギー環境にさらされたとき、より低い耐放射線性およびより小さい放射線遮蔽を有する。低密度の既存の従来の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの別の短所は、高エネルギー電磁パルス(EMP)に対する遮蔽能力不足である。さらに、光学的に、より低い密度によって、従来のガラスシステムは、約1.57(約589nmの波長-電磁スペクトルの可視光線部分)のより低い屈折率nを有する。
【0011】
既存の従来のシリカ系ガラスシステムのさらなる短所は、フッ素に対して乏しいまたは低い抵抗性を有することであり、例えば、それらは、高レベルの濃度のフッ素を利用する水処理設備において、もはや透明ではなくなるまで曇るおよび窪む(pitting)ことなく、光学部品として使用することができないことを意味する。
【0012】
したがって、上記された現在の最先端技術および現在のガラスシステムの短所の観点から、高エネルギー放射に対する耐放射線性および放射線遮蔽を改善し、視覚的に高エネルギー放射の存在を判定するための目視可能な手段を提供するために、可視スペクトル内にシンチレーションを提供するガラスシステムの必要性が存在する。すなわち、それらの継続期間に相応する高エネルギー放射の存在の視覚的表示を提供するために、可視スペクトル内にシンチレーションを提供するガラスシステムの必要性が存在する。言いかえれば、放射線が照射されたとき(すなわち、高エネルギー環境にさらされたとき)に、可視スペクトル内でシンチレーションするガラスシステムの必要性が存在する。さらに、生成される可能性があるガラス構造(またはタイプ)のために、より多い数の順列のためのより高い(より大きい)ガラス成形領域を提供するガラスシステムの必要性が存在する。加えて、より高い密度、より高い屈折率n、およびより短い励起減衰時間を結果としてもたらす元素ごとのより大きい全体的なZ番号を有するガラスシステムの必要性が存在する。加えて、EMP遮蔽能力を提供するガラスシステムの必要性が存在する。最後に、フッ素耐性であるガラスシステムの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第7,608,551号
【文献】米国特許第7,637,124号
【文献】米国特許第7,989,376号
【文献】米国特許第8,356,493号
【文献】米国特許第8,361,914号
【文献】米国特許出願公開第2010/00327186号
【発明の概要】
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態は、1.29×10rad以上の高強度のガンマ線放射線量の放射線照射、および3×10から1×1014n/cmsec以上の中性子束、および2×1016から8.3×1020n/cm2以上のフルエンス(fluencies)の高中性子エネルギー、およびそれらの組み合わせの前、間、後に、高エネルギー環境においてソラリゼーションを引き起こさない(例えば、透明度を維持し、透き通ったままである)ガラスシステムを提供する。本発明は、高い電磁波エネルギー(例えば12GeV以上の電子)および高粒子エネルギー(例えば50GeV以上の陽子)の組み合わせに関して高エネルギー放射線照射に耐えうる耐放射線性をガラスシステムに提供する。
【0015】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムは:
高いエネルギーを吸収することにより第1の状態と第2の状態との間で振動する1つ以上の化合物を含み、その振動は、高エネルギーの存在を判定するために、電磁スペクトルの可視スペクトル内でシンチレーションを生成しながら、再使用するガラスシステムのソラリゼーションを防止し;
シンチレーションの生成は、ガラスシステムの放射線照射の継続期間に相応し、ガラスシステムに影響を与えることなく放射線照射が止められるときに停止する継続期間を有する。
【0016】
本発明の実施形態の別の非制限的で模範的な随意の態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、そこでは1つ以上の化合物が:
CeO、CeF、Lu、LuF
を含む群から選択される。
【0017】
本発明の実施形態の別の非制限的で模範的な随意の態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムはさらに:
mol%のバリウムメタリン酸塩Ba(POと;
mol%のアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、フッ化物と;
を含み、
そこでは、フッ化物が、mol%のBaFとRFの両方、およびCeO、CeF、Lu、LuFを含む群から選択されるドーパントを含み;
Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択され、下付き添字xは、化合物RF内のフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0018】
本発明の実施形態の別の非制限的で模範的な随意の態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムはさらに:
mol%のバリウムメタリン酸塩Ba(POと;
mol%のアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、フッ化物と;
を含み、
そこでは、フッ化物は:
mol%のフッ化バリウムBaFと;
mol%のフッ化マグネシウムMgFと;
mol%のRFと;
CeO、CeF、Lu、LuFの群から選択されるドーパントと;
を含み、
Rは、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Al、Laを含む群から選択され、下付き添字xは、化合物RFのフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0019】
本発明の実施形態の別の非制限的で模範的な随意の態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムはさらに:
La、LaF、Pr、PrF、Nd、NdF、Pm、PmF、Sm、SmF、Eu、EuF、Gd、GdF、Tb、TbF、Dy、DyF、Ho、HoF、Er、ErF、Tm、TmF、Yb、YbF
を含む群から選択されるランタニド金属からのドーパント/共ドーパントを含む。
【0020】
本発明の実施形態の別の非制限的で模範的な随意の態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムはさらに:
CuO、CuF、TiO、TiF、Cr、CrF、Mo、MoF、W、WF、MnO、MnF、Co、CoF、Ni、NiF
を含む群から選択された遷移金属からのドーパント/共ドーパントを含む。
【0021】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムは:
ガラスのソラリゼーションを防止することを容易にしながら、可視スペクトル内でシンチレーションを生成する高エネルギー放射線を吸収するとき、振動的に変化する状態を有する1つ以上の化合物、
を含む。
【0022】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な随意な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し:そこでは、
1つ以上の化合物が、高エネルギー放射線を吸収するとき、第1の状態と第2の状態との間で振動し、それにより、1つ以上の化合物の振動的に変化する状態をもたらす。
【0023】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、ガラスシステムを提供し、ガラスシステムは:
高エネルギー放射線を吸収するとき、一時的な、振動的に変化する状態を含み;そこでは、
ガラスシステムの一時的で振動的に変化する状態は、可視スペクトル内でシンチレーションを生成しながら、ガラスシステムのソラリゼーションの防止を容易にする。
