(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-22
(45)【発行日】2022-03-03
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ及びインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20220224BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 125
B41J2/01 209
(21)【出願番号】P 2020500468
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004775
(87)【国際公開番号】W WO2019159859
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2018023403
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131625
【氏名又は名称】株式会社シンク・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】重田 龍男
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-056613(JP,A)
【文献】特開2012-139940(JP,A)
【文献】特開2008-284708(JP,A)
【文献】特開2016-088026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0200679(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0252173(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0189772(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状印刷基材に対してシングルパス方式で
水性インクジェットインクを吐出することにより画像形成を行なう
水性インクジェットインク用のインクジェットプリンタであって、
前記ウェブ状印刷基材の連続的な搬送を行なう搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される前記ウェブ状印刷基材の表面に対して
前記水性インクジェットインクを吐出する
非白色インクの複数のシングルパス方式インクジェットヘッドと、
前記非白色インクのインクジェットヘッドよりも解像度の低い、白色インクのシングルパス方式インクジェットヘッドと、
前記ウェブ状印刷基材の表面に吐出された
前記水性インクジェットインクを硬化する硬化デバイスと、
インターフェース基板制御モジュールと、
前記非白色インクのインクジェットヘッド制御用インターフェース基板と、
前記白色インクのインクジェットヘッド制御用インターフェース基板と、
を含み、
各色のインクジェットヘッドの解像度情報がヘッド構成コンフィグレーションに予め登録されてなり、
前記インターフェース基板制御モジュールが前記ヘッド構成コンフィグレーションを参照してデータを各インクジェットヘッド制御用インターフェース基板に転送し、各インクジェットヘッドから各色を吐出せしめる印刷が実行されることで、前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッド
による印刷の解像度を前記
水性インクジェットインクの色に応じて変更せしめるようにした、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタを用い、ウェブ状印刷基材に対してシングルパス方式で
水性インクジェットインクを吐出することにより画像形成を行なうようにしたインクジェット印刷方法であって、
前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッド
による印刷の解像度を前記
水性インクジェットインクの色に応じて変更せしめるようにした、インクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ状印刷基材に対してインクジェットインクでシングルパス方式の画像形成をするためのインクジェットプリンタ及びインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷基材を連続的に搬送しながら印刷するにあたっては、スキャン方式とシングルパス方式とがあるが、スキャンする必要がないため特にウェブ状印刷基材を連続的に搬送しながら印刷するにはシングルパス方式の方が高速印刷に向いている。水性インクでシングルパス方式の画像形成をするためのインクジェットプリンタとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。シングルパス方式のインクジェットプリンタでは、ライン状に並べられた複数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドからインクを吐出する。
【0003】