【0024】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、耐フッ素性ガラスシステムを提供し、耐フッ素性ガラスシステムは:
mol%のバリウムメタリン酸塩Ba(POと;
mol%のアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、フッ化物と;
を含み、
フッ化物は、mol%のBaFとRFの両方とを含み、
Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択され、下付き添字xは、化合物RF中のフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0025】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、耐フッ素性ガラスシステムを提供し、耐フッ素性ガラスシステムは:
mol%のバリウムメタリン酸塩Ba(POと;
mol%のアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、フッ化物と;
を含み、
フッ化物は:
mol%のフッ化バリウムBaFと;
mol%のフッ化マグネシウムMgFと;
mol%のRFと、
を含み、
Rは、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Al、Laを含む群から選択され、下付き添字xは、化合物RFのフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0026】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムは:
高いエネルギーを吸収することにより第1の状態と第2の状態との間で振動する1つ以上の化合物を含み、その振動が、高エネルギーの存在を判定するためにシンチレーションを生成しながら、再使用するガラスシステムのソラリゼーションを防止し易くし;
シンチレーションの生成は、ガラスシステムの放射線照射の継続期間に相応する継続期間を有し、放射線照射が止められるときに、ガラスシステムに影響を与えることなく止まる。
【0027】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な随意な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し、ガラスシステムは:
mol%のバリウムメタリン酸塩Ba(POと;
mol%のアルミニウムメタリン酸塩Al(POと、フッ化物と;
を含み
フッ化物は:
mol%のフッ化バリウムBaF、mol%のフッ化マグネシウムMgF、およびmol%のRFと;
ドーパントと;
を含み、
Rは、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Al、Laを含む群から選択され、下付き添字xは、化合物RFのフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0028】
本発明の実施形態の非制限的で模範的な随意な態様は、放射線の検出のためのガラスシステムを提供し:ドーパントおよびまたは共ドーパントは、
La、LaF、CeO、CeF、Pr、PrF、Nd、NdF、Pm、PmF、Sm、SmF、Eu、EuF、Gd、GdF、Tb、TbF、Dy、DyF、Ho、HoF、Er、ErF、Tm、TmF、Yb、YbF、Lu、LuF、CuO、CuF、TiO、TiF、Cr、CrF、Mo、MoF、W、WF、MnO、MnF、Co、CoF、Ni、NiFを含む群から選択される。
【0029】
本発明の実施形態の、非制限的で模範的な態様は、放射線を検出するための方法を提供し:その方法は、
高放射線エネルギーを吸収するときに、振動的に変化する状態をもたらし、その振動的に変化する状態が、可視スペクトル内のシンチレーションを結果として生じさせる工程を含む。
【0030】
本発明の実施形態の、非制限的で模範的な随意の態様は、放射線を検出するための方法を提供し:そこでは、
シンチレーションは、放射線の存在の継続時間に相応し、放射線が存在しないときに停止する継続時間を有する。
【0031】
本発明の、これらのおよび他の、特徴および態様は、後に続く図面および特許請求の範囲によって特徴付けられ、好ましい非制限的な模範的な実施形態の次に述べる詳細な説明から当業者に明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面は、本発明の範囲の定義としてではなく、模範的な具体例のみのために使用されることが理解されるべきである。開示全体にわたって、「模範的な」という単語は「例、実例、または具体例として役立つ」ことを意味するために使用されてもよいが、用語「模範的な」の欠如が、限定的な実施形態を意味するわけではない。「模範的」であると記載される任意の実施形態は、好ましいように、または他の実施形態よりも有利なように解釈される必要はない。図面において、同様な参照符号(複数可)は、全体にわたって対応部位(複数可)を提示する。
図1】本発明の1つ以上の実施形態にしたがって、ガラスサンプル(1)のシンチレーション減衰時間のための電圧(mV)対時間(ns)を表すグラフの非制限的で模範的な具体例である。
図2】本発明の1つ以上の実施形態にしたがって、ガラスサンプル(1)の事象の数対ピーク到達時間(ns)を表すグラフの非制限的で模範的な具体例である。
図2A】288nm-380nmで励起されたときに450-550nmでシンチレーションするガラスサンプル(1)の非制限的で模範的な具体例である。
図3A】本発明の1つ以上の実施形態にしたがって、ガラスサンプル(1)の、透過率(transmission)、相対強度、ならびにシンチレーションの正規化強度、および減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。
図3B】本発明の1つ以上の実施形態にしたがって、ガラスサンプル(1)の、透過率、相対強度、ならびにシンチレーションの正規化強度、および減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。
図3C】本発明の1つ以上の実施形態にしたがって、ガラスサンプル(1)の、透過率、相対強度、ならびにシンチレーションの正規化強度、および減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。
図4A】本発明の1つ以上の実施形態に従うガラスサンプル(2)の、透過率、ならびにシンチレーションの正規化強度、および減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。
図4B】本発明の1つ以上の実施形態に従うガラスサンプル(2)の、透過率、ならびにシンチレーションの正規化強度、および減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。
図5】本発明の1つ以上の実施形態に従うガラスサンプル(3)の同一の試料に対する透過曲線を詳しく述べる、分光光度計で測定された透明性スペクトルの非制限的で模範的な具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付された図面に関して下に記述される詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施形態の説明であることが意図され、本発明が構成およびまたは利用される可能性のある形状のみを表すようには意図されない。
【0034】
明確性のために別個の実施形態の内容に記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態における組み合わせで提供されてもよいことが理解されるべきである。反対に、簡潔さのために、単一の実施形態の内容に記載される本発明の様々な特徴もまた、個別に、または任意の適切な副組み合わせもしくは本発明の他の記載された実施形態において適切であるように提供されてもよい。指示がない限り、本発明は、様々な模範的な実施形態および実施に関して以下に記載されるが、個別の実施形態の1つ以上に記載される様々な特徴および態様は、特定の実施形態へのそれらの適用可能性において限定されずに記載されているが、その代わりに、本発明の他の実施形態の1つ以上に、単独で、または様々な組み合わせにおいて適用することができることが理解されるに違いない。
【0035】
本明細書全体にわたるフレーズ「およびまたは」、「および/または」の使用は、包括的な「または」を示し、この場合、例えば、AおよびまたはBが、「A」、「B」または「AおよびB」両方として解釈されるべきである。
【0036】
利便性と明確性のために、この開示は、波エネルギー、粒子エネルギー両方、およびそれらの組み合わせに関して、単語「エネルギー」を使用する。さらに、この開示は、イオン化をもたらす可能性がある、電磁波として、または移動する亜原子粒子として、もしくはそれらの組み合わせとしての、エネルギー放出であるという通常の意味にしたがって放射線を定義する。
【0037】
加えて、この開示は、高エネルギー波、または強度な電磁放射線(EMR)、または電磁放射パルス(EMP)を、電磁スペクトルの高エネルギー端(high-energy end)における電磁波として定義する。電磁スペクトルの高エネルギー端は、300EHz(エクサヘルツ)の周波数以上(およそ1019Hz以上)のガンマ線(γ)などの、少なくとも、30THz(テラヘルツ)以上の近紫外線(NUV)からの電磁スペクトルクラスによって定義される。加えて、この開示は、少なくとも3×10n/cmsecの平均中性子束、および少なくとも2×1016n/cmの平均中性子フルエンスの観点から、強度な粒子エネルギーを定義する。さらに、高エネルギーは、約13MRad以上の混合ビームおよび粒子(陽子、π中間子、電子、中性子、およびガンマ線)を含んでもよい。したがって、この発明は、上記の強度な波エネルギーおよびまたは強度な粒子エネルギーのパラメーターによって定義されるエネルギーまたは放射線として、集合的なフレーズ「高エネルギー」、「高放射線」、「高放射線エネルギー」、「高エネルギー環境」、「多量に放射線を照射された環境」、「高周波数電磁放射線」などを定義する。
【0038】
加えて、開示全体にわたって、「ソラリゼーションを引き起こす(solarize)」という単語、および「ソラリゼーション(solarization)」、「ソラリゼーションを引き起こした(solarized)」などのその派生語などは、放射線照射(すなわち様々な量の印加エネルギー(例えば、高エネルギー)への接触)による材料の暗化、褐変、およびまたは燃焼を定義する。「反ソラリゼーションを引き起こす(desolarize)」という単語、および「反ソラリゼーション(desolarization)」、「反ソラリゼーションを引き起こした(desolarized)」などのその派生語などは、高エネルギーにされられる間に、材料がソラリゼーションプロセスに継続的に耐える(または逆転する)能力を定義する。フレーズ「反ソラライザー」は、多量に放射線が照射された環境内にあるとき、ソラリゼーションの作用を逆転させる(例えば、ガラスシステム(例えば光学部品)が燃焼または褐変する作用を逆転させる)作用物質として定義されてもよい。
【0039】
さらに、その通常の意味に加えて、透明性またはそれらの派生語(例えば、透明など)は、ゆがみのないガラスシステムを通る放射線エネルギー(電磁気、粒子、またはそれらの組み合わせ)の通過量によってさらに定義されてもよい。
【0040】
本発明の1つ以上の実施形態は、多数の適用において特に有用なガラス成分を含む無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供し、無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの例の少数の、非制限的で、非網羅的なリストは、レーザー、増幅器、ウィンドウ、センサ(例えばシンチレーター)、ファイバー、ファイバレーザ、高密度光記憶アプリケーション、耐放射線性、放射線遮蔽、放射線検出、フッ化耐性アプリケーション、および他多数の分野における応用を含んでもよい。
【0041】
本発明の1つ以上の実施形態は、耐放射線性が非常に高い(例えば、高エネルギー放射線を適用する前、最中、後にソラリゼーションを引き起こさない)ため再使用可能であり、さらに、放射線の存在を視覚的に判定するための目視可能な手段提供する無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。すなわち、本発明の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、放射線照射の継続時間に相応する高エネルギー放射線の存在の視覚的表示を提供し、そして再使用されてもよい。言いかえれば、本発明の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは、高エネルギー放射線の存在を視覚的に判定するための目視可能な手段を提供するために可視スペクトル内でシンチレーションしながら、向上した耐放射線性および高エネルギー放射線に対する放射線遮蔽を有する。簡単に述べると、本発明の無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの1つ以上の実施形態は、高エネルギー放射線に対して抵抗し、遮蔽しながら、高エネルギー放射線環境内の場合に、可視スペクトル内でシンチレーションする。
【0042】
以下で詳しく述べられるように、本発明の1つ以上の実施形態は、可視スペクトル内でシンチレーションする故に、さらなる放射線センサ装置の必要性または必要条件なしで高エネルギー放射線の存在の視覚的表示を提供する、ドーパントおよびまたは共ドーパントを使用する。言いかえれば、本発明の再使用可能で、耐放射線性が高いガラスシステムは、高エネルギー放射線の適用下で、可視スペクトル内でシンチレーションする、1つ以上のセンサ素子(例えば、セリウムCeおよびまたはルテチウムLu)を含む。
【0043】
無アルカリフツリン酸系ガラスシステムの1つ以上の実施形態は、EMP遮蔽能力を提供するようにも機能する。さらに以下に詳述されるように、耐放射線性、放射線遮蔽およびシンチレーションを提供するセンサ素子を備えたより高い密度のガラスシステムを提供することに加えて、本発明の1つ以上の実施形態は、1つ以上の元素(例えば遷移金属)を使用するガラスシステムを提供し、それらの元素は、EMスペクトルパルスの所望部分を遮蔽するために、ドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されてもよい。
【0044】
以下に詳述されるように、ガラスシステムの塩基組成物としての5つの化合物の使用により、本発明の1つ以上の実施形態は、生成されてもよいガラス構造(またはタイプ)に対する、より大きい数の順列に対してより高い(より大きい)ガラス成形領域を有する無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。
【0045】
本発明の1つ以上の実施形態は、元素ごとの全体的により大きいZ番号、より高い密度、より高い屈折率n、より短い励起減衰時間を有することを結果として生じさせ、耐放射線性、放射線遮蔽およびEMP遮蔽を向上させた化合物を使用する無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。本発明の1つ以上の実施形態に従うより高い密度のガラスシステム(1立方センチメートル当たりのより大きい番号の原子)は、より高い密度によって向上した耐放射線性および向上した放射線遮蔽を有する、より小さなサイズのガラス製品(非常に小さい空間を使用する)の使用を可能にする。すなわち、本発明の1つ以上の実施形態のより高い密度のガラスシステムは、いっそうよく妨害するために機能し、実際、サイズが小さくても、それらの密度により、ガラスシステムを通過するエネルギーの伝播を十分に吸収する。
【0046】