従来、シングルパスインクジェット装置で多色印刷を行なう際には各色(白色(W),ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)など)のインクジェットインクを吐出する複数のシングルパス方式インクジェットヘッドが用いられるが、各インクジェットヘッドは同一の解像度で印刷が行われていた。インクジェットプリンタで印刷された画像は、インク滴が小さい(例えば数ピコリットル程度)方が、より高解像度となる。しかし、インク滴が小さくなればなるほど、インクを吐出するためのノズルが詰まり易くなる。また、べた塗り印刷時にスジが入ったり、濃度ムラが起こり易い。特に白色を印刷する場合には、濃度ムラが起こり易いという問題があった。特に、白色の場合には印刷された画像の濃度が上がりにくく、所定の白色の濃度とするためには何度も印刷を重ねたりする必要があった。水性インクの場合にはこの問題はさらに顕著なものとなる。
【0004】
また、ウェブ状印刷基材に対してインクジェットインクでシングルパス方式の画像形成をするためのインクジェットプリンタでは、基材を連続的に搬送する装置構成のため、スキャン方式のインクジェットプリンタのインク吐出技術をそのまま転用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウェブ状印刷基材に対してインクジェットインクで画像形成する際、インクを吐出するためのノズルが詰まり難く、べた塗り印刷時にスジが入ったり、濃度ムラが起こり難く、且つ単色印刷部分の濃度が上がり易い、インクジェットプリンタ及びインクジェット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、ウェブ状印刷基材に対してシングルパス方式でインクジェットインクを吐出することにより画像形成を行なうインクジェットインク用のインクジェットプリンタであって、前記ウェブ状印刷基材の連続的な搬送を行なう搬送機構と、前記搬送機構によって搬送される前記ウェブ状印刷基材の表面に対してインクジェットインクを吐出する複数のシングルパス方式インクジェットヘッドと、前記ウェブ状印刷基材の表面に吐出されたインクジェットインクを硬化する硬化デバイスと、を含み、前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッドの解像度を前記インクジェットインクの色に応じて変更せしめるようにした、インクジェットプリンタである。
【0008】
前記インクジェットインクの色が白色であり、白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度が、非白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度より低いのが好ましい。インクジェットインクとしては、水性インク又はUV(紫外線)硬化型インクが好ましく、特に水性インクが好適に用いられる。
【0009】
前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッドが、解像度が異なるインクジェットヘッドを備えてなるのが好適である。
【0010】
本発明のインクジェット印刷方法は、複数のシングルパス方式インクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタを用い、ウェブ状印刷基材に対してシングルパス方式でインクジェットインクを吐出することにより画像形成を行なうようにしたインクジェット印刷方法であって、前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッドの解像度を前記インクジェットインクの色に応じて変更せしめるようにした、インクジェット印刷方法である。
【0011】
前記インクジェットインクの色が白色であり、白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度が、非白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度より低いのが好適である。
【0012】
シングルパス方式インクジェットヘッドとは、ライン状に並べられた複数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドである。
【0013】
なお、前記画像形成とは、インクジェットプリンタでの印刷は、吐出したインク滴のドット群によってデジタルイメージが作成されることから、吐出したインク滴のドット群によってデジタルイメージが作成されることを指す。
【0014】
前記ウェブ状印刷基材としては透明なフィルムの他、紙や不織布などの不透明なウェブ状印刷基材も適用できる。透明なフィルムのウェブ状印刷基材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)などのウェブ状合成樹脂フィルムを用いた透明なフィルムが好適に使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウェブ状印刷基材に対してインクジェットインクで画像形成する際、インクを吐出するためのノズルが詰まり難く、べた塗り印刷時にスジが入ったり、濃度ムラが起こり難く、且つ単色印刷部分の濃度が上がり易い、インクジェットプリンタ及びインクジェット印刷方法を提供することができるという著大な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のインクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造図である。