本発明の1つ以上の実施形態は、フッ化耐性である無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。さらに以下に詳述されるように、本発明の1つ以上の実施形態は、大半の水処理設備において使用される可能性があるフッ化耐性(透明性を維持する)のパッシブな無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。ガラスシステムは、その塩基組成物内に既にフッ素を含んでいるため、フッ素環境内では中性(透明、変化なし)のままである。
【0047】
ガラスシステム(1)
【0048】
特に、本発明の1つ以上の実施形態は、無アルカリフツリン酸系ガラスシステムで構成されてもよいガラスシステムを提供し、無アルカリフツリン酸系ガラスシステムは:
【0049】
【化2】
【0050】
を含み、
式中、Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択され、「F」中の下付き添字「x」は、群MgF、CaF、SrF、PbF、YF、BiF、またはAlFを結果として生じる、化合物RFの中のフッ化物(F)の量を表す指標である。ガラスシステム(1)のガラス塩基組成物の100wt%以上のランタニド金属から選択された、ドーパントおよびまたは共ドーパントとして、付加的なランタニド酸化物Mおよびまたはランタニドフッ化物MFがさらに含まれる。MまたはMF中のMはランタニド金属を表し、下付き添字a、b、およびgは、化合物MおよびMF中のランタニド金属(M)、酸素(O)、およびフッ素(F)のそれぞれの量を表す指標であり、MまたはMFは:
La、LaF、CeO、CeF、Pr、PrF、Nd、NdF、Pm、PmF、Sm、SmF、Eu、EuF、Gd、GdF、Tb、TbF、Dy、DyF、Ho、HoF、Er、ErF、Tm、TmF、Yb、YbF、Lu、LuF
を結果として生じる。
【0051】
ガラスシステム(1)は、耐放射線性が非常に高く(高エネルギーを加える前、最中、後にソラリゼーションを引き起こさない)、高放射線エネルギーを遮蔽するため、再使用可能である。さらに、ドーパントおよびまたは共ドーパントとしてCeおよびまたはLuを使用することにより、ガラスシステム(1)は、高エネルギー放射線の存在を視覚的に判定するための目視可能な手段を提供する(当然可視スペクトル内で)。すなわち、本発明の再使用可能なガラスシステム(1)は、外部放射線検出のコンポーネント、装置、もしくはシステムの使用、必要性、もしくは必要条件のない、放射線照射の継続時間に相応する高エネルギー放射線の存在の視覚的表示を提供する。言いかえれば、ガラスシステム(1)は、放射線を照射されたか、高いエネルギーにさらされたときに可視スペクトル内でシンチレーションするドーパントおよびまたは共ドーパントとして、CeおよびまたはLuなどのセンサ素子を使用し、さらなる放射線センサ装置の必要性または必要条件のない、放射線の存在の視覚的表示を提供する。ガラスシステム(1)は、高エネルギー放射線の存在を視覚的に判定するための目視可能な手段を提供するために可視スペクトル内でシンチレーションしながら、高エネルギー放射線に対する遮蔽と同様に、耐放射線性を向上させる。
【0052】
以下の表1は、耐放射線性が非常に高く、高エネルギー放射線を遮蔽し、可視スペクトル内でシンチレーションするそれらの能力により、可視スペクトル内で高エネルギー放射線の存在を検出する視覚的手段を提供する、無アルカリフツリン酸ガラスシステム(1)組成物のための好ましいサンプル範囲の、非制限的で、非網羅的な、模範的リストである。
【0053】
【表1】
【0054】
-RはMg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択される;
-下付き添字xは、化合物RF(例えば、MgF、CaF、SrF、PbF、YF、BiF、AlF)中のフッ素(F)の適正量を表す指標である。
-ドーパント/共ドーパントは、ガラスシステム(1)の100wt%以上の塩基組成物であり、ランタニド金属(MおよびまたはMF)および、とりわけ、可視スペクトル内でシンチレーションするためのCeおよびまたはLuを含んでもよい。
【0055】
フツリン酸ガラスとしてのガラスシステム(1)は、クラスター化することなく比較的大量の希土類のドーパントをホストする可能性、および広いガラス成形領域を有する。ガラスシステム(1)は、比較的低いフォノンエネルギー(0.0856eV)、比較的低い非線形屈折率(n2=1.42×10-13esu)、および中赤外線(IR)までの比較的広い透過範囲の近紫外線(UV)を有する。
【0056】
本発明のガラスシステム(1)の耐放射線性と放射線遮蔽の特性は、放射線照射の前、最中、後に、ソラリゼーション(例えば、光学部品が褐変または暗化する)を引き起こすことなく(ソラリゼーションを引き起こさない)高レベルのエネルギーに対する高い耐性および遮蔽を提供する。大きな原子半径、フッ素(約4eV)の高い電気陰性度、ならびにドーパントおよびまたは共ドーパントとしてのCe(IV)、Lu(III)の原子価の逆の変化などの独自の分子構造の組み合わせによって、ガラスシステム(1)が高いソラリゼーション耐性を得ることが可能であり、ガラスシステムが(1)放射線が照射される(高エネルギー放射線にさらされる)ときの可視スペクトル内のCeおよびLuのシンチレーションにより、検出機構の使用、必要性、または必要条件のない放射線の視覚的検出を可能にする。
【0057】
Ba(POなどのメタリン酸塩化合物、およびBaFなどのフッ化物を取り込むことにより、大きな原子半径(Baは2.53Å)を有するガラスが作成され、それより、ドーパントがガラスマトリックス内でより自由に移動し機能することが可能であるため、より効率的な光学式媒体が作成される。加えて、独自のガラスの構造は、ドーパントが一様に分散することを可能にし、温度勾配とゆがみを減少させる。
【0058】
高エネルギーの放射線暴露(例えばガンマ線または中性子束および中性子フルエンス)中に、CeまたはLuが、持続的な反ソラリゼーションプロセスを作成し、それによって、原子価のひときわ高い変化(例えば、Ceに対しておよそ90-95%)を有するCeとLuにより、本発明のガラスシステム(1)が反ソラリゼージョンされ続けることを可能にする。すなわち、CeまたはLuがガンマ線、中性子、または他の高エネルギー(放射線および/または粒子)によって衝撃を加えられるとき、Ce(IV)からCe(III)までのCeおよびLuの原子価の変化、およびその逆の変化(または、Lu(III)からLu(II)まで、およびその逆)は、絶えず再発し、それによって、下記の式にしたがって、EMスペクトルの可視スペクトル内でシンチレーションしながら、ガラスマトリックスが非ソラリゼージョンされ続けることを可能にし:式は、
【0059】
【数1】
、および
【0060】
【数2】
であって、式中、hvは、プランク定数h、および周波数vを有する環境エネルギーであり、eは電子である。言いかえれば、光学部品内のCeおよびまたはLuの化合物のピーク吸収レベルは、Ce(IV)からCe(III)まで、およびCe(III)からCe(IV)までのCeの原子価の変化、またはLu(III)からLu(II)まで、およびLu(II)からLu(III)までのLuの原子価の変化を継続させた結果として、変動する。
【0061】
Ce(IV)がイオン化され、かつCe(IV)からCe(III)への変化プロセスを作成する、およびその逆を引き起こすために、最小約3.6eV(電子ボルト)のエネルギーのみが必要とされる(340nm以下の波長で)。Ce(IV)は、標準状態のCeO、CeFの形態の酸素またはフッ化物が結合されたCeであり、Ce(III)は、放射線を適用することによりドーパントを励起させた結果としてCe(IV)が電子を得た結果である。
【0062】
Lu(III)がイオン化され、かつLu(III)からLu(II)への変化プロセスを作成する、およびその逆を作成するために、最小約4.1eV(電子ボルト)のエネルギーのみが必要とされる(300nm以下の波長で)。Lu(III)は、標準状態のLu、LuFの形態の酸素またはフッ化物が結合されたLuであり、Lu(II)は、放射線を適用することによりドーパントを励起させた結果としてLu(III)が電子を得た結果である。
【0063】
380nm以下から開始する波長(例えば、高レベルのX線およびガンマ線まで)は、Ce(IV)またはLu(III)ドーパントが継続的な往復変化を達成するために必要とされる3.6eV以上を生成することができ、それによって、ガラスを、高エネルギー環境において、透明なまま(すなわち、非ソラリゼージョンされた)、シンチレーションしている状態に維持する。
【0064】
各波長に対する電子ボルトエネルギーは、下記の式を使用することにより測定することができ:
【0065】
【数3】
式中、Eはエネルギーであり、fは周波数であり、λは光子の波長であり、hはプランク定数であり、cは光の速度である。
【0066】
上に示されるように、本発明の1つ以上の実施形態は、EMP遮蔽能力を提供するために機能する無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供する。すなわち、耐放射線性、遮蔽およびシンチレーションを提供するセンサ素子を備えたより高い密度のガラスシステムを提供することに加えて、本発明の1つ以上の実施形態は、1つ以上の元素(例えば遷移金属)を使用するガラスシステムを提供し、それらの元素は、EMスペクトルパルスの選択された部分を遮蔽するために使用されてもよい。したがって、無アルカリフツリン酸系ガラスシステム(1)は、EMスペクトルパルスの所望部分を遮蔽する追加された機能を提供するために、群Cu、Ti、Cr、Mo、W、Mn、Co、Niから選択される遷移金属の酸化物およびまたはフッ化物の付加的な共ドーパントを含んでもよい。
【0067】
ガラスシステム(1)への遷移金属の追加は、EMパルスに対する遮蔽を可能にする。すなわち、遷移金属は、ドーパントおよびまたは共ドーパントとして、CeおよびまたはLuなどのランタニド金属の代わりに使用されてもよく、または、代替的に、遷移金属がCeおよびまたはLuなどのランタニド金属と組み合わせて使用されてもよい。言いかえれば、ドーパントおよびまたは共ドーパントは、遷移金属CuO、CuF、TiO、TiF、Cr、CrF、Mo、MoF、W、WF、MnO、MnF、Co、CoF、Ni、NiFの酸化物およびまたはフッ化物、ランタニド金属の酸化物(M)、およびまたはガラスシステム(1)の100wt%以上のガラス塩基組成物のランタニド金属のフッ化物(MF)を含む群から構成されてもよい。例えば、上記のガラスシステム(1)内におけるドーパントとしてのランタニドCeと組み合わせた共ドーパントとしての遷移金属Tiの使用は、放射線を照射されたときにガラスシステム(1)のシンチレーションを可能にし、さらにEMスペクトルのUVパルスを遮蔽する。したがって、遷移金属の様々な組み合わせは、電磁スペクトルパルスの所望部分を遮蔽するためにドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されてもよく、およびまたは、EMPの遮蔽に加えて可視スペクトル内でシンチレーションするためのドーパントCeおよびまたはLu備えた共ドーパントとして使用されてもよい。他のランタニド金属の様々な組み合わせが、遷移金属に加えて付加的な共ドーパントとしても使用されてもよいことが留意されるべきであるが、少なくとも、ガラスシステム(1)は、それらを、放射線を照射されたときに可視スペクトル内でシンチレーションするためのCeおよびまたはLuの0.1wt%のドーパントとして含むに違いない。言いかえれば、可視スペクトル内でシンチレーションするように、ドーパントは、少なくとも0.1wt%のCeおよびまたはLuから構成されてもよく、24.9wt%までの共ドーパントは、ランタニド金属の1つ以上の組み合わせ、遷移金属の1つ以上の組み合わせ、ならびにまたは、ランタニド金属およびもしくは遷移金属の1つ以上の組み合わせを含む。
【0068】
ガラスシステム(1)の塩基組成物に関しては、PbFまたはBiFの使用が、ガラスシステム(1)の塩基組成物のRFとして好まれる。PbFまたはBiFは、元素ごとのガラスシステム(1)の全体的なZ番号を増加させるので、最も大きい数値によってその密度を増加させ、そのことが、高エネルギー放射線に対する耐性も向上させながら、ドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されたときに、ランタニド金属Ce、Luの減衰時間を低下させることを容易にする。Ceなどの励起した元素のより低いまたはより短い減衰時間は、様々な粒子(例えば、短命な核子)を検出する可能性がある周波数を増加させる。
【0069】
以下は、ガラスシステム(1)の非制限的で、具体的な例である:
【0070】
実施例1:
5-60molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
5-60molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
10-70molパーセントのフッ化物BaFおよびRF;および、
塩基組成物の100wt%を超えるCe、Lu、Cu、Ti、Cr、Mo、W、Mn、Co、Ni、およびまたはそれらの組み合わせを含む希土類およびまたは遷移元素から構成される群から選択される、0.1-25wt%の酸化物およびフッ化物で構成されたドーパント。
式中:Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Al、YおよびBiから構成される群から選択され;そして、xは、化合物RF中のフッ化物(F)の量を表わす指標である。
【0071】
試験は、ガラスシステム(1)の、以下に続く、非制限的で、模範的なガラスサンプル組成物上で行われ、ガラスサンプル組成物は以下のガラスサンプル(1)を含む。
【0072】
ガラスサンプル(1):
15molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
15molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
35molパーセントのBaFと;35molパーセントのRF=MgFと;を含むフッ化物、および
ガラスサンプル(1)の塩基組成物の100wt%を超える1%重量のCeOから構成されるドーパントを含む。
【0073】
その試験は、放射線が照射される間に、ガラスサンプル(1)がソラリゼーションを引き起こさず(透明なままだった)、シンチレーションを生成したという結果とともに、高エネルギー放射線環境において実施された。放射線照射の137Cs(633KeV)の13Mradの後に、ガラスサンプル(1)の測定された特性の変化は、統合された光出力(integrated light output)、放出の速度、光線透過率に関して検出されなかった(推定された体系的な誤差±3%、<±1%統計)。放射線照射に関する測定を、以下のとおり実施した:
・電子(12GeV)および陽子(50GeV)をガラスサンプル(1)へと導いた。
・ガラスサンプル(1)を、石英繊維束(quartz fiber bunles)を介して高速の光電子増倍管に連結させた。
・光電子増倍管で、~360nmから650nmまで(2%-2%量子効率領域)の光を統合した。
【0074】
ガラスサンプル(1)は再び、(12GeVの電子および50GeVの陽子の組み合わせの)さらなる3度の暴露/測定サイクルにおいて、最低99Mradまで放射線照射され、その結果は、図1および2のグラフに示されている。ガラスサンプル(1)は、高い電磁波エネルギー(例えば、12GeV以上の電子)および高い粒子エネルギー(例えば、50GeV以上の陽子)の組み合わせの高エネルギー照射に耐えた。図1は、電圧(mV)対時間(ns)を表すグラフであり、図2は、事象の数対ピーク到達時間(ns)を表す。図1で示されるように、パルス波形(電圧対時間)は、上記のガラスサンプル(1)を通る400万の陽子を平均した。シンチレーションのパルス到達時間のヒストグラム(図2):0.2ns当たりの事象の数対ns単位の時間。ガウス適合(Gaussian fit)は、適合する時間分解能
【0075】
【数4】