【
図2】本発明のインクジェットプリンタを用いて、インクジェットインクの色に応じて画像解像度が異なるようにした画像形成の例を示す模式図である。
【
図3】解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態を示すシステムブロック図である。
【
図4】解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態における、エンコーダー設定のフローチャートである。
【
図5】解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態における、ヘッド吐出タイミング設定のフローチャートである。
【
図6】解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態における、ヘッド波形データ制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。なお、同一部材は同一符号で表される。
【0018】
図1は本発明のインクジェットプリンタの一つの実施の形態を示す断面構造図である。
図1において、符号10は本発明のインクジェットプリンタを示す。インクジェットプリンタ10は、ウェブ状印刷基材12に対してシングルパス方式で水性インクを吐出することにより画像形成を行なう水性インク用のインクジェットプリンタであって、前記ウェブ状印刷基材12の連続的な搬送を行なう搬送機構14(図示例では搬送機構14a及び14b)と、前記搬送機構14によって搬送される前記ウェブ状印刷基材12の表面に対しシングルパス方式で水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eと、前記ウェブ状印刷基材12の表面に吐出された水性インクを乾燥する乾燥デバイス(18a~18f,36)と、を含み、前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eの解像度を前記水性インクの色に応じて変更せしめるようにした、インクジェットプリンタである。
【0019】
図示例では、インクジェットインクとして水性インクの例を示したため、インクジェットインクを硬化する硬化デバイスとして、乾燥デバイス18a~18f,36の例を示した。インクジェットインクとしてUV硬化型インクを使用する場合には、乾燥デバイスの代わりに、紫外線照射デバイスを設置すればよい。
【0020】
なお、前記画像形成とは、インクジェットプリンタでの印刷は、吐出したインク滴のドット群によってデジタルイメージが作成されることから、吐出したインク滴のドット群によってデジタルイメージが作成されることを指す。従って、本願明細書において、印刷と画像形成とは同義である。
【0021】
図1に示した如く、前記シングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eは、ライン状に並べられた複数のインクジェットノズルを有するインクジェットヘッドである。前記複数のシングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eが、解像度が異なるインクジェットヘッドを備えている。図示例では、シングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eの各々を各色に対応させて解像度を予め設定したインクジェットヘッドとしてある。インクジェットヘッド16aは解像度が360dpiのW(白色)、インクジェットヘッド16bは解像度が600dpiのB(ブラック)、インクジェットヘッド16cは解像度が600dpiのC(シアン)、インクジェットヘッド16dは解像度が600dpiのM(マゼンタ)、インクジェットヘッド16eは解像度が600dpiのY(イエロー)の例を示した。
【0022】
このように解像度を設定するには、ライン状に設置される複数のインクジェットノズルの吐出口の大きさと吐出口の数(即ちノズルの本数)、ノズルの間隔、インクの液適量などを調整すれば解像度を決めることができる。
【0023】
インクジェットヘッド16a~16eの各色の解像度は必要に応じて適宜設定すればよく、特に制限はないが、白色水性インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度が、非白色水性インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度より低いことが好適である。白色水性インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度を、非白色水性インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度より下げることにより、インクジェットヘッドのノズルの詰まりを防止し且つ高精細で白濃度が濃い印刷を可能とすることができる。
【0024】
水性インクを吐出するシングルパス方式インクジェットヘッド16a~16eとしては、図示例では、インクジェットヘッド16aはW(白色)、インクジェットヘッド16bはB(ブラック)、インクジェットヘッド16cはC(シアン)、インクジェットヘッド16dはM(マゼンタ)、インクジェットヘッド16eはY(イエロー)の例を示し、各色のインク貯留タンク(図示は省略)を各々有しており、各インクジェットヘッド16a~16eから各色の水性インクが吐出される構成となっている。これらのインクジェットヘッドとしては、公知の種々のシングルパス方式インクジェット吐出装置が適用可能である。例えば、特許文献1に記載のインクジェットヘッドを各インクジェットヘッドとして使用できる。
【0025】
インクジェットヘッド16a~16eのノズルからインクを吐出する方式としては特に制限はなく、例えば、ピエゾ素子による電圧印加により電圧を制御し、インクの吐出量を制御するピエゾ方式や、ヒータにより加熱によりインクを吐出するサーマル(バブル)方式、バルブによりインクを加圧してインクを吐出するバルブ方式等が好適である。
【0026】
前記搬送機構14は、ウェブ状印刷基材12が搬送できるものであれば公知の機構がいずれも適用できるが、図示したように、駆動ベルト20,34と、ウェブ状印刷基材12を巻いておく原反ローラ22と、ウェブ状印刷基材12を搬送するための種々のローラ24,26,28,30と、印刷されたウェブ状印刷基材12を巻き取る巻き取りローラ32と、を含む構成が採用できる。なお、符号Oは、インクジェットプリンタのオペレータである。
【0027】
また、ウェブ状印刷基材12を巻いておく原反ローラ22は、乾燥デバイスである加温ボックス36内に入れられており、ここで60℃~70℃に予め加温(プレヒーティング)されている。加温ボックス36内での加温の仕方としては、温風で加温したりしてもよいし、種々の公知のヒータによる加温でもよい。図示の例では、加温ボックス36内を温風で加温する構成を示した。
【0028】
ウェブ状印刷基材12はウェブ状の印刷基材であれば良いものであるが、例えば、前記ウェブ状印刷基材としては透明なフィルムの他、紙や不織布などの不透明なウェブ状印刷基材も適用できる。フィルムの材質に特別の限定はないが、例えばフィルムのウェブ状印刷基材として、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、NY(ナイロン)などの合成樹脂を用いたフィルムなどが好適に使用できる。或いは、アルミニウムなどの金属をフィルム状とした、金属フィルムも好適に使用できる。
【0029】
また、
図1では、水性インクを吐出するインクジェットヘッド16a~16eのインクジェットヘッドの隣に、乾燥デバイスとして水性インクが吐出されたウェブ状印刷基材12の少なくとも表面を加温する表面加温部18a~18fを設けた例を示した。表面加温部18a~18fとしては例えば特許文献1に記載された表面加温部を適用することができ、特許文献1に記載された温風吹き付け手段などを表面加温部18a~18fとして適用できる。表面加温部として温風吹き付け手段を採用する場合、40℃~80℃程度、例えば70℃の温風が前記ウェブ状印刷基材12の表面に当てられる。温風を当てる時間としては、印刷速度が30m/分の場合、1秒~2秒程度であるが、温風の温度によっても適宜変更される。
【0030】
さらに、
図1の例では、ウェブ状印刷基材12を裏面から加温するための、裏面加温部38を設けた例を示した。裏面加温部38としては、公知のホットプレートを用いることができ、例えば、セラミック板にフィラメントを配設した電熱ヒータなどを使用することができる。裏面加温部38としてホットプレートを用いる場合、例えば40℃~65℃に加温して使用すると好適である。裏面加温部38は、前記インクジェットヘッド16a~16eに対応して設ければよいもので、
図1に示すように、前記インクジェットヘッド16a~16eの設置位置に亘って設けるようにしてもよいし、前記インクジェットヘッド16a~16eの設置位置に夫々応じて設けるようにすることもできる。
【0031】
また、裏面加温部38として、表面加温部と同様の温風吹き付け手段も使用することもできる。また、裏面加温部38として温風吹き付け手段を用いる場合、例えば40℃~80℃の温風をウェブ状印刷基材12の裏面に当てると好適である。
【0032】
図2は、本発明のインクジェットプリンタを用いて、水性インクの色に応じて画像解像度が異なるようにした画像形成の例を示す模式図であり、符号40は白色画像、符号42は非白色画像である。
図2における画像形成の条件を下記表1に示す。
【0033】
【0034】
表1に示す如く、
図2では、白色水性インク(W)を吐出するインクジェットヘッドの解像度を、非白色水性インク(B,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッドの解像度より低く設定して、画像形成を行なった例を示した。また、白色水性インク(W)を吐出するインクジェットヘッドの液適量を、非白色水性インク(B,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッドの液適量より多く設定し、白色水性インク(W)を吐出するインクジェットヘッドのノズルピッチを、非白色水性インク(B,C,M,Y)を吐出するインクジェットヘッドのノズルピッチよりも大に設定した。さらに、非白色水性インク(B,C,M,Y)に比べて固形分及び粘度が高い白色水性インク(W)を用いた。このようにすることにより、白色水性インクの乾燥がさらに早められる為、印刷速度をさらに早くすることができる。