で、データを十分に特徴づける。求積法(quadrature)において光電管の立ち上がり時間(約1.1ns)を取り除くことにより、±1.6nsの時間分解能が結果としてもたらされた。
【0076】
金属ターゲット上の22GeVの陽子線入射に起因する混合ビームおよび粒子(陽子;π中間子;電子;中性子およびガンマ線):
推定される線量は、10MRad<線量<100MRadの範囲である。633KeV137CsのX線の13MRadの付加的な線量が、2度与えられた。このガラス(ガラスサンプル(1))は、633KeV137CsのX線の少なくとも99MRadの耐放射線性能力を有する。シンチレーション(1wt%のCeに対する)は、少なくとも10光子/KeVであると推定される。光放出の時間構造は、約~5-6ns、および~35nsの2つの指数関数を示す。光子の半分は~40nsで放出される。
【0077】
上記されたように、ガラスサンプル(1)の特性の変化は、放射線照射の後には検出されなかった。さらに、19ns-50nsの観察された減衰時間(Ceに対して)は、例えば、大きな貨物(cargo)のガンマ線/中性子問いかけ(interrogation)のために必要な150nsの長パルスよりも、少なくとも3倍早かった。実際に、約19ns-50nsの観察された減衰時間を考慮して、ガラスサンプル(1)は、約6MHzのデータ転送速度で動作する走査デバイスのように、コンピューター断層撮影法(CAT)により使用されてもよい。
【0078】
Ceドーパントの使用によるガラスサンプル(1)のシンチレーションに関して、観察された光出力は、図2Aに最良に例示されるように、従来のプラスチックがシンチレーションするよりも、2から3倍多かった。図2Aは、288nm-380nmで励起されたときに450-550nmでシンチレーションするガラスサンプル(1)の非制限的で模範的な具体例である。ガラスサンプル(1)中のCeドーパントの量を増大させることが、ガラスシステムの全体的な性能を向上させることに留意すること。例えば、シンチレーションによる1wt%のCeOドーパントの光出力は、可視スペクトル内で約310ph/MeVであるが、5wt%のCeOドーパントの光出力は、約750ph/MeVである。このことが、ガラスサンプル(1)を、ポータブルなまたは固定される放射線を警告する検出器、反応器、および核廃棄物モニタリング、ならびに特に、ガンマカメラ、ミクロウェル(micro-wells)、走査電子顕微鏡法(SEM)分析、遺伝/タンパク質配列決定、および高エネルギーカーゴスキャン(high energy cargo scanning)などの、生物医学的/薬剤学的な機械使用と共に、使用するのに十分にする。
【0079】
図3A-3Cは、ガラスサンプル(1)のシンチレーションおよび減衰時間に関する、非制限的で模範的なグラフである。図3Aは、ガラスサンプル(1)の3つの同様な試料に対する透過曲線を詳述する、分光光度計で測定された透明性スペクトルを例示する。例示されるように、3つの試料の全てが、90%の透明性を優に上回る、よい透過率を有している。ガラスの透明性が高ければ高いほど、観察可能なシンチレーション(目視可能またはその他の)を生成するように、ドーパントが動作する可能性がある電磁スペクトルの波長の範囲がより広くなることに、留意すること。例えば、あるドーパントは、特定の波長のみでシンチレーションし、それらの波長は、従来のガラスの乏しい透明性によって適用される波長の範囲外である可能性があり、そのため観察可能ではない。
【0080】
図3Bは、単光子計数法の技術を使用して、減衰時間の測定値(ガラスシステム(1)に対する1wt%のCeO2)を例示するグラフであり、機器の応答は減じられる。例示されるように、この具体的で非制限的な例において、メインの減衰成分は、特に、この技術にしたがって約50nsである。しかしながら、図3Cにおいて例示されるように、325nmの波長(レーザー)で励起されたときの同じガラスシステム(1)においては、減衰時間は約19nsであると分かった。
【0081】
ガラスシステム(2)
【0082】
本発明の1つ以上の実施形態は、
【0083】
【化3】
【0084】
から構成される無アルカリフツリン酸系ガラスシステムを提供し:
式中、Rは、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Al、Laを含む群から選択され、「F」中の下付き添字「x」は、群CaF、SrF、PbF、YF、BiF、AlF、LaFを結果としてもたらす、化合物RF中のフッ化物(F)の量を表す指標である。さらに、ガラスシステム(2)のガラス塩基組成物の100wt%以上のランタニド金属から選択されたドーパントおよびまたは共ドーパントとして、付加的なランタニド酸化物Mおよびまたはランタニドフッ化物MF(上記されるような)が含まれる。
【0085】
ガラスシステム(2)は、ガラス塩基組成物{Ba(PO、Al(PO、BaF、MgFおよびRF}を有し、ガラスシステム(1)の4つの化合物の代わりに5つの化合物で構成され、全体的なガラス特性を格段に向上させる。例えば、ガラスシステム(2)の5つの化合物のガラス塩基組成物は、4つの化合物のガラスシステム(1)と比較して、生成される可能性があるガラス構造(またはタイプ)に対するより大きい数の順列のためのより高い(より大きい)ガラス成形領域を提供する。他の例として、ガラスシステム(2)の5つの化合物のガラス塩基組成物は、元素ごとの約56-60のより大きい全体的なZ番号を有し、約4.6-5.4g/ccのより高い密度、約19ns-50nsのより短い励起減衰時間を有し、そして耐放射線性および放射線遮蔽を向上させた(より高い密度により)。
【0086】
特に、RFに加えてMgFの使用は、好ましいガラス成形基準を容易し、急激にガラス成形領域を増大させ、その結果、ガラスシステム(2)のガラス成形の能力を向上させることに留意すること。すなわち、特にMgFは、より広いガラス成形領域を提供、その領域から、様々なガラス構造(またはタイプ)のより大きい数の順列が生成されてもよい。言いかえれば、ガラス塩基組成物の化合物のMgFは、ガラスシステム(2)の組成物のガラス成形能力を向上させる。
【0087】
無アルカリフツリン酸系ガラスシステム(2)の耐放射線性は非常に高い(高放射線エネルギーの適用の前、最中、後にソラリゼーションを引き起こさない)ので、再使用可能である。ガラスシステム(2)は、高エネルギー放射線に対する耐放射線性を向上させ、ならびに放射線遮蔽も向上させた。さらに、CeおよびまたはLuのドーパントおよびまたは共ドーパント使用により、無アルカリフツリン酸系ガラスシステム(2)は、可視スペクトル内の高エネルギー放射線の存在を視覚的に判定するための目視可能な手段を提供する。すなわち、本発明の無アルカリフツリン酸系ガラスシステム(2)は、外部放射線検出コンポーネント、装置、もしくはシステムの使用、必要性、もしくは必要条件のない、放射線照射の継続時間に相応する高エネルギー放射線の存在の視覚的表示を提供する。言いかえれば、ガラスシステム(2)は、放射線を照射されたか、高エネルギー放射線にさらされたときに可視スペクトル内でシンチレーションするドーパントおよびまたは共ドーパントとして、CeおよびまたはLuなどのセンサ素子を使用し、さらなる放射線センサ装置の必要性または必要条件のない、放射線の存在の視覚的表示を提供する。
【0088】
以下の表2は、耐放射線性が非常に高く、高エネルギー放射線を遮蔽し、でシンチレーションするそれらの能力により、可視スペクトル内で高エネルギー放射線の存在を検出する視覚的手段を提供する、無アルカリフツリン酸ガラスシステム(2)組成物のための好ましいサンプル範囲の、非制限的で、非網羅的な、模範的リストである(CeおよびまたはLuがドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用される場合)。
【0089】
【表2】
【0090】
-Rは、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択される;
-下付き添字xは、化合物RF(例えば、CaF、SrF、PbF、YF、BiF、AlF)内のフッ素(F)の適正量を表す指標である