図2の例では、印刷速度30m/分で印刷を行った。
【0035】
表1の条件により画像形成した印刷物の白濃度を下記方法により測定した。
印刷物に黒色テープを貼り、その黒の反射濃度を測定する。なお、黒の反射濃度が高いとは、白の濃度が低いことを意味する。表1の条件により画像形成した印刷物の黒の反射濃度は0.60であり、1回の印刷で白濃度が濃い印刷物を得ることができた。
一方、白色水性インクを含む全色のインクジェットヘッドの解像度を同一の600dpiとし、全色の水性インクを表1に示した非白色水性インクの条件で画像形成し、従来の印刷速度である20m/分で印刷を行った結果、黒の反射濃度は0.75であり、白濃度が低かった。
【0036】
次に、白色水性インク(W)を吐出するインクジェットヘッドの解像度を360dpiとし、非白色水性インクであるB(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)を吐出するインクジェットヘッドの解像度を600dpiとした、解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態を以下に説明する。
【0037】
図3は、解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御の一つの実施の形態を示すシステムブロック図である。
図3において、符号44は、インクジェットヘッドのヘッド構成コンフィグレーションであり、白色水性インク(W)のインクジェットヘッド(解像度360dpi)1個及び非白色水性インク(B,C,M,Y)のインクジェットヘッド(解像度600dpi)4個の二種類の設定がされている。
【0038】
符号46はスプーラーモジュール、符号48はフィルタモジュールである。符号50は非白色水性インク用インクジェットヘッド(600dpi)のラスタデータ、符号52は白色水性インク用インクジェットヘッド(360dpi)のラスタデータ、をそれぞれ示す。
【0039】
符号54はIF(インターフェース)基板制御モジュール(DCM: Device Control Module)であり、符号56は印刷データ転送用インターフェース基板のデバイスドライバである。
【0040】
符号58は非白色水性インク用インクジェットヘッド(600dpi)の印刷データ転送用IF(インターフェース)基板であり、符号60は白色水性インク用インクジェットヘッド(360dpi)の印刷データ転送用IF(インターフェース)基板である。
【0041】
符号62は、印刷データ転送用IF(インターフェース)基板58及び印刷データ転送用IF(インターフェース)基板60に接続して使用する差動IO基板である。差動IO基板62にはエンコーダー64が接続されている。
【0042】
印刷データ転送用IF基板58には、B(ブラック)インクのインクジェットヘッドのためのインクジェットヘッド制御用IF(インターフェース)基板66K1,66K2,66K3,66K4がそれぞれ接続されている。同様に、印刷データ転送用IF基板58には、C(シアン)インクのインクジェットヘッドのためのインクジェットヘッド制御用IF(インターフェース)基板68C1,68C2,68C3,68C4がそれぞれ接続されている。
【0043】
同様に、印刷データ転送用IF基板58には、M(マゼンタ)インクのインクジェットヘッドのためのインクジェットヘッド制御用IF(インターフェース)基板70M1,70M2,70M3,70M4がそれぞれ接続されている。同様に、印刷データ転送用IF基板58には、Y(イエロー)インクのインクジェットヘッドのためのインクジェットヘッド制御用IF(インターフェース)基板72Y1,72Y2,72Y3,72Y4がそれぞれ接続されている。
【0044】
一方、印刷データ転送用IF基板60には、W(ホワイト)インクのインクジェットヘッドのためのインクジェットヘッド制御用IF(インターフェース)基板74W1,74W2,74W3,74W4,74W5がそれぞれ接続されている。
【0045】
このように、光ファイバケーブルで印刷データ転送用IF基板58の光ポート1~4に非白色インクのインクジェットヘッド制御用IF基板を接続し、印刷データ転送用IF基板60の光ポート1に白色インクのインクジェットヘッド制御用IF基板を接続し、IF基板2枚にて非白色インクと白色インクの二種類のインクジェットヘッドを制御する。即ち、解像度が600dpiのインクジェットヘッド用IF基板76と解像度が360dpiのインクジェットヘッド用IF基板78の二種類を用いている。
【0046】
フィルタモジュール48はヘッド構成コンフィグレーション44を参照することにより各色データがどのインクジェットヘッドに割り当てられているかを判断し、インクジェットヘッドに応じた解像度のラスタデータを出力する。また、その際に解像度の違いによる画像高さ画素数の差異による連続印刷時の版ずれを防ぐための補正処理を行う。
【0047】
IF基板制御モジュール54は、フィルタモジュール48が生成した各ヘッド用のラスタデータ50,52をヘッド構成コンフィグレーション44を参照してヘッド個別処理を実行しながら、各インクジェットヘッド制御用IF基板66K1,66K2,66K3,66K4,68C1,68C2,68C3,68C4,70M1,70M2,70M3,70M4,72Y1,72Y2,72Y3,72Y4,74W1,74W2,74W3,74W4,74W5に転送し、各インクジェットヘッドから各色を吐出せしめる印刷処理を実行する。
【0048】
なお、各インクジェットヘッドを制御する2枚の印刷データ転送用IF基板58,60は、専用ハーネスによりカスケード接続されており、共通で入力されるエンコーダーパルスを印刷データ転送用IF基板58では600dpi相当の解像度、印刷データ転送用IF基板60では360dpi相当の解像度に分周/逓倍処理を行い各ヘッドの解像度使用に応じたパルスに変換して使用する。
【0049】
ヘッド構成コンフィグレーション44には、白色インク用のインクジェットヘッド又は非白色インク用のインクジェットヘッドの種別、並びにヘッド解像度(600dpi又は360dpi)が登録されており、その他、印刷データ転送用IF基板の構成(基板の数、基板の使用光ポート数、接続ヘッド種別など)やインクジェットヘッド制御用IF基板の構成(光ポート毎の基板数、基板に接続されるヘッド数など)も登録されている。
【0050】
印刷要求があると、IF基板制御モジュール54は、ヘッド構成コンフィグレーション44を参照することにより、どの光ポートにどのヘッドが接続されているかを認識して、エンコーダー設定処理、ヘッド吐出タイミング設定処理、インクジェットヘッドの駆動波形データ制御を行うヘッド波形データ制御処理などを行う。
【0051】
エンコーダー設定処理を
図4に示す。
図4に示されるように、各ヘッド種別に応じてエンコーダーの設定を分岐させてエンコーダーの設定が完了する。
【0052】
ヘッド吐出タイミング設定処理を
図5に示す。
図5に示されるように、各ヘッド種別に応じてヘッド吐出タイミング設定を分岐させてヘッド吐出タイミングの設定が完了する。
【0053】
ヘッド波形データ制御処理を
図6に示す。
図6に示されるように、各ヘッド種別に応じてヘッド波形データ制御の設定を分岐させてヘッド波形データ制御の設定が完了する。
【0054】
そして、印刷要求があった場合には、エンコーダー設定、ヘッド吐出タイミング設定、ヘッド波形データ制御、ヘッドノズル数に応じたラスタデータ分割設定、ヘッド駆動電圧制御、画像データ転送、トリガ信号受信→吐出、というヘッド個別の処理フローを経て、各インクジェットヘッドから各色のインクの吐出が行われる。このようにして、解像度の異なる二種類ヘッドでの吐出制御を行うことができる。
【0055】
上述した如く、本発明のインクジェットプリンタを用い、白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度を、非白色インクを吐出するインクジェットヘッドの解像度より低くすることにより、白色インクのインク滴が大きくなり、べた塗り印刷時にスジや濃度ムラが起こり難く、さらに、インクジェットヘッドのノズルの詰まりを防止することができ、且つ1回の印刷により白濃度の濃い印刷物を得ることができる。さらにはまた、低解像度の方がインク滴が大きくなり濃度が上がるため単色で印刷をする部分の濃度を上げやすくなり、色濃度の濃い印刷物を得ることができる。このため、従来は、例えば白色インクの場合には何回も白色を重ねて印刷をしたりしていたが、そのような重ね刷り印刷をする必要がなくなるという利点もある。
【符号の説明】
【0056】
10:インクジェットプリンタ、12:ウェブ状印刷基材、14,14a,14b:搬送機構、16a~16e:シングルパス方式インクジェットヘッド、18a~18f:乾燥デバイス,表面加温部、20,34:駆動ベルト、22:原反ローラ、24,26,28,30:ローラ、32:巻取りローラ、36:乾燥デバイス,加温ボックス、38:裏面加温部、40:白色画像、42:非白色画像、44:ヘッド構成コンフィグレーション、46:スプーラーモジュール、48:フィルタモジュール、50:非白色水性インク用インクジェットヘッドのラスタデータ、52:白色水性インク用インクジェットヘッドのラスタデータ、54:IF基板制御モジュール、56:デバイスドライバ、58:非白色水性インク用インクジェットヘッドの印刷データ転送用IF基板、60:白色水性インク用インクジェットヘッドの印刷データ転送用IF基板、62:差動IO基板、64:エンコーダー、66K1,66K2,66K3,66K4:Bインクのインクジェットヘッド制御用IF基板、68C1,68C2,68C3,68C4:Cインクのインクジェットヘッド制御用IF基板、70M1,70M2,70M3,70M4:Mインクのインクジェットヘッド制御用IF基板、72Y1,72Y2,72Y3,72Y4:Yインクのインクジェットヘッド制御用IF基板、74W1,74W2,74W3,74W4,74W5:Wインクのインクジェットヘッド制御用IF基板、76:解像度600dpiのインクジェットヘッド用IF基板、78:解像度360dpiのインクジェットヘッド用IF基板、O:オペレータ。