-ドーパントおよび/または共ドーパントは、ガラスシステム(2)のガラス塩基組成物の100wt%を超え、それらは、ランタニド金属(MおよびもしくはMF)、遷移金属、ならびにまたはランタニド金属(MおよびもしくはMF)およびまたは遷移金属の組み合わせ(そして、特に、シンチレーションが可視スペクトル内であることが望ましい場合、CeO、CeF、Lu、LuFなどのランタニド金属)を含んでもよい
【0091】
ガラスシステム(1)に類似して、本発明のガラスシステム(2)の耐放射線性の特性は、放射線照射の前と最中と後に、ソラリゼーションを引き起こす(例えば、光学部品が褐色になるまたは暗化する)ことなく(ソラリゼーションを引き起こさない)、高レベルのエネルギーに対する高耐性および遮蔽を提供する。ガラスシステム(1)に類似して、大きな原子半径、フッ素の高電気陰性度、およびランタニド金属ドーパントの原子価の逆の変化などの独自の分子構造の組み合わせは、ガラスシステム(2)が高ソラリゼーション抵抗性を達成できるようにし、ガラスシステム(2)が高エネルギー放射線に暴露されるとき、可視スペクトル内のCe、Luドーパントのシンチレーションによる検出機構の使用、必要性、必要条件なしに放射線の視覚的な検出(CeおよびまたはLuがドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用される場合)を可能にする。
【0092】
CeまたはLu以外のランタニド金属の原子価の逆の変化は、ガラスシステム(2)が、高ソラリゼーション抵抗性を得ることもできるようにし、また可視スペクトル外ではあるが、放射線の検出を可能にもすることを留意されたい。言いかえれば、シンチレーションはまた、CeまたはLu以外のランタニド金属がドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用される場合に生成されるが、生成されたシンチレーションは、一般的に電磁スペクトルの可視スペクトル外にある。非制限的な例として、原子価の逆の変化により、ランタニド金属Ybは赤外スペクトル内でシンチレーションする。
【0093】
ガラスシステム(1)と同様に、高エネルギー放射線暴露(例えばガンマ線または、中性子束および中性子フルエンス)中に、ガラスシステム(2)のドーパントとしてのランタニド金属は、Ceに対するおよそ90-95%の原子価の著しく高い変化を有するランタニド金属ドーパントにより、本発明のガラスシステム(2)が反ソラリゼージョンされ続けることを可能にする持続的な反ソラリゼーションプロセスを作成する。すなわち、ガラスシステム(2)内でドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されるランタニド金属がガンマ線、中性子、または他の高エネルギー(放射線およびまたは粒子)によって衝撃を加えられるとき、ランタニド金属の原子価の変化は絶えず再発し、そのことが、ガラスマトリックスが反ソラリゼージョンされ続けることを可能にする。ランタニド金属CeおよびLuに関する模範的な変化は、ガラスシステム(1)に関して詳述され、それらの変化は、他のランタニド金属の変化に類似する。
【0094】
ガラスシステム(1)に類似して、1つ以上の遷移金属は、EMスペクトルパルスの選択された部分を遮蔽するために、ガラスシステム(2)と共に使用されてもよい。したがって、無アルカリフツリン酸系ガラスシステム(2)は、ガラスシステム(1)に類似して、EMスペクトルパルスを遮蔽する追加された機能を提供するために、Cu、Ti、Cr、Mo、W、Mn、Co、Niを含む群から選択される遷移金属の酸化物およびフッ化物の付加的な共ドーパントを含んでもよい。
【0095】
ガラスシステム(1)と同様に、ガラスシステム(2)では、遷移金属はランタニド金属の代わりにドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されてもよいか、または代替的に、ランタニド金属と組み合わせて使用されてもよい。したがって、遷移金属の様々な組み合わせは、シンチレーションのためのランタニド金属と組み合わせて、電磁パルスを遮蔽するガラスシステム(2)において使用されてもよい。ガラスシステム(1)と同様に、可視スペクトル内でシンチレーションするように、使用されるドーパントは、少なくとも0.1wt%のCeおよびまたはLuから構成されてもよく、24.9wt%までの共ドーパントは、ランタニド金属の1つ以上の組み合わせ、遷移金属の1つ以上の組み合わせ、ならびにまたは、ランタニド金属およびもしくは遷移金属の1つ以上の組み合わせを含む。
【0096】
ガラスシステム(1)と同様に、ガラスシステム(2)におけるPbFまたはBiFの使用は、RFとしても好まれ、RFは、元素ごとのガラスシステム(2)の全体的なZ番号を増加させるので、最も大きい数値によってその密度を増加させ、そのことが、高エネルギー放射線に対する耐性も向上させながら、ドーパントおよびまたは共ドーパントとして使用されたときに、ランタニド金属の減衰時間を低下させることを容易にする。CaF、SrF、YF、AlFの使用もまた、より少ない程度だが、全体的なZ番号を増大させる。しかしながら、CaF、SrF、YF、AlFは、ガラスシステム(2)のガラス成形領域(すなわちガラス成形能力)を増大させる。すなわち、それらは、様々なガラス構造(またはタイプ)の順列のより大きい数値が生成される可能性がある、より広いガラス成形領域を提供する。言いかえれば、それらは、ガラスシステム(2)の組成物のガラス成形能力を増大させる。
【0097】
下記はガラスシステム(2)の非制限的な特定の例である:
【0098】
実施例2:
5-60molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
5-60molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
10-40molパーセントのフッ化バリウムBaF
10-90molパーセントのフッ化マグネシウムMgFおよびRF;ならびに
希土類およびまたは遷移元素Ce、Nd、Er、Yb、Tm、Tb、Ho、Sm、Eu、Pr、Lu、Cu、Ti、Cr、Mo、W、Mn、Co、Ni、および、100wt%を超えるガラス塩基組成物のそれらの組み合わせから構成される群から、0.1-25wt%パーセントの酸化物およびフッ化物で構成されたドーパントであって;
式中、
Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Al、YおよびBiから構成される群から選択され;そして
xは、化合物RF内のフッ化物(F)の量を表す指標である。
【0099】
図4Aおよび4Bは、以下の非制限的で模範的なガラスシステム(2)のガラスサンプル組成物とともに、ガラスシステム(2)のシンチレーションに関する非制限的で模範的なグラフであり、ガラスサンプル組成物は、以下のガラスサンプル(2)を含む。
【0100】
ガラスサンプル(2):
10molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
15molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
30molパーセントのフッ化バリウムBaF
30molパーセントのフッ化マグネシウムMgF;ならびに
15molパーセントのフッ化鉛PbF、および100mol%のガラス塩基組成物を超える、1%重量のドーパントCeO
【0101】
図4Aは、分光光度計で測定された透明度スペクトルを例示し、ガラスサンプル(2)の3つの同一の試料のための透過曲線を詳述する。例示されるように、3つの試料の全てが、よい透過率を有する――90%の透明度をはるかに超える。上に示されるように、ガラスの透明度が高いほど、電磁スペクトルの波長の範囲は広く、その範囲内では、ドーパントが観察可能なシンチレーション(目視可能か他の状態)を生成するように作用してもよい。例えば、あるドーパントは、特定の波長のみでシンチレーションし、それは、ガラスの低い透明度により提供される可能性がある波長の範囲外である可能性があり、それ故、観察可能なのではない。図4Bは、チェレンコフ光が、速いシンチレーション成分(約10ns)で支配している(dominating)ことを例示するグラフである。
【0102】
ドーパントを持たないガラスシステム(1)およびまたはガラスシステム(2)のガラス塩基組成物の使用は、フッ素ガス抵抗性(透明度を維持する-くすまない、曇らない、またはくぼまない)であるパッシブガラスシステム(passive glass systems)(3)および(4)を提供し、それは、ほとんどの水処理設備(例えば原子力施設)内で使用されてもよいことが留意されるべきである。
【0103】
【化4】
【0104】
【化5】
【0105】
下記表3は、無アルカリフルオロリン酸パッシブガラスシステム(3)組成物(ドーパントを有さない)に対する好ましいサンプル範囲の非制限的で、非網羅的な、模範的なリストである。
【0106】
【表3】
【0107】
-Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Y、Bi、Alを含む群から選択される。
-下付き添字xは、化合物RF(例えば、MgF、CaF、SrF、PbF、YF、BiF、AlF)内のフッ素(F)の適正量を表す指標である。
【0108】
下記はパッシブガラスシステム(3)の非制限的な特定の例である:
【0109】
実施例3:
5-60molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
5-60molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
10-70molパーセントのフッ化物BaFおよびRFであって;ここで、
Rは、Mg、Ca、Sr、Pb、Al、YおよびBiから構成される群から選択され;そして
xは、化合物RF内のフッ化物(F)の量を表す指標である。
【0110】
下記の表4は、無アルカリフルオロリン酸パッシブガラスシステム(4)組成物(ドーパントを有さない)に対する好ましいサンプルの範囲の非制限的で、網羅されていない、模範的なリストである。
【0111】
【表4】
【0112】
-Rは、Pb、Ca、Sr、Bi、Y、Alを含む群から選択される。
-下付き添字は、化合物RF(例えば、CaF、SrF、PbF、YF、BiF、AlF)内のフッ素(F)の適正量を表す指標である。
【0113】
以下はパッシブガラスシステム(4)の非制限的な特定の例である:
【0114】
実施例4:
5-60molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
5-60molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
10-40molパーセントのフッ化バリウムBaF
10-90molパーセントのフッ化マグネシウムMgFおよびRF;ここで、
Rは、Ca、Mg、Pb、Al、Y、およびBiから構成される群から選択され;そして
xは、化合物RF内のフッ化物(F)の量を表す指標である。
【0115】
テスト中に、ガラスシステム(3)および(4)は、フッ素ガスが存在していた水処理施設の部屋に備え付けられた。ガラスシステム(3)および(4)は、7か月の間、この環境にさらされた。7か月後、それらのガラスは透明なままであった。これは、フッ素およびフッ酸を利用する多くの世界的な産業(水処理施設などの)において重要である。
【0116】
ウィンドウパネルおよび目盛り表示部カバーを含む従来のガラス、結晶、またはプラスチック製品は、くすんだ(くもった/腐食した/くぼんだ)層となり、またフッ素ガスにさらされたとき時間とともに悪化した。曇った(またはくすんだ)ガラスによって、主として部屋を点検すること、外部の働きを見ること、計器ゲージを読み取ることが困難になるので、安全性とセキュリティの問題を引き起こし、これらの環境で装置を動作させる装置製造業者およびエンドユーザにとって顕著な問題になる。
【0117】
本発明の耐フッ素性ガラスを有するという利点は、それらが、粗フッ素ガス環境内で装置の作動部(例えば圧力計読取り部等)への完全な視覚的なアクセスを可能にすることにより、保安基準を大幅に増大させること、セキュリティ(例えば、カメラレンズ等として使用されたときに)を確実にし、かつ維持費を下げるために視程を増強し、装置の全体的なパフォーマンスを改善するということである。
【0118】
ガラスシステム(3)と(4)のための非限定的で非網羅的なリストは、圧力計のウィンドウ、数字ディスプレイを備えた電子機器のウィンドウ、荒いフッ素ガスに敏感な装置に備え付けることができる保護シールドウィンドウ、視覚的なアクセスを提供するためにケミカルルームのドアまたは気密チャンバーのドアに備え付けることができるウィンドウ、を含む。
【0119】
図5は、分光光度計で測定された透明度スペクトルを例示し、ガラスサンプル(3)の同一の試料のための透過曲線を詳述する。例示されるように、試料の全てが、よい透過率を有する――90%の透明度をはるかに超える。
【0120】
ガラスサンプル(3):
15molパーセントのアルミニウムメタリン酸塩Al(PO
15molパーセントのバリウムメタリン酸塩Ba(PO
35molパーセントのBaFと;35molパーセントのRF=MgF;から構成されるフッ化物。
【0121】
図5に例示されるように、ガラスサンプル(3)の試料の全ては、優れた透過率を有する。
【0122】
本発明は、構造的特徴およびまたは方法の動作に特異的な言葉でかなり詳細に記載されたてきたが、添付された特許請求の範囲において定義された本発明が、記載された特定の特徴または動作に必ずしも限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の特徴および動作は、請求された発明を実行する模範的な好ましい形態として開示される。記載される他の点において、本明細書ならびに要約において使用された語法および専門用語は、説明のためであり、限定するものとして見なされるべきでないことを理解されたい。さらに、本明細書は、開示された実施形態に限定されない。したがって、本発明の模範的な例示的な実施形態が記載されてきた一方で、当業者は、多数の変形形態および代替的な実施形態を思いつくだろう。そのような変形形態および代替的な実施形態は考えられ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく構成することができる。
【0123】
さらに、開示全体にわたって、左の、右の、前の、後の、上部の、内部の、外部の、底部の、前方への、逆の、右回りの、左回りの、上への、下への、またはより高い、より低い、後部の、前部の、直立の、水平の、斜位の、近位の、遠位の、並列の、垂直の、横の、縦の、等などの他の類似する用語などの表示は、単に便宜上使用され、特定の一定の方向、配向、または位置を意味するように意図されないことを留意されたい。代わりに、それらは対象の様々な部分の間の相対的な場所/位置、および/または方向/配向を表すために使用される。
【0124】
加えて、開示(および、特に、特許請求の範囲)全体にわたる「第1」、「第2」、「第3」等の要素に対する言及は、連続的か数的な限定を表わすためには使用されないが、その代り、群の様々な要素を区別するか特定するために使用される。
【0125】
加えて、特定の機能の実行する「ための手段(means for)」、または特定の機能を実行する「ための工程(step for)」を明確に述べない特許請求の範囲における任意の要素は、35 U.S.C. Section 112、 Paragraph 6において指定されるような「手段(means)」節または「工程(step)」節として解釈するべきではない。特に、本出願の特許請求の範囲における「の工程(step of)」、「の作用(act for)」、「の動作(operation of)」、または「の運用上の作用(operational act of)」の使用は、35 U.S.C. 112、 Paragraph 6の規定を援用するようには意図されない。
図1
図2
図2A
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